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一. 中国最新法令 (2018 年 9 月中旬 ~2018 年 10 月中旬公布分 ) 1. 中央法規 (1) オンライン診療管理弁法 ( 試行 ) インターネット病院管理弁法 ( 試行 ) と遠隔医療サービス管理規範 ( 試行 ) 1 国家衛生健康委員会 国家中医薬管理局 2018 年 7 月 1

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TMI 中国最新法令情報

―(2018 年 10 月号)―

TMI 総合法律事務所

〒106-6123 東京都港区六本木 6-10-1 六本木ヒルズ森タワー23 階 TEL: +81-(0)3-6438-5511 E-mail: chinalaw@tmi.gr.jp 〒200031 上海市徐匯区淮海中路 1045 号 淮海国際広場 2606 室 TEL: +86-(0)21-5465-2233 〒100020 北京市朝陽区朝外大街乙 12 号 昆泰国際大厦 2412A 室 TEL:+86-(0)10-5925-1200 皆様には、日頃より弊事務所へのご厚情を賜り誠にありがとうございます。 お客様の中国ビジネスのご参考までに、「TMI 中国最新法令情報」をお届けします。記事の 内容やテーマについてご要望やご質問がございましたら、ご遠慮なく弊事務所へご連絡下さい。 バックナンバーについては、弊事務所のウェブサイトに掲載させていただきますので、併せて ご利用下さい。(http://www.tmi.gr.jp/global/legal_info/china/index.html) 目次 一.中国最新法令 1. 中央法規 (1) オンライン診療管理弁法(試行)、ネット病院管理弁法(試行)と遠隔医療サービス管理 規範(試行) 2. 地方法令 (1) 中国(上海)自由貿易試験区におけるクロスボーダーサービス貿易に係るネガティブリ スト管理モデルの実施弁法と中国(上海)自由貿易試験区におけるクロスボーダーサービ ス貿易に係る特別管理措置(ネガティブリスト) 二.連載 中国企業法実務/第十四弾:民事取引法 (第 2 回 訴訟時効) 三.中国法務の現場より 1.電動自転車に関するナンバー管理 2.「中国ビジネス法務の基礎理論と最新実務」(2018 年版)発刊に寄せて

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一.中国最新法令(2018 年 9 月中旬~2018 年 10 月中旬公布分)

1.中央法規 (1) オンライン診療管理弁法(試行)、インターネット病院管理弁法(試行)と遠隔医療サー ビス管理規範(試行)1 国家衛生健康委員会、国家中医薬管理局 2018 年 7 月 17 日公布2、同日施行 ① 背景 近年、中国における「インターネット+」の推進に伴い、インターネットなど情報技術 を使ってオンライン医療サービス及びそれに関わる技術サービスなどを提供するビジネス モデルが広く展開されている。現在、「インターネット病院」というキーワードを使って中 国国家企業信用情報公示システムで検索すれば優に 100 社以上の会社情報がヒットするよう な状況である。 一方、1999 年 1 月 4 日に当時の衛生部(現在、国家衛生健康委員会)が医療機関相互間 の遠隔医療共同診察を規範化するため、「遠隔医療共同診察の管理を強化する通知」3 を制定 した。遠隔医療サービスの範囲の拡大に伴い、2014 年 8 月 21 日に「医療機関による遠隔医 療サービスを推進することに関する意見」4 が打ち出され、対象とする遠隔医療サービスの 範囲を、医療機関がインターネットなど情報技術を通じて他の医療機関又は直接に患者に 提供する遠隔病理診断、遠隔医学画像診断、遠隔看護、遠隔共同診察等まで拡大した。 また、地方立法も推進されている。例えば、寧夏銀川市人民政府は 2016 年 12 月 12 日に 「銀川インターネット病院管理弁法(試行)」5、2017 年 3 月 10 日に「銀川インターネット 病院管理弁法実施細則(試行)」6と「銀川市インターネット病院医療保険個人口座及び外来 治療統一計画の管理弁法(試行)」7などオンライン診療及びインターネット病院の管理を規 範化する地方法令を制定した。 2018 年 4 月 25 日付け「『インターネット+医療健康』の発展の促進に関する国務院弁公 庁の指導意見」(以下「本指導意見」という。)8には、医療機関がインターネット等情報技 術を使って医療サービスの空間と内容を拡大し、診療前、診療中と診療後までカバーする オンライン・オフライン一体化の医療サービスモデルを構築することを奨励し、医療機関 に依拠するインターネット病院を運営することを認めると定められた。当該指導意見には、 医療機関、条件を満たす第三者機関がインターネット情報プラットフォームを構築し、遠 隔医療サービス、健康コンサルティング及び健康管理業務を展開することを支持すること、 遠隔医療サービスを全国全ての医療連合体及び県レベル病院まで浸透させること、オンラ イン診療行為を規範する管理弁法を打ち出すことも定めている。 上述の本指導意見の徹底及びオンライン診療、インターネット病院及び遠隔医療サービ スの規範化のため、2018 年 7 月 17 日付で、中国国家衛生健康委員会と国家中医薬管理局は、 1 「互联网诊疗管理办法(试行)」、「互联网医院管理办法(试行)」、「远程医疗服务管理规范(试行)」 2 名目上の公布日は 2018 年 7 月 17 日となっているが、実際に公表されたのは 2018 年 9 月 14 日であった。 3 「卫生部关于加强远程医疗会诊管理的通知」 4 「国家卫生和计划生育委员会关于推进医疗机构远程医疗服务的意见」 5 「银川互联网医院管理办法(试行)」 6 「银川市互联网医院管理办法实施细则(试行)」 7 「银川市互联网医院医疗保险个人账户及门诊统筹管理办法(试行)」 8 「国务院办公厅关于促进“互联网+医疗健康”发展的意见」

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「オンライン診療管理弁法(試行)」、「インターネット病院管理弁法(試行)」と「遠隔医 療サービス管理規範(試行)」を制定した。 以下、それぞれの概要を紹介する。 ② オンライン診療管理弁法(試行)の主な内容 オンライン診療管理弁法(試行)(以下「本弁法」という。)は、全部で 5 章、32 条で構 成され、「総則」、「オンライン診療活動の参入許可」、「事業規律」、「監督管理」、「附則」と いった項目が定められている。 ア 定義 本弁法におけるオンライン診療とは、医療機関がその登録医師を通じて、インターネ ット等情報技術を使って、一部の一般的な病気、慢性病の再診と「インターネット+」 ファミリードクター契約サービスを提供することをいう9 イ オンライン診療活動の参入許可 オンライン診療活動については、参入許可管理を実施し、「医療機関執業許可証」を取 得した医療機関のみが従事できるとされる10 オンライン診療活動の参入の申請手続及び必要な資料は以下の通りである。 (a) 設置を新規申請する医療機関 設置を新規申請する医療機関は、オンライン診療活動を展開しようとする場合には、 設置申請書にその旨を明記し、かつフィージビリティスタディ報告書にオンライン診 療展開の関連情報を記載するものとする。第三者機関と提携してオンライン診療サー ビス情報システムを構築する場合には、提携合意書の提出も必要である11 (b) 「医療機関執業許可証」を取得した医療機関 すでに「医療機関執業許可証」を取得した医療機関は、オンライン診療活動を展開 しようとする場合には、その「医療機関執業許可証」の発行機関に対して、次の資料 を提出して、オンライン診療活動展開の執業登録を申請する12  当該医療機関の法定代表者又は主要責任者が同意して署名した申請書、オン ライン診療活動の展開を申請する原因と理由の説明  第三者機関との提携合意書(第三者機関と提携してオンライン診療サービス 情報システムを構築する場合)(提携合意書にそれぞれの医療サービス、情 報安全、プライバシー保護等に関する責任と権利を明確化すること)  登録機関より規定された提出すべきその他の資料 ウ 事業規律 医療機関はオンライン診療活動を運営するには、インターネット技術要求を満たした 設備・施設、情報システム、技術者及び情報安全システムを備え、かつ「第三級情報安 全等級保護」を実施する必要がある13 9 本弁法第 2 条 10 本弁法第 3 条、第 5 条 11 本弁法第 6 条 12 本弁法第 8 条 13 本弁法第 13 条

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オンライン診療活動に従事する医師、看護師は国の医師、看護師電子登録システムに て照会できるものとする。また、初診の患者に対しオンライン診療を実施してはならな い14 。 医療機関は、オンライン診療活動を実施するとき、「処方箋管理弁法」15等処方箋管理 規定を厳しく守る必要がある。医師は、患者のカルテ資料を把握後、一部の一般的な病 気、慢性病の患者のために、オンラインで処方箋を提供することができるが、オンライ ンで提供された処方箋には、必ず医師の電子署名があり、薬剤師の審査後、医療機関、 薬品運営企業はその処方箋により条件を満たした第三者機関に依頼して薬品を配送する ことができる16 。 エ 監督管理 医療機関は、属地化管理の原則に従い、県級とその以上の地方衛生健康行政部門の 監督管理を受け、オンライン診療活動の全過程の記録、トレーサビリティを確保し、 かつ監督管理部門にデータインタフェースを開放する17 。 また、医師はオンライン診療活動に従事する場合、相応の執業資格を取得し、3 年以 上の独立臨床経験を備え、かつその在籍医療機関の同意を得る必要がある18 。 オ 移行措置 本弁法の施行前にすでにオンライン診療活動を運営していた医療機関は、本弁法施 行日から 30 日以内に、本弁法の要求に従って登録申請を改めて提出しなければならな い19 ③ インターネット病院管理弁法(試行)の主な内容 インターネット病院管理弁法(試行)(以下「本管理弁法」という。)は、全部で 5 章、36 条で構成され、「総則」、「インターネット病院の参入許可」、「事業規律」、「監督管理」、「附 則」といった項目が定められている。また、本管理弁法においては付録として診療科目、 課室設置、人員、施設と規則制度におけるインターネット病院の基本標準も定めている。 ア 定義 本管理弁法におけるインターネット病院には、実体のある医療機関の第二名称である インターネット病院、および実体のある医療機関に依拠した独立に設置されたインター ネット病院が含まれる20 イ インターネット病院の参入許可 本管理弁法において、インターネット病院に対し参入許可管理を実施するとされてい る。実体医療機関は自ら又は第三者機関と提携して情報プラットフォームを構築し、本 機関と他の医療機関の登録医師を通じてオンライン診療活動を実施する場合には、イン ターネット病院を第二名称とすることを申請する必要がある。 14 本弁法第 14 条、第 16 条 15 《处方管理办法》 16 本弁法第 18 条 17 本弁法第 24 条 18 本弁法第 25 条 19 本弁法第 30 条 20 本管理弁法第 2 条

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実体医療機関は、自らの登録医師のみを通じてオンライン診療活動を実施する場合に は、インターネット病院を第二名称とすることを申請することができる。 インターネット病院の参入許可を行う前に、省級衛生健康行政部門は省級オンライン 医療サービス監督管理プラットフォームを構築して、インターネット病院情報プラット フォームと接続して、リアルタイムで監督管理を実施する21 。 また、提携して設置されたインターネット病院について、提携者が変更され又は提携 合意書が失効した場合には、インターネット病院を改めて申請し設置する必要がある22 。 インターネット病院の参入の申請手続及び必要な資料は以下の通りである。 (a) 実体医療機関に依拠するインターネット病院の設置 依拠する実体医療機関の登録機関に以下の資料を提出し設置を申請する23  設置申請書  フィージビリティスタディ報告書  依拠する実体医療機関の所在地  設置申請者と実体医療機関が共同で締結したインターネット病院を提携し設 置する合意書 (b) 設置を新規申請する実体医療機関が、インターネット病院を第二名称とする場合 設置申請書の中にその旨を明記し、フィージビリティスタディ報告書に、インター ネット病院の関連情報を記載するものとする。第三者機関と提携してインターネット 病院情報プラットフォームを構築する場合には、提携合意書の提出も必要である24 (c) 「医療機関執業許可証」を取得した実体医療機関がインターネット病院を設置し、 インターネット病院を第二名称とする場合 その「医療機関執業許可証」の発行機関にインターネット病院を第二名称として追 加することを申請し、次の資料を提出することとされている25  医療機関の法定代表者又は主要責任者が署名し、同意した申請書、インター ネット病院を第二名称として追加する原因と理由の説明  省級オンライン医療サービス監督管理プラットフォームとの接続状況  第三者機関との提携合意書(第三者機関と提携してインターネット病院を設 置する場合  登録機関が規定するその他の資料 ウ 事業規律 インターネット病院で医療サービスを提供する医師、看護師は国の医師、看護師電子 登録システムにて照会できるものとする26 インターネット病院は患者に対し、リスクに関する注意喚起を行い、患者のインフォ ームドコンセントを得る必要がある。患者が実体医療機関で診察を受け、担当する医師 がインターネット病院を通じて他の医師を誘って共同診察を行った場合には、共同診察 を行う医師は、診断意見を提出し、かつ処方箋を提出することができる。患者が実体医 21 本管理弁法第 3 条、第 5 条、第 6 条 22 本管理弁法第 13 条 23 本管理弁法第 7 条 24 本管理弁法第 8 条 25 本管理弁法第 10 条 26 本管理弁法第 16 条

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療機関で検査を受けていない場合には、医師は、インターネット病院を通じて、一部の 一般的な病気、慢性病の患者のみに、再診サービスを提供することができる。また、イ ンターネット病院はファミリードクター契約サービスを提供することができる27 。 インターネット病院は「処方箋管理弁法」など処方箋管理規定を厳しく守る必要があ る。オンラインで処方箋を発行する前、医師は、患者のカルテ資料を把握し、患者の実 体医療機関で明確に診断されたある種類又は数種類の一般的な病気、慢性病を確認後、 同じ診断について、オンラインで処方箋を発行することができる。 なお、すべてのオンライン診断、処方箋には、医師が電子署名を行う必要がある28 エ 監督管理及び法的責任 インターネット病院の診療サービスを提供する医師は、法律により相応の執業資格 を取得し、依拠する実体医療機関又はその他の医療機関に登録し、3 年以上の独立臨床 経験を有する必要がある。インターネット病院でサービスを提供する医師は、主たる 執業機関が規定した診療業務を完成することを確保する必要がある29 。 「医療機関執業許可証」を取得したインターネット病院は、独立の法的責任主体に なる。実体医療機関がインターネット病院を第二名称とした場合、実体医療機関が法 的責任主体になる。インターネット病院の各提携者は、提携合意書により相応の法的 責任を負う。 患者は、インターネット病院と医療紛争が発生した場合、インターネット病院の登 録機関に処理の申請を提出し、関連法律、法規および規定により、法的責任を追及す る30 本管理弁法では、インターネット病院を現地の医療品質管理体制に組み入れ、関連 サービスを行政部門の実体医療機関に対する業績考査と医療機関評価に組み入れ、オ ンライン・オフライン一体化監督管理を実施し、医療品質と医療安全を確保すること も定めている31 オ 移行措置 本管理弁法の施行前にその設置がすでに承認された、又は届出されたインターネッ ト病院は、本管理弁法の施行日から 30 日以内に、本管理弁法の要求に従って設置と執 業登録の申請を改めて提出しなければならない32 ④ 遠隔医療サービス管理規範(試行)の主な内容 遠隔医療サービス管理規範(試行)(以下「本規範」という。)は、全 5 条で構成され、 「管理範囲」、「遠隔医療サービス運営の基本条件」、「遠隔医療サービスのプロセスと関連 要求」、「管理要求」、「監督管理の強化」といった項目が定められている。 ア 定義 本規範に定められた遠隔医療サービスには以下の 2 種類が含まれる33 27 本管理弁法第 18 条、第 19 条 28 本管理弁法第 20 条 29 本管理弁法第 29 条 30 本管理弁法第 32 条 31 本管理弁法第 30 条 32 本管理弁法第 35 条 33 本規範第 1 条第 1 項

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 医療機関(以下「要請者」という。)は、他の医療機関(以下「要請受入者」とい う。)に直接に要請を出し、要請受入者が、通信、コンピューター及びネットワーク技 術など情報化技術を利用して、要請者の患者の診療のために技術支援などを提供する 医療活動。  要請者又は第三者機関が、遠隔医療サービスプラットフォームを構築し、要請受入者 は、機関の身分で同プラットフォームに登録し、要請者は、同プラットフォームを通 じてニーズを発表し、プラットフォームは要請受入者又はその他の医療機関とマッチ ングし、要請受入者は、主動的にニーズに対応し、通信、コンピューター及びネット ワーク技術等情報化技術を利用して、要請者の患者の診療のために技術支援などを提 供するという医療活動。 なお、要請者が情報プラットフォームを通じて、医療関係人員を直接に要請しオンラ イン医療サービスを提供する場合には、インターネット病院の設置を申請しなければな らず、「インターネット病院管理弁法(試行)」により管理される34 。 イ 遠隔医療サービスのプロセスと関連要求35 (a) 提携合意書の締結 医療機関の間で、直接に又は第三者プラットフォームを通じて遠隔医療サービスを 提供する場合には、遠隔医療提携合意書を締結し、提携の目的、提携の条件、提携の 内容、遠隔医療プロセス、各関係者の責任・権利・義務、医療損害リスクおよび責任 の分担など事項を規定する。提携合意書は電子文書の方式で締結することができる。 (b) インフォームドコンセント 要請者は、患者の病状と意思により、遠隔医療サービスを組織し、かつ患者に遠隔 医療サービスの内容、費用などを説明し、患者の書面による同意を得て、遠隔医療サ ービスインフォームド・コンセントを実施する必要がある。患者に病状を説明するこ とがふさわしくない場合には、その保護者又は親族の書面による同意を得るものとす る。 (c) 遠隔共同診察 医療機関の間で、遠隔共同診察を実施する場合には、要請受入者は診断治療に関す る意見を提出し、要請者は、診断治療プランを明確にして決定する。 (d) 遠隔診断 要請者と要請受入者は、支援パートナー又は医療連合体など提携関係を結ぶ。要請 者は、医学画像、病理、心電、超音波など補助検査を実施し、要請を受けた上級医療 機関は、診断を実施するが、具体的なプロセスについては、要請者と要請受入者が合 意書を締結してそれを明確化する。 (e) 資料の適当な保管 要請者と要請受入者はカルテの作成と保管の関連規定により共同でカルテ資料を作 成し、原本はそれぞれが整理の上保管する。 34 本規範第 1 条第 2 項 35 本規範第 3 条

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ウ 監督管理の強化及び法的責任36 地方各級衛生健康行政部門は、管轄区内の医療機関の遠隔医療サービスの提供に対す る監督・管理を強化し、遠隔医療サービスを現地の医療品質管理体制に組み入れ、遠隔 医療サービスの品質と安全を確保する。 遠隔医療サービスの実施で、医療紛争が発生した場合には、患者は要請者の所在地の 衛生健康行政部門に処理の申請を提出する。遠隔共同診察については、要請者が相応の 法的責任を負い、遠隔診断については、要請者と要請受入者が共同で相応の法的責任を 負う。医療機関と第三者機関が提携した遠隔医療サービスの実施で紛争が起きた場合に は、要請者、要請受入者、第三者機関が関連法律、法規および協定書により処理し、か つ相応の責任を負う。 エ その他 本規範においては、医療機関、人員及び設備・施設に係る遠隔医療サービス運営の基 本条件、機関管理、人員管理及び品質管理に係る管理要求も定められている37 2.地方法令 (1) 中国(上海)自由貿易試験区におけるクロスボーダーサービス貿易に係るネガティブリ スト管理モデルの実施弁法と中国(上海)自由貿易試験区におけるクロスボーダーサービ ス貿易に係る特別管理措置(ネガティブリスト)38 上海市人民政府 2018 年 9 月 29 日公布、2018 年 11 月 1 日施行 ① 背景 2013 年 9 月 29 日に、中国(上海)自由貿易試験区(以下「上海自由貿易区」という。) が設立され、同日、「上海自由貿易区外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト) (2013 年)」39も公布され、外商投資参入に係るネガティブリスト管理モデルが開始された。 また、2017 年以降は外商投資参入に係るネガティブリスト管理モデルが中国全土で実施さ れてきた。 一方、上海自由貿易区、中国全土での対外開放の拡大及び管理モデルの創新に伴い、 2017 年 3 月 30 日に中国国務院より「上海自由貿易区の改革開放を全面的に深化する方案」 40が打ち出され、クロスボーダーサービス貿易管理モデルの創新と適切な分野にて段階的に クロスボーダー引渡し、自然人移動等のモデルに対するサービス貿易制限措置を取り消し 又は緩和することと定めた。 その後、2018 年 7 月 10 日付け「開放の更なる拡大に関する国家の重大措置を徹底し、開 放型経済新体制の確立を速めることについての上海市の行動方案」41にはクロスボーダーサ ービス貿易に係るネガティブリスト管理モデルの検討を定めた。 クロスボーダーサービス貿易管理モデルを創設し、上海自由貿易区におけるサービス貿 易の開放の拡大を推進するため、2018 年 9 月 29 日、上海市政府は、上述の政策・方針に従 36 本規範第 5 条 37 本規範第 2 条、第 4 条 38 「中国(上海)自由贸易试验区跨境服务贸易负面清单管理模式实施办法」、「中国(上海)自由贸易试验区跨境 服务贸易特别管理措施(负面清单)(2018 年)」 39 「中国(上海)自由贸易试验区外商投资准入特别管理措施(负面清单)(2013 年)」 40 「全面深化中国(上海)自由贸易试验区改革开放方案」 41 「上海市贯彻落实国家进一步扩大开放重大举措 加快建立开放型经济新体制行动方案」

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って、「上海自由貿易区におけるクロスボーダーサービス貿易に係るネガティブリスト管理 モデルの実施弁法」(以下「本実施弁法」という。)と「上海自由貿易区におけるクロスボ ーダーサービス貿易に係る特別管理措置(ネガティブリスト)」(以下「本ネガティブリス ト」という。)を制定した。 ② 本実施弁法の主な内容 ア 定義 本実施弁法におけるクロスボーダーサービス貿易とは、域外のサービス提供者が上 海自由貿易区に所在する消費者にサービスを提供する商業活動をいう。域外から上海 自由貿易区内にサービスを提供すること(すなわち「クロスボーダー引渡しのモデ ル」)、域外で自由貿易試験区から来た消費者にサービスを提供すること(すなわち 「域外消費のモデル」)と域外のサービス提供者が上海自由貿易区内での自然人の存 在を通じてサービスを提供すること(すなわち「自然人移動のモデル」)が含まれる42 イ ネガティブリスト管理モデルの確立 当該ネガティブリストにおいては、現行法令に従って国民経済分野の分類に基づい て、クロスボーダーサービス貿易における域外サービス及びサービス提供者に対する 国民待遇の不一致、市場参入規制、当地存在要求、資格許可等特別な管理措置をリス トアップしている。 ネガティブリスト内のクロスボーダーサービス貿易については、各関係当局により 現行法令に従って管理され、ネガティブリスト外のクロスボーダーサービス貿易につ いては、域外サービス及びサービス提供者と域内サービス及びサービス提供者に対す る待遇が一致とするとの原則に従って管理される43 また、ネガティブリストに掲載されていない国家安全、公共秩序、文化、金融、政 府調達等関連措置については、現行規定に従うものとされる44 ウ 本実施弁法の効力及びその他の協定との関係 本実施弁法は、香港、マカオ、台湾地域のサービス及びサービス提供者にも適用さ れるが、中国大陸と香港、マカオ又は台湾との経済協定にクロスボーダーサービス貿 易に関し本弁法の定めの以上の優遇措置が存在する場合、その協定に従う。また、中 国と他国との間で締結している自由貿易合意、投資協定並びに中国が加盟している国 際条約に本弁法の定めの以上の優遇措置が存在する場合、当該関係合意又は協定に準 じる45 ③ 本ネガティブリストの内容 本ネガティブリストには計 13 種類、31 業界において 159 項の特別管理措置が定められて いる。そのうち、金融業が 31 項、交通運送と倉庫及び郵便業、文化体育と娯楽業がそれぞ れ 30 項、科学研究と技術サービス業が 13 項、賃貸と商務サービス業が 11 項、情報転送と ソフトウェア及び情報技術サービス業が 9 項、卸売と小売業が 8 項、水利及び環境と公共施 設管理業、教育業がそれぞれ 6 項、農林牧漁、住民サービス及び修理とその他サービス業、 42 本実施弁法第 2 条 43 本実施弁法第 4 条第 2 項、第 6 条第 1 項、第 7 条第 1 項 44 本実施弁法第 7 条第 2 項 45 本実施弁法第 13 条、第 14 条

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建築業、衛生がそれぞれ 4 項、2 項、1 項、1 項である。 上記以外、さらに職業資格に係る制限措置が 2 項、全てのサービス部門に係る横断的措置 が 5 項とされている。 以下は本ネガティブリストの抜粋である。 種類 特別管理措置 卸売業、小 売業 域外申請人が輸入医薬品の登録を取り扱う場合、中国域内で駐在する申請人弁事機 構を通じて又は中国域内の代理機構に委託して取り扱わなければならない。域外申 請人が中国で国際共同治験(MRCT)を行う場合、医薬品監督管理部門の承認を経 なければならない。 航空運送業 外国民用航空機の経営者が中国域内 2 点間の航空運送を経営してはならない。無人 運転航空機業務を経営するものは、中国企業法人でなければならず、且つ、法定代 表者が中国籍公民でなければならない。外国籍航空機又は外国籍人員が単独に運転 する中国航空機については、中国域内で航空撮影、リモート・センシング測量、鉱 山資源の実地調査など専門分野における通用航空飛行を行ってはならない。 運送代理業 中国域内で国際貨物運送代理業務に従事する者は、中国の企業法人でなければなら ない。 郵便業 中国域内で速達業を経営する者は、中国の企業法人でなければならない。 電信、放送 と衛星転送 サービス 中国域内で電信業務に従事する者は、相応の資格のある中国の会社でなければなら ない。域外組織又は個人が中国域内で電波パラメータの測定又は電波の監視測定を 行ってはならない。域外のテレビ番組、ネット放送用域外映画・ドラマを輸入する 場合、放送テレビ主管部門の承認を経て、総量、題材、産地などに関する規定に合 わなければならない。インターネットを利用し域外放送テレビ番組を中継放送する こと又は域外インターネット視聴番組をリンク、集積することをしてはならない。 インターネ ット関連サ ービス 重要情報基礎施設の運営者が運営中に収集した又は生じた個人情報と重要データを 中国域内で保存しなければならない。業務の必要により、確かに域外に提供する必 要がある場合、法令に従って安全評価を行わなければならない。中国域内で収集し た個人金融情報の保存、処理と分析を中国域内で実施しなければならない。 ソフトウェ アと情報技 術サービス 業 中国で経常住所又は営業所を持っていない外国人、外国企業又はその他外国組織が 中国でレイアウト設計又はその他レイアウト設計と関連する業務を取り扱う場合、 知的財産権主管部門が指定する特許代理機構を通じて行わなければならない。 貨幣金融サ ービス 金融データ情報の提供及び転売、金融データ処理、その他金融サービス提供者に係 るソフトウェア、コンサルティング、仲介など付属サービスの以外、中国域内で銀 行又はその他金融サービス(保険と証券が除外される)を経営するものは、中国の 金融機構でなければならない。クロスボーダー金融ネットと情報サービス提供者が 事前事項、変更事項、応急事項の報告などコンプライアンス義務を履行しなければ ならない。 保険 中国域内で保険業務を経営する者は、中国の保険会社又は法律、行政法令の規定に 定めるその他保険組織でなければならないが、域外消費方式で保険仲立以外の業務 を提供することと、クロスボーダー交付で再保険、国際海運、空運と運送保険、大 型商業険仲立、国際海運、空運と運送保険仲立、再保険仲立を提供することが除外 される。域外保険の違法販売を禁じる。

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Copyright © 2018 TMI Associates All rights reserved その他金融 業 中国域内で非金融機構支払業務に従事する者は、中国の有限責任公司又は株式有限 公司且つ非金融機構法人でなければならない。外国機構が中国域内で金融情報サー ビスを提供する場合、新聞出版主管部門の承認を経なければならない。 商務サービ ス業 域外組織と個人が域内で直接に市場調査と社会調査を行ってはならず、渉外調査許 可証を取得していない機構を通じて市場調査と社会調査を実施することもしてはな らない。外国会社、企業及びその他経済組織が中国域内で人材仲介サービスに従事 する場合、中国会社、企業及びその他経済組織との合弁で専門的な人材仲介を設立 しなければならない。域外企業、自然人と中国駐在の外国機構が中国域内で域外就 業仲介に従事してはならず、直接に中国域内で労務人員又は域外就業人員を招聘し てはならない。 研究と試験 輸入禁止の技術を輸入してはならない。輸入制限の技術に対し許可証制度を行う。 人類遺伝資源の採集、収集、売買、越境については、中国人類遺伝資源国際合作プ ロジェクト含み、中国の合作単位を通じて申請承認手続を行い、承認を経てからし か契約締結できない。 専門技術サ ービス業 外国の組織又は個人が中国領域及び管轄するその他海域で測量活動に従事する場 合、測量行政主管部門及び軍隊測量主管部門の承認を経て、かつ中外合作の形で実 施しなければならない。 科学技術推 進と応用サ ービス業 外国人又は外国企業が中国で商標の登録及びその他商標関連業務を取り扱う場合、 中国の商標代理機構に委託しなければならない。中国で経常的住所又は営業所を持 っていない外国人、外国企業又は外国その他組織が中国で特許を申請する場合、そ の所属国と中国との協定又は共同参加した国際条約、或いは互恵の原則に従って中 国特許代理機構に代理させるものとする。 水利管理業 外国組織又は個人が中国で水文に関する活動に従事する場合、水行政主管部門及び 関連部門による承認を経なければならない。 住民サービ ス業 中国域内で印鑑制作、音像製品複製など特種職業に従事するものは、中国法人又は 組織でなければならない。 教育 外国の教育サービス提供者が中国域内で設立した中国合作弁学機構を通じて行うほ か、クロスボーダー方式で中国域内に遠隔教育サービスを提供してはならない。域 外機構と個人が中国域内で私費出国留学仲介サービス活動に従事してはならいな い。 衛生 海外の医師が中国で短期間に医師業務に従事する場合、短期執業許可証を取得しな ければならない。 放送、テレ ビ、映画の 制作 中国域内でインターネット視聴番組サービスに従事する者は相応の資格のある中国 法人でなければならない。域外からのドキュメンタリーの輸入に対し総量コントロ ールを実施、アニメーションの場合、割合、時間帯などに関する制限にあわなけれ ばならない。 全てのサー ビス部門 外国企業、非企業経済組織が中国で常駐代表機構を設立する場合、承認を経て登録 手続を行わなければならない。外国人は入境した後、宿泊登録をしなければならな い。 (楊利涛・中国法顧問)

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二.連載 中国企業法実務

第十四弾:民事取引法(第 2 回/全 6 回)

第 1 回 2018 年 9 月号 民法総則 第 2 回 2018 年 10 月号 訴訟時効 第 3 回 2018 年 11 月号 契約法① 第 4 回 2018 年 12 月号 契約法② 第 5 回 2019 年 1 月号 契約法③ 第 6 回 2019 年 2 月号 消費者との契約

第2回 訴訟時効

1.訴訟時効期間の長さ (1) 時効に関する一般規定 民法通則においては、法律に別段の定めがある場合を除き、時効期間は 2 年間と定められ 46、短期時効として、①身体受傷に対する賠償請求、②未告知の品質不合格商品の販売、③ 賃借料の支払遅延又は拒否、④寄託財物の紛失又は毀損の場合は 1 年間と定められている47 債権者の利益を保護する観点からは、1 年間又は 2 年間の時効では短すぎるため、民法総 則制定の際に、時効期間に関する変更がなされた。民法総則では、法律に別段の定めがあ る場合を除き、時効を 3 年間と定められている48。短期時効の定めはない。民法総則の施行 後も、民法通則は効力を保持しており、民法通則の時効期間に関する規定も形式的には依 然として有効である。但し、最高人民法院の司法解釈により、民法総則の施行(2017 年 10 月 1 日)後に訴訟時効期間を起算する場合には、民法総則 188 条による 3 年間の時効を適用 することとされた49。従って、当該司法解釈により、民法通則における時効期間に関する規 定は、民法総則の施行後は実質上失効したと言える。 (2) 時効に関する特別規定 民法総則に定められているのが時効に関する一般規定であり、民法総則のほかに、時効 期間に関する定めは、以下の通りである50 規定 内容 契約法第 129 条 国際貨物売買契約及び技術輸出入契約の紛争による訴訟提起又は 仲裁申立の期限は 4 年とし、当事者がその権利が侵害を受けたこ とを知った日又は知りうべき日から起算するものとする。 保険法第 26 条 生命保険以外の保険の被保険者又は受益者の保険者に対する損害 填補又は保険金給付請求の訴訟時効期間は 2 年とし、被保険者又 46 民法通則第 135 条 47 民法通則第 136 条 48 民法総則第 188 条 49 「『民法総則』における訴訟時効制度若干問題の適用に関する解釈(关于适用《中华人民共和国民法总则》诉 讼时效制度若干问题的解释)」(2018 年 7 月 23 日施行)第1条 50 当事務所が普段関わる法律業務に関係のあるものを中心に取り上げている。

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は受益者が保険事故の発生を知った日又は知り得べき日から起算 する。 生命保険の被保険者又は受益者の保険者に対する保険金給付の訴 訟時効期間は 5 年とし、被保険者又は受益者が保険事故の発生を 知った日又は知り得べき日から起算する。 環境保護法第 66 条 環境損害賠償訴訟を提起する際の時効期間は 3 年とし、当事者が その損害を被ったことを知った、又は知り得べき日から起算す る。 製品品質法第 45 条 製品に欠陥が存在したことにより生じた損害賠償請求の訴訟時効 は 2 年とし、当事者がその権益が損害を受けたことを知り、又は 知り得べき日より起算する。 製品に欠陥が存在したことにより生じた損害の賠償請求権は、損 害を生じさせた欠陥製品が最初の商品者に引き渡されてから満 10 年で消滅する。但し、明示された安全使用期限を超えていない場 合を除く。 特許法第 68 条 特許権侵害の訴訟時効は 2 年とし、特許権者又は利害関係人が侵 害行為を知った、又は知り得べき日から起算する。 発明特許出願が公開されてから特許権が付与されるまでにその発 明が使用され、特許権者が使用料の支払を求める訴訟時効は 2 年 とし、特許権者が、他人がその発明を使用したことを知った、又 は知り得べき日から起算する。但し、特許権者が特許権付与日の 前にすでに知った、又は知り得べきであったときは、特許権付与 日から起算する。 労働紛争調解仲裁法 第 27 条 労働紛争の仲裁申立の時効期間は、1 年とする、仲裁時効期間 は、当事者がその権利が侵害されていることを知り、又は知り得 べき日から起算する。 労働関係の存続期間中に、労働報酬の支払遅延に起因して紛争が 生じた場合には、労働者の仲裁申立ては 1 年間の仲裁時効期間の 制限を受けない。但し、労働関係が終了した場合、労働関係の終 了日から 1 年以内に申立てをしなければならない。 (3)時効の最長期間及び延長 民法総則においては、時効の最長期間が定められている51。具体的には、権利が侵害され た日から 20 年経過した場合には、人民法院はそれを保護しない。すなわち、訴訟時効がい つの時点から起算されるかに関わらず、一般的な訴訟時効にせよ、特別な訴訟時効にせよ、 権利が侵害された日から 20 年経過した場合には、訴訟時効が完成する。 また、訴訟時効の期間が経過した場合でも、特別な事情がある場合、裁判所は、権利者 の申立に基づき延長を決定することができる52。延長について、一般的な訴訟時効、特別な 訴訟時効及び訴訟時効の最長期間にも適用されると解される53 51 民法総則第 188 条第 2 項 52 民法総則第 188 条第 2 項 53 沈徳咏「『中華人民共和国民法総則』条文の理解と適用」(人民法院出版社、2017 年)

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2.訴訟時効の起算点 中国では、①権利侵害の発生、②権利侵害を知り又は知り得べきこと、③義務者を知り又 は知り得べきことという三つの要件が満たされた場合、訴訟時効が起算される54。分割払いの 債務について、訴訟時効は、分割払いの最後の一回の履行期から起算する55 また、行為無能力者又は制限行為能力者のその法定代理人に対する請求権の訴訟時効は、 当該法定代理が終了した日から起算される56。また、未成年者が性的侵害を受けたことに対す る損害賠償請求権の訴訟時効は、被害者が 18 歳に達した日から起算される57 3.訴訟時効の中断、停止 中国では、日本と同様に、一定の事由の場合、訴訟時効が中断し、中断の事由が終了した 時から新たな訴訟時効が進行を始める58。具体的には、①権利者が義務者に対し履行を請求し た場合、②義務者が義務の履行に同意した場合、③権利者が訴訟を提起し、又は仲裁を申し 立てた場合、④訴訟の提起又は仲裁の申立と同様の効果を有するその他の事由が挙げられる。 日本の時効は、裁判上の請求、差押え等の仮処分もしくは債務者の債務承諾書等による承認 のみにより、中断させることができるのに対して、中国の時効は、債務者に対する催促によ り、中断させることができる。中国の時効期間は日本の時効期間より短いものの、容易に中 断させることができる。そのため、メールやレター等で、「催告」を行って、かつそれを記録 化しておくこと(メールの場合には相手方の返信、レターの場合には配達記録の確保)が、 中国の債権管理において極めて重要となる。 また、一定の事由のために、訴訟時効の中断ができない場合には、訴訟時効が停止する制 度が定められている59。具体的には、訴訟時効期間の最後の 6 か月間に、次の事由により、訴 訟時効の中断ができない場合、訴訟時効が停止する。①不可抗力、②行為無能力者もしくは 制限行為能力者に法定代理人がなく、又は法定代理人が死亡し、民事行為能力を喪失し、も しくは代理権を喪失した場合、③相続開始後、相続人又は相続財産管理人が確定しない場合、 ④権利者が義務者又はその他の者によって支配されている場合、⑤その他権利者が請求権を 行使できない障害。訴訟時効停止の効果として、民法通則において、訴訟時効停止の原因が 除去された日から訴訟時効が引き続き進行すると定められている60のに対して、民法総則にお いては、訴訟時効停止の原因が除去された日から 6 か月が経過することにより、訴訟時効が完 成すると定められている61 。 4.訴訟時効完成の効果 中国では、訴訟時効が完成した場合、義務者は義務不履行の抗弁をすることができるとい う効果がある62。また、訴訟時効の完成後に、義務者が履行に同意した場合、完成した時効が 54 民法総則第 188 条第 2 項 55 民法総則第 189 条 56 民法総則第 190 条 57 民法総則第 191 条 58 民法総則第 195 条 59 民法総則第 194 条 60 民法通則第 139 条 61 民法総則第 194 条 62 民法総則第 192 条

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再び進行を始める63。さらに義務者がすでに自らの意思で、債務を履行した場合、その返還を 請求してはならない64 なお、訴訟時効の完成後、義務者が債権者の債務履行催促書に署名又は捺印した場合、本 来の債務に対する確認と見なすことができる65。また、訴訟時効の完成後、義務者と債権者と の間に、本来の債務につき新たな返済契約を締結した場合、新しい債権として、当該返済契 約は法により保護される66 5.訴訟時効の適用がない請求権 中国では、次の請求権については、時効が適用されない67 ① 侵害停止請求権、妨害排除請求権、危険除去請求権 ② 不動産物権及び登記された動産物権の権利者が財産の返還を請求する場合 ③ 養育費、扶養費又は扶助費の支払を請求する場合 ④ 法により時効にかからないとされるその他の請求権 (楊小萍・中国法顧問) 63 民法総則第 192 条 64 民法総則第 192 条 65 「最高人民法院关于超过诉讼时效催款人在催款通知单上签字或者盖章的法律效力问题的批复」(1999 年 2 月 16 日施行) 66 「最高人民法院关于超过诉讼时效期间当事人达成的还款协议是否受法律保护问题的批复」(1997 年 4 月 16 日施 行) 67 民法総則第 196 条 [応用編―過渡期の扱い] 民法総則が施行された後、最高人民法院の司法解釈が公布されるまでは、債権の発生 日が民法総則の施行日である 2017 年 10 月 1 日以前の場合、2 年間、3 年間いずれの訴訟 時効を適用するかについて、法律上明文の規定が置かれておらず、解釈上の論点となっ ていた。この点、上海市高級人民法院の裁判官が個人的意見として述べたところによれ ば、2017 年 10 月 1 日までに訴訟時効が完成していない場合、民法総則の訴訟時効に遡及 効があるとされている。即ち、2017 年 10 月 1 日以前に 2 年間が経過していた債権につい ては、2017 年 10 月 1 日以降の現在においても、当時有効だった「民法通則」の規定に従 い、既に時効完成と取り扱い、他方、2017 年 10 月 1 日時点で 2 年間経過していなかった 債権については、「民法総則」の規定により 3 年間になる。その後、この点について、北 京市高級人民法院も、「民法総則」施行後の訴訟時効制度の適用に関する参考意見を公表 し、上海市高級人民法院と似たような意見を示していた。 2018 年 7 月 18 日、最高人民法院は、「『中華人民共和国民法総則』の訴訟時効制度の適 用の若干問題に関する司法解釈」を公布した。当該司法解釈では、2017 年 10 月 1 日まで に訴訟時効が完成していない場合、民法総則の訴訟時効に遡及効があるとされている。 これにより、上記の論点について統一的な解釈がなされた。

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三.中国法務の現場より

1.電動自転車に関するナンバー管理 効果的な大気汚染対策を行うため、自動車の排気ガス削減による北京の空気の質の継続的 な改善を目指し、北京市の自動車ナンバーの数量は、厳しく制限されていく一方である。 しかし、北京では自動車の購入が制限されたことに伴い、近年、電動自転車が人気を集め ている。通勤や通学、日常の買い物、子どもの送り迎えに電動自転車を利用すれば普通の自 転車より負担は軽く、自動車と比べれば、ナンバーの申請、駐車場の設置などの手間もかか らない。渋滞が比較的深刻な北京の道において、電動自転車で移動するのは非常に快適なも のである。 近時は、新車種も次々に現われており、電動自転車の使用量も増えている一方で、現状電 動自転車の専用道路はなく、自転車走行用の道路を走行しているため、交通事故も尐なから ず発生している。 このような現状を前提として、電動自転車への管理を強化するため、10 月 29 日に「北京市 非機動車管理条例」(以下「本条例」という。)68が公布され、11 月 1 日に施行される。 本条例によれば、今後北京で電動自転車を使用する場合、ナンバーを取付けなければなら ない。その他、市販の電動自転車は、国家基準に合致しなければならず、別途公表される製 品目録によって管理され6970、当該製品目録に含まれていない電動自転車は、ナンバーの取得 ができない。 更に、電動自転車は、登録を経て電動自転車運行証71及びナンバーを取得できなければ、北 京の道路を通行することもできなくなる72 一方、電動自転車の製造者と販売者の義務として、電動自転車を販売する売り場の目立つ 場所に、関連製品目録及びナンバー管理などの関連規定を公示しなければならず、売り出し た電動自転車製品が、製品目録に含まれないものであれば、消費者はその返品、交換などを 求めることができる73 その他、電子商取引プラットフォームにおいては、電動自転車販売者に対して、その経営 資格を確認し、商品品質及び製造物責任などについて明確にする義務も課されている74 68 「北京市非机动车管理条例」 69 本条例第 7 条 70 北京市工商行政管理部門は、質量監督管理部門、公安機関交通管理部門、環境保護部門と共同で製品目録を編 集する。 71 中国語で「行驶证」という。 72 本条例第 10 条 73 本条例第 8 条 74 本条例第 9 条 1 項

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電動自転車の所有者は、その電動自転車を購入してから 15 日以内に、公安機関交通管理部 門に対して、登記を申請しなければならず、申請書類が整っている場合、無料で運行証とナ ンバーが発行される75 。 既存の電動自転車のうち、本条例の要件を満たさないものについては、電動自転車運行証 は発行されないものの、臨時ナンバーが発行される。本条例の施行日から 3 年間は、臨時ナン バーを取付けたものであれば、道路を通行することが可能であるが、期間経過後は、臨時ナ ンバーを付けた電動自転車の通行はできなくなる76 。 インターネットでの情報によれば、現在 21 箇所の登録用スタンドで電動自転車の登録手続 が行われているとのことである。11 月 1 日から、ナンバーを付けない電動自転車の道路通行 ができなくなるため、ナンバーを申請する市民が押し寄せているとのことである。 (呉秀頴・中国法顧問) 2.「中国ビジネス法務の基礎理論と最新実務」(2018 年版)発刊に寄せて 当事務所上海オフィスは、読者の皆様の長年にわたる温かいご支援のお蔭により、今年で、 設立 20 周年を迎える。その記念を兼ね、当事務所では、11 月上旬に「中国ビジネス法務の基 礎理論と最新実務」(2018 年版)を発刊する77 同名の書籍は、2013 年の春に、当事務所 北京オフィスの開設を記念して発刊された が、2018 年版は、2013 年版の改訂版として ではなく、全く新しい内容により構成され ている。というのも、2013 年版は、本ニュ ースレターの特集記事を 3 年分まとめて編 集したものであったが、2018 年版はそれ以 後の 5 年分の「中国企業法実務」連載記事 をテーマ別に編集したためである。 次の 3 分野をバランスよく取り上げ、企 業の皆様及び中国ビジネスに興味をお持ち の方のニーズに広くお答えすることを目指 している。 (1)外商投資企業の運営管理、労働法 といった中国事業を行うに当たり不可欠 の頻出分野 (2)財産法、知的財産権、競争法、情 報化時代における各種規制といった重要 な専門分野 (3)刑事法、家族法、中国の法曹とい った、類書ではあまり取り上げられない 分野 75 本条例第 11 条 1 項 76 本条例第 13 条 2 項 77 当事務所のクライアントには、当事務所にご相談にいらした機会等を通じて、贈呈させていただく予定です。

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編集に当たり、過去 5 年分の記事を再度読み込み、法令や実務運用が変更した部分について、 限られた時間内ではあるが、可能な限りのアップデイトを試みた。その中で、この 5 年で、中 国の法実務における変化が非常に大きかったことを再認識させられたとともに、毎月休まず に記事を発信し続けることで、日常の実務に追われて大部の書籍の執筆など叶わない実務家 でも、チームワークにより成し遂げることができることを知った。 本文 420 頁余を第 6 校まで校正する作業は大変な困難を極めたが、毎回の当ニュースレター の編集作業と同様、当事務所中国サービスグループの多くの弁護士・スタッフの協力を得て、 何とか発刊に漕ぎ着けることができた。ここで、関係者各位に感謝を申し上げる次第である。 (山根基宏・弁護士) TMI 中国最新法令情報―2018 年 10 月号― 発 行:TMI 総合法律事務所 監 修:何連明・外国法事務弁護士 編集主幹:山根基宏、包城偉豊・弁護士 発 行 日:2018 年 10 月 31 日

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