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博 士 ( 農 学 ) 中 津 智 史

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 中 津 智 史

学 位 論 文 題 名

北海 道 にお ける 低 アミ ロ小 麦 の発 生と そ の要 因に 関 する研 究 学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  低アミ ロ小麦 は子実中 に含まれ るロ― アミラーゼによってデンプンが分解され,アミ ロ値( アミログ ラム最 高粘度) が大き く低下したもので,うどんやパンヘの加工適性が 劣るた め品質上 の大き な問題と なって いる.低アミロ小麦は気象および品種的に北海道 で多く 発生する とされ ているが ,その 発生要因については十分解明されていなかった.

、本研 究は低ア ミロ小 麦の発生 防止を 目的に,北海道内における低アミロ小麦の発生実 態を調 査し,発 生パタ ーンを類 型化す るとともに,発生に及ぽす各種要因を解析した.

さらに ,低アミ ロ耐性 母材を検 索し, 耐性品種を選抜するための検定法を提案した.ま た , 栽 培 法 お よ び 収 穫 法 に よ る 低 ア ミ 口 小 麦 の 発 生 軽 減 策 も 検 討 し た .

1.低アミ 白小麦 の発生実 態およ び要因

  これ まで、 低アミ口 小麦の発 生に関 する全道 的な調 査事例はなかった。そこで,1989

‑‑19 91年にチ ホクコム ギを対 象に,全道的な低アミ口小麦の発生実態調査を行った。そ の結 果,1989年 と1990年は発 生が少 なかった が,1991年は発生率が39.0%に達した.特 に 十 勝, 網 走 の道 東 地 方で 多 く ,石 狩 , 上 川, 空 知 支庁 の 道 央地 方 で 少な かっ た.

  低ア ミロ小 麦の発生 パターン を明らかにするために成熟期前後のa−アミ・ラーゼ活性 の推 移を検討 した結 果,活性 の推移 は気象条 件およ び品種により変動するがおよそ次の 3つ に類 型 化 でき た . パター ン1: 成熟期前 は胚乳 部で低pIの グリー ンばーア ミラー ゼ (Amy‑2)が 高活性 を示すが ,成熟 期には低 下し, その後も低く維持される.この場合,

低ア ミロ小麦 は発生 しない. パター ン2: 成熟期以 降に降 雨に遭う と休眠 が打破され穂 発芽 が発生す るとと もに,主 として 胚部で高pIのモル トローア ミラー ゼ(Amy ‑1)が発 現す る(Post‑maturity sproutingロ‑ amylase:PolvfS).穂発芽により低アミロ小麦が 発生 する一般 的によ く観察さ れるパ ターンで ,これ には成熟期以降の気象条件と品種の 穂発 芽耐性が 大きく 影響する .パタ ーン3:成熟期 前後に −アミ ラーゼ 活性が高く維 持さ れ低アミ ロ小麦 となるも ので, 海外では 認めら れているが,北海道でこれまで確認 され ていなか った. このパタ ーンの ロ―アミ ラーゼ の発現要 因として ,以下 の3つの可 能性 が示唆された. (a)成熟期前にもかかわらず休眠が打破されてAmy.1が高活性を示す 場 合(Pre‑maturity sproutingロ‑ amylase:PrMS).(b)Lancerなど において 発芽に由 来 し ないAmy.1が 発現 する 場合(Pre‑maturity ‑ amylase:PMAA),(c)登熟後期 に高 活性 のグリー ンロー アミラー ゼ(Amy ‑2)が残存 する場 合(Retention of perlcarp  ‑ amylase:RPA)であ る.

‑ 319 ‑

(2)

2.低アミロ耐性の検定法と品種評価

  北海道においては気象条件および品種により成熟期で高 −アミラーゼ活性を示すこ とが確認された.また,成熟期の −アミラーゼ活性と成熟期以降の穂発芽耐性とは必 ずしも一致しないことから,両者は異なる形質と判断された.これまで育種における検 定では成熟期以降の穂発芽耐性に主眼が置かれてきたが,この方法では成熟期で高 ― アミラーゼ活性を示す系統も選抜される危険性が高い.本研究では,低アミロ耐性品種 の開発のためには,成熟期のぱ―アミラーゼ活性が重要な選抜指標であることを指摘す るとともに,その検定法を提案した,成熟期の ―アミラーゼ活性の検定法として最も 信頼性および再現性が高いのが,人工気象室を用いた気象処理試験である.また,成熟 期前の気象条件が低温高湿傾向である十勝農試における圃場での検定も活用できる.た だし,年次間差が大きいので,複数年の検討が必要である.

  この2つの形質について,現状の秋播小麦品種の低アミロ耐性を評価すると,主要な 秋播小麦品種の中で低アミロ耐性が弱いのはチホクコムギで.ホロシリコムギやホクシ ンはこれよりやや耐性が高かった.ただし,ホロシリコムギについては穂中子実の吸水 速度が遅いことが穂発芽耐性に大きく寄与していることが示された.最も低アミロ耐性 の高い品種は北系1354であった.現在育成中の北見72号は北系1354を片親にもち,低ア ミロ耐性も北系1354に準じている.Satantaもこれに準ずる耐性を持つ.Lancerの穂発 芽耐性はホ口シリコムギ,ホクシンより明らかに高かったが,前述のように成熟期で高 い −アミラーゼ活性を示したため,低アミロ耐性は低いと評価され,交配母材として 利用する.には不適である.

  春播小麦の中で,ハルユタカは穂発芽耐性が低いためにPrMSを示すことが明らかとなっ た.耐性が高いと思われるのは北系春617で,春のあけぼの,ゼンコウジコムギ,0 S21‑

5もそれに準じていた.これら春播小麦の低アミロ耐性は,北系1354と同等かそれより 高い可能性が示唆された.したがって,今後これらの遺伝資源を導入することにより秋 播小麦の低アミロ耐性の向上が期待される.

3.栽培法や収穫法の改善による低アミロ小麦の発生軽減

  栽培法の改善による低アミロ小麦の発生軽減策として最も重要なのが収穫時期である ことを明らかにした.収穫時期が遅れるほど休眠が低下するとともに降雨に遭う頻度が 高まるため,穂発芽し易くなり,低アミロ化する危険陸が高まると判断された.したがっ て,適期収穫が重要である.また、気象条件から低アミロ小麦の発生を予測し,それに より収穫順序を組み立て,効率的に収穫機や乾燥施設を運用することが有効である.倒 伏した小麦は子実水分が全般に高く維持されるために,穂発芽して低アミロ化する危険 性が高い,したがって,適切な施肥法および播種量により倒伏を回避することが重要で ある.

  低アミ口小麦が発生した場合,正常な小麦と混合すると,aーアミラーゼにより正常 な小麦のデンプンも分解されることから,受け入れ段階で低アミ口小麦を仕分けし,正 常な小麦と区分して乾燥,流通させることが重要である.このためには簡易かつ迅速に 低アミロ値を検定する必要がある.これには本研究で開発されたオートアナライザーに よるロ―アミラーゼ活性測定法が適用可能となる.今後,本法により生産物の低アミロ 検定が行われ,仕分け収穫,乾燥が実用化されれば,実需者の望む高アミ口小麦の流通 が 可 能 と な り , 遭 産 小 麦 に 対 す る 需 要 の 維 持 , 拡 大 に 寄 与 で き る .

(3)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

松井博和 本間   守 千葉誠哉 大崎   満

学 位 論 文 題 名

北海道における低アミロ小麦の発生とその要因に関する研究

   本論文は,図41 ,表 23 ,引用文献104 を含み,7 章からなる総頁150 の和文論文 である.別に参考論文 10 編が添えられている.

   低アミ口小麦は子実中に含まれるa ―アミラーゼによってでん粉が分解される ため,アミログラム最高粘度(アミロ値)が大きく低下したもので,うどんや パンヘの加工適性が劣るため品質上の大きな問題となっている.低アミロ小麦は 気象および品種的に北海道で多く発生するとされているが,その発生要因につい ては十分解明されていなかった・

   本研究は低アミロ小麦の発生防止を目的に,北海道内における低アミロ小麦の 発生要因を解析した.さらに,低アミロ耐性母材を検索するともに,耐性品種を 選抜するための検定法を提案した.また,栽培・収穫法改善による低アミロ小麦 の 発 生 軽 減 策も 検 討 し た . 得 ら れ た 結 果の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る .

1 .北海道における低アミロ小麦の発生要因

   低アミロ小麦は道内ではおよそ3 年に一度発生し,特に道東地方で多かった・

低アミロ小麦の原因であるローアミラーゼ活性の推移は以下の3 っに類型化され た.パターン1 :成熟期前は胚乳部で低pI の&―アミラーゼ(Amy ‑2 )が高活性 を示すが,成熟期にはほぼ低下する.気象条件が良好であればその後も低く維持 され,低アミロ小麦は発生しない.パターン2 :成熟期以降に降雨に遭うと休眠 が打破され,穂発芽とともに胚部で高pI のローアミラーゼ(Amy ‑1 )が発現する・

穂 発 芽 に よ り 低 ア ミ ロ 小 麦 が発 生 す る 例 (Post‑maturity sprouting ・

amylase : PoMS) で,気象条件と品種の穂発芽耐性が大きく影響する.パターン3 :

成熟期前後にa −アミラーゼ活性が高く維持され低アミロ小麦となるもので,海

外では認められているが,北海道でこれまで確認されていなかった.このパター

ンはさらに 3 つのタイプに細分される.(a) 成熟期前でも休眠が打破されてAmy ‑

(4)

l

が発現する(Preーmaturity sproutingロ‑ amylase:PrMS).くb)Lancerなどに おいて発芽に由来しをい

Amy

・1が発現する(Pre‑maturitya‑amylase:PMAA),

(c)

登 熟期 に発現して いた

Amy ‑2

が残存す るく

Retention of perlcarpa

amylase

:RPA),である.

2.

低アミロ耐性の検定法と品種評価

  

北海道においては気象条件および品種により成熟期で高 ―アミラーゼ活性を 示すことが示された.したがって,低アミロ耐性品種の開発のためには,成熟期 以降の穂発芽耐性とともに,成熟期の ―アミラーゼ活性が重要な検定指標であ る.

  

秋播小麦の低アミロ耐性を評価すると,耐性が弱いのはチホクコムギで,ホロ シリコムギやホクシンはこれよりやや耐性が高い.最も高耐性の品種5よ北系

1354

である.春播小麦の中でハルユタカは耐性が低かったが,北系春

617

,春のあけ ぼの,ゼンコウジコムギ,

OS21‑5

は耐性が高く,北系1354と同等かそれ以上であっ た.したがって,これら春播小麦の遺伝資源を導入することにより秋播小麦の耐 性向上が可能となる.

3.

栽培・収穫法改善による低アミロ小麦の発生軽減

  

収穫時期が遅れるほど休眠が低下するとともに降雨に当たる頻度が高まるため,

穂発芽し易くなり低アミロ化する危険性が高まる.したがって,適期収穫が重要 である.倒伏した小麦は子実水分が全般に高く維持され,穂発芽して低アミロ化 することが多いため,適切な施肥法および播種量による倒伏防止が重要である.

  

低アミロ小麦が発生した場合,正常な小麦と混合すると, ―アミラーゼによ り正常な小麦のでん粉も分解されてしまう.したがって,受け入れ段階で低アミ ロ小麦を仕分けし,正常な小麦と区分して乾燥,流通させることが重要である.

このためには小麦受け入れ施設で簡易迅速に低アミロ値を検定する必要がある.

これには本研究で開発されたオートアナライザーによる

a

ーアミラーゼ活性測定 法が適用可能である.これにより,実需者の望む高アミロ小麦の流通が可能とな り,道産小麦に対する需要の維持,拡大に寄与できる.

  

以上のように本研究は,北海道における低アミロ小麦の発生要因を解明すると ともに,効率的に品種改良を進めるための検定法を示し,品種間差を明らかにし た.さらに,栽培・収穫法改善による低アミロ小麦の発生軽減策を提示した.こ のことは学術的にも,品種開発や栽培技術向上にも貢献しており、道産小麦の品 質向上に寄与するものである.

  

よって審査員一同は,中津智史が博士(農学)の学位を受けるに十分な資格を 有すると認めた.

参照

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