博 士 ( 獣 医 学 ) 齋 藤 愛
学位論文題名
Polymorphism of diazepam metabolisminrats
( ラ ッ ト の ジ ア ゼ パ ム 代謝 に お け る多 型 )
学位論文内容の要旨
CytochromeP450(CYP)における遺伝的多型は薬効・薬物動態、薬物代謝に関する系統差、
個体差を弓Iき起こす原因となっている。ジアゼバムはCYPにより代謝を受けるが、雄性ラ ッ ト で は 、CYP2D1、CYP3A2、CYP2C11が 、 それ そ れp位水 酸 化 、3位 水 酸化 、N位脱 メチル化の代謝に関与していることが報告されている。一方で、ラットにおけるジアゼバ ムの薬効には系統差が存在することも報告されている。そこで、本研究では、Wistar (W)、 Sprague‑Dawley (SD)、Brown‑Norway (BN)、Dark‑Agouti (DA)の4系 統 のラ ッ ト に お け る ジ ア ゼ バ ム 代 謝 の 系 統 差 に つ い て 検 討 す る こ と を 目 的 と し た 。
第一 章 で は、Wラ ッ トに お け るジ ア ゼ バムp位 水酸 化 に は高 活性個 体( Extensive Metabolizers:EM)と 低 活 性個 体(Poor Metabolizers:PM)が存在す ること を見出し た。Wラ ット肝ミ クロソー ムを用 いてジアゼバム代謝活性を測定したところ、Wラットの 約83% (15/ 18匹)はジアゼバムp.位水酸化に殆ど活性を示さず(PM W)、一方で約17% の個 体がPMWのおよ そ200倍高い活 性を示すことが明らかとなった(EM W)。 Kineti.cs 解 析 の 結 果 、 ジ ア ゼ バ ムp. 位 水 酸 化 のKm値 はPMWで は23.3彫Mで あ っ た が 、EMW で は6.3皿Mと 小 さ か った 。 ジ アゼ バムp・位水 酸化に ついて、VmaxおよぴKmから、EM Wでは高 最大活性・高基質親和性をもつ酵素が存在することが示唆された。これまでの報 告に より、 ジアゼバムのp位水酸化はCYP2D1によると考えられてきた。しかし、We stern blottingの 結 果 で はEMWとPMWの 肝 ミ ク ロ ソ ー ム に 発 現 す るCYP2D1量 に 差 は 見 ら れな かった 。
第 二章で は、4系統のラ ットに おけるジ アゼバム代謝の系統差について検討した。第1 章 で 示 したWラッ トのジア ゼバムp―位 水酸化の 代謝多 型に加え 、SDおよ ぴBNラヅト は p‐ 位 水酸 化 の 高活 性(EM)系 統 であ り、DAは低活 性(PM)系統で あるこ とが分か った。
ま た 、DAラッ トは高い3位水 酸化活 性とN脱メチル 化活性 を有する 系統で あること も明 ら かにな った。ジ アゼパムp ̄ 位水酸化 におけ るKinetics解析 の結果、ラットEM系統と PM系 統 間 のKm値 の 差 は 、 第1章 でWラ ッ ト のEMお よ びPM個 体 間 に 見 ら れ た 結 果 と 同様で あった。 また、ラ ヅトの 田抗体を用いてジアゼバム代謝の阻害実験を行った結 果 、CYP2D2抗体 によってジアゼバムp.位水酸化が阻害されることが分かった。しかし、
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各ラ ット 系統 に発 現す るCYP2D2量や 、CYP2D2に よっ て代 謝さ れる デブ リソキン4位水 酸化活性の結果からは、ジアゼバムp.位水酸化の系統差はCYP2D2にも起因しないことが 分かった。一方で、CYP2D2抗体によってp.位水酸化が阻害されたことから、この代謝が CYP2D2抗 体と 交差 する他のCYP2Dサブフんミリーによって行 われることが推測された。
第三章では、ジアゼバムp゜位水酸化を行うCYP分子種にっいて同定を試みた。ラット抗 CYP2D2抗体でp.位水酸化が阻害されることから、この抗体を用いて免疫沈降を行った。
得ら れ た蛋 白画 分を 低濃度BISポリアクリ ルアミドゲルのSDS‑PAGEで展開したところ、
p‐位 水酸 化活 性が 高いラット(SD、BN、EM W)にのみ発現する特異的な蛋白質(CYP2DX) が確 認 され た。 そこ で、CYP2DXを単離し、N末端のアミノ酸にっいてシークエンスした ところ、そのアミ丿酸配列はCYP2D3と一致することが分かった。以上のことから、ジア ゼバ ムp. 位水 酸化 はCYP2D3によ っ て代 謝さ れ、CYP2D3の多型がジア ゼバムp.位水酸 化 に お け る phenotypeの 多 型 の 原 因 と な っ て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。
前章より、ジ アゼバムp.位水酸化はCYP2D3によって代謝されることが推測された。そ こ で、 第4章 では 、SD、BNおよ ぴEMWラッ トに おけ る、 ジア ゼバ ムp.位水酸化 の酵素 科学的特徴にっ いて検討した。基質(ジアゼバム)濃度の範囲をより広く0.4〜 400LtMに 設定して代謝活性を測定したところ、p.位水酸化反応のみにおいて基質阻害が起こることが 分かった。
以上の結果により、本研究では、ラット系統間および個体問におけるジアゼバム代謝の 多型にっいて明らかにした。特にジアゼバムp.位水酸化に関しては酵素科学的特徴を明ら かにし、その代謝をCYP2D3が行っている可能性を新たに示した。
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学位論文 審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 助教授 助教授
藤田 伊藤 佐々木 石塚
正一 茂男 宣哉 真由美
学位論文題名
Polymorphism of diazepam metabolism in rats
( ラ ッ ト の ジ ア ゼ パ ム 代 謝に お け る多 型 )
CytochromeP450くCYP)における遺伝的多型は薬効・薬物動態、薬物代謝に関する系統差、
個体差を引き起こす原因となっている。ジアゼパムはCYPにより代謝を受けるが、雄性ラ ッ ト では 、 く:YP2D1、CYP3A2、CYP2C11が、 それぞ れp位 水酸化 、3位 水酸化 、N位 脱 メチル化の代謝に関与していることが報告されている。一方で、ラッ卜におけるジアゼパ ム の 薬効 持 続 時間 はDark‑Agouti(DA)ラッ トで顕著 に短く、 その薬 理効果に ラッ卜 問 で系統差が存在することも報告されている。そこで、齋藤愛氏は、その原因がジアゼパム 代 謝 の 差 に よ る とい う 作 業 仮説 を 立 て、Wistar(W) 、Sprague.Dawley(SD)、
Brown.N0rway(BN) 、DAの4系統のラッ卜におけるジアゼパム代謝の系統差にっいて検 討した。
本 研 究 か ら 、Wラ ッ 卜 にお け る ジア ゼ パ ムp位 水 酸化 に は 高活 性 個 体(Extensive Metabolizers:EM)と 低活 性 個 体(Poor Metabolizer8:PM)が存 在する ことを見 出し た 。ま た 、SDお よ ぴBNラ ッ卜 はp‐位 水 酸 化 の高 活 性(EM)系統 で あ り、DAは低 活性 (PM)系 統で あ る こと が 分 かっ た 。DAラ ッ 卜 は高い3位水 酸化活 性とN脱メチル 化活性 を有する系統であることも明らかになった。
また、 ラットCYP抗体 を用いて ジアゼ パム代謝 の阻害実験を行った結果、CYP2D2抗体 によってジアゼパムp.位水酸化が阻害されることが分かった。しかし、各ラッ卜系統に発 現 するCYP2D2量や 、CYP2D2によって 代謝さ れるデブ リソキン4位 水酸化活 性の結 果か ら、ジ アゼパムp. 位水酸化 の系統 差はCYP2D2に起 因しないことが分かった。そこで、
CYP2D2抗体を 用いて 免疫沈降 を行っ たところ 、得ら れた蛋白 のアミノ 酸配列はCYP2D3 と一致することが分かった。
以上の結果により、齋藤愛氏は、ラット系統問およぴ個体間におけるジアゼパムの薬理 ―1255―
効果の系統差が代謝の多型によることを明らかにした。さらに、ジアゼパムp 位水酸化に 関す る酵素化 学的特徴を明らかにし、その代謝をCYP2D3が行っている可能性を新たに示 した。よって審査委員一同は、上記学位論文提出者齋藤愛氏の論文が、北海道大学大学院 獣医学研究科規程第6条の規程による本研究科の行う博士論文の審査等に合格と認めた。
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