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3 摂食嚥下障害の特徴に基づいた対応領域

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Academic year: 2021

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飲み込む)を変える動きの機能(捕食)を評価することが一連の摂食嚥下機能獲 得に大きく影響することから,準備期を図 2-3に示したように捕食期と咀嚼期 に分けてプロセスモデルとすることも多い(p.57 4章表 4-1参照).

摂食嚥下障害のある多くの小児や,機能獲得がなされないままの成人や高齢者 は,経口摂取する種々の食物の物性や味,香りなどを経験していない.経験のな い感覚刺激に対応した機能発達を目指す小児にとっては,基本的な意味ではリハ ビリテーションではなく,摂食嚥下機能獲得のためのハビリテーションと理解す るのが適当であろう.

これに対して,おもに成人期における摂食嚥下障害では,食物を食べた経験が あり,摂食嚥下機能は獲得されたものの,脳卒中や神経疾患などにより失われた 機能のリハビリテーション(再獲得)を目指すものである.

高齢者の機能維持(回復)は,摂食嚥下機能が加齢による機能減退を生じるが,

その進行をできるだけ遅くし,または一部回復することを目指す領域である.

このように摂食嚥下障害はその対象領域の障害特徴を考慮して,ハビリテーシ ョン,リハビリテーション,機能維持の3領域に分けられる.この3領域の区 別は,対象者の状態と対応の違いの基本となるので十分な理解が必要である.

3 摂食嚥下障害の特徴に基づいた対応領域

図 2-3 従来の摂食嚥下機能のプロセスモデル     :咀嚼で形成された食塊を舌で正中に集め ながら咽頭に移送する

口腔期     :嚥下反射により

食道へ食塊を送る

咽頭期     :食道から胃に食 塊を送る

食道期

リハビリテーションと摂食嚥下リハビリテーション

CHAPTER

2

(3)

摂食嚥下の一連の動作を理解するために口腔・咽頭・喉頭領域の構造,生理学 的知識を系統的に修得する.

呼吸のための空気の通り道を気道とよび,空気は「鼻腔→咽頭→喉頭→気管→

気管支→肺」の順に体内をめぐる.一方,食物,飲み物は「口腔→咽頭→食道→

胃」という順序をたどる.すなわち気道と飲食物の通り道は咽頭を共有する.呼 吸,摂食嚥下は「咽頭」という舞台を共有しており,非常に複雑なメカニズムで その舞台を使い分けている(図 4-1).

摂食嚥下の一連の動作は,随意運動と反射運動を伴った非常に複雑な一連の動 作である.この動作を理解するためには,解剖・生理学的知識の総合的な学習が 望まれる.

摂食嚥下に関わる構造(解剖)

本項の要点

図 4-1 空気と飲食物の通り道の関係 咽頭は2つの通り道が交差する場所でもある.

鼻腔

口腔

喉頭

咽頭

気管 食道 空気

飲食物 CHAPTER

摂食嚥下機能のメカニズム

4

(4)

1 摂食嚥下における咀嚼の位置づけ

「咀嚼(mastication, chewing)」とは,食品の取り込みから,咬断あるいは粉砕,

唾液との混和による食塊の形成,口腔から咽頭への搬送までの非常に複雑な過程 を含んでおり,多くの器官が関与している.「摂食嚥下」における咀嚼の位置付 けは,5期モデルにおける準備期ならびに口腔期,プロセスモデル1)における第 1期輸送(stage Ⅰ transport),food processing,第2期輸送(stage Ⅱ transport) を含んでいる(図 5-9).歯科職種が摂食嚥下リハビリテーションに参加する際 には,この5期モデルやプロセスモデルに基づいて,咀嚼が不十分であった場合,

どのような問題が起きるかを理解しておく必要がある(表 5-1).

2 臨床における咀嚼の評価法

1.咬合力検査

歯列または義歯を用いて嚙みしめた場合に生じる圧の大きさ(最大咬合力)を 測定する検査で,保健医療では「咬合圧検査」として口腔機能低下症の診断に用

1 咀嚼機能の評価法(歯科補綴学的な咀嚼の評価法)

図 5-9 摂食嚥下の 5 期モデル.プロセスモデルと咀嚼の関係 食物の認識と食べる

という意思決定,口 に取り込む準備行動

口腔に取り込 んだ食物の舌 による臼歯部 への搬送

臼歯部における食物の 粉砕,唾液との混和に

よる食塊の形成 嚥下反射による咽頭,口 腔の食塊の食道への駆出

(一部口腔に残った形成 途中の食塊はさらに破砕 が続けられる)

舌による食塊の中咽頭 への送り込み 食物の口腔への取 り込み,知覚,咬 断,粉砕,食塊形成

嚥下反射によ る食道への食 塊の駆出 食塊の口腔

から咽頭へ の移送

蠕動による 食塊の胃へ の搬送 認知期・先行期

モデル5 期

プロセスモデル

準備期 口腔期 咽頭期

第1期輸送 食物破砕

咀嚼 Mastication, Chewing

下咽頭通過 第2期輸送

食道期

(5)

歯科衛生士が実施する摂食嚥下障害の評価には,患者の全身的な状態を把握す るフィジカルアセスメントと,摂食嚥下障害の初期評価として行われるスクリー ニング検査がある.フィジカルアセスメントとスクリーニング検査の結果,摂食 嚥下障害が疑われた場合には,医師または歯科医師が診断機器による精密検査を 実施し,確定診断を行う.ここでは,摂食嚥下障害の評価に必要なアセスメント と検査について,次の点をねらいとし,解説する.

・フィジカルアセスメントを説明できる.

・摂食嚥下機能のスクリーニング検査を習得する.

・嚥下内視鏡検査と嚥下造影検査を理解することができる.

1 医療情報の聴取

1.全身状態,生育歴(表 9-1)

全身状態を含めた生育歴,病歴について,主治医からの診療情報提供書を参考 に,家族からも詳細に聴取する.身体状況においては,服薬状況やアレルギーの 確認を行う.また,出生時の状況は,現疾患とともに摂食嚥下障害の原因や経過 を知るうえで重要な情報である.

粗大運動能,微細運動能(手指機能),認知機能については,特に歯科で評価 が可能であると,その後の方針の立案に有用であるため,詳細を以下に示す.

1)粗大運動能の評価(出生時の状況)

定型発達児の運動機能は,図 9-1に示すように頸定(頸すわり),座位,つか まり立ちから独歩へと一定の順番で発達していく.口腔機能も哺乳から始まり,

舌が前後から上下,左右の順序で発達し,左右に動き始めると咀嚼(すりつぶし の動き)の開始となる.粗大運動能と摂食機能との関連は深く,定型発達児では,

本章の要点

歯科衛生士が行うスクリーニングテストと観察評価

1 発達期の摂食嚥下機能の評価

CHAPTER

摂食嚥下の評価

9

(6)

具を選択することが安全な食事をすることにつながる.色や素材などの工夫も食 べる意欲につながる.

1)スプーン(図 11-6)

一口量に見合ったボール部の大きさのものを選択する.捕食機能が弱い場合,

ボール部が深いものだと食物を取り込みにくくなるため,浅いものや平たいもの を選択する.また,手指の機能が弱い場合は,柄の部分を太くすると持ちやすく なる.

2)皿(図 11-7)

片麻痺などで片方の手しか使えない場合,取りこぼすことなくスムーズに食器 からすくうことが難しいことがある.内壁がある皿はスプーンを内壁に押しつけ て食物をすくうことができる.また,食器を押さえて食事をすることができない 場合は,滑り止めマットの上に食器を置くなどの工夫をするとよい.

3)コップ(図 11-8,9

通常のコップを使用すると頸部を後屈するため,誤嚥するリスクが高くなる.

コップの縁を切ることで,鼻に当たらず頸部の過伸展を防ぐことができる.また,

上唇の介助が必要な場合もカットしたコップは使いやすい.Uコップ®などの 市販品もあるが,紙コップをカットして簡単に作ることも可能である.コップの 縁は薄いほうが口唇を閉鎖しやすく漏れにくい.

5.食形態(物性,温度,味)

摂食嚥下障害の程度や摂食嚥下機能に適した食形態であるかを確認し,合って いない場合は,適した食形態を提案する.評価に基づき,機能を上げる,食思を 上げる,など目的をもち,ペースト状にする.とろみをつける,など工夫する.

6.介助者の状況

(図 11-10)

介助者の位置や姿勢,一口量や口へ運ぶペースなど,食事介助の状況を把握し 適切な介助方法を指導する.

7.食事にかかる時間,食事中・食後の状況

摂食嚥下障害があると,機能障害や疲労のため食事時間が長くかかってしまう ことがある.食べられないものを残す,食事中や食事後のむせが多くなる,食事

図 11-6 スプーンの一例 図 11-7 食器(皿)の一例

滑り止めマットの上に食 器を置くことで食器が動 かなくなる(食器を手で 押さえなくてよい)

参照

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