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(1)

マレイン酸の鉛塩に関する研究(第2報):酸性マレイ ン酸鉛の性質に就て

著者 物延 一夫, 山田 正盛

雑誌名 福井大学工学部研究報告

巻 4

号 1

ページ 86‑92

発行年 1955‑09

URL http://hdl.handle.net/10098/6362

(2)

86 

マ レ イ ン 酸 の 鉛 塩 に 関 す る 研 究 ( 第 2 報) 酸 性 マ レ イ ン 酸 鉛 の 性 質 に 就 て

物 延 一 夫 ・ 山 田 正 盛

Studies 00 Lead Salts of Maleic Acid 

( H )  

Kazuo MONOBE

, 

Masamori YAMADA 

Lead acid maleate crystal decomposed in  water according to the equation (1)  Pb (HM)2

← →

PbM 

H2M ....・H・...・H・...・H ・...・H ・...・H ・...…...・H・. (1)  But in  the presence of  maleic acid following equilibrium was established in the  solution 

Pb (HM)2 ~ Pb++ 十 2 HM‑...ー・・・・ー・・・・・・・・・・ー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (2)  The electro conductivity of soIutions containing various quantity of Pb (HM)2 and  H2M was measured

, 

and above facts were demonstra ted.  (M

Maleic Acid Radical) 

I  緒 言 並 び に 実 験 法

著者等は第1報1)でマレイン酸鉛にマレイン酸を適当な条件で作用せしめる事により,未Tど文 献に記載のない酸性マレイン酸鉛の生成する事を述べた。本報はその性質に就て若干検討した結果 である。

第1報で、は酸性マレイン酸鉛の生成機構に就いて考察を行った口其の際 (1)式の解離を仮定 し,共存するマレイン酸鉛とマレイン酸とのモル比によって般性塩D生成する条件を説明した。

Pb (HM)2 

Pb++ 

2 HM‑・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (1)  (Mはマレイン般基〉

即ち (1)式はある量C未反応マレイン肢の存在によって左辺に進み,酸性マレイン酸鉛は析出す ると考えるのであるが,今結品醍性マV イン酸鉛を取って水に溶解する時は未反応或は過剰のマレ イン酸は存在しないから,醍性マレイン段鉛は (2)式

Pb (HM)2 

Pb M  H2M  ...ー...ー...ー・・・・・・ー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (2)  の左から右に進みPbMを沈澱する。此の反応は同時に遊離のマレイン酸を生成するから,その増 加につれて右辺から左辺への反応も進み,マレイン酸D或る濃度で、平衡を保つもりと考えられる。

そして第1報の考察の部でも述べた様にPbMが沈澱として存在する条件では Pb(MH)2は結晶と して析出しないから, 今 回 休 に ( )を,溶液中の物質に aq,を附けてとれらむ反応を書き表わ

(3)

マ レ イ y 階 の 鉛 塩 に 関 す る 研 境 ( 第 2報〉 87 

すと (3)式の様になる。

a[Pb(HM)2J‑

(a‑b)[PbMJ 

bPb(HM)2aq. 

(a‑b)H2MaQ. 

. . . . ・

H

. ・

(3)  (a, bはモル数〉

(3)式に於て溶液中の鉛を分析する事により bを,又沈j離を分析する事により (a‑b)を出 す事が出来る。そこで(i )一定量の Pb(HM)2に添加する7]'(の量をかえて沈澱する PbM, 溶 液中の Pb(HM)2及び H2M ([)長の関係を明らかlこし (ii)

i

容液の一部を取りコーノレラウシユプ

リツヂでそのままの濃度並びに稀釈した溶液に就て電気伝導度を測定した。

とれらの結果から溶液中白マレイン酸と目安性マレイン駿鉛とは緩衝液をたしている事,回全性マ レイン酸鉛は強電解質である事を実証し第1報に於ける機構考察が正しいもりである事を論証しよ うとするもりであるo

又問責性マレイン酸鉛D溶解度並びに熱分解に就ても試験を行った口

( i )  ' . k と の 反 応

予備試験に於て酸性マレイン酸鉛に水を添 )J

u

し恒温槽中 250C,6hrsの捜#により (3)式の 反 応 が 完 全 に 右 へ 進 む 事 を 確 め 第 1表

7 K

と の 反 応

た。そ乙でaを一定として添加す る水D量を変えて上記の処理を行 った凸生成物の組成は第1報に示 す如くである。

第1表に示された溶液中の酸 性マレイン酸鉛,マVイン酸のモ ル濃度と測定した pHとの関係を 第2表に示したロ

│ 試 軒 ( ノ

k │

沈 澱 │ 務

Fxp・Pb(HM)! Pb乱1 I PbCHM)'! I  H~Ml ((g H 〉 (C.C.〉 モJLX102  PモbJ(L

HXM10ア・.~ I 

JLX1V │ 

6.5601  0.3267  1.1733  0.3267  2  6.5601  400  0.4064  1.0933  0.4064  3  6.5601  300  0.5772  0.9228  0.5772  4  6.5601  200  O. 7296  O. 7704  O. 7296  5  6.5601  100  O.  9050  0.5950  0.9050 

第 2表 溶 液 モ ル 濃 度 と pH

C= (a ‑b)モル/立, C2= bモル/立 H2M  Fb(HMア

l

Exp. 

Cl X 1Q'!  C2X 10'! 

耐 一

ト…[…/…

0.32  1. 13  0.40  1.03  0.63  1.00 

│ 1 0 0 │ 1 0 5   1. 30  0.87  0.2827  2.5 

0.3716  2.4  0.6255  2.2  0.9470  2.0  1.5210  1.9 

(ii)  電 気 伝 導 度 の 測 定

酸』性マV イン酸鉛とマレイン酸との溶液に於て,夫々の比伝導度をKa,K怖とすれば溶液D全 土ヒ伝導度

K

は各比伝導度の和である=即ち

Ka 

+  K

= K

伝導度測定結果と濃度との関係を第 3表 1"""'5に示した。

(4)

88  福 井 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 4巻 第 1

第 3表 濃 度 と 電 気 伝 導 度 (1 ) 第 1 Exp1 

H2M  Pb(HMア 稀釈度"'.I,21"..l

CI 10'!  C10

1/2  1/4  1/8  1/20  1/40 

112  1/4  1f20 

0.6534  0.3267  O.  1634  0.0817  0.0327  0.0163 

(2) 

1. 0160  0.5080  0.2540  0.0508 

2.3466  1.1733  0.5867  0.2933  0.1173  0.0587 

第 1表 Exp2  2. 7340  1.3670  0.6835  0.1367 

l

圭比伝導度 Kx lOfi 

454.3  254.3  148.1  83.1  35.9  20.

518.0  306.9  175.6  41.5 

稀 釈 度

3) 1 Exp3 

1.9240  0.9620  0.4810  0.0962 

1表 Exp4 

HzM  j PKHM

│全比伝導皮 C1x 10・ Czx 1 O'~ K x 10 a0760  646.1  1.5380  404.3  0.7690  234.2  0.1538  59.0 

1/2  1/4  1/20 

く5)

1/20 

3.6430  1.8240  0.9120  0.1824 

3.8520  1.9260  0.9630  0.1926 

848.0  501.0  315.4  92.6 

1表 Exp5  9.0500  5.9500 

0.4525  0.2975  1262.0  177.5  第3表に基づいてマレイン

酸及び般性マレイン酸鉛の夫々 のモル濃度と金比伝導度

K

との 関 係 主 図 示 す れ ば 第1図にな o

町泊

区拘

7ω 

副拘

開】

ま泊

ω 企 比 伝 噂

︑ ︐

︐ ︐

w f l l  

r '

第 1図 濃 度 と 全 比 伝 導 度

4Ca  4c

, 

‑E:トマνイン醍

4 ・酸性マνイン酷鉛

3.5  0.5  1. 1.5 

今第1図の一部を拡大した 第2図に於て縦軸に並行線を引 けば,夫々の曲紘との交点はマ

V イン酸或は目安性マレイン酸鉛 の同一濃度で異なる全土ヒ伝導度 K CD{直を示すo例えばlC,4C,  曲線との交点At.A4 ([)各点は マVイン酸の濃度は同一である が

K

の値は異なっている。此の

異いを.dKを以て表わせば.dKは 4

∞ 

Ah A4に於て共存する醍性マ

レイン酸鉛の濃度。異いに原因 している事は明らかで、ある。

よってAt. A4の点に於て 夫々水平棋を引けばlC1曲紘に 対応するlC2曲綿との交点A/, 4C1曲線に対応する4C2曲線上の

A/

は夫々共存する駿性マレイ ン酸鉛の濃度を与える。即ち両 濃度。差(.d

C

2)と.d

K

とり値は図

上で、求められる。同様にしてマ τ漉度〈モル/;立)xl

2.0  2.5  3.0  4.0 

(5)

マ レ イ y酸 の 鉛 塩 に 関 す る 研 究 ( 鵠 2報〉 89 

‑e‑マレイン酷

1

唱』階性マレイン陸鉛

ω

! 加

第 2図 濃度と全土ヒ伝導度(拡大〉

1cl 

460 

4∞ 

'100 

2∞ 

1. lt, 

(x 103

l ー糊(~"'I'1I.)

xlC1  1

m m m

正‑伊導↑1J‑JJJ

QJ

H H M E J F 2 5 7 I A s Q U A

湾 ﹃ 同 船 一 十 川 川

l

! 口 一 度

剖 一

k m

‑ m ‑

川二山一町一漕

X 6 6 :

J m

│ 一 ﹂

刷 訓 4 1 川一取

鉛 一 V D O D o

控一哩一位‑抱一

9

ベイ 山一 の

2 n u L H v h J 1

d J J 一 時

イ円山│い│川│川

l 1 1

一 ン

J E ' n u Q u n d

D

I Q U 7 l n M

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J4iFD7tA

Ln uA aQ d

J

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b

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マ 一

ι 一

x

凶仏し仏n

L仏門ム仏一川 : l I l l i

E A

A

7t

71

11

1l

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MM

J R J R d

つム門LRUQU

J R

HH EN

‑2 23 34 46 6E E

L ‑ ‑ c

x

一仏札止仏仏仏札口仙一君

主白圃1lli11111il!5

H

一図 線点

l l t l i t

一 吉 ト 一

2

の一 AE AE

nGGbb

一占

F

額四 第曲 上一

C~ 102Cl 20~ I~Cl 1021KX10│lM伝導く分度〉 0.293  0.278 

0.293  0.082  0.196  41  209.2  O. 769  O. 728  一

O. 769  0.257  0.471  74  157.1  0.963  0.912 

0.963  0.268  0.644  90  139.3  1.538  1.483  1.538  0.428  1.055  110  104.2  2.347  2.222  一 2.347  0.653  1.569  126  80.3 

120 

νイン酸濃度の差(JC1)に原因す るdKの値も図上で求められるo

との様にして得られたものが 第4表及び第 5表である。

第4,5表の結果を図示すれば、

第3図となる白マレイン酸の方は 早くより共通イオンC影響が表わ れているが,酸性マレイン酸鉛白 方は著者等D実験範囲ではその影 響を受けていない。

第 3図 濃度と比伝導度

2∞ 

It

120 

比 "

度 "

10')

1  oLI---0~.4----~O.~8----~1.2

一一一+揖麗〈モル/立)10'  4Tレイン酸

‑6‑融性イン酸鉛

1. 2

1.5 

第 4図

濃度む平方根と分子伝 導度とり関係

. 司 』 旬 ー 

1 1.2  1. 0.2  0.4  0.6  0.8 

ー一一一‑‑‑.."tI鹿の平方根v'e10 

(6)

90  福 井 大 学 工 学 部 研 究 報 告 筋4巻 第 1

更に夫々の分子伝導度と濃度。平方根との関係を図示すれば第4図とえEる。

之によれば酸性マレイン酸鉛の分子伝導度MaはコーノレラウシユD平方根則によく従い,

Ma=α ‑

s

,/

なる関係を満足しているo M= α を図上より求めると M∞ =159.0となる。

マレイン酸の方はとの平方根則に従がわない。

考 察

第2表に於てj容

i

夜のpHと濃度との関係を見ると

H+ 

C2/C= 定 数

を示しているD 之は酢酸と酢酸ソーダとの緩衝溶液に見られると類似の現象であり,溶液中の酸性 マVイン酸鉛は可成り大きな電離度を以て Pb++ と 2HMーに解離し,マレイン酸と共に緩筒液を 形成しているものである。酸性マレイン酸鉛

ο

大きな電離度はそり比伝導度が第3図に示された範 囲で、は濃度並びにマレイン酸の存在によって影響を受けない事からも判かる口

又電気伝導度調1]定結果から第4図に於て醗性マレイン酸鉛はコールラウシュの平方根則をよく 満足する口この事は酸性マレイン酸鉛が強電解質で、ある事を更に証明するもりである。之によって (1)式。平衡は確証され, との式による醗性マレイン酸鉛の生成機構も合理的なもりと謂う事が 出来る。

W  酸性マレイシ酸鉛の溶解度並びに熱分解

酸性マレイン酸鉛θ性質の一部としてそのマレ イン酸に対する溶解度を測定したがそり前に測定値 のお,u'っていないマレイン酸鉛の水に対する溶解度を 検べたD 国 体

Vi

容解度測定の常法によって得た温度

と溶解度との関係は第6 第 5図 表む如くである。 2.1

300C に於ける溶解 度には Weiss,Downs  2.0 

氏等の測定値:.!lはあるが 著者等り値も夫によく一 致しているo

次に酸性マレイン酸 鉛は水に対しては既述。

様にそりまま溶解しない がマレイン酸水溶液に対 しては溶解する。そこで マレイン酸D濃度並びに 温度を変えて,そのj容解 度を調Ij定した結果は第7

第 6表マイレン酸鉛の水に対する溶解度 温 庭 口

c I 

10  20  30  溶解・度くg/10 oln

I ω 1  

0.047  2

操 度 と 溶 解 度

i容 16

!¥0.5 

一 一 一 揖 震 度(N.)

0.7  0.9  1.

(7)

マ レ イ ン 酸 D 鉛 塩 に 関 す る 研 究 く 第2報〉 91 

第 6図 温 度 と 溶 解 度 表 , 第 5,6図のま日〈であるo

1.5 

マ 叫

i !

i 丁

‑ d 日 一 ﹂ 一

.4

a41nHU

ι 4 1

7lnD

M i l l

i h t t 1

H

( U U

レ 液

解 一

ー ー

ー コ

オ 叫

1 1

イ 溶 溶 一

5

I E J

マ 水 る 寸

1 1 1 了

山 町

叶 │

一 │

性 酸 す 一

U

酸 ン 対

H I

i hi ll

i

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¥ デ 一 1 7

2 5

L

i k

¥

l

l

nu nu

Ud z d

lt'U31lqd417

7

¥q C

3 4 7 9

第 一 哩 緯

一 t

t

j ぺ

//AU 

/ A U  

3.0 

2.5 

2.0  0.25 

今第 7表 lこ於て溶解度の対数logS と温度 tとの関係を図上に点穣すると 第6図D点椋D様な1本D直線が得ら

0.2D  れる。とれから温度 tと溶解度Sとの 聞に次θ実験式で表わされる様な関係 泊まある。

0.15 

S = ABt  A

, 

B は[1[数

f L  

一 一 一 → 塩 度

この式からの計算値を第7表に実験値

10 

'.10  と比較して記載したD

熱分解実験は試料約 O.5gを秤量 ピンに精秤し電気恒温槽中で各温度に

1

時間加熱しそり重量減を測定した。

その結果は第8表及び、第7図の如くで

温 度 く 。C) 試 料 くmg) 重量蹴 Cmg) 向 上

C%)

50  70  170 

571.1  138.6  24.3 

ある口 第 8表

JU

qJ Mn

'l

nL   Rd  

n o  

rJ u n H M

n

U F h u n H U

之によれば

1 6 0

0

C

では酸性マレイン酸鉛D マレイン酸の部分が大体無水物になるD

CHCOOH  CH‑CO¥ 

1 1 ¥   C H C O O ¥ C H C O O ¥ ¥  

) P b  

一一歩

) P b  

)0 

+  H

2

CHCOO/  CHCOO/  /  CHCOOH  CH‑CO/  / 

之 が

1 7 0

0

C

で、は無水マレイン酸が取れて

PbO

を残す反応になる。

PbO

(8)

92  福 井 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 4巻 第 1

但し之にはいくらかり副反応も伴う らしく

1 8 0

0

C

に於ても

PbO

生成反応は 完結しない。

酸 性 マ レ イ ン 酸 鉛 の 性 質 を 検 討 し た。

( i ) 結晶酸性マレイン酸鉛を諸量

( [ )  7 1

くと反応せしめ生成物の変化を検討し たD

(ii)  水溶液0電気伝導度を測定し

20 

16 

12 

E

(%) 

第 7図 温 度 と 重 量 減 C%)

A:マレイン酸が無水物となる点

B:上。無水マνイン股がとれる点

P b  (HM)2 己 P b + +

2HM

たる解離を実証する結果を得た。

'

130 1 170 180 

τ温 度(OC) (iii)  酸性マレイン酸鉛むマレイン

酸水浴

i

夜に対する溶解度,熱分解等に就て研究した。

附記 本研究費む一部は文部省科学研究助成金によった。認に謝意を表する(昭和28年11月, 高分子学会北陸支部会講演〉

(1)  福井大学工学剖l研究報告 3NO.2 77く1954)

(2)  J.  M. Weiss

, 

C. 

R .  

Down; J. 

A .  

C.  S.  45 2341  (1923) 

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