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2016) ,ローテーションに組み入れることが可能な薬剤

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(1)

は じ め に

農業生産で用いられる害虫の防除技術には,大きく分 けて化学的防除法,生物的防除法,物理的防除法,耕種 的防除法がある。環境への負荷の低減や健康リスク等を 鑑み,近年は化学合成殺虫剤だけに頼らず,各種の防除 手段を合理的に組合せて使用することで経済的に被害が 出る水準より低い密度に害虫を制御する,総合的害虫管 理(IPM)の導入が図られるようになってきた。ただし

IPM

を導入した場合においても,殺虫剤以外の防除手 段はその使用場面が限られることが多く,防除効果の高 さと信頼性および費用対効果の点から殺虫剤による化学 的防除法が中心的役割を担う状況は変わっていない。し かし化学農薬には薬剤抵抗性の発達というリスクがあ り,新規剤開発と抵抗性発達のいたちごっこが過去から 繰り返されてきた。薬剤抵抗性に関する対策としては,

これまでも各種害虫の殺虫剤に対する感受性検定が実施 され,抵抗性の発達を遅延させるために同一系統薬剤の 連続使用を避けるローテーション散布が提唱されてい る。しかしローテーション散布は,必ずしも生産現場に 浸透しているとは言えない状況にあり,また国内で農薬 登録されている殺虫・殺ダニ剤の有効成分数と製剤数は 減少の一途をたどっているため(日本植物防疫協会,

2016) ,ローテーションに組み入れることが可能な薬剤

の選択肢そのものが狭まってきている。一方では,栽培 体系,防除体系の画一化・広域化に伴う薬剤抵抗性害虫 の常発化,広域化,多様化により問題は拡大かつ複雑化 しており,ウイルス病を媒介する害虫については薬剤散 布回数の増加が避けられないため,さらに抵抗性発達の リスクが高まっている。そこでこの問題に対処するた め,薬剤抵抗性の分子機構の解明と遺伝子診断法の開

発,抵抗性発達の実態調査,薬剤ローテーションに使用 可能な薬剤の選択と代替防除技術開発,シミュレーショ ンモデルによる抵抗性発達の予測技術の開発等に基づい た,抵抗性発達リスクのレベルに応じた薬剤抵抗性管理 ガイドライン案の策定を目標として,農林水産省委託プ ロジェクト研究「ゲノム情報等を活用した薬剤抵抗性管 理技術の開発」(略称:薬剤抵抗性プロジェクト)が平 成

26

年度から

5

年計画で開始された。このプロジェク トの対象病害虫はコナガ,チャノコカクモンハマキ,ワ タアブラムシ,ネギアザミウマ,ナミハダニ,イネウン カ類の

6

種(類)の害虫と耐性菌が問題となっているイ ネいもち病菌を加えた

7

種(類)である。本稿では,こ のプロジェクト研究の概要とこれまでに得られた主な成 果について紹介する。

なお,本稿は

2017

1

月に開催された日本植物防疫 協会シンポジウム「薬剤抵抗性対策の新たな展開」での 講演をまとめたものである。

I 薬剤抵抗性プロジェクトの概要

プロジェクト参画機関では,開発目標である薬剤抵抗 性発達の大幅遅延を可能とする,地域の栽培体系に応じ た薬剤使用ガイドライン案を策定するため,①薬剤抵抗 性の遺伝子診断法や簡易な生物検定法の開発とそれらを 用いた抵抗性発達リスクレベルの把握(診断)

,②薬剤

抵抗性の発達・拡大を予測するシミュレーションモデル の開発(予測)

,③抵抗性発達リスクのレベルに応じて

薬剤の使用制限・中止や薬剤ローテーション,代替防除 手段の使用を提案する薬剤抵抗性管理ガイドライン案の 策定と現地実証(管理)

,に関する研究課題に取り組ん

でいる。

II

 害虫の薬剤抵抗性管理ガイドライン案の策定 プロジェクトの達成目標である薬剤抵抗性管理ガイド ライン案は,図―1に示すような基本コンセプト(薬剤 抵抗性管理のためのフローチャート(案))に基づいて 作成することとしており,最終的には害虫の生態的特性

Perspectives of the Study on Pesticide Resistance Management in

Japan.  By Takashi N

ODA

and Nobuhiko N

AKASHIMA

(キーワード:薬剤抵抗性管理,遺伝子診断法,生物検定法,耐 性菌)

薬剤抵抗性対策研究の取り組み状況と期待される成果

―薬剤抵抗性プロジェクトにおける取り組みを中心に―

野  田  隆  志 中  島  信  彦

一般社団法人日本植物防疫協会 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 日植防シンポジウムから

(2)

や代替防除手段の有無等を踏まえて種別のガイドライン 案を策定することになっている。以下では,ガイドライ ン案策定に必要な各項目について研究の進捗状況を概説 する。

1

薬剤抵抗性の遺伝子診断法

薬剤抵抗性の分子機構は,主に作用点変異(作用点抵 抗性)と解毒機構(体内抵抗性)に分けられるが,いず れの場合も遺伝的な変異が背景にあり,抵抗性と感受性 を識別するマーカーを開発することにより個体レベルで 抵抗性の検出・診断が可能になる。コナガやトビイロウ ンカでは,これまでに蓄積されたゲノム情報などを活用 し,またゲノム情報がない害虫については,次世代シー

ケンサーを用いた

ddRAD

seq RNA

seq

等の遺伝子解 析技術を駆使して抵抗性の責任領域,原因遺伝子を解明 し,公設試などで使用可能な

PCR

法による遺伝子診断 法の開発を進めている。薬剤抵抗性プロジェクトで開発 に取り組んでいる遺伝子診断法を,表―1にまとめた。

この表に掲げた診断法以外に,より検出感度が高い高度 な抵抗性判定技術の開発も進めている。

コナガのジアミド抵抗性については,ジアミド剤の作 用点であるリアノジン受容体に複数のアミノ酸変異の存 在が知られているが(GUO

et al., 2014) ,今のところ日本

で見つかっているジアミド剤抵抗性にかかわるアミノ酸

変異は

G4946E

変異(

4946

番目のアミノ酸残基がグリ

モニタリングによる薬剤 抵抗性系統(遺伝子)の頻度調査 サンプリング地点,頭数,検定法

の検討・決定

生物検定法 補正死虫率,

LD

50

,LC

50

等算出

状況に より 選択 または

併用

遺伝子診断法 抵抗性遺伝子 頻度算出

使用再開の判断

産雌単為 生殖型 薬剤抵抗性

系統分布状況

(検出状況・抵抗性強度)

未検出 の把握

高頻度

低頻度 周辺(広域・近隣)での発生状況の把握

対象薬剤系統の使用履歴の把握

リスク レベル

1

ローテーションを 行いつつ使用継続 抵抗性発達を生じ させないよう代替 防除法導入も推奨

リスク レベル

2

使用制限 代替剤推奨

生殖型の考慮 対象害虫の特徴 により行うべき 対応が異なる リスク

レベル

3

当該薬剤の使用中止

代替剤の使用

モニタリングの継続 薬剤抵抗性系統

(遺伝子)の頻度調査

化学薬剤以外の 代替防除法の積 極的導入

図−

1 薬剤抵抗性害虫管理のためのフローチャート(案)

(3)

シン=

G

からグルタミン酸=

E

に置換)のみであり,

また解毒酵素の関与はこれまでに知られていない。本プ ロジェクトでは,

G4946E

変異を検出できるマルチプレ ックス

PCR

法を開発済みである。チャノコカクモンハ マキについては,ジアシルヒドラジン(DAH)系

IGR

剤であるテブフェノジドに対する抵抗性遺伝子を検出で きる

PCR―RFLP

法が開発され(浅野ら,2016)

,より簡

便なマルチプレックス

PCR

法も開発中である。また本 種はジアミド剤に対する抵抗性を発達させているため,

その遺伝子診断法の開発も進めている。

ワタアブラムシについては,ネオニコチノイド系薬剤 抵抗性系統のニコチン性アセチルコリン受容体に点突然 変異(

R81T

81

番目のアミノ酸残基がアルギニン=

R

からスレオニン=

T

に置換)が見いだされ(

H

IRATA

et al.,

2015) ,この変異を検出できるマルチプレックス PCR

が開発された。本法により集団中の抵抗性個体頻度が

1%(遺伝子頻度 0.5%)でも検出可能である。なお上記

のアミノ酸変異以外に解毒酵素

P450

も抵抗性に一部関 与しているが,現在のところ影響は副次的であると考え られている。ネギアザミウマについては,合成ピレスロ イド系薬剤の遺伝子診断法が既に開発済みである(武澤,

2012)。ナミハダニについては本プロジェクトで開発し

たエトキサゾール抵抗性遺伝子診断法の実証試験を実施 しており,ピリダベンとシフルメトフェンについても遺

伝子診断法の開発を進めている。

トビイロウンカのイミダクロプリド抵抗性は,詳しい 遺伝子解析の結果,作用点変異ではなく解毒酵素

P450

1

種が関与している可能性が高いことが明らかとな り,酵素遺伝子多型を利用した遺伝子診断法が開発され た(中村ら,2016)。イネウンカ類ではほかに,セジロ ウンカのフィプロニル抵抗性とヒメトビウンカのイミダ クロプリド,フィプロニル抵抗性についても遺伝子診断 法の開発を進めている。

2

簡易標準生物検定法

遺伝子診断法は抵抗性原因遺伝子が究明された薬剤と 害虫種の組合せに対してしか有効ではないため,各種農 薬に対する感受性の実態を調査し,防除に使用可能な薬 剤を選択するためには生物検定法も必要となる。しかし,

従来の手法は検定用植物の準備や供試虫の移し替え,薬 剤処理等の作業が煩雑で,現場で簡易に行えないことが 多い。また,散布法に用いられる回転式薬剤散布塔は製 造中止となって今後の入手が困難となっており,これに 代わる手法の確立が必要となっている。そこで,従来法 よりも短時間で作業を完了できる手法を考案し,これを 標準化することで異なる地域の薬剤感受性実態の比較が 可能になる簡易標準生物検定法を開発した。対象とした 害虫は複数の作物種を加害するコナガ,ワタアブラム シ,ネギアザミウマ,ナミハダニの

4

種であり,ナミハ ダニを対象に回転式薬剤散布塔に代わる手法として考案 された,模型工作で使用されるエアブラシとターンテー ブルを組合せた方法(國本・今村,2016)は,他の害虫 にも流用可能である。ウンカ類の薬剤感受性検定では,

微量局所施用法が標準となっている。しかしこの手法で は,昆虫成長阻害剤(

IGR

剤)やピメトロジン剤等の効 果が出るまでに時間がかかる薬剤は検定できない。これ らの薬剤に対して使用できる手法として

IRAC法(IRAC, 2012)があるが,検定植物の準備に時間を要するうえ,

結果がばらつくことが多い欠点がある。そこで微量局所 施用した雌成虫をイネ苗入りの大型試験管内に放飼して 次世代幼虫数を計測する手法を開発した(TSUJIMOTO

et al., 2016)。この手法のマニュアルは農研機構九州沖縄農

業研究センターのホームページで公開されている。

3

薬剤抵抗性の実態調査

本プロジェクトでは,各地域における薬剤抵抗性発達 の実態調査を実施するとともに,抵抗性個体の特性や遺 伝様式についても解析を行っている。

コナガは近年,東南アジア諸国を中心にジアミド剤に 対する抵抗性の発達が報告され,日本でも発生の懸念が 強まっていたが,

2013

年前半に九州北部で,後半には 表−1  対象病害虫と薬剤の組合せに対して開発済みまたは開発中の

薬剤抵抗性遺伝子診断法(平成

29

2

月現在)

病害虫名 診断対象薬剤名 開発状況 コナガ フルベンジアミド

合成ピレスロイド系,クロラン トラニリプロール

開発済み 開発中

チャノコカクモン ハマキ

テブフェノジド

フルベンジアミド,クロラント ラニリプロール

開発済み 開発中

ワタアブラムシ ネオニコチノイド系 開発済み ネギアザミウマ 合成ピレスロイド系

ネオニコチノイド系,スピノサド

開発済み 開発中 ナミハダニ エトキサゾール

ピリダベン,シフルメトフェン

開発済み 開発中 トビイロウンカ イミダクロプリド 開発済み

セジロウンカ フィプロニル 開発中

ヒメトビウンカ イミダクロプリド,フィプロニル 開発中 いもち病菌

QoI

系+

MBI―D

(同時診断可能)

開発済み

(4)

本州の一部地域でフルベンジアミドに対する感受性低下 が確認された。本プロジェクトが開始された

2014

年に は北東北,2015年には北海道まで感受性低下が拡大し ているが,北日本ではまだ抵抗性個体の割合は低く,ま た西日本でも感受性個体がある程度の割合で検出されて いる(坂田ら,2016)。チャノコカクモンハマキは,静 岡県で

DAH

IGR

剤に対する感受性の低下が顕在化し ている。DAH系

IGR

剤であるテブフェノジドについて 遺伝子診断法を用いて調査を行ったところ,静岡県以外 では京都府の一部地域でも抵抗性個体が検出された(内 山ら,2016)。チャノコカクモンハマキのテブフェノジ ド抵抗性の遺伝様式は,常染色体座乗の複数因子による 不完全優性を示すことがわかっている(内山・小澤,

2016

)。また本種に対するジアミド剤の効果は,静岡県 各地で

2009

年までは補正死虫率

100

%だったが,

2010

年に牧ノ原台地の一部地域で感受性低下が確認されて以 降,各地で次々と感受性が低下している(UCHIYAMA

and O

ZAWA

, 2014)。ワタアブラムシは,過去に各種殺虫剤に

対する抵抗性が問題になったが,これまで効果が高かっ たネオニコチノイド系殺虫剤に対して感受性の低いクロ ーンが

2012

年に宮崎県で初めて確認され,その後大分,

高知,和歌山各県等各地に分布拡大している。本種につ いてはネオニコチノイドの種類によって感受性が若干異 なるほか,抵抗性系統は感受性系統に比べて増殖率が低 いという報告があり(松浦ら,

2016

,今後の抵抗性管

理を考えるうえで興味深い。ネギアザミウマは,近年合 成ピレスロイド剤に対する感受性が各地で急速に低下し ており,大規模畑作地帯の北海道でもほぼ全域で抵抗性 が発達している(武澤,

2012

)。また生殖型の異なる系 統が分布拡大しつつあることから,本プロジェクトでは 生殖型と抵抗性発達の関連性について調査を行うととも に,抵抗性系統にも対応可能な防除体系を検討してい る。ナミハダニは,有効な殺ダニ剤の減少や交差抵抗性 によって薬剤ローテーション自体が困難になっており,

化学防除が行われている現場では圃場ごとに効果の高い 殺ダニ剤の傾向が異なるために薬剤の選定に苦慮する事 例が報告されている(今村・國本,2016)。イネウンカ 類では,2005年にイミダクロプリドに対する感受性低 下が見つかったトビイロウンカについてモニタリングを 継続しており,低下傾向には歯止めがかかっていないも のの,同じネオニコチノイド剤でも実用レベルの感受性 低下が見られない剤もあることがわかっている(松村,

2015)。

4

代替防除技術の開発

化学農薬の補完技術として薬剤抵抗性害虫にも効果が

期待できる物理的,生物的防除技術も一部の害虫に対し てプロジェクト内で開発を進めている。ワタアブラムシ では,ピーマン栽培中にハウスを密閉して一定時間高温 にすることにより,作物へ悪影響を及ぼすことなく高い 防除効果が得られており,防虫ネット(赤色および反射 系を含む)の目合いと侵入阻止効果についても検証を行 っている。ナミハダニでは,イチゴのうどんこ病防除資 材として市販されている

UV―B

電球形蛍光灯と光反射 シート(タイベック)を併用することで高い増殖抑制効 果が得られた(石川ら,

2015

)。生物的防除法では,ワ タアブラムシに対するヒメカメノコテントウ,飛ばない ナミテントウ放飼の防除効果や三尺ソルゴー播種による 土着アブラムシ発生と土着寄生蜂の増殖による防除効 果,ナミハダニに対してはカブリダニ製剤(チリカブリ ダニ,ミヤコカブリダニ)の放飼と気門封鎖剤および天 敵への影響が少ない殺ダニ剤の併用による防除効果を検 証中である。

5

薬剤抵抗性発達を予測するシミュレーションモデル 薬剤抵抗性の遺伝子頻度が各種防除条件下で空間的,

経時的にどのように増減するかを推定するには,シミュ レーションモデルを使った検証が有効である。そこで薬 剤ローテーションや混用が抵抗性の発達遅延に及ぼす効 果の評価や抵抗性の顕在化を予測するために必要なサン プリング精度の決定,さらに薬剤抵抗性管理を踏まえた 防除手段の選択に必要な抵抗性発達リスクレベルの評価 基準を決定するため,害虫別の課題と協力して研究を実 施している。

III QoI

剤耐性イネいもち病菌対策マニュアルの策定

ミトコンドリア電子伝達系に作用するストロビルリン 系殺菌剤(QoI剤)は,野菜の各種病害のほか,長期残 効型の育苗箱処理剤としてイネのいもち病防除に広く使 用されてきた。しかし,耐性菌の出現が各地で報告され るようになったため,耐性遺伝子の解析と遺伝子診断技 術に基づいた耐性菌対策ガイドラインが日本植物病理学 会殺菌剤耐性菌研究会から公表され

2014

6

月に改訂 されている(http://www.taiseikin.jp/guidelines/)。本プ ロジェクトでは,このガイドラインの考え方を踏まえ て,

QoI

剤耐性イネいもち病菌発生の高精度モニタリン グ技術,発生・伝搬を予測するシミュレーションモデル の開発を行い,耐性菌の発生程度が異なる地域における 耐性を考慮した防除体系の研究を,害虫研究に先駆けて 実施した。

モニタリング調査では,

QoI

剤の使用中止後に耐性菌 株分離率が低下するデータが得られており(稲田・菖蒲,

(5)

2015;石井,2015) ,適応度コストが確認できれば将来

的に再使用も可能となるかも知れない。SSRマーカーを 用いた耐性菌遺伝子型プロファイリングの結果による と,少なくとも北部九州地域では,一つのクローナルグ ループの耐性菌が分布しており,種子で発生拡大した可 能性が高いことがわかった。また,薬剤耐性イネいもち 病菌変動予測モデルのソフトウェアを作成し,パラメー タの感度分析を行ったところ,QoI剤の使用面積の制限 や種子消毒の徹底が耐性菌対策として有効であることが わかった。さらに統計データの解析から抵抗性発達には オリサストロビン(箱処理剤)の普及(=累積使用面積 率)が関係していることが示唆され,「QoI剤使用面積 の管理」が耐性菌対策上のポイントとなるため,対策を 講じるうえでは種子流通範囲を管理区域に設定すること が基本になる。

QoI

剤以外の各種薬剤の防除効果を調べ たところ,耐性菌発生条件下でも他系統薬剤はいずれも 有効であった。3年間にわたって行われた防除体系の構 築と実証試験の結果を踏まえると,以下の組合せの対策 を講じることにより,耐性菌発生地域でも高い防除効果

が得られると考えられる:①購入種子の使用,②種子消 毒の徹底(ベノミル加用)

,③他系統の育苗箱処理剤,

④葉いもち初発時の防除,⑤穂いもちの適期防除。課題 の取りまとめを担当した農研機構中央農業研究センター は,これらの研究成果を基に図―2に示したフローチャ ートに基づく

QoI

剤耐性イネいもち病菌対策マニュア ル を 策 定 し て ホ ー ム ペ ー ジ で 公 表 し て い る(http://

www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/pub2016_or_later/

laboratory/narc/073008.html

)。

お わ り に

薬剤抵抗性プロジェクトは,平成

28

年度で終了した 耐性いもち病菌の課題を除いて,現在薬剤抵抗性管理ガ イドライン案の実証段階に入っている。遺伝子診断法に ついては,今後複数の主要薬剤について抵抗性リスクレ ベルを同時にモニタリングできる遺伝子診断法の開発が 見込まれ,講習会などを通じて全国の病害虫防除所,普 及センター等で活用されることが期待される。遺伝子診 断による薬剤抵抗性系統検出の最大の長所は,抵抗性害

図−2 いもち病菌の薬剤耐性菌管理のためのフローチャート

①発生量と使用面積のデータを分析することにより耐性菌発生リスクを把握す る.②モニタリング調査結果から判定される耐性菌拡大リスクに基づき対策案を 提示する.

対象剤使用 面積割合

耐性菌発生 状況 管理区域の設定

殺菌剤の使用実態

モニタリング調査

全面的使用中止

代替防除体系

モニタリング継続

使用継続 経過観察 一定面積未満

一定面積以上

耐性菌検定法

限定的に検出 検出なし

高頻度で検出

使用再開の判断へ 部分的使用中止

② 情 報 収 集 と

発 生 予 測

モ ニ タ リ ン グ と 耐 性 菌 検 定

リ ス ク 評 価 と 耐 性 菌 対 策

(6)

虫が発生していることをいち早く検出し,被害が拡大す る前に対策を講じる時間を確保できるようになることで ある。抵抗性の遺伝子診断法による調査技術が普及すれ ば,生物検定法による感受性検定や発生予察と同レベル の調査項目に位置づけることが可能になるだろう。

本プロジェクトで開発する薬剤抵抗性管理ガイドライ ン案は,実証試験の結果を踏まえてプロジェクト期間中 に基本ガイドラインの策定を終わる予定であるが,実際 に運用するためには薬剤ローテーションに取り入れる剤 の選定や使用頻度・間隔,代替防除技術の組み込み等,

地域の栽培体系に合わせたカスタマイズが必要になる。

また新規剤の上市や病害虫の発生実態の変化に応じてガ イドラインを継続的に改良していくことも重要である。

将来的には,

IPM

防除体系の重要パーツとして,薬剤 抵抗性管理の考え方を組み込むことにより,抵抗性発達 の大幅な遅延が実現することを期待したい。

引 用 文 献

1)

浅野美和ら(2016)

: 第 60

回日本応用動物昆虫学会大会講演要

旨集 : p.17.

2

G

UO

, L. et al.

2014

: Sci. Rep.

 4

: 6924.

3) H

IRATA

, K. et al.(2015) : J. Pestic. Sci. 40 : 25

31.

4)

今村剛士・國本佳徳(2016)

: 奈良農研開セ研報 47 : 34

36.

5)

稲田 稔・菖蒲信一郎(2015)

: 植物防疫 69 : 545

548.

6

IRAC

2012

: IRAC Susceptibility Test Method 005.

http://www.irac-online.org/methods/nilaparvata-lugens- nephotettix-cincticeps-adults/

7)

石井貴明(2015)

: 植物防疫 69 : 549

553.

8

)石川隆輔ら(

2015

:

21

回農林害虫防除研究会講演要旨集

: p.12.

9)

國本佳範・今村剛士(2016)

: 関西病虫研報 58 : 13

16.

10)

松村正哉(2015)

: 植物防疫 69 : 13

17.

11

)松浦 明ら(

2016

:

60

回日本応用動物昆虫学会大会講演要 旨集 : p.19.

12)

中村有希ら(2016)

: 同上 : p.18.

13)

日本植物防疫協会(2016)

: 農薬要覧,

日本植物防疫協会,東京,

774 pp

14)

坂田和之ら(2016)

: 第 60

回日本応用動物昆虫学会大会講演要 旨集 : p.233.

15)

武澤友二(2012)

: 北日本病虫研報 63 : 184

188.

16

T

SUJIMOTO

, K. et al.

2016

: Appl. Entomol. Zool.

 51

: 155

160.

17) U

CHIYAMA

, T. and A. O

ZAWA(2014)

: ibid. 49 : 529

534.

18)

内山 徹・小澤朗人(2016)

: 植物防疫 70 : 309

312.

19)

ら(2016)

: 第 21

回農林害虫防除研究会講演要旨集 :

p.10

参照

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