5-(2)-4 三河島水再生センターにおけるスカム除去の取組み
北部第一下水道事務所三河島水再生センター 髙際 千映
1 はじめに
汚水処理をおこなう水再生センターにおいて、効率の良いスカム回収・除去方法を追求してい くことは、永遠のテーマである。
沈殿池や導水渠で発生するスカムは、既設のスカム回収・除去設備だけで全てを処理するのは 困難である。そのため、運転管理係の職員が直接現場で手作業によるスカム処理に、多くの時間 と労力を費やしている現状がある。今後、職員数が減少していく中で水再生センターを維持管理 していくために、現場作業の省力化、環境改善、安全性の向上を図らなければならない。
スカム回収・除去の効率化に関する取組みについては過去にいくつかの提案がされている。
三河島水再生センター運転管理係では、過去の事例も参考にし、施設の実態に即して以下のよ うな装置を導入し効果を上げているので報告する。
2 スカム対策その1「第一沈殿池導水渠の浸水式スプレーノズル」
2.1 第一沈殿池導水渠の問題点
下水道幹線から水再生センターに流入した汚水は、沈砂池で比較的大きな夾雑物が取り除かれ たのちポンプで揚水され、最初の水処理施設である第一沈殿池に導水渠から流入する。
この第一沈殿池導水渠の終端部には、大量のスカムが浮上し滞留するという問題点がある。こ の対策にスプレーが設置されているが、効果は局所的なものとなっている。
以下に、第一沈殿池導水渠のスカム浮上の原因と問題点を列挙する。
〔原因〕
(1) 第一沈殿池導水渠の流速が遅いため、スカムが発生・浮上し、成長して滞留する。
(2) 導水渠一面に厚さ数十㎝にまで成長したスカムは、固着して導水渠末端部に設置されてい るスカム可動堰を開けても流れ出ない。
(3) 導水渠の上部にはスカムを押し流すためのスプレーが設置されているが、効果のある範囲 は水があたる部分のみで、スプレーの水が届かない箇所からスカムが浮上し滞留する。
スプレーの効果は、水が あたる部分のみ
〔問題点〕
(1) 導水渠水面上に浮上し滞留したスカムの塊は、臭気や害虫発生の原因になるため、除去 する必要がある。
(2) 除去作業は、職員が週1~2回1時間程度2人で、図-3の道具を用いて人力作業で行な っている。
2.2 第一沈殿池導水渠スカム浮上への対策案
上記の第一沈殿池導水渠の問題点を解決するため、次のような対策を挙げた。
〔対策〕
(1) 導水渠内を流れる汚水表面の流速を速く保つこと。
(2) スカムが大きな塊に成長する前に、スプレーから水を噴射させてスカムを破壊すること。
(3) 現在は、効果が局所的であるスプレーの改善を図ること。
2.3 浸水式スプレーノズルの設置
そこで、三河島水再生センターでは、既設のスカムを沈殿させるためのスプレー(図-1)にか えて、図-4,5に示すような浸水式スプレーノズルを製作して、第一沈殿池導水渠に設置した。こ の浸水式スプレーノズルは、平成13年の技術発表会で中川水再生センターから報告され、通称「中 村式スカムスプレー」と呼ばれているものを当センターにも導入した。
このスプレーノズルの特徴は、既設のスプレーノズルが汚水の水面の上部から水を噴射するの に対して、浸水式スプレーノズルを汚水の水面と同水位から汚水の流れと平行に水を噴射するこ とである。
図-2 第一沈殿池導水渠のスカム滞留の様子 図-3 スカムを掻き寄せるせる道具
図-4 浸水式スプレーノズルの概念図 図-5 浸水式スプレーノズル導入後
2.4 浸水式スプレーノズルの導入効果
第一沈殿池導水渠に浸水式スプレーノズルをした結果、図-5に示すようにスカムの浮上・滞 留がなくなった。以下に動作状況・導入効果を記す。
〔動作状況・導入効果〕
(1) 汚水の流れと平行に水を噴射することで、スプレーの前方にあるスカムを壊すだけでな く、後方に浮上しているスカムも破壊しながら前に押し流すことが可能となる。
(2) 導水渠内の汚水水面上の流速を速く保つことで、スカムの発生・成長を抑制し、滞留を 防止することができる。
(3) 既設スプレーは、ノズルを数多く設置(1配管に4ノズル)することでスプレーできる範 囲を広げたが、その分スプレーの水圧が低い。浸水式スプレーノズルは、設置本数を限定
(1配管に1ノズル)することで高い水圧を維持し広範囲のスカムを破壊することができる。
以上のような導入効果を得ることによって、第一沈殿池導水渠にはスカムの浮上・滞留がな くなり、職員の人力によるスカム除去作業は削減された。
3 スカム対策その2「パイプスキマ水位検知器のスカム混入防止装置」
3.1 三河島水再生センターにおける第一沈殿池パイプスキマ
第一沈殿池に浮遊するスカムを回収するために、パイプスキマ設備が設置されている。三河島 水再生センター藍染系第一沈殿池のパイプスキマは、転倒角度を決める水位検知に圧力空気式水 位検知器を採用している。
この動作原理は、反応槽曝気用空気の一部を差圧計等を含む水位検知ユニットに取り込み、パ イプスキマに固定されたエアパージ管から吐出させる。パイプスキマの転倒にあわせエアパージ 管の吐出口を水中に水没させ、大気圧との差圧を測定することによって水位を検知するシステム である。
3.2 パイプスキマの水位検知器の問題点
パイプスキマの水位検知器には、次のような問題点がある。
〔問題点〕
(1) エアパージ管の吐出口が着水する水面上にスカムの塊が滞留している場合、転倒したエ アパージ管がスカムの塊に突き刺さることにより閉塞し、水位検知器として機能しなくな る。(検知機能低下)
(2) エアパージ管内にスカムが混入すると、エアパージ管が取り付けられているフレキシブ ルチューブをパイプスキマから取り外してスカムを除去する。フレキシブルチューブは、
パイプスキマと覆蓋との間の狭小な空間に設置されているため、作業性が悪く慣れた職員 でも1回の作業に1~2時間を要する。(劣悪環境)
(3) エアパージ管・フレキシブルチューブの取外しは、第一沈殿池の水面上での作業であり、
作業環境が劣悪で、かつ危険が伴う。(危険作業)
3.3 スカム混入防止装置の設置
圧力空気式水位検知器を効率よく機能させるため、中川水再生センターでの取組みを参考に、
下記に示すスカム混入防止装置を作成し設置した。
以下にスカム混入防止装置の動作原理を示す。
〔動作原理〕
(1) 直径約10 ㎝、高さ約20 ㎝のプラスチック容器を、水位検知器のエアパージ管が着水する 水面上に設置し、スカムがその位置に滞留するのを防止する。
(2) 容器下部に約 1 ㎝の穴を数個あけ、第一沈殿池と容器内部との水位を一致させる。さらに 容器に雑用水を常時注水することにより、容器内部にスカムが混入するのを防止する。
3.4 スカム混入防止装置の導入効果
(1) 年数回発生していたエアパージ管へのスカム混入が、スカム混入防止装置の導入以後、全 くなくなった。(機能性向上)
(2) 今まで、数時間を要していたエアパージ管内のスカム除去作業が、スカム混入防止装置を 取り付けた結果、年1回10 分程度の水洗浄の作業のみへと改善された。(効率化・安全性 向上)
図-6 スカム混入防止装置の様子 図-7 スカム混入防止装置の概念図
図-8 スカム混入防止装置の外観
エアパージ管
雑用水 注入管 滞留した スカム
容器内には スカムなし
4 スカム対策その3「雑用水の水圧を利用した浮上汚泥(スカム)処理装置」
4.1 藍染系第二沈殿池の現状と問題点
現在、三河島水再生センターでは、放流水質向上のために硝化促進運転をおこなっているが、
流入汚水の水質や気象条件によって、第二沈殿池では以下のような問題点が生じている。
〔問題点〕
(1) 硝化が進み過ぎてしまうと第二沈殿池で無酸素状態になり、脱窒で発生した窒素ガスと ともに沈殿すべき汚泥(スカム)が浮上してしまう。
(2) 第二沈殿池流入側(上流側)には、浮上した汚泥を沈殿させるスプレーが設置されてい るが、沈殿部(下流側)で浮上汚泥が発生すると除去する方法がない。
(3) 第二沈殿池で発生し浮上した汚泥は、放流水質の悪化や臭気発生などの悪影響を及ぼす。
(4) 職員が週3回程度1~2時間雑用水を散水して、浮上した汚泥を破壊・沈殿させる作業を おこなっていた。
4.2 浮上汚泥処理装置の開発
第二沈殿池下流部分で発生する浮上汚泥を除去設備のある上流側に効率よく返水するため三 河島水再生センターでは、以下に示す雑用水の水圧を利用した浮上汚泥処理装置を製作し設置し た。
以下に、浮上汚泥処理装置の特徴を挙げる。
(1) 小口径(15 ㍉)のから雑用水を噴出させることにより、周囲の水とともに池の表面部に 浮上する汚泥を吸込み、大口径(100㍉)の吐出口から一気に吐出して浮上汚泥を破壊する。
(2) 装置の駆動動力は、散水栓からの雑用水の水圧のみであり、ランニングコストに優れて いる。
(3) 製作に用いた主な材料は、センター内にある残材を使用した。
(4) 塩化ビニルパイプ製のため、溶接によって角度や形状を容易に調節できるため、各池の 設置条件に対応できる。
図-9 浮上汚泥処理装置の外観 塩化ビニル管
口径100㍉
塩化ビニル溶接で 角度を調節
雑用水ホース 口径15㍉
4.3 浮上汚泥処理装置の導入効果
浮上汚泥処理装置を導入したことで、次のような効果が得られた。
〔導入効果〕
(1) 浮上汚泥処理装置を導入した沈殿地では、浮上する汚泥が効率よく除去され、職員によ る散水作業が削減された。装置のメンテナンスは、月1回20分程度の清掃・点検のみであ る。(作業の効率化・安全性向上)
(2) 浮上汚泥処理装置から破壊されて吐出された汚泥は、浮上することなく沈殿させること ができる。(水処理の改善)
図-10 浮上汚泥処理装置 動作概念図
図-11 浮上汚泥処理装置 設置の様子
浮上汚泥の 吸込み
吐出し
流入側 放流側
大量の浮上汚泥
雑用水ホース 処理水の流れ
85㎝
バッフルプレート 吐出水
120L/min
雑用水 75L/min
雑用水の散水
φ 100
第二沈殿池へ流入
30 ㎝
φ 15
浮上汚泥 雑用水の水圧によって、
浮上汚泥が吸込まれる
4.4 浮上汚泥処理装置の他施設への水平展開
浅草系第二沈殿池では、沈殿池上部に覆蓋がないことから毎年5月頃、流入部に水草(藻)が 発生しやすく、臭気や水質悪化の原因となっており、除去作業に多くの手間を費やしていた。
主に水草(藻)が発生するのは、流入側(上流側)であった。そこで浮上汚泥処理装置にスカ ムが破壊されて吐出される能力を活かし、沈殿側(下流側)に水草(藻)を吐き出すように設置 した。吐出された水草(藻)は沈殿し、放流水質の向上が図れている。
5 おわりに
各種のスカム対策装置を導入することによって、現場作業の大幅な効率化・安全性が向上した。
導入効果の大きい装置は、順次増設していく予定である。
今後も、水再生センターの維持管理の効率化に向けて、業務改善に取組みます。
図-12 浅草系第二沈殿池 図-13 浮上汚泥処理装置 設置の様子