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画 教育研究員研究報告書

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Academic year: 2021

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全文

(1)

高等学校

平 成11年 度

教 育 研 究 員 研 究 報 告 書

東 京 都 教 育 委 員 会

(2)

平 成11年

教 育 研 究 員(高 校 ・地理歴 史)名 簿

学 区 学 校 名 氏 名

都 立 羽 田 高 等 学 校 小 林 章 浩 世界 史 都 立 豊 島 高 等 学 校 光 森 佐 和 子 都 立 多 摩 高 等 学 校 中 根 利 和 都 立 大 森 東 高 等 学 校 古 川 博 久 都 立 広 尾 高 等 学 校 鈴 木 純 平

都 立 大 泉 学 園 高 等 学 校 中 家 健

日 本 史 都 立 忍 岡 高 等 学 校

都 立 紅 葉 川 高 等 学 校 河 合 敦 都 立 山 縞 高 等 学 校 會 田 康 範 都 立 秋 川 高 等 学 校 松 浦 明 博 地 理 都 立 羽 村 高 等 学 校 石 井 哲 也

担 当

東京都教育庁指導部高等学校教育指導課 指導主事 都 立 教 育 研 究 所 企 画 調 査 部 指導主事

之二

基浩

橋田

高横

(3)

国 際 社 会 に 生 き る 人 間 と し て 、 自 ら課 題 を追 究 し、 行 動 す る 資 質 を養 う た め の 授 業 展 開 の 工 夫

主 題 設 定 の 理 由 と研 究 の 経 過 1人 や 物 の 移 動 に よ る 文 化 形 成

12004

イ ン ドの ス パ イ ス が も た ら し た 世 界 の 食 文 化 へ の 影 響 人 の 移 動 に よ る 台 湾 社 会 の 変 遷

ア イ ル ラ ン ドの ジ ャ ガ イ モ 飢 謹 人 類 史 上 に お け る 縄 文 文 化 の 意 味

縄 文 人 の 交 易(人 と物 の 移 動)一

040000U7

9

II日 本 と 諸 外 国 と の 接 触 か ら派 生 し て き た 問 題

04

沖 縄 の 歩 み と諸 外 国 と の 関 係 日 本 産 の 銅 が 清 国 に 与 え た 影 響

欧 米 列 強 の ア ジ ア 進 出 と早 期 開 国 の 可 能 性 統 一 に 向 け た ヴ ェ トナ ム の 独 立 運 動 に 日本

i13U711111

m日 々 の 生 活 の 場 か ら歴 史 をみ つ め る

12

和 風 住 宅 の 源 流 を さ ぐ る

河 川 と 共 に 育 ん で き た 流 域 の 生 活 と 文 化 多 摩 川 流 域 を 素 材 と し て

Q11

3旧 東 海 道 沿 い に 見 る 民 間 信 仰 ま と め

13UnQ4

(4)

研 究 主 題

国 際 社 会 に 生 き る 人 間 と し て 、 自 ら課 題 を 追 究 し、 行 動 す る資 質 を養 う た め の 授 業 展 開 の 工 夫

主 題 設 定 の 理 由 と 研 究 経 過

急 速 な 経 済 の 発 展 に め ざ ま しい 交 通 ・情 報 網 の 発 達 に 伴 っ て 、 国 際 社 会 に お い て ど の よ う に 主 体 的 に 生 き て い く か が 求 め ら れ て い る 。 ま た 、 国 際 化 の 進 展 は 、 日本 や 世 界 の 地 域 社 会 の 生 活 や 文 化 と い う も の を 見 つ め 直 す と い う こ と も大 き な 課 題 で あ る 。

こ の よ う な 社 会 の 大 き な 変 化 に 対 応 し、 子 ど も 一 人 ひ と りに 「生 き る 力 」 を培 う こ と を 基 本 的 な ね らい と し て 新 し い 学 習 指 導 要 要 領 が 、 昨 年 告 示 さ れ た 。 生 徒 が 自 ら 考 え 、 自 ら 学 ぶ 学 習 の 在 り方 を 追 究 す る こ とが 求 め られ て お り、 本 部 会 で は 以 下 の 三 つ の テ ー マ を 設 定 し、

生 徒 が 、 幅 広 く 問 題 意 識 を 持 た せ 課 題 を 追 究 す る 心 、 そ して 実 際 に 行 動 す る 力 を 育 成 し 、 充 実 し た 生 活 を 送 る こ と が で き る よ う に す る こ と を 目指 し、 こ の 研 究 に 取 り組 ん だ 。

1人 や 物 の 移 動 に よ る 文 化 形 成

交 通 ・通 信 手 段 の 発 達 に よ り 、 国 際 的 な 結 び 付 き が 今 後 ま す ま す 深 ま っ て い くで あ ろ う 。 世 界 の 異 な る 地 域 の 問 で 人 と物 の 交 流 が 盛 ん で あ る 。 しか し 、 過 去 の 歴 史 に お い て も 、 盛 ん な 人 と物 の 移 動 は 存 在 し て い た 。 そ し て 、 人 的 ・物 的 な 移 動 は よ り豊 か で 新 しい 文 化 を 創 り上 げ て き た 。 こ の よ う な 文 化 の 接 触 か ら 新 た な 文 化 形 成 す る に い た る 過 程 を 学 ぶ こ と は 、 現 代 世 界 の か か え る 諸 問 題 を 考 察 す る 糸 口 と な る で あ ろ う 。 そ こ で 、 本 グ ル ー プ で は 、 人 ・物 の 移 動 や 交 流 か ら 生 じ る 異 文 化 の 接 触 が よ り豊 か で 、 新 し い 文 化 を 形 成 す る 可 能 性 に 注 目 し、 「ス パ イ ス 」

「台 湾 」 「ア イ ル ラ ン ド」 「縄 文 文 化 」 を 題 材 に 、 国 際 社 会 の 中 で 他 者 と の 共 生 を 目 指 し て 生 き る 資 質 を 育 成 す る 授 業 展 開 の 工 夫 を試 み た 。

II日 本 と諸 外 国 と の 接 触 か ら派 生 して き た 問 題

現 在 、 交 通 ・通 信 網 の 発 達 や 情 報 化 の 進 展 に 伴 い 、 世 界 が 相 対 的 に 縮 小 して い く な か で 急 速 に 国 際 化 が 進 ん で い る 。 こ の よ う な現 代 の 国 際 社 会 の な か で は 、 生 徒 自 身 が 国 家 の わ く を 越 え て 互 い の 価 値 を 認 め あ い 、 同 時 に 自 分 の 意 志 を 相 手 に は っ き り と伝 達 す る 資 質 を 養 っ て い く こ と が 、 よ り必 要 で あ る 。 こ の 課 題 の 解 決 の た め に は 、 過 去 の 事 例 を 学 び 、 歴 史 的 事 実 に 対 す る 認 識 を 深 め さ せ る こ と で 、 そ の 中 か ら 得 た 知 恵 や 教 訓 を 将 来 に 生 か して い く こ とが 不 可 欠 と な る 。 そ こ で 本 グ ル ー プ で は 、 諸 外 国 と の 接 触 か ら派 生 し て き た 問 題 を 取 り上 げ 、 授 業 展 開 の 工 夫 を 試 み た 。

日 々 の 生 活 の 場 か ら歴 史 を み つ め る

社 会 全 体 が 国 際 化 し 、 様 々 な 異 文 化 に接 す る 機 会 が 増 え て い る 。 異 文 化 を 理 解 し て い く こ と も重 要 だ が 、 そ れ 以 上 に 自 己 の 足 元 を 見 つ め る こ と が 大 切 で あ る 。 日 々 の 生 活 の 場 に は 、 実 に 多 くの 過 去 か ら引 き継 が れ て き た 風 俗 ・習 慣 等 が 多 く 、 私 た ち の 生 活 も そ の 影 響 を 多 分 に 受 け て い る 。 ま た 、 身 近 に 触 れ て い る 自 然 や 風 景 も 人 為 的 に 変 化 し て き て い る と い う 意 味 で 、 歴 史 的 に と ら え る こ とが 大 切 で あ る 。 本 グ ル ー プ で は 、 現 代 生 活 の 中 で 通 常 接 し て い る 事 象 や 自 然 を 歴 史 的 に 考 察 す る と い う視 点 で 教 材 化 を 図 り、 生 徒 の 主 体 的 な 活 動 を 促 す 教 材 を も り こ み な が ら 系 統 的 な 学 習 内 容 を 理 解 で き る よ う に 配 慮 した 。 具 体 的 に は 、 和 風 住 宅 の 源 流 を探 る 学 習 、 多 摩 川 流 域 を 素 材 と し た 地 域 史 学 習 、 地 域 社 会 に 残 る 民 間 信 仰 を探 る 学 習 を研 究 テ ー マ と した 。

一2一

(5)

1人 や 物 の 移 動 に よ る 文 化 形 成

1イ ン ドの ス パ イ ス が も た ら した 世 界 の 食 文 化 へ の 影 響

(1)教 材 と し て 取 り上 げ た 理 由 イ ン ドの 食 文 化 を 特 徴 づ け る代 表 的 な も の と し て ス パ イ ス が あ る 。 大 航 海 時 代 、 ヨ ー ロ ッパ の 人 々 は 胡 椒 の 直 接 貿 易 を 求 め て イ ン ドを 目指 し 、 命 が け の 航 海 に 出 た 。 そ し て 、 胡 椒 を は じめ 、 世 界 に 広 ま っ た ス パ イ ス は 、 世 界 各 地 で そ れ ぞ れ の 食 文 化 の 充 実 に 大 き く貢 献 して き た 。 こ の 熱 帯 地 域 特 産 で あ る ス パ イ ス は 、 イ ン ドの 食 文 化 を 特 徴 づ け る も の で あ る 。 ま た 世 界 の 食 文 化 に 取 り入 れ られ 、新 しい 食 文 化 の 形 成 に 一 役 買 っ た も の と して 取 り上 げ る こ とが で き る 。 こ れ ら は 身 近 な も の か ら 国 際 社 会 に 目 を 向 け さ せ て い く こ と を ね ら い と し て い る 。 そ して 、 ス パ イ ス を 一 つ の 例 と して 、 熱 帯 作 物 の 生 産 か ら流 通 に 至 る ま で の 今 日 的 な 課 題 を 考 察 さ せ 、 生 徒 が 自 ら 考 え 、 課 題 を 追 究 して い く こ とが で き る よ う 本 教 材 を取 り上 げ た 。

(2)本 時 の ね ら い 本 時 は3時 間 構 成 の 第2時 限 に 当 た る 。 第1時 限 で は 、 わ が 国 の 生 活 文 化 と は 異 な り、 主 と し て ヒ ン ズ ー 教 に基 づ い た イ ン ドの 生 活 と文 化 に つ い て 紹 介 す る 。 本 時 は ス パ イ ス(と りわ け 胡 椒)に 焦 点 を あ て な が ら 、 イ ン ドの 食 文 化 に つ い て 考 え 、 そ の ス パ イ ス が 世 界 の 食 文 化 に 大 き な 影 響 を与 え て き た 点 に つ い て 考 察 す る 。 第3時 限 で は 、 授 業 時 間 外 に 実 際 に 有 志 の 生 徒 と イ ン ドカ リ ー を つ く り 、 そ の 様 子 を ビ デ オ に お さ め 、 全 員 で そ の 調 理 過 程 を 見 た 上 で イ ン ド さ な が ら に 手 を 使 っ て 味 わ っ て み る 。 学 習 指 導 要 領 で の 関 連 分 野 は 、 「地 理A」 の 「(2)地域 性 を 踏 ま え て と ら え る現 代 世 界 の 課 題 」 の 「ア 諸 地 域 の 生 活 ・ 文 化 と 環 境 」、 「地 理Bの(2)現 代 世 界 の 地 誌 的 考 察 」 の 「イ 国 家 規 模 の 地 域 」 で あ る 。

(3)展 開 例

学 習 項 目 学 習 活 動 備 考

○ ス パ イ ス を ○ カ リ ー 、 タ ン ド リ ー チ キ ン や チ ャ イ に つ い て 紹 介 使 っ た イ ン ド す る 。 特 に カ リ ー に つ い て は イ ン ドで は ど の よ う に

導 料理 食 べ ら れ て い る か(頻 度 、 材 料 、 味 な ど)紹 介 す る 。

○ ス パ イ ス と ○ ス パ イ ス の 種 類(胡 椒 、 シ ナ モ ン 、丁 字 な ど)と 主 な ス パ イ ス の サ は ど の よ う な 色 な ど生 徒 が 調 べ て き た こ と を 発 表 しあ い 、 人 間 の ン プ ル を 回 覧 も の か 食 生 活 に お け る ス パ イ ス の 効 果(防 腐 、 食 欲 増 進 、 資 料 「ス パ イ ス と

味 付 け 、 香 り付 け 他)を 生 徒 ど う しで 意 見 交 換 し あ は 」

う 。

0大 航海 時代 ○ そ の 昔 、 イ ン ドの 胡 椒 が ヨ ー ロ ッ パ で 金 と 同 等 の ワ ー ク シ ー ヨ ー ロ ツ パ 人 価 値 を も っ て い た こ と を 説 明 し 、 大 航 海 時 代 に は バ 「大 航 海 時 代 の 遠 を 遠 洋 航 海 に ス コ ・ ダ ・ ガ マ や カ ブ ラ ル ら が イ ン ド と 直 接 貿 易 を 洋 航 海 」

か り た て た イ 行 う た め に 命 が け の 航 海 を 行 っ た こ と を 紹 介 す る 。 ン ドの 胡 椒

(6)

○ 日 本 に も 伝 ○ 昭 和 初 期 、 ラ ス ・ ビ ハ リ ・ボ ー ス に よ っ て 日 本 に 資料 「新宿 中村屋

わ っ た イ ン ド 伝 え ら れ た イ ン ド カ リ ー の エ ピ ソ ー ド を 紹 介 し 、 カ と し て(日 本 に 初 の ス パ イ ス 料 リ ー が 今 日 か た ち を 変 え な が ら も 日本 人 の 食 文 化 の め て イ ン ド カ リ ー

開 理 一 つ と し て 大 き く根 付 い て い る こ と を 確 認 す る

を 伝 え た 人)」

○ 世界の料 理 ○ 胡 椒 を 使 っ た 世 界 各 地 の 代 表 的 な 料 理 を 紹 介 し あ ワ ー ク シ ー ト 「胡

に 使 わ れ る よ う 。 椒 を 使 っ た 世 界 各

う に な っ た 胡 地 の 料 理 」

○ ス パ イ ス の ○ 胡 椒 そ の 他 の ス パ イ ス は イ ン ドの 食 文 化 に お い て 意義 不 可 欠 な も の で あ る と 同 時 に 、 世 界 の 食 文 化 に 影 響 を 与 え 、 充 実 した 世 界 の 食 文 化 の 形 成 に 一 役 買 っ た

○熱帯作物 の

も の で あ る こ と を確 認 す る 。

○ ス パ イ ス ほ か い くつ か の 熱 帯 作 物 が 、 す で に 世 界 レ ポ ー ト課 題 「生 生 産 ・流 通 に

お け る 問 題 点

の 食 文 化 に お い て は な くて は な ら な い も の で あ る こ と を 確 認 し、 そ れ ら 熱 帯 作 物 の 生 産 や 流 通 に お い て

産 や 流 通 に お い て 問 題 を か か え る 熱 と 課 題 よ く見 ら れ る 問 題 点 や 今 後 の 課 題 に つ い て ま とめ る 。 帯 作 物 」

(4)評 価 の 観 点 ① ス パ イ ス が イ ン ドの 食 文 化 を 特 徴 づ け る も の と な っ て い る こ と を 把 握 で き た か 。 ② ス パ イ ス が 世 界 の 食 文 化 に 取 り入 れ ら れ 、 世 界 の 食 文 化 を 充 実 させ る も の と し て 大 き な 存 在 と な っ て い る こ と を 理 解 で き た か 。 ③ ス パ イ ス や そ の 他 の 熱 帯 作 物 が 、 生 産 か ら 流 通 に 至 る ま で の 課 程 で 様 々 な 問 題 を か か え て い る こ と を理 解 し、 今 後 の 課 題 を 考 察 で き た か 。

(5)指 導 上 の 留 意 点 ① 「大 航 海 時 代 」 や 「日 本 に は じめ て 伝 わ っ た イ ン ド カ リ ー 」 に つ い て は 史 実 の 説 明 に 深 入 り しす ぎ な い よ う に 注 意 す る 。 ② 展 開 の 最 初 の 項 目 で 、 イ ン ドで 安 価 な ス パ イ ス が 、 な ぜ ヨ ー ロ ッパ で は 高 価 に な っ た か 生 徒 に 考 え さ せ る 。(考 え る ヒ ン ト と し て ヨ ー ロ ッパ 人 は イ ン ド との 直 接 貿 易 を 望 ん だ こ と を あ げ る 。)③ 世 界 各 地 の 料 理 の 紹 介 に お い て は よ く知 ら れ て い る もの で 、 生 徒 が わ か りや す く興 味 ・関 心 を も て る よ う な もの を 示 す 。 ④ 熱 帯 作 物 の 生 産 ・流 通 に お け 問 題 点 と 課 題 の 考 察 は 、 生 徒 が 取 り組 み や す く な る よ う

に 状 況 を 見 て 作 物 名 を 提 示 した り 、 事 例 を 一 つ 二 つ 紹 介 した りす る 。

ま た 、 生 徒 が 調 べ て き た 問 題 点 の 補 足 説 明 に は 、 特 に プ ラ ン テ ー シ ョ ン や モ ノ カ ル チ ャ ー 経 済 、 大 地 主 制 度 の 形 成 な ど に 焦 点 を あ て て 説 明 し、 熱 帯 作 物 の 生 産 地 域 は か つ て の 植 民 地 で あ っ て 、 い ま だ に そ の 影 響 が 大 き い こ と を 理 解 させ る 。

一4一

(7)

2人 の 移 動 に よ る 台 湾 社 会 の 変 遷

(t)教 材 と し て 取 り上 げ た 理 由 か つ て 日本 の 植 民 地 で あ っ た 台 湾 の 歴 史 は 外 交 関 係 が 途 絶 え た た め か 、 同 じ過 去 を もつ 朝 鮮 半 島 に 比 べ て あ ま り詳 し くは 知 ら れ て い な い 。 南 方 の 隣 島 の 事 情 を 知 る 意 味 か ら も 、 日本 の 歴 史 を 知 る 意 味 か ら も、 台 湾 の 歴 史 を 知 る こ と は 、 非 常 に 意 義 が あ る 。

ま た 、 台 湾 の 今 日ぽ で の 歴 史 は 、 人 の 移 動 に 伴 う 社 会 変 化 の 繰 り返 しで あ っ た 。 マ レ ー ・

ふっ けん はっ か

ポ リ ネ シ ア 系 の 先 住 民 が 暮 ら して い た 台 湾 に 、17〜19世 紀 に 中 国 大 陸 南 部 か ら 福 建 系 ・客 家 系 の 人 々 が 移 住 し、 や が て 多 数 派 と な っ た 。 日 清 戦 争 後 の1895年 に 日本 領 と な る と 、 日 本 人 が 支 配 者 と して や っ て 来 た 。 第2次 世 界 大 戦 後 の1945年 に 台 湾 は 日本 領 か ら 中 華 民 国 領 と な り、 そ の 後 の1949年 に は 大 陸 で 中 国 共 産 党 との 内 戦 に敗 れ た 国 民 党 の 一 団 が 支 配 者 と し て や っ て 来 た 。 こ れ らの 人 の 移 動 と支 配 者 の 交 替 に 伴 い 、 台 湾 の 社 会 ・文 化 の 状 況 は そ の 都 度 大 き く変 化 した 。 台 湾 の 歴 史 は 、 人 の 移 動 に 伴 う社 会 的 な 変 化 を 考 察 す る上 で 非 常 に 参 考 と な る で あ ろ う 。

現 在 、 台 湾 は 東 ア ジ ア の 新 興 工 業 地 域(NIES)の 中 で 有 力 な 地 位 を 占 め 、 日本 と の 経 済 的 な 結 び 付 き は 強 い 。 ま た 、 東 ア ジ ア の 政 治 情 勢 の 中 で 、 台 湾 の 前 途 が 国 際 的 な 注 目 を 集 め て い る 。 今 後 の 日 本 に と り、 台 湾 は 様 々 な 意 味 で 関 心 を 向 け る よ う な存 在 と な る で あ ろ う 。

以 上 の よ う な 背 景 か ら 、 現 代 の 日 本 の 高 校 生 が 台 湾 に 目 を 向 け 歴 史 的 ・地 理 的 に 学 習 す る こ と は 、 国 際 理 解 お よ び 自 国 理 解 の 観 点 か ら 意 義 が あ る と判 断 し、 教 材 と して 取 り上 げ た 。

(2)本 時 の ね ら い 本 時 は4時 間 構 成 の 第2時 限 に 当 た る 。 第1時 限 で は 「日 本 の 開 国 と 日 清 戦 争 」 を 取 り上 げ 、 日 本 の 台 湾 領 有 を 学 習 す る 。 本 時 で は 台 湾 の 歴 史 を概 観 す る が 、 そ の 際 に 「人 の 移 動 に伴 う 社 会 の 変 化 」 に 焦 点 を 当 て る 。 第3時 限 で は 「清 に 押 し寄 せ る 帝 国 主

ぼ じゆつ

義 」 を 取 り上 げ 、 戊 戌 政 変 と 日 露 戦 争 に つ い て 学 習 す る 。 第4時 限 で は 「ア ジ ア の 人 々 の 目

しん がい

覚 め 」 を 取 り上 げ 、 辛 亥 革 命 を 学 習 す る 。 な お 、 本 時 は 特 定 の 地 域 ・特 定 の 事 象 を 取 り 上 げ る テ ー マ 学 習 と し て 扱 う こ と も で き る 。 学 習 指 導 要 領 で の 関 連 分 野 は 、 世 界 史Aの 「(2)一体 化 す る 世 界 」 の 「エ.ア ジ ア 諸 国 の 変 貌 と 日 本 」、 ま た は 世 界 史Bの 「(4)諸 地 域 世 界 の 結 合 と 変 容 」 の 「エ.世 界 市 場 の 形 成 と ア ジ ア 諸 国 」 お よ び 「オ.帝 国 主 義 と 世 界 の 変 容 」 で あ る 。

(3)展 開 例

学 習 項 目 学 習 活 動 備 考

・台 湾 の 言 語 ○ 台 湾 の 多 言 語 の 状 況 を 実 体 験 す る た め に 、CDで ・資 料 「世 界 この 複 雑 な 状 況 語(北 京 語)、 台 湾 語(福 建 語)、 ツ ォ ウ 語(先 住 民 語 と ば の 旅 」 のC

の ひ と つ)を 聞 い て み る 。 D

○ 台 湾 の テ レ ビ で は 、 放 送 言 語 を 聞 い て 理 解 で き な い 人 の た め に 字 幕 が よ く出 る こ と を確 認 す る 。

(8)

・清 代 ま で の ○ 台 湾 の 先 住 民 が マ レ ー ・ポ リ ネ シ ア 系 の 諸 民 族 で あ ・資 料 「先 住 民 台湾 り、 現 在 は 東 部 の 山 地 に 住 ん で い る こ と を 資 料 で 調 べ 族 を 図 解 す る 」

る 。 「大 陸 か ら 台 湾

てい せい こう

○ オ ラ ン ダ の 台 湾 占 領 、 そ の 後 に 明 朝 支 持 の 鄭 成 功 の へ の 移 民 」 台 湾 占 領 、 さ ら に 清 朝 に よ る 鄭 氏 政 権 打 倒 と 台 湾 占 領 「台 湾 人 の 構 成

へ と 続 く歴 史 を資 料 で 調 べ る 。 早 見 表 」

○ 清 が 領 有 した 台 湾 に 、 中 国 大 陸 南 部 で 福 建 系 や 客 家 「激 動 の 近 代 史 系 の 人 々 が 移 民 し た 経 過 を 資 料 で 調 べ る 。 ダ イ ジ ェ ス ト」

・ 日 本 の 植 民 ○ 台 湾 が 日本 の 植 民 地 と な っ た 契 機 は 日 清 戦 争 で あ る 「年 表 」

地 の 時 代 こ と を 資 料 等 で 調 べ る 。 「図 表 」

○ 日本 語 が 広 く通 用 す る よ う に な っ た の は 学 校 教 育 に 「台湾香 港Q&

よ る こ と を 資 料 等 で 理 解 す る 。 A100」 よ り抜

○ 日本 人 と台 湾 人 の 関 係 に つ い て 確 認 す る 。 "台 湾 人 の 民 族

・中 華 民 国 の ○ 日本 の 敗 戦 に 伴 い 台 湾 が 中 華 民 国 に 帰 属 し た こ と及 構 成 は?""台

時代 び 社 会 ・文 化 の 変 化 に つ い て 資 料 等 で 調 べ る 。 湾 人 の 対 日 感 情

○ 国 民 党 軍 人 と 台 湾 人 と が 衝 突 し た 二 ・二 八 事 件 が な は?"

ぜ 起 こ り 、 徹 底 的 に 弾 圧 さ れ た 台 湾 人 が そ の 後 に ど の "外 省 人 と 本 省

よ う に な っ た の か を 資 料 等 で 調 べ る 。 人 の 対 立 は な ぜ

01949年 に 大 陸 で 国 民 党 が 中 国 共 産 党 に敗 北 した こ と 、 ?"

しょかい せ き

蒋 介 石 の 国 民 党 政 権 の 関 係 者 が 多 数 で 台 湾 に 逃 れ た こ "台 湾 は な ぜ 中

が いし ょう じん ほ ん しょう

と 、 そ の 結 果 、 大 陸 出 身 の 外 省 人 が 台 湾 出 身 の 本 省 華 民 国 な の か?"

じん

人 を 政 治 ・経 済 ・社 会 ・文 化 の 面 で 支 配 す る 体 制 が で 「ワ ー ク シ ー ト 」

き た こ と を 資 料 等 で 調 べ る 。 そ の 他

・人 の 移 動 に ○ 台 湾 の 社 会 ・文 化 の 中 心 勢 力 の 交 替 が 台 湾 の 複 雑 な 伴 う 変 化 歴 史 を 形 成 した こ と を 確 認 す る 。

と う

・現 在 の 台 湾 ○ 本 省 人 の 李 登 輝 総 統 の 登 場 と 民 主 化 の 進 行 に よ り台 の 状 況 湾 の 政 治 ・経 済 ・社 会 ・文 化 の 状 況 が 急 変 し て い る こ

と を 確 認 す る 。

(4)評 価 の 観 点 ① 台 湾 が 民 族 や 文 化 の 面 で 多 元 的 な 社 会 で あ る 点 を 理 解 で き た か 。 ② 台 湾 に お け る 民 族 や 文 化 の 状 況 が 、 島 外 か ら 来 た 支 配 勢 力 の 交 替 で 次 々 と変 わ っ た 点 を 理 解 で き た か 。

(5)指 導 上 の 留 意 点 ① 資 料 の 精 選 に 努 め 、 生 徒 が 理 解 しや す く興 味 を引 く よ う に 工 夫 す る 。

② 日本 の 植 民 地 支 配 を め ぐ り、 台 湾 人 の 中 に 様 々 な 意 見 が あ る こ と を 紹 介 す る 。 ③ 台 湾 を め ぐ る 国 際 情 勢 に は 、 現 在 も微 妙 な 点 が 多 い こ と に 注 意 す る 。

一6一

(9)

3ア イ ル ラ ン ドの ジ ャ ガ イ モ 飢 饅

(1)教 材 と し て 取 り 上 げ た 理 由 大 航 海 時 代 に ラ テ ン ア メ リ カ か ら 、 ヨ ー ロ ッ パ に 伝 播 し た ジ ャ ガ イ モ は 、 徐 々 に 人 々 の 食 卓 に 普 及 し て い っ た 。 土 地 の や せ た ア イ ル ラ ン ドで は 、 農 民 の 重 要 な 栄 養 源 と し て ジ ャ ガ イ モ へ の 依 存 度 が 高 ま っ た 。19世 紀 の ア イ ル ラ ン ドで は 、 イ ギ リ ス 人 に よ る 土 地 支 配 の も と 、 多 く の ア イ ル ラ ン ド人 は 小 作 農 と し て 生 計 を 立 て て い た 。 彼 ら の 栽 培 す る 小 麦 は 地 代 と し て 納 め ら れ 、 地 主 に 富 を も た ら し た が 、 ア イ ル ラ ン ド人 の 農 民 の 食 糧 に な っ た の は ジ ャ ガ イ モ で あ っ た 。 産 業 革 命 以 降 の イ ギ リ ス で は 自 由 主 義 的 な 改 革 が 進 行 す る が 、 こ の 時 期 の ア イ ル ラ ン ドで は 土 地 ・宗 教 ・自 治 を め ぐ 諸 問 題 が お こ り 、 そ れ が 現 在 も 「ア イ ル ラ ン ド 問 題 」 と し て 続 い て い る 。1845年 か ら の ジ ャ ガ イ モ の 凶 作 は 大 飢 饅 を 引 き 起 こ し 、 土 地 を 離 れ ざ る を え な か っ た ア イ ル ラ ン ド人 は 大 量 の 移 民 と な っ た 。 彼 ら は ア メ リ カ 等 で の 定 住 化 の 過 程 で 数 々 の 困 難 に 対 処 せ ね ば な ら な か っ た 。 ア メ リ カ 社 会 に お け る ア イ ル ラ ン ド系 移 民 の あ り方 は 、 異 文 化 の 接 触 を 考 え る 上 で の 様 々 な 問 題 を 提 起 し て い る 。 そ こ で 人 ・物 の 移 動 と 文 化 形 成 を 考 察 す る 教 材 と し て 、 「ア イ ル ラ ン ド の ジ ャ ガ イ モ 飢 謹 」 を 取 り 上 げ た 。

(2)本 時 の ね ら い 本 時 は19世 紀 の 欧 米 社 会 の 成 長 と 変 容 を 扱 う 、7時 間 構 成 の 第3時 限 目 に 当 た る 。 第1時 限 で は ウ ィ ー ン 体 制 と ヨ ー ロ ッ パ 、 第2時 限 で は イ ギ リ ス に お け る 諸 改 革

と 自 由 主 義 の 発 達 、 第3時 限 で は ア イ ル ラ ン ドの ジ ャ ガ イ モ 飢 饅 、 第4時 限 で は2月 革 命 と ナ ポ レ オ ン 、 第5時 限 で は ア メ リ カ 合 衆 国 の 発 展 、 第6・7時 限 で は ヨ ー ロ ッ パ の 変 貌 を 取

り 上 げ る 。 学 習 指 導 要 領 で の 関 連 分 野 は 「世 界 史A」 「(2)一体 化 す る 世 界 」 の 「ウ ヨ ー ロ ッ パ ・ ア メ リ カ の 諸 革 命 」、 「世 界 史B」 「(4)諸地 域 世 界 の 結 合 と 変 容 」 の 「ウ ヨ ー ロ ッ パ ・ ア メ リ カ の 変 容 と 国 民 形 成 」 で あ る 。

(3)展 開 例

学 習 項 目 学 習 活 動 備 考

○ 食 料 と し て 019世 紀 イ ギ リス の 労 働 者 の 食 生 活 を 資 料 か ら 読 み ○ 麦 「イ ギ リ ス 人 の ジ ヤ ガ イ モ 取 り 、 下 層 労 働 者 の 食 事 に ジ ャ ガ イ モ が 多 く取 り入 の 食 生 活 」

の 普 及 れ ら れ て い た こ と を 確 認 す る 。

○ ジ ヤ ガ イ モ ○ ラ テ ン ア メ リ カ か ら ヨ ー ロ ッ パ に ジ ャ ガ イ モ が 伝 ○ 地 図 「ジ ャ ガ イ

の ヨ ー ロ ッ パ 播 し た 経 緯 を 地 図 で 確 認 す る 。 モ の 伝 播 」 へ の 伝 播 ○ な ぜ 都 市 の 最 下 層 労 働 者 に ア イ ル ラ ン ド人 が 位 置 ○ 資 料 「1844年 の

づ け ら れ て い た の か を 考 え る 。 イ ン グ ラ ン ド に お

け る 労 働 者 階 級 の 状 態 」

○ イ ギ リ ス に ○ 年 表 か ら1801年 に イ ギ リ ス が ア イ ル ラ ン ド を 併 合 ○ 年 表 「イ ギ リ ス よ る ア イ ル ラ した 前 後 の 政 治 的 ・経 済 的 状 況 を 知 る 。 の ア イ ル ラ ン ド 統 ン ド支 配 ○ ア イ ル ラ ン ド問 題 の 原 因 で あ る 宗 教 的 差 別 ・土 地 治 」

(10)

問 題 ・自 治 要 求 に つ い て 、 カ ト リ ッ ク 刑 罰 法 を 通 し ○ 資 料 「カ ト リ ッ

て 理 解 す る 。 ク 刑 罰 法 」

○ ジ ヤ ガ イ モ ○ 飢 謹 の 深 刻 さ を資 料 か ら読 み 取 り 、 農 民 が 土 地 を ○ 資 料 「ジ ャ ガ イ 展 飢 謹の発生 離 れ ね ば な ら な か っ た 理 由 を 考 え る 。 モ 飢 謹 」

01845年 か ら の ジ ャ ガ イ モ 飢 謹 が 、 多 く の 餓 死 者 を ○ 表 「飢 饅 に よ る 出 す と と も に 出 稼 ぎ移 民 の 数 を 激 増 さ せ た た め 、 ア 死 者 数 」 「海 外 移 イ ル ラ ン ドの 人 口 が 著 し く 減 少 し た こ と を グ ラ フ か 民 数 」

ら 読 み 取 る 。 ○ グ ラ フ 「ア イ ル

ラ ン ドの 人 口 の 変

化 」

○ ア メ リ カ へ 01860年 の ア メ リ カ 移 民 の 出 生 地 の 表 か ら ア イ ル ラ ○ 表 「ア メ リ カ 移 渡 っ た ア イ ル ン ド出 身 者 が 一 番 多 か っ た こ と を 読 み 取 る 。 民 の 出 生 地1860年

ラ ン ド移 民 ○ ア メ リ カ で 定 住 化 す る 中 で 職 業 上 ・宗 教 上 の 問 題 ○ 資 料 「ア イ ル ラ に 直 面 して い た こ と を 資 料 か ら 読 み 取 る 。 ン ド系 移 民 」

○定住化 の 中 ○ ア イ ル ラ ン ド系 住 民 が 奴 隷 制 を 支 持 した こ と な ど 、 ○資料 「奴隷 解 放 で 発 生 す る 問 彼 ら の 政 治 ・宗 教 に 関 す る 活 動 を 理 解 す る 。 に つ い て の ア イ ル

○ 移 民 が 新 しい 社 会 に 定 住 す る 過 程 に お い て 発 生 す ラ ン ド人 の 発 言 」 る 問 題 に つ い て 考 え る 。

○ 人 ・物 の 移 ○ ア イ ル ラ ン ド系 移 民 が ア メ リ カ 社 会 に 定 着 し て い OVTR「 聖 バ ト 動 が 及 ぼ し た る こ と 、 ア イ ル ラ ン ドで は 現 在 で も ジ ャ ガ イ モ 栽 培 リ ッ ク 祭 」

影響 が 農 民 の 生 活 を 支 え て い る こ と を 理 解 す る 。 「現 在 の ア イ ル ラ

○ 母 国 を 離 れ て も民 族 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ を 保 と う ン ド農 民 」 とす る 移 民 の 活 動 と 、 厳 しい 環 境 で も土 地 を 離 れ ず

ジ ャ ガ イ モ 栽 培 を 続 け る 農 民 の 様 子 か ら 、 生 ま れ た 土 地 に 対 す る 強 い 思 い を理 解 す る 。

○ ジ ャ ガ イ モ の 伝 播 が ア イ ル ラ ン ド民 族 に 与 え た 影 ○ ワ ー ク シ ー 響 に つ い て 自 分 な り に 考 え を ま と め る 。

(4)評 価 の 観 点 ① ジ ャ ガ イ モ の 伝 播 と 凶 作 が ア イ ル ラ ン ドに 与 え た 影 響 を 理 解 で き た か 。

② イ ギ リ ス 統 治 下 の ア イ ル ラ ン ドが 抱 え て い た 経 済 ・政 治 ・宗 教 的 問 題 を 理 解 で き た か 。 ③ 他 民 族 との 共 存 を 図 る 上 で 発 生 す る 問 題 を 理 解 で き た か 。

(5)指 導 上 の 留 意 点 ① 生 徒 の 学 習 意 欲 を 高 め 、 理 解 を 深 め る よ う な 資 料 を 用 意 す る 。 ② 資 料 を 活 用 し や す い よ う に ワ ー ク シ ー トを 工 夫 す る 。

一m

(11)

4人 類 史 上 に お け る 縄 文 文 化 の 意 味 縄 文 人 の 交 易(人 と 物 の 移 動)一

(1)教 材 と し て 取 り上 げ た 理 由 従 来 の 縄 文 時 代 観 の 見 直 しが 叫 ば れ て 久 しい 。 特 に ① 小 規 模 の 集 落 で 移 動 型 の 生 活(狩 猟 ・採 集 生 活 だ か ら)、 ② 未 開 で 貧 し く 不 安 定 な 生 活 、 ③ 平 等 な 社 会 、 と い っ た こ れ ま で の 縄 文 時 代 に 関 す る 定 説 が 、 「縄 文 の タ イ ム カ プ セ ル 」 と 呼 ば れ た 福 井 県 鳥 浜 貝 塚 や 青 森 県 三 内 丸 山 遺 跡 等 、 最 新 の 発 掘 調 査 に よ っ て 一 層 見 直 しが は か ら れ て い る 。 例 え ば 、① 周 辺 に も衛 星 的 な 集 落 を 持 ち 、 大 型 建 造 物 が 存 在 す る 大 規 模 な 集 落 、 ② 豊 か で 自 然 生 態 系 に 即 し た 計 画 的 な 生 活 、 ③ 集 団 の リ ー ダ ー に 率 い ら れ た 階 層 社 会 の ご と く で あ る 。 今 回 は 、 新 聞 各 紙 に 取 り上 げ ら れ た 古 代 史 関 連 記 事 を 有 効 に 活 用 し、 ビ デ オ 教 材 、 実 物 教 材 に よ っ て 興 味 関 心 を 高 め 、 縄 文 時 代 に 関 す る 認 識 を 深 め 、 縄 文 文 化 と の 関 連 が 、 東 ア ジ ア の み な らず よ り大 き な 広 が り を 示 しつ つ あ る今 日、 共 生 の 視 点 か ら 、 文 化 と い う も の が 、 征 服 者 の 文 化(例:キ リ ス ト教 圏 の 拡 大 に よ る 在 来 の 文 化 の 破 壊)で は な く 、 そ れ ぞ れ が 独 自 か つ 対 等 の 価 値 を 持 ち 、 相 互 に 影 響 を 与 え 合 う イ ン タ ラ テ ィ ブ な 関 係 で あ る こ と を 縄 文 文 化 を 例 に 理 解 で き る よ う な 教 材 作 り を 目指 して ゆ きた い 。

(2)本 時 の ね ら い 本 時 は 、 縄 文 文 化 に 関 す る授 業 の 第3時 限 に 当 た る 。 年 代 的 に は 、 縄 文 時 代 の 約11000年 間 の う ち 、 主 に 縄 文 早 期 末(約6300年 前)〜 後 期 末(約3000年 前)ま で を 取 扱 い 、 必 要 に 応 じて 後 期 旧 石 器 文 化 、 縄 文 草 創 期 や 晩 期 の 文 化 、 弥 生 文 化 と の 関 連 を 説 明 す る 。 な お 、 第1時 限 は 、 「縄 文 文 化 の 始 ま り」 と し 、 旧 石 器 時 代 か ら縄 文 草 創 期 へ の 移 行 、 南 九 州 の 縄 文 文 化 の 先 進 性 と東 漸 、 定 住 革 命(植 物 食 へ の 依 存 ・土 器 の 発 明 等)、 第2時 で は 、 「新 し い 縄 文 観 に 基 づ く縄 文 時 代 の 生 活 」 と し 、 具 体 的 に は 、 ① 道 具(土 器 ・石 器 ・ 骨 格 器 等)、 ② 食 物(狩 猟 採 集 に 加 え 畑 作 ・栽 培 技 術 に つ い て)、 ③ 服 飾(耳 せ ん ・櫛 ・か ん ざ し等)を 取 り上 げ る 。 ま た 、 こ こ で 全 員 に 調 べ 学 習 の 課 題(ワ ー ク シ ー ト)を 与 え る 。 第 4時 限 は 、 縄 文 人 の 精 神 世 界 、 「自然 生 態 系 と の 調 和 」、 「人 類 史 上 に お け る 縄 文 文 化 の 位 置 と意 味 」 を 扱 う 。

(3)展 開 例

学 習 項 目 学 習 活 動 備 考

○縄文社 会 の 三 内 丸 山等 の 発 掘 に よ り縄 文 社 会 は物 資 が 豊 か だ っ パ ネ ル 「三 内 丸 山 」豊 か さ た こ と再 び 想 起 す る 。 何 故 か を 考 え る 。 VTR:「 縄 文 の タ イ

ム カ プ セ ル 」

○ 交 易 の 存 在 ○ 単 な る 自給 自足 で は な く、 交 易 を 行 っ て い た こ VTR:「 万 物 創 世 記 」 と に 気 付 く 。

青 森 ・三 内 丸 山(前 ・中 期)や 礼 文 島 の 船 泊 遺 跡 VTR:「 堂 々 日 本 史 」 (後 期)も 交 易 を 示 す 遺 跡 で あ る こ と を学 習 す る 。

○ 交易品の具 ○ 交 易 品 の 具 体 例 を 順 に 示 し 、 伝 播 ・交 易 ル ー ト 生 徒 の ワ ー ク シ ー ト

(12)

体例 を 確 認 す る 。

実 用 品 と し て 黒 曜 石 や ア ス フ ァ ル トが あ る が 、

産 地 は ど こ で(白 滝 ・神 津 島 、 昭 和 町 等)、 ど こ 黒曜石実物各種

ま で 分 布 し 、 ど の よ う に 使 わ れ た か 、 ま た 、 移 動 新 聞 記 事 ・参 考 書 ・ 開 始 は い つ 頃 か(ミ ロ ス 島 と 比 較)を 考 察 す る 。 東 ア ジ ア 地

土 器 に つ い て も黒 曜 石 と 同 様 、 朝 鮮 半 島 や シ ベ グ ラ フ 写 真 リ ア と の 交 流 の 存 在 に 気 付 く 。 海 産 物 に つ い て も

内 陸 遺 跡 の 多 数 の 海 水 魚 骨 か ら交 易 と そ れ を 支 え

た 保 存 食 の 存 在(塩 漬 け ・干 し魚 ・薫 製)に 気 付 最近 の新 聞記事

く 。

○ 宗 教 的 装 飾 品 の 種 類 や 意 味 に つ い て 話 し合 う。

コ ハ ク や ヒ ス イ の 産 地(久 慈 ・銚 子 ・糸 魚 川 な 写 真(ヒ ス イ ・コ ハ ク) ど)、 分 布 範 囲 、 移 動 開 始 時 期 を 把 握 し 、 ど の よ 日 本 の ヒ ス イ と 中 国 う に 使 わ れ た か 、 を 考 察 す る 。 さ ら に 、 ヒ ス イ に 玉 の グ ラ フ写 真 つ い て は 、 中 国 の 「玉 」 や 古 代 マ ヤ の 例 と 比 較 し

て 、 硬 玉(ジ ェ ダ イ ト ・ ジ ェ ー ト)と 軟 玉(ネ

ラ イ ト)と の 違 い を 学 び 、 硬 度(7)の 硬 玉 の 加

工 か ら祭 祀 の 重 要 性 と そ れ に伴 う 階 層 社 会 の 存 在 ネ フ ラ イ トの 勾 を 理 解 し 、 縄 文 人 の 精 神 世 界 の 一 端 に 触 れ る 。

貝 製 品 に つ い て も 産 地(南 島 ・伊 豆 七 島 な ど) 具 の グ ラ フ写 真 分 布 ・用 途 に つ い て 考 察 す る 。

○古代の航海 ○ 縄 文 遺 跡 か ら の 丸 木 舟 や 擢 の 出 土 例 か ら 、 縄 文 VTR:「 サ イ エ ン ス ア イ」

人 の 航 海 に つ い て 話 し合 い 、 理 解 を 深 め る 。 写 真(丸 木 舟)

○縄文時代 に ○ 縄 文 時 代 の 交 易 が 比 較 的 広 範 囲 で あ っ た こ と 、 お け る 文 化 交 ま た 、 陸 路 だ け で な く 、 海 路(含 む 河 川)も あ っ

た 可 能 性 を 理 解 す る 。

○ 人 ・物 の 移 動 に は 必 然 性 が と も な う こ と(生 の 豊 か さ ・宗 教 的 理 由 ・ 自 然 災 害 等)を 理 解 し 、

次 の 授 業 と 関 連 し て 、 考 え て く る 。

(4)評 価 の 観 点 ① 縄 文 時 代 に つ い て 、 想 像 以 上 に 活 動 範 囲 ・交 易 範 囲 が ひ ろ か っ た こ と に 気 づ け た か 。 ② 必 要 に 応 じ、 人 類 史 の 大 き な 流 れ と対 応 し て 理 解 が 深 め ら れ た か 。

(5)指 導 上 の 留 意 点 生 徒 が 調 べ て き た 交 易 品 の 具 体 例 に 対 し て 事 前 ・事 後 指 導 を 徹 底 し、

精 選 した も の を 本 時 で 効 果 的 に 取 り上 げ 、 か つ 評 価 し 、 生 徒 の 学 習 意 欲 を 喚 起 で き る よ う 配 慮 す る 。

一10一

(13)

II日 本 と諸 外 国 と の 接 触 か ら派 生 して き た 問 題

1沖 縄 の 歩 み と 諸 外 国 と の 関 係

(1)教 材 と して 取 り 上 げ た 理 由 琉 球 ・沖 縄 の 歴 史 に つ い て 、 教 科 書 の 扱 い は 非 常 に少 な い 。 ま た 、 生 徒 に 尋 ね て も、 ほ と ん ど の 生 徒 は 「琉 球 王 国 」 の 存 在 を 知 ら な い 。 中 世 に お い て 琉 球 で は 、 尚 巴 志 が 三 山 を 統 一 した 数 代 後 に 王 の 尚 真 が あ ら わ れ 、 申 継 貿 易 以 外 に さ ま ざ ま な 施 策 を お こ な っ た こ と や 、 琉 球 処 分 後 に 沖 縄 の 人 々 の 知 ら な い と こ ろ で 、 清 と の 間 で 先 島 分 島 案 の 話 が 進 め ら れ て い た こ と な ど 、 琉 球 ・沖 縄 に つ い て 知 ら な い こ と が 多 い の で は な い だ ろ う か 。 こ こ で は 、 沖 縄 の 近 現 代 史 に つ い て は 触 れ な い が 、 い ず れ は 生 徒 自 ら が 課 題 と し て 学 習 して い くた め の 布 石 に し た い 。 今 回 は 、 琉 球 ・沖 縄 の 歴 史 の 中 で 、 一 時 代 を 築 い た 琉 球 王 国 の 歴 史 に 目 を 向 け る こ と を ね らい と して 、 本 教 材 を 取 り上 げ た 。

(2)本 時 の ね らい 本 時 は2時 間 構 成 の 第2時 限 に あ た る 。 第1時 限 で は 、 貿 易 の 開 始 の 背 景 ・形 式 ・経 過 ・推 移 と い っ た 日明 貿 易 の 展 開 と 、 倭 冠 の 活 動 、 日 朝 貿 易 を 中 心 と し た 日朝 関 係 の 推 移 に つ い て 扱 う 。 本 時 で は 、 日明 貿 易 を は る か に 上 回 る 頻 度 で 明 と 琉 球 と の 問 で 貿 易 が 行 わ れ 、 南 方 との 中 継 貿 易 とあ わ せ て 琉 球 王 国 に 繁 栄 を も た ら した こ と や 、 そ の 後 の 明 の 海 禁 政 策 の 破 綻 に よ る 中 国 商 人 の 南 海 進 出 や 、 ポ ル トガ ル 人 の 東 洋 進 出 等 に よ り 、 ア ジ ア 諸 国 間 の 貿 易 に 占 め て い た 琉 球 の 役 割 や 地 位 が 低 下 して い っ た こ と に も 目 を 向 け さ せ る 。 ま た 、 そ れ 以 前 に 琉 球 が 本 土 の 歴 史 か ら は な れ て 、 小 国 の 分 立 か ら統 一 国 家 の 形 成 に 向 か っ て い く過 程 も 理 解 さ せ る 。 学 習 指 導 要 領 の 関 連 分 野 で は 、 「日本 史B」 の 「(3)中世 の 社 会 ・文 化 と東 ア ジ ア 」 の 「イ 武 家 政 権 の 展 開 と 社 会 の 変 化 」 で あ る 。

(3)展 開 例

学 習 項 目 学 習 活 動 備 考

○沖縄米 軍基 ○ 数 年 前 に お こ っ た 沖 縄 米 軍 基 地 の 強 制 使 用 を め ぐ る ・新 聞 記 事地 に 眠 る 遺 跡 問 題 か ら 、 基 地 内 に あ る 各 時 代 の 遺 跡 の 保 存 状 態 に 目

が 向 け ら れ る よ う に な っ た こ と を 知 る 。

○ 基 地 と重 な っ て い る 重 要 な 遺 跡 に ど の よ う な も の が あ る か を 知 る 。

○古代の琉球 ○ 古 代 の 琉 球 に も 日本 の 縄 文 文 化 に あ た る 時 期 が 存 在 ・ ワ ー ク シ ー

し た こ と を 思 い 出 す 。 ・資 料 「沖 縄 県

○ 旧 石 器 時 代 に 続 い て 、 縄 文 土 器 や 弥 生 土 器 の 使 用 を と 日本 本 土 の 歴 含 む 貝 塚 時 代 が 長 く続 い た こ と を 思 い 出 す 。 史 の 比 較 」 ○ 中 世 琉 球 の

政 治 ・社 会

○ 貝 塚 時 代 に 続 く グ ス ク 時 代 の 特 徴 を 理 解 す る 。

〇 三 山 鼎 立 の 時 代 か ら 、 琉 球 王 国 が 誕 生 す る ま で の 流

・史 料 「南 聰 紀 考 」 「羅 山 文 集 」 れ や 、 当 時 の 日 本 と の 関 係 を 理 解 す る 。 「島 津 國 史 」

(14)

○ 琉 球 王 国 時 代 に 尚 真 に よ っ て 武 器 追 放 令 が 出 さ れ た ・史 料 「百 浦 添 こ と や こ の 法 令 の 内 容 を 理 解 す る 。 欄 干 之 銘 」 「中

山 世 譜 」

○ こ の こ と が 、 後 世 の 琉 球 の 人 々 に ど の よ う な 影 響 を ・資 料 「沖 縄 の

与 え た の か を 考 え る 。 宗 教 と社 会 構 造 」

「南 島 の 風 土 と 歴 史 」 抜 粋 展 ○ 中継貿 易 ○ 何 が 琉 球 王 国 の 経 済 的 基 盤 に な っ た の か を 考 え る 。 ・ 地 図

○ 琉 球 王 国 の 位 置 を 地 図 で 確 認 し、 貿 易 に 力 を 入 れ る ・資 料 「琉 球 王 よ う に な っ た こ と を 理 解 す る 。 国 交 易 ル ー ト」

○ 明 の 冊 封 体 制 と は 何 で あ っ た か 、 そ の 特 徴 を 思 い 出

す 。

○ 明 が 海 禁 政 策 を と っ た 理 由 を 考 え る 。

○ 明 の 海 禁 政 策 が 琉 球 に 何 を も た ら した か に つ い て 考 ・資 料 「明 に 進

え る 。 貢 し た 国 々 の 回

○ 自 分 が 琉 球 王 国 の 王 で あ れ ば 、 ど の よ う な 貿 易 を 行 数 」 え ば 、 利 益 を 増 や す こ と が で き る か を 考 え て 発 表 す

る 。

○ 琉 球 の 中 継 貿 易 の 特 徴 を 理 解 す る 。 ・資 料 「中 継 貿

易 の 貿 易 品 」

○ 中 継 貿 易 に よ る 琉 球 王 国 の 繁 栄 の 様 子 を 、 資 料 を 見 ・史 料 「首 里 城

な が ら 想 像 す る 。 正殿鐘 銘」 資 料

「琉 球 貿 易 図 屏

○ 琉 球 の 貿 易 が 衰 退 して い っ た 理 由 を 考 え る 。 風 」 「進 貢 船 」

・資 料 倭 冠 の 回 数 」

○琉 球の 歴史 の理解

○ 琉 球 の 歩 ん で き た 歴 史 を学 び 、 本 土 と は 異 な る 政 治 や 文 化 が 展 開 して き た こ と を 理 解 す る 。

○ 中 継 貿 易 が 中 世 琉 球 の 繁 栄 の 源 に な っ た こ と を 理 解

す る 。

(4)評 価 の 観 点 ① 古 代 か ら の 琉 球 ・沖 縄 の 人 々 が 歩 ん で き た 歴 史 を理 解 で き た か 。 ② 琉 球 で は 日本 本 土 と は 異 な る 政 治 や 文 化 が 展 開 して い っ た こ と を 理 解 で き た か 。 ③ 琉 球 王 国 が ど の よ う な 方 策 を と っ て 繁 栄 し た か を 把 握 す る こ と が で き た か 。

(5)指 導 上 の 留 意 点 ① 島 津 氏 の 琉 球 入 り以 降 の 沖 縄 の 歴 史 に つ い て は 、 こ の 時 間 で は 扱 わ な い 。 ② 難 解 な 史 料 に つ い て は 、 現 代 語 訳 を 用 意 し、 生 徒 が 理 解 しや す い よ う に 留 意 す る 。

③ 板 書 す る 際 に は 、 地 名 ・人 名 に は な る べ く仮 名 を ふ る 。

一12一

(15)

2日 本 産 の 銅 が 清 国 に 与 え た 影 響

(1)教 材 と して 取 り 上 げ た 理 由 い ま で も 「江 戸 時 代 は 、 国 を 閉 ざ して 外 国 と の 交 際 を 絶 っ た 閉 鎖 的 な 時 代 で あ る 」 と 思 い こ ん で い る 生 徒 が 少 な くな い 。 しか し、 実 際 に は 、 オ ラ ン ダ ・ 清 国 ・朝 鮮 と は 江 戸 時 代 を 通 じて 貿 易 を 継 続 して い る 。 そ して 、 そ の 交 易 は 東 ア ジ ア の み な

らず 、 東 南 ア ジ ア や ヨ ー ロ ッパ に ま で 少 な か ら ず 影 響 を 及 ぼ し て い る の で あ る 。 な か で も交 易 に よ っ て 清 国 へ 流 入 し た 日本 産 の 銅 は 、 中 国 経 済 に 多 大 な 影 響 を与 え た 。 日 本 か ら清 国 へ 流 れ た 大 量 の 銅 は 銅 銭 の 原 料 と な っ た が 、17世 紀 後 半 か ら18世 紀 前 半 に か け て 、 鋳 銭 原 料 全 体 の6割 か ら8割 を 占 め た の で あ る 。 こ れ は 驚 くべ き 数 値 で あ り、 日 本 の 銅 な し に は 中 国 の 貨 幣 制 度 の 維 持 が 困 難 で あ っ た こ と を 示 して い る 。 ま た 、 ア ジ ア 諸 国 は 清 国 の 冊 封 を う け 、 同 国 を 中 心 と す る 密 接 な 経 済 圏 を つ く っ て お り、 そ こ で 流 通 す る 貨 幣 は 清 国 産 の 銀 貨 や 銅 銭 が 過 半 で あ っ た 。 こ う し た 日本 産 の 銅 が 清 国 に 与 え た 影 響 を 考 察 さ せ る こ と で 、 江 戸 時 代 の 日本 が 中 国 経 済 、 ひ い て は ア ジ ア 経 済 と 強 く結 び つ い て い た と い う事 実 を 生 徒 に 理 解 さ せ る こ と を ね ら い と して 、 本 教 材 を 取 り上 げ た 。

(2)本 時 の ね ら い 本 時 は4時 間 目構 成 の 第3時 間 目 に 当 た る 。 第1時 間 目 で は 、 鎖 国 以 前 に お け る 朱 印 船 貿 易 の 実 態 に つ い て 、 第2時 間 目で は 鎖 国 以 後 の 貿 易 と そ の 変 遷 を 長 崎 貿 易 を 中 心 に 概 観 す る 。 本 時 で は 、 日本 の 主 た る 輸 出 品 で あ っ た 銅 の 清 国 へ の 流 入 と そ の 影 響 に つ い て 考 察 さ せ 、 鎖 国 体 制 下 に あ っ て も 我 が 国 が ア ジ ア 経 済 と 密 接 に つ な が っ て い た こ と を 理 解 させ る 。 第4時 問 目で は 、 交 易 に よ っ て 国 内 に 入 っ て き た 物 と 人 が 、 ど の よ う な 影 響 を 我 が 国 に 及 ぼ した か と い う こ と を 取 り上 げ る 。 学 習 指 導 要 領 の 関 連 分 野 は 「日 本 史B」

「(4)近世 の 社 会 ・文 化 と 国 際 関 係 」 の 「ア 織 豊 政 権 と幕 藩 体 制 の 形 成 」 で あ る 。 (3)展 開 例

学 習 項 目 学 習 活 動 備 考

○ ア ン ケ ー ト ○ 江 戸 時 代 の 鎖 国 制 度 ・貿 易 な ど に 関 す る ア ン ケ ー 資 料 「ア ン ケ ー ト

結果 ト結 果 を み て 、 自分 た ち の 時 代 認 識 を 把 握 す る 。 集 計 表 」

○海舶互 市新 01715年 の 海 舶 互 市 新 例 は 、 金 ・銀 ・銅 の 流 失 を 危

導 例の信牌制度 惧 し た 新 井 白 石 の 貿 易 制 限 令 で あ り 、 貿 易 額 と 船 数 が 大 幅 に 削 減 さ れ 、 と くに 清 国 に つ い て は 幕 府 が 付 与 し た 信 牌(貿 易 許 可 証)を 所 持 す る唐 船(清 国 船)

○信牌 に対す しか 貿 易 が 許 さ れ な く な っ た こ と を 理 解 す る 。 写 真 「日 本 が 清 国 る 清 国 政 府 の ○ 日 本 の 年 号 が 記 さ れ た 信 牌 の 所 持 は 、 「貿 易 商 人 の 貿 易 商 船 に 与 え

反応 の 幕 府 へ の 臣 従 を 意 味 す る 」 と疑 っ た 清 国 政 府 が 、 た 信 牌 」 貿 易 商 人 か ら信 牌 を 没 収 し 、 そ の 結 果 、 日本 と の 貿

易 が 中 断 さ れ て い ま う事 実 を 知 る 。

○ 康煕帝 の貿 ○ そ の 後 、 清 国 政 府 は 信 牌 制 度 を め ぐ っ て 朝 議 を 繰 写 真 「康 煕 帝 」 易継 続決断 り返 し 、 最 終 的 に 康 煕 帝 が 貿 易 続 行 の 決 断 を く だ し

(16)

て 貿 易 商 人 に 信 牌 を 返 却 し た 経 緯 を 学 ぶ 。

○清 国が華夷秩序 に抵触す る信牌制度 を黙認 して ま で 貿 易 を継 続 し た の は 、 銅 銭 原 料 を 日本 に 依 存 し て い た か ら だ と い う事 実 を 理 解 す る 。

○ 日 本 産 の 銅 ○ 海 舶 互 市 新 例 以 前 、 清 国 が 多 量 の 銅 を 日本 か ら 輸 図 表 「銅 輸 出 額 」の 清 国 へ の 輸 入 して い る 現 実 を 、 貿 易 量 変 遷 の 数 値 を グ ラ フ 化 す 遺 物 「寛 永 通 宝 」

出 に つ い て る こ と に よ っ て 把 握 す る 。 地 図 「唐 船 の お も

○ 長 崎 か ら ど の よ う に し て 清 国 へ 銅 が も た ら さ れ た な ル ー ト 」

か と い う ル ー トや 方 法 を 学 ぶ 。 絵画 「蘭館絵 巻 倉

○ 薩 摩 藩 が 日 本 国 内 で 銅 を 集 め て 琉 球 王 国 へ お く り、 前 図 」

そ れ ら が 朝 貢 貿 易 に よ っ て 琉 球 か ら 中 国 側 へ 多 量 に 地 図 「琉 球 使 節 の

流 入 して い た 事 実 を 知 る 。 進 貢 ル ー ト」

○ 日 本 産 銅 の ○ 日本 産 の 銅 が 、 世 界 各 地 へ 輸 出 さ れ 、 貨 幣 や 日用 図 解 「日 本 産 の 銅 輸 出 ル ー ト 品 な どの 原 料 と して 重 宝 され て い た 事 実 を 図 解 に よ っ の 世 界 へ の 輸 出 径

て 把 握 し、 清 国 だ け に銅 が も た ら さ れ て い た わ け で 路 」 は な い こ と を 改 め て 認 識 す る 。

○ ア ジ ア 諸 国 ○ 清 国 へ 流 入 し た 日本 産 の 銅 が 、 清 国 の み な ら ず 同 に 与 え た 日 本 国 に 冊 封 さ れ て い た ア ジ ア 諸 国 に 経 済 的 な 影 響 を 与 産 の 銅 の 影 響

○ 中 世 日 本 の

え た こ と を 学 ぶ 。

○ 中 世 に お い て は 、 逆 に 日本 が 中 国 か ら 多 量 の 銅 銭 貨幣制度 を維 を 輸 入 し 、 貨 幣 制 度 を 維 持 して い た こ と を把 握 す る 。

持 し た 中 国 銭 ○ 古 来 よ り 日 本 は 交 易 を 通 して 中 国 を は じめ と す る ○ 日本 と ア ジ

ア 経 済 の 密 接

ア ジ ア 諸 国 と密 接 に つ な が っ て お り、 そ れ は 鎖 国 体 制 下 に お い て も不 変 で あ る こ と を 認 識 す る 。

な つ な が り ○ ど の よ う な 時 代 や 状 況 下 に お い て も、 我 が 国 が ア ジ ア 世 界 と 隔 絶 し て 存 在 し得 な い こ と を 理 解 す る 。

(4)評 価 の 観 点 ① 海 舶 互 市 新 例 の 日本 側 の 意 図 と 内 容 が 正 確 に把 握 で き た か 。 ② 清 国 が 華 夷 秩 序 に 抵 触 す る こ と を黙 認 し て ま で 対 日貿 易 に こ だ わ っ た 理 由 が 正 し く理 解 で き た か 。 ③ 鎖 国 体 制 下 の 日本 が 清 国 ・ア ジ ア 経 済 に 大 き な 影 響 を 与 え て い た こ と が し っ か り と認 識 で き た か 。 ③ い つ の 時 代 、 場 所 に お い て も 、 国 家 や 人 間 が 国 際 社 会 と全 く隔 絶 し て 存 在 し得 な い

と い う こ と を 考 え させ る 場 と な り得 た か 。

(5)指 導 上 の 留 意 点 「ア ン ケ ー ト結 果 』 ・「信 牌 』 ・「オ ラ ン ダ 商 館 で の 銅 取 引 』 ・ 『寛 永 通 宝 』 な ど 、 資 料 や 史 料 を 効 果 的 な タ イ ミ ン グ で 使 用 し 、 生 徒 の 興 味 関 心 を 高 め る 。 ② 日 本 産 の 銅 の 輸 出 ル ー ト に 関 し て は 、 一 目 で 流 れ が わ か る 自 作 の 図 解 を 見 せ 、 生 徒 の 理 解 を 助 け る よ う に す る 。 ③ 日 本 と 中 国 の 経 済 的 な つ な が り(と く に 貨 幣 制 度)に つ い て は 、 中 世 に 関 し て も 簡 単 に 触 れ 、 縦 の 歴 史 の 流 れ を 生 徒 が 把 握 で き る よ う に 配 慮 す る 。

一14一

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3欧 米 列 強 の ア ジ ア 進 出 と早 期 開 国 の 可 能 性

(1)教 材 と し て 取 り上 げ た 理 由 い わ ゆ る 「鎖 国 」 と は 、 キ リ ス ト教 禁 教 の 徹 底 を 主 旨 と し て 、 貿 易 の 統 制 す な わ ち 外 国 船 の 来 航 制 限 と 日本 人 の 渡 航 及 び 帰 国 禁 止 を は か っ た も の で あ る 。 以 降 、 幕 府 外 交 の 基 本 方 針 と して 、200年 以 上 に わ た り海 外 か ら の 通 商 要 求 を 拒 絶 し 続 け て い る 。 そ の 「鎖 国 」 は1853(嘉 永6)年 の ペ リ ー 来 航 を 契 機 と し て 終 焉 を 迎 え る と さ れ て い る 。 で は 、 そ れ 以 前 に 開 国 の 可 能 性 は な か っ た の で あ ろ う か?こ こ で は ペ リ ー 以 前 の 欧 米 列 強 の ア ジ ア 進 出 、 と りわ け ロ シ ア の 極 東 進 出 か ら対 日通 商 要 求 へ の 流 れ を 通 して 、 こ の 時 期 に 蝦 夷 地 調 査 と そ れ に 伴 う 領 域 の 確 定 、 開 発 計 画 ・防 備 論 な ど の 策 定 が 行 わ れ 、 外 交 政 策 の 揺 れ 、 す な わ ち 部 分 的 開 国 の 可 能 性 と 「鎖 国 」 堅 持 の 衝 突 が あ っ た こ と を 考 察 さ せ て い く。 そ の 後 の イ ギ リ ス の 対 ア ジ ア 強 硬 路 線(ア ヘ ン戦 争 ・ア ロ ー 号 事 件)や 「砲 艦 外 交 」 と も い え る ペ リ ー の 開 国 要 求 と の 対 比 か ら 、 近 代 国 家 と し て の 外 交 の 在 り方 や 領 域 国 家 と し て の 認 識 の 芽 生 え を 通 して 、 国 民 と して の 自覚 と 国 際 社 会 に お い て 自 ら考 え 判 断 す る 力 を 培

う こ と を ね ら い と し て 、 本 教 材 を取 り上 げ た 。

(2)本 時 の ね ら い 本 時 は 、2時 間 連 続 の 選 択 講 座 「日本 近 現 代 史 」 の 導 入 テ ー マ と し て の 3回(6時 間)構 成 の 第1・2時 限 に あ た る 。 本 回 で は 、 ペ リ ー の 開 国 要 求 が 成 功 した の は 何 故 か を 問 い 掛 け な が ら 、 そ れ 以 前 の 開 国 の 可 能 性 に つ い て 考 え さ せ る 。 ロ シ ア の 極 東 進 出 と 幕 府 の 対 応 、 蝦 夷 地 探 検 を 踏 ま え て 変 化 し て い っ た 日本 の 領 土 ・国 境 へ の 認 識 、 更 に イ ギ リ ス の 対 ア ジ ア 戦 略 を 含 め て の 外 交 方 針 の 変 遷 を み て い く もの で あ る 。 第2回 で は シ ー ボ ル ト等 に よ る 日本 人 分 析 を 基 に し た ペ リ ー の 開 国 戦 略 と 日 米 和 親 条 約 の 締 結 か ら将 軍 継 嗣 問 題 と 外 交 方 針 を め ぐ る 南 紀 派 と一 橋 派 の 確 執 を 、 第3回 の 授 業 で は 日 米 修 好 通 商 条 約 の 締 結 と 貿 易 へ の 影 響 、 及 び 不 平 等 条 約 の 改 正 に 半 世 紀 以 上 の 時 間 を 要 した 点 を 扱 う 。 学 習 指 導 要 領 の 関 連 分 野 は 「日本 史A」 の 「(2)近代 日本 の 形 成 と19世 紀 の 世 界 」 の 「ア 国 際 環 境 の 変 化

と 幕 藩 体 制 の 動 揺 」 で あ る 。 (3)展 開 例

学 習 項 目 学 習 活 動 備 考

○ ペ リ ー 来 航 ○ 開 国 の 契 機 が ペ リ ー の 来 航 及 び そ の 交 渉 で あ っ た に よ る 開 国 こ と を 確 認 す る 。

導 ○開国要 求成 ○ ペ リ ー の 開 国 要 求 が 奏 功 し た の は 何 故 だ っ た の か 資 料 「ペ リ ー 艦

就 の 理 由 を 話 し 合 う 。 隊 図 」 「狂 歌 」

○ ペ リ ー が 自 ら を殊 更 に 権 威 づ け た り 、 指 揮 下 の 艦 地 図 「江 戸 湾 内 で 隊 に 江 戸 湾 内 で の 示 威 行 為 を 命 じ て い る 点 か ら 、 現 の ペ リ ー 艦 隊 行 動

在 の 日本 の 外 交 姿 勢 と の 比 較 を 行 う 。 図 」

○ ペ リ ー の 来 航 以 前 に 開 国 の 可 能 性 が な か っ た の か を 検 討 す る 。

○ 欧 米 の ア ジ ○ イ ギ リ ス に 代 表 さ れ る 欧 米 列 強 の 極 東 進 出 と 方 向 地 図 「18世 紀 の ア 進 出 性 を 異 に し 、 ロ シ ア の 対 日通 商 要 求 が 毛 皮 採 取 業 者 世 界 の 状 況 」

参照

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