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2色覚における色弁別・色分類とカラーネーミングとの関係小峰央志

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Academic year: 2021

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(1)

1.

背景・目的

ヒトは網膜のL, M, Sの3種の錐体によって,

様々な色を知覚することができる.しかし,主 に遺伝的要因により,これらの錐体のうち1つ が働かない場合がある1).3錐体からなる一般 的な3色覚に対し,2錐体のみが働いている色 覚は2色覚と呼ばれ,L, M, S錐体のいずれが機 能していないかにより,1型・2型・3型に分 類される.また,1・2型2色覚は赤緑色弱と も呼ばれ,赤緑方向の色の弁別が困難な色覚特 性として知られている.

しかしその一方で,2色覚者の応答色名には,

見分けにくいはずの赤や緑といった色名が,3 色覚者と類似した別々のカテゴリに分けられて いるという報告もある2).なぜ,2色覚者がこ れらの色名を応答することができるのだろうか.

これについては,2つの可能性が考えられる.1 つは,2色覚者の赤緑方向に対する色弁別能力 が,2色覚者のシミュレーション3)などで考え られているよりも高く,それらの色相を3色覚 者のように知覚しているという可能性,もう1 つは,色の見えと色名との対応関係が3色覚者 とは異なっており,例えば3色覚者が茶と応答 するような見えの色を,より細かくカテゴライ ズして赤や緑,茶の色名を割り当てているとい う可能性である.本研究では,以上の可能性を 検討するために,色分類実験およびカテゴリカ

ルカラーネーミング実験を行い,2色覚者の色 弁別・色分類とカラーネーミングとの関係を調 査することを目的とした.

2.

方   法

ヒトがどのような色を見ているかをうかがい 知ることは非常に困難であり,2色覚者の場合 についてもそれは同様である1).そこで,本研 究では2色覚者,3色覚者に加え2色覚者の色 弁別特性を高精度に模擬するフィルタを用いる ことで,色の見えと色名との対応関係は3色覚 者のまま,色弁別特性が2色覚者となった場合 の色覚特性についても検討した.

以下,3色覚者4名,2色覚者4名,および 色弱模擬フィルタを着用した3色覚者4名に対 し行った,色分類およびカテゴリカルカラー ネーミングの結果について述べる.被験者とし て参加した2色覚者4名はPanel D15テストと 石原式色覚検査表により,強度の赤緑色弱であ ることが確認されている.

2.1 色分類実験

まず,各色覚タイプにおける色の類似度を調 査するため,色分類実験を行った.実験は暗室 内に設置したライトブース内で行い,ライト ブース内壁はOSA明度L1に相当するニュー トラルグレー,観測点における照度は947 lxで あった.

まず被験者は特定平面上のOSA色票セット を受け取り,それらの色票を同時に観察できる 状態で,類似した色同士の2つのカテゴリに分 – 205 –

2 色覚における色弁別・色分類とカラーネーミングとの関係

小峰 央志

*

・篠森 敬三

**

・中内 茂樹

*

*豊橋技術科学大学 情報工学系

〒441–8580 愛知県豊橋市天伯町雲雀ヶ丘1–1

** 高知工科大学 情報システム工学教室

〒782–8502 高知県香美市土佐山田町宮ノ口185

(VISION Vol. 19, No. 4, 205–208, 2007)

2007年夏季大会発表.ベストプレゼンテーション賞.

(2)

類した.そして,分類された2つのカテゴリを また同じ手続きで分け,最終的に8つのカテゴ リになるまでこれを繰り返した.実験はOSA表 色系のL0, j3, g2の平面について各々3 試行とした.

2.2 カテゴリカルカラーネーミング実験 各色覚タイプにおける色名応答を調査するた め,カテゴリカルカラーネーミング実験を行っ た.実験時の環境は色分類実験と同様である.

被験者は全OSA色票を1枚ずつ観測し,基 本11色名のいずれかで命名した.以上のタス クは3試行とした.また,観測の際に,色票以 外の色刺激が視界に存在しないよう配慮した.

2.3 MDSによる解析

色分類実験で最初に分割された色票間の類似 度が最小になるよう,類似度行列を作成し,こ れをMDS (Multidimensional Scaling)で解析し,

色票間の類似度を2次元平面上にプロットした.

また,プロットした色票に対応する各点のマー カをカテゴリカルカラーネーミング実験の色名 応答結果に対応させることで,色の類似度と色 名応答との関係を可視化した.

3.

結   果

3.1 色分類実験

色分類実験で,L0のj–g平面を4つのカテ ゴリまで分類したときの代表的な結果を図1に 示す.3色覚者(図1a)は縦横に延びる分割線 で色票を分類しており,色相に対応した色のま とまりを感じていることがわかる. 一方で,

フィルタ装着者(図1b)と2色覚者(図1c)

は色弁別の困難なg軸方向に延びるカテゴリに 色票を分類しており,両者が,弁別の困難な赤 緑方向に色のまとまりを感じていることがわか る.

3.2 カテゴリカルカラーネーミング実験 L0のj–g平面に対する色名応答をまとめた ものを図2に示す.図中のマーカの大きさと,

マーカ右下の数値は一致度に対応している.こ こで,一致度とは,ある色票に対する色名応答 すべてに占める,最頻応答色名の割合である.

– 206 –

図1 L0のj–g平面における色分類実験結果.3色 覚者は色相に応じた分類をしているが,2色覚 者とフィルタ装着者は弁別の困難な赤緑方向に 伸びるカテゴリに色票を分類している.

(3)

最頻応答色名が一意に定まらない場合は,low consensusとした.

3色覚者(図2a)は色相に対応する色名をま んべんなく応答しているが,フィルタ装着者

(図2b)は色弁別が困難になったことで,色名

のバリエーションが著しく減るという結果に なった.また,フィルタ装着者の色名カテゴリ はg軸方向に延びており,この結果は色分類実 験とよく対応している.しかし,2色覚者(図 2c)はフィルタ装着者と似た色のまとまりを感 じていることが色分類実験で示唆されたにもか かわらず,色名応答には赤や緑のカテゴリが含 まれており,むしろ3色覚者に近い特性を示し た.また一致度においても,2色覚者は3色覚 者よりやや劣るものの,比較的安定しているこ とがわかる.

3.3 MDSによる解析

2色覚者について,色分類実験で得られた類 似度を,MDSによって2次元平面上に投影した ものを図3に示す.マーカはカテゴリカルカ ラーネーミング実験での色名応答に対応してい る.

3色覚者とフィルタ装着者では,色相の大き く異なる色名の類似度は小さく,MDS後の平面 上では遠くに配置されるが,2色覚者では赤・

– 207 – 図2 L0のj–g平面におけるカテゴリカルカラー

ネーミング実験結果.2色覚者が見分けにくい はずの赤や緑の色名を応答している.

図3 L0のj–g平面におけるMDS解析結果(2色 覚者).2色覚者では,本来色相の大きく異な るはずの色名が,類似した色として配置される.

(4)

桃・橙と応答した色票と,緑と応答した色票が 近くに配置される(図3).このことから,本来 大きく色相の異なるはずの色名が2色覚者に とっては極めて近い色として知覚されており,

これらの色名の分類が細かい色の見えの違いを 手がかりにしていることがわかる.

3.4 OSA表色系での色名応答分布

OSA表色系での緑・茶の色名応答分布を,3 次元上にプロットしたものを図4に示す.3色 覚者では,茶(下向三角)の領域がすべての明 るさに渡って存在するが,2色覚者では茶の色 名が暗い部分にしか存在せず,明るい茶は緑

(四角)の色名カテゴリに属している.

4.

考察・まとめ

色分類実験では,フィルタ装着者と2色覚者 が似た色のまとまりを感じていることが示され たが,一方で,カテゴリカルカラーネーミング 実験では,2色覚者の色名応答が3色覚者に近 いという結果となった.これは,MDSによる解 析の結果からわかるように,2色覚者が赤や緑 を似た色として知覚していながらも,細かい色 の見えの違いを用いて,異なる色名を割り当て ているためではないかと考えられる.また,2 色覚者における茶の色名カテゴリが暗い領域の みに分布していたことから,明るさ情報をも積 極的に利用して色名を判断しているという可能 性が示唆された.こうした3色覚者との相違点 を,より詳細に調査することで,2色覚者の色 知覚のメカニズムに関する新たな知見が得られ るものと期待される.

文   献

1) L. T. Sharpe, A. Stockman, H. Jagle and J.

Nathans: Opsin genes, cone photopigments, color vision, and color blindness. K. R.

Gegenfurtner and L. T. Sharpe (eds.): Color vision from genes to perception. Cambridge University Press, 3–51, 1985.

2) V. Bonnardel: Color naming and categorization in inherited color vision deficiencies. Visual Neuroscience, 23, 637–643, 2006.

3) H. Brettel, F. Vienot and J. D. Mollon:

Computerized simulation of color appearance for dichromats. Journal of the Optical Society of Amnerica A, 14, 2647–2655, 1997.

– 208 – 図4 OSA表色系の緑・茶の色名応答の分布.2色覚 者では,暗い領域にしか茶のカテゴリが存在しない.

参照

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