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学位論文題名Molecular Conductors Based on Axially SubstitutedPhthalocyanine with Local IvIagnetic IVIoment of Fem foraNOVelLOW‐DimenSional兀‐dSyStem

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 松 田 真 生

     学位論文題名

Molecular Conductors Based on Axially Substituted Phthalocyanine with Local IvIagnetic IVIoment of Fem     foraNOVelLOW ‐ DimenSional 兀 ‐ dSyStem

(新規低次元死‑d 系としてのFem 局在磁気モーメントをもつ軸配位フタ      ロシアニン分子性導体)

学位 論文内容の要旨

  局在磁気 モーヌ ントと伝 導電子 が共存す る系では 、両者 の相互作 用によ って物性 が大きな変 調を受け る場合 がある。 その代表 的な例 としては 、磁性 不純物を 含んだ 金属合金 に現れる抵抗 極 小 現 象 や 、 マ ンガ ン 酸 化物 系 に おい て 見 られ る 巨 大な 負 の 磁 気抵 抗 な どが 挙 げ られ る 。   近年、分 子性導 体におい ても、3d遷移金属 を導入 し、伝導 電子と局 在モー メント間に相互作 用(n:‑d相 互作用 )を持た せるこ とで、こ れまでの 分子性 導体には見られなかった物性を発現さ せ得る7r‑d系が報告され注目されている。

  本 論 文で は 、 新た なコ1ニ‐d系の構 築を目 指し、ジ シアノ鉄(III)フ タロシア ニンア ニオン

【Fer薑I(Pc)(CN)2]‑を構成成分とする分子性導体を取り上げた。この系では、伝導経路を形成するフ タロシア ニン配位子の中心金属にFem(5= 1/2)を導入している。そのため、結晶構造によらず、

rc‑dの相対配 置が固 定されて いる。フタロシアニンを用いた分子性導体としては、face‑to‑face stack構造 の[M(Pc)]yX型のも のが良く知られているが、この系に局在モーメントを導入しても、

必ずしも 物性は 大きな変 調はうけ ない。 これは、 分子間 の兀一兀およびd‑d相互作用が物性の発 現を支配していることに起因する。これに対し、[Fem(Pc)(CN)2]系では、軸配位子の存在のため、

結晶内で の分子 配列、お よび、中 心金属 のd電 子の配 置はこれ までの平 面型M(Pc)系と大きく異 なる。従って、[M(Pc)],X型の分子性導体では明確になっていないrc‑d相互作用について新たな 視点で調 べるこ とができ 、また新 規物性 の発現も 期待さ れる。中 心金属 の置換が 及ぼす分子お よ ぴ結晶 構造へ の影響は 小さいと 考え

ら れるの で、局 在モーメ ントの導 入が 及 ぼす物 性への 影響は、 中心金属 が非 磁 性 であ るComの 場 合と 比 較 する こと で 直 接 観 測 す る こ と が 可 能 であ る 。   本論文は 五章か ら構成さ れてい る。

n

  第 二 章 で は 、 カ ウ ン タ ー カ チ オ ン がtetraphenylphosphonium (TPP)で あ る部 分 酸 化塩 TPP[Fem(Pc)(CN)z]:について論じた。その結晶構造は、予想通り中心金属がCornのものと同形で あり、フ タロシ アニン配 位子が 一方向に のみ重な りを持 った一次 元系を構築していることが分

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かっ た。 重な り積 分、 高温 部で の熱電能、並びに反射スベクトルか ら見積もられたバンド幅に 関しては、両結晶に大きな違いは見られず、3/4‑filledの金属的なバンド構造を持つことが示唆 されたが、その電気・磁気物性には大きな違いが現れた。

  ま ず、 室温 での 比抵 抗値 は局 在モ ーメ ント を 含むFem塩の 場合 、非 磁性 で あるCom塩の場合 に比 ベ、 約一 桁大 きく なっ てい る。 両結 晶と も 、半 導体 的ぬ温度依存性を示したが、Com塩の 温度 依存性は小さく、低温まで小さな比 抵抗値を保つのに対して、Fem塩は、温度の低下と共に 比抵 抗が 著し く増 大し 、15Kで両 結晶 の比 抵抗 値の 比は9桁に も及 ぷ。 特に 、熱 電能 の急増の 見ら れる50K付近 で 、活 性化 エネ ルギ ーが 大き く変 化す る挙動が見 られた。一方、磁化率測定 では 、Colu塩 が金 属に 典型 的な バウ リ常 磁性 的 挙動 を示 したのに対し、Fem塩では、高温部で キュ リ一 常磁 性的 な挙 動を 示し 、20K付近 で反 強磁 性的 な相互作用 の存在を示す磁化率の減少 が見 られ た。 結晶 内で のFem原子 間の 最短 距離 が7A以上 であること を考えると、直接的な鉄原 子間 の磁 気的 相互 作用 は考 えに くく、この反強磁性相互作用は、伝 導電子を介したものである こと が示 唆さ れた 。さ らに 、Fem塩の 磁気 抵抗 測定 では50K以 下で 、伝 導軸 に垂 直な 磁場をか けた 場合 に、 巨大 な負 の磁 気抵 抗が観測された。磁化率の異方性の 測定結果でも、伝導軸に垂 直な 磁場 をか けた 場合 に、 大き な磁化率を得た。これに対し、伝導 軸方向に磁場をかけた場合 には 、負の磁気抵抗およぴ磁化率ともに 小さな値が観測された。これらの結果を併せると、50K 以下 での比抵抗の増大は、伝導電子の局 在モーメントによるspin‑flip散乱に因るものであり、

磁場による散乱の抑制が巨大な負の磁気抵抗を弓fき起こしていると考えられる。以上の結果は、

Fenr塩で 見ら れる 物性 が7r‑d相 互作 用に よっ て 弓「 き起 こさ れて いる こと を強 く示 唆する。

  第 三 章 で は 、 カ ウ ン タ ー カ チ オ ン がphenyltrimethylammonium (PTMA)で あ る (PTMA)ェ【Mm(Pc)(CN)2] ‑y(solvent)の結晶構造と物性について述べた。これらの結晶は電解酸化で 得ら れた もの であ るに もか かわ らず、その結晶構造は、一見すると カチオンとフタロシアニン ユニ ット が1:1で 含 まれ た単 純塩PTMA[Mrn(Pc)(CN)2]の ように見え た。しかし、その結晶中の 分子 配列 は単 純塩 の結 晶と は全 く異なっているうえ、物性測定から は、高伝導性やバウリ常磁 性な ど部 分酸 化状 態の 形成 を示 唆する結果が得られた。そこで、詳 細に結晶構造を検討したと ころ 、結 晶内 のデ ィス オー ダー した状態にあるカチオンサイトを溶 媒分子が部分的に占有して いる こと が分 かっ た。 フタ ロシ アニ ン配 位子 は 、TPP塩 と同様に、 一方向にのみ重なりを持つ てお り一 次元 系を 形成 して いた 。重なり積分の値はTPP塩に比べて1割ほど大きくなっており、

比抵 抗の 温度 依存 性で は、 高温 部で金属的挙動も観測された。重な り積分の値と熱電能測定の 結果 をTPP塩 のも の と比 較す るこ とで 、こ の結 晶の 部分 酸化 度が おお よそ0.5で ある ことが見 積も られ た。 この 塩の 電気 ・磁 気物性も中心金属の局在モーメント の有無によって大きく異な る。 比抵 抗は 、や はりFem塩 の方が大き く、Com塩と比ベ低温で数桁 の違いが生じた。磁化率測 定の 結果 はFem塩 、Com塩と もにTPP塩 のも のと 非常 によ く似 た挙 動を 示し て おり 、Fem塩に関 して は、 伝導 電子 を介 した 局在 モー メン ト間 の 反強 磁性 的相互作用が観測された。ー方、Fem 塩で は、40K以下 で 、負 の磁 気抵 抗も 観測 され 、rc‑d相 互作用が物 性に大きな影響を与えてい ることが分かる。

  第 四 章 で は 、two‑leg ladder( 二 本 足 梯 子 )構 造の フタ ロシ ア ニン ユニ ット 配列 を持 つ

[PXX] [Fem(Pc)(CN)2]について述べた。この結晶は対成分として、有機ドナー分子であるperi‑

xanthenoxantheneを含 み、PXX及 びフ タロ シア ニン ユニ ット の両 方の 形式 電 荷が0.5の部分酸 化塩で、【PXXlo.5゛[Fem(Pc)(CN)2]。・5ーと表される。この結晶に関しても、TPP塩およびPTMA塩同

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様に、局在モーメントの有無が物性に大きな 影響を与え、Fe 塩において、局在モーメントと伝 導電子間の相互作用が存在することを示唆す る磁化率、およぴ磁気抵抗測定の結果が得られた。

  第五章では、結論として、[Fem(Pc)(CN)2]‑を用いた分子性導体が7r‑d系を構築する上で非常に 有 望 で あ り 、 コ1ニ‑d相 互 作 用 に 基 づ く 興 味 深 い 現 象 を 発 現 し 得 る こ と を 述 ぺ た 。

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学位論文審査の要旨 主査    教授    稲辺    保 副査   教授   佐々木陽一 副査    教授    日夏 幸雄 副査    教授    野村 一成 副査    講師    内藤 俊雄

     学位論文題名

Molecular Conductors Based on Axially Substituted Phthalocyanine with Local IVIagnetic Moment of Fem     foraNovel Low‑Dimens10na1 兀 一 dSyStem

(新規低次元兀‑d 系としてのFem 局在磁気モーメントをもつ軸配位フタ      ロシアニン分子性導体)

  周 期 的 に 配 置 し た 磁 気 モ ー ヌ ン ト を 含 む 導 電 体 は 、 磁 気 交 換 由 来 の 電 子 物 性 や 外 部 磁 場 応 答 電 気 物 性 と い っ た 、 新 し い 電 気 磁 気 複 合 物 性 を 示 す 可 能 性 が あ り 、 現 在 活 発 に 研 究 さ れ て い る 。 申 請 者 は こ の よ う な 導 電 体 を 分 子 性 物 質 で 実 現 し よ う と 、 磁 気 モ ー メ ン ト を も , つ 遷 移 金 属 イ オ ン を 、 伝 導 を 担 う 兀 共 役 系 配 位 子 に 直 接 導 入 し た 導 電 体 の 開 発 を 行 な っ た 。 さ ら に 、 導 電 体 自 身 の 設 計 に つ い て は 軸 配 位 子 を 導 入 す る こ と で 、 特 異 な 兀 電 子 系 の 積 層 構 造 を 実 現 し 、 こ れ ま で の 兀 共 役 系 配 位 子 錯 体 を 用 い た 研 究 と は 一 線 を 画 す 導 電 性 結 晶 を 得 て い る 。 具 体 的 に は フ 夕 口 シ ア ニ ン を 兀 共 役 系 配 位 子 と しS= 1/2の 低 ス ピ ンFemを 導 入 したdicyano(phthalocyaninato)iron(III) (Fem(Pc)(CN):)を用いた物質設計を行い、こ れ を 中 心 金 属 が非 磁性 で あるCo (Pc)(CN)2の 系 と比 較し て磁 気モ ーヌ ント 導入 の効果について調べている。

  申 請 者 は ま ず 、Com系 一 次 元 導 電 性 結 晶TPP[Co (Pc) (CN) : ]2(TPP= 他 ロaphenylphosphonium) のFem置 換 体 の 作 成 を 試 み 、 全 く 同 じ 結 晶 構 造 を 持 つ TPP[Fem(Pc)(CN):]:を得ている。実際、フタロシアニン配位子間の兀―兀相互作用 の 大 き さ の 目 安 と な る 重 な り 積 分 を 、 両 結 晶 の 構 造 デ ー タ か ら 計 算 す る と 、 ほ ぽ 同 じ 値 が 得 ら れ 、 ( :omのFe に よ る 置換 が伝 導 電子 の通 り道 であ る兀 電子 系に ほ と ん ど 影 響 を 与 え て い な い こ と を 示 し た 。 こ の 点 に つ い て は 熱 電 能 や 反 射 ス

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ペク トル の測 定結 果から も支 持さ れ、 両結 晶と も約0.5 eVの幅をもつ兀電子系 から なる バン ドが3/4満 たさ れた金属的な電子系を持つことを明らかにした。し かし 、両 者の 一次 元伝導 軸に 沿っ た電 気伝 導度 の温 度変 化には著しい違いが見 られ る。Com塩 では 全体 に温 度変 化が 小さ いの に比べ 、Fem塩は温度低下に伴う 比 抵 抗 の増 大が 著し く、 特に50K付 近を 境に して 付加 的な 電荷 担体 の散乱 が起 きて いる よう な挙 動が見 られ てい る。 申請 者は 、こ の抵 抗増加が構造変化に由 来 し て いな いこ とをX線回 折実 験に よっ て確 認し てお り、 さら に、 圧力下 での 電気 伝導 度の 測定 を行い 、低 温側 の抵 抗増 加が 圧カ の増 加、っまルパンド幅の 増 加 に よっ て影 響を 受け ない こと を明 らかに して いる 。以 上の こと から 、Fem 塩 で 観 測さ れた 電気 抵抗 の増 大はFemの 局在 モー ヌン トに 由来 する もので ある こ と が 示唆 され た。Fem塩 の磁 化率 も、Pauli常磁 性的 なCom塩 と比 ベ特異 な挙 動を 示し 、特 に絶 対値、 温度 変化 とも に大 きな 異方 性を 示すことを明らかにし た。異方性磁化率については、同様なFem(Pc)(CN):の一次元分子配列を持つ絶 縁性 の単 純塩 を別 途作成 し、 その 測定 によ りこ の分 子に 特徴的な磁化率である ことを明らかにしている。さらに申請者は磁場下での電気伝導度測定によって、

Fem塩 が巨 大な 負の 磁気 抵抗 を示すことを見い出している。この負の磁気抵抗は 付 加 的 な電 荷担 体の 散乱 が起 きて いる と考え られ る50K以 下で 観測 され、 異方 的な磁化率の大きさに対応する負の磁気抵抗の異方性を観測している。っまり、

電気 伝導 を担 って いる兀 電子 系がFe のd電子に由来する磁気モーメントの磁場 による変調に応答しており、この系が新規兀ーd系であることを明らかにしている。

  申請者は上記の導電体に加え、新たに2種のFeユPc)(CN):に基づく導電性結 晶を 開発 し、 その 構造・ 物性 研究 を行 って いる 。ひ とっ は結晶溶媒がカチオン サイトの一部を置換している一次元導電体で、もうーつは梯子型のFem(Pc)(CN):

の 分 子 配列 をも つ導 電体 であ るが 、両 結晶に つい てC0m系 との 比較 を行い 、上 記の系と同様に兀―d相互作用による特徴的な電気伝導度、磁化率、及び負の磁気 抵抗が現れることを明らかにしている。

  以 上申 請者 は、 低次元 分子 性導 電体 への 局在 磁気 モー メントの導入による新 規兀―d系の開発に成功している。特に一次元導電体での巨大な負の磁気抵抗の観 測は この 研究 で特 筆すべ き成 果と 考え られ る。 また 、本 論文の内容の一部は既 に国 際的 に権 威あ る学術 雑誌 に掲 載さ れ、 高い 評価 を受 けている。よって審査 員一 同は 申請 者が 博士( 理学 )の 学位 を受 ける に十 分な 資格を有するものと認 める。

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