離婚 とその要 因
一 わが国における離婚に関する要因分析 ―
安 蔵 伸 '台 (明治大学政治経済学部)
Deterlrllnants()fE)ivorce in Japan
Analysis of E)iscrete Tlme Hazard Model about E)ivorce using the JGSS‑2000
Shitti ANZ0
1n Japan, although it was the tendency for divorce to be low till the 1970s, at present, countries and thc sanxぅ level with much divorce in the worid are reached.
■■LiS paper ftDcused on the analysis of lDiscrete TlIIle Hazard Model about divorce utilizing the JGSS‑2000 data. The factor of divorce can be divided roughly inlo the demographic one, inauence of social integration,traditional concept abollt marriage and divorce,and soclo― econorrllc environment at age of 15. The data indicated that existellce of child,especially boy cllild,prevellts divorce for men.Single parent and Hlother's full tilne work age at 15 accelerate his divorce, Men in tlle 1960‑64 birth cohort and women in the 1965‑69 cohort have the lligh possibility of divorce unique.
As for the woman with an anti― tradition― concept of marriage, the possibility of divorce becomes high.
Key wOrds:JGSS‑2000,Divor(湾 ,Traditional Con∝ pt about rMarriage and Divor(湾 , Existcn∝of Son
わが国は,世 界 的 にみて も高離婚社会であ る。本稿 では,」GSS‑2000を用い わが国の離婚 に関する実証研究 をお こなった。離婚要 因は, 人 口学的要 因, 社 会統合 の影響 , 結 婚や離婚や 男女の伝統 的役割分担 な どに関す る価 値観 , 1 5 歳時の社会経済的環境要因に大別で きる。分析 の結果、男性 の場合 は子 どもの 存在 と高等教育が離婚 を抑止 するが , 1 5 歳 時 に片親であ つた り, 母 親 が常勤 労働 を してい る場合 には離婚経験 が多い。1 9 6 0 ‑ 6 4 年生 まれの コウホー トに離 婚 が多 く, 初 婚の 3 年 , 4 年 目に離婚可能性 が高 まる。子 どもが男児の場合 に は,男 性 の離婚が大 き く抑止 され る。女性 の場合 は子 どもの存在 は離婚抑止効 果 をもつが , 男 性 のほ ど強 くない。1 9 6 5 ‑ 6 9 年生 まれのコウホー トで離婚の可 能性 が際立 って高い。結婚 に関する非伝統 的な価値観 を強 く有 する場合 , 離 婚 可能性 が高 まる。
キーワード: 」G S S ‑ 2 0 0 0 , 離婚, 結 婚や離婚に関する伝統的価値観, 男 児の存在
‑25‑
1 , は じめ に
わが国の離婚水 準は , 世 界的にもみて もすで に高水準 に達 している。ことに 1 9 8 0 年代以 降 , 離 婚率 は急速 な上昇傾 向に転 じてお り, こ の傾 向が続 くな らば離婚 とい う事象は社会 的に希有な事例 ではな く, ひ とび とのライ フコースの中における選択肢のひ とつ となる時 代 に移行 してい くこととな る。今後のわが国の更な る少子高齢化 を背景 に, 女 性 の高学歴 化や社会進 出は ます ます進 んでい くことは明 らかである。女性 に とって , 結 婚 の経済 的依 存性 とい う意味は薄れ , 経 済的 自立 を基盤 と した選択行動が広 がつてい くことになろ う。
世界で もつ とも離婚率の高いアメ リカ合衆国においては, 5 年 以内 に初婚の五分の一が 離婚 とな り, 1 0 年 以 内に三分の一が,そ して 15年以内には 43%が 離婚 となる (Brattett and M o s l l e r , 2 0 0 1 ) 。アメ リカでは,第 二次大戦前後 に離婚 率の上昇があ つたが,そ の後戦前の
レベル まで低 下 し安定 していた。しか し,1960年代後半か ら離婚率は急速 に上昇 をは じめ, その傾 向は 1 9 8 0 年頃 までつづいた。1 9 8 0 年以降は高位で安定 し, 1 9 9 0 年 代 に入 り初婚年 齢 の上昇や婚姻 率の低 下 を背景 と して若 干低 下傾 向 を示 してい る。 ア メ リカ社会 は 1 9 6 0 年代半ば以前 と 1 9 8 0 年 以降 とは まるで異 なる社会 と言えるよ うな離婚 の水準 をもつ こと になつたのである。
アメ リカの 1 9 9 6 年の人 口千人 に対す る離婚率である普通離婚率は 4 . 3 3 であ り, わ が国 のそれは 1 9 9 9 年で 2 . 0 と約半分である。 しか しこの数値 はすで にフランス を抜いてお り, わが国の離婚水準 は世界の トップクラスに達 してい る と言 える( 1 ) 。わが国の離婚率は, 1 9 7 0 年代 か ら徐 々に上昇 し始めてはいたが , 1 9 9 0 年代 に入 り急速な 上昇傾 向を示 している。
この上昇傾 向は 1970年代 のアメ リカの ように推移 を示 し,いずれそれ以前の社会 とは異な るような水準で高位 に移行 するのであ ろうか。
離婚の増加 は , 当 事者である夫 と妻の別離のみ な らず家族の構成 を変化 させ , さ らに再 婚 と離婚が繰 り返 され ることによ り, 夫 婦 や親子 とい う関係 が複雑 な もの とな る。その結 果 , 家 族 その ものの意味 も大 き く変化 してい くこ とになる。
わが国においては , こ れ まで離婚 に関す る研究は法律家な どによる個 々の事例 に関する ものは多いが , 個 票データによる離婚行動 に関す る要 因分析 はあ ま りお こなわれて こなか った。その最大の原 因は,デ ータの入手可能性 の問題 である。いかな る要 因が離婚 とい う 行動に影響 を及ぼすのかを分析 す る際 には , 個 々人が もつ様 々な特質 に関する情報が不可 欠である。離婚が特異な行動ではな くご く普通の社会行動 とな りつつあるわが国において,
こう した行 動分析 を行 うこ とは非常 に大 きな意味 があ るもの と考 える。
本稿 においては大規模 なサ ンプルデー タか らな る J G S S ‑ 2 0 0 0 を用い, わ が国の離婚行動 について ,人 口学的要 因,社 会統制要因,社 会経済 変数 ,回 答者 の 15歳 時の環境要 因,価 値観 因子な どの側 面か らわが国の離婚行動の分析 をお こなつてい くこ とにす る。
2.離 婚 要 因 に関す る先行研 究
1960年代後半か ら 80年 代始め にかけて離婚率 の急激な上昇 を経験 したアメ リカにおい ては,1980年 代 に離婚要 因についての多 くの実証的研究がな された (White,1990)。そ し て 1980年代 に離婚率が高位 安定の状態 に移行する と,離婚 によって もた らされ る帰結 につ いての研究 が多 くなってい る。本節では,離 婚要 因 についてお こなわれた先行研究 につい て考察 し,JGSS‑2000か ら得 られ る変数 を最大限利用 し,わ が国に離婚行動の要因分析 を 行 うためのモデル を構築す る。
先 に述べ たように,1980年 代 にアメ リカですすめ られた離婚要因に関する研 究 において , 大別 する と離婚行動 をお こな う人 々の人 口学的特質 ,そ の人たちが存在 する社会 に固有の 社会統制的要 因,個 々人の社会経済的特質 ,回 答者の 15歳 時 の社会経済的環境要 因,そ し て結婚や離婚 とい つた社会行動や伝統 的な男女の役筈J分担 な どに関す る価値観 な どが取 り 上 げ られて きた。以下では ,そ れぞれの考察 を行 つてい くことにする。
2.1 人 口学的要因
離婚 に影響 を及 ぼす人 口学的要 因 としては ,性別や年齢や人種 な どの基本的な属性 か ら, 人 口事象 と してあ らわれ る初婚年齢 ,初 婚や再婚 な どの結婚順位 ,子 どもの有無 ,男 児の 有無な どが先行研 究 によってその影響が認め られている。 また,親 の離婚経験 や本人の同 棲経験 な ども人 口学的要因 と分類 され る。
まず,初 婚年齢 か ら考察する。アメ リカでは,1980年 代 中頃 まで初婚年齢 は非常 に低 く 状 態 で あ つた。離婚 率 が急上 昇 して い た 1975年 の初 婚 中位 年齢 (Median Age at First Marriagc)が,男 子で 22.7歳,女 子で 20,8歳であ る。それが 1990年 になる と男子が 25.9 歳 ,女 子 が 24.0歳 とな り,そ れ に ともな つて離婚率 も若干低 下 して きている (Cemer ttr Disease Control and Prevelltion,1995)。初婚年齢 と離婚 については MartinとBumpass(1989) によって も指摘 され ,早 婚 であるほ ど離婚 の確率は高ま り,特 に結婚 5年 以内の離婚 につ いては結婚年齢 が大 きな予測効果 をもつ。 この ように初婚年齢 が低 い場合 ,つ ま り早婚 が 離婚 を高め るもつ とも大 きな原 因 して ,夫 と妻の どち ら側 にも結婚後 の男女の役割 につい ての認識 とその遂行の度合 いが低 い ことが指摘 されている (Booth and Edwards,1985)。
結婚順位 については,再 婚は初婚 よ りも 25%も 離婚率が高い傾 向があ り,初 婚が離婚 と なる人たちは ,そ の特質 を再婚 に も持 ち越 す傾 向がある (Martin and Bumpass,1989)。また 同棲経験 に関 しては ,同 棲 を した経験 があ る人や 同棲 を容認す る人々は結婚 についての伝 統 的な規範 を軽視 する傾 向が強 く,そ うでない人 たち と比較 す る と,離 婚 を恥 ずべ き事 と 思わない と説明 され る (Bennet,et.al.,1988)。つ ま り,離 婚経験者や 同棲経験者は,ど ち らも結婚 に関する社会規範 に とらわれない考え方 をもち,そ う した こ とが離婚 を容易 に受 け入れ るこ ととな るのであ る。
子 どもの有無は ,離 婚の抑制要 因 となることが検証 されてい る。家庭 におけ る子 どもの
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存在 は, 結 婚の凝集性 を高める と考え られ , 子 どもがいない夫婦 の離婚率は子 どもがいる 夫婦 よ りも高 く, ま た結婚 か ら離婚 に至 る期間 も短 い ことが検 証 されている ( W h i t e , e t . a l . , 1 9 8 6 ) 。また,General Social Surveyを用い , 筆 者が行 つた分析 においては , 子 どもの有無 は男子のモデル において離婚抑止効果があ ることが認め られた ( 1 9 9 7 ) 。
子 どもの有無は離婚 を抑止する効果があ るが, 子 どもの性別 の違い よつてその効果の程 度が異なる。M o r g a n らは 1 9 8 0 年の C u r r e n t P o p u l a t i o n S u r v e y を用いて分析 し, 女 児 をもつ 母親 は息子 をもつ者 よ りも結婚崩壊 を経験 しやすい とい うことを検証 した。 同様 に、娘は 息子 よ りも両親 の結婚崩壊 を経験 しやすい とい うこ ともわかつた。相対的な結婚崩壊 する 確率は娘 をもつ こ とで 9 % 上 昇するのであ る。夫婦 に とって子 どもをもち親 にな ることは, 結婚 安定性 を増 す ことになるが, 父親 が家庭 に熱心であ る とき特 にそれは顕著 にみ られ る。
しか し子 どもが息子であ る時 には , 父 親 の熱心 さが さ らに上昇 するのである ( 1 9 8 8 ) 。 子 どもの存在は結婚の安定性 を上昇 させ るが, 父 親 は息子 によ りかかわ り合 い と彼への 投資 を促進 させ るため, 息 子は娘 よ りもよ り安定性 を上昇 させ るのである。つ ま り, 父 親 は娘 よ りも息子の養育 に熱心であ り, 娘 よ りも息子 に躾や教育 をよ り熱心 に施 す とい う結 果がみ られ たのである。K a t z e v らも, 男 児がひ と りで もい る母親 と女児のみの母親 とを比 較する と, 後 者のほ うが離婚確率 の高い こ とを証明 してい る ( 1 9 9 4 ) 。
世代間の離婚経験 , つ ま り親 の離婚経験 と子の離婚行動の関係 についてはすで に多 くの 研究がなされてい る。親 の離婚は子 どもの将来 の離婚可能性 を上昇 させ る ( B u m p a s s e t a l . , 1991; Glenn& Kramer, 1987, McLanahan& Bumpass, 1988; Mueller & Pope, 1977; Popc &
M u c l t t r , 1 9 7 6 ) 。子 どもの世代 の夫 と妻の どち らかの親 が離婚 していて も, 子 ども世代 の離 婚可能性 は上昇す るが, 双 方の親 が離婚 している時 には, そ の夫婦 の離婚の可能性 は最 も 高 くなる。また, 親 の離婚が 1 2 歳 以下であ るとき, 子 どもの世代への親 の離婚 の影響 が強
くみ られ る ( A m o t o , 1 9 9 6 ) 。
また,結 婚崩壊 によ り片親 と暮 らす子供 は、両親 と暮 らす子供 に比べて ,10代 で結婚や 出産 を しやす く, ま た婚外 出産 をする傾 向 にあ り, さ らに結婚崩壊 を経験 する可能性 が高 い こ とも認 め られている (McLanahan and Bumpass,1988)。
2 . 2 社 会統合 と離婚
個人や家族 とその社会 との結びつ きの程度 を意味 する社会統合(Social lntegration)の強弱 と離婚の関係 については , 個 人デー タや地域デー タな ど異なった検証方法 によ り説明 され て きている。
個人デー タを用 い この関係 を分析 した, G l e n n と S h e l t o n による と,社 会統合 が強い場合 には ,人 々はその社会 に存在 する社会規範 (Social Norm)を重視 するため ,結 婚相手の選 択 に慎重 とな り, ま た結婚生活 における夫 と妻の役割 を尊重す るようになる。 これ とは逆 に,社 会統合が弱 い場合 には,社 会規範 には とらわれな くな り離婚 を恥 ずか しい こと思わ
な くな る傾 向があ る ( 1 9 8 5 ) 。
地域デー タを用 いた分析 では, 社 会統合 を示す指標 と して , 都 市化水準 , 教 会加入率 , また人 口変化率な どを採用 し, 離 婚 との関係 を考察 する。B r e a u l t とK p o s o w a の場合 は郡 レ ベルのデー タを用 い,上 記の関係 を検証 した。その結果 ,そ の地域の教会加入率が高 くな る と離婚率は低 くな り, 人 口変化率 と都市化率が増加 する と離婚率 も高 くなることが示 さ れている ( 1 9 8 7 ) 。
2 . 3 価 値観の変化
社会の近代化や都市化 , 人 口移 動や社会移動の活性化 , 教 育水準の 上昇や女性 の就業機 会の増加 な どの社会 的変化 に伴 い , 社 会統合が弱 くな り個 人主義が発達 して くると, 結 婚 や家族 の形態が変化 する。その結果 と して , 同 棲 や婚姻外 の出産な どが生 じることとなる ( R o u s s e l a n d t t e r ) 1 9 8 8 ) 。個人主義の発達は社会規範の拘束力の低 下 をもた らし, 結 婚 に 関する考 え方や家庭 内の夫婦の役害J 分担 ( G e n d e r R o l e s ) に関す る伝統 的な価値観 , あ るい は離婚 に関す る考 え方を変化 させ ることとなる。 1 9 6 0 年代か ら 1 9 7 0 年代 のア メ リカ社会 では,リ ベ ラ リズムの台頭や女性解放運動 ,そ してベ トナム戦争 を背景 と して女子の高学 歴化 や社会進 出が進 んだ。女性 の経済的 自立や社会多岐活動が活発化 すればす るほ ど, 結 婚や男女の役割分担 についての伝統 的な価値観や , 離 婚 に対す る考 え方 も大 き く変化 して い つたのであ る (Cherlin,1981)。
特 に家庭 内にお ける夫 と妻の役筈J に関 して大 きな影響 をもた らす ものは, 女 子の就業で ある。女子就業 が女子の経済的 自立をもた らし, その結果 として離婚 の 可能性 を高める( L e c , 1 9 8 乳R a n k , 1 9 8 7 ; B ( ) o t h , e t . a l . , 1 9 8 4 ) 。こう した経済 的 自立が家庭 内における夫 と妻の伝統 的な役割分担 を変化 させ , 男 女の性役割が 同等 にな る と, 夫 婦 間や家族 の成 員間の結 びつ きの強 さ, つ ま り結婚の凝集 ( M a r i t a l c o h e s l o n ) が希薄 になる ( B e c k e r , 1 9 8 1 ) 。さ らに夫 婦 間の相 互作用 とい う観点 か らみ る と, 女 子の就業 によ り, 夫 婦 間の時間 に共有が少な く 傾 向があ り, 離 婚傾 向が強 くなる。
女子の経済的 自立や社会進出, そ れに伴 う家族 の機能の変化 な どに よって もた らされた 価値観の変化 は, 行 動へ と反映 され る。ア メ リカ社会の 1 9 6 0 年代 中頃か ら 1 9 8 0 年代 まで の離婚率の急上昇の背景 には こう した価値観 の変化 が存在 していた と言え よう。
2 口4 1 5 歳 時の環境要因 と社会経済変数
子 どもが思春期 を迎 え, 人 格形成 に大 きな影響 をもつ 1 5 歳 時の生活環境は , 彼 らの後の 社会行動 に大 きな影響 をもつ。 またこの時期 の両親 か ら与 え られ る社会経済的環境は , 本 人の経済的な価値観 を決定 し, 成 長後 に労働市場 で 自分が得 ることので きる収入の意味の 理解 に影響 する。E a s t e r H n の提唱す る 「相対所得 ( R e l a t v e l n c o m c ) 」であ る ( 1 9 8 0 ) 。青年 期 に親 か ら, と くに経済的 に中心的な役割 を演 じる父親 か ら与 え られ た経済的環境 , 言 い
‑29‑
換 えれば個 々人の生活水準 に関す るものは , 本 人の行動様式 に関する様 々な価値観 に大 き な影響 を与 える。 そ して青年が労働 市場 において 自らが得 た所得 と, 親 か ら与 え られ た経 済的価値観 の比較 によって 自己の経済的地位 を理解 することとな る。前者の親 か ら与 え ら れた経済 的価値観 を生活水 準効果 , 後 者の 自らの稼得能力 を所得効果 と言い, そ の比較 に よって相対的経済 的地位 を決定 す るのであ る。
1 5 歳 時の経済的状況それ 自体や ,15歳時の父親 の経済的地位 と自分の経済的地位 の比較 , また母親 の勤労や片親 の有無な どは, 本 人の行動様 式に関する様 々な価値観 の形成 に大 き な影響 をもた らす もの と言える。
3 . デ ータ と分析方法
日本版 G e n e r a l S o c i a l S u r v e y s ( J G S S ) の第 1 回 本調査 ( J G S S ‑ 2 0 0 0 ) を利用 した。 初 婚者 の うちで結婚期 間 を経 るなかで ,離 婚 とい う行動 を とることはいかな る要 因によって影響 を受けるのであろ うか。 この問題 について分析 を行 う場合 には , 初 婚 とい うエ ン トリーイ ベ ン トによって形成 された結婚生活が,離 婚 とい う現象 によつて終結 する,も しくは調査 時点 まで結婚生活 が継続 してい る者 を打 ち切 り例(CensOred case)とな る とした生存分析 を 考 える必要があ る。つ ま り初婚期 間 とい う時間変数 の変化 の中で , い かなる要 因の影響 を 受け離婚の生起確率が変化 してい くかをみ る分析 である。いわゆ る比例ハザー ドモデルに よる分析である。ハザー ド率は, あ る時点 でイベ ン トが起 こ りうる リスクをもつサ ンプル 数 に対 して 同時点 にイベ ン トが生起 したサ ンプル数 の比率であ る。つ ま り, あ る時点 にお けるイベ ン ト生起 の可能性 をもつ対象がイベ ン トを経験 す る確 率であ る ( Y a l r l a g u c h i , 1 9 9 1 ; A l l i s o n , 1 9 9 5 ) 。
初婚期 間が離婚 によって終結 す る要 因を分析 す るモデルには , 前 述 の先行研究か ら得 ら れた人 口学 的要因, 社 会統合 , 社 会経済変数 , 1 5 歳 時の環境要 因, 価 値観 因子な どが説明 変数 となる。人 口学的要 因には , 初 婚年齢 や子 どもの有無 , そ して回答者が属 する出生 コ ウホー トを用い る。出生 コ ウホー トは 1 9 4 4 年以 前のコウホー トを 0 と した準拠集 団 と し, それ以降の 5 歳 階級の出生 ヨウホー トであ る場合 をそれぞれ 1 と した変数 を用意 した。社 会統合 には 1 3 大 都市での居住 と, そ れ よ り小規模 な市での居住 が変数 して採 用 した。これ らは市以下 の町村 での居住 を準拠集 団 としてい る。社会経済変数 と しては回答者本人の教 育水準が, そ して 1 5 歳 時の環境要 因 と して片親家庭で育つたか , 母 親 が常勤で働 いていた か,世 常収入 の水準 を用い る。また,社 会経済変数 と 15歳 時 の環境要 因 との 中間的存在 と して ,「本目対所得」の概念があ るが, そ の概念の操作化 と して回答者本人 と初職 の威信 スコ ア と 1 5 歳 時の父親 の職業威信 とを対比 したものを用いる。価値観 因子 は非伝統 的価値観 因 子 と離婚肯定 因子の二 因子 を投入 す る。
表 l J G S S ‑ 2 0 0 0 のサ ンプルの コウホ ー ト別度数分布 と離婚経験者の分布
A . 全 サ ンプルにおける既婚男女の生年 ヨウホー ト及び離婚経験者の分布 5 年区切 リコウホー ト
数
565 142 109 84 80 51
5 2 . 2 1 3 . 2 1 0 . 1 7 . 8 7 . 4 4 . 7 4 . 5
20(4)キ 18
8 6 1 0 ( 1 ) 十
1
3.54路 12.68粥
7.34鴨 7.14鴨 12.50鴨
1.96常
Percent
婚 経ホー トの
男 性 ‑ 1 9 4 4 年生まれ 1 9 4 5 ‑ 1 9 4 9 年 生まれ 1 9 5 0 ‑ 1 9 5 4 年 生まれ 1 9 5 5 ‑ 1 9 5 9 年 生まれ 1 9 6 0 ‑ 1 9 6 4 年 生まれ 1 9 6 5 ‑ 1 9 6 9 年 生まれ
2 女 性
Tctal
‑ 1 9 4 4 年 生 まれ 1 9 4 5 ‑ 1 9 4 9 年生 まれ 1 9 5 0 ‑ 1 9 5 4 年生 まれ 1 9 5 5 ‑ 1 9 5 9 年生 まれ 1 9 6 0 ‑ 1 9 6 4 年生 まれ 1 9 6 5 ‑ 1 9 6 9 年生 まれ
1079 674 171 149 111 122 82
100.0 49.0 1 2 . 4 1 0 . 8 8 . 0 8 . 9 6 . 0 4 . 9
65(5)キ 6.02帖
5.04鴨 7.60鴨 8.05鴨 6 . 3 1 粥 4.92%
7.32鴨 34(1)キ
13 12 7 ( 1 ) 十
6 6 4 TOta1 1376
+ ( ) 内 は離 婚 2 回経験 者 数 : 合 計 で 男性 5 、女 性 2
100.0 82(2)* 5.9611
B . モ デル使用サ ンプルにおける既婚男女の生年 ヨウホ ー ト及び離婚経験者の分布
5 年区切 リヨウホー ト
度
Percent コウホー トの
男 性 ‐1 9 4 4 年生 まれ 1 9 4 5 ‑ 1 9 4 9 年 生 まれ 1 9 5 0 ‑ 1 9 5 4 年 生 まれ 1 9 5 5 ‑ 1 9 5 9 年 生 まれ 1 9 6 0 ‑ 1 9 6 4 年 生 まれ 1 9 6 5 ‑ 1 9 6 9 年 生 まれ
426 1 1 7 9 3 6 9 6 7 4 0 3 8
50.1 1 3 . 8 1 0 . 9 8 . 1 7 . 9 4 . 7
2.3511 10.26鴨
6.45粥 7.25鴨 10.45%
2.5011 1 0
12 6 5 7 1 2
2 女 性
1 9 7 0 年生 ま れ 一 Total
‑ 1 9 4 4 年生 まれ 1 9 4 5 ‑ 1 9 4 9 年 生 まれ 1 9 5 0 ‑ 1 9 5 4 年 生 まれ 1 9 5 5 ‑ 1 9 5 9 年 生 まれ 1 9 6 0 ‑ 1 9 6 4 年 生 まれ 1 9 6 5 ‑ 1 9 6 9 年 生 まれ
850
4 100.0
43,0 13.2 1 2 . 4
8 . 9 1 0 . 2
6 . 9 5 . 4 424
130 122 88 100
68 53
43
2 ︲
1 0
1 0 4 6 6 1
5.26 5.0611 4.9511 7.69%
8.2011 4.5511 6 0011 8.8211 1 9 7 0 年生 ま れ 一
Total 985 100.0
1 5.8911
‑ 3 1 ‑
4 . 分 析 結 果
4 . 1 出 生 コウホー ト別の分布
分析 に先立ち,ま ずデー タの基 本的な特質か ら考察 してい くこととする。サ ンプルの分 布 と離婚経験者の分布等 について示 したのが表 1 で あ る。表 1 の 上部 には J G S S ‑ 2 0 0 0 に含 まれている全サ ンプルの中での ,既 婚者であ る男女の出生 コウホー ト別のサ ンプルの分布 と離婚経験者の分布 を,ま たその 中か ら分析モデル に使用する諸変数 の欠損値 や複数 回の 離婚経験者 を除いた ものを下部 に示 した。表 1 か ら明 らかな ように今 回のデー タでは ,男 子の 5 2 . 2 % , 女 子 の 4 9 . 0 % が1 9 4 4 年以前に生 まれたコウホー トに属 す る。離婚経験 が 2回 の ものは男子で 5名 ,女 子で 2名 のみであ つたため,今 回の分析モデルか ら排除すること に した。1 9 4 5 年以降の出生 コ ウホー トを 5歳 階級別で見てい くと,男 女 とも 1945年か ら 1 9 4 9 年生 まれ コ ウホー トにおいて離婚経験 が高い。彼 らは調査時において 50歳 か ら55歳 であ り,結 婚後約 25年 を経過 している。人 口動態統 計か らみて も結婚期間別の離婚者筈J合 が高い,結 婚 20年 以 上のいわゆ る 「熟年離婚」の多い世代で もある。
次 に注 目すべ きは,男 子の 1960年か ら 1964年の出生 ヨ ウホー トと女子の 1965年か ら 1 9 6 9 年生 まれのコウホー トであ る。年齢でいえば男子が 35歳 か ら 39歳 ,女 子が 30歳 か
ら 3 4 歳 であ る。2 0 0 0 年 の人 口動態統計 (2)において も,男 子の 30歳 代 と女子の 20歳 代 後 半か ら3 0 歳 代前半はその前後 の世代 と比べ る と離婚 率が高 く,JGSS‑2000のサ ンフ°
ル変 動 に起 因す るものではない。
本論文の 目的は ,わ が国の離婚行動がいかなる要 因によ りひ きお こされ る確 率が高いか を,アメ リカにおいて実証 された論理枠組み を適応 し分析 す ることにあ る。しか しなが ら, J G S S ‑ 2 0 0 0 は離婚 の要因分析 を主 目的に設計 された調査ではな く,社 会科学全般 について の広範な概 念 を網羅 した総合的な調査であ り,か つ クロス ・セ クショナルな調査であ る。
そのためパ ネル調査 の ように,パ ネルの時間的経過 による行動 を分析 するこ とは困難 が伴 う。結婚や離婚 ,さ らに再婚行動 な どは,そ の事象 が生起 する時点のみな らずそれ以 前の 調査対象者 と配偶 者の情報 が不可欠である。 クロス ・セ クシ ョナルでは調査時点 が一時点 とな るため ,事 象 が生起 したのちに獲得 した特質 (教育水準 ,就 業状態 ,価 値観や考 え方 な ど) が ,分 析 に混入 して しまうか らであ る。それ故 ,時 間的に変動する要因は出来 る限 り排除 し,そ の範 囲内でモデル を構築 してい くこ とになる。回答者の年齢は ,時 間の変動 ともつ とも関連 す る変数であるため,分 析 モデル においては年齢 ではな く回答 者の属 する 出生コウホー トを変数 と して採用 することとする。
4 . 2 非 伝統的価値観 因子 と離婚肯定因子
離婚行動 に影響 を及 ぼすであろ うと見 られ る価値観 については ,JGSS‑2000に おいて多 くの質問がお こなわれてい る。それ らは夫 と妻の役割分担 についての もの,女 性 の 自立に 関するもの , そ して結婚や離婚 についての考え方な どである。 これ らは個 々の質問でひ と
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つの変数 にもな りうるが,伝 統 的な価値観 とい うもの を異 なる次元で表 したもの とも言え る。そ こで本分析 においては,こ れ ら伝統 的価値観 に関する 13変 数 に関 して主成分分析 を 行い ,二 つの因子 を取 り出 した。これ らの 13変 数は,そ れぞれ 「賛成」か ら 「反対」まで 4段 階の回答カテゴ リー に分かれているが,数 値 が高いほ うを伝統 的な価値観 とは反対の 回答 ,つ ま り非伝統的価値観 を表す ように配点 を変更 した。
表 2は ,そ の分析結果である。第一主成分は固有値の分散全体の約 32%を 占め,第 二主 成分で 15%を 示 してい る。第三主成分は約 11%で ある。回転前の第一主成分ではほ とん ど すべての変数が高い固有値 を示 しているが ,バ リマ ックス回転後では第一主成分 と第二主 成分の違いが明確 となる。第一主成分には,「夫に十分な収入があれば,妻 は仕事をもたな い方が よい」 (変数名 :q4wjbia),「夫は外 で働 き,妻 は家庭 を守 るべ きだ」 (変数名 : q4‑hllx),「妻は夫の仕事の手助 けをす る方が大切」 (変数名 :q4‑hphh),「 母親 の仕事 は入学前の子 どもによ くない影響 を与 える」 (変数名 :qttbHttCC),「女性 の幸福 は結婚 に あ る」 (変数名 :q4wnmga),「男性 の幸福 は結婚 にある」 (変数名 :q4111111mga),「結婚 して も必ず しも子供 い らない」 (変数名 :q4noccmg)な どが高い固有値 を示 した。第二主成分 は ,「一般 に,結 婚生活が うま くいかず しあわせでない場合 ,子 どもにとっては,両 親 が離 婚 に踏み切 つた方が よい」 (変数名 :q4ccdvy),「・・・妻 に とって離婚 に踏み切 つた方が よい」(変数名 :q4‑dvy),そ して 「・・・夫に とって離婚 に踏み切 つた方が よい」(変数 名 :q4hhdvY)と いつた変数が高い値 を示 した。第三主成分 には,母 親 の就労や男性 の家 事分担 な どの変数 が含 まれているが,意 味の 上では第一主成分 と同類のもの と言えよう。
以上の ことか ら,第 一主成分は非伝統的価値観 についての総合的な因子をあ らわすもの と考 えることがで き,ま た第 二主成分は離婚 についての肯定 的な因子 を意味するもの とい る。 これ ら二種類の合成 変数 を離婚行動の分析モデル に組み込んでい くことにする。
4.3 離 婚行動 に関するモデル分析
本分析 では時間変数 を初婚期 間 と して ,初 婚期 間が離婚 によって終結する要因を分析 す ることとなる。モデルには ,先 にも述べて ように人 口学的要 因,社 会統合 ,社 会経済変数 , 15歳 時の環境要因,価 値観 因子な どが説明変数 と して投入 する。
人 口学的要因には,初 婚年齢 と 6歳 未満の未就学児の有無 (モデル によっては男女児別 の変数 を投入),そ して回答者が属 する出生 コウホー トが用い られ る。年齢でな く出生 コウ ホー トを用いたのは,年 齢 は時間 と共に変化 を示す時間変数であ るため,出 生 コウホー ト を年齢 に代替する人口学的変数 を して用いることに した。1944年以前の出生 ヨウホー トを 準拠集 団 とし,そ れ以降の 5歳 階級の出生 コウホー トをグ ミー変数 としてモデルに投入す る。 また,初 婚期 間についてその期間が 25年 か ら30年 の もの と,そ れ以下の ものの比較 を行 うために期間別のグ ミー変数 を用意 した。
社会統合 に関するもの としては,前 述の ように環境変数 と して 13大 都市での居住 と,そ
れ よ り小規模 な市での居住 を変数 して用いる。 もちろん これ らの市の規模 よ りも小 さい町 村での居住 を準拠集団 と し, 大 きな都市では社会統合 が小 さな 自治体 よ りも弱 くなつてい
る と考 える。
社会経済変数 と しては回答者本人の高等教育の有無が , そ して 1 5 歳時の環境要 因 と して 1 5 歳 時 に片親家庭で育 つたか,母 親 が常勤で働いていたか,世 常収入の水準 を用いる。
また,「相対所得」を社会経済変数 と 15歳 時の環境要因 との中間的存在 として考え,そ の操作化 として回答者本人 と初職 の威信 スコア (うと 15歳 時の父親 の職業威信 とを対比 し たものを用いる。前者が後者 を上回るとすると, つ ま り 「相対所得」の値 が 1 を 超 えるな らば ,自 分の育 つた経済的環境 よ りも自らが労働 市場で経験 した経済的状況が良好であ る ことを意味する。
価値観 因子は前述の 1 3 変 数か ら作成 した非伝統的価値観 因子 と離婚肯定 因子の二 因子 を用い る。
表 3 は , 離散時間 ロジ ツ トモデル による離婚行動に関する回帰分析 ( D i s c r e t e T l l l t l e H a z a r d M o d e l ) で ある。モデル 1 ( 男 性 ) と モデル 2 ( 女 性 ) は , 離 婚肯定 因子 を含 まないモデル
であ り,モ デル 3(男 性 )と モデル 4(女 性 )は 離婚肯定 因子 を含むモデルであ る。離婚肯 定 因子 を含 まないモデル を用意 したのは, 離 婚経験者は , 事 後的に 自己の行動 を是 認する 傾 向があ るのではないか と考えるか らである。つ ま り, 離 婚 を経験 したことによ り, 離 婚
を肯定 す ることになる可能性があ る と思えるか らである。
男性 のモデル 1 で は, 未 就学児がいることが離婚 を抑制 する効果があるこ とを強い統 計 的有意性 を示 しなが らあ らわ している。1 5 歳 時の環境要 因では, 1 5 歳 時 に片親であつた こ とと, 母 親が フル タイムで働いていたことが離婚経験 に正の効果 を示 ししてい る。出生コ ウホー トは 1 9 4 5 年以降 1 9 6 4 年生 まれ までの 5 歳 階級のコウホー トすべてで正の効果 をあ らわ し,か つ統計的有意性 を示 している。また 1970年以降のコウホー トも同様の効果を示 した。この中では 1 9 6 5 年か ら1 9 6 9 年生 まれのコウホー トが もつとも高いオ ッズ比を示 し, ついで 1 9 7 0 年以降のコ ウホー トがそれに続 く。初婚期 間別 にみる と男性のモデルでは ,初 婚 2 年 目か ら 1 0 年 目の期間で離婚の可能性 が高 くな らが, 得に 3 年 目と 4 年 目のオ ッズが 高 くなっている。出生 コウホー ト別で見た場合 1 9 7 0 年以降生 まれのオ ッズが高 くな つてい たが, 初 婚期間別の結果か ら考察するとち ようど結婚 3 年 か ら4 年 目の人たちである と考 え られ る。
モデル 2 は 女性 を対象 にモデル 1と 同様の変数 を投入 したものであ る。女性 のモデルで は ,男 性 と同様 に未就学児の存在 が離婚 を抑制するが,男 性 ほ どその影響は強 くない。15 歳 時 の 父親 の職 業 威 信 と 自分 が初 め て付 い た職 業 の威 信 ス コ ア を比 較 したい わ ゆ る
「相対所得」が , こ のモデルで離婚抑止効果 を示 した。つ ま り, 自 分の初職 の威信 スコア が 1 5 歳 時 の父親 の職業威信 よ りも高い傾 向がある場合 には , 離 婚 が抑止 され る傾 向が あ ることとなる。 また男性 のモデルでは 1 5 歳 時 に片親であ つたことや母親 の常勤が離婚