博 士 ( 薬 学 ) 大 關 健 志
学 位 論 文 題 名
ヒ トジ ヒドロ ジオール脱水素酵素 (DD4) 発現の 変動要因の解析:転写制御機構に基づぃたアプローチ
学位論文内容の要旨
庄諭
ジ ヒド ロジオ ール脱水 素酵素(DD)は,多環 式芳香 族炭化水 素(PAH)の中間代 謝物で あ るPAH lrans‑ジ ヒ ドロ ジ オ ール のPAHカ テ コー ル ヘ の脱 水素 反応をNAD(P)゛依存 的に触 媒する 酵素であ る.ま た,DDは種 々のケ トン含有 薬物の還元に関与している薬 物 代 謝 酵 素で も あ る. ヒ ト にお い て は ,DD活 性を 持 つ 分子 種 と してDDl‑DD4の4分 子 種お よびtypeJlDDの 計5分 子種が 報告され ている .また, これら の分子種 のうち,
DD4は 肝 に お け る 主 要 なDD分 子 種 であ る . 興味 深 い こと に , ヒト 肝 に おけ るDDの 活 性に は 約40倍 も の個 体 差 が あるこ とが報告 されて いる.こ のDDの活 性の個体 間,
もしく は個体内での変化によルケトン含有薬物の代謝の個体差や発がんりスクの個体差 が引き 起こさ れる可能 性が考 えられる .したが って, ヒト肝におけるDD活性の個体差 の原因 を解明することは重要であるが,その分子機構はこれまで不明であった.そこで 本研究 では, ヒト肝に おけるDD活性の個 体差の 原因をヒ トD.Dイ遺伝子の転写調節機 構 の 観 点 か ら 探 索 し , そ の 分 子 機 構 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た . 第I章:ヒ卜DDイ遺伝王Q転至調節機櫨Q鰹抵
本章で は、ヒ 卜D〇 イ遺伝 子の転写 調節機構を解析するため,先ず,ヒトDDイ遺伝子 の5.・上 流.2220から十441までの領域の塩基配列を解析した.決定した塩基配列を報 告され ている 他のDD分子 種と比 較したと ころ. ヒト砒 P〃DD遺伝子の5|‐上流領域 の・0.9kbから‐0.3kbまでの領域に比較的連続して保存されている塩基配列が認められ.
そこに おける相同性は76%であった.,また,この領域において転写調節に関与する領 域を探 索し,3箇所 の転写活 性化に 寄与する 領域お よび1箇所の転写抑制に寄与する領 域を見 出した .さらに ,その うちの主 要な転写 活性化 領域(領域AおよびB)に作用す る転写 因子に ついて解 析し, これらの領域にはそれぞれ肝転写因子であるHNF4呱HNF4y お よ びHNFlaが 結 合 し .HepG2細 胞 に おけ る ヒ トDD4遺伝 子 の 転写 を 活 性化 す る こ とを明らかにした.
第ll章:ヒ卜DD♂遺伝王Q駈鑓異的塑転蔓活性!ヒ毯櫨Q盤抵
本 章 で は, 肝 に おけ るDD4mRNAの発現 を調節 する因子 として, 第1章におし ゝて同 定した 転写活性化に寄与する因子に加えて,ヒトDDイ遺伝子の転写抑制に寄与する因子
もま た 重 要な役割 を担っ ている可 能性を考 えた, そのため に,ヒ トDD4遺 伝子の 組織 特異的な 転写調節機構を肝以外の組織において転写抑制に寄与する因子に着目して解析 すること を通して .その 転写抑制 抑制因 子が,肝におけるヒトDD4遺伝子の転写調節に おい て も 寄与 し て いる か 否 かを 検 討し た.内 在性のDD4 mRNAの発現の 有無を 指標と して 探 索 した モ デ ル細 胞 で あるHepG2お よび¥CHN細 胞 を 用い て ,両細 胞にお けるヒ トDD4遺 伝子の転 写調節 機構の違 いを比 較検討したところ,細胞特異的な転写調節にお いて も 第I章 で 同 定し た 領 域Aお よ びBが 関 与し て い る こと が 明 らかとな った. さら に,両細 胞におい てこれ らの領域Aお よびBに結合す る転写 因子を解析し,ヒトD,Dイ 遺伝 子 に おけ る 細 胞特 異 的 な転 写 調節 は領域Aおよ びBに 結合す る転写因 子の違 いに よって成 されてい ること を示した .すな わち,肝以外の組織においては,vHNFlが転写 抑制因子 として作用することにより,ヒトDDイ遺伝子の転写は抑制されていることが推 測 さ れ た . 一 方 , 肝 に お い て はvHNF1と同 じ 結 合配 列 を 認識 す るHNFlaがヒ トDD4 遺伝子の 転写に対 して転 写活性化 因子と して主に作用するため,vHNF1の作用は小さい と考えられた.
葱!!! 童!DD4m& 型△登現 量Q個 倥羞Q厘圏Q鰹擾! 遭伝王 変墨圭転蔓国王Q面面塑弖 本 章 では ,第I章およ び第lI章の 検討に より,肝 における ヒトDDイ 遺伝予の 転写調 節に は , 転写 因 子HNF1眦HNF4彊 お よ びHNF4Yが 主 に 関与 し て いる ことが考 えられ た ため,ヒト肝におけるこれらの転写因子とDD4mR.NA発現量との関係について解析した.
先ず.ヒ トDDイ遺伝子の転写調節領域の塩基配列に多型が存在する,もしくはヒトDDイ 遺伝 子 に 作用 す る 転写 制 御 因子 の 遺 伝子 に 多 型が 存 在 す るこ と がDD4mRNA発 現量の 個体 差 の 原因 で あ ると い う 仮説 を 立 て,DD4mRNAの発 現 量 を調 ぺた ヒト肝19検体に おけ る ヒ トDD4遺伝 子 の5 − 上 流領 域 お よび ヒ トH^ザf臨 閉WWaおよ び朋Wソy遺伝 子の 塩 基 配列 とDD4mRNA発 現 量と の 関 係に つ い て 解析 し た .し かし ながら, いずれ の遺伝子においても個体差を説明できる多型は存在していなかったことから,これら。噺夏 説は否定 された. そこで さらに, ヒトDDイ 遺伝子に 作用す る転写因子の発現量が個体 間で 異 な ることがDD4mRNA発 現量の個 体差の 原因であ るとい う仮説を 検証する ため,
ヒ ト 肝19検 体 に お け るHNF1鴎HNF4aお よ びHNF4YmR.NAの 発 現 量 を 定 量 し ,DD4 mRNA発現 量 と の問 の 関 係を 調 べ た, そ の 結果 , 検 討 した 検 体 におい て.DD4mRNA量 と各HNFmRNA量 と の 間に い ず れも 有 意 な相 関 性 が 認め ら れ たこ とか ら,これ らの転 写因 子 の 発現 量 の 違い に よ ってDD4mRNAの 発 現 量 が規 定 さ れて いる 可能性が 示され た, ま た ,ヒト肝 におい て認めら れた様に 各HNFの発現量 が同時 に変化し た時, ヒト DD♂遺伝子 の転写活性へどの様な影響をおよぽすのかを明らかにするために,各転写因 子発現プ ラスミドの量比を保ちつつ,導入量を変化させた時のヒトDDイ遺伝子の転写へ の影 響 を 培養細胞 を用い て検討し た.その 結果, ヒトDD4遺伝子 のエンハ ンサー 活性 は検討した範囲において各転写因子発現プラスミドの導入量依存的に上昇したことから・
ヒト 肝 に おい て も 現象 と し ては 同 様 の機 構 , すな わ ち 同 調的 な 発現を示 すHNFlQ・ HNF4伐 お よ びHNF4Yに よ りDD4mRNAの発 現 量 は規 定 さ れ てい る こ とが 推 測 され た . 以.ヒ,DD活性の個体差の原因をヒトDDイ遺伝子の転写調節機構の観点から探索し,
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薬物代謝酵素活性の個体差の原因となり得る,新しい機構を提出することが出来た
学位論文審査の要旨
主 査 教 授 鎌 滝 哲 也 副 査 教 授 原 島 秀 吉 副 査 助 教 授 紙 谷 浩 之 副 査 助 教 授 有 吉 範 高
学 位 論 文 題 名
ヒ トジヒドロ ジオール 脱水素酵 素 (DD4) 発現の 変動要因の解析:転写制御機構に基づぃたアプローチ
申 請 者 は ヒ ト 肝 臓 に 存 在 す る 薬 物 代 謝 酵 素 の ー っ で あ るDD4の 活 性 に み ら れ る 個 体 差 の 原 因 を ヒ トDD4遺 伝 子 の 転 写 調 節 機 構 の 観 点 か ら 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し , 世 界 的 な 研 究 成 果 を 得 た . す な わ ち , 本 研 究 で は ,DD4の 発 現 量 の 個 体 差 が , 遺 伝 子 の 転 写 制 御 因 子 の 個 体 間 に お け る 量 の 違 い に よ っ て 規 定 さ れ る こ と を 示 し た . 本 研 究 は 薬 物 代 謝 酵 素 の 研 究 .および ヒトに おける毒 性学に有 用な概念を提供するものであり,以下に詳述する よ うに極め て優れ た研究成 果である と評価 される.
( I) ヒ ト DD4遺 伝 子 の 転 写 調 節 機 構 の 解 析
ヒ ト DD4 遺伝子の転写 調節機構を解析するため,先ず,ヒト DD4 遺 伝子の5 一上流領域の塩基配列を決定した.また,この領域において転 写調節に関与する領域を探索し, 3 箇所の転写活性化に寄与する領域お よび 1 箇所の転写抑制に寄与する領域を見出した. さらに,そのうち の 主要な転写活 性化領域(領 域 A およびB )に作用する転写因子につ いて解析し,これらの領域にはそれぞれ肝転写因子であるHNF4a ,HNF4y お よ び HNFla が 結合し, HepG2 細胞に おけるヒト DD4 遺伝 子の転写を 活性化することを明らかにした,
( II) ヒ トDD4遺 伝 子 の 肝 特 異 的 な 転 写 活 性 化 機 構 の 解 析
肝におけ る DD4 mRNA の 発現を調節する因子として,転写活性化に寄 与する因子に加えて,ヒ卜 DD4 遺伝子の転写抑制に寄与する因子もま た重要な役割を担っている可能性を考え,ヒトDD4 遺伝子の肝以外の組 織において転写抑制に寄与する因子を解析した, HepG2 および ACHN 細 胞を用いて,而細胞におけるヒト DD4 遺伝子の転写調節機構の違いを 比較検討 し,ヒト DD4 遺伝子 における細胞特異的な転写調節は領域 A および B と命名した領域に結合する転写因子の違いによって成されて
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いるこ とを 明ら かに した, すな わち ,肝以外の組織においては,領域B にvHNFl が転写 抑制 因子 とし て作用 する ことにより,ヒトゥウぞ遺伝子 の転写 は抑 制さ れて いるこ とが 推測 された.一方,肝においてはvHNFl と同 じ 結 合 配 列 を 認 識 す る HNFla が ヒ ト DD4 遺 伝 子 の 転 写 に対 し て 転 写活性 化因 子と して 主に作 用す るた め,vHNFl の作用は小さいと考えら れた.
(3 ) DD4 mRNA 発 現量 の個 体差の 原因の解析:遺伝子変異と転写因子の 両面 から
肝 に お ける ヒ ト DD4 遺 伝 子 の 転 写 調 節に は , 転 写因 子HNFla, HNF4a お よ び HNF4'y が 主に 関与 して いる ことが 考え られ たた め,こ れら の転 写 因 子 と DD4 mRNA 発 現 量 と の 関 係 に つい て 解 析 した .先 ず, ヒトDD4 遺伝 子の 転写調 節領 域も しく はヒト DD4 遺伝 子に 作用 する転写制御因子 の 遺 伝 子 に多 型 が存 在す るこ とが DD4 mRNA 発 現量 の個 体差の 原因 であ る と い う 仮説 を 立て ,ヒ トDD4 , HNF1 ロ, HNF4a お よび HNF 4y 遺伝 子の 塩 基 配 列 とDD4 mRNA 発現 量と の関 係につ いて 解析 した . し かし なが ら, いず れの遺 伝子 においても個体差を説明できる多型は存在していな かっ たこ とから ,こ れらの仮説は否定された.そこでさらに,ヒトDD ゴ 遺 伝 子 に 作用 す る転 写因 子の 発現 量が個 体間 で異 なる ことが DD4 mRNA 発 現 量 の 個体 差 の原 因で ある とい う仮説 を立 て, ヒト 肝検体 にお ける HNFla , HNF4a お よ び HNF4'y mRNA の 発 現量 を 定 量 し, DD4 mRNA 発 現量 との 間の 関係を 調べ た,その結果,検討した検体において,DD4 mRNA 量 と 各 HNF mRNA 量 と の 間に い ず れ も 有 意 な 相 関 性 が認 め ら れ た こ と か ら , こ れ らの 転 写因 子の 発現 量の 違いに よっ てDD4 mRNA の発 現量 が規 定さ れて いる可 能性 が示 され た, また ,各 HNF の発 現量が変化した時 の , ヒ ト DD4 遺 伝 子 の 転 写 活 性 へ の 影 響を 調 ぺ る ため ,各転 写因 子発 現 プ ラ ス ミド の 量 比 を 保 ち っ つ , 導 入量 を 変 化 させ た時 のヒ トDD4 遺 伝子 の転 写への 影響 を培 養細 胞を用 いて 検討 した ,その結果,ヒトDD4 遺伝子のエンノヽンサー活性は検討した範囲において各転写因子発現プラ スミ ドの 導入量 依存 的に上昇したことから,ヒト肝においても,同調的 な 発 現 を 示 す HNFla , HNF4 ぱ お よ び HNF4'y に よ りDD4 mRNA の 発 現 量 は規定されていることが推測された.
以 上 、 本研 究 は DD 活 性 の 個 体差の 原因 をヒ トDD4 遺 伝子 の転写 調節 機構 の観 点から 探索 しI 薬物 代謝 酵素活性の個体差の原因となり得る,
新し い機構を提出することに成功し,世界的にもユニークな研究を展開 した.分子生化学から毒性学に到る広範な分野で極めて高く評価される.
本論 文『 ヒトジ ヒド ロジ オー ル脱水 素酵素(DD4 )発現の変動要因の解 析: 転写制御機構に基づぃたアプローチ』に含まれる研究成果は薬学に おけ る基礎および応用のいずれにおいても優れており,博士(薬学)の 学位を受けるに充分値するものと認めた.
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