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1. はじめに

 メタンやブタン,ヘプタン等に代表される炭化水素燃料 は,既存の化学電池と比べて質量あたりのエネルギー密度 が 50 倍以上あり,この高いエネルギー密度の観点から, 携帯機器等の長寿命・高負荷エネルギー源への応用を目指 して,マイクロ燃焼の研究が始まった[1].特に今後の発展 が期待できる MEMS 装置へのエネルギー源 (Power MEMS) としてのマイクロ燃焼器の利用が,研究テーマの大きな柱 となっていた.また,マイクロ燃焼は,物理スケールの小 さな空間における燃焼という,一種の極限環境燃焼である ため,従来の環境では顕在化しない,あるいは無視されて きた効果が重要となり,これらは新しい燃焼研究分野開拓 の原動力ともなっていた.このため,この 10 年ほどのマ イクロ燃焼研究では,火炎の構造の解明,着火特性の解明, 壁面の影響などの分野で,これまでの燃焼研究で手つかず であった現象に対して多くの新しい知見が得られており, それらは本連載講座の中でも紹介されている[2-6].  しかし一方で,そもそもの大きな目的であった携帯機器 のためのエネルギー源,特に電気エネルギーや機械エネル ギーとして燃焼熱を有効に変換して回収するという技術へ の応用へは,大きな進展を見せていない.既存の熱機関で 最小クラスは,模型用エンジンとして市販されているレシ プロエンジンで,排気量 0.163 cc (ボア 6.02 mm×ストロー ク 5.74 mm),出力 5 W のもの (COX 社: TeeDee01) があり, 熱効率は約 1.5 % である (図 1 左).当初,マイクロ燃焼の 応用として,MIT ではフォトエッチング技術と融合させた マイクロガスタービンへの適用[7]を,また,UC Berkeley では同様にマイクロロータリーエンジンへの適用[8]を提案 した例がよく知られているが (図 1 右),このような既存の 熱機関をサブミリサイズにダウンサイジング化したもの は,いまだ現実のものとはなっていない.微小空間で燃焼 を行った後に発生する熱エネルギーをどのように回収すれ ばエクセルギー最大となるかといった検討と,それを具体 的に実現する手段には,まだ大きな乖離があるようである. この理由として,既存の熱機関をダウンサイジングしてマ イクロコンバスタを利用しようとすると,各要素間での温 度勾配が大きくなるため熱機関全体で温度が均一化してし まい,サイクルを維持できないほど熱効率が下がってしま うことが挙げられる.一方で,ゼーベック効果を利用した

* Corresponding author. E-mail: [email protected]

高橋 周平*

TAKAHASHI Shuhei*

岐阜大学工学部 〒501-1193 岐阜県岐阜市柳戸 1-1

Gifu University, 1-1 Yanagido, Gifu 501-1193, Japan

Abstract : Development of a microcombustor with platinum porous catalyst layer and a cogeneration system using thermoelectric (TE) modules is introduced. In order to overcome the huge heat loss due to the small size of combustion field, catalyst combustion has been adopted because it has great advantage under the condition where the surface/volume ratio becomes large. To develop the monolithic porous structure of platinum, platinum powder is sintered in fuel-air mixture; the heat from the surface reaction melts the particles and makes agglomerates. The combustor is 5W class, but the heat release density of the combustor is 5GW/m3, which is comparable to that of conventional turbulent combustor. We couple

the combustor with TE modules to convert the thermal energy to electricity. The TE modules are also preferable for small size generators because their characteristics that they use the heat flux from the hot zone to the surroundings match micro-combustion. The output of the developed cogenerator is 165mW for thermal input of 4.7W; the final conversion ratio from fuel enthalpy to electricity reaches 3.5%. After integrating the micro-blower to supply air to the combustor, the cogeneration system shows the final efficiency of 1.7%.

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熱電素子を用いた発電では,一定の成功が見られる[9].こ れは,もともと S/V 比が大きく周囲への熱損失が生じやす いというマイクロ燃焼の特徴が,高温面から低温面への熱 流束を直接電気に変換するという熱電モジュールの特性を 利用しやすいためである.  著者らの研究室では,熱電モジュールと組み合わせるこ とにより,アウトプットとして電源および熱源として利用 できるマイクロコジェネへの応用を目指して,燃焼器と発 電システムの開発に取り組んできた.本記事では,著者ら が開発に取り組んできたマイクロコンバスタとそれを利用 したコジェネシステム開発の現状について紹介する.

2. 多孔質触媒層を有するマイクロコンバスタ

 消炎直径以下の空間で安定に燃焼を維持するためには, 既燃ガスの熱再循環を利用した超過エンタルピー燃焼 [10,11]や触媒による表面反応を利用した燃焼器[12],また は渦輪による高速燃焼を利用した燃焼器[13]などが,これ までに提案されている.燃焼器の観点から見ると,超過エ ンタルピー燃焼を利用した燃焼器では,熱再循環を行うた めの流路作成にコストがかかり,また燃焼器全体の大きさ を小さくすることが難しい.また,触媒の表面反応を利用 した燃焼器では,燃焼器の最高温度を高くとることが困難 であることが,それぞれ欠点として挙げられる.著者らの 研究室では,多孔質状の貴金属系触媒をサブミリオーダー の内径のセラミックス管内に成長させるマイクロコンバス タの開発を行ってきた[14].本燃焼器の概要を図 2 に示す. 本燃焼器の特徴は,セラミックス管内壁面に多孔質上の触 媒を層状に設けていることである.  これまでの研究から,消炎直径 (炭化水素燃料の場合 3 mm 程度) 以下の管内においても,壁面温度を昇温するこ とにより,1 mm 以下の管内でも燃焼が可能であることが 実験およびスケール解析から確認されている[15].本燃焼 器では,予混合気の一部が触媒層で表面反応することで, 壁面温度を高温に保つことに寄与している.残りの予混合 気は,壁面での触媒反応で高温雰囲気となることで,管内 での気相燃焼が可能となる.  表面積の大きな触媒層を形成する方法としては,平面的 な形状の場合は,アルミナ基材にエッチングなどにより細 孔を設け,プラチナ溶液を浸含させて乾燥・焼結させる方 法[12]などがある.しかしながら,細管内に触媒層を形成 する場合,複雑な手順の適用は困難である.そこで,本燃 焼器では触媒粒子表面での反応熱を利用して焼結を行う手 法を用いている (図 3).はじめに,粒径 1 μm の白金粒子を 水と混濁させスラリー状のペーストを作成する.このペー ストに,セラミックス管の先端 5 mm 程度の部分を浸し, 引き上げたのちに乾燥させる.図 4 上は,乾燥後の触媒層 を SEM で観察した写真であるが,この状態は個々の粒子 が分子間力により接触しているのみであり,簡単に構造が 壊れてしまう.この後,管内に可燃予混合気を供給し,セ ラミックス管外部から加熱すると,触媒粒子表面で反応が 始まり,反応熱により粒子が溶融して凝集し始める.図 4 下は当量比 1.6 のメタン - 空気予混合気を供給して焼結し た後の SEM 画像であるが,微細な多孔質構造が形成され 図 1 極小ラジコン用エンジン (左) と MIT (右上) [7]および UC Berkeley (右下) [8] で提案されたマイクロエンジン 図 2 多孔質触媒層マイクロコンバスタの概要 図 3 多孔質触媒層の作製手順

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多孔質構造が消滅していることが分かる.また,DME で 焼結させると細孔がより緻密で,当量比 1 でも微細構造が 保たれることが分かる.  内径 0.8 mm のセラミックス管に白金を触媒として担持 させ,当量比 1.0 のメタン−空気予混合気で燃焼器を作動 させたときの様子を図 6 に,諸元を表 1 に示す[14].燃料 および空気はマスフローコントローラで供給し,燃焼器へ の着火は触媒担持部を外部から加熱することにより行っ た.表 1 に示されるように,本燃焼器は発熱部における発 熱密度が 5 GW/m3 と,乱流燃焼を用いた燃焼器と同程度に 図 4 焼結前 (上) と焼結後 (下) の触媒層の SEM 画像 (当量比 1.6 のメタン−空気予混合気で焼結) 図 5 白金粒子およびパラジウム粒子に対して,燃料・当量比を変えて焼結させたときの触媒層の SEM 画像

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高く,燃焼器出口においても 1000 K 以上の高温排気を利 用することができる.後で述べるように,多孔質層で次第 に微細構造がつぶれてくることから,触媒部分での温度は 白金の融点近くまで上昇していることが予想されるが,管 壁への急速な熱損失により,燃焼器出口では約 1100 K 程 度までガス温度が低下する.しかしながら,触媒燃焼とい う熱損失の発生しやすい方法を利用している割には,比較 的高温のガスが入手できている.また,一般に微小燃焼器 では物理的サイズが小さいことから,レイノルズ数を高く できないため,乱流燃焼などの高負荷燃焼技術を採用しに くい背景があるが,燃焼器内の平均流速は層流火炎速度の 10 倍程度を示しており,触媒反応によって気相反応を anchoring する効果により,高負荷燃焼が達成されているこ とが分かる.燃焼器出口において既燃ガスをサンプリング し,組成をガスクロで調べた結果,量論比付近では 90 % 程度の燃焼効率であることが分かった[16].既存の実用燃 焼器と比較すると十分なものではないが,これは触媒担持 部を燃料が通過する際に,一部の燃料が低温部分を通過し, 未燃のまま放出されるためと考えられる.  また,本燃焼器においては,触媒反応が気相反応におけ る火炎基部に相当する働きをしているため,燃料の種類に より可燃範囲の特徴も異なる.図 7 にメタン,n-ブタン, DME を用いたときの,本燃焼器の可燃条件範囲を示す[17]. 触媒層での表面反応により燃焼が維持されているため,可 燃範囲が過濃側に大きく広がっていることが分かる.また, 希薄側では,燃料により消炎限界が異なり,触媒表面に吸 着しやすい DME では,当量比 0.2 程度まで可燃範囲が伸 びていることが分かる.  図 8 は,上記の 3 種類の燃料を用いた時の,触媒反応開 始温度を調べた結果である.本研究では,着火は触媒担持 部をニクロム線で加熱することにより行われるが,この際 の温度履歴を線径 0.1 mm の K 種熱電対を触媒担持部に挿 入して触媒反応開始温度を測定した.この結果,n-ブタン および DME を用いた場合には,メタンよりも 300 K 以上 低い温度で触媒反応が活性化することが分かる.また,燃 図 6 多孔質触媒層マイクロコンバスタ実験装置概要 (上) と設計 点作動時の直接写真 (下) 表 1 設計点におけるマイクロコンバスタ諸元 図 7 本燃焼器における各燃料の可燃条件範囲 図 8 本燃焼器における各燃焼の触媒反応開始温度

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焼器出口でのガス温度を比較した結果を図 9 に示す.排気 温度は線径 0.1 mm の K 種熱電対を用いて,燃焼器出口で 測定した.排気温度を比較すると,メタンを用いた場合に は,他の 2 種類の燃料と比べて,200 K 程度高いことが分 かる.この原因として,図 8 に示されたようにメタンを使 用した場合には,触媒の酸化反応開始温度が高いことが挙 げられる.メタンを用いた場合は触媒温度が 800 K 以上と 高いため,燃料は触媒表面で消費されると同時に,気相中 でも消費されると考えられる.一方で,n-ブタンや DME を用いた場合には,触媒温度が比較的低い条件でも酸化反 応が進むため,多くの燃料が表面反応で消費されると考え られる.このような場合は,発熱は触媒層表面で行われる ため,壁面への伝熱量が増えると考えられる.このため, 気相での燃料消費量の差が,排気温度の差となって表れて いると考えられる.  多孔質触媒層は,焼結過程を利用して形成しているため, 燃焼器の熱出力が触媒層の寿命に大きく影響を及ぼす.図 10 はメタンを燃料とし,投入発熱量 3.5 W の条件で,当量 比を変えて連続燃焼時間の測定を行った結果である.連続 燃焼時間は,一定の条件で長時間燃焼させ,着火から排気 温度が 373 K を下回るまでの時間と定義した.結果より, 触媒の耐久時間は投入する予混合気の当量比により大きく 変化することが分かる.表面温度が高くなる量論比 (当量 比 1.0) 付近の条件では,連続燃焼時間は 5 時間程度である. このとき消炎後の触媒層の表面を SEM で観察すると,図 11 で示すように,多孔質形状が融解し消滅していることが 分かった.一方で,やや断熱火炎温度が低下する当量比 1.4 の条件においては,連続燃焼時間 1000 時間を達成してい る.さらに当量比を増加させると,連続燃焼時間は減少し た.このときの触媒表面を SEM で観察すると,多孔質構 造は残っているものの,表面がカーボンチューブなどの残 渣物でおおわれていることが分かった.このため,触媒寿 命を延ばすためには表面温度が融点以下で,かつ残渣物が 発生しない条件を選択することが必要であることが分かる.  一方で,DME を燃料として用いた場合は,当量比 0.9 の 条件において連続燃焼時間 1300 時間を達成した.DME は 図 7 に示されるように,希薄条件においても安定に燃焼が 維持できるうえ,図 9 に示されるように気相での温度がメ タンに比べて低い.このため,触媒層への熱負荷がメタン を利用した時と比べて低減されていると考えられる.しか 図 9 各燃料を用いた時の燃焼器出口温度 図 10 メタンおよび DME を用いた時の本燃焼器の連続作動時間 図 11 2 時間連続作動させた後の触媒層の SEM 写真 (上) 当量比 1.0,(下) 当量比 2.0

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しながら,メタン,DME いずれの場合も燃焼器が消炎し た後の触媒層を SEM で観察すると,多孔質構造の融解が 認められた.多孔質構造は,一度高い熱負荷にさらされる と自己修復することはないと考えられるため,高温の気相 燃焼が生じる際に次第に劣化していくものと考えられる.

3. 熱電モジュールを利用したマイクロコジェネの開発

 本超小型燃焼器からの熱エネルギーの利用法の 1 つとし て,著者らの研究室では,熱電変換素子を用いた超小型発 電システム (マイクロコジェネ) の開発を目指している.熱 電素子がゼーベック効果を利用して温度差を電力に変換す るものであるが,その効率は,素子の材質作動温度域によ り大きく異なる.一般には,式 (1) で表わされる ZT 値と 呼ばれる無次元数が,その性能を表す指標となっており, ZT∼1 が発電用熱電変換モジュールとして多く要求される [18]. 式 (1) ここで,λ は熱伝導率,ρ は抵抗率,α はゼーベック係数, T は作動温度を示す.たとえば,ペルチェ冷却素子などに 用いられている Bi-Te 型の熱電素子は T∼300 K 近傍で ZT ∼1 程度の素子が容易に入手可能である.  図 12 は,マイクロコジェネ装置の概要を示したもので ある.コジェネ装置は,中央に超小型燃焼器によって加熱 される受熱部,それを上下に挟む熱電モジュール,その外 側にある放熱部から成っている.受熱部は,超小型燃焼器 の高温排気が持つ熱量と,壁面から周囲へ逃げる熱量の両 方が有効に利用できるように,燃焼器の触媒担持部を覆う ような構造になっている.この受熱部が,コジェネ装置の 高温熱源となっており,放熱部 (低温熱源) との温度差に よって熱電モジュール部発電を行う.このとき,最大発電 効率 ηmax は式 (2) で示されるように,熱電モジュールの 特性である ZT 値で決定される. 式 (2) このため,使用する熱電モジュールが最大の効率で作動す ることができるような温度域を選択して熱を供給すること が重要となる.さらに,システム全体の効率を論ずる場合 には,燃焼器で発生した熱エネルギーを,どれだけ周囲へ の熱損失を抑えて,熱電モジュールに供給できているかが 課題になる.これらのことを踏まえ,まずは Bi-Te 型の熱 電モジュールを用いて発電試験を行った.Bi-Te 型発電モ ジュールは,先に述べたように,常温付近に最大効率を持 つ素子であり,おもに冷却用として小型のものが多く市販 されており,実験パラメータとして幾何形状,素子ペア数 を比較的自由に選択できる.本研究では,表 2 に示す熱電 モジュール (1MD04-017-1,RMT Ltd.) を 2 個直列に接続し て試験を行った.  発電試験は,燃焼器への投入予混合気流量をパラメータ として,受熱部と放熱部の温度差を変化させ,負荷抵抗を 接続して,その両端の電圧値を測定することで発生した電 力量を求めた.図 13 に燃料としてメタン用いて発電試験 をした時の結果を示す.混合気の当量比を 1.0 に固定した. 実験では,まず負荷抵抗の値を変化させ,最大出力が得ら れる負荷を調べた.図 12 に示すマイクロコジェネの内部 抵抗値が約 10 Ω であるため,負荷抵抗として 10 Ω の固定 抵抗を接続したときに最大電力が測定されている.次に, 投入流量をパラメータとして,最大電力の値とその時の燃 料のエンタルピーから電力への最終的な変換効率をプロッ トした.メタンを燃料とした場合には,最大発電量はほぼ 投入する予混合気流量に比例して上昇し,平均の変換効率 は 2.87 % であった.また,燃料として n-ブタンまたは DME を用いた実験でもほぼ同様の傾向がみられた.いず 図 12 熱電モジュールと組み合わせたマイクロコジェネ外観と温 度分布 (設計点作動時) 表 2 熱電モジュール (1MD04-017-1) 緒元

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れの燃料に対しても,5 W 程度の熱出力に対して,150 mW 程度の発電量が観測された.この発電量は,小型の通信機 器などを駆動させるには十分な値である.また既存の熱機 関で同様の発電を行うことは,かなりのオーバースペック となるため,分散型電源としての有用性が期待できる.最 大の変換効率は,DME を燃料としたときの 3.52 % であっ た.  一般に,熱電モジュールを用いた際の発電効率は,低温 側を環境温度まで安定して冷却することが,加熱側以上に 重要となる.図 13 は,冷却側はヒートシンク方式による 自然空冷した実験結果であるが,DME を燃料とした場合 に,放熱側を冷媒で冷却した条件での実験も行った.この 結果,ヒートシンクの銅板温度を 0 ℃ まで下げることによ り,投入エンタルピー 4.73 W に対して 199 mW (1.41 V, 0.141 mA) の電力を得ることができ,変換効率 4.2 % と大 きく向上させることが出来た.  放熱部を自然空冷とした場合には,低温側温度が約 50 ℃ となり,最終変換効率が 3.0 %∼3.5 % であった.と くに,メタンを利用した場合のエネルギー密度は 420 Wh/ kg に達し,リチウムイオン電池 (170 Wh/kg) の約 2.5 倍に 相当する.また,低温側温度を 0 ℃ としたとき,最大最終 変換効率 4.2 % を記録した.本熱電モジュールは,室温付 近で最大 Z = 2.4×10-3 の性能を有するため,ZT = 0.7 と見 積もられる.このとき,熱電素子自体の変換効率は式 (2) から 5.0 % と計算され,燃焼効率が 90 % であることを考 慮すると,燃焼器で発生した熱エネルギーの 93 % が熱電 モジュールに供給されている計算となる.これは,発熱し た熱量のうち,ほとんどが熱電モジュールを経由して環境 側へ流れていることを意味し,熱利用効率の観点では,大 型の工業炉に匹敵する高効率である.  現時点では,最大の最終変換効率は 4 % 強であり,既存 の熱機関と比較して十分な効率であるとは言えない.これ は,現状では,幾何形状や熱電素子ペア数などを選択して 導入することができるモジュールが Bi-Te 型しか存在して いないことが直接の理由である.この背景には,本研究で 開発されたような高温点熱源装置がこれまで存在していな かったため,積極的に高温域で作動する小型熱電モジュー ルを開発する状況が形成されていないことが挙げられる. しかしながら,実験室レベルでは,800 K 程度の温度域で 作動する酸化物型の熱電素子 (シリサイド系) で,ZT 値が 1 程度のものが既に開発されており,これらを利用した場 合,10 % 近い変換効率が特に問題なく達成されると考えら れる.作動最高温度と熱電モジュールの ZT 値との関係を 図 14 に示すが,本燃焼器の排気温度である 1000 K 程度の 排気を利用できる高温作動型の熱電モジュールを導入する と,ZT 値が 1 程度の性能で最終変換効率 10 % が達成可能 であることが分かる.これは,既存のリチウムイオン電池 の 7 倍程度のエネルギー密度に相当し,携帯電源として十 分な魅力を有することが分かる. 図 13 メタンを用いた時の発電試験結果,負荷抵抗を変化させた ときの電圧と出力 (上),最適負荷時における出力と最終変 換効率 (下) 図 14 現状における変換効率と最高温度 1000 K が利用できる場 合の変換効率

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 図 12 に示したマイクロコジェネは,燃料および空気の 供給として,高圧ボンベからのガスをマスフローコント ローラで制御する方式で作動しており,実際のマイクロコ ジェネを考える場合は,ガス供給系,特に空気の供給系を 考える必要がある.  そこで,空気供給装置として圧電式マイクロブロア (20× 20×1.85 mm:村田製作所) を用いて,15 W 級の自立型の マイクロコジェネを作製し (図 15),その検討を行った.燃 焼器は内径 1.0 mm のセラミックス管に多孔質触媒層を焼 結させたものを用い,発電部は 17 対の熱電モジュール (1MD04-017-12) を 6 個直列につなげている.本ブロアに, 燃焼器に取り付けて,印加電圧を変化させて作動させたと ころ,図 16 に示すような流量特性を示した.このブロア は熱電モジュールの出力電圧以上の 10∼20 V で作動する ため,効率 85 % の DC-DC 昇圧回路 (LM2735: ストロベ リーリナックス) でマイクロブロアを駆動させる.熱電モ ジュールの変換効率を 3.5 % と仮定し,燃焼器の熱出力を パラメータとして取り出せる電力を検討したところ,マイ クロブロアへの供給電圧を 12 V とすると,熱出力 13 W に 相当する空気が供給でき,220 mW 程度の電力が得られる ことが予想された.この結果をもとに,マイクロコジェネ にメタンを燃料として 13 W の熱出力を与えて,DC-DC 回 路を介してマイクロブロアを 12 V で作動させた結果を図 17 および表 3 に示す.本実験では,436 mW の総発電量 (発 電効率 3.4 % に相当) に対し,供給系で 213 mW を消費, 差し引き 223 mW の電力を回収することができた.この正 味出力は,熱効率に換算して 1.73 % に相当し,図 1 左に紹 図 15 15 W 級マイクロコジェネ実験装置概要と外観 図 16 触媒層を担持させた内径 1.0 mm の燃焼器を取り付けた時 のマイクロブロアの流量特性 図 17 負荷抵抗を変化させたときの熱電モジュール出力電圧,総 発電量,ブロア消費電力,正味出力 (熱出力 13 W,メタン 23.8 sccm,空気 226 sccm) 表 3 15 W 級マイクロコジェネ最適発電条件

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 多孔質触媒層を有する超小型燃焼器と,これを Bi-Te 型 の熱電モジュールと組み合わせたマイクロコジェネの開発 に関する研究を紹介した.微小空間での燃焼は,S/V 比が 大きく,熱損失の観点では火炎にとって厳しい環境ではあ るが,表面の寄与が大きくなるという観点から考えると, 従来のサイズでは燃焼負荷を上げることが難しい触媒燃焼 が最大限に活用できる場ともいえる.また,急速に周囲へ 熱が拡散する環境でもあるため,熱電モジュールを用いた 発電の特徴を生かしやすい.このため,サブミリサイズの 燃焼領域を利用する場合は,熱電モジュールの変換効率の 最高値が 10 % 程度である現状を差し引いても,従来の熱 機関を単にダウンサイジングしたものより,熱効率を大き く保てる可能性が高い.熱電モジュールは,今後,高温作 動型のものも開発されることが見込まれ,さらなる発電効 率の向上も見込める.本記事で紹介したマイクロコジェネ は,例えば,震災や気象災害などの被災時に,避難所など で個人ベースの電源・熱源として利用されることを大きな 目的の 1 つとしている.実際に稼働する最終製品として注 目を受けることで,マイクロ燃焼研究の成果がより多くの 人の眼の触れ,様々な利用のアイデアが生まれてくるきっ かけになることを願っている.

謝辞

 本研究は,NEDO 産業技術研究助成事業 (08C46545c) の 一環として実施された.また,本記事の執筆にあたり,本 学機械システム工学専攻博士前期課程 2 年の田中雅晃君 に,実験およびデータ整理で多大な協力をいただいた.こ こに記して謝意を表す. 55(173): 264-271 (2013). 6. 三上真人, 日本燃焼学会誌 55(173): 272-277 (2013). 7. Waitz, I.A., Gauba G. and Yang, S.T., ASME Journal of

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