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2.3 哺乳類調査 調査方法対象地域の哺乳類相を把握することを目的に デジタルカメラによる自動撮影調査を実施した 具体的な手法についてはマニュアルを基本とした 自動撮影装置 (DIGITAL GAME CAMERA MOULTRIE) は 撹乱を受けていない落葉広葉樹林 撹乱を受けていな

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2.3 哺乳類調査 2.3.1 調査方法

対象地域の哺乳類相を把握することを目的に、デジタルカメラによる自動撮影調査を実施 した。具体的な手法についてはマニュアルを基本とした。自動撮影装置(DIGITAL GAME CAMERA、 MOULTRIE)は、「撹乱を受けていない落葉広葉樹林」、「撹乱を受けていない常緑広葉樹林」 及び「治山事業施工箇所」のそれぞれに設定した森林調査プロット周辺を各1箇所(各 1 台)選定し、沢や獣道を目安に、対象動物がよく利用すると想定される場所に設置した。各 装置設置期間を以下に示す。調査結果は、自動撮影調査 記録用紙(様式-11)に整理した。 [自動撮影装置設置期間] ・撹乱を受けていない落葉広葉樹林:9 月 28 日~12 月 11 日(75 日間) ・撹乱を受けていない常緑広葉樹林:9 月 27 日~12 月 10 日(75 日間) ・治 山 事 業 施 工 箇 所:9 月 19 日~12 月 10 日(83 日間) 直接観察/痕跡調査では、森林調査及び動物調査時に直接観察あるいは鳴き声等によって 生息種を確認するとともに、糞・足跡・食痕等の痕跡を確認し、種名と痕跡の種類、位置情 報等を記録した。調査結果は、任意様式により整理した。 キュウシュウジカによる食害状況調査では、森林調査時に森林への被害が確認された場合 に、別途以下の項目を記録した。 ・被害を受けている植物の種名 ・被害の種類(食害、皮剥ぎ等) ・被害の程度(確認された生育個体のうちの被害個体の割合、被害箇所等) ・写真撮影 2.3.2 調査結果 a 自動撮影調査 自動撮影装置設置箇所及び確認種一覧をそれぞれ図 2.3-1、表 2.3-1 に、また様式-11、 撮影された主な動物を報告書資料編に示す。

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図 2.3-1 自動撮影装置設置位置図 表 2.3-1 自動撮影装置確認種一覧 鳥類 カラス カケス ○ キジ コシジロヤマドリ ○ ハト キジバト ○ ツグミ トラツグミ ○ ツグミ科の一種 ○ チメドリ ソウシチョウ ○ シジュウカラ ヤマガラ ○ カラス ヒュウガカケス ○ 哺乳類 ウサギ キュウシュウノウサギ ○ ○ イタチ ホンドテン ○ ○ イヌ イヌ ○ ホンドタヌキ ○ ○ イノシシ ニホンイノシシ ○ 種名 科目 分類群 撹乱を受けていない 落葉広葉樹林 撹乱を受けていない 常緑広葉樹林 治山事業 施工箇所

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し、鳥類ではツグミ科の一種(不鮮明で判別困難)とヒュウガカケスが確認された。哺乳類 はイヌのみであった。 「撹乱を受けていない常緑広葉樹林」(森林調査プロット No.7 付近) 装置設置箇所はスダジイが優占する常緑広葉樹林で、今は使われていない旧登山道付近、 林冠の閉じた薄暗い地点である。装置は、動物が利用していると思われる獣道に向けて設置 した。3 地点中最も多い種が記録され、鳥類では準絶滅危惧種であるコシジロヤマドリ、特 定外来生物であるソウシチョウが確認された。哺乳類ではキュウシュウノウサギ、ホンドテ ン、ホンドタヌキ、ニホンイノシシの 4 種が確認された。 「治山事業施工箇所」(森林調査プロット No.13 付近) 装置設置箇所は、ススキの多い開けた地点である。当箇所は平成 6 年度に斜面崩壊跡地に コンクリート谷止工が施工され、林床にはススキが優占していた。哺乳類はキュウシュウノ ウサギ、ホンドテン、ホンドタヌキの 3 種が確認された。 b 直接観察/痕跡調査 直接観察/痕跡調査で確認された種を表 2.3-2 に示す。 表 2.3-2 直接観察/痕跡調査確認種一覧 科目 種名 峰越林道 御岳登山道 ウサギ キュウシュウノウサギ 目撃、痕跡(糞) イタチ ホンドテン 痕跡(糞) 痕跡(糞) イヌ イヌ 目視 イノシシ ニホンイノシシ 目撃、痕跡(堀跡) 4種 1種 合計 保存林内では目視によりキュウシュウノウサギ、イヌ、ニホンイノシシが、糞などの痕跡 によりキュウシュウノウサギ、ホンドテン、ニホンイノシシが確認された。 c キュウシュウジカによる食害状況調査 キュウシュウジカによる食害、及び糞等による痕跡は見られなかったが、治山工事関係者 によるシカの目撃情報が得られた。 2.4 鳥類調査 2.4.1 調査方法 対象地域の鳥類相を把握することを目的に、登山道、林道等を用いて、ラインセンサス及 び定点観察調査を行った。具体的な調査手法はマニュアルを基本とした。調査は秋期及び越 冬期に各1回行った。調査結果は、ラインセンサス調査野帳(様式-22)、定点観察調査野帳 (様式-23)に整理した。また、保存林周辺の鳥類相について表 2.4-1 に示す既存文献・資 料を収集し、高隈山周辺の鳥類相リストを作成した。

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表 2.4-1 収集文献・資料 No. 文献名 管理機関 1 鹿児島県の絶滅のおそれのある野生動植物 動物編 鹿児島県環境生活部環境保護課 2 高隈山森林生物遺伝資源保存林概要 九州森林管理局 3 高隈山県立自然公園 鹿児島県 4 高隈演習林の鳥類相 鹿児島大学農学部 5 H9高隈山森林生物遺伝資源保存林計画 九州森林管理局 2.4.2 調査結果 ラインセンサスルート位置図及び確認種一覧をそれぞれ図 2.4-1、表 2.4-2 に、また様式 -22~23、及び高隈山周辺の鳥類相リストを報告書資料編に示す。 図 2.4-1 ラインセンサス(鳥類)ルート位置図

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表 2.4-2 鳥類確認種一覧

秋期調査 越冬期調査

1 タカ目 タカ科 ハイタカ属の一種 Accipiter sp. 冬鳥 ○

2 キジ目 キジ科 コシジロヤマドリ Syrmaticus soemmerringii ijimae 留鳥 ○ 準絶滅危惧(NT) 準絶滅危惧

3 ハト目 ハト科 キジバト Streptopelia orientalis 留鳥 ○ ○

4 アオバト Sphenurus sieboldii 留鳥 ○

5 アマツバメ目 アマツバメ科 アマツバメ Apus pacificus 夏鳥 ○

6 キツツキ目 キツツキ科 ナミエオオアカゲラ Dendrocopos leucotos namiyei 留鳥 ○

7 キュウシュウコゲラ Dendrocopos kizuki kizuki 留鳥 ○

8 スズメ目 セキレイ科 キセキレイ Motacilla cinerea 漂鳥または留鳥 ○ 9 ヒヨドリ科 ヒヨドリ Hypsipetes amaurotis 留鳥 ○ ○ 10 ツグミ科 ジョウビタキ Phoenicurus auroreus 冬鳥 ○ 11 チメドリ科 ソウシチョウ Leiothrix lutea 留鳥 ○ ○ 特定外来生物※4 12 ウグイス科 ウグイス Cettia diphone 留鳥 ○ ○ 13 ヒタキ科 コサメビタキ Muscicapa dauurica 夏鳥 ○

14 エナガ科 キュウシュウエナガ Aegithalos caudatus kiusiuensis 留鳥 ○

15 シジュウカラ科 ヒガラ Parus ater 留鳥 ○ 16 ヤマガラ Parus varius 留鳥 ○ ○ 17 シジュウカラ Parus major 留鳥 ○ 18 メジロ科 メジロ Zosterops japonicus 留鳥 ○ ○ 19 ホオジロ科 ホオジロ Emberiza cioides 留鳥 ○ 20 クロジ Emberiza variabilis 冬鳥 ○ 21 アトリ科 カワラヒワ Carduelis sinica 留鳥 ○ ○

22 カラス科 ヒュウガカケス Garrulus glandarius hiugaensis 留鳥 ○

23 ハシボソガラス Corvus corone 留鳥 ○ ○ 24 ハシブトガラス Corvus macrorhynchos 留鳥 ○ ○ 18種 15種 2種 2種 1種  *1 留鳥:一年中同じ地域にすむ鳥 夏鳥:春に繁殖の為に現れる鳥  冬鳥:冬季に北部地域から渡ってくる鳥 漂鳥:国内を季節移動する鳥  *2 環境省RL:環境省レッドリスト(環境省報道発表,2006~2007)   *3 鹿児島県RDB:鹿児島県レッドデータブック(鹿児島県,2003)  *4 特定外来生物:特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律で指定された種 :移入種、外来種 :希少種、貴重種 合計:17科24種 調査確認 No. 目名 科名 和名 学名 渡り※1 環境省 RL※2 鹿児島RDB※3 外来生物 確認種数は秋期及び越冬期合わせて24 種(それぞれ 18 種及び 15 種)であった。 秋期調査において、林道周辺でヤマガラ、ウグイス、ホオジロなどが、林道周辺の沢沿い ではキセキレイ、御岳上空ではアマツバメが確認された。また、特定外来生物に指定されて いるソウシチョウが保存林全域で多く確認された。調査期間外にはトビ(ワシ・タカ類)が 確認された。 冬期調査においては、ヒヨドリ、メジロが保存林全域で多く確認された。またクロジ、ヤ マガラなどが林道周辺で多く確認された。希少種では環境省RL【準絶滅危惧(NT)】及び 鹿児島県RDB【準絶滅危惧】に記載されているコシジロヤマドリが林道付近で確認された。 また、ハイタカ属(オオタカ【絶滅危惧Ⅱ類】もしくはハイタカ【準絶滅危惧】)が保存林 周辺を飛翔するのが確認されたが、確認距離が遠く種の判別は困難であった。秋期に続きソ ウシチョウ【特定外来生物】が確認されたが、秋期と比較し確認数が減少していた。 両期ともに、尾根上よりも林道での確認種が多かった。

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2.5 昆虫類調査 2.5.1 調査方法 対象地域の昆虫類相を把握することを目的に、登山道、林道等をラインセンサスルートと して設定し、原則として直接観察法により確認種を記録した。必要に応じてスウィーピング 法、ビーティング法等捕獲的な手法を実施したが、捕殺は行わず、確認後に放虫した。具体 的な調査手法はマニュアルを基本とした。調査は秋期に1回行った。調査結果は、昆虫類調 査 記録用紙(様式-25)に整理した。 2.5.2 調査結果 ラインセンサスルート位置図、及び確認種一覧をそれぞれ図 2.5-1、表 2.5-1 に、また様 式-25 を報告書資料編に示す。 図 2.5-1 ラインセンサス(昆虫類)ルート位置図

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表 2.5-1 昆虫類確認種リスト ルートA (林道) ルートB (登山道) 1 トンボ目 オニヤンマ科 オニヤンマ Anotogaster sieboldii 1 2 トンボ科 ウスバキトンボ Pantala flavescens 31 15 3 カマキリ目 カマキリ科 チョウセンカマキリ Tenodera angustipennis 1 4 バッタ目 キリギリス科 クサキリ Ruspolia lineosa 1 5 コオロギ科 ツヅレサセコオロギ Velarifictorus mikado 5 3 6 バッタ科 ショウリョウバッタ Acrida cinerea 6 3 7 イナゴ科 ハネナガイナゴ Oxya japonica 2 8 オンブバッタ科 オンブバッタ Atractomorpha lata 4 3 9 ナナフシ目 ナナフシ科 ニホントビナナフシ Micadina phluctaenoides 1 10 カメムシ目 セミ科 クマゼミ Cryptotympana facialis 4 11 ツクツクボウシ Meimuna opalifera 3 2 12 ヨコバイ科 ツマグロオオヨコバイ Bothrogonia ferruginea 1 13 マエジロオオヨコバイ Kolla atramentaria 1 14 ヨコバイ科の一種1 Cicadellidae sp. 2 15 ヨコバイ科の一種2 Cicadellidae sp. 1 16 カメムシ科 オオクチブトカメムシ Picromerus bidens 1

17 チャバネアオカメムシ Plautia crossota stali 2

18 キンカメムシ科 オオキンカメムシ Eucorysses grandis 1

19 アメンボ科 アメンボ Aquarius paludum paludum 5

20 シリアゲムシ目 シリアゲムシ科 ヤマトシリアゲ Panorpa japonica 1

21 チョウ目 セセリチョウ科 イチモンジセセリ Parnara guttata guttata 4 3

22 キマダラセセリ Potanthus flavus flavus 3

23 マダラチョウ科 アサギマダラ Parantica sita niphonica 3 1

24 シジミチョウ科 ルリシジミ Celastrina argiolus ladonides 1

25 ツバメシジミ Everes argiades hellotia 1

26 タテハチョウ科 ツマグロヒョウモン Argyreus hyperbius hyperbius 5 4

27 アカタテハ Vanessa indica 1

28 アゲハチョウ科 カラスアゲハ Papilio bianor 2 1

29 ジャコウアゲハ Atrophaneura alcinous 2 1

30 アオスジアゲハ Graphium sarpedon nipponum 2 1

31 モンキアゲハ Papilio helenus nicconicolens 3 2

32 キアゲハ Papilio machaon hippocrates 1

33 シロチョウ科 キチョウ Eurema hecabe 5 2

34 モンシロチョウ Pieris rapae crucivora 3

35 ジャノメチョウ科 ヒメウラナミジャノメ Ypthima argus 2 3

36 ツトガ科 オオキノメイガ Botyodes principalis 1 1

37 シャクガ科 エグリヅマエダシャク Odontopera arida arida 1 1

38 オオゴマダラエダシャク Parapercnis giraffata 3 4 39 シャクガ科の一種1 Geometridae sp. 1 40 シャクガ科の一種2 Geometridae sp. 1 41 シャクガ科の一種3 Geometridae sp. 1 42 シャクガ科の一種4 Geometridae sp. 1 43 シャクガ科の一種5 Geometridae sp. 1 44 スズメガ科 ホシホウジャク Macroglossum pyrrhosticta 2 45 ハエ目 ミズアブ科 コウカアブ Ptecticus tenebrifer 1 46 アブ科 ヤマトアブ Tabanus rufidens 3 1 47 ハナアブ科 ホソヒラタアブ Episyrphus balteatus 2 2 48 オオハナアブ Phytomia zonata 5 5 49 ヒラタアブ亜科の一種 Syrphinae sp. 1 50 ニクバエ科 ニクバエ科の一種 Sarcophagidae sp. 3 51 イエバエ科 イエバエ科の一種 Muscidae sp. 3 52 ― ハエ目の一種 Diptera sp. 1

53 コウチュウ目 オサムシ科 マイマイカブリ Damaster blaptoides blaptoides 2 5

54 ハンミョウ科 ハンミョウ Cicindela japonica 4 5

55 センチコガネ科 オオセンチコガネ Phelotrupes auratus auratus 1

56 クワガタムシ科 コクワガタ Dorcus rectus rectus 1

57 コガネムシ科 マメコガネ Popillia japonica 7 6 58 テントウムシ科 ナナホシテントウ Coccinella septempunctata 2 1 59 カミキリムシ科 ゴマダラカミキリ Anoplophora malasiaca 1 60 ハチ目 ミフシハバチ科 ルリチュウレンジバチ Arge similis 1 1 61 アリ科 ムネアカオオアリ Camponotus obscuripes 5 6 62 アリ科 クロヤマアリ Formica japonica 6 7

63 ミツバチ科 トラマルハナバチ Bombus diversus diversus 3 4

64 ― ハチ目の一種 Hymenoptera sp. 1 65 バッタ目 カマドウマ科 カマドウマ科の一種 Rhaphidophoridae sp. 1 56 37 169 102 ※環境省レッドリスト及び鹿児島県レッドデータブックに記載された種は確認できなかった。 種 数 個体数 合計種数:65     合計個体数:271 確認ルートと確認個体数 No. 目名 科名 和名 学名

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確認種数はルートA 及びルート B 合わせて 65 種(それぞれ 56 種及び 37 種)、確認個体 数は271 個体(同じく 169 個体及び 102 個体)であった。 ルート A では、全域でウスバキトンボが多く確認された。林道のカーブにある開けた草 地にはバッタ目、セセリチョウ科などが多く見られ、林道沿いの木の陰ではシャクガ科が確 認された。チョウ類は林道を飛行しているのが確認された。 ルート B では、登山口周辺にマメコガネ、オオハナアブ、ツマグロヒョウモン、トラマ ルハナバチなどが見られるが、御岳までの登山道には昆虫類は少なく、標高が低い程チョウ 目、ハエ目が多かった。御岳山頂ではマイマイカブリやハンミョウ、ウスバキトンボが多く 確認された。御岳山頂から妻岳に至る登山道でも昆虫類は少なく、シャクガ科やハエ目が主 な確認種であった。

3.保存林の評価及び必要措置の企画提案

3.1 保存林の評価 (1)植物相について 分布の南限とされている高隈山系のブナであるが、大箆柄岳のブナは胸高直径や樹冠半径 の割に樹高が特異的に低かった。こうした垂直方向と水平方向の成長のトレードオフ関係が 変化した原因として、高木性樹種の優占度が低かったことが間接的に関連していると考えら れている(石井、基礎調査報告書:植-16 参照)。さらに石井は、高隈ブナは更新不良の状 態にあり、本地域のブナ林は他の高木生樹種やスズタケと低木種の群落に変化する可能性が 示唆されるとしている。また、板谷(同:植-17~19 参照)の研究では、大箆柄岳及び平岳 のプロットとも標高とブナ個体の増減に関係は見られないが、平岳については 1966~81 年 に行われた皆伐が中標高でのブナの分布範囲を狭くした可能性があるとしている。本地域の ブナは後継樹がほとんど見られず、保存林の周辺には 50 年生以下の森林が多い。温暖化に より低標高域の常緑広葉樹が高標高域へ移動してくることも考えられ、今後ブナの分布域が さらに減少する可能性がある。 希少種については、タカクマホトトギス【環境省 RL:NT(準絶滅危惧)、鹿児島県 RDB: 絶滅危惧Ⅱ類】やホソバシュロソウ【鹿児島県 RDB:絶滅危惧Ⅰ類】、シコクママコナ【鹿 児島県 RDB:絶滅危惧Ⅱ類】などが、林道や登山道沿いで多く確認された。高隈山に生育す るとされているタシロノガリヤス【環境省 RL:EN(絶滅危惧ⅠB 類)、鹿児島県 RDB:絶滅 危惧Ⅰ類】については、今回確認されなかった。タシロノガリヤスは主に標高 1200m以上 のブナ帯、山腹の陰地岩上に生育するとされ(館山、1985)、それより低い標高で行われて いる治山事業による影響は少ないと思われる。 崩落後に治山事業を施工された箇所では、航空実播や吹き付け由来と思われる外来のイネ 科草本が広く地表を覆い、浸食防止機能を果たしていると思われる。ヤブツバキやヒサカキ

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イノシシの堀跡等は多少見られたが、森林への被害は特に見られなかった。また、保存林 内でのシカの目撃情報(少数)はあったが、食害や糞等痕跡は見られず、保存林及びその周 辺への侵入は少ないと思われる。しかし今後増加が懸念されることから、注視する必要があ る。 ・鳥類相 定点観察、ラインセンサス及び自動撮影調査により 17 科 26 種が確認された。 希少種としてはコシジロヤマドリ【環境省 RL:NT(準絶滅危惧)、鹿児島県 RDB:準絶滅 危惧】が目視観察、自動撮影調査により確認された。コシジロヤマドリは山地の下生えの多 い広葉樹林を好むが、スギ・ヒノキの密林、かん木叢林、雑木林などにも生息、樹木の伐採 が進行しているところでは比較的開けた所でもみられるようになっている(鹿児島県 RDB)。 鹿児島県での生息数等の詳細は不明であるが、現在のところは顕著な減少傾向は認められて いない。 また、特定外来生物に指定されているソウシチョウが秋期に多く確認された。越冬期には 秋期より確認数が減少しており、低地へ移動したと思われる。ソウシチョウは九州で広く分 布しており、在来鳥類(ウグイス等)への生息空間競合が懸念される。 ・昆虫類相 ラインセンサスにより 31 科 65 種が確認された。 今回確認されたものはごく普通種で、季節的な関係もあり、希少種は確認できなかった。 異常に増殖している種もなく、昆虫による森林への害も見られなかった。 現地調査内容及び総括整理表を表 3.1-1 に示す。

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表 3.1-1 現 地調査内 容及び総 括整理表 ①  現地調査 内容 調査箇 所: (本文 図参照) [ 選定理由 ]落葉 広葉樹林、 常緑 広葉樹林、 治山事 業施工 箇所の状況を 把握す る上で 適切な 箇 所で あ り 、 かつ ア ク セ ス が容易で ある。 9月 16日 ~ 29日 、 1回 毎木調査 、 植生調 査 、 定点写真( 林内) 、 更新状況調査 方形プ ロットを 設置 9月24~ 28日 及び 12月10~12日 、 各1 回 植物相調査 希少種調査 ライ ンセン サ ス 森 林調査 調査項目 保存林 基礎調 査 保護 林 の 概況 調査箇所[ 選定理由] ・ルー ト ( 所要時 間) [哺乳 類調査] 生息し て い そ う な 種が得 ら れて いるので 良い。 シ カ が気にな る ので シ カ を 狙っ た 調査の実施や、 目撃情報収 集に努 め る。 [鳥 類 調査] 、 [ 昆虫類調 査 ] タ ー ゲ ッ トと な る 種が 得ら れれば、 それに適し た 調 査 手法があるし 、 精 度 も 上がる。 動物調査 森林調査 動物調 査 調査箇所: ( 本文図参照) [ 選定理由] 植生の違いに対応し た動物相 を 把握 す る こ と がで き、 登山道 や 林道を ライ ンセ ンサ ス のルー トと し て 利用で きる。 当該保 存林は、 標高約1 0 00 m 以 上の範囲に南限のブ ナを 含む 冷温帯 性の落葉広葉樹 林が、 そ れ 以下に暖 温帯性 の常緑広葉樹林 が分布 し て いる。 ま た、 台風の常襲地で あり 、 斜面崩 壊等 の 災害が頻発し て い る た め 、 治山施業 の適切な 実施 が課 題と な っ て い る 。 9月 19 ~ 12月 12 日 、 随時 9月 23~24 日及び 12月10~ 11日、 各1 回 9月 24 日 、 1回 哺乳類調査 [哺乳 類調査] 常緑広葉樹林 の林分で 最 も 多く の哺乳類を 確 認し た 。 確 認種 は キ ュ ウ シ ュ ウ ノ ウ サ ギ 、ホ ン ド テ ン 、ホ ン ド タ ヌキ 、ニ ホ ン イノ シ シ 、イ ヌで あ っ た 。 また、 シ カ の目撃情報が得ら れた 。 森林 への被害等は特に見ら れな かっ た。 [鳥 類 調査] 希少種で ある コ シ ジ ロ ヤ マ ド リ や 、 特定外来 生物 で あ るソ ウシ チ ョ ウ が確認さ れた。 [昆虫 類調査] 希少 種や固有種は今回は 確認さ れ な かっ た。 鳥類調 査 昆虫類 調査 ライ ンセンサス 自動 撮影、 直接観察/ 痕跡調査 は、 複数 のピー ク を 有 す る 高隈山系 高標高域( 標高6 0 0 m 以上 )に 位置 し 、 大半を 天然生林が占め 、 一部が育成天 然 であ る 。 標 高 1000m 以 上 に は冷温帯落 葉広 みら れ、 ブ ナ 等の分布南限地と な っ て ブ ナ の 更新失敗等による植生の変 化 れて いる。 低 標高域で はシ イ ・ カ シ 類を し た 常緑広葉 樹林 が広 い 面 積を 覆っ て い 一方、 台風 の 常襲地で あ る こ と から 斜面崩 発し 、 谷止工や航空実播 と い っ た 治 山 れて い る 。 シ ロノ ガリ ヤ ス の基礎情報を 収集す る。 関係資料を 報告書に記載す る。 保存林 の低標高域にはス ダ ジ イ やタ ブ ノ キ 、 ヤ ブ ツ バキ な ど 常緑 広葉樹 が広く 分布し 、 1 00 0 m 前後の比較 的高標高域には、 ブ ナ や ナツツバ キ な ど の落葉広葉樹が 、 イ ヌ ガ シ 、 ア セ ビな ど の常緑広葉 樹と 混生す る。 大箆柄岳や 御岳山頂付近で は、 リ ョ ウ ブ やマ ン サク な ど の 低木林が見ら れ、 大箆柄岳~ 小箆柄岳の稜線 沿いには2 m 弱のス ズ タ ケ が密生し 林 床 に実生や草本種は あまり 見 ら れ な い。 横岳~ 平岳や御岳北東 尾根で はオ オ マ ル バノテ ンニ ン ソ ウが林床 に群落を 形成し 当保存林 を 縦断 す る 九州自然歩道で は、 タ カ ク マ ホ トトギス や シ コ クマ マ コ ナ、 タ カ クマ ヒ キ オ コ シ 、 ス ズ コ ウ ジ ュ な ど が多く 見 ら れる。 ま たと こ ろ ど こ ろに 崖 崩れが目立ち、 白い山肌を 見せて いる。 ブ ナ 林が残っ て い るのがこ こ の一番重要な と こ ろ。 見たと こ ろ ブ ナ と し て ま だ 高齢にな っ て いな いので はな い か 。 5 年に1 回更新さ れる 空中写 真を 用 い て 、 板谷氏の調査 (基礎 調査報告書資料 編: 植 -1 7 ~1 9) を 継続し て い く と 、 と り あ え ず 全域の ブ ナ の上物 の動態が 分かっ て 良い。 基本的に良い状態で 残っ て い る林のよ うな ので 、 そ れの変 化が起きそ う な と こ ろ にねら い を 付 け て 、 モ ニ タ リ ン グ を し て いく のが効率 的。 調査方 法 調査時期 ( 平成2 2 年度) 、 回数 調査項目

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3.2 必要な措置 ブナの分布域減少に注視し、現況のまま経過観察を行う。ブナ林がほかの高木性樹種等の 群落へ移行する可能性を考慮し、長期的な調査を行う。また、今回の調査でナラ枯れは認め られなかったが、現在全国でナラ枯れによる深刻な被害が見られるため、今後、ナラ枯れの 侵入に注意を払う。 平成 19 年に鹿児島県が策定した「特定鳥獣(ニホンジカ)保護管理計画」では、当地域 にシカは分布していないとされている。しかし今回、保存林内でシカの目撃情報が得られた ことから、森林事務所職員からの報告システムの構築や、登山客からの目撃情報収集等を行 い、今後のシカの動向に注意を払う。 3.3 今後の調査計画(案) 保護林モニタリング調査として、5 年毎に調査を行う。 (1)森林調査 今回実施した調査箇所と同じ地点で毎木調査(治山事業施工箇所は実施しない)、植生調 査、定点撮影(林内)、更新状況調査を行う。調査は仕様書別紙 2 に示された手法のほか、 マニュアルに基づき行う。樹冠投影図、群落断面図については、今回作製したものに変化が あれば修正を加える。また、必要に応じて、ブナの分布調査を現地調査あるいは空中写真判 読により行う(板谷(基礎調査報告書:植-17~19)の調査を継続して行うと良い)。調査は 夏期から秋期に 1 回行う。 (2)植物相調査 今回実施したラインセンサスルートを用いて、マニュアルに基づき植物相調査、希少種調 査を行う。希少種については、環境省 RL 及び鹿児島県 RDB に記載されている種を基本とす るが、記載種すべてを網羅するのは困難であるため、過去に確認記録があるが今回は確認で きなかった種に重点を置き、調査を行う。調査は春期、夏期、秋期の 3 回行うことが望まし い。 (3)哺乳類調査 「撹乱を受けていない落葉広葉樹林」、「撹乱を受けていない常緑広葉樹林」及び「治山事 業施工箇所」の 3 区分に設置した森林調査プロット周辺で各 1 箇所(計 3 箇所)、自動撮影 調査を行う。「治山事業施工箇所」においては、シカがエサ場として利用する可能性がある ため、シカに重点を置いて調査箇所を選定する。設置期間は春期~冬期の間で 3 ヶ月程度と する。 また、保存林内で直接観察/痕跡調査を実施する。森林調査時等に確認した痕跡等につい て、マニュアルに基づき記録する。 (4)鳥類調査 今回実施したラインセンサスルートを用いて、マニュアルに基づきラインセンサス及び定 点観察調査を行う。その際、現在九州に広く分布するソウシチョウ【特定外来生物】の個体 数の増減に注意を払う。調査は繁殖期(5~6 月)及び越冬期(11~2 月)に各 1 回行う。

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(5)昆虫類調査 昆虫類調査は必要に応じて行うこととする。調査方法は、今回実施したラインセンサスル ートを用いて、マニュアルに基づき調査を行う、あるいは希少種等特定の種に着目して、調 査を行う。原則として直接観察法により確認種を記録、必要に応じてスウィーピング法、ビ ーティング法等捕獲的な手法を実施するが、捕殺は行わず確認後に放虫する。特定種をター ゲットとする場合は、種ごとの生息環境の特殊性等から、当該種の専門家や研究者の協力を 得ながら当該昆虫の個体数や生息環境の変化が把握できるような調査手法を個別に検討す る。調査は春期~冬期(特定種の成虫期を考慮して調整)に 1 回行う。 現地調査項目・方法(案)の概要を表 3.3-1 に示す。

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表 3.3-1 現地調査項目・方法(案)の概要 区分 調査地点 調査プロット 細項目 目的 調査方法 調査時期 備考 毎木調査 樹種構成・林分構造を 量的に把握 ・胸高直径(DBH)測定(DBH5cm以上対象、ナンバー テープ付す) ・樹高測定 植生調査 群落としての構成や植 被率を把握 ・プロット内で階層別の植被率・全ての種名、優占度を 記録 定点写真撮影森林の概況の経時的変 化を把握 ・調査プロットの中心直上1.5m高で、プロットの各頂点と 天頂方向各1枚の写真を撮影 樹冠投影図 森林の空間構造を把握 ・今回作図したものに変化があれば修正を加える 群落断面図 森林の空間構造を把握 ・今回作図したものに変化があれば修正を加える 植生調査 群落としての構成や植 被率を把握 ・プロット内で階層別の植被率、全ての種名、優占度を 記録 定点写真撮影植生の概況の経時的変 化を把握 ・各コドラート全体の様子がわかる写真1枚ずつと、施 工箇所の遠景写真1枚 更新状況調査樹木の実生・稚樹の定 着状況を把握 ・DBH5cm未満の樹木個体を対象(萌芽を除く) 1. 胸高以上の個体:樹種、DBH測定 2. 胸高未満、樹高50cm以上の個体:樹種、樹高測定 3. 樹高50cm未満の個体:樹種、個体数を記録 (1, 2の対象個体にはナンバーテープ付す) -・御岳ルート ・峰越ルート ・垂水ルート ・ラインセンサス 植物相調査 希少種を含めた植物相 の把握 ・登山道・林道をルートとして踏査し、ルート周辺に出現 した植物種を記録する。希少種については、確認位置 の座標をGPSにより確認し、株数を記録する。 春期、夏期、秋期 に各1回 ・過去に確認記録があり、今回確認できなかった種に重点を置 き、希少種調査を行う。 - - ・垂直分布が把握 できるよう設定 ブナの 分布調査 分布南限のブナの分布 域変化を追跡 ・調査区域を指定し、現地調査あるいは空中写真判読 により行う [現地調査]ブナ(稚樹を含む)の確認位置(GPSによ る)、DBH、樹高、樹形を記録 夏期~秋期に1回 ・必要に応じて行う。 ・板谷(基礎調査報告書:植-17~19)の調査を継続して行うと良 い。 - ・自動撮影装置設置・ラインセンサス 哺乳類調査 哺乳類相の把握 ・自動撮影調査:森林調査の3区分に設置した森林調 査プロット周辺に各1箇所(計3箇所)自動撮影装置を一 昼夜設置 ・直接観察/痕跡調査:登山道・林道をラインセンサス ルートとして利用し、確認種・観察個体数・痕跡を記録 春期~冬期の間で 3ヶ月程度 ・自動撮影調査:治山事業施工箇所に設置する際、シカがエサ 場として利用することを考慮し、設置箇所を選定する。 ・ラインセンサス ・定点観察 鳥類調査 鳥類相の把握 ・登山道・林道をラインセンサスルートとして利用し、そ の両端に定点を設定。一定時間調査し確認種を記録 繁殖期(5~6月)及び 越冬期(11~2月)に 各1回 ・ルートB(御岳登山道)を植物相調査ルートで使用した垂水ルー トに振り替えても良い。 ・ソウシチョウ【特定外来生物】の個体数の増減に注意する。 ・ラインセンサスなど 昆虫類調査 昆虫相の把握 (特に希少種の生息状 況) ・登山道・林道をラインセンサスルートとして利用し、原 則として直接観察法により確認種を記録。必要に応じ てスウィーピング法、ビーティング法等捕獲的な手法で 補うが、基本的に捕殺は行わず、種を確認後に放虫す る。 ・特定の種をターゲットとする場合は、種にあった調査 時期、調査手法を検討する。 春期~秋期に1回 (希少種の成虫期を 考慮し微調整) ・必要に応じて行う。 ・ルートB(御岳登山道)を植物相調査ルートで使用した垂水ルー トに振り替えても良い。 ・具体的な調査日時を調整する際には、希少種として生息が報 告されている下記の種について考慮する。 (トンボ類)アオハダトンボ、ムカシトンボ、ムカシヤンマ、ヒメクロ サナエ、アオサナエ、トゲオトンボ、ミナミヤンマ (甲虫類)オニクワガタ、オオチャイロハナムグリ、ホソカミキリ、 セダカコブヤハズカミキリ (チョウ類)キリシマミドリシジミ、コツバメ、スギタニルリシジミ ※ :マニュアルからの変更点 No.01~03 項目 森林調査 動物調査 撹乱を 受けていない 常緑広葉樹林 No.04~11 ・ルートA ・ルートB -治山事業 施工箇所 No.12~17 撹乱を 受けていない 落葉広葉樹林 ・地形が急峻・不安定等のために20m四方のプロット設置が困難 である場合には、20m四方にこだわらずおよそ0.04haの範囲で植 生調査を実施。コドラートは相当の間隔を空けてプロット内に設 置。 ・胸高以上の樹木がほとんど存在しないため、毎木調査を省略 する。 ・森林の再生過程を追跡するため、樹木種の更新状況の把握を 目的として、更新状況調査を継続する。 夏期~秋期に1回 ・林況の将来的な変化予測に資するため、ブナ及び常緑広葉樹 種の更新状況の把握及び追跡を目的として、更新状況調査を継 続する。 ・地形が急峻等のためにコドラート設置が困難な場合には、相当 の間隔を空けて設置。 ・方形プロット  (20m四方、0.04ha) ・コドラート  (2m四方×4か所) 更新状況調査 樹木の実生・稚樹の定 着状況を把握 ・プロットの4角に、2m四方(4m2)のコドラートを設置 DBH5cm未満の樹木個体を対象に(萌芽を除く) 1. 胸高以上の個体:樹種、DBH測定 2. 胸高未満、樹高50cm以上の個体:樹種、樹高測定 3. 樹高50cm未満の個体:樹種、個体数を記録 (1, 2の対象個体にはナンバーテープ付す) 夏期~秋期に1回 ・方形プロット  (20m四方、0.04ha) ・コドラート  (2m四方×4か所)

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4.評価委員会

4.1 議事 <日時>平成 23 年 1 月 28 日午後 1 時 30 分~3 時 30 分 <場所>九州森林管理局2階第一会議室 <議事> (1)業務内容について (2)調査結果について(質問、意見等) (3)当保護林の現況に関する考察(質問、意見等) (4)保護林の機能に関する評価(質問、意見等) (5)必要な措置及び今後必要な調査項目等(質問、意見等) <出席者> ●評価委員 (五十音順、敬称略) 浅野 志穂 (独)森林総合研究所九州支所 山地防災研究グループ長 野宮 治人 (独)森林総合研究所九州支所 森林生態系研究グループ ※堀田委員は当日ご欠席 ●林野庁 九州森林管理局 石神 智生 計画部 指導普及課長 岸川 正博 計画部 指導普及課 企画官 茂野 潤 計画部 指導普及課 保護林係長 廣石 功 計画部 計画課 森林施業調整官 松本 輝生 計画部 計画課 経営計画第三係長 本村 明広 計画部 計画課 経営計画第六係長 井野 常雄 森林整備部 治山課 治山技術専門官 ●事務局 株式会社 一成

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4.2 議事概要 (1/3) 番 号 発言者 意 見 回 答 委員対応 森林管理局対応 (株)一成対応 1 石神 (九州局) シカの確認場所、雌雄、個体数はわかるか。 一成:場所は峰越林道の治山工事施工箇所付近、性別は不明、個体数は分 からないが多くはない。 2 野宮委員 シカを目撃した時期はいつか。高隈はシカはいないエリアになっているはず であるが。 一成:12月の時点で3ヶ月程前とのこと。 3 茂野 (九州局) 全くいないのか、少ししかいないのか。何かに分断されていて移動してこれな いのか。 野宮委員:全くいない。鹿児島県の特定鳥獣管理計画でも記録されていな い。南は佐多、北は霧島に生息するが、田舎なので移動はしてこれると思う。 しかし佐多からにしても霧島からにしても遠いのでどこから来たのかはわから ない。 4 本村 (九州局) ナラ枯れに注意を払うとあるが、実際に調査でナラ枯れを確認したのか。 一成:確認はしていない。ナラ枯れの侵入に注意するということである。 5 茂野 (九州局) 九州ではマテバシイなどのナラ枯れは見られるが、ミズナラのナラ枯れはな いのか。 野宮委員:あまり聞かない。森林総研の後藤が専門である。 6 野宮委員 高隈山の100年前の森林はどういうものを想像したら良いのか。今と全く同じ 森林と考えて良いのか。林齢は。 一成:林齢は174年生が多い。他は、164年生、93年生など。 7 野宮委員 既存資料(基礎調査報告書資料編:植-18)について、低標高でブナの密度 が減少しているとあるが、880m付近が低標高というのか。 低標高と言いながら、高標高のエリアの中の低標高なのかと思う。 一成:そうだと思う。 8 野宮委員 既存資料(基礎調査報告書資料編:植-18)について、保存林内でブナが減っ たかどうかはわからないのか。 一成:資料の調査は保存林内で行われており、保存林内のブナが減ったと解 釈している。 9 野宮委員 委員会資料ではブナ分布域が減っていると言うことであるが、論文要旨では 本数が増えているという風に読める。ブナが定着した時期が遅いのではない か。昔の空中写真はあるのか。 一成:空中写真は2001~2002年に撮影されたものがある。 10 野宮委員 昨年の高隈山のブナは元気が良いと思ったが、振り返ってみるとまだ若かっ たような気がする。ブナとして高齢になっていないのではないか。そう言うこと が分かるように、昔の状況を抑えてあると良い。山頂の付近だけでも空中写 真を少し遡って調べてみては。地元の郷土史などにも写真が残っているかも 知れない。それで林齢が推察できれば良い。 局:ある程度遡ることはできると思う。 11 野宮委員 航空実播で蒔いた種は何か。蒔いた時期、場所、種の一覧表があれば資料 に一緒に綴じていると良い。別口で調査があるのであれば、その報告書名、 あるいは要約を載せる。 局:平成20年度に策定された方針では侵略的な外来種は蒔かないようにし ている。 一成:平成18年度にはトールフェスク、クリーピングレッドフェスク、オーチャー ドグラス、バミューダグラス、ホワイトクローバーが蒔かれている。 報告書への治山事業関係資料名の 記載。 12 野宮委員 自動撮影で使用したカメラの機種は何か。機種名を記載しておくと性能や精 度が類推できるので良い。 一成:了解 報告書への自動撮影カメラの機種 の記載。 13 茂野 (九州局) カメラの機種はそろえておいた方が良いか。 野宮委員:そういうわけではない。 14 野宮委員 アクセス経路図はないのか。次回の調査時に必要である。経路図がないの であれば、林道沿いの調査地は林道の上か下かを記載する。 局:経路図は昨年度の基礎調査で作成している。 報告書へのアクセス経路図の記 載。 15 野宮委員 昆虫調査について、ターゲットとなる昆虫があれば、その動態がわかる時期 に調査をすると効率が良い。昆虫類を網羅する目的で調査したのであれば、 中途半端で心許ない。1回目は良いが、2回目以降これを続けるのはどうか。 ターゲットがあれば、それに合った調査法を用いるのが効率が良い。 局:平成9年に策定された計画では高隈山の要保護種としてヤマイトトンボ科 が記載されている。これを使うのも手ではないかと思う。チョウ類ではジャノメ チョウ、サカハチチョウも記載がある。 16 野宮委員 イトトンボは小川のあたりを指標するので良いと思う。鳥類もそうだが、ター ゲットを絞った方が良いのではないか。ソウシチョウとそれに拮抗するウグイ ス等への影響など。また、シカが増えるとスズタケがなくなり、ヤブを使う種に 影響するのでそれも指標となる。 局,一成:了解 ターゲット、調査法の検討。 シカに注視する。

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(2/3) 番 号 発言者 意 見 回 答 委員対応 森林管理局対応 (株)一成対応 17 野宮委員 シカが気になる。被害とまでは行かないが、自動撮影カメラを治山事業施工 箇所などエサ場となる所に設置する、あるいはそこの食痕の調査をする等す ると、痕跡を捕まえやすい。 局,一成:了解 調査地、調査法の検討。 18 浅野委員 モニタリングについては、何を対象とするか、何を中心に据えるかということ で、調査のどこに力を入れるかが変わってくると思う。 調査した箇所については、この保護林を代表するところだという根拠が欲し い。モニタリングして変化があった場合、それをどう評価するか。ある程度指 標というものがあればそれを抑えておくのが良い。 局,一成:了解 19 浅野委員 鳥類調査の評価で「減少傾向は見られないとされ」と書かれているが、1回目 の調査で減少傾向が見られないというのは、何を根拠にしたのか。 一成:鹿児島県RDBに記載されているものの引用である。 20 石神 (九州局) 「保護林の現状を維持すれば生息に問題はないと思われる」というのも鹿児 島県RDBに書いてあったのか。 一成:それはこちらで書いたものである。調査でも確認できたので、今のとこ ろ特に問題はないと判断した。 書きぶりを見直す。 21 茂野 (九州局) 植物相の調査ルートについては、代表的な植物相のルートか。 一成:林道沿い、御岳を含む登山道沿い、大箆柄を含む登山道沿いである。 22 茂野 (九州局) 堀田委員の資料とどうにか比較することはできないか。 野宮委員:調査努力が全然違うので、難しいと思う。 23 野宮委員 植物リストに記載されているのは森林調査プロットに出現した種のみか。 一成:森林調査及び植物相調査で出現した種である。 24 野宮委員 植物相調査は歩きながら確認種をリストアップする方法か。 一成:そうである。 25 本村 (九州局) 資料編の植物リストは左側の列が今回確認されたもの、右側の列が基礎的 な資料、堀田委員等のリストか。 一成:そうである。右側は堀田委員が標本を調べてリストにしたものである。 26 本村 (九州局) H9計画で出ている高隈の動植物種との比較は作ってはいないのか。それを 作るべきではないか。 一成:作っていない。 リストにH9計画の記載種を加える。 27 茂野 (九州局) 調査ルートを増やしていくのが良いと思うが。 野宮委員:モニタリングの場合は、増やしても良いが、同じところで調査する ことを優先させた方が良い。全域のフロラ、ファウナの調査は難しいと思う。ブ ナ林が残っているのがここの一番重要なところ。空中写真は5年に1回撮られ るので、文献調査で挙がっている板谷氏の調査を継続していくようなやり方 で、仕事が1個あれば、とりあえず全域のブナの上物の動態が分かって良いと 思う。今後のために、ブナの位置が抑えてあったら良い。 28 浅野委員 治山工事に係る方針として、特に重点的に遺伝資源の保全を図る必要のあ る種としてイネ科ではタシロノガリヤスがあるが、今回の調査では確認できた のか。 一成:今回は確認されなかった。 29 茂野 (九州局) 治山課の方で何か情報はないか。基礎的な情報も不足しているのか。 局:森林総研から頂いた回答の中ではタシロノガリヤスの記載がある。 一成:堀田委員のリストの中にもあるので、保存林内かは分からないが高隈 山系で確認されているのだと思う。 野宮委員:本来ならばタシロノガリヤスのような種が生育するところに航空実 播で播種したものが入り、負けてしまっているという可能性はある。 タシロノガリヤスの基礎情報の収 集。 30 浅野委員 自動撮影カメラはどのくらいの期間仕掛けているのか。 一成:9~12月の約3ヶ月である。 31 野宮委員 自動撮影カメラは何箇所何台か。 一成:落葉広葉樹林、常緑広葉樹林、治山事業施工箇所の3箇所に各1台で

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(3/3) 番 号 発言者 意 見 回 答 委員対応 森林管理局対応 (株)一成対応 33 茂野 (九州局) 自動撮影カメラの設置箇所数としては今回は3箇所であったが、なるべく把握 するために数を増やすと言うのはどうか。失敗はカバーできると思う。 野宮委員:3箇所は圧倒的に足りない。足りない中でもこれだけの種類が確 認できたことを評価する。増やすのも何を撮るかによる。トラブルがなかった のであれは上手くいっているのではないか。基本的に良い状態で残っている 林のような気がするので、その変化が起きそうなところにねらいを付けてモニ タリングをしていくのが効率的と思う。 34 野宮委員 ここは森林官は巡視しているのか。台風が通った後などは林道を全部チェッ クしているのか。 局:林道沿いは少なくとも車で通ることはあると思うが、基本的に人工林が少 ない地域なので業務で通るということは少ないと思う。台風後はチェックする。 35 野宮委員 森林官がシカを見たら上に報告を上げるというシステムはあるのか。 局:そういう体制はないかも知れない。 36 野宮委員 巡視時にシカを確認すれば報告をする、あるいは登山者が気付いたこと(目 撃情報、結実情報等)を報告してもらうという道があれば早めに抑えられるの で良い。 局:了解 37 浅野委員 調査項目(案)は、昨年度提案された内容と同じか。 一成:同じである。 38 野宮委員 植生調査表に優占度の記載はあるが、個体のサイズ(胸高直径等)は別に 記録してあり、資料に納めるのか。 一成:毎木調査表に記載してあり、報告書に添付する。 39 石神 (九州局) 想定は胸高直径5cm以上のものか。 一成:そうである。5cm未満の個体については、小コドラートで実生の調査を 行っている。 40 浅野委員 調査プロットは次回調査時に分かるような目印を付けてあるのか。 一成:4角に杭を打ち付けている。 41 廣石 (九州局) 必要な措置について、「ブナの分布域減少を防ぐために保存林周辺の人工 林の皆伐を行わず」とあるが、皆伐をするとブナの分布域が減少するという結 果がどこかに出ているのか。 一成:既存調査資料(基礎調査報告書資料編:植-18)でそのように記載され ている。 42 本村 (九州局) 保護林設定要領の取り扱い方針で、「保存林内を含めて、保存林の隣接箇 所については原則的に皆伐は行わない」ことになっている。この書きぶりでは あたかも皆伐を行うように読み取れる。書きぶりの変更を。 一成:了解 書きぶりの見直し。 43 廣石 (九州局) 保護林のネットワークや拡充の関係が取り沙汰されているが、高隈山のまわ りの林相状態はどのようなものだったか。気になったことがあれば、今後調査 を考えなければいけない。 一成:了解 44 廣石 (九州局) 図面について、見にくいところがある。少し工夫を。 一成:了解 図面の修正。 45 茂野 (九州局) 欠席された堀田委員にはまたご意見を聴取し、報告書に反映したいと思う。 一成:了解 堀田委員へヒアリングを行う。

図 2.3-1  自動撮影装置設置位置図  表 2.3-1 自動撮影装置確認種一覧  鳥類 カラス カケス ○ キジ コシジロヤマドリ ○ ハト キジバト ○ ツグミ トラツグミ ○ ツグミ科の一種 ○ チメドリ ソウシチョウ ○ シジュウカラ ヤマガラ ○ カラス ヒュウガカケス ○ 哺乳類 ウサギ キュウシュウノウサギ ○ ○ イタチ ホンドテン ○ ○ イヌ イヌ ○ ホンドタヌキ ○ ○ イノシシ ニホンイノシシ ○種名科目分類群撹乱を受けていない落葉広葉樹林 撹乱を受けていない常緑広葉樹林 治山事
表 2.4-1 収集文献・資料  No. 文献名 管理機関 1 鹿児島県の絶滅のおそれのある野生動植物 動物編 鹿児島県環境生活部環境保護課 2 高隈山森林生物遺伝資源保存林概要 九州森林管理局 3 高隈山県立自然公園 鹿児島県 4 高隈演習林の鳥類相 鹿児島大学農学部 5 H9高隈山森林生物遺伝資源保存林計画 九州森林管理局 2.4.2 調査結果  ラインセンサスルート位置図及び確認種一覧をそれぞれ図 2.4-1、表 2.4-2 に、また様式 -22~23、及び高隈山周辺の鳥類相リストを報告書資料編に示す
表 2.4-2 鳥類確認種一覧
表 2.5-1 昆虫類確認種リスト  ルートA (林道) ルートB (登山道) 1 トンボ目 オニヤンマ科 オニヤンマ Anotogaster sieboldii 1 2 トンボ科 ウスバキトンボ Pantala flavescens 31 15 3 カマキリ目 カマキリ科 チョウセンカマキリ Tenodera angustipennis 1 4 バッタ目 キリギリス科 クサキリ Ruspolia lineosa 1 5 コオロギ科 ツヅレサセコオロギ Velarifictorus mikado 5 3 6
+2

参照

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