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儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

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儒 教 文 化 を 基 盤 に し た

ソ ー シ ャ ル ワ ー ク の あ り 方 に 関 す る 研 究

││韓国・釜山市における高齢者福祉施設職員への

グループ・インタビューを通して││

空 閑 浩 人

はじめに

韓国における儒教文化とソーシャルワークの課題

1.韓国人の生活と儒教思想の影響 2.﹁孝﹂思想の影響と家族介護をめぐる状況 蠱

釜山市内高齢者福祉施設職員へのグループ・インタビューの実施

1.グループ・インタビューの概要 2.グループ・インタビュー結果の分析および考察の方法 蠶

グループ・インタビュー結果の分析と考察

1.施設入所に伴う利用者本人の気持ち

︵1︶施設入所という体験そのものに伴う気持ち

︵2︶家族に対しての気持ち

2.施設入所に対する家族の気持ち

︵1︶親への扶養意識との関係

︵2︶施設や施設入所に対する意識

― 31 ―

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3.入所後の気持ちの変化 4.職員によるかかわりや働きかけ

︵1︶利用者本人へのかかわり・働きかけ

︵2︶家族へのかかわり・働きかけ

蠹しーワルャシーソたに﹁盤基を﹂化文教儒ク 1.﹁親孝行﹂の捉えなおしと家族の介護負担の軽減 2.﹁家族とともにある幸福﹂のための支援 蠧

おわりに

はじめに

ソーシャルワークの理論や方法は︑二〇世紀の初めより欧米を中心に発展し︑日本のソーシャルワークも欧米の理論

や実践から多くを学んできている︒しかし︑ソーシャルワークの実践は︑その国で暮らす人々の現実の社会生活にかか

わる営みである︒それ故に︑その実践には︑当然のことながら人々の価値観や生活習慣︑人間関係のとり方など︑いわ

ゆるその国の﹁文化的特性﹂が大きな影響を与えることになる︒したがって︑欧米の文化のなかで発展してきたソーシ

ャルワークの理論や方法が︑そのまま日本や韓国などの東北アジア地域での実践に有効であるとはいいがたい︒ソーシ

ャルワークには︑それが行われる国の社会的な背景はもちろんのこと︑その国のソーシャルワークが対象とする人々と

その生活に見られる文化的な特性をも視野に入れた理論や実践のあり方を見出すことが必要である︒

筆者は︑二〇〇六年に韓国・釜山市内の高齢者福祉施設︵老人療養院︶を訪問する機会を与えられ︑それぞれの施設

ごとに︑利用者や家族との直接的なかかわりをもっている職員へのグループ・インタビューを行った︒インタビューの

目的は︑ソーシャルワーク実践に影響を与える文化的特性を抽出し︑社会福祉サービスの利用意識をはじめとして︑ 儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

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人々の価値観や生活習慣などがソーシャルワーク実践の展開にどのような影響を与えているのかを明らかにすることで

あった︒韓国では︑﹁韓国人の心情や行動様式には︑まぎれもなく﹃儒教的なもの﹄が根付いている︒︵中略︶韓国人の

生き方にとって︑儒教という﹃宗教﹄ほど影響力の大きな宗教はない﹂︵舘野2003:108 ︶と言われているように︑

人々の生活に儒教思想に基づく生活様式としての﹁儒教文化﹂が浸透しているといわれている︒そうであるならば︑こ

のような韓国人の社会的規範や行動様式としての儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方を構築していく必要

があると考えるのである︒

本稿では︑まず最初に︑韓国における儒教文化として︑とくに儒教思想の中心とされる﹁孝﹂の思想が︑親の扶養や

家族介護をめぐる今日の状況にどのような影響を与えているのかについて述べる︒その上で︑今回実施したインタビュ

ーを取り上げ︑その結果について分析・考察を行う︒高齢者福祉分野で働くソーシャルワーカーは︑日々の援助活動の

なかで高齢者や家族の様々な思いや感情に触れることになる︒韓国のソーシャルワーカーが︑高齢者やその家族とのか

かわりのなかで︑価値観や生活様式︑生き方など︑すなわち人々の﹁文化的特性﹂として︑何を感じ︑共有しているの

かを︑インタビュー結果を通して明らかにしたい︒さらにそれらをふまえて︑韓国における高齢者や家族へのソーシャ

ルワークとしてどのような目標を設定し︑対象への理解や働きかけのあり方が求められるのかについて考察を試みる︒

そして︑このことは︑程度の違いこそあれ儒教の影響を受けている日本での文化的特性を踏まえたソーシャルワーク

のあり方を考察する上でも有効であると考える︒

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儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

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韓国における儒教文化とソーシャルワークの課題

1.韓国人の生活と儒教思想の影響

韓国における儒教は︑三国時代に導入され︑朝鮮王朝時代には国教と規定され︑約五〇〇年間朝鮮王朝の統治の基本

として根ざし︑その影響は現代まで及んでいるとされる︵金貞任2003:2︶︒韓国と儒教との関係について︑朴倍暎

は︑﹁長い間︑韓国の基本宗教は儒教だった︒今日に至り︑そうした状況はずいぶん変わってきたが︑しかし︑韓国人

を理解するに当たって︑その一つの材料として儒教を挙げることに躊躇はない﹂︵朴2006:28︶と述べている︒また︑

舘野晢によれば︑﹁韓国を理解するためのキーワードの一つに儒教倫理がある︒これは韓国人が意識するしないに関わ

りなく身につけており︑一種の道徳や社会的規範になっている︒︵中略︶同じ北東アジア圏に属する儒教国家のなか

で︑韓国は中国や日本よりも儒教の教えに忠実に従ってきた﹂︵舘野2003:49︶とされている︒

このように︑東アジアで広まった﹁儒教思想﹂は︑特に韓国の人々の生活習慣や価値観︑行動様式などに強い影響を

与えており︑それは確かに時代の変化のなかで薄れつつあるとはいえ︑現在でも韓国の人々とその生活を理解するため

には欠かせない要素であるといえる︒また︑儒教の本質は︑仁・義・礼・智・信であるが︑孔子思想の核心は﹁仁﹂︑

つまり孝行であり︑孝行の思想は韓国の伝統的な道徳思想として確立されてきたとされている︵金貞任2003:2︶︒こ

の﹁孝﹂の思想について︑儒教研究者の加地伸行は︑それが儒教の根核であるとして︑次のように述べている︒

孝とは︑生命の連続を自覚することである︒そこから親子の断ち切れない深い関わりが生じる︒儒教文化圏に

は︑仮に個人の自立はあっても︑個人の独立という思想はない︒個人ではなくて個体がある︒その個体は︑家族と 儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

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ともにある︒家族の中にある︒︵加地1994:193︶ このような孝の思想は︑﹁家族を︑もっとも重要な道徳倫理教育の場とみなした儒教思想﹂︵進藤2007:243 ︶の特徴

として︑親子の関係を中心とし︑家族を大切にして︑その幸福を重視する生き方につながる︒そして︑このような思想

は︑儒教倫理として老親の扶養や介護に影響を与え︑それを家族が担うべきという道徳や社会的規範となっている︒次

に︑韓国におけるこの﹁孝﹂思想が影響を与えている︑親の扶養や家族介護をめぐる状況について取り上げたい︒

2.﹁孝﹂思想の影響と家族介護をめぐる状況

かつて︑日本での介護保険制度の導入を巡っては︑﹁家族介護は日本の美風﹂とする政治家の発言が物議をかもした

ことがあったが︑これについて︑韓国と日本の家族介護に関する比較研究を行った金貞任は次のように述べている︒

韓国では親孝行することが﹁美風﹂であるという発言について非難の声を挙げる国民はいない︒韓国では日本と

は違い︑いまだ儒教意識が根強く残存しており︑子どもが親孝行することを当たり前とする社会的慣習があるから

である︒︵金貞任2003:80−81︶

今日︑韓国においても日本と同様に︑核家族化の進行で別々に暮らす家族が増えているといわれる︒しかし︑そのよう

な状況のなかでも︑親子関係や家族関係を重視する気持ちと家族間のつながりが強いのも確かであるといわれている︒

親孝行を当たり前とする家族意識が︑親の介護を全面的に家族が担うことにつながるという状況を考えたときに︑人口

の高齢化のなかで︑かつこのような核家族が増大するなかでは︑親の介護が家族にとっては身体的・精神的に大きな負

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儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

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担となることが予想される︒たとえば︑日本で進められている﹁介護の社会化﹂について︑金貞任によれば︑﹁韓国に おける介護の担い手は︑第一次的に家族であり︑介護の社会化にはほど遠い状態である﹂︵金貞任2003:100︶と指摘

されている︒しかし︑親の介護を家族のみが担うというのは︑高齢者や家族の安定した生活を維持していく上で限界が

あり︑それは︑日本と同様に社会的に担っていかなければならない課題であるといえる︒

このような﹁孝﹂の意識︑すなわち家族による親への扶養意識や家族介護をめぐる文化的状況が︑韓国における家族

介護や福祉サービスの利用などに大きな影響を与えると考えられる︒そしてそれは︑特に高齢者福祉分野でのソーシャ

ルワークにおいて︑決して無視できない文化的特性であるといえる︒このようなことから︑韓国の高齢者福祉分野にお

けるソーシャルワークの課題としては︑ただ単に介護サービスの利用を促すということではなく︑家族介護をめぐる高

齢者や家族の状況の理解と︑介護をめぐる家族の心理的負担や身体的負担を軽減する働きかけが必要であると考える︒

さらに家族を大切にし︑家族とつながっていたいという﹁儒教文化﹂に根ざした生活の価値観を尊重しつつ︑サービス

利用に伴う高齢者本人や家族それぞれの気持ちに寄り添い︑生活の安定を図っていくかかわりや援助のあり方が求めら

れるのである︒

以下では︑これらのことについて︑インタビューの結果からさらに考察を加えたい︒

釜山市内高齢者福祉施設職員へのグループ・インタビューの実施

1 .グループ・インタビューの概要

二〇〇六年八月に韓国・釜山市内の高齢者福祉施設︵老人療養院︶五施設の職員に対して︑グループ・インタビュー

を行った︒あらかじめ今回のインタビュー調査に関する説明と協力依頼の文書︵巻末︻資料1︼︑韓国語版は︻資料 儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

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表1 グループ・インタビューの実施日程および対象者 実施期間:2006年8月27日〜31日

対 象:釜山市内高齢者福祉施設[老人療養院]で勤務する職員

[直接的に利用者およびその家族とのかかわりをもっている職員]

インタビュアー:空閑 浩人

通 訳:孫 希叔[同志社大学大学院博士後期課程]

漓8月28日[月]14:00〜15:30 A老人療養院[A施設]の職員3名

回答者 1.男性:生活指導員・プログラム担当:3年4ヶ月 2.女性:入退所相談窓口担当[生活福祉課長]:4年5ヶ月 3.女性:生活指導員:4年5ヶ月

滷8月28日[月]16:20〜17:50 B老人療養院[B施設]の職員4名

回答者 4.女性:事務局長:障害者福祉施設からの転勤、本施設勤務は2年 5.女性:生活指導員:他施設で介護職3年、本施設では生活指導員とし

て1年

6.女性:ボランティア担当:[看護師からの転向]本施設で3年6ヶ月 7.女性:生活指導員:3年

澆8月29日[火]10:30〜12:00 C老人療養院[C施設]の職員4名

回答者 8.女性:在宅サービス・ショートステイ相談[課長]:8年

9.女性:入退所相談・ボランティア担当から現在は地域福祉担当[課 長]:6年

10.女性:ホームヘルパー派遣・在宅福祉相談窓口担当[課長]:社会福

祉館での5年の勤務を経て本施設で4年

11.女性:デイケア担当[課長]:4年

潺8月29日[水]15:00〜16:30 D老人療養院[C施設]の職員4名

回答者 12.女性:ボランティア・寄附担当[ケアも担当]:6年

13.女性:事務担当[対行政関連][ケアも担当]:6年

14.女性:ケア担当:15年[この施設では5年]

15.女性:ケア担当:9ヶ月

潸8月30日[木]15:00〜17:00 E老人療養院[E施設]の職員5名

回答者 16.男性:部長・法人総括業務と人事管理・ボランティア管理:6年[こ

の施設では4年]

17.女性:介護スタッフ・チーム長:5年

18.女性:介護スタッフ・生活管理業務:5年

19.女性:介護スタッフ・生活管理業務:5年[この施設では1年]

20.女性:生活相談員:5年

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儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

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2︼︶を︑事前に連絡・依頼して承諾を得た施設に送付し︑調査協力の同意が得られた施設に訪問して実施した︒な

お︑︻資料1︼の文書のなかでは︑調査の対象として﹁社会福祉士で︑現場経験が三年以上﹂とする条件を記したが︑

グループ・インタビューの対象として一定数の人数を確保したいということもあり︑一部条件を充たさない職員も含め

て︑可能な限り多くの職員に調査に協力してもらうようにした︒結果︑表1にあるように︑五施設計二〇名の職員によ

る協力を得ることができた︵表中の回答者については︑性別

名職 :

勤務年数を示している︶︒ :

また︑質問項目については︑調査者の手持ち資料として︻資料3︼を用意し︑インタビューの際には︑これを読み上

げるかたちで質問を行い︑回答者に自由に答えてもらう︵半構造化インタビュー︶ようにした︒

2.グループ・インタビュー結果の分析および考察の方法

録音したインタビューの内容全体についてテープ起こしを行い︑研究協力者および通訳の孫希叔氏︵同志社大学大学

院社会学研究科博士後期課程︶とともに確認し︑回答者の発言内容が不明な箇所等については︑可能な限り︑回答者に

直接電話で再度確認をとったのち︑内容を確定した︒

次にインタビュー結果の内容全体の分析から︑四つのカテゴリー︵1 .施設入所に伴う利用者本人の気持ち︑2 .施 設入所に対する家族の気持ち︑3.入所後の気持ちの変化︑4.職員によるかかわりや働きかけ︶を設定して︑個々の

発言を各カテゴリーごとに分類し︑考察を行った︒ 儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

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グループ・インタビュー結果の分析と考察

1.施設入所に伴う利用者本人の気持ち

まずはじめに︑利用者本人が施設入所に伴って︑どのような気持ちや思いを抱いているかについて取り上げたい︒職

員が利用者本人とのかかわりのなかで︑利用者のどのような気持ちや思いに触れているかを示した発言内容を︑﹁

盧施

設入所という体験そのものに伴う気持ち﹂︑﹁

盪考載掲を容内言発︑おな︒るす察て家し類分に﹂ち持気のてし対に族し

た箇所で︑たとえば︑﹇A施設職員

漓﹈や﹇A施設職員

滷属の別れぞれそ︑がるあで所﹈の設施Aじ同︑はのるあと職

員からの発言であることを示すものである︒

︵1︶施設入所という体験そのものに伴う気持ち

﹇A施設職員﹈

高齢者本人の気持ちを考えますと︑まず﹁入所することに対して恥ずかしく感じている﹂ことは確かです︒施設に入る︑家

族から面倒をみてもらえない︑自分の余生を家族と一緒に過ごせないということに対する苦しみや恥ずかしさが入所において

は作用しています︒

﹇C施設職員﹈

入所する当事者としての高齢者の中でも施設に対する既存の社会的認識を聞いていて︑福祉施設を一種の﹁嫌悪施設﹂とし

て考えている方もいます︒ですので︑そのようなところに自らが入所することに対してはとても強い負担感を感じている方が

多いです︒

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儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

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﹇E施設職員

漓﹈

昔から施設に対しては﹁危険で危ないところ﹂という認識があり︑それは今でも残っていて︑施設そのものへの必要性は認

めているが︑﹁我が街での施設はいらない﹂という意識的な抵抗も見られます︒施設に対する認識が改善されていると言われる

中でも︑これらは未だに発見できる要素ですね︒

﹇E施設職員

滷﹈

入所した高齢者本人も﹁家族に見捨てられた﹂という意識を持っている方が多く︑入所自体を﹁どん底の暮らし﹂あるいは

﹁生きるための最後の手段である﹂と思っています︒つまり︑施設入所は一人暮らしよりもっと酷い状況として︑社会の中で一

番下流の人間になっていることを意味していると思われているのです︒もちろん︑最近の傾向ではある程度︑意識的な改善が

なされているのを感じていますが︑それでもまだ昔からの意識は残っていますので︑すべてのことが改善されているとは言い

がたい状況です︒でも︑少しずつ変化しているのは確かなことであります︒

これらの発言からは︑最初は施設入所に対してかなりの抵抗感を利用者が抱いていることがわかる︒それは︑﹇E施

設職員

漓︑有されているなかででにきれば施設入所は避け共的﹈施の発言にあるように︑設会への悪いイメージが社た

いという意識であり︑﹇E施設職員

滷り一人暮らしよ醜やい﹂状況として﹁﹂﹈れの言葉を借りばし﹁どん底の暮ら捉

えられている︒そして︑入所への抵抗感は︑そのような施設に自分が入所せざるを得ないということの﹁恥ずかしさ﹂

として現れている︒ただし︑その一方では︑施設入所やそこでの生活に対するこのようなマイナスイメージは改善され

てきているとの指摘もあり︑今後施設への意識が徐々に良い方向に変化していくことも予想される︒

また︑﹇A施設職員﹈の発言にあるように︑﹁家族から面倒を見てもらえない︒家族と一緒に過ごせない﹂ことからく

る苦しみや恥の意識が︑施設入所への抵抗感として現れていることも挙げられる︒このことも含めて次に︑利用者が家

族に対してどのような気持ちを抱いているのかについて︑発言内容から見ていきたい︒ 儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

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︵2︶家族に対しての気持ち

﹇A施設職員﹈

各階での相談などを通して高齢者本人の意識の変化や生活の変化を見ますと︑入所初期のほとんどの高齢者本人は︑家族に

対する憎しみとか﹁自分が産んだ子どもなのに面倒をみてくれない﹂という気持ちを強く持っています︒

﹇B施設職員

漓﹈

高齢者本人が持っている気持ちとして︑施設への入所自体は﹁家族から捨てられた存在﹂としての自分自身を確認すること

になります︒このように高齢者本人が家族から排除され︑しかも今までの自分が否定されてしまうような状況の中で︑﹁捨てら

れた自分︑価値のない自分﹂を認識することにもなりますが︑でもその分︑自分だけのものに対する執着も強くなっていて︑

家族からの品物の差し入れなどがあるとそれを大切にしてどこかに保存していることは多くの方から見られる傾向ですね︒

﹇B施設職員

滷﹈

私の経験から施設入所に関する心境的な側面を考えますと︑その一例として︑入所の当初から毎日泣いている方がいまし

た︒その後の話で︑泣いたのは﹁家族から捨てられた﹂ことへの悔しさや憎しみのためだということを確認しました︒

﹇C施設職員

漓﹈

高齢者本人が入所した後︑すぐに見せる反応として﹁家族から捨てられたという恥ずかしさ﹂があります︒

﹇C施設職員

滷﹈

高齢者本人の入所に至る経緯を見ますと︑﹁家族に迷惑をかけたくないから﹂などの本人自らの判断や意思による自発的入所

もありますし︑もう一つは嫁姑などの問題を含めた家庭内問題による入所もあります︒

﹇D施設職員﹈

施設入所に対する拒否感として︑以前は入所することになるとそのほとんどの方から﹁自分は家族から拒否された︑捨てら

れた﹂という悲観的な受け止め方で﹁仕方なくここで﹂という傾向が見られましたが︑最近は入所の後でも家族と連絡を取り

合いながらそれぞれの生活を継続していくケースも多く︑時には家族との円満な関係を保ったまま入所に至るケースも見られ

ますので︑入所に関する拒否感は少しずつ軽減しているように思われます︒

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儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

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これらの発言内容から︑利用者には︑家族と一緒に過ごすことへの期待や自分の子どもに世話して欲しいという期待

があるだけに︑施設入所へに対するつらさや苦しみを抱いているということがいえる︒同時にそのつらさや苦しみは︑

家族から疎外されたという体験になり︑時には家族への憎しみにもなる︒つまり︑施設入所が︑家族との関係が断ち切

られる体験として意味づけられたとき︑それは利用者本人にとってはとてもつらい体験となり︑恥ずかしさや家族への

怒り︑また憎しみの気持ちをも抱くことにつながる︒

しかし︑このことは逆に言えば︑それだけ利用者本人にとって家族の存在が生きていく上で大切であり︑入所後も家

族への強い思いや愛情を持っているということでもある︒そのことは家族からの差し入れをいつまでも大切にしている

という﹇B施設職員

漓る由での入所もあとういう﹇C施設職理い﹈にの発言や︑家族迷と惑をかけたくない員

滷﹈の発

言からも伺える︒

さらに︑﹇D施設職員﹈の発言は︑良好な家族関係が入所後も続くということが︑利用者本人の入所への抵抗感を和

らげるという指摘である︒施設に入所することにより︑家族とは別々の場所での生活になるが︑それまでの家族関係や

家族間の愛情を︑入所した後も変わらず体験し︑感じることができるのであれば︑施設での生活の安定につながるとい

うことがいえる︒

2 .施設入所に対する家族の気持ち

次に︑家族の側は︑施設入所をどのように捉えているのであろうか︒職員の発言から︑そのことに触れた内容のもの

を﹁

盧親への扶養意識との関係﹂と﹁

盪の施たし察考てし類分につ二︒と所﹂や施設入設にする意対識 りークのあ関方にする研ルワにャシーソたし盤基を化文教儒究

― 42 ―

(13)

︵1︶親への扶養意識との関係

﹇A施設職員

漓﹈

自分の親が施設に入っていることを周りの人や親戚に知らされることに対して恥ずかしくて内緒にしている︑あるいは知ら

せたくないという傾向もみられるので︑高齢者本人と家族の両方の気持ちは必ずしも一致するものではないですが︑施設に対

する考え方や福祉サービスを利用することに対しては︑それほど﹁よい﹂というイメージを持っていないことは共通している

点です︒

﹇A施設職員

滷﹈

ほとんどの家族は親を施設に入所させることに対して申し訳ないという気持ちを持っていて︑彼らは施設に来るたびに﹁申

し訳ありません﹂と言うんです︒

﹇B施設職員﹈

家族側からは﹁施設に入所している﹂と周りに言えず︑﹁病院に入所している﹂などと入所自体を隠していることも一般的に

多いことであります︒

﹇C施設職員

漓﹈

現在︑施設開放と言われ︑施設を訪問したりすることが盛んに行われていても︑﹁孝﹂思想ともいえますが︑親孝行という考

え方はまだまだ強く残っていますので︑なるべく家族が面倒をみることに強くこだわっているのが今の韓国の現状です︒

﹇C施設職員

滷﹈

家族の方からも﹁親の面倒をみられないから恥ずかしい︑申し訳ない﹂と考え︑その苦しみを職員に訴えてくる場合もあり

ますが︑その時は﹁自分たちはそういう方々のために仕事をやっています︑それが私たちの役目です﹂と説明することで︑家

族としての申し訳なさを︑ある程度軽減していけるように援助しています︒

﹇E施設職員﹈

一般的に親の施設入所に対して家族側は﹁自分の親の世話ができない︑面倒を見てあげられない﹂状況に強い罪悪感をもっ

ています︒それで︑周りの人々や親戚に内緒にしているケースも多くあります︒

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儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

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これらの発言にあるように︑儒教の徳目の一つである﹁孝﹂思想︑すなわち子どもが親の介護や世話をしないといけ

ないという親孝行としての扶養意識が︑根強く人々の生活のなかに残っていることが伺える︒そして︑このような子供

が親の面倒を見るべきという価値観が社会的に共有されているなかでは︑親の施設入所という選択は︑親への罪悪感を

抱くことになり︑親孝行ができないという恥ずかしい体験となる︒それゆえに︑家族にとっては︑親が施設に入所した

ということは︑近隣の人々や親戚には知られたくないことであり︑﹇B施設職員﹈や﹇E施設職員﹈の発言にあるよう

に︑﹁病院に入院している﹂などと言って︑内緒にしておきたいこととなる︒

さらには︑そのような気持ちが︑﹇A施設職員

滷﹈や﹇C施設職員

滷施し申﹁のへ員職設︑﹈にうよるあに言発の訳

なさ﹂として現れる︒本来であれば︑自分たち家族でやらないといけない親の介護や世話を︑職員に﹁代わりに﹂やっ

てもらっているという気持ちからくる﹁申し訳なさ﹂であろう︒このような家族が抱く気持ちに対して︑﹇C施設職員

滷といを軽減させていくこもう職員の役割として重要で思い﹈うの発言のなかにあるよにと︑家族の﹁申し訳ない﹂あ

るといえる︒

︵2︶施設や施設入所に対する意識

﹇C施設職員

漓﹈

多様な形で入所に対する否定的な意識を確認することは今も数多くありますが︑少しずつそれらの考え方は間違いなく変化

しています︒しかし︑そのような変化にもかかわらずまだ家族側の﹁周りの目を気にしている﹂ことは依然として強く残って

いますね︒

﹇C施設職員

滷﹈

施設入所をめぐっては家族の間で異なる考えも存在しているのが事実です︒入所以前の段階まで主介護者であった家族から

は﹁ぜひ施設でのサービス利用を﹂という希望を出していますが︑ほとんど介護を担っていなかった家族からは﹁なぜ施設な 儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

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の?家の方がもっとよいのに﹂という不満の声があがる場合もあります︒

﹇E施設職員

漓﹈

施設入所をめぐる家族間の意見の食い違いも一つの特徴として指摘できると思います︒たとえ︑兄弟の間でも自分たちの親

の入所に対して﹁入所させた方がいい﹂という意見を持つ人がいる反面︑﹁施設入所だけは反対﹂という意見を持っている人も

いますので︑家族間の価値観の差や考え方の相違を発見する時もあります︒

﹇E施設職員

滷﹈

昔の話で︑年老いた親を山奥に捨てたという言い伝えがあります︒現代に入ってからは施設入所がそれに似ているものとし

て認識されているので︑施設入所をめぐっては先の話のような家族間の意見の違いや紛争が存在しているのだと思います︒

社会全体の施設に対する否定的なイメージは︑時代の流れとともに変化しつつあるが︑しかし︑いざ自分の親を施設

に入所させる状況になると︑周囲の目を気にする家族の姿がある︒そして︑このことは家族間での意識の違いとなって

現れることもある︒つまり老親の介護を直接的に担う家族は︑たとえば周囲からの助言や情報提供などがあることによ

り︑施設や様々な福祉サービスに関する情報に詳しくなるといえる︒そのなかで︑それまで否定的であった施設へのイ

メージも変化していくことになるであろう︒そして︑何よりも介護の大変さもあって︑親を施設に入所させることを考

えるに至る︒しかし︑介護を直接的に担っていない家族にとっては︑それは親孝行の思想に反することとして︑受け入

れられないことであり︑周囲に対して恥ずかしいこととなる︒﹇C施設職員

滷﹈や﹇E施設職員

漓﹈の発言は︑このよ

うな家族間の

鐚藤状況を表したものであろう︒ 3.入所後の気持ちの変化

以上のように︑施設入所に対して︑利用者や家族が抱く抵抗感は︑もちろん個々に程度の差があるにせよ根強いとい

― 45 ―

儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

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える︒ここでは︑主に利用者本人の状況に焦点を当てて︑入所当時︑施設や家族に対して複雑な感情を抱く利用者が︑

どのようにして施設での生活に落ち着きを得て︑安定した暮らしを営むようになるのか︑また家族に対する気持ちがど

のように変化するのかについて︑職員の発言から見ていきたい︒

﹇A施設職員﹈

ある程度の時間を経て﹁ここが私の住む場所だ﹂と認識し始めた頃からは︑自分一人だけではなく︑同じ立場の人たちがこ

こで一緒に生活しているという状況を理解します︒入所当初の憎しみなどの感情が徐々に落ち着くのはそれからです︒

﹇B施設職員

漓﹈

その方は施設に対する適応時間が必要で︑適応された後からは︑ある程度のコミュニケーションもとれるようになりまし

た︒今は家族に対しても﹁家族としてそうせざるをえなかった﹂という理解も深まっています︒入所をめぐるもう一つの傾向

として家族面会の回数が多い方ほど︑施設への適応時間が短くなるということも指摘できることです︒施設の中で元気に暮ら

しているほとんどの方は家族面会の数が多いということが特徴として見られることです︒お見舞いとか家族の面会の回数が︑

高齢者のいきいきとした姿を保つ時間と比例していますね︒

﹇B施設職員

滷﹈

長期間病院に入院していた方からは﹁看護師もこういう世話をしてくれるが︑何となく固いし︑暖かくはない︒でも︑ここ

はそうでなく︑家族のような気持ちになれるからいい﹂という話も聞きました︒このような様子から考えられるのは︑自分の

子どもに対する憎しみが完全になくなっているのではなく︑この施設での生活からある程度安定感を得ることで︑少しずつ入

所初期の感情などが癒されていくのだと思われます︒ここでの生活に対する満足度が家族との関係を改善していたり︑あるい

は逆に悪くしていったりすることも今までの経験のなかから言えることですね︒

﹇C施設職員

漓﹈

利用しているそれぞれのサービス形態によってその状況は変わってくると思いますが︑家族の訪問に対する高齢者本人の喜

びは他に比べることのできないものです︒ 儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

― 46 ―

(17)

﹇C施設職員

滷﹈

ある程度︑施設での生活に馴染んで﹁ここが自らの居場所だ﹂と認識してからは恥ずかしく感じたり︑家族から疎外された

という意識は少しずつ薄くなり︑次第に忘れていく︑そういう傾向を見せています︒

﹇D施設職員﹈

一人暮らしの方に多く見られる﹁寂しさ﹂は︑療養院に入所する前とその後の変化からも説明できると思います︒入所する

前は︑何かについて否定したり︑入所自体を拒否したりするなど頑固な意思を示す一方的な傾向を見せます︒しかし︑入所の

後には︑そのような傾向が弱まってきます︒入所後しばらくしてからは﹁他の人と話し合ったり︑楽しめるので満足している﹂

ということを素直に話している方もいます︒

﹇A施設職員﹈や﹇C施設職員

滷場居心地のよい所て︑すなわち﹁居のっ﹈うの発言にあるよにと︑施設が自分に場

所﹂として体験されるようになるにつれて︑精神面でも利用者の生活は落ち着いていく︒その背景には︑家族と離れて

暮らすつらさを抱えているのは自分だけではないということを感じるとともに︑そしてそれでも家族を大切に思う気持

ちを他の利用者と共有できる体験である︒施設での職員や利用者との新たな出会いと︑それらの人々との関係の深まり

のなかで自らが受け入れられる体験︑﹇B施設職員

滷間うよの族家﹁てし対に係関人﹈ので設施にうよるあに言発のな

気持ちになれる﹂体験が︑生活の安定をもたらすことになる︒

さらに︑その生活の満足感や安定感は︑たとえば﹇B施設職員

漓﹈や﹇C施設職員

滷﹈の発言にあるように﹁家族と

してもそうせざるを得なかった﹂という気持ちになるなど︑入所時の﹁家族から疎外された﹂という気持ちを薄れさ

せ︑家族への気持ちの変化︑そして家族との関係の修復や改善にもつながる︒

その意味で︑﹇B施設職員

漓﹈や﹇C施設職員

漓別っなにとこすら暮に所場の々︑﹈えとた︑にうよるあに言発のて

も︑あるいは︑そうであるからこそ︑利用者にとっての家族の存在は重要であり︑入所後の家族との関係は︑利用者本

― 47 ―

儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

(18)

人の施設での生活の安定を左右するほど大きな影響を与える︒発言のなかにある︑﹁家族の面会の回数が︑高齢者のい

きいきとした姿を保つ﹂という指摘や﹁家族の訪問に対する高齢者本人の喜びは他に比べることのできないもの﹂とい

う指摘は︑ソーシャルワークのあり方を考える際に非常に重要である︒

さらに︑このことを家族側の視点から捉えた︑次の﹇E施設職員﹈の発言がある︒

﹇E施設職員﹈

最初︑施設入所を批判的に考え︑反対の意見をもっていた家族であっても︑入所の後︑ケアや医療が同時に行われより充実

した生活ができることを確認してからは︑施設に対するイメージを変えていくケースも多いです︒つまり︑施設は高齢者を管

理するための手段として﹁統制し︑規則するためのところだ﹂と考えていた家族側の一般的な認識は︑実際その生活を見てか

ら﹁自由で︑自分の生活ができる場所﹂として施設の存在を認めていくのが多くのケースで確認できる変化です︒

利用者の生活の安定をもたらす家族からの訪問を促していくには︑家族と施設との関係も良好であることが必要であ

る︒すなわち︑施設への理解を促し︑施設への入所ということに対する家族の意識の変化︑および施設での様々な利用

者へのケアやそれを担う職員に対する家族の信頼を得ることである︒利用者本人の入所をきっかけとする施設と利用者

と家族の三者の関係が︑それぞれに信頼しあえる良好な関係を構築し︑維持していくことが︑利用者本人の生活の安定

につながり︑利用者と家族との良好な家族関係︑親子関係を再構築し︑維持していくことになり︑施設での生活の豊か

さをもたらすといえる︒

そして︑いかにして︑そのような生活を利用者が享受できるようにするかが︑職員の課題となる︒施設の職員はその

ために︑利用者や家族に対してどのような働きかけをしているのか︑またするべきなのか︒次に見ていきたい︒ 儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

― 48 ―

(19)

4.職員によるかかわりや働きかけ

ここでは︑利用者が施設での生活に安定感や満足感を抱くために︑職員がどのようなことを意図して︑どのようなか

かわりや働きかけを行っているのかについて述べた発言を︑﹁

盧りと﹂けかき働・わ利かかのへ人本者用﹁

盪家族への

かかわり・働きかけ﹂の二つに分けてみていくことにする︒

︵1︶利用者本人へのかかわり・働きかけ

﹇A施設職員

漓﹈

高齢者本人から︑家族から排除されてしまったという疎外感などの訴えを聞きますと︑﹁息子さんや娘さんがあなたの面倒を

みることになると︑彼らが外に出て稼げないことになるので︑あなたがここで生活している間に経済的な余裕を得られる状況

になり︑いずれ︑よりよい環境で家族と一緒に生活することができます︒そのために私たちも力になりますので一緒に頑張り

ましょう﹂というように励ましています︒

﹇A施設職員

滷﹈

家族の文化をプログラムに取り入れることは大事なことで︑それには私も力を入れているところです︒韓国にはお正月やお

盆に家族みんなで行う伝統的な行事がたくさんあります︒例えば︑お正月の遊びや満月の時の祭りなどがそれです︒とくに︑

満月の時のお祭りは施設の中で行う行事ではなく地域社会で行われる行事なので︑その時は皆を連れていったりとかします︒

他にもお正月︑お盆などの時期を利用して︑家族と離れている方々が︑家族みんなでできる遊びを可能な限りできるように配

慮しています︒

﹇C施設職員﹈

家族が面倒をみてあげられないなかで︑私たちがその家族の代わり役を果たしていると思っています︒自分が﹁第二の家族﹂

であることへの思いから︑この仕事に対するやり甲斐を覚えることが多くあります︒そんな中で自分は相談者や援助者という

枠に縛られすぎて悩むより︑いまできる﹁もう一つの家族﹂としての役割や使命を果たしていきたいと思います︒それで︑

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儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

(20)

今︑自分でできることは﹁もう一つの家族をつくってあげること﹂だと思っています︒家族ならではの雰囲気︑本当の家族の

ような関係を高齢者本人と一緒に新たに作りあげていくことを心がけています︒

﹇D施設職員﹈

ワーカーと高齢者本人とのよりよい関係︑円満な関係を保つことが︑気楽に生活していくことにつながりますし︑またそれ

によって家族のような援助ができることになります︒ワーカーと高齢者本人との関係のなかに︑よりよいケアを提供していく

一つのカギが潜んでいるのではないかと思います︒

﹇E施設職員﹈

施設での生活が落ち着くもう一つの要因としては︑今までやりたいことがあってもそれができない状況の中で我慢したりあ

るいは諦めたりしていたことが︑施設への入所を通してそれが経験できるようになったことです︒自分のやりたいことが普通

にでき︑普通の日々を過ごせるということがそのような変化をもたらしたのではないかと思います︒

施設での生活に抵抗感を抱いていたり︑家族と離れての生活に寂しさを感じる利用者に対して︑職員が家族的な雰囲

気を味わえるようなかかわりや働きかけをしていることが︑これらの発言からわかる︒﹇A施設職員

滷﹈の発言は︑施

設での行事等の様々なプログラムのなかで︑利用者に﹁家族の文化﹂を体験してもらっているという内容である︒ま

た︑﹇C施設職員﹈は︑自ら利用者の﹁第二の家族﹂であるという思いを抱いており︑﹁家族ならではの雰囲気﹂づく

り︑あるいは﹁本当の家族のような関係﹂を利用者と新たに築いていくことを大切にしている︒また﹇D施設職員﹈の

発言は︑﹁家族のような援助﹂ができるために利用者との関係づくりが大切であるという指摘である︒

そのような﹁もう一つの家族﹂を施設のなかで利用者が体験できるような関係づくりや働きかけのなかで︑﹇A施設

職員

漓きと受容を促すような働か理けを行うこともあり︑解の﹈家の発言にあるように︑族者の状況について︑利用ま

た︑﹇E施設職員﹈の発言にあるように︑利用者がやりたいことが普通にできるようなかかわりや環境づくりを行う︒

そのようなかかわりや働きかけを通して︑利用者の生活の安定が支えられているのである︒ 儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

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(21)

︵2︶家族へのかかわり・働きかけ

﹇C施設職員

漓﹈

家族の方からも﹁親の面倒をみられないから恥ずかしい︑申し訳ない﹂と考え︑その苦しみを職員に訴えてくる場合もあり

ますが︑その時は﹁自分たちはそういう方々のために仕事をやっています︑それが私たちの役目です﹂と説明することで︑家

族としての申し訳なさを︑ある程度軽減していけるように援助しています︒さらに︑そのような家族のためにお盆や正月など

に高齢者と一緒に時間を過ごせるようなプログラムを用意しています︒これらのプロセスを通して︑家族と高齢者本人が持っ

ている施設に対するそれぞれの印象や認識が︑少しずつ自然と変わっていくような関係をつくっていくことに力を入れていま

す︒

﹇C施設職員

滷﹈

ひとつのまとまりとしての家族理解も欠かせないことですので︑家族個別相談と併用して家族集団相談を行い︑家族それぞ

れの役割を確認し︑共有するようにします︒その後︑それぞれの役割を理解し︑その苦しみや悩みなどに共感するワーカーと

しての立場性を確認してもらいながら︑力になれる範囲で援助していくことを明示して安心感を持たせるようにします︒しか

し︑その反面︑施設の方に任せきりになると困るので︑プログラムにボランティアとして参加してもらったり︑外出時に同伴

してもらうなどして︑施設入所の後でも施設の中に居ながら家族と一緒に︑家族としての文化を︑ともに作り上げていけるよ

うに配慮しています︒﹁家族文化﹂という言葉で上手く表現できるかわかりませんが︑この施設の中で︑私たちを通じて﹁家族

文化﹂の補充ができるように力を入れています︒

﹇C施設職員③﹈

この施設では﹁高齢者本人︑家族︑職員﹂のこの三つの要素を大きく﹁家族﹂であると考えています︒それはトライアング

ルと同じです︒その中でそれぞれの役割を果たせない︑または上手く機能できない要素があったら︑それを補うものとして︑

地域住民という存在を︑もう一つの柱として想定しています︒

利用者の家族へのかかわりや働きかけについては︑主にC施設でのインタビューでいくつかの発言が得られた︒職員

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儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

(22)

は︑家族が抱える﹁恥ずかしさ﹂や﹁申し訳なさ﹂を軽減させるための言葉かけを行い︑施設のプログラムへの家族の

参加を働きかけて︑利用者とともに施設での生活に対して信頼や安心をもてるようにしている︒それは︑家族をひとつ

のまとまりとして捉えて︑家族への理解を深め︑家族と施設との信頼関係をつくっていくことであり︑施設入所後も︑

職員が介在することで︑利用者と家族とのそれぞれがお互いを大切にする﹁家族文化﹂を継続していけるようにするか

かわりと働きかけである︒このような発言から︑入所後の本人と家族との良好な関係づくりも施設職員の重要な役割で

あり︑利用者の施設での生活の安定には︑家族の力が欠かせないということがいえる︒

さらに︑﹇C施設職員

澆三および﹁職員﹂の者族を︑大きく﹁家族﹂家﹈にの発言にあるよう︑﹁﹁高齢者本人﹂と﹂

として捉えていこうとする援助観がある︒それは︑施設での安定した生活を支えるために︑職員とのかかわりを含めた

含めた家族的なつながりを構築し︑大切にしようとする考えであり︑そのような関係を軸にしつつ︑地域とのつながり

をも拡げていこうとする生活支援の実践である︒

蠹しーワルャシーソたに﹁盤基を﹂化文教儒ク 1.﹁親孝行﹂の捉えなおしと家族の介護負担の軽減

以上のインタビュー結果の考察から︑韓国における親への扶養意識や家族意識が︑施設への入所をめぐる状況に様々

なかたちで影響を与えており︑職員はその影響を考慮しながら︑利用者や家族の状況を理解し︑それぞれへのかかわり

や働きかけを行っていることがわかる︒言い換えれば︑家族とその関係︑家族間の情緒的交流などを視野に入れたソー

シャルワークのあり方が求められているといえる︒

そしてそれは︑このような家族意識が施設入所や福祉サービス利用の妨げになるからといって︑家族への愛情や親孝 儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

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(23)

行の思想に基づく扶養意識を否定しようとするものではないと考える︒なぜならそれらは︑人々の日常生活に浸透し生

活様式や行動様式の基盤となっている﹁儒教文化﹂としての価値観なのである︒求められるのは︑﹁親孝行﹂とは︑決

して親と同居して︑あるいは離れて暮らしていたとしても家族の力だけで︑親の世話や介護をすることのみを意味する

のではないという認識であろう︒家族が直接的に親の世話をすることだけでなく︑施設入所やサービスの利用を通し

て︑身体的・精神的にも家族が互いに負担を抱えない状態で︑良好で愛情豊かな家族関係を維持していくこともまた︑

﹁親孝行﹂の実現であるという社会的な認識が広がることが必要である︒それは︑無理してでも家族介護を続けるによ

って︑介護者の負担が限界を超え︑結果的に親子が共倒れになる状況もあるなかで︑親子が親子であり続けるために︑

家族が家族であり続けるために︑その愛情ある関係を維持できるためにこそ施設への入所を含めた福祉サービスの利用

があるという︑﹁儒教文化﹂を大切にした福祉サービス利用に対する考え方である︒

そして︑このような考え方をふまえてのソーシャルワークの目標は︑一つには︑親の介護は家族がするべきという親

孝行という社会規範のなかでの介護負担の軽減であり︑施設入所などのサービス利用によって︑自分が親の介護を担わ

ないということからくる﹁恥ずかしさ﹂や﹁罪悪感﹂の軽減である︒このことについて金貞任は次のように述べてい

る︒

専門的な立場から家族介護をめぐって生じる家族内

鐚安とり怒︑感悪罪︑燥焦︑不藤るえ抱の者護介︑めじはい

った感情への相談や対応を果たすことが重要である︒これらを実行することにより介護者の負担感は軽減され︑要

介護高齢者のQOL﹇生活の質﹈を向上させることが可能である︒︵金貞任2003:227︶

この指摘にもあるように︑家族の介護負担の軽減は︑要介護高齢者のQOLの向上に寄与するということが重要であ

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儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

(24)

る︒要介護高齢者の生活の安定は︑まさに家族との関係の安定なのである︒そして︑このことは施設に入所している利

用者本人にとっても同様である︒﹁儒教文化﹂による家族意識が︑施設入所への抵抗感ともなり︑利用者は入所後も家

族への複雑な思いを抱く︒しかし︑確かに家族と離れて暮らしてはいるけれども︑これまで通り家族とのつながりがあ

ると感じられる体験によって︑施設での生活は安定していく︒そのためのソーシャルワークの目標や役割としては︑い

かに家族に働きかけて︑施設との信頼関係を築き︑家族と利用者との間の関係調整を行っていくかということが重要で

ある︒入所後も変わらない家族関係と︑互いの愛情が共有された情緒的なつながりがあることが︑利用者本人の生活の

安定につながっていく︒また︑利用者の生活の安定は︑職員や他の利用者との関係が︑家族のような関係として体験さ

れることによってもたらされるということも重要である︒そのような関係の中での安心感や幸福感を利用者が感じるこ

とができるような環境づくりが施設におけるソーシャルワークにおいて求められる︒すなわち︑高齢者本人へのサービ

スが︑同時にその家族を支え︑また両者の良好な親子関係︑家族関係をも維持するサポートとなるような援助活動の展

開が求められるのである︒

2 .﹁家族とともにある幸福﹂のための支援

家族とのつながりを大切にする家族意識の強さは︑韓国の人々の生活のなかで︑その基層として浸透し︑人々の意識

に潜在的に共有されている﹁儒教文化﹂である︒核家族化の進行で︑高齢者とその子ども夫婦は別々に暮らす割合が多

くなるであろうが︑韓国においては︑高齢者の生活を支えるために家族が重要な役割を果たすことに今後も変わりはな

いであろう︒しかし︑現代社会においては︑家族だけの力では︑高齢者の介護が担っていけないのも事実である︒だか

らといって︑ソーシャルワークに求められるのは︑そのような﹁儒教文化﹂を古いものや時代にそぐわないものとして

否定することでは決してない︒﹁儒教文化﹂の影響が︑たとえば家族による介護の負担となるような状況︑あるいは要 儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

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(25)

介護高齢者の施設入所の際の抵抗感となるような状況︑そのことにより安定した家族関係が脅かされるといった状況な

ど︑そのような﹁状況﹂の改善を目指すことこそがソーシャルワークの役割であると考える︒

また︑家族介護を当然とする考え方が根強く︑施設入所によって家族から疎外されるなどのイメージが共有されてい

る韓国社会においては︑﹁介護サービスの利用と﹃孝﹄思想との両立﹂が求められているともいえよう︒それは︑たと

えば︑﹁介護の社会化﹂とは︑﹁孝﹂思想が大切に共有されている個々の家族関係や親子関係までをも﹁社会化﹂してい

くことではないということ︑つまり︑前述したように家族がこれまで通りの家族であり続け︑親子がこれまで取りの親

子であり続けるために︑そしてその関係がこれまで通り愛情や信頼によって支えられるために︑施設サービス等の介護

サービスの利用があるという認識である︒そのような考え方を社会的に広めていくのもソーシャルワークの役割であろ

う︒

儒教はあくまでも家族︵もちろん老人を含めて︶と共に生き︑家族の幸福を求める︒すなわち︑儒教は祖先祭祀

を重視する宗教であると同時に︑家族との﹁共生の幸福論﹂なのである︒︵加地1998:107︶

このような︑家族とともにあることの幸福論としての﹁儒教文化﹂を尊重し︑そのような幸福論の具現化と生活の安

定を︑個々の利用者や家族とのかかわりのなかで目指していく営みが︑﹁儒教文化﹂を基盤としたソーシャルワークの

方法や実践として求められるのである︒

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儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

(26)

おわりに

今回の韓国・釜山市でのインタビューのなかで︑どの施設においても︑最も多く聞かれた言葉は﹁家族﹂という言葉

であった︒このことは︑それだけ韓国の人々のなかの家族意識が根強く︑またソーシャルワークの実践にも様々な形で

影響を与えているということを表しているといえる︒本稿では︑この家族意識を﹁儒教文化﹂の特徴として捉え︑その

ような儒教文化を基盤とするソーシャルワークのあり方について考察した︒それは同時に︑韓国の人々の生活に根強く

残る儒教文化を発見していく作業でもあった︒韓国や日本など︑これまで儒教文化圏とされてきた国における儒教の影

響について︑加地は次のように述べている︒

今日︑儒教文化圏︵中国・朝鮮半島・日本︶内の国家において︑しだいに儒教が力を失いつつあると論ずる人が

いるが︑それは浅薄な見かたである︒﹁儒教﹂が力を失いつつあるのではなくて︑﹁儒教の中の道徳性﹂が力を失い

つつあると言うべきである︒なぜなら︑儒教の中の宗教性︵祖先祭祀等︶は依然として衰えていないからである︒

︵加地1994:111︶

確かに︑人々の生活や行動様式にみられる儒教の道徳的・規範的な側面は︑時代の流れと社会の変化とともに薄れて

いるのかもしれない︒しかし︑﹁儒教の宗教性﹂に着目したとき︑その影響は人々の生活や意識のなかで︑その根底に

根付いているという指摘である︒さらに加地は︑﹁根底の宗教性は︑東北アジア人の原感覚に基づいているのであるか

ら︑これは絶対に変らない︒ましてイデオロギーごときが動かせるものではない﹂︵加地1990:26︶とも指摘してい 儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

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(27)

る︒

人々の意識に潜在的に共有され︑人々の生活や生き方のなかで︑その根底に根付いている思想や価値観へのまなざし

も︑人々の生活状況を理解し︑安定した生活を支援するソーシャルワークの視点として重要であろう︒経済学者として

国内外の現場調査を重視する関満博は︑その調査研究方法に関する著書のなかで次のように述べている︒

明らかに︑これまでの日本では﹁欧米モデル﹂が目の前にあり︑どう追いついていくのかが焦点とされ︑自分自

身の国や地域の問題を﹁現場﹂から発想していこうとする取り組みに欠けていた︒︵中略︶ようやく︑私たち自身

の﹁創造性﹂が問われる時代に踏み込んできた︒︵関2002:204︶

このような状況は︑韓国や日本におけるソーシャルワークにおいても同じではないだろうか︒すなわち︑常に﹁欧米

モデル﹂を前にしたソーシャルワーク研究がこれまでの中心になっていたのではないだろうか︒人々のありのままの生

活の現場から︑そして人々とその生活にかかわるソーシャルワークの現場から発想し︑創造していくソーシャルワーク

の研究と実践が改めて求められているのではないだろうか︒もちろん︑韓国や日本など儒教文化圏とされる国でのソー

シャルワークにおいて︑そのすべてを儒教に結びつけて理解するというのは強引すぎるであろう︒しかし︑人々の生活

に影響を与えその根底に共有されている﹁儒教文化﹂に着目することは︑人々の生活の現場から発想し︑創造するソー

シャルワーク研究や実践の方法の一つとして重要であると考える︒日本の社会福祉現場の状況との比較研究も含めて︑

さらに考察を進めたい︒

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儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

(28)

︵謝辞︶

本調査研究にあたり︑孫希叔氏︵同志社大学大学院社会学研究科博士後期課程︶には︑研究協力者として︑訪問先との連絡や通

訳等多大なご尽力・ご協力を頂きました︒深く感謝申し上げます︒

︵付記︶

本稿は︑文部科学省科学研究費二〇〇六年度基盤研究B﹁ソーシャルワークと東アジア・モデル構築に関する研究﹂︵研究代表

︒助るあで部一の果成究研るよに成の黒大木保博同志社学︶社会学部教授 :

注︵1︶この﹁孝﹂を重視する儒教思想によるものとして︑金渙は︑血縁関係の者たちが一箇所にかたまって居住する﹁同族村﹂

︵﹁集姓村﹂︶について述べている︒金によれば︑都市の人口集中により︑村の人口は減少していても︑同族村の存在そのもの

は依然として今も昔も大差ないのが現状であるとされている︵金渙2005:259︶︒ここにも家族を中心とする血縁関係を大切

に生きる韓国人の生活がある︒

︵2︶このような状況について︑舘野は﹁その大切な親孝行をする基盤が失われてしまった︒親子が農村と都市に離れて別々に暮

らすようになり︑それによる経済的・社会的変化が第一の理由だろう︒しかし︑それよりも心理的・倫理的な変化のほうが

もっと大きいように思われる︒韓国社会の急激な変化によって︑いまや儒教思想は形骸化してしまったのだ﹂︵舘野2003:

6︶と述べている︒しかし︑一方では︑﹁広く儒教文化圏の諸問題を検討する際︑衰退しつつある﹃儒教の礼教性﹄を見るの

ではなくて︑人々の間でしぶとく生きている︑そして今後もしぶとく生き残ってゆくであろう﹃儒教の宗教性﹄をこそ指標

として見るべきである﹂︵加地1990:226︶という︑﹁礼教性のような上部の規範︵道徳︶﹂は社会の変化とともに衰退もする

が︑根底の宗教性は変わらないという加地の指摘もある︒

︵3︶本稿は︑儒教文化一般ではなく︑儒教文化がソーシャルワークの実践において利用者理解や家族理解︑直接援助の援助観や

方法やなどに影響を与える側面に焦点を当てている︒その意味で︑インタビューでは日々高齢者や家族に直接的にかかわる

職員が何を体験して︑共有しているのかを知ることを目的とした︒そして︑そのために︑グループの協働作業としての意見

を構築でき︑メンバー間の相互作用や相互刺激によって潜在的な意見の引き出しが可能になり︑個別インタビューに比べて 儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

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(29)

回答者の意見表出のプレッシャーが少ない︵安梅2001:6︶とされるグループ・インタビューを行った︒

︵4︶なお︑︻資料3︼では︑﹁グループ・インタビュー質問項目﹂として四つの質問項目を挙げているが︑本稿では︑主に質問

に対する回答者の発言内容の分析・考察を行い︑質問

滷〜 潺つ発るす当該にーリゴテカの四のたし定設︑はていつに答回言

について取り上げるようにした︒

︵5︶筆者は︑二〇〇七年八月〜九月に本調査と同様の質問内容によるグループ・インタビュー調査を日本の高齢者福祉施設で働

く職員に対して行った︒この調査の結果については他稿を期したい︒

引用・参考文献

安梅勅江︵2001︶﹃ヒューマン・サービスにおけるグループインタビュー法︱科学的根拠に基づく質的研究法の展開︱﹄医歯薬出版 安梅勅江︵2003︶﹃ヒューマン・サービスにおけるグループインタビュー法

蠡拠の法究研的質くづ基に根︵的学科︱︶編例事用活展

開︱﹄医歯薬出版

崔吉城著・舘野晢訳︵2003︶﹃哭きの文化人類学︱もう一つの韓国文化論︱﹄勉誠出版 進藤榮一︵2007︶﹃東アジア共同体をどうつくるか﹄筑摩書房 H・C・トリアンディス著︑神山貴弥・藤原武弘訳︵2002︶﹃個人主義と集団主義︱2つのレンズを通して読み解く文化︱﹄北大路

書房

ひろさちや︵1999︶﹃仏教と儒教︱どう違うか

50のQ&A﹄新潮社 李玲珠︵2007︶﹁韓国の高齢者福祉制度をめぐる新しい動向︱介護保険制度創設問題を中心に︱﹂﹃評論・社会科学﹄第八二号︑同

志社大学社会学会︑三九︱六三頁

加地伸行︵1994︶﹃沈黙の宗教︱儒教﹄筑摩書房 加地伸行︵1990︶﹃儒教とは何か﹄中央公論新社 加地伸行︵1998︶﹃家族の思想︱儒教的死生観の果実︱﹄PHP研究所 金貞任︵2003︶﹃高齢社会と家族介護の変容︱韓国・日本の比較研究︱﹄法政大学出版局 金渙︵2005︶﹃韓国の伝統文化︱日本文化とのかかわりのなかで︱﹄風媒社 任栄哲︵2004︶﹃韓国の日常世界︱生活・社会・文化の基礎知識︱﹄KKベストセラーズ

― 59 ―

儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

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野口定久編︵2006︶﹃日本・韓国︱福祉国家の再編と福祉社会の開発

規社法央中﹄策政祉福会と福編再・成形の家国祉 :

小倉紀蔵︵1998︶﹃韓国は一個の哲学である︱﹁理﹂と﹁気﹂の社会システム︱﹄講談社 小倉紀蔵︵2001︶﹃韓国人のしくみ︱﹁理﹂と﹁気﹂で読み解く文化と社会︱﹄講談社 朴倍暎︵2006︶﹃儒教と近代国家︱﹁人倫﹂の日本︑﹁道徳﹂の韓国︱﹄講談社 佐藤郁哉︵2006︶﹃定性データ分析入門︱QDAソフトウェア・マニュアル︱﹄新曜社 関満博︵2002︶﹃現場主義の知的生産法﹄筑摩書房 武川正吾︑金淵明編︵2005︶﹃韓国の福祉国家・日本の福祉国家﹄東信堂 舘野晢︵2003︶﹃韓国式発想法﹄NHK出版

ウヴェ・フリック著︑小田博志・山本則子ほか訳︵2002︶﹃質的研究入門︱﹁人間の科学﹂のための方法論︱﹄春秋社 儒教文化を基盤にしたソーシャルワークのあり方に関する研究

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参照

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