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情報化施工に用いる3次元設計データ作成の課題分析

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Academic year: 2021

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(1)

Clarification of the issues of the 3D data creation for Intelligent Construction 北川順

・梶田洋規

2

・重高浩一

3

・藤島崇

4

・椎葉祐士

5

・篠原雅人

6

Kitagawa Jun, Kajita Hiroki, Shigetaka Koichi, Fujishima Takashi, Shiiba Yushi and Shinohara Masato

1.はじめに

国土交通省では,平成 20 年7月に「情報化施工推 進戦略

1)

」を策定し,情報化施工の普及に向けて取 り組んでいる.情報化施工の導入環境を改善するた めに,情報化施工技術を活用した直轄工事を対象に,

毎年アンケート調査を実施しており,普及の阻害要 因を析出させ,その解決に努めている.

平成 21 年度に施工者を対象に実施したアンケー ト調査では,「情報化施工に対する要望」という設 問に対して最も多かった回答が「発注者側からの3 次元設計データの提供」であった(図-1).この 結果から,情報化施工を実施するために機器へ搭載 する電子データ(以下,3次元設計データ)の作成 に対して,施工者は大きな負担を感じていることが 判明した.そこで,国土交通省では,平成 22 年8月 に通達「情報化施工技術の一般化・実用化の推進に ついて

2)

」を発出し,その中の「第4 2)情報化 施工を実施するための設計データの流通環境整備」

において,発注者から3次元設計データを貸与する こととした.しかし,この通達に基づき3次元設計 データを発注者から施工者に貸与した工事では, 「貸 与されたデータがうまく活用できなかった」等の意 見が多く寄せられ,単に3次元設計データを発注者 から施工者に貸与するだけでは課題の解決にならな いことが判明した.

本研究は,これらの背景を踏まえ,「TS(トー

タルステーション)を用いた出来形管理」で利用す る3次元設計データである「基本設計データ

3)

」 (図

-2)の作成作業に対する詳細な調査や関係者への ヒアリングを通じて,データ作成作業における課題 を解明し,さらに,解明した課題に対する解決策に ついて検討を行ったものである.

2.3次元設計データ作成作業の分析

3次元設計データの作成作業について,施工者が負 担に感じている箇所や要因を明らかにするため,実際 に利用された直轄工事の発注図面を用いたデータ作成 実験を実施し,作業の内容と要した時間を整理した.

また,実験後に被験者に対するヒアリングを実施し,

図-1 H21 アンケート結果

(情報化施工に対する要望)

0 5 10 15 20 25

使用する計測技術の精度の向上 機器のアタッチメント化 機器類の調達環境の改善(価格、台数)

現場ニーズに適した機能の強化・追加 入札・契約の改善 監督検査方法の見直し 発注者側からの3次元設計データの提供 情報化施工技術のメリットの周知 情報化施工に対応した技術者の育成 その他

5 2

20 13 3 3

21 5

12 3

回答数

抄録:近年,情報化施工の普及がますます進んでいる.情報化施工は,施工効率や品質の向上と いう効果が得られるが,情報化施工を実施するために必要となる3次元の設計データ作成に係る大 きな負担が施工者より問題視されている.

そこで,工事発注図面を用いて3次元設計データを作成する実験や,施工者や建設コンサルタン ト等,関係者へのヒアリングを実施し,データ作成における負担の要因を調査した.その結果,情 報化施工に限らず,設計~発注~施工という建設生産プロセスにおける情報流通の課題が明らかに なり,その課題について解決策を検討した.

キーワード: 情報化施工,CALS/EC,ICT,3次元データ

Keywords : Intelligent Construction,CALS/EC,ICT,Three-dimensional Data

1 : 非会員 国土交通省 国土技術政策総合研究所 高度情報化研究センター 情報基盤研究室 (〒305-0804 茨城県つくば市旭1,Tel :029-864-7489, E-mail : kitagawa-j84cf@nilim.go.jp) 2 : 非会員 国土交通省 国土技術政策総合研究所 高度情報化研究センター 情報基盤研究室 3 : 正会員 国土交通省 国土技術政策総合研究所 高度情報化研究センター 情報基盤研究室 4 : 正会員 一般社団法人 日本建設機械施工協会 施工技術総合研究所

5 : 正会員 一般社団法人 日本建設機械施工協会 施工技術総合研究所 6 : 正会員 一般社団法人 日本建設機械施工協会 施工技術総合研究所

- 69 -

19

情報化施工に用いる3次元設計データ作成の課題分析

土木情報学シンポジウム講演集 vol.37 2012

(2)

図-2 基本設計データのイメージ 表-1 実験条件

時間を要した作業の原因や,難易度が高いと感じる作 業を調査した.

(1)実験条件

実験の条件は表-1の通りとした.

(2)実験結果

データ作成作業内容を,①必要図面類の確認,②図 面上の寸法算出,③データ入力(平面線形),④デー タ入力(縦断線形),⑤データ入力(横断形状)と分 類し,要した時間を図-3に整理した.これより,以 下のことが判明した.

・1回目の作業時間のうち,図面の整理や寸法の旗揚 げが約5割,ソフトウェアへのデータ入力が約5割 であった.

・1回目と2回目のデータ入力作業を比較すると,作 業時間が約6割縮減されており,作業に対する「慣 れ」によって,大幅な改善が図られた.

また,実験後の被験者に対するヒアリングで,以下の ことが判明した.

・発注図面にはデータ作成のために必要な寸法値が旗 揚げされていないことが多く,CAD ソフトを用いて 新たに多くの旗揚げをする必要がある.この作業は,

従来の施工においても丁張り計算のために必要な 作業である.

・「どのボタンを押せば良いのか」等の,データ作成 に利用するソフトウェアの使い方を理解するのに

図-3 データ作成実験結果 時間を要する.

・図面が正しく作図されていれば,データ入力は単純 作業であり,慣れれば難しいものではない.

3. 発注図書における課題と原因

データ作成実験の結果を踏まえ,設計業務の成果品 や発注図書,完成図書の分析及び,建設コンサルタン ト,発注者,施工者等へのヒアリングを実施し,発注 図書の課題を調査した.その結果,以下のような課題 があることがわかった.

(1)道路中心線形の情報

道路中心線形の情報には,道路の諸元や平面直角座 標系といった線形計算をする上で必要な情報が含まれ るため,データの項目数では横断形状に対して2倍以 上となる.そのため,作業の種類が多く,慣れによる 作業負担の軽減が図られにくい要素である.

(2)線分の結線

データ入力する数値を求めるために,CAD データか ら図面に記載のない寸法を読み取る必要があるが,本 来接しているはずの折線がわずかに離れていたり,交 叉している等,線分の結線箇所が正しく作図されてい ない場合があった(図-4).このような発注図面が 示された場合,図面の修正を行う必要があり,施工者 の負担となっている.

また,CAD データを認識して3次元設計データを効 率的に作成する機能を有するソフトウェアが市販され

図-4 線分の結線箇所が正しくない例

道路中心線形

出来形横断面形状 BP座標

EP座標

IP座標 直線

緩和曲線

(クロソイド)

緩和曲線

(クロソイド)

直線

曲線半径R

縦断線形

縦断変化点座標 縦断曲線長VCL

出来形横断面形状 平面線形

円曲線

計画高 計画高からの

高低差 道路中心線形 傾斜(%)

勾配(1:x) 幅員

比高値

区分 実験条件

対象技術 TSを用いた出来形管理で利用する基本設計 データ

工種 道路土工 延長 約783m

被験者

土木施工経験有り

2次元CADの通常の操作が可能 情報化施工は未経験

(現場代理人を想定)

備考

実験前に、簡単なレクを実施

(リース会社や販売店のサポートを想定)

同一の図面で、データ入力作業は2回実施

必要図面類の確認 図面上の寸法算出

データ入力(平面線形)

データ入力(縦断線形)

データ入力(横断形状)

回 数

作業時間

(min)

従来から必要な作業 新たに必要となった作業

0 200 400 600 800 1000 1200 1400

2回目 1回目

データ入力 6割減

法尻部の拡大

図面の結線箇所 本来結線

すべき箇所 本来の法面の位置

- 70 -

(3)

ているが,この機能は CAD 図面が正しく結線されてい る場合にのみ活用できる機能である.

(3)複数の線形が混在する場合の横断図

横断図は,通常1本の線形に対して直交した横断面 が図示される.しかし,IC におけるランプ部のように,

複数の線形が混在する構造物の場合,本線の線形を基 準にして描いた横断図では,ランプ部に対しては斜交 することになる(図-5).そのため,設計コンサル タントは,ランプの線形を基準に設計しながらも,横 断図の作成時には,本線の線形を基準にした斜めの寸 法値を算出・作図している.しかし,ランプが構造物 の機能を満たすためには,必要な幅員や法長が確保さ れていなければならないため,施工では,図面に記載 された斜交した寸法ではなく,ランプの線形に直交方 向の寸法を算出しなおす必要がある.

このように,複数の線形が混在する図面では,設計 コンサルタントは労力をかけて斜交した図面を作成し,

施工者は労力をかけて斜交した図面を元に戻すといっ た,どちらにも無駄な作業が行われている.

(4)築堤護岸工事の横断図

河川堤防では,横断図が堤防法線に対して斜交して 記載されることがしばしばある.これは設計の作業フ ローに起因している.道路と河川の設計フローを図-

6に示す.道路の場合,予備設計Aにて道路中心線形 を決定させた後に路線測量で横断方向の地形を測量を 実施する.しかし,河川の場合,予備設計が行われる ことはほとんどなく,測量用の線形(測量法線)を設 定し,それに対して直交方向に地形を測量し,その後 に堤防法線が決定される.このため,河川の場合は測

図-5 複数が混在する横断図の例

図-6 設計の流れ

図-7 測量法線と堤防法線の違い

量後に基準となる線形が変化し,それに伴い横断方向 も変化してしまうことがある(図-7).この場合,

地形の情報がある方向にしか図面を作成できないため,

設計業務成果の図面としては,堤防法線ではなく,測 量法線に直交した方向に図面が描かれる.しかし,施 工には堤防法線に直交した方向の横断図が必要である ため,施工者が工事測量によって堤防法線に直交方向 の地形を測量し,横断図が堤防法線に対して直交であ るかどうかを調査し,直交していないことが判明した 場合には横断図を作図し直している.

(5)施工に必要な資料

施工者は,工事契約後,まず必要書類の確認を行う.

必要な書類が不足している場合,監督職員に問い合わ せているが,資料の収集,貸与と行われるまでに,1,

2日かかってしまうことも多い.特に「線形計算書」

が不足している例が散見された.これは,設計業務に 求める成果品として明確に示されていないこと,また,

施工者に貸与すべき書類が明確に示されていないこと が原因と考えられる.

4.解決策の検討

前章で述べた課題について,その解決方策を検討し た.

(1)道路中心線形の流通

国土交通省では,平成 18 年度に「道路中心線形デー タ交換標準(案)道路中心線形編 Ver.1.0

4)

」を策定 している.これは,道路形状の内,最も基本的な要素 である道路中心線形の3次元形状を XML 形式にて表現 した交換標準である.情報化施工で用いる3次元設計 データは,道路中心線や堤防法線といった線形を基準 に作成する場合が多い.そのため,この道路中心線形 データを設計から施工に流通させることで,データ作 成作業のうち,中心線形部分の入力を自動化させるこ

NO.510NO.25+1.475R=800 BC5

NO.25+1.475R=800 EC4NO.25 NO.14+11.157R=1 000BC2

R= NO.15

NO.10

上 り O F F ラン フ ゚ ( 県 道)

暫 々 定 すり つ け ( 起点 ) 本 線

No.511

No.13

本線の線形に対して直交 に横断図が書かれる。

ランプの線形に対して 設計されている。

幅員が「4003」

(道路に対して 斜めの長さ)

ランプ部において、3本の 線形が混在

断 面 図

路線 検 討

概略 設 計

(A

、B

予備 設 計

(A

) 路線 測 量

予備 設 計

(B

、修 正

) 幅杭 設 置

用地 測 量

詳細 設 計

(A

、B

、修 正

) 工事 施 工 道

路 設 計

予備 設 計

測量 中 心 線の 設 定

中 心 線 測量

横断 測 量

詳細 設 計

幅杭 設 置

用地 測 量

工事 施 工 築

堤 設 計

道路中心線の決定 確定した道路中心線に基づき測量

堤防法線と横断図を一度に設計 測量用の線形を設定

測量の 横断方向

測量用の線形

施工用 の線形 法面に直交 する横断方向

- 71 -

(4)

とが可能である.道路中心線形は,設計段階でも予備 設計B以降ほぼ不変であり,再利用性が高い.また,

すでに入出力に対応したソフトウェアも多く市販され ており,特にTSを用いた出来形管理の場合,データ 作成ソフトウェアは,この交換標準のデータを読み込 む機能が必須の要件となっている

5)

ことから,早期に 実現できる可能性が高いと考えられる.

また,第2章の実験では,1回目の②データ入力(平 面線形)及び③データ入力(縦断線形)の作業には合 計で 51 分かかっているが,このデータ交換標準が流通 した場合を想定した実験を実施した所,入力作業が1 分となり,大幅な時間短縮が図られた.

(2)CAD データの品質向上

現在の CAD データは,その目的が「紙の発注図」を 印刷するための元データに留まっているため,出力が 正しくできるものであれば要件を満足していた.しか し,ソフトウェアで読み取る等,電子データとして活 用することを考えた場合には,コンピュータが正しく 認識できるように品質を向上させる必要がある.しか し,関係者と意見交換では,前章で述べた正しい結線 は,多数ある図面の全箇所を確認する作業にはあまり にも多くの手間がかかるため,困難であるという意見 が挙げられている.

(3)基準となる線形の明確化

現在の図面には,必要な寸法のみが示され,設計や 作図の基準となった「思想」 が示されないことが多く,

施工者は図面からそれを読み解かなければならない.

特に,前章で述べた線形については重要な要素である ことから,1枚の横断図に複数の線形が混在する場合 や,設計の基準となっている線形と作図の基準となっ ている線形が異なる場合等において,基準となる線形 を図面に明示することが必要である.また,横断図に おいて,中心線形がどの位置にあるのかという位置に ついても明確にすることで,施工者の作業が容易にな ると考えられる(図-8).

(4)設計業務成果品の明確化,貸与資料の明確化 必要書類の不足による施工の遅延を軽減するため,

設計業務成果品や貸与資料を明確化することが必要で ある.現在は,施工者からの個々の要望に対して,発 注図面(CAD) や, 設計業務成果品等を貸与しているが,

図-8 基準となる線形の明確化

工事に共通して貸与が必要な資料については,設計業 務成果品に含めるように仕様書に示し,さらに発注者 の作業として貸与資料をマニュアル化し,契約後早期 に発注者から施工者に必要な資料を漏れなく貸与する ことで工事の円滑化が図られると考えられる.

5.終わりに

本検討では,施工で利用するという観点で発注図書 のあり方について分析を行い,多くの課題があること を明らかにした.これは,建設コンサルタントの技術 力の問題ではなく,発注者が設計業務の成果として何 を求めているのかということが根本的な問題である.

また,施工に必要な情報は,これまでは人間が理解で きれば良かったため曖昧さを残した紙の図面でも問題 が生じていなかったが,情報化施工のようにコンピュ ータに情報を理解させるためには,曖昧さがない電子 データが求められることになった.本研究では,現状 の課題と,個々の課題に対する解決策について述べた が,情報技術の進歩した時代において,これまでの仕 事のやり方を抜本的に見直す検討も必要である.特に 設計,発注,施工と関係者間を跨る領域においては,

情報技術の活用だけでなく,設計や施工の役割分担や 契約制度も含めた建設生産システム全体の再構築が必 要であると考えられる.

謝辞:本検討にあたり,試行工事や意見交換会では,

施工会社様,建設コンサルタンツ様,測量機器工業会 の会員様,各地方整備局の職員等,多くの方から多大 なご協力を賜った.ここに記して感謝の意を表す.

参考文献

1)情報化施工推進会議:情報化施工推進戦略,

<http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kensetsusekou/k ondankai/ICTsekou/sennryaku.pdf>2009.7.(入手 2012.7.13.)

2)国土交通省:情報化施工技術の一般化・実用化について,

<http://www.mlit.go.jp/tec/sekisan/sekou/pdf/22080 2jouhouka_sekou01.pdf>2010.8.(入手 2012.7.13.)

3)国土交通省:TSによる出来形管理に用いる施工管理デ

ータ交換標準(案)ver.2.0,

<http://www.nilim.go.jp/ts/download/090327dataexch ange.pdf>2008.3.(入手 2012.7.13.)

4)国土交通省:道路中心線形データ交換標準(案)道路中

心線形編 Ver.1.0,

< http://www.cals-ed.go.jp/calsec/rule/roadcenter1.

pdf>2006.12.(入手 2012.7.13.)

5)国土交通省:TSによる出来形管理に用いる施工管理デ

ータ作成・帳票作成ソフトウェアの機能要求仕様書(土 工編)(施工管理データ交換標準 Ver.4.0 対応),

<http://www.nilim.go.jp/ts/main/120329supportv4_ea rthwork.pdf>2012.3. (入手 2012.7.13.)

CL(Aランプ)

FH 14.800

2.00%

11.500

1:1.5 1:1.5

No.21 横断図

DL 0.000

平面図・縦断図における 中心線の位置の明示 発注図に記載のない 標高等の算出が容易

基準からのオフセット量

土工の仕上り面は、

標準横断図の舗装 構成より算出可能。

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