日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点――
仙台市での運用を素材として――
著者 中村 英
雑誌名 東北学院大学論集. 法律学
号 22
ページ 1‑50
発行年 1983‑03‑19
URL http://id.nii.ac.jp/1204/00000335/
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
||仙台市での運用を素材として||
中
村
英
目 次
はじめに
一節規制内容の理解
二節規制執行の手続
三節﹁日影規制﹂の問題点
ま と め
は
じ
め一九
六
0
年代後半頃から︑マンショγをはじめとする中高層建築物が︑都市部︑特に従来主に低層建築物から成立つていた地域へ大量に出現し始めた︒このことは︑周辺住民と建築主との︑更に建築行政に携わる自治体をもまき込ん
だ激しい紛争︿日照紛争﹀を生み出した︒こうした紛争の防止や解決は︑私法上の相隣関係の問題としては処理しき
れず︑自治体の条例や指導要綱等による規制にまかされることになった︒しかし︑規制基準や規制方法︑またそれら
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
の法的根拠が問題となったこともあり︑ついに︑建築基準法︵以下単に﹁法﹂とすることあり︒同様に︑同法施行令
(2)
を﹁令﹂︑同法施行規則を﹁規則﹂とすることあり︶の改正ハ七六年一一月︶で︑
一定
の規
制が
導入
され
るこ
とに
なっ
た︒以上は既に広く知られた︑法改正に至る経過のあらましである︒
さて︑右法改正により︑法律上の規制が創設されたのであるが︑その内容は︑一定の中高層建築物に︑周囲の敷地
に一定の基準を超える日影を出すのを禁ずる︵法五六条の二︑﹁日影規制﹂﹀というものであった︒こうした規制方法
は︑車接的な日照の保障ではなく︑また建築物の直接的な形態規制でもないまったく新たなもので︑建設事務次官通
達も次のように言っていた︒
﹁本制度は従来の法規制と異る新しい規制方法であるので︑建築主事をはじめ関係職員の養成︑訓練︑国民への周
知徹底等円滑な事務執行のための措置について格段の配慮をされたい︒﹂と︒
本小稿では︑建築行政や環境行政に関心を持たれる︑行政法学︑憲法学︑民法学等の研究者に読んでいただくこと
を念頭に︑右の新たな規制が︑現実に動きだしてほぼ四i五年の今日︑行政の現場でどのように理解され︿一節﹀︑ど
のような手続で運用されハニ節﹀︑更にこうした実務を通じて︑﹁日影規制﹂のどのような問題点があきらかにされた
か︵三節﹀を検討する︒直接の索材としては︑宮城県仙台市での運用を取りあげるが︑あらかじめ概括的に述べてお
けば︑日影規制に係わる既存不適格建築物の扱いの点を除き︑仙台市では︑平均的な運用がなされていると言えるだ
ろう
法令や判例だけからはよく理解出来ない実務の現状に光をあて︑今日必ずしも十分とは思えない︑日影規制規定︵法 ︒
五六条の二﹀の規制方法とその問題点への関心を高めようとするのが本稿のねらいである︒
本稿が直接の素材とする仙台市でも﹁仙台市日照等に関する建築指導要綱﹂︵一九七三年七月一日実施・本稿末尾資料1
怠照
﹀
があ
った
︒
ハ2
v
昭和
五二
年一
O月二八日住指発第七七
O号各都道府県知事あて建設事務次官通達付記||本稿執筆にあたり︑仙台市の多田︑須藤︑高砂の各氏︑建設省の山崎氏︑東京都の浜田氏及び宮域県のニ郷氏など実務を担当さ
れる多くの方々から貴重な資料を開示いただき︑また有益な意見をうかがうことが出来た︒意見の点では︑本稿で示した筆者
のそれと右の方々のものとでは異なる点もあったが︑特記して深く感謝申しあげたい︒
なおまた︑筆者本務校の鈴木ハツヨ教授には本問題勉強のきっかけを与えていただき︑文献の貸与をもお許しいただいた︒
祖川武夫教授には問題の実質にわたる重要な教示をいただいた︒更に︑菅野氏をはじめ建築関係担当の事務職員の方々にも協
力いただいた︒あらためて御礼申しあげる︒ ハl
v
規制内容の理解
七六年一一月四日に成立した建築基準法の一部を改正する法律︵昭和五一年法律第八三号﹀は︑同月一五日に公布
節
され︑この公布の日から一年を超えない範囲内で政令で定める日から施行されると定められた︒これを受けた政令︵昭
和五二年政令第二六五号︶は︑七七年一一月一日からの施行を決めたが︑もとより︑日影規制が実際にはたらく為に
は︑法五六条のニ1項にいう﹁条例﹂が必要である︒仙台市について︑当該条例︵昭和五三年宮城県条例第二五号︶
は七八年七月一八日に公布︑同年一二月一日から施行された︒法改正成立の後約二年︑施行の後約一年で日影規制が
動き
出し
たわ
けで
ある
︒
以下順次︑行政の現場での関係法令に対する理解の内容を示していくが︑本稿の読者︿﹁日影規制﹂について一通り
の理解を持つ法学の研究者﹀にとり︑あらためて説明する必要のないと思われる部分や︑読者の利用しやすい文献の
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
四
中で既に言及されている部分にはまったく触れないか︑あるいは簡単にしか触れないことにする︒場合によっては︑
適宜関係文献の参照をお願いしたい︒
(4)
法五六条の二l項関係
法五六条の二l項は︑日影規制の原則を定める中心的な規定である︒規制の大要をくり返し佃組めれば︑それは︑
定の
地域
にあ
る︑
内容である︵図1
参照
︶︒
以下
の︑
ω
はご定の地域﹂と﹁一定量の日影﹂︑ω
は﹁
一定
の建
築物
﹂︑
ω
は﹁敷
地外
の一
一定の建築物は︑敷地外の一定の水平面上に︑一定の量を超える日影を出してはいけない︑という
定の水平面﹂にそれぞれ係わっている︒
. ︐ ︐
︐・ A
eE
・ ︑
﹁対象区域﹂と﹁規制値﹂の指定
対象区域とは︑右の言葉づかいに言う﹁一定の地域﹂のことであり︑1項の定義するように︑﹁別表第三料欄の各項
に掲げる地域の全部又は一部で地方公共団体の条例で指定する区域﹂を指している︒ここで注意すべきなのは︑﹁条例
で指
定す
る﹂
︑﹁
全部
又は
一部
﹂だ
とい
う点
であ
る︒
右の﹁条例﹂について︑条文上何らの限定も付されていない︒しかし︑建設省としては︑この﹁条例﹂と︑﹁︹法別
表第三のメユューから︺地方公共団体がその地方の気候及び風土︑土地利用の状況等を勘案して条例で指定する﹂︵法
五六条の二1項︶とされている︑規制値を指定する条例とを︑同じ制定主体による同一の条例だと考えているようで
ある︒その上で︑基本的に︑﹁この日影条例は︑建築物の形態等に関する基本的事項を定めるものであるので︑管内の
建築行政の一貫性を図る立場にある都道府県において制定することが妥当である﹂とし︑また︑﹁行政手続上の混乱を
第2種住居専用地域
→ 『 』
N般地境界線平幼池袋国 測定面
第1種住居専用地域
十ーN
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
令』
71 15 51 14
+ ー
図1. 基準の適用例:いずれも別表第三村欄の付の場合
[建築東京165号36頁より]
五
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
司』』,.
,
\
防ぎ︑建築基準法に基づく建築制限であることを明確にするためには︑建築基準法の施行のための基本的事項を定め
ている従来の条例の中に日影規制の規定を加えることにより日影条例を制定することが望ましいよとの考えを示して
(6)
いる
全国的に︑ほぼ右に引いた建設省の考えの線で条例が制定されたようである︒仙台市についても︑先に見た通り︑ ︒
宮城県が条例を制定したのであり︑なお︑それも︑県の建築基準条例に︑六条の二を加えるという形で行なわれた︒
県条例は次のような﹁対象区域﹂と﹁規制値﹂を定めている︒
宮城県建築基準条例第六条の法五六条の二第一項本文の規定により日影による中高層の建築物の高さの制限
に係る対象区域として指定する区域として指定する区域は︑次の表の上欄に掲げる区域とし︑それぞれの区域に
お け る 日 影 時 間 の 限 度 と し て 法 別 表 第 三 伺 欄 の 各 号 の う ち か ら 指 定 す る 号 は
、 次 の 表 の 下 欄 に 掲 げ る 号 と す る
。
住 第 第
居
種住
高
居地域 極言 農 語
地 域
れ た地域ら
ー
震
対 号 規の 象イA市口山 全 全 そ 区
他 の
の の
域区 域区 区
域 域 域
富れ高区豪ー
=
域
験
。号ω
口ω ω
付別表 第 法
。
欄
。
の 号
近隣商業地域と準工業地域については︑仙台市内に限って指定されている点が注目されるが︑これもまた建設省の
通達に沿ったものと言える︒
結局︑仙台市については︑完全な全域指定で︑岡市内の第一種住居専用地域はすべて高度地区なので︑規制値は︑
法別表第三で区分された一については糾欄の付︑二と三についてはいずれも∞とされているわけである︒
なお︑右のような指定がなされて︑それに従って運用されている為︑仙台市については当面実益のないことだが︑
都道府県レヴzルの条例と市町村レヴェルの条例が競合した場合に両者の関係はどうなるのか︑また条例による指定
を一切しないという運用は許されるのか︑は問題となろう︒
(2)
建築物の高さ等の算定
これは︑法別表第三倒欄の﹁制限を受ける建築物﹂に当るか否かの判定にかかわる重大な問題である︒
﹁軒の高さ﹂は︑令二条1項七号で︑﹁地盤面から建築物の小屋組文はこれに代わる横架材を支持する壁︑敷げた又
は柱の上端までの高さによる︒﹂とされている︒木造の場合は判定が容易だが︑その他の構造の場合︑更に︑素材や工
法にかかわらず︑片流れ屋根の場合等どう処理するのか問題になる︒
仙台市では︑軒の高さにつき︑木造の場合は敷桁まで︑コンクリート造及びコンクりlトプロック造では構造体の
スラプ天端まで︑鉄骨造では︑はり天端までの高さとし︑片流れ屋根の場合︑水上側の高さを測ることにしている︵図
2参
照 ﹀
︒
また︑﹁建築物の高さ﹂については︑令二条1項六号で︑﹁地盤面からの高さによる︒﹂とされている︒ただし︑同号
ロによって︑階段室︑昇降機塔︑装飾塔︑物見塔︑屋窓等で︑それらの水平投影面積が建築面積の八分の一以内の場
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
七
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
n
<lti'tii'.tl
図2. 軒高の算定
[建築と社会686号 24頁より]
地銀而
八
(8)
~は日影規制附象となる郎分 図3. 高さの算定
[『日影図作成の演習と実務J8頁を参考にした]
合には︑五メートルまでは高さに算入されない︒五メートルを超えた場合︑階段室等の高さのすべてが算入されるの
一部
に争
いが
ある
が︑
仙台
市で
は︑
か︑五メートルを超えた部分のみの高さが算入されるのか︑
一般
的な
例に
なら
っ
てすべて算入される︑としている︵図3
参照
﹀︒
なお︑﹁軒の高さ﹂と﹁建築物の高さ﹂のいずれにおいても問題となる﹁地盤面﹂は︑令二条2
項の
それ
であ
る︒
更に︑﹁軒の高さ﹂に関連して︑﹁この軒高の規定は︑高さが一
0
メートルを超えるが軒高は七メートル以下︵かっ二階以下﹀という建築物について︑第一種住居専用地域内に生じさせる日影が法文上規制対象にならない︑という矛
盾をもたらしている︒﹂という指摘がある︒しかし︑法五六条一項で︑第一種住居専用地域内においては︑建築物の高
さは
︑
一
0
メートルを超えてはならない︑とされ︑右の指摘中でも触れられていたように︑階数︵令二条1項八
号﹀
の
面からの制限も働くので︑仮に︑別表第三の文言を右の引用文の論者のように読んだとしても︑問題となる場合はご
く限られるだろう︿軒の高さ七メートル以下︑高さ一
0
メートルを超え︑階数が二以下で︑かつ法五五条2項に該当する建築物﹀︒この点︑仙台市では︑軒高七メートル以下かつ階数二以下であれば︑高さが一
0
メートルを超えても法五六条のニの規制対象とはしない︑と理解している︒
(3)
日影を測定する水平面等
日影を測定する水平面の高さは︑平均地盤面を基準にしてそこから了五メートルあるいは四メートルと定められ
る︒﹁平均地盤面﹂は﹁当該建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面﹂︵法別表第三後註﹀であ
り︵図4参照﹀︑既出の令二条2項による﹁地盤面﹂とは異る︒
法五六条の二1項に関しては︑以上の﹁本文﹂関係の他︑﹁ただし書﹂関係がどう理解されているかの説明が必要だ
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
九
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
平均地盤耐
H==千(内+S2+SJ+ 札 I==Ii+ 川 +14)
S,はaabbで固まれる断面積。 S2以下もこれに準ずる。
図4. 平均地盤面の算定例
[建築東京165号36頁より]
、
、 村銀区域
一 〜 二 与 i 二 一 i;t.t~lK域外→ −
ムitト!
恒 星 i
。
(10) 図5.
[建築と社会686号26頁より]
が︑それらは︑後に本稿二節以下で触れる︒
法五六条の二4項関係
4項は対象区域外の建築物が対象区域内に日影を出す場合︵図5参照﹀の規定だが︑これについては︑日影を生じ
させる対象区域が第一種住居専用地域の場合を含め︑同項の対象となる建築物は一
0
メートルを超えるものである点に注
意が
必要
であ
る︒
4項の﹁冬至日において︑対象区域内の土地に日影を生じさせるもの﹂という文言は必ずしも明確ではない︒﹁冬至
日﹂とあるが︑真太陽時の八時から一六時と限定されるのか否か︒﹁対象区域内の土地﹂とあるが︑どの高さでのそれ
か︒これは︑確認申請図書の内容として建築基準法施行規則一条1項の紛項の図書が必要か否かという判定にかかわ
る問
題に
なる
はず
であ
る︒
右の点︑仙台市では︑あまり厳密に意識されていない︒それというのは︑右規則一条1
項の
ω
項の﹁
附近
見取
図﹂
等から︑対象区域の近くに︑高さ一
0
メートルを超える建築物を建築しようとする確認申請であることがわかり︑日影の影響が懸念されるのに日影図が添えられていない場合には︑とりあえず︑﹁念のために日影図を出してもらう﹂と
いう運用がなされ︑それに関係者が従っている為である︒
法五六条の二3項関係
3項
は︑
1項による規制の緩和を定め︑大別二つの緩和理由をあげ︑細部の規定を政令︵令一三五条の四の二︶に
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
委ねている︒建築規制によって日照を確保する必要の少ない場合と︑地形の関係で日影による実害を出さない場合に︑
12)
あるいは︑敷地境界線を実際よりももっと敷地の外側にあるとみなし︑あるいは︑平均地盤面を一般原則によって測
定したものよりももっと高いものとみなして規制を緩和する︑というものである︒
(1)
﹁み
なし
敷地
境界
線﹂
たいわゆる﹁みなし敷地境界線﹂の引き方は︑
の意向もあきらかにされ︑それに従い︑ 令一三五条の四の二l項一号は︑敷地が道路等に接する場合︑敷地境界線は実際より外側にあるとみなす︒こうし
一部
で︑
﹁閉
鎖式
﹂︿
図6﹀によるものの利点が強調されたが︑建設省
一般に﹁発散方向﹂によるもの︵図7︶が採用され︑仙台市でも︑後者の方
法に
依っ
てい
る︒
道路等にかかる場合︵図8
﹀に
は︑
また︑当該建築物自体の敷地は直接道路等と接しないが︑敷地境界線から五メートルあるいは一
0
メートルの線が一部に道路等の内に限って規制の対象から除くという扱いがみられるが︑仙台市
では︑緩和していない︒
(2)
﹁み
なし
平均
地盤
面﹂
令一三五条の四の二1項二号では︑﹁隣地文はこれに連接する土地で日影の生ずるもの﹂という文言︑特に︑﹁連接
する土地﹂と︑﹁日影の生ずるもの﹂という部分が問題になる︒
仙台市では︑﹁連接する土地﹂という文言からは特に限定せず︑冬至日の真太陽時八時から一六時までに︑原則的な
平均地盤面をもとに︑そこから一・五メートルあるいは四メートルの高さとして出した測定面に影をつくるすべての
敷地を検討対象とし︑それらの敷地ごとに﹁みなし平均地盤面﹂を算出することにしている︒
日影規制の執行と執行を通じて口比たその問題点
肉6. 「閉鎖式jによる緩和
r
r
臼影図作成の演習と実務J28頁より]図7. 「発散方向」 による緩和
[『日B居留作成の演習と実務J27瓦より]
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点 緩和はしない
道 路
図8.
[建築と社会686号25頁より]
四
また︑仙台市では︑令一三五条の四の二2項に定められた︑平均地盤面
(14)
の特例を定める﹁規則﹂を設けていない︒同条1項二号で処理出来ない事
例は︑法五六条の二1項ただし書での処理が考えられてい討↑
四
法五六条のニ2項関係
右の
2項にいう﹁二以上の建築物﹂には︑それらが法二条一号の﹁建築
物﹂でありさえすればすべて含まれる︒また︑﹁同一の敷地内に二以上の建
築物が:::﹂という文言から︑これら複数建築物はお互いに﹁用途上不可
分﹂︵令一条一号﹀の関係にあることが前提されている︑という一般的な理
解が仙台でも採られている︒
関連する︑建築基準法施行令の一部改正︵昭和五二年政令第二六六号︶と建築基準法施行規則の一部改正︵昭和五二年建設省令第九号︶も同日からの施行である︒
手近な所では︑米沢隆志・渡辺弘之﹁建築物の防災の強化と日影規制の創設﹂時の法令九八三号一頁以下︒
昭和
五二
年一
O月二八日住指発第七七一号特定行政庁あて建設省住宅局長通達この点︑林崇之﹁中高層建築物の日影規制について︿その@︶﹂建築東京︿東京都建築士会犠関誌﹀一六人号︵七八年一O
月︶
一
四
l
一七頁︑特に一六|一七頁の条例制定状況一覧表が大変容考になる︒﹁︹七八年六月時点で︺この条例制定済の三七団体のうち︑二九団体︿一都二人県︶は県単位の一本化条例であり︑管内の市で別に条例を定めているのは六団体︿一道五県︶である︒﹂ハ右同誌一四頁﹀ ︵1︶
︵2︶
︵3︶
︿4﹀
︵5﹀ なお︑右の論文を引用する際︑以下本稿中では﹁林論文﹂と表記する︒
﹁第一種住居専用地域︑第二種住居専用地域及び住居地域については︑住宅地として良好な環境を確保することが必要であること
にかんがみ︑原則としてその全域を対象区域として指定することが望ましい︒﹂﹁近隣商業地域及び準工業地域は︑必要に応じて対象区域とするものとし︑高い容積率が定められている区域及び今後とも住宅以
外の用途の建築物の集中立地が見込まれる地域は︑原則として指定しないことが妥当と思われる︒﹂︵いずれも註ハ3﹀所引︑住指発第七七一号︶
ただし︑関係者の話によれば︑宮城県の条例が近隣商業地域と準工業地域につき︑仙台市内のそれのみ対象指定したのは︑直接
的には仙台市側からの働きかけに基づく︑県と市の協議の結果である︒
岡市開発局計画部都市計画課の資料︵仙台市企画局調査統計課編﹃仙台市統計書・昭和五六年版﹄二三二|二三三頁﹀によれ
ば︑一九八O年一二月三一日現在︑岡市の各用途地域の面積等は左衰の通りである︒ ︵6︶
都市計画区
蟻面
積
市街
化区
域の
用途
地域
別面
積︿
来指
定地
域は
存在
せず
﹀
市街
化区
域面
積
市街化調整区域面積
業
工業
専用
近隣商業
業 一 住 専 ニ 住 専
住 居
商
準 工 業
工
二三
七−
−二五八
−一
八七
一 一
ハ一
二・
八%
﹀ 一 三 三 三 九 二 八
O
八 二 六 五 四 二 一 三 回
一一
・二
%﹀
一ハ
三一
7−
一%
︶一
︵六
・八
%と
︵六
・九
%﹀
一︵
五・
五%
︶一
2
一・
五%
と︿
一了
三%
﹀
一一
八四
︵7︶ ︹仙台市は全域が都市計画区域︒右衰の数字の単位は一Oヘクタールで︑単位に満たない部分は四捨五入︒︵
後の数字による市街化区域面積全体に対する各用途地域の割合︒︺
なお︑東京都での条例については︑林論文︵その③﹀︑建築東京一六七号二四頁及び中島雄幸・岡本好弘﹁中高層建築物の日影規
制及び建築紛争の予防と調整に関する都条例について﹂ジュリスト六七三号審照︒大阪府での条例等につき︑大阪弁護士会編﹃日照権判例・和解事例の分析﹄︵別冊NBL六号﹀三四頁以下参照︒
註︵
4﹀所引の林論文︿その④﹀によれば︑石川県と金沢市︑香川県と高松市というこ組が問題になるという︒﹁香川県条例には条例全体についての市条例委任条項が見られず︑また︑石川県条例では日影規制についてのみ建築主事を置く市町村に委任して
いる︒﹂︵林論文︵その④﹀︑建築東京一六八号一四頁﹀という理由からである︒
ただし︑香川県条例と高訟市条例とは︑対象地域と規制値のいずれの点も同一内容を定めている︒これに対し︑石川県条例と金 ︶内は︑四捨五入
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
五
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
一 六
︵8︶ 沢市条例は︑右二点いずれについても異った内容を定めている︒が︑石川県の担当者の話︵電話照会による︶では︑県と市で十分連絡をとってそれぞれの条例を作り︑県条例は金沢市以外の地践でのみ適用されている︒実務上は問題になっていないわけであ
る︒
筆者自身網羅的調査をしていないが︑梶原茂・楠本安雄﹃建築紛争処理の法と実務﹄一七七頁によれば︑一九八O年末現在︑横
浜市︑静岡県︑及び山形県で日影規制条例が制定されていない︒筆者の追調査時︵八二年二一月︶にも︑右三自治体についてこ
の状態は変っていない︒横浜市は︑独自の要綱と︑高度地区の指定とを組みあわせた規制を行ない︑静岡県は︑法五六条のことは異る独自の日影規制を
要綱で行なっているようである︒山形県では特別な独自規制をしているわけでなく︑作業が遅れるままに今日に至ったというこ
との
よう
であ
る︒
法律論としては︑条例による指定を一切しないことも許される︑と筆者は考えている︒
例えば︑滋賀県では五メートルを超えた部分のみ算入する︑としている︒︵建築と社会︵日本建築協会機関誌︶六八六号三O
頁 ︶
林論文︵その①﹀︑建築東京一六五号三三頁︒この点︑大阪府等の理解も同様である︒︵建築と社会六八六号二四頁﹀
﹁地盤戸川﹂は﹁:::その︹建築物の︺接する位置の高低差が三メートルをこえる場合においては︑その高低差三メートル以内ごと
の平均の高さにおける水平面﹂︵令二条2項︶とされるのに︑﹁平均地盤面﹂は本文に引いたように︑高低差が大きくても単一で
あり︑同一敷地内に複数棟の存在する場合も︑当該一敷地に︑一つの﹁平均地盤面﹂があると一般に理解されている︒︵建築と社
会六八六号二七頁以下﹀
林論文︵その①﹀︑建築東京一六五号四一頁での林崇之氏の見解︒
昭和
五二
年一
O月三一日住指発第七七八号特定行政庁あて建設省住宅局建築指導課長・市街地建築課長通達に参考として添
付された﹁日影規制における測定線の設定方法について﹂による︒右資料は︑﹁測定線:::を設定する場合は︑下記の方法によら
れたいよとの言葉ではじまり︑
B 4版五枚にわたって︑多数の図をまじえた詳細な指示を行なっている︒
近畿地方に限つての調査だが︑それによれば︑伊丹市と尼崎市がこうした緩和を行なっている︒︵建築と社会六八六号二八頁︶
﹁規則﹂が作られていない為︑建築主倒が八万円︵八二年一二月現在︶の許可申請手数料を負担させられる場合があり得るわけで
ある
︒
つまり︑土地に定着する工作物のうち︑①屋根及び柱若しくは壁を有するもの︑②これに付属する門若しくはへい︑③観覧
のための工作物又は︑④地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所︑店舗︑興行場︑倉庫その他これに類する施設︵鉄道及び
(16)
︵9︶
︵ 叩 ︶
︵U︶
〆画、 I""、
13 12.
、 旬J 、J
︵M︶
︿時
︵ 時 ﹀
﹀
軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋︑プラットホームの上家︑貯蔵槽その他これに類する施設を除く﹀をいっ
て︑
建築
設備
を含
む︒
右の①に該当するか否かの境界事例では争いがあるようである︒ただし︑島田信次・関哲夫﹃建築基準法体系︵増補三訂版﹀﹄一
七頁及び一九頁註一が︑清水一郎﹁建築基準法上の建築物﹂︵遠藤浩ほか編﹃建築の法律相談﹄七六頁﹀は︑犬小舎も建築物に含まれると言っている︑と判断するのは誤解だろう︒
なお︑日影規制との関係では法五七条1項及び法六O条3項による適用除外に注意が必要である︒
二節
規制執行の手続
施行の準備
﹁日影規制﹂施行への対応として︑まず最初に︑法改正以前の要綱等の処理をみることにする︒
仙台市では︑先に﹁はしがき﹂註︿1﹀で引いた﹁仙台市日照等に関する建築指導要綱﹂が一九七三年七月一日か
ら実施されていた︒この要綱の内容は︑全文を本稿末尾に資料ーとして掲げたので詳細の説明は略すが︑当時全国の
数多くの自治体で作られた﹁日照要綱﹂類の多くと同様︑確保すべき一定の日照時聞をかかげ︑それの﹁確保されな
い建築物の関係者:::の同意書﹂等を求め︑更に︑﹁仙台市は︑この要綱にしたがわない建築行為に対して必要な措置
を講じ協力を行わないことがある﹂とするものだった︒
こうした要綱類に対する建設省の態度は︑例えば︑法五六条の二施行直前の通達中で︑端的に次のように示されて
いる
﹁日照保護に関する条項をもった条例︑指導要綱が既に定められている例があるが︑もとより日照保護のための建 ︒
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
七
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
ノ\
築制限は財産権の制約であることから法律の定めるところによりこれを行なうべきであり︑法律の定めによらな
(18)
い条例︑指導要綱により実質的に財産権の制限を行なうことは従来から法制上問題があるところであった︒今回
の法改正により日影規制の基準ができたので既往の条例︑指導要綱は︑少なくとも日照の基準に関する限りその
存在理由を失うこととなると考えられる︒既往の条例︑指導要綱は日照の基準以外にも日照保護に関し種々の内
容を含むものであるが︑これらについて建築主の理解を前提として社会的に妥当な範囲で指導を行なうことはと
もかく︑法第六条に基づく確認の要件としてこれらの内容を残すことは法律の趣旨に反することとなるものと考
えるので︑その取扱い及び運用については十分留意されたい︒﹂と︒
﹁仙台市日照等に関する建築指導要綱﹂は岡市での法五六条の二関係の条例︿宮城県建築基準条例六条の二︶の施行
︵一九七八年一二月一日︶以降も短期間存続したが︑翌年一月一六日︑﹁中高層の建築物の建築に係る電波障害等に関
する指導要綱﹂︵昭和五四年一月六日仙台市告示第二号︑本稿末尾資料2参照﹀の実施にともなって廃止された︒右新
要綱は︑その名称には電波障害対策を正面に出しているが︑標識の設置︵四条﹀︑説明会の開催等︵五条︶︑調整︵八
条︶といった項目から明らかなように︑中高層建築物をめぐる紛争の予防及び処理のルl
ルを
まと
めた
もの
であ
る︒
﹁日照基準﹂や﹁同意書﹂や︑要綱に従わない建築主等に対する﹁必要な措置﹂云々の規定は無くなり︑先に引いた
通達に適合するものとなっている︒が︑日影規制との関係でも︑右新要綱が︑敷地がどの用途地域に有るかにかかわ
らず︑すべての中高層建築物︵高さ一
0
メートルを越えるもの︒要綱二条二号﹀に適用され︑説明会での説明事項の一つ
︑﹁
建築
に伴
って
生じ
る周
辺の
生活
環境
に及
ぼす
影響
::
:﹂
︵要
綱五
条
3項五号︶の中には日影問題が含まれる︑
という点で︑なお独自の意味を持っていることへの注意が必要である︒
次に︑﹁日影規制﹂施行へ向けては︑担当者ハ仙台市建築指導課職員﹀の研修が︑一九七八年の夏頃から再三繰り返
され︑岡市での施行間もない七八年の冬至日当日にも︑真北の測定の仕方等を含めた日影図作成の実地の研修が行な
われ
た︒
なお︑既に述べたように仙台市で﹁日影規制﹂が実際に動き出すのは︑七八年一二月一目だった︒従って同日以降
﹁着工﹂する場合︑法五六条のこの基準に適合していない限り︑違反建築物となる︒確認手続の日数や︑工事準備の
日数を考慮し︑岡市では︑周年一
O
月一日以降の受付の確認申請には︑必要な場合日影図を添付させることにした︒規制執行の組織
﹁日影規制﹂の動き出した時点︵七八年一二月﹀で︑担当部局は既出の︑建築指導課であったが︑後七九年四月︑同
課から建築審査課が分かれ︑﹁日影規制﹂に関しては︑規制基準に適合しているか否かという点を︑建築確認の仕事を
うけもち︑建築主事を配している後者が分担し︑前者は︑特定行政庁の権限である法五六条の二1項ただし害関係の
処理を実質的に分担することになった︒
一九八二年一二月現在︑建築審査課は︑課長以下専任職員約三
O
名︑建築主事は課長を含め四名で︑四名中一名は︑市内全域の予定建築物の構造関係の審査に当り︑他の二名は︑市内を四分した二地域ずつを担当し︑担当地域内の予
定建築物の構造関係以外の審査に当っている︒残り一名は課長で︑課全体の職務を総轄するとともに︑他三名の主事
の休みの際それに代わるという仕組である︒
1項ただし書許可の実質的処理に当る建築指導課は︑八二年一二月現在︑課長以下専任職員約三
O
名︒同課は︑右日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
九
施条 行例 表1
着工確
認 日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点二O
E・邑
法五六条のニに限らず︑建築基準法上のただし書許可全般の実質的処理等を職務と
して
いる
︒
(20)
~
着工i
者 ヱ ー
規制執行の手続
条例施行軍
確認
.
日影の基準を有効にチェックすることは︑原則的には法六条︵建築確認﹀の運用に
よって︑例外的には法五六条の二1項ただし書の許可運用によって可能になる︒
(1)
建築確認
確認 且
条例E
施行
2日影規制の対象となる建築物の敷地は︑ごく例外的な場合を除き都市計画区域内
①
@
@
にあり︵従って︑法六条1項四号参照﹀︑規制対象となる建築物は一定の高さを超え
るものであり︵従って︑法六条1項二号及び三号参照﹀︑更に対象となる建築物の形態との関連でそれらが﹁特殊建築
物﹂であることも多く︵従って︑法六条l項一号参照﹀︑結局︑後にみる一部の例外を除き︑日影規制にかかわる条例
施行後の建築確認を通じて日影規制が執行されるわけである︒
条例施行前の建築物をも視野に入れ︑ある特定建築物の︑建築確認︑着工及び条例の施行日という三時点の前後に
よって場合わけをしてみた︿表l
参照
﹀︒
表1の①②の場合︑建築主事は確認審査の際︑法令上の権限としては︑日影関連のチェックをすることが出来ず︑
チェックの前提となる資料の提出を求めることも出来ないはずである︒仙台市では︑先にみた建築指導要綱が七三年
七月から実施されており︑また︑既述のように︑条例施行︿七八年二一月﹀間近の確認申請︵周年一
O
月一日以降受付分︶には︑日影図の添付を求めたが︑これはあくまで︑行政指導としてであった︒それに︑現存の建築物全体の中
でこれら行政指導の時期の確認に係る建築物よりも︑それ以前の確認に係る建築物の方がはるかに多い︒
①の場合︑日影基準に適合しない建築物が着工されることが有る︒このように︑日影規制の動き出す前に着工し︑
規制基準に適合しない建築物が︑日影規制に係わる︑いわゆる﹁既存不適格建築物﹂であり︑それらには日影規制の
適用が除外される︵法三条2
項 ﹀ ︒
①の場合には︑条例施行後の増改築等︵法三条3項三号﹀の際にチェックを及ぼすことになり︑こうした処理は︑
後に︑③の場合の一部として考察出来るはずである︒
②の形が実行された場合︑本来条例施行後︑再度建築確認を求めるべきではないか︑という点での争いを別として︑
これは既に日影規制の動き出した後の着工であるため︑その建築物が日影の基準に反していれば︑①と異り︑違反建
築物
にな
る︒
最後の③の場合でのチェックが︑日影規制執行の最も基本的なものである︒③に該当する場合は︑確認申請の契機
となる︑予定された行為︵建築等﹀の内容︑建築物の形態︑及び敷地のある地域の性格を指標にして︑表2
のよ
うに
分類
でき
る︒
表2の
O
印部分に対応する措置として︑仙台市では︑本稿一節でみた︑関係法令に対する理解を前提に︑確認申請者むけの解説の小冊子︵﹁仙台市の日影規制について﹂︶を作成している︒
注意すべき点に限ってその内容に触れれば︑日影規制に係わる提出図書として︑﹁配置図﹂と﹁日影図﹂が求められ
ていること︵ただし︑両者の兼用可﹀︒前者には︑二五
OO
分の一都市計画図または日時計での実測による真北の方位
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
表 2
~
法1防火地域・準防火地域号〜6条31項号 4 号 1号〜左 3号以4 外号新 築
。 。 。 。
建 増
築 10 m' を
。 。 。 。
超 え る 築 改築
10 m' (可 (イ)
移転
。 。
× x以 内
大 規 模 な 修 繕
。
× (吋。
x (司大規模な模様替
(22)
×印は確認不要)
<O印は確認必要,
の記入の他︑敷地境界線︑規制緩和に係わる敷地の接する道路等の位置や幅等の記入が求められている︒後者では︑
小冊子の文面だけからは︑第二種住居専用地域三
O
分ごと︑その他の地域一時間ごとの︑いわゆる時刻日影図を求めている︿ただし︑実際の運用では︑同時に等時間日影の線の記入も求めているようである︶︒そして︑申請に係る敷地
が市内のどの地点にあっても︑太陽方位角︑太陽高度︑影倍率は︑北緯三八度三
O
分の数字を統一的に採用している︒提出図書の内容は︑法六条8項をうけた規則一条によったものだろうが︑日影の測定間隔など︑同条1項の紛項の指
示内容と必ずしも一致していない︒
仙台市での︑以上のチェックを可能とする
O
印部分のうち︑新築の場合を除けば︑残りはいずれも︑従来の建築物の存在を前提にしている︒こうした場合を︑従来の建築物が︑日影の基準に適合している場合と適合していないハ既
存不適格建築物の︶場合とに二分すれば︑前者では特別の問題はないが︑後者では︑当該増改築等の結果︑適用除外
は終り︑建築物全体が日影基準に適合するよう手を加えることが求められるわけである︒この際︑適用除外を終らせ
る契機を示している法三条3項三号の規定中に︑﹁移転﹂の文言が入っていないことは問題となり得るだろう︒
建築確認の必要とされないもの︵表2切
ω
紛糾﹀も︑建築基準法の︑日影規制を含めた実体規定に適合することが求められている︒この限りで︑都市計画区域外に小さな一般的家屋を新築する場合等と同様である︒
増改築や移転︑大規模な修繕や模様替の行なわれようとする建築物が日影の基準に適合しているものである場合︑
大規模な修繕や模様替︵紛糾﹀では︑日影に変化がないので問題は生じない︒しかし︑増改築や移転︵切
ω
﹀で
は︑
この場合︑増改築や移転にかかわる部分の床面積が一
0
平方メートル以内とごく小さいので︑一般
的に
はこ
のよ
うに
ならないが︑ごくまれには建築物の全体の日影が基準に反するものに変ることもあり得る︒
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
ニ四
これに対し︑増改築あるいは︑大規模な修繕や模様替の行なわれようとするのが︑日影規制に係わる既存不適格建
(24)
築物である場合︑切
ω
例悼のいずれであれ︑右の行為を契機に適用除外が終り︵法三条3項三号﹀︑従来の不適格部分の手なおしを伴わない限り︑当該建築物が違反建築物に変わる︒ただし︑法三条3項三号中に﹁移転﹂が入っていな
いことが問題になるのはここに於ても同様である︒
(2)
1項ただし書許可
日影基準のチェックは︑法五六条のニ1項ただし書許可の運用によっても行なわれる︒
一節
で触
れて
いな
い︑
1項ただし書の規定がどう理解されているかという点を︑許可手続をみる前に概観しておこ
ぅ︒このただし書は︑特定行政庁を許可権者とし︑これが︑﹁土地の状況等により周囲の居住環境を害するおそれがな
い﹂と認めれば︑法五六条の二l項本文︵同条3項等で緩和される場合を含め︶の基準に適合しない建築物について
も︑﹁建築審査会の同意﹂を得て許可を与えるという内容である︒ここで一番問題になる︑﹁土地の状況等により周囲
の居住環境を害するおそれがない﹂という判断の基準については︑法五六条のニ3項をうけた令二ニ五条の四のこに
おける緩和の精神と同様に︑日影の落される土地が︑将来とも日照を必要としない場合と︑地形から日影の点で実害
を出さない場合とが考えられている︒ただし書中に︑﹁土地の状況等により﹂という文言のあるのに適合した理解と言
えよ
う︒
許可申請の手続については︑日影規制に限らず︑建築基準法の許可一般について︑法︑令︑規則いずれも明定して
いず︑仙台市では︑岡市建築基準法施行細則一五条によって定められている︒
法五六条のニ1項ただし書許可の場合︑提出図書は規則一条1
項の
ω
項と紛項︑すなわち︑確認申請の際の日影チェックの場合と同様で︑配置図及び日影図︵両者の兼用可﹀とされている︒ただし︑右細則一五条で︑必要に応じ
これら以外の図書類の提出も求め得るとしている︒
なお︑許可と確認との関係では︑許可を得た後に︑確認申請をし︑確認を得てはじめて着工するという順になるの
だが︑仙台市では︑確認申請をしようとした際︑日影の点で確認の条件をみたしていないと注意され︑許可を求めて
くる場合が少なくないようである︒
許可と確認との関係では︑先の表2の
MW
ω紛糾の場合の中に︑法六条の規定から確認は必要とされないが︑法五六
条のニ1項ただし書許可の必要とされる場合の含まれていることがくれぐれも注意されるべきである︒
仙台市において︑今日︑1項ただし書許可の求められる圧倒的多くの場合は︑新築ではなく︑増改築等の場合︑し
かも︑日影に係わる既存不適格建築物の増改築等の場合であり︑こうした傾向は仙台に限ったことではないようであ
2一節でみた法五六条の二項の理解から︑同一敷地内に複数の建築物が存在する場合︑それらはすべて一の建築物 る
とみなされる︒そして︑それが既存不適格建築物であるなら︑先にみたように︑複数棟中のどの一棟についてであれ︑
またどんな軽微な工事であれ︑増改築等を行なえば︑それを契機に日影規制の適用除外が終る︵法三条3項三号︶と
考えられているので︑また︑そうした場合︑1項ただし書が︑従来の建築物の不適格部分の是正をせずに処理出来る
残された唯一の途として理解されているので︑既存不適格建築物の増改築等と1項ただし書許可の申請とがむすびつ
くの
であ
る︒
仙台市では︑東京都の︑﹁日影に係る既存不適格建築物の増改築に関する許可にあたっての一括審査基準﹂︵本稿末
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
二五
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
二六
尾資料3参照﹀に依拠してこうした許可申請を処理している︒
(26)
このご括審査基準﹂がどのような考え方で作られたかは︑東京都の担当者が以下のように説明している︒が︑こ
こで何よりも大切な大前提は︑既存不適格建築物の増改築等の許可にあたって︑1
項た
だし
奮の
︑﹁
周囲
の居
住環
境を
害するおそれがない﹂との判断につき︑﹁原則として現状をベlスとして増改築部分の影響を考慮すればよい﹂と考え
てい
るこ
とで
ある
︒
﹁一
括審
査基
準﹂
の﹁
第一
敷地
面積
等の
条件
﹂の
うち
︑
ω
敷地面積一定
規模
以上
の:
::
基準
﹂に
つい
ては
︑﹁
ー
と
ω
建蔽率については法五九条の二︑令一三六条の﹁総合設計﹂での数字を参考にし︑ω
容積
率に
つい
ては
︑﹁
特
に数字の根拠はない﹂が︑以上全体として︑﹁要するに土地の利用率が高くないことを要求したもの﹂だとしている︒
﹁2
日影
の基
準﹂
のう
ち︑
ω
は﹁主
とし
て北
側隣
接地
に配
慮し
た規
定で
﹂︑
ω
は﹁主として東西側の隣地に配慮したもの
﹂で
ある
︒﹁
3外壁の後退距離﹂は﹁主として相隣問題対策として﹂考えられている︒
﹁第二一定規模以下の:::基準﹂については︑﹁交通上︑安全上:::支障がない︑あるいは︑良好な住居の環境を
害するおそれがないと認めて許可﹂するという︑法五二条4項や法五五条2項各号を参考にしたという考え方が基本
であ
る︒
﹁
l増改築の規模の条件﹂で﹁一・二倍﹂とされているのは︑用途不適格の場合の緩和︿令一三七条の四︶
を参
考に
し︑
﹁3外壁の後退距離﹂の趣旨は第一の基準と同様だが︑敷地規模が小さく︑日影の基準が厳しくなって
いるので︑第一の場合より緩和したとする︒が︑﹁2日影の基準﹂の内容が何故こうなったのかの説明は特になされ
てい
ない
︒
この﹁一括審査基準﹂は︑実務の第一線に立ち︑運用の実情に通じた者でなくては作れない︑文字通り苦心の賜物
と評価し得るものだろう︒ただし︑本稿筆者としては︑二重の意味でこの基準に疑問を持っている︒
第一は︑基準作成の大前提となった法五六条の二l項ただし書の理解に対する疑問である︒この点︑筆者は別稿で
論じる予定であり︑また︑そのごく要点は三節でも触れる予定である︒
第二に︑仮に︑この基準作成の大前提になった︑﹁現状をベiスとして増改築部分の影響を考慮すればよい﹂という
1項ただし書の理解が正しいとしても︑そうした前提の下で︑﹁一括審査基準﹂が︑﹁敷地面積等の条件﹂﹁増改築の規
模の
条件
﹂﹁
外壁
の後
退距
離﹂
とい
った
︑
一般的によりよい環境を守るのに寄与する規定であることは承認できても︑
﹁日影﹂と直接かかわらぬこれら諸点を︑しかも︑別個独立の﹁日影の基準﹂とならべて問題にしている点に疑問を
感じているのである︒これらの規定が︑許可に付される条件だと考えても︑﹁法の目的に適合し︑行政目的のために必
要最小限度﹂とは言えないのではなかろうか︒
もっとも︑東京都の右基準は︑これに適合していれば︑特定行政庁が他の申請と一括して建築審査会の同意を求め
るという基準︵だからこそご括審査基準﹂︶であり︑この基準に適合しないものにも個別審査の途が残されているわ
けで
ある
︒
仙台市では︑こうした東京都の基準に依拠して処理を続けている︒ただし︑岡市では︑申請件数が東京都ほどには
多くなく︑建築審査会に一括して同意を求める事務処理上の必要もないところからか︑当初右基準の趣旨を必ずしも
正確にとらえず︑建築関係者等に対し︑これが唯一の許可基準であるとの誤解を生じさせたようである︒
︵1﹀梶原・楠本﹃建築紛争処理の法と実務﹄一七ニ頁に紹介された︑参議院建設委員会調査室作成七八国会︹昭和︺豆一年九月建基
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
ニ七
日影規制の執行と執行を通じて見たその問題点
二八
法改正参考資料による数字を転載すれば︑左表の通り︒
(28)
日 日
関 認
定係是つ も の 一
一
四
一
九 一五
そ照日民住 そ 日 民住
の の 照
他 ・ の 他 ・ の
署 つ に
日
雪
内容す同と 署つに日 同ま
内容すとめ
て て
L、 し、 るも るも
の の
ー. 一
.
ー.ー・ ー/」』、 /、・− 一
0八 一 八 O七
︵2︶
︵3︶ 要綱の文言だけでは疑問も生じるが︑別掲︿資料1﹀の要綱中の表2の数字は︑世帯単位で確保されるよう運用された︒
仙台市では︑﹁必要な措置を講じ﹂たり︑﹁協力を行なわない﹂という事態にまで達した事例はなかった︒建築関係業者の側に不
満はあったようだが︑結局︑業者の営業上の配慮等から指導がうけ入れられたのだろう︑というのが︑要綱運用に携わった市職員の意見である︒
一節
註︵
3︶所引︑住指発第七七一号
この間︑︵正確には︑後にみる理由で事実上︑七八年一O月一日から翌年一月一五日まで︶要綱と法五六条の二それぞれによる規
制が併存していた︒
こうした内容の条例や要綱については︑梶原・楠本﹃建築紛争処理の法と実務﹄の一七一頁以下ハ梶原執筆部分︶が審考にな
1法五六条のこの場合の建築物の高さ算定とは若干異り︑令二条項六号ロで︑階段室等は建築面積の八分の一以下なら︑五メー る ︒
トルではなく二一メートルまで高さに算入されない︒
大まかに区分すれば︑建築審査課は建築主事の権限とされる事項を扱い︑建築指導課は特定行政庁の権限とされる事項を扱って
いる︒建築主事︑特定行政庁それぞれの所掌事務については︑島田・関﹃建築基準法体系﹄一OO
頁及
び一
O
五|
一
O八頁の表
が参
考に
なる
︒
都市計画区域とその南側の区域外との境界線をはさみ︑北側に市街化区域︑南側に都市計画区域外の地域があって両者が隣接し︑南側にある建築物が境界線を超えて北側に日影を落す場合︒ただし︑少なくとも︑仙台市の場合︑こうした仮定の成り立つ ︵4︶
︵5﹀
︵6﹀
︵7︶
︵8﹀
︵9﹀