• 検索結果がありません。

(Microsoft Word - \220\205\216Y\211\310\212w\225\224HP\227p\216\221\227\277.doc)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "(Microsoft Word - \220\205\216Y\211\310\212w\225\224HP\227p\216\221\227\277.doc)"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

図 1 二位の浜沖 100m 付近の磯焼け

「山口県藻場再生プロジェクト」

水産科学部 & 海洋科学科資源管理コース3年 1 1 1 1 はじめにはじめにはじめにはじめに 大 大大 大 漁漁漁漁 朝焼け小焼けだ 大漁だ 大羽鰮の大漁だ 浜は祭りのようだけど 海の中では何万の 鰮のとむらいするだろう 長門市出身の童謡詩人、金子みすゞの「大漁」にあるように、昭和40年代まで、長門の港 には大量の大羽鰯(マイワシ)が水揚げされ、街は活気にあふれていた。ところが近年、マ イ ワシが獲れなくなり、漁業後継者が減少し、街から活気がなくなっている。 魚が減った原因のひとつは、「藻場の減少」にある、といわれる。そこで水産高校では2006 年の4月から藻場の再生に向けた研究に取り組んできた。 2 2 2 2 藻場藻場藻場 の藻場のの 役割の役割役割 役割 藻場とは、岩礁帯を中心として海藻(および海草)類の群生する場所のことで、多くの海洋 生物の産卵、生育の場所である。稚魚やカニやエビなどの甲殻類の幼生は、海の森林である 藻 場に守られて大きくなり、やがて外海へ出ていくものも多い。「藻場はいのちのゆりかご」 と 呼ばれるゆえんである。また、サザエやアワビなどの巻貝やウニ類の餌にもなっており、漁 業 従事者にとって重要な漁場になっている。しかし、その大切な藻場が近年急激に減少している。 この現象を「磯焼け」と呼ぶ。 3 3 3 3 海 海海海 のののの 砂漠化砂漠化砂漠化砂漠化 「「 磯焼「「磯焼磯焼磯焼 けけけ 」け」」」 「磯焼け」とは、藻場が減少する現象で、代わりに 石灰藻(図1で岩の上のピンクや白の部分)が岩の表 面を覆ってしまうことが多い。石灰藻が付着した岩礁 帯では、石灰藻が他感作用物質(他の海藻の生育を阻 害する物質)を放出するため、他の海藻類が生育する ことが難しい。また、磯焼けした岩礁帯には餌や隠れ 処がないため魚類がほとんど寄りつかず、サザエやア ワビも餌がないために生息できない。磯焼けした場所 には図1のようにウニがみられる場合が多いが、この ウニも餌不足のため食用となる身の部分(精巣や卵巣) がほとんど発達せず、利用できない。このように、磯 焼けが進行すると岩礁帯に生物がすめなくなるため、「海の砂漠化」とも呼ばれている。 磯焼けは全国的な問題になっており、山口県内でも、萩市や下関市、宇部市、防府市など、 各地で磯焼けがみられる。長門市近辺でも、青海島周辺や二位の浜沖、向津具周辺の岩礁帯 な ど、至る所で磯焼けの問題が深刻化している。

(2)

図 2 長門市周辺の衛星写真(Google 画像) 図 3 長門市周辺の植林状況 4 4 4 4 磯焼磯焼磯焼 けの磯焼けのけの 原因けの原因原因原因 磯焼けの原因としては諸説ある。主な原因としては以下のものが考えられている。 ・地球温暖化に伴って海水温が上昇し、海藻が生育できなくなった ・地球温暖化に伴って海流が蛇行し、海洋環境が大きく変化した ・石灰藻が岩の表面を覆うことで他の海藻の成長が阻害されている ・ウニやアイゴによって海藻の新芽が食害を受け、大きくなれない ・河川から供給される鉄イオンが減少した など ここで水産高校では「河川から供給される鉄イオンの減少」に注目した。理由は山にあった。 5 5 5 5 植林植林植林植林 されたされたされたされた 山山山山 図 2 は 、 長 門 市 周 辺 の写 真 で あ る 。 水 産 高 校 は 、 東 を 仙 崎 湾、西 を 深 川 湾 に 囲 ま れ て い る 。 写 真 で 灰 色に見 え て い る 部 分 は 平 野 で 、 そ の 中 央 を 3本の 川 が 流 れ て い る 。 こ の 写 真 に 長 門 市 の植林 の 情 報 を 重 ね た も のが図3である。 図3にみられる赤い部分は、スギやヒノキ の 植 林 地 で あ る 。 植林地 は 河 川 の 周 辺 に 多 く存在することがよくわかる。山口県では、 山 口 県 農 林水 産 部 の指導 の 元 、 37年 前 か ら 計画的に植林が進められてきた。 と こ ろ で 、 漁 師 に 聞 き 取 り 調 査 を お こ な っ た 結 果 、 藻 場 が 減少し 、 魚 が 少 な く な っ た の も 37年 ほ ど 前 からで あ る こ とが わ か っ た 。 イ ワ シ が 獲 れ なくな っ た の も 、 ほ ぼ 同 じ時期である。 文 献 を 調 べ た 結 果 、 ス ギ や ヒ ノ キ の 植 林 地 が 増 え る と 、 河 川に供 給 さ れ る 鉄 分 が 少 なくなるということが分かった。 鉄イオンは植物の成長、呼吸、光合成な ど に 必 要 な 物 質 で あ る 。 鉄 は 地 殻 の 中 に 5%ほど含まれており、川によって海まで 運ばれて、植物プランクトンや海藻などの 植物に利用されている。ただし、植物が利用出来るのは二価鉄イオンだけであり、これが三価 鉄イオン(赤サビ)になると植物は利用出来ない。水中では鉄はすぐに酸化して赤サビとなっ て沈殿する。しかし腐葉土が分解される過程で生じる腐植酸と結合してキレート(錯体)の状

(3)

図 4 鉄炭団子の原理 態になった腐植酸鉄は、川を通って海に運ばれ、海藻が利用することができる。 ドングリの木に代表される広葉樹の森には豊かな腐葉土があり、腐植酸鉄も多くできる。こ れが「豊かな森が豊かな海をつくる」といわれる由縁でもある。しかし、スギやヒノキの針 葉 樹にはアレロパシー(他感作用)があり落ち葉を分解する微生物や動物が繁殖しにくいため 、 落ち葉が分解されにくく腐葉土がほとんどできず、腐植酸鉄も少なくなる。 宮城県気仙沼でカキ養殖を営んでいる畠山重篤氏は、森と海の関係に注目して約20年前か ら地元大川の上流域にある室根山に広葉樹を植林する「森は海の恋人」活動を行っておられる。 その結果、気仙沼では昔のようにカキや魚が獲れるようになったという。 長門市でも手入れされずに放置されたスギやヒノキの植林地を伐採し、そこにドングリの木 を植えて昔の雑木林を取り戻すことができれば、それに続く仙崎湾や深川湾、油谷湾も昔の 豊 かさを取り戻せるかもしれない。ただし、それには畠山氏が実践されたように木が成長する ま での何十年という時間が必要である。しかし、長門市の漁業の深刻な状態は待ったなしである。 そこで、自然に対するカンフル剤として鉄イオンを直接海に供給することで短期間に藻場を 再 生し、併せて山に広葉樹を植林することで長期的に昔の山や海の自然環境を取り戻そうとい う ビジョンが、今、必要であると考える。 現在水産科学部が行っている研究はあくまでも短期的に藻場を再生するためのものである。 私たちの子、そして孫の代まで受けつぐことのできる、本当の豊かな海、自然の山を、この 長 門市で取り戻すためには、行政や地域との連携無くしては実現出来ない。 次の世代に何を残すのか。長門市の進むべき道はこの基本的な問いの中にあると考える。 6 6 6 6 藻場藻場藻場藻場 へのへのへのへの カンフルカンフル 剤カンフルカンフル剤剤 、剤、、、 鉄炭団子鉄炭団子鉄炭団子鉄炭団子 水 産 科 学 部 で は 、 鉄 と 炭 で 団 子 を つ く り 、 海 水 を 電 解 液 と し て 局 部 電 池 を 作 成 す る こ と で イ オ ン 化 傾 向 の 大 き い 鉄 を イ オ ン と し て 溶 出 さ せて い る( 図4 )。 こ の 団 子 は 海 に 撒 く も の な の で 、 安 全 性 には 細 心 の 注 意 を 払 っ て い る 。 主 な 材 料 に は 、使 用 済 み カ イ ロ を 利 用 し て い る 。 カ イ ロ の 主原 料 は 鉄 と 炭 で 、 こ の 他 に バ ー ミ キ ュ ラ イ トや 塩 分 が 入 っ て い る だ け で 有 害 物 質 を 含 ま ない 。 そ し て ほ と ん ど リ サ イ ク ル さ れ ず に 捨 てら れ て お り 、 た だ で 手 に 入 る 理 想 的 な 資 源 であ る 。 こ れ に 鉄 分 強 化 の た め に 純 度 の 高 い 鉄粉 を 加 え 、 つ な ぎ と し てごはん(おかゆ)を混ぜて団子にしている。ごはんは水産高校の水興寮で残飯として捨てら れるものを利用している。地域で行う場合はスーパーや弁当屋で廃棄されるごはんを利用出来 る。これらの材料を団子にして野焼きにしたものが、鉄炭団子である。 7 7 7 7 鉄 鉄鉄鉄 のののの 効果効果効果効果 をを 確認をを確認確認確認 するするするする 実験実験実験実験

(4)

図 5 アオサの成長試験 図 6 アオサの成長グラフ この鉄炭団子をつかって、鉄分は本当に海藻 の成長促進に効果があるのか実験を行った。 実験 実験 実験 実験 111 1 アオサアオサアオサ のアオサののの 成長試験成長試験成長試験成長試験 アオサには、陸上植物のような根・茎・葉の 区別がない。そこで、アオサを5mm角の正方形 に 切 っ て 、 成 長 測 定 を行 っ た 。 実 験 区 と し て、 A 蒸 留 水 に 塩 化 ナ ト リウ ム を 加 え て 3 % に し た実験区、B 強化海水の実験区、C 強化海水 に鉄イオンを加えた実験区の3つで行った。 実 験 13日 目 の ア オ サ の 表 面 を 観 察 し た と こ ろ、Aのアオサは、すぐ枯れていた。BとCの アオサを観察すると、Bのアオサは各辺が5倍 に成長していた。これに対してCのアオサは10 倍に成長していた。表面積で比較すれば、Cは Bの4倍成長したことになる。さらにCの表面 には多数のしわが確認出来た。これは成長が速 すぎて、均等に成長出来ない部分がしわになっ たためだと思われる。 図6は、実験開始後13日間のアオサの成長グ ラフである。黄色いグラフが鉄イオンを加えた アオサで、強化海水のアオサと比べてかなり成 長が速いことがわかった。この実験から、鉄イオンは海藻の成長を促進することがわかった 。 そこで、漁師や漁協の方の協力を得て、青海島周辺、奈古「道の駅」、萩市越ヶ浜、山口宇 部 空港沖の県内4か所で実際に鉄炭団子を海にまいて藻場再生の実験を行った。 8 8 8 8 宇部 宇部宇部宇部 のののの 「「「 鉄人「鉄人 」鉄人鉄人」」」 杉本幹生氏杉本幹生氏杉本幹生氏杉本幹生氏 このうち、共同研究者で無有産研究所代表の杉本幹生氏が漁師と協力して鉄炭団子をまいて おられる宇部市では、大きな成果が上がっている。杉本氏は山口県沿岸域での漁獲高の減少 に 伴う水産業の衰退を憂い、何十年にも渡って研究を続けてこられた方であり、水産高校で製 作 している鉄炭団子を考案された方である。宇部市では杉本氏の指導の元、岬漁協所属で潜水 漁 をしている漁師が2年前から沖合4km、幅10kmに渡って鉄炭団子を5トンまいている。その結 果、ホンダワラやアマモが大量に繁茂するようになった。そして白ミル貝やアサリ、タイラ ギ などの二枚貝や、エビやカニ、タコ、カレイ、シロギスなどがたくさん獲れるようになり、 漁 獲高が過去最高になるなど、大変良い結果が出ている。 岬漁協には市場がないため、漁獲量の変化は記録に残っていない。しかし水揚げされた漁獲 物は仲買を通して流通するため、仲買の方に話を伺ったところ、ある会社の2006年の白ミル貝 の取扱量は約30トンであったが、鉄炭団子をまいたあとの2007年は70トンに増加し、2008年に は280トンにまで増加した。これはひとつの仲買業者の話で、宇部全体ではさらに多くの水揚げ があったと思われる。

(5)

杉本氏の活動については、2008年9月に文藝春秋社から出版された畠山重篤氏の著書『鉄が 地球温暖化を防ぐ』の中で「山口県宇部市の“鉄人“」として紹介されている。 9 9 9 9 瀬戸内瀬戸内瀬戸内 では瀬戸内ではでは 成功では成功 、成功成功、、、でもでもでもでも 日本海側日本海側 では日本海側日本海側ではでは 失敗では失敗失敗失敗。。 なぜ。。なぜなぜなぜ ???? 瀬戸内海側では大成功した実験であったが、日本海側では海藻が増えたり漁獲量に変化が出 たりすることはなかった。その理由について、日本海側では鉄炭団子から溶出した鉄イオン が すぐに酸化されて沈殿してしまい、海藻や植物プランクトンが利用出来なかったのではない か と考えられた。そして瀬戸内海側で成功した理由については、瀬戸内海に多いヘドロが関係 し ているのではないかと考えた。 実は、話を伺った宇部の漁師が口をそろえて「海底のヘドロの量が減った」と言っていた。 そこで仮説として、「鉄イオンとヘドロが一緒になると、腐植酸鉄が大量に発生し、それを 利 用する植物プランクトンや海藻が増えて、他の生物も増えるのではないか」と考えた。 実験 実験 実験 実験 222 2 オオカナダモオオカナダモオオカナダモをオオカナダモを 用をを用用用 いたいたいたいた 水槽実験水槽実験水槽実験 水槽実験 この仮説を確かめるために実験を行った。実験は60L水槽を4本準備し、 A 水だけ入れた水槽 B 水+鉄炭団子を入れた水槽 C 水+ヘドロを入れた水槽 D 水+ヘドロ+鉄炭団子を入れた水槽 のそれぞれに、オオカナダモを10gずつ入れて、1ヶ月観察を行った。 1ヶ月後、それぞれの水槽のオオカナダモの湿重量を測定した。その結果、Aのオオカナダ モは2gに減少し、色も白色の半透明になり枯れる寸前であった。Bのオオカナダモは23g、C のものは25gと、それぞれ2倍以上に成長していた。ところが、Dのオオカナダモは47gに増殖 していた。BやCに比べても、約2倍の成長速度の差があった。 A(2g) B(23g) C(25g) D(47g) 水槽実験の結果から、鉄炭団子とヘドロが一緒になると、何らかの反応が起こり、藻類の成 長が促進されることがわかった。現在の段階では、鉄を加えたヘドロの中で起こる現象を解 明 出来ていない。仮説としては、次のことが考えられる。 ・鉄イオンとヘドロが反応して腐植酸鉄(有機酸鉄)が発生し、それを吸収したオオカナダ モ の成長を促進した。 ・ヘドロに鉄イオンが加わったことで、ヘドロの中の細菌類の活性が高まった。その結果、 ヘ ドロの分解が進み、オオカナダモの養分となる物質が水中に放出され、それを吸収したオオ カナダモの成長を促進した。

(6)

鉄イオンが海藻の成長促進に効果があることは、過去に国や大学の研究結果でも報告されて いる。私たちはもう一歩踏み込んで、ヘドロのある場所をねらって鉄分を供給することで、 腐 植酸鉄を発生させて藻類の成長を促進すると同時に、ヘドロを分解して減少させることで海 洋 環境を改善できるのではないかと考える。今後は日本海側でもヘドロの堆積している河口域 や 湾内を中心に鉄炭団子の撒布を行っていく予定である。 10 10 10 10 地球温暖化防止地球温暖化防止地球温暖化防止 への地球温暖化防止へのへのへの 取取 り取取りりり 組組組組 みみみ み 元北海道大学の松永勝彦教授(現在四日市大学教授)の試算では、北海道の面積の20~30% に相当する海域にコンブを繁茂させれば、日本で放出するCO2の約半分を固定できるそうである (1993年)。これを日本全土の沿岸で実施し、海藻や植物プランクトンを増殖させれば、日本 で排出されるCO2はほとんど固定出来るであろう。海流の蛇行や海水温の上昇が地球温暖化の弊 害であるのならば、大気中のCO2を減らすことによって気温の上昇を抑えることで改善可能なは ずである。 増えた海藻類の利用について、島根県隠岐の島町では「緑のコンビナート」構想が本格スタ ートした。隠岐の島では海藻からバイオエタノールを製造するなど、島全体で循環型低炭素 社 会の構築を目指している。海藻由来のバイオエタノールを利用することによってカーボン・ ニ ュートラルのシステムを構築するのは長門市でも取り組み可能である。 また、増えた植物プランクトンは、二枚貝に食べられると貝殻になる。貝殻の主成分は炭酸 カルシウムであり、大気中から水中にとけ込んだCO2を植物プランクトンを通じて取り入れ、貝 殻という固形物に作り替えて、大気中に出ていかないようにしている。つまり、人間が化石 燃 料を利用して放出したCO2を、炭酸カルシウムの形で固定して、大気中のCO2を減らしてくれてい るのである。長門市三隅の小島地区で行われているカキ養殖は、CO2固定の方法としてとても有 効である。 11 11 11 11 地域 地域地域 と地域とと 一緒と一緒一緒 に一緒ににに 取取 り取取りりり組組組組 むむむむ 環境教育環境教育環境教育環境教育 現在水産科学部では、「地域と一緒に取組む環境教育活動」の一環として、長門市内の全て の中学・高等学校と、深川小学校、仙崎小学校、長門市役所、長門市のコミュニティFM放送局 であるFM AQUA等に趣旨を説明して、鉄炭団子の材料となる使用済みカイロの回収をお願いして いる。FM AQUAでは、生徒が研究成果を2時間の生放送で紹介させて頂いた。また、1月から2 月にかけて使用済みカイロ回収の呼びかけを、放送の合間に実施して頂いた。これらご協力 頂 いている方々に、将来的には鉄炭団子の製作・撒布にも関わってもらい、地域の方々や次代 を 担う子供達が山や川、海など身近な自然環境に興味を持つきっかけとなれればと考える。 鉄炭団子を海に撒く活動は、人間が環境を変化させたことで不足してしまった鉄イオンを、 カンフル剤の形で海に与える短期的な活動である。しかし長期的に見たとき、広葉樹の森を 再 生することで、人の手によって鉄を撒かなくても永続的に海に鉄分を補給するシステムがで き ればと思う。鉄炭団子の研究は、広葉樹の森を取り戻す市民活動と併せて取り組むことによ っ て、本当の意味を持つと考える。荒れた植林地の森をドングリの森に戻し、何十年か後にこ の 長門の地に豊かな森と豊かな藻場、そして豊かな漁場を取り戻したいと強く願う。

(7)

私たち山口県立水産高等学校が3年間継続して行ってきた研究を通して、長門市沿岸の藻場 の再生、そしてその先には地球温暖化の防止も見えてきた。この研究は、多くの方々のご指導、 ご協力のもとで進めている。厚くお礼申し上げる。この取り組みの発信源が山口県立水産高 等 学校のある山口県長門市であり「藻場再生の取り組みは長門に聞け」といわれるほど、産・官・ 学、そして地域が密着した活動が行えれば、と願う。そしてこの取り組みが全国の藻場再生 の きっかけとなり、さらに地球温暖化防止にも役立てるよう今後も研究を進めていく。 水産科学部&海洋科学科資源管理コース 2008年度の取り組み 4月10日(木) オオカナダモを利用した水槽実験開始。 4月17日(木) 山口県漁業協同組合越ヶ浜支店支店長の末武啓孝氏来校。研究の概要説明。 4月25日(金) 資源管理コース3年8名と教員2名で宇部市の現地視察を実施。併せて杉本 氏や潜水漁師の話を伺う。 5月12日(月) 水槽実験1ヶ月目。オオカナダモの湿重量の測定を行う。 6月3~6日 総合実習の時間を利用して鉄炭団子を仙崎湾とその周辺に設置。 5月28日(水) 山口大学工学部電気電子工学科の村田卓也氏来校。研究の概要説明。 6月4日(水) 山口県産業教育振興会定期総会にて研究成果を発表。 6月8日(日) 長門環境講演会に生徒9名参加。 7月9日(水) 長門市通の漁師3名来校。研究の概要説明。鉄炭団子25kgを持ち帰り設置。 7月16日(水) 長門市議会議員の新谷勇氏来校。研究の概要説明。 7月26日(土) 島根県隠岐で行われた第47回日本海南部地区水産高等学校研究協議会生徒研 究発表において最優秀賞受賞。12月に北海道で行われる全国大会に出場決定。 8月1日(金) 平成20年度環境教育指導者研修講座の事例発表「環境教育の取り組みの実際」 において、水産高校の取り組みを紹介。 8月27日(水) 長門市水産課高橋憲幸課長と岡田年生係長来校。研究の概要説明。 8月29日(金) 長門市議会議員の新谷勇氏来校。9月の長門市議会の一般質問で水産高校の 取り組みを採り上げられた。その内容が長門市広報に掲載された。 9月20日(土) 広島大学大学院生物圏科学研究科准教授の長沼毅先生来校。特別講義実施。 10月3日(金) 長門市議会議員の大下和政氏来校。研究の概要説明。 10月29日(水) 山口県漁業協同組合王司支店の梶田博氏来校。下関市長府沖でハマグリの飼 育試験を行っておられ、水産高校の研究が利用出来ないか確認した。 11月3~4日 水産科学部と資源管理コースの生徒計11名で広島大学大学院生物圏科学研究 科を訪問。長沼毅准教授のご指導の元、鉄の特別講義や実験を実施した。 12月12日(金) 北海道小樽市で行われた平成20年度第17回全国水産・海洋系高等学校生徒研 究発表大会にて全国2位(産業教育中央振興会賞)受賞。 12月17日(水) 平成20年度体験学習全体発表会にて事例発表。 1月7日(水) 佐賀大学理工学部教授宮島徹氏の研究室を訪問。共同研究を依頼。 1月22日(木) 東京海洋大学客員講師の内田正洋氏来校。研究の概要説明。 2月16日(月) 東京海洋大学海洋科学部海洋政策文化学科准教授田村祐司氏来校。概要説明。 2月26日(木) 京都大学フィールド科学教育研究センター社会連携教授畠山重篤氏来校。

(8)

<指導助言者> 杉 本 幹 生(無有産 む う ぶ 研究所 代表) 石 川 進(有限会社 石川鉄工所 代表取締役) 畠 山 重 篤(有限会社 水山養殖場 代表取締役 「牡蠣の森を慕う会」代表 京都大学フィールド科学教育研究センター 社会連携教授) 長 沼 毅(広島大学大学院生物圏科学研究科 准教授) 宮 島 徹(佐賀大学理工学部 教授) <参考文献> 松 永 勝 彦『森が消えれば海も死ぬ 陸と海を結ぶ生態学』 講談社 1993年 矢 田 浩『鉄理論=地球と生命の奇跡』 講談社 2005年 長 沼 毅『深層水「湧昇」、海を耕す!』 集英社 2006年 畠 山 重 篤『鉄が地球温暖化を防ぐ』 文藝春秋社 2008年 <参考ホームページ> 山口県水産情報システム 海鳴りネットワーク http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a16500/uminari/uminari-top.html 論説 : 緑のコンビナート構想/隠岐の島町を「エコ島」に(山陰中央新報) http://www.sanin-chuo.co.jp/column/modules/news/article.php?storyid=505910033

この研究に関する連絡先

〒759-4106

山口県長門市仙崎 1002 番地

山口県立水産高等学校

教 諭 安 部 豊

電話 0837(26)0911

FAX 0837(26)0912

図 2  長門市周辺の衛星写真(Google 画像)  図 3  長門市周辺の植林状況 4444      磯焼磯焼磯焼 けの磯焼けのけの 原因けの原因原因原因     磯焼けの原因としては諸説ある。主な原因としては以下のものが考えられている。 ・地球温暖化に伴って海水温が上昇し、海藻が生育できなくなった ・地球温暖化に伴って海流が蛇行し、海洋環境が大きく変化した ・石灰藻が岩の表面を覆うことで他の海藻の成長が阻害されている ・ウニやアイゴによって海藻の新芽が食害を受け、大きくなれない ・河川から供給される
図 4  鉄炭団子の原理 態になった腐植酸鉄は、川を通って海に運ばれ、海藻が利用することができる。  ドングリの木に代表される広葉樹の森には豊かな腐葉土があり、腐植酸鉄も多くできる。これが「豊かな森が豊かな海をつくる」といわれる由縁でもある。しかし、スギやヒノキの針 葉樹にはアレロパシー(他感作用)があり落ち葉を分解する微生物や動物が繁殖しにくいため 、落ち葉が分解されにくく腐葉土がほとんどできず、腐植酸鉄も少なくなる。 宮城県気仙沼でカキ養殖を営んでいる畠山重篤氏は、森と海の関係に注目して約20年前から地
図 5  アオサの成長試験  図 6  アオサの成長グラフ この鉄炭団子をつかって、鉄分は本当に海藻の成長促進に効果があるのか実験を行った。   実験実験実験 1実験11  1    アオサアオサ のアオサアオサののの 成長試験成長試験成長試験成長試験    アオサには、陸上植物のような根・茎・葉の区別がない。そこで、アオサを5mm角の正方形に 切 っ て 、 成 長 測 定 を行 っ た 。 実 験 区 と し て、A  蒸 留 水 に 塩 化 ナ ト リウ ム を 加 え て 3 % に した実験区、B

参照

関連したドキュメント

〜3.8%の溶液が涙液と等張であり,30%以上 では著しい高張のため,長時間接触していると

私たちの行動には 5W1H

長野県飯田OIDE長 長野県 公立 長野県教育委員会 姫高等学校 岐阜県 公立 岐阜県教育委員会.. 岡山県 公立

私たちは、私たちの先人たちにより幾世代 にわたって、受け継ぎ、伝え残されてきた伝

 日本一自殺死亡率の高い秋田県で、さきがけとして2002年から自殺防

❸今年も『エコノフォーラム 21』第 23 号が発行されました。つまり 23 年 間の長きにわって、みなさん方の多く

(1)原則として第3フィールドからのアクセス道路を利用してください。ただし、夜間

“FedEx Express International Trade Challenge 2021”に2名が、大阪大学大 学院主催の“Future Global Leaders Camp 2021 Online”に1名が、AFS主催 の