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真 実 性 の原則 と経 理 自由

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(1)

真 実 性 の原則 と経 理 自由

照 屋 行 雄

W

は じめに

真実性の原則 の理論的性格 継続性 の原則 の成 立基盤

真実性 の原則 と経理 自由 の前提 おわ りに

i.は じ め に

企 業 会 計 は,会 計 実 践 の 歴 史 的 発 展 の過 程 で,社 会 的行 為 規 範 と して の会 計 原則 を形 成 し,発 展 させ て きた。 会 計 原則 は それ 自体 会 計 実 践 の 指 導 規 範 として 自律 的体 系 を確 保 しな けれ ば な らな い が,そ の時 の社 会 的 ・経 済 的情 況 を背 景 として,会 計 目的 や それ に導 か れ る会 計 理 論 に よ っ て そ の 目標 とす

る価 値 内容 が規 定 され る性 格 の もの で あ る。

わが 国企 業 会 計 原 則 は一般 原 則 の第1に 真 実 性 の 原則 をか か げ

,企 業 会 計 原則 体 系 全 体 の 目標 価 値 と して企 業 の財 務 内容 の 「真 実 な報 告 」 を明 示 して い る。 こ こで の 真 実性 は具 体 的 な価 値 内容 を明 定 しな い包 括 的規 範 概 念 で あ る。 また,他 方 で そ れ は,真 実性 の原 則 以 外 の一 般 原則 及 び諸 会 計 基 準 の適 用 を通 じて達 成 され る委 任 規 定 と もな っ て い る。 す な わ ち,企 業 会 計 原 則 に お け る真 実 性 の 内 実 は,そ の時 の社 会 的 ・経 済 的情 況 を背 景 と して

,企 業 会 計 の 目的 や会 計 理 論 に依 拠 して決 定 され る こ とにな る もの と解 され て い る。

17

(2)

また,企 業 の財 務 内容 の 「真 実 な報 告 」 は一 般 原則 の第 二 正規 の簿 記 の原 則 以 下 の諸 原 則 や,損 益計 算書 原則 及 び貸借 対 照 表 原 則 に規 定 され た諸 基 準 を 遵 守 す る こ とを通 じて確 保 され る こ とが期 待 され て い る。 そ して,か か る諸

会計 原則 や 諸 会 計 基 準 を適 用 す る に際 して最 も重 要 で 基 礎 的 な概 念 が 経 理 自 由 の考 えか た で あ る。 経 理 自 由の概 念 は継 続性 の原 則 の前 提 要 件 で あ り,し か も継 続 性 の 原則 は真 実 性 の原 則 の予 定 す る 「真 実 な報 告 」 を会 計 処 理 の 局 面 で保 証 す る会計 ドク トリンで あ る。 経 理 自由 の 考 えか た を企 業 会 計 原 則 の 理 論 構 造 の 中 で どう位 置 づ け るか,と りわ け真 実 性 の原 則 との関 係 にお い て

どの よ う な働 きを もつ概 念 か を明 らか にす る必 要 が あ る。

本 稿 で は,企 業 会 計 に お け る経 理 自 由の概 念 を究 明 す る こ とに よっ て,わ が 国 企 業 会 計 原 則 にお け る真 実性 の 原 則 の理論 的性 格 を明 らか に した い と思

う。 論 述 に あ た っ て は,ま ず,わ が 国 企 業 会 計 原 則 の理 論 的構 造 を明 らか に し,そ こにお け る真 実 性 の原 則 の理 論 的性 格 を考 察 す る。 っ つ い て ・ 真 実性 の 原則 を保 証 す る継 続 性 の 原則 の役 割 につ いて 述 べ,最 後 に,経 理 自由 の前 提 と真 実 性 の 原則 の 関係 につ い て検 討 を加 え る こ とに した い。

皿.真 実性 の原 則 の 理 論 的 性 格

わ が 国 の企業 会 計 原 則 は,第 一一一 般 原 則,第 二 損 益 計 算 書 原則,お よび第 二貸 借 対 照 表 原 則 の3部 構 成 とな って い る。 この企 業 会計 原 則 の理 論 的構 造 を分 析 す るな らば,下 部 構 造 に一 般 原 則 を有 し,そ れ と有 機 的 な関 係 を もつ 損 益 計 算 書 原 則 お よび貸 借 対 照 表 原 則 を上 部 構 造 とす る二 層 構 造 をな す もの

1)

と理 解 さ れ る。

0般 原 則 は,会 計 処 理 の 基 準 や 手 続 の 選 択 と 適 用 に あ た っ て 当 為 な い し 規 範 と し て の 性 格 を も っ て い る。 こ の よ う な 特 質 の.̲̲.般原 則 は会 計 ドク ト リ ン

と呼 ばれ て い 署.若 杉 明 鞭 は会 計 ドク トリンの特 徴 を,会 計 公 靴 の比 較

3)

に お い て 次 の よ う に 明 確 に 述 べ て お ら れ る 。 18国 際 経 営 論 集No.2ユ991

(3)

(1)会 計 ドク トリン は,こ れ な しに も会 計 実 践 が成 立 す るが,た とえ ば, 保 守 主 義 を適 用 しな い と保 守 的 な利 益 算 定 が 結 果 しな い とい う特 質 を も

つo

② 保 守 主 義 の原 則,継 続 性 の 原則 等 はい ず れ も例 外 処 理 ,す なわ ち,こ れ を適 用 しな い会 計 処 理 が あ り うる。

(3)保 守 主義 の 原 則 な ど は具 体 的 内容 を もた ず,会 計 行 為 へ の 当為 的 ・規 範 的 な規 制 概 念 と しての性 格 を もっ て い る。

(4)相 互 に また は他 の概 念 と矛 盾 す る こ と も少 な くな い。

⑤ 会 計 目的 に規 制 され,影 響 され る性 格 を もって い る。

以 上 に よっ て会 計 ドク ト リンが,会 計 目的 の達 成 を効 率 的 な い し合 目的 的 に確 保 す る上 で の一 般 的指 針 で あ る こ とが 理 解 され る。

この よ うに一 般 原 則 を会 計 ドク トリン と理 解 す る こ とに よっ て わが 国企 業 会 計 原 則 の構 造 が 明確 に な る ので あ る。 一 般 原 則 にか か げ られ て い る個 々 の 原 則 に導 かれ て,損 益 計 算 書 お よび貸 借 対 照 表 作 成 の個 々 の会 計 基 準 が全 体

と して の統 … 的 方 向 を失 わ ず,か つ,効 率 的 に それ ぞれ の役 割 を発 揮 す る こ とに な る。 企 業 会 計 原 則 の 理 論 的構 造 を図 示 す れ ば 図1の 通 りで あ る

。 図1企 業 会計原 則の理 論的構 造

構部 造

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I(導 出)

ー T ド 部 難

⊥L̲一 一一L ‑一 十…一 」

1(導 出)

真 実性 の 原 則 と経 理 自由19

(4)

会 計 ドク トリン と して の一 般 原 則 が,企 業 会 計 原 則 体 系 にお い て重 要 な位 置 と役割 を もつ もの で あ る こ とは上 述 の通 りで あ る。 そ こで 次 に,一 般 原 則 を構 成 す る諸 原 則 の性 格 や 関係 性 を分 析 す る こ とに よっ て,そ の 内部 構 造 を さ らに明確 に し よ う。

一般 原 則 は,第 一 に真 実 性 の原 則 を規 定 し,続 い て第 二 に正規 の簿 記 の原 則,第 三 に資 本 取 引 ・損 益 取 引 区 別 の 原則,第 四 に明 瞭性 の原 則,第 五 に継 続 性 の原 則 を,さ らに第 六 に保 守 主 義 の原 則,第 七 に単 一1生の原 則,ま た注 解1に は重 要 性 の原 則 をそ れ ぞれ 規 定 して い る。 第 二 の正 規 の簿 記 の 原則 以 下 の7つ の諸 原 則 は,そ れ 自体 が具 体 的 内容 を もつ もので は な いが,損 益 計 算 書 お よび貸 借 対 照表 作 成 上 の個 々 の会 計 基 準 に対 し,「 … … す べ きで あ る」

とい っ た当為 的 ・規範 的 な行 為 指 針 を示 した もの で あ る。

た とえ ば,第 六 の保 守 主 義 の原 則 は,「企 業 の財 政 に不利 な影響 を及 ぼす 可 能 性 が あ る場 合 に は,こ れ に備 えて適 当 に健 全 な会 計 処 理 を しな けれ ば な ら な い 」 と規 定 し,企 業 会計 が保 守 的 経 理 を行 う こ とを要 求 して い る。 これ は 企 業 の財 政 に不利 な影 響 を及 ぼす 可 能 性 が認 め られ る場 合 に は,保 守 的 経 理 を行 う こ とに よ って企 業 会 計 原 則 が保 守 的 な利 益 の算 定 を期 待 して い るい わ ば0つ の 重 要 な基 本 方 針(政 策)を 明 示 して い るわ け で あ る。 そ の他 の諸 原 則 も基 本 的 に同様 な性 格 を もつ もの で あ る。

これ に対 して,第 一 の真 実性 の原 則 は,同 じ会 計 ドク トリ ン とはい え,そ の 内容 と役 割 にお い て異 な っ た性 格 とな っ て い る。一般 原 則 の第 一 に は,「企 業 会 計 は,企 業 の財 政状 態 及 び経 営 成 績 に関 して,真 実 な報 告 を提 供 しな け れ ば な らな い。」 と して 真 実性 の原 則 を うた っ て い る。 この真 実 性 の原 則 は, 他 の一 般 原 則 の よ う に会 計 判 断 や 会 計行 為 に対 す る当為 性 や政 策 性 の一 つ を 表 現 した もの とは違 うので あ る。 「真 実 な報 告 」を提 供 すべ し とい う場 合 の真

実性 は,具 体 的 内容 性 を有 す る とい う よ り も,企 業会 計 原則 が達 成 す べ き最 高 目標 を真 実 性 とい う包 括 的 な社 会 的価 値 基 準 で 明 示 した もの と解 す べ きで あ る。

20国 際経営論集No.21991

(5)

この よ うに企 業 会 計 原 則 の基 礎 構 造 を形 成 す る一 般 原 則 の 内部 構 造 は ,そ れ を構 成 す る諸 原 則 の性 格 や役 割 ,あ るい は相 互 の 関 係 性 に お い て 大 き く二 つ の階 層 に分 け る こ とが で きる。 真 実 性 の原 則 を下 部 構 造(会 計 モ ー レス)

と し㌔

)そ の他 の諸 原 則 を上 舗 造(旛 の会 計 ド外 リン)と す る二 騰 造

で あ る 。 こ の 関 係 を 図 解 で 示 せ ば 図2の り で あ る

図20般 原 則 の 構 造

「}"楠 一物軸 一 鴨 一 一 晒 軸 『 輌 一 一 『 欄一『}一}一 脚「 「 一「

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1 壷 要 性 の 原 則 1

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性 の 原 則

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i 継 続 性 の 原 則

11 明 瞭 性 の 原 則

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窪 雰

原 則 f

茸==二=1二===

真実性 の原則

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L.̲̲̲̲̲̲̲.̲̲̲̲̲̲ ̲̲̲.̲̲̲̲ ̲.̲̲」

﹁ ー 釦 崩 臼 夘 旧 引 刀 引 衡 ﹁ ー ﹂ ﹁ ] 目 ー ー ー 8 ] 且

ド ク ト リ 囚 劉 ﹂ 1 即 斜 モ ー レ 召 , 墓 ‑ ﹁ ー ﹁ ; ー ﹂

会 計 モ ー レス と して の真 実 性 の原 則 は,企 業 会 計 原則 に基 づ い て実施 され る企業 会 計 の達 成 す べ き最 高価 値(目 標)を 示 す と同時 に,そ の 他 の一 般 原 則 や諸 基準 に対 して機 能 上 の 方 向性 ・統 一 性 を与 え る根 本 規 範 とな る もの で あ る と理 解 され る。 真 実 性 の 原則 を根 本 に位 置 づ け る こ とに よ っ て行 為 規 範 と して の企 業 会 計 原則 の 自律 性 の確 保 が 可能 とな る の で あ る

と こ ろで,真 実 性 の原 則 に規 定 す る 「真 実 な報 告 」 とは何 を意 味 す る ので あ ろ うか。 真 実性 の原則 が 企 業 会 計 の達 成 す べ き最 高 価値 を示 す性 格 の根 本 命 題 で あ る点 に つ い て は上 に述 べ た通 りで あ るが,実 は最 高 の価 値 で あ る「真 実 な報 告」 の 実 質 的 内 容 は必 ず し も明 らか で は な い。 つ ま り,真 実 性 の 原則 の規 範 的 性 格 は明瞭 とな っ たが ,価 値 的 内 容 は特 定 され て い な いの で あ る。

真 実性 の 原 則 と経 理 自 由21

(6)

こ こで は問題 が2つ 認 識 され な けれ ば な らな い。1つ は,真 実性 の 内 実 が ど の よ う に規 定 され る のか とい う問題 で あ り,他 の1つ は,そ の よ うな真 実 性 の確 保 が どの よ うに して保 証 され るの か とい う問題 で あ る。

第1の 点 に つ い て は,会 計 目的 との 関連 で第3節 で や や詳 し く考 察 す る こ とにす るが,こ こで 要 約 的 に い えば,真 実 性 の 内実 は社 会 的 ・経 済 的情 況 を 背 景 とした会 計 目的観 や 会 計 理 論 に よ って規 定 され る。 従 って,企 業 会 計 に

対する社会腰 求が歴畑 に変化す楓 会計 目艦 や会計職 の変化 を通

じて 「真 実 な報 告 」 の 内容 が 相 対 的 に変 化 す る特 質 の概 念 で あ る。

次 に,真 実 性 の保 証 は企 業 会 計 原 則 上 どの よ うな メ カニ ズ ム に よっ て確保 され るの か 。先 にみ た …般 原 則 の理 論 的構 造 に よれ ぼ,真 実 性 の原 則 以 外 の

7つ の一 般 原 則 は,各 々 が今 日の企 業 会 計 にお け る一 般 的 方針 や政 策 を表 明 した もの で あ る。 そ こで は相 互 に影 響 し合 っ た り,逆 に矛 盾 し合 う関 係 が み られ る。 この よ うな諸 々 の0般 原 則 を全体 と して統 御 し,企 業 会 計 の 目的達 成 の た め に方 向 的統 一一性 を与 え る もの が真 実性 の 原 則 とい う こ とで あ っ た。

つ ま り,他 の一 般 原 則 は真 実 性 の原 則 に よ って統 御 され る こ とに よ って,各 々 が 会計 原 則 と して の機能 を正 当 に発 揮 し,さ らに諸 会 計 規 準 の準 拠 枠 を提 供 す る こ とが で きるの で あ る。 真 実性 の 原則 と他 の一 般 原 則 との この よ うな関 係 の認 識 は,真 実性 の原 則 が 要 求 す る 「真 実 な報 告 」 を どの よ う に達 成 す る

か とい う当面 の問 題 に対 す る解 答 を用意 す る こ とにな るの で あ る。

真 実性 の 原則 は,文 言上,「 真 実 な報 告 」を提供 しな けれ ば な らない と規 定 され て い るが,真 実 な報 告(会 計 処 理 も含 む)を 提 供 す る企 業 会 計 原 則 上 の 手 続 に つ い て は これ を明規 せ ず,い わ ゆ る委 任 規 定 とい う性 格 を もって い る。

そ こで,企 業 会 計 原 則 の構 造 理 解 に基 づ き,会 計 モー レス た る真 実性 の原 則 は,狭 義 会 計 ドク トリンた る正 規 の簿 記 の原 則,明 瞭 性 の原 則,継 続 性 の原 則 な どの他 の一 般 原則,及 び それ らに準拠 した諸 会計 基 準 の適 切 な働 きを通 じて,企 業 会計 原 則 の根 本 規 範 と して の実 質 を確 保 す る とい うメ カニ ズ ム と

の 解 さ れ る の で あ る 。

22国 際 経 営 論 集No21991

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この よ うに考 え る な らば,企 業 の作 成 す る損 益 計 算 書 や貸 借 対 照 表 が企 業 の真 実 な経 営 成 績 や財 政 状 態 を表 示 す る とい う場 合 ,こ れ らの財 務 報 告 が一 般 原則 の第 二 正 規 の簿 記 の原 則 以 下 の7つ の一 般 原 則 に準 拠 し,ま た,損 益 計 算 書 原 則 や 貸借 対 照 表 原 則 の 各会 計 基 準 に従 っ て作 成 され た もの で あ る と

い う こ とを意 味 して い る。 た とえ ば,有 形 固定 資産 の利 用 に伴 う経 済 価 値 の 減 少 とい う会 計 事 象 に対 して減 価 償 却 手 続 を適 用 す るに あ た っ て,定 額 法 を 採 用 して い る場 合,毎 期 継 続 して これ を適 用 す る とい う会 計 方針 が 維持 され な けれ ば財 務 報 告 の期 間比 較 性 が 損 わ れ るば か りか ,経 営 者 に よ る恣 意 的 な 利 益 操 作 が行 わ れ る こ とに な る。 これ は一 般 原 則 の第 五継 続 性 の 原 則 に従 っ た会 計 処 理 が 行 わ れ な い こ とに よ り}真 実性 の原 則 の求 め る「真 実 な報 告 」が 達 成 され な い とい う こ とを説 明 して い る。 また ,損 益 計 算 書 や貸 借 対 照 表 で の表 示 に あ た って,純 額 表示 を行 っ た り,科 目の 配列 が 無 原 則 で あ った り, あ る い は会 計 方 針 が 注 記 され なか っ た りす るな ど明 瞭 な報 告 を怠 っ た場 合, 真 実 性 の 原則 の予 定 す る 「真 実 な報 告 」 を確 保 す る こ と はで きな い とい う こ

とに な る。

この よ うに企 業 会 計 上 の真 実性 は,正 規 の簿 記 の原 則 以 下 の諸 原 則 や諸 基 準 の遵 守 の結 果 保 証 され る もの で あ り,し か も,か か る諸 原 則 や 諸基 準 に準 拠 す る こ とに よ っ て真 実 性 の 内実 が 特 定 され る とい う本 質 を もつ もの で あ る

こ とが理 解 され な けれ ばな らな い。

㎜.継 続 性 の原 則 の成 立基 盤

真 実 性 の原 則 の企 業 会 計 原 則 体 系 に お け る理 論 的位 置 や機 能 は前 節 で述 べ た通 りで あ る。 一 般 原 則 にあ って は真 実性 の原 則 が 他 の7つ の 一般 原 則 の上 位 にあ っ て,そ れ らの諸 原 則 の働 きを,全 体 と して会 計 目的達 成 の統 一 的 方 向 に機 能 す べ く統御 して い る。 他 方 で,会 計 処 理 及 び報 告 の プ ロセ ス にお い て,他 の7つ の一 般 原 則 とそれ らに準 拠 した諸 会 計 基 準 が遵 守 され る こ とに

真実性の原則と経理自由23

(8)

よ っ て真 実性 の実 質 的 内容 が 確 保 され る とい う関 係 が み とめ られ る。

さ て そ こで,真 実 性 の 原則 の本 質 を さ らに考 察 す るた め に,会 計 処 理 に お け る真 実 性 を保 証 す る継 続性 の原 則 に つ い て検 討 を加 え る こ とに した い。 継 続 性 の原 則 につ いて は企 業 会 計 原 則 の本 文 にそ の意 義 が 定 め られ,ま た注解 3に そ の性 格 が 規 定 され て い る。一 般 原則 の第 五 に は,「企 業 会 計 は,そ の処 理 の原 則 及 び手 続 を毎 期 継 続 して適 用 し,み だ りに これ を変 更 して はな らな い。」と継 続 性 の原則 を規 定 して い る。 これ は,企 業 会 計 が採 用 した会 計 処 理 の原 則 や 手続 を,毎 期 継 続 して適 用 す る こ とに よ って財 務 報 告 の真 実 性 が 確 保 され る こ とに な る との意 味 で あ る。 も し特 定 の政 策 的 な意 図 を もっ て,正

当 な理 由が な い に もか か わ らず従 来 の会 計 処 理 の原 則 や手 続 を変 更 した場 合 に は,企 業 の経 営 成 績 や 財 政状 態 に関 す る真 実 な報 告 が ゆが め られ る こ とに な る。

企 業 が選 択 した会 計 処 理 の 原則 及 び手 続 を毎 期 継 続 して適 用 しな い場 合 に は,同 一 の会 計 事 実 につ い て 異 な る利 益 額 が 算 出 され る こ とにな る。 た とえ ば,い ま取 得 原 価¥1,000,000,残 存 価 額¥100,000,耐 用 年 数5年 のA機i械 につ い て 定額 法 に よる減 価 償 却 を実施 す る とす れ ば,各 年 度 の減 価償 却 費 は, (¥1,…,… 一¥1・ ・,…)×15の 算式 に よ り¥18・ ・… とな る・

定 額 法 に よれ ば各 期 を通 じて¥ego,000が 減 価 償 却 費 と して期 間利 益 に チ ャー ジ され る。 そ の結 果,こ の定 額 法 を継 続 して適 用 す る限 り,各 期 の純 利 益 額 は減 価 償 却 費 に関 す る限 り,同 一 計 算 方 法 の も とで 算 出 され る こ と とな

り,財 務 諸 表 の期 間 比 較 が可 能 とな る。 これ は真 実性 の原 則 の要 求 す る と こ ろで あ る。

これ に対 して,仮 に第2年 度 に お い て 同A機 械 に つ い て定 率 法 に よ る減 価 償 却 を行 っ た とす れ ば,減 価 償 却 費 は,(¥1,000,000‑¥180,000)×0.412の

算 式 に よ り¥337,840と な る。も し仮 に,当 該 企 業 の 第2年 度 の減 価 償 却 費 控 除 前 の純 利 益 額 が¥500,000だ っ た とす れ ば,減 価償 却 費 控 除 後 の純 利 益 額 は

¥162,160と な る。 この金 額 はs減 価 償 却 費 が前 年 度 と同 一 の方法,す な わ ち

24国 際 経 営 論 集No.21991

(9)

定 額 法 に よ っ て算 定 され た な らば¥320,000と な るべ き と こ ろ を,前 年 度 と異 な る方法 す な わ ち定 率 法 を適 用 した こ とに よ り算 出 され た純 利 益 額 とい う こ とに な る。 この 方 法 の 変 更 に正 当 な理 由 が見 い出 せ な い と した ら,明 らか に 継 続 性 の原 則 が 適 用 され な か っ た こ とを意 味 す る。

この よ うに して,継 続 性 の原 則 に違 反 した会 計 処 理 が 行 わ れ た場 合 に は , 同一 の会 計 事 実 につ い て異 な る費 用 額 や利 益 額 が 算 出 され る こ とに な る。 そ の結 果,財 務 諸表 上 の 金額 の期 間 比 較 が困 難 とな り,財 務 諸 表 情 報 に基 づ く 利 害 関 係 者 の判 断 と意 思決 定 を誤 らせ る こ とに な る。 真 実 性 の原則 の要 求 す

る と ころ は,企 業 の経 営 成 績 や財 政 状 態 に関 して 「真 実 な報 告 」 を提供 し, も って会 計 目的 の実 現 を はか る こ とに あ る。企 業 の 提 供 す る財 務 報 告 は,次 節 で考 察 す る通 り,企 業 の 利 害 関 係 者 の適 切 な判 断 形 成 を助 け,も っ て合 理 的 な意 思 決 定 を行 わ しめ る こ とに あ る と解 され る。 真 実性 の原則 の予 定 す る 価 値 内容 は この よ うな会 計 目的 の実 現 に お かれ て お り,目 的規 範 と して の会 計 モ ー レ ス と して特 質 づ け られ る。

継 続 性 の原 則 はか か る真 実 性 の原 則 を,会 計 処 理 の面 で 保 証 す る重 要 な 会 計 ドク トリンで あ る。 真 実性 の原 則 の要 請 に基 づ き継 続 性 の原則 は,会 計 処 理 の 原則 及 び手 続 の適 用 の局 面 で機 能 す る こ とに な るの で あ る。 す なわ ち, 企 業 は,い っ た ん採 用 した会 計 処 理 の 原則 また は手 続 を,正 当 な理 由 に よ り 変 更 を行 う場 合 を除 き,財 務 諸 表 を作 成 す る各 時期 を通 じて継 続 して適 用 し な け れ ば な らな い の で あ る。

さ て,継 続 性 の原 則 が企 業 の財 務 報 告 の真 実 性 を確 保 す る た め の会 計 原 則 上 の 担保 と して の役 割 を もつ もの で あ る こ とが 明 らか に され たが ,こ の継 続 性 の原 則 が成 立 す る た め に は1つ の重 要 な 前提 の認 識 が 必 要 とされ る。 会 計 原 則 に お け る継 続 性 の 原則 の存 立 を基 礎 づ けて い る考 え方 こそが 経 理 自由 の 前提 で あ る。 企 業 会 計 に お け る経 理 自 由 と は,一 般 に認 め られ た会 計 原 則 の 中 か ら,企 業 の諸 特 性 に照 ら して,も っ と も妥 当 な会 計 処 理 の原 則 や 手 続 を, 企 業 の 主体 的判 断 に基 づ い て選 択 適 用 で きる とす る考 え方 で あ る と説 明 され

真実性の原則と経理自由25

(10)

7) て い る。

わ が 国 企 業 会 計 原 則 の注 解3「 継 続 性 の原 則 につ い て 」は,「 企 業 会 計 上継 続性 が 問 題 とされ るの は,一 つ の 会計 事 実 につ い て二 つ 以 上 の会計 処 理 の原 則 又 は手 続 の選 択 適 用 が認 め られ て い る場 合 で あ る。」と規 定 して い る。 これ は企 業 会 計 上,継 続 性 の原 則 が 適 用 され る第1の 条件 を示 した もの と解 され る。1つ の会計 事 実 に つ い て た だ1つ の会 計 処 理 の 原 則 また は手 続 しか 存 在 しな いか,あ るい はた だ1つ しか適 用 が認 め られ て い な い場 合 に は,企 業 の 諸 特 性 に関 係 な く当該 原則 ま た は手 続 しか 適 用 し えな い こ とに な る。 こ うい う場 合 は,会 計 ドク トリ ン と して ど うい う考 え方 を適 用 す べ きか とい う問題 その もの が発 生 しな い こ とに な る。 従 って,「 継 続 適 用 しな けれ ば な らな い 」 とす る会計 原 則 が 必 要 と され るの は,1つ の会 計 事 実 につ い て選 択 適 用 で き る複 数 の会 計 処 理 の 原則 また は手 続 が存 在 す る こ とが 要 件 とな るので あ る。

こ こで注 意 され な けれ ば な らな い の は,1つ の会 計 事 実 に対 す る複 数 の会 計 処 理 の 原則 や手 続 とい っ た場 合,こ れ らの原 則 や手 続 はい ず れ も一 般 に公 正 妥 当 な,あ る い は 「正 当 な」 会 計 処 理 の 原則 また は手 続 と して認 め られ て

い る こ とが 含 意 され て い る点 で あ る。 一 般 に公 正 妥 当 と認 め られ な い原 則 や 手 続 の適 用 は,企 業 会 計 目的 の達 成 に照 ら し,継 続 性 の原 則 及 び真 実 性 の原 則 の坪 外 にあ る問題 な の で あ る。 この よ うに正 当 と認 め られ る代 替 的 な会 計 処 理 の原則 や 手続 が複 数 存 在 す る こ とが,後 述 す る よ う に,経 理 自由 の 考 え 方 が 及 ぶ範 囲 を限 定 す る前 提 要件 と もな るの で あ る。

次 に,継 続 性 の 原則 が 適 用 され るた め に は,1つ の会 計 事 実 に対 して複 数 存 在 す る代 替 的 な 会計 処 理 の 原則 や 手 続 の間 で,適 用 上 の優 劣 が つ け難 い場

合 で あ る と考 え られ る。 同 一 の会 計 事 実 に つ い て複 数 の正 当 とみ な され る会 計 原 則 や 手 続 が 存 在 す る として も,そ の 中 の1つ が他 の す べ て の 原則 や手 続 に対 して い か な る場 合 に も優 位 にあ る こ とが 明 らか な場 合 に は,当 然 に優 位 に あ る原 則 や手 続 が選 択 適 用 され る こ とに な る。 こ うい う局 面 で は劣 位 に あ る他 の会 計 原則 や手 続 を選 択 す る こ とは考 え られ な い の で あ るか ら,あ えて

26国 際 経 営 論 集No.2×991

(11)

継 続 性 の 原則 を適 用 して優 位 に あ る特 定 の原 則 や手 続 の選 択 適 用 の継 続 性 を 強 制 す る必 要 はな い の で あ る。 実 質 的 に継 続 性 の原 則 の適 用 が 必 要 と され る の は,相 互 に優 劣 の つ け難 い正 当 な会 計 原 則 や 手 続 が2つ 以 上 存 在 し

,従 っ て,ど れ を選 択 適 用 して も企 業 の財 務 内容 に関 す る 「真 実 な報 告 」 を損 ね る こ とが な い と考 え られ る場 合 に限 られ る ・)であ ぎ.そ もそ も繍 生の 原則 が 会計 原則 の重 要 な1つ と して認 め られ る よ うに な っ た の は,会 計 処 理 の原 則 や手 続 が 多様 化 し,相 互 に優 先 的 な選 択 適 用 の基 準 が 見 い出 し得 な か った こ

10)

とに あ る とされ て い るの で あ る。

以 上 の よ うに継 続 性 の原 則 の適 用 条件 と して,1つ の会 計 事 実 に対 す る公 正 妥 当 な代 替 的 原 則 や 手 続 が 複 数 存 在 し,し か も,相 互 間 に適 用 上 の優 劣 が つ け難 い こ とが前 提 とな る。 この よ うな条 件 が充 た され た と き経 理 自由 の考 え方 が 実 質 的 に機 能 す る こ とにな る。 経 理 自 由 と は,前 述 した通 り,複 数存 在 す る会 計 処 理 の原則 や手 続 の 中 か ら,企 業 の諸 特 性 に照 ら して最 も妥 当 な 原 則 や手 続 を,企 業 の 主体 的判 断 に よっ て選 択 適 用 で きる こ とを意 味 して い る。 そ の場 合,選 択 適 用 で きる会 計 原則 や 手続 は,い ず れ も一 般 に公正 妥 当 と認 め られ た範 囲 の もの に限 られ る こ とは言 う まで もな い。 つ ま り,正 当 と 認 め られ た原 則 や 手続 の枠 内 で の選 択 の 自由が 企 業 に委 ね られ て い る と解 さ れ るの で あ る。 そ の よ うな意味 で,継 続性 の原 則 存 立 の前 提 と して の経 理 自 由 は,無 制 限 な会 計 選 択 の 自由 で は な く,一 定 の範 囲 内 で の選 択 自由 が認 め

られ て い る もので あ る こ とが 理 解 され る。

経 理 自由 の 考 え方 が継 続 性 の 原 則 の前 提 とな って い る点 に つ い て さ らに深 く考 察 して み よ う。 継 続 性 の 原則 は企 業 会 計 の真 実 性 を確 保 す る た め に,企 業 が す で に採 用 して い る会 計 処 理 の原 則 や 手続 を,各 会 計 期 間 を通 じて継 続

して適 用 す る こ とを要 求 す る会 計 原 則 で あ る。 この 原 則 が 会 計 ドク トリン と して わ が 国企 業 会 計 原則 の 一 般 原 則 の 中 で重 要 な位 置 を 占 め て い る の は,真 実 性 の原 則 を会 計 処 理 の 面 で 実 質 的 に保 証 す る役 割 をに な って い る か らで あ る。 継 続 性 の原 則 が適 用 され る こ とに よ っ て,企 業 会 計 の提 供 す る財 務 報 告

真実性の原則と経理自由27

(12)

が 企 業 の財 務 内容 を適 正 に表 示 し,期 間 比 較 を可 能 な ら しめ るので あ る。 か か る継 続 性 の 原則 が 実 質 的 に意 義 を有 す るの は,同 一 の会 計 事 象 に対 す る複 数 の会計 原 則 や 手 続 の 中 か ら,い ず れ を選 択 適 用 す る こ と も可 能 で あ り,ま た,い っ た ん採 用 した会 計 原則 や手 続 で あ って も,真 実 性 の確保 の上 か ら よ

り正 当 な原 則 や手 続 に変 更 す る こ とが 可 能 で あ る とい う前 提 が認 め られ た場 合 で あ る。 経 理 自 由 の考 えか た は この よ う な前 提 を充 たす た め に必 要 とされ る概 念 で あ り,従 っ て,継 続 性 の原 則 の 成 立 を基 礎 づ け る重 要 な要 件 とい う

11) こ とが で き る。

企 業 会 計 にお け る経 理 自 由 の考 えか た は,1つ の会 計 事 象 に対 す る複 数 の 代 替 的 な会 計 原 則 や 手 続 の 中 か ら,そ の 時 の企 業 の諸 事情 に適 合 した最 も妥 当 な原 則 や手 続 を選 択 適 用 す る こ とが 要 請 され る2つ の局 面 で作 働 す る こ と

にな る。 す な わ ち第1に は,企 業 会 計 の起 点 にお い て複 数 の会 計 原 則 や手 続 の中 か ら適 切 な もの を選 択 適 用 す る局 面 で あ る。 この局 面 は継続 性 の 原 則 が 実 際 に適 用 され る前 段 階 で あ るが,継 続 す べ き会 計 処 理 の原 則 や手 続 が 第0 義 的 に決 定 され る重 要 な段 階 で あ る。 継 続性 の原 則 が意 味 を もつ た め の第1

の前 提 条 件 とい え よ う。 まず,こ の段 階 で,1つ の会 計 事 象 に対 して正 当 と 認 め られ る複 数 の会 計 処 理 の原 則 や手 続 が あれ ば,そ の 中か ら最 も適切 な唯 一 の原 則 や 手 続 が 選 択 され,適 用 され る ので あ る。 そ して,基 本 的 に はい っ た ん採 用 され た会 計 原則 や 手 続 は毎 期 継 続 して適 用 され る こ とにな る。

経 理 自 由の 考 えか たが 機 能 す る第2の 局 面 は,第1の 局 面 で い った ん選 択 され た会計 原 則 や 手 続 が,継 続 性 の原 則 に よ って各 期 を通 じて継 続 適 用 され て い る状 況 の 中 で,変 更 す べ き事 由 が 生 じた こ とに よっ て,新 た に他 の会計 原 則 や 手 続 を選 択 適 用 す る局 面 で あ る。 も し,い か な る場 合 に もい っ た ん採 用 した会 計 原 則 や手 続 を他 の もの に変 更 す る こ とが 認 め られ な い とい う こ と

で あれ ば,こ の局 面 で経 理 自 由 の考 えが働 く余 地 はな い。 しか しなが ら,実 際 に は企 業会 計 の真 実性 を確 保 す るた め に,特 別 の事 情 の変 化 が生 じた な ら ば,従 来 の会 計 原則 や 手 続 か ら他 の原 則 や手 続 へ の変 更 が認 め られ て い る も

28国 際経営論集No.21991

(13)

の と考 え られ る・企 業 会 計 原 則 注 解3に1ま ,「い っ た ん採 用 した会 計 処 理 の原 則 又 は手 続 は・正 当 な理 由 に よ り変 更 を行 う場 合 を除 き」洛 時 期 を通 じて継 続 適 用 しな けれ ば な らな い と規 定 され て い るが ,こ れ はr正 当 な 理 由」 が あ れ ば会 計 原 則 や手 続 を変 更 す る こ とが認 め られ る こ とを表 明 した もの で あ る

と解 され る。

経 理 自由 の 考 えか たが,複 数 の会 計 処 理 の 原則 や 手 続 の問 にお け る選 択 の 自 由 とい う領 域 で機 能 す る こ とは明 らか で あ るが,そ れ と継 続 性 の原 則 との 関係 とい う場 合 に は,経 理 自由 は継 続 性 の原則 の存 立 の前 提 要件 で あ る と考 え るの が最 も合 理 的 で あ る。 け だ し,継 続 性 の原 則 は あ る特 定 の選 択 され た 会計 処理 の原則 や手続 が継髄 用 され る ことを問題1こす るか らで 諾

IV.真 実 性 の 原 則 と経 理 自 由 の 前 提

さ て,継 続 性 の 原 則 の 前 提 要 件 で あ る経 理 自 由 の 考 え は

,企 業 会 計 原 則 の 体 系 の 中 で,い か に し て 企 業 会 計 の 真 実 性 を達 成 す る べ く機 能 す る の で あ ろ う か ・ 本 節 で は・ これ まで 述 べ て き た 経 理 自 由 の 前 提 と真 実 性 の 原 則 と の 関 係 に つ い て 考 察 す る。 そ の た め に は ま ず ,真 実 性 の 原 則 の 想 定 す る 実 質 的 な 価 値 内 容 を規 定 す る 企 業 会 計 の 目 的 が 明 らか に さ れ な け れ ば な ら な い

。 ア メ リカ 公 認 会 計 士 協 会(TheAmericanInstituteofCertifiedP

ublic Accountants・AICPA)の 会 計 原 則 審 議 会 の ス テ イ トメ ン ト第4号(1970年)

は,財 務 会 計 の 基 本 目 的 を,「 財 務 諸 表 の 利 用 者 が

,経 済 的 意 思 決 定 を 行 う上 に有 用 な ・ 企 業 に 関 す る計 数 的 財 務 庸報 を提 供 す る こ と」 槻 定 して い13)

。 企 業 会 計 の 提 供 す る財 務 諸 表 情 報 が,情 報 利 用 者 の 経 済 的 意 思 決 定 に と っ て 有 用 な も の と な ら な け れ ば な らな い こ と を明 確 に 述 べ た 注 目 す べ き ス テ イ ト

メ ン トで あ る・ この よ う な 企 業 会 計 の 目 的 を さ ら に徹 底 し た の が ア メ リカ 財 務 会 計 基 準 審 議 会(FinancialAccountingStandardsBoard

,以下 単 にFASB とい う)の 見 解 で あ る。

真実性の原則 と経理 自由29

(14)

FASBは,1978年 の ス テ イ トメ ン ト第1号 の 公 表 か ら は じ ま る 一 連 の概 念 朧 研 究 プ 。 ジ ェ ク トの 総 拡 大 す る情 幸艮要 求 に応 えて,従 来 の フ ィナ ン

シ ャ ル ・ス テ イ トメ ン ツ の 情 報 限 界 を 指 摘 し,さ ら に,そ れ を 中 心 領 域 に 含 み な が ら も さ ら に 広 範 な 外 部 財 務1青報 を 提 供 す る フ ィ ナ ン シ ャ ル ・リ ポ ー テ ィ

ン グ を 構 想 す る。 こ のFASBの フ ィ ナ ン シ ャ ル ・リ ポ ー テ ィ ン グ に は ・ 本 来 の 企 業 会 計 メ カ ニ ズ ム に よ り作 成 さ れ る財 務 諸 表(FinancialStatements)及

び そ の 注 記 情 報(NotestoFinancialStatements)以 外 に,補 足 情 報(Supple‑

mentaryInformation),そ の 他 の 任 意 的 財 務 情 報(OtherMeansofFinancial

Reporting),さ ら に は そ の 他 の 非 財 務 的 情 報(OtherInformation)が 加 わ っ た 広 い 範 囲 の 情 報 が 含 ま れ て い る。 そ して,こ の よ う な 外 部 財 務 報 告 の 第1の

目 的 は,企 業 の 投 資 家 等 に 対 し合 理 的 な 投 資 等 経 済 的 意 思 決 定 を行 わ し め る こ と に あ る と指 摘 し て い る。 す な わ ち,「 財 務 報 告 は,現 在 お よび 将 来 の投 資 者,債 権 者 そ の 他 の 情 報 利 用 者 が,合 理 的 な 投 資,与 信 お よ び こ れ に 類 似 す

ユらラ

る意 思決 定 を行 うの に有 用 な情 報 を提 供 しな けれ ばな らな い 。」

FASBの この財 務 報 告 の 目的 観 は,か な り広 い定 義 で あ り・必 ず し も外 部 報 告情 報 の み に限定 され な いが,し か しなが ら主 た る情 報 利 用 者 は企 業 外 部

16)

の 利 害 関 係 者,と りわ け投 資 者 と債 権 者 が想 定 され て い る。 財務 報 告 の 目的 を投 資 者,債 権 者 等 の合 理 的 な経 済 的 意 思 決 定,す なわ ち投 資,与 信 そ の他 の類 似 の 経 済上 の意 思 決 定 を行 う上 で 有 用 な あ らゆ る情 報 を提 供 す る こ とに

17)

あ る とす るFASBの 目 的 観 は今 日一 般 に異 論 な く受 け 入 れ られ て い る 。 FASBのSFACNo.1は か か る一 般 的 目 的 規 定 に続 い て,さ ら に 提 供 さ れ る情 報 内 容 を特 定 し て,財 務 報 告 の 第2及 び 第3の 目 的 を 明 らか に して い る 。 FASBは,多 様 な潜 在 的 情 報 利 用 者 の 共 通 し た 関 心 事 は好 ま し い キ ャ ッ シ

ュ.フ ロ ー を 生 み 出 す 企 業 の 能 力 に あ る と認 識 し,外 部 財 務 報 告 の 焦 点 を 投 資 及 び 与 信 の た め の 情 報 提 供 に お か れ る と説 明 してbる 。 そ して,こ の よ う な 認 識 に基 づ き,財 務 報 告 の 第2の 目 的 を,投 資 家 や 債 権 者 な ど の 期 待 純 キ ャ ッ シ ュ 受 取 額(prospectivenetcashinflows)の 金 額,時 期 及 び 不 確 実 性 を

30国 際経営論集No・21991

(15)

縦 す るの に役 立 つ情 報 を提 供 す る こ と1こあ る と規 定 して い砦.ま た,投 資 家 や債 儲 等 が 企 業 の財 撚 動 性 等 を評 価 す る上 で助 け とな る よ うに

,企 業 の経 済 的 資源,そ れ らの資 源 に対 す る請 求権(債 務)及 び そ れ らの 変動 にっ い て の情 報 を提 供 す る こ とが ,財 務 幸賠 の第3の 目的 で あ る と して 曙 。

上 述 の 第2目 的 と第3目 的 は,第1のm般 目 的 の 特 殊 化 を は か り

,さ ら に

は提供 され る情蜘 特 質 を も説明す る もの とな って 曙

.こ こで 飽 括的 で はあ るが第1の 目的 が 明 らか に され れ ば論 述 の展 開 は充 分 で あ る

。FASBは この 目的 を財 務 報 告 の 目的 と して規 定 して い るが,他 方 でSFACNo.1は,

「基本 的 に は・ 財 務 報 告 と財.:表 は同 じ 目的 を もつ」 と解 して いZ1)

.従 っ て,こ の 第1の 目的 を もっ て企 業 会 計 の外 部 報 告 目的 と理 解 す る こ とが で き る で あ ろ う。

以 上 の よ うに,今 日の企 業 会計 の 基本 目的 はi企 業 を と りま く多 くの利 害 関 係 者 の経 済 的意 思 決 定 を合 理 的 に行 わ しめ る こ とに あ り,そ の た め に企 業 の状 況 に関 す る 「真 実 な報 告1を 提 供 す る こ とが 要求 され て い るの で あ る

。 わ が 国企 業 会 計 原 則 の一 般 原 則 の第1に あ る真 実性 の原 則 も

,こ の よ うな企 業 会 計 の一 般 的 目的観 に依 拠 して そ の 内実 が 規 定 され る と考 え られ る

。 さて, この よ うな企 業 会 計 の 目的 を内在 化 させ た真 実 性 の原 則 は

,経 理 自由 の観 点 か ら は どの よ うに説 明 され る ので あ ろ うか。

そ もそ も経 理 自由 の 考 えか たが認 め られ る根 本 の背 景 は企 業 経 理 の個 別 性 に求 め られ る。 個 々 の企 業 はそ の業 種 ,規 模,経 営 方 針 等 を異 に し,従 っ て また,会 計 シ ステ ム を め ぐる諸 事情 も相 違 す るの が通 常 で あ る

。 企 業 会 計 の 歴 史 的 発展 過程 で,個 別 の会 計 実践 はか か る企 業 の諸 特 性 に適 合 す る もの と

して形 成 され,ま たs慣 行 として育 って きた もの で あ る

。 そ して,こ れ らの 会 計慣 行 は,あ る時 点 で,そ の社 会 で の合 意 に基 づ き,一 般 に公 正 妥 当 な会 計 原 則 と して と りま とめ られa一 つ の有 力 な社 会 的 行 為 規 範 と して す べ て の 企 業 の会 計 実 践 を指 導 す る こ とに な22).この よ う嬉1青 に もか か わ らず

,1つ の会 計 事 実 に は1つ の会 計 処 理 の 原 則 や 手 続 の み を認 め

,こ れ をす べ て の企 真実性の原則と経理自由31

(16)

業 に統 一 的 に適 用 させ る とす れ ば,種 々 の不 都 合 や 無 理 が 生 ず る こ とに な る・

統 一 的 な会 計 原則 や手 続 の適 用 が 特 定 業 種 の企 業 に合 理 的 で あ った り,あ る い は特 定 規模 の企 業 に は現 実 的 で な か った りす る ので あれ ば,す べ て の企 業

を対 象 とす る会 計 原 則 に対 す る社 会 的 信頼 性 は失 わ れ る こ とにな る。

企 業会 計 の行 わ れ る個 々 の企 業 の諸 特 性 を考 慮 の外 にお い て,1つ の会 計 事 象 に対 し単 一 の会 計 原 則 や手 続 を統 一 的 に適 用 せ しめ る の で あ れ ば,そ れ

に よ って作 成 され る財務 諸 表 等 の情 報 は企 業 の経 営 成 績 や財 政 状 態 等 の財 務 内容 の実 態,す なわ ち財 務 内容 の個 別 性 を適 正 に反映 した もの と はな らな い

とい え よ う。 そ の結 果,財 務 諸 表 等情 報 に対 す る信 頼 性 が 失 わ れ るば か りか, 情 報 利 用者 の 企業 の状 況 に関 す る適 正 な判 断 を誤 ま らせ,か つ,合 理 的 な各 種 の 経 済 的 意 思 決 定 を危 う くす るお そ れ が 強 い ので あ る。 この こ と は ま さ し

く企 業 会 計 の真 実 性 の 要求 に反 す る こ と とな るの で あ る。 こ こ にお い て1つ の会 計 事 象 に対 す る公 正 妥 当 な複 数 の会 計 処 理 の 原則 や手 続 を容 認 し,そ の 選 択 適 用 に あ た っ て は,企 業 の諸 特 性 に照 して 各企 業 が 主体 的 判 断 に基 づ い て 自由 に行 え る よ うにす る。 企 業 会計 に お け る経 理 自由 の必 要性 は この よ う

  な論 理 に導 か れ て い るの で あ る。

次 に,企 業 会 計 の 目的 に規 定 され た 真 実性 の原 則 の実 体 的 内容 に照 ら して, 経 理 自由 の前 提 の 意味 す る と こ ろ を さ らに堀 りさげ て み よ う。 企 業 会 計 原則

が 真 実性 の原 則 で 求 め て い る 「真 実 な報 告 」 の提 供 は,先 に考 察 した と こ ろ か ら,企 業 を と りま く多 くの利 害 関係 者 が,そ の経 済 的 意 思 決 定 を合 理 的 に 行 うに あ た って有 用 な財務1青報 を提 供 しな けれ ば な らな い とい う こ とを意 味 す る と解 され る。 この場 合,企 業 の財 務 内容 の 実 態 を適 正 に反 映 す る こ とが 真 実 性 を保 証 す る こ とに な る ので あ る。 そ の た め に は,企 業 の諸 特 性 に照 ら

して,各 企 業 に最 も適 合 す る会 計 処 理 の 原則 や手 続 を 自 由 に選 択 適 用 で きる

24)

よ うに企 業 の主 体 的判 断 の合 理 的範 囲 を広 く認 め る こ とが 要 求 され る。 企 業 の 主体 的判 断 の余 地 を狭 く解 す る考 えか た に立 て ば,各 企 業 の経 理 の個 別 性 は軽 視 され,財 務 内 容 の個 別 性 が適 正 に報 告 され ない お それ が あ るか らで あ

32国 際経営論集No・21991

(17)

る。 そ うなれ ば企 業 会 計 の 真 実 性 を確 保 す る こ とが 困難 とな る

そ れ で は,企 業 の主体 的 判 断 の認 め られ る合 理 的 範 囲 は どの よ うに考 え た ら よい の で あ ろ うか・ この 問題 は・ 継 続'性の原 則 にお け る 「正 当 な理 由」 に よ る会 計 処 理 の原則 や 手 続 の 変更 の 問題 と密接 な関 係 を もつ の で あ る

.̲般 原則 の継 続 性 の原 則 は経 理 自 由 の前 提 に立 って い る こ と は前 節 で明 らか に し た と ころで あ る。 継 続性 の原 則 の 要求 す る と こ ろ は

,1つ の会 計 事 象 に2つ 以 上 の正 当 な会 計 処 理 の原 則 又 は手続 が 認 め られ て い る場 合

,そ の選 樋 用 を企 業 の 自由 な判 断 に まか せ る と と もに,い っ た ん採 用 した会 計 原則 又 は手 続 は,原 則 と して財 務 諸 表 を作 成 す る各 期 を通 じて継 続 して適 用 され る こ と

にあ る。 会 計処 理 の原則 や手 続 を継 続 適 用 す る こ とに よ

って財 務 諸 表 の有 用 性 や 比 較 可 能 性 を確 保 す る こ とが期 待 され て い るの で あ る

他 方,企 業 会 計 は い った ん選 択 適 用 した会 計 処 理 の原 則 や手 続 を み だ りに 変 更 して はな らな い こ とが 要 求 され る.選 択 し た原 則 や 手 続 をみ だ りに変 更 す る こ とが あ っ て は・ 企 業 の恣 意 的r r を 許 す こ と とな り

,企 業 会 計 の真 実 性 を損 ね る結 果 にな るか らで あ る・ この企 業 の臆 的経 理 の排 除 とい う点 が, 先 程 の 企 業 に鯉 舳 の主 体 的判 断 を認 め る場 合 の合 理 的期 を画 す る片 方

の限 界 線 で あ る。 い か な る場 合 に も変 更 を認 め な い とい う こ とに な る と経 理 舳 の 前提 そ の ものが 否 定 され る こ と とな るの で,こ こで は論 外 で あ る.そ れ で は どの よ うな場 合 に会 計 原 則 や手 続 の 変 更 が認 め られ るの で あ ろ うか

。 まず理 解 され る こ とは・ 変 更 を可 能 とす る状 況 とい うの が 本 質 的 に企 業 会 計 の真 実 性 を従 前 の状 態 か ら さ らに質 の 高 い もの に変 え る こ とが期 待 され る も の で な けれ ば な らな い とい う こ とで あ る。 つ ま り,各 種 情 報 利 用 者 の経 済 的 意 思 決 定 を よ り一 層 合 理 的 な もの た ら しめ る た め に,従 前 の会 計原 則 や 手 続 の変 更 が,企 業 の状 況 に関 す る よ り適 正 な報 告 を もた らす こ とが明 らか に期 待 で きる場 合 の み,そ の よ うな変 更 は正 当 性 を もつ とい い うる ので あ る

。 そ して,こ の よ うな変 更 す べ き 「正 当 な理 由」 が 認 め られ る場 合 に は

,真 実性 の 原則 の要 求 す る 「真 実 な報 告 」 を求 め て,積 極 的 に会 計 処 理 の原 則 や

真実性の原則と経理自由33

(18)

手 続 に変 更 を加 えて い くべ き性 格 の もので あ る。 従 っ て,継 続 性 の原 則 の規 定 す るr正 当 な理 由 」 に よる変 更 は,単 に変 更 を例 外 的 に認 め られ る場 合 を 意 味 す る もの と解 釈 す るの で はな く,企 業 の財 務 内容 を よ り適 正 に報 告 す る

た め に,会 計 原則 や 手 続 を変 更 す る こ とカa明らか に..的 で あ る と認25)れ る場 合 に は,当 然 の こ と として変 更 す べ きで あ る との解 釈 が と られ て い る。

また 同時 に,こ の考 えか た は経 理 自由 の前 提 が 機 能 す る合 理 的範 囲 を画 す る も う一 方 の限 界 線 を示 して い る。 す な わ ち,企 業会 計 に お け る経 理 自 由 の考 えか た は,企 業 の 自由 な選 択 の合 理 的 範 囲 として,一 方 の極 を企 業 の恣 意 的 経 理 の排 除 とい う点 に お き,他 方 の極 を企 業 の財 務 報 告 の有 用性 も し くは信 頼 性 の 向上 とい う点 にお い て い る ので あ る。

以 上 述 べ て きた よ うに,企 業 会 計 原 則 にお け る根 本 命 題 た る真 実性 の原則 は,企 業 会 計 の 目的 に よ って そ の求 め る価 値 内 容 が 規 定 され る と とも に,他 方 で,企 業 会 計 の 真 実性 を保証 す る条 件 として一 般 原則 の継 続 性 の 原 則 を は

じめ とす る諸 原 則 や諸 基 準 に準 拠 した会 計 処理 や 報 告 を予 定 して い る。 そ し て,真 実 性 の原 則 を会 計 処理 の領 域 で保 証 す る継 続 性 の 原則 の存 立 に は,企 業 会 計 に お け る経 理 自由 とい う考 え方 が不 可 欠 な前提 要 件 とな っ て い る こ と が 認 識 され るの で あ る。 か か る経 理 自由 の前 提 は継 続 性 の原 則 が適 用 され る た め の前提 要 件 で あ るが,そ れ は また,真 実性 の 原 則 が想 定 す る経 済 的 意 思 決 定 に有 用 な財 務 情 報 の提 供 とい う 目的 に照 ら して,本 来 的 に前 提 として い る考 えか たで あ る こ とが 明 らか に され た。 経 理 自 由の 前 提 は,企 業 の恣 意 的 経 理 を排 除 す る こ とに よ って財 務 報 告 の信 頼 性 を高 め,ま た,企 業 の財 務 内 容 を適 切 に反 映 す る会 計 原 則 や手 続 の適 切 な選 択 や正 当 な 変更 を支 持 す る こ

とに よっ て財 務 情 報 の有 用性 や比 較 可能 性 を確保 す る こ とに貢献 す る こ とが わ か る。 この よ うに してi経 理 自由 の前 提 は企 業 会 計 にお け る真 実性 を確 保 す る上 で 極 め て重 要 な働 きを もつ会 計 原 則 上 の考 えか たで あ る こ とが 強 調 さ

れ な けれ ばな らな い 。

34国 際 経 営 論 集No・21991

(19)

V.お わ り に

企 業 会 計 にお け る経 理 自 由 の考 えか た は,企 業 経理 の個 別 性 を背 景 と して , 広 く一 般 に認 め られ た概 念 の よ うに み え る。 しか しな が らy今 日 まで の企 業 会 計 の発 展過 程 で,こ の経 理 自由 の概 念 が 度 々 論 議 の対 象 とな って きた。 と

くに,法 規 範 と して の会 計 諸 法 規 の整 備 に際 して,会 計 の一 元 化 も し くは統 一 化 の問題 と関 連 して提 示 され る場 合 が 多 か

っ た よ うに思 わ れ る。

この よ うに一 見 当然 の もの として み な され て い る経 理 自由 の 考 えか た に対 す る疑 問 は ど こに起 因 す るの で あ ろ うか 。 それ は経 理 自 由 の概 念 の 明確 化 と 同 時 に,会 計 原 則 体 系 の 中 で の位 置 づ けや役 割 の 問題 に検 討 の余 地 が 残 され て い るの で は な い か と考 え た のが本 稿 で の問 題 意 識 で あ っ た。 この問 題 に関 して最 も秀 れ た論 理 的 な究 明 を行 って お られ る若 杉 明 教 授 の見 解 に依 拠 しっ つ,独 自の視 点 か ら改 め て この問 題 を考 察 して み た。

本 稿 で はyま ず,わ が 国企 業 会 計 原 則 体 系 の 中 で の真 実性 の原 則 の理 論 的 性 格 とそ の 内容 に つ い て明 らか に し,そ して,真 実 性 の原 則 の 求 め る企 業 会 計 の真 実 性 を保 証 す る重 要 な会 計 ドク トリン と して継 続 性 の原 則 の 役割 を考 察 した。 そ こで は継 続 性 の 原 則 の存 立 基 盤 と して経 理 自 由 の前 提 を位 置 づ け, 両 者 の関 係 を明 確 に した。 さ らに,経 理 自 由 の前 提 は真 実性 の 原 則 との関 係 に お いて,企 業 会 計 上 の真 実 性 を確 保 し,企 業 の財 務 報 告 に対 す る信 頼 性 を 高 め,も っ て情 報 利 用 者 の意 思 決 定 を合 理 的 な ら しめ る上 で 不 可 欠 な前 提 要 件 で あ る こ とが 明 らか に され たの で あ る。

企 業 会 計 上 の真 実性 を確保 す る上 で重 要 な経 理 自 由 の前 提 とそ の会 計 原則 上 の 役割 を正 し く理 解 して お くこ とが,今 後 発 生 し う る この種 問題 に対 して 考 察 の論 理 を用 意 して お くこ とに な る と考 え る。本 稿 はそ の た め の研 究成 果 の 一端 を示 す もの で あ り,今 後 引 き続 き この 問題 につ い て は研 究 を積 み重 ね て ゆ きた い と思 っ て い る。

真実性の原則と経理自由35

(20)

1)会 計 原 則 の 理 論 的 構 造 の 分 析 に つ い て は,拙 稿 「会 計 原 則 の 基 礎 構 造 論 序 説 」

『沖 大 経 済 論 叢 』 第7巻 第1号(1983年3月),66〜76頁 参 照 の こ と。

2)会 計 原 則 体 系 の 下 部 構 造 を 形 成 す る 原 則 群 の 特 質 を 会 計 ド ク ト リ ン と 呼 び, 上 部 構 造 を 形 成 す る 会 計 基 準 と識 別 す る 考 え 方 は す で に ギ ル マ ン に お い て み ら れ る と こ ろ で あ る 。

StephenGilman,AccountingConceptsof∫)'rofits,1939(久 野 光 朗 訳 『ギ ル マ ン 会 計 学(上 巻)』 同 文 舘,1965年)。

3)若 杉 明 著 『企 業 利 益 の 測 定 基 準 、1中 央 経 済 社,1985年,163〜167頁 。

4)真 実 性 の 原 則 を 会 計 モ ー レ ス と し て 理 解 す る 考 え 方 は,黒 澤 清 教 授 に お い て も 認 め ら れ る(黒 澤 清 著 『近 代 会 計 の 理 論 』 白 桃 書 房,138頁 参 照)。 し か し な が ら,か か る 会 計 モ ー レ ス の 概 念 を 会 計 原 則 の 理 論 的 構 造 分 析 の 用 具 と し て 用 い,そ れ に 会 計 原 則 に お け る 最 高 規 範 と し て の 構 造 上 の 位 置 と性 格 を 与 え て 論 じ て い る の は 筆 者 の 独 自 の 見 解 で あ る(拙 稿,前 掲 論 文,227〜229頁 参 照)。 な お,モ ー レ ス(mores)の 概 念 に つ い て は 次 の 文 献 を 参 照 の こ と 。

WilliamG.Sumner,Folkways:AStudy(ヅtheSociologicalImportanceof Usages,Manyaers,Customs,ル10γ6∫andMorals,1940・PP・36‑38・

川 島 武 宜 著 『近 代 社 会 と 法 』 岩 波 書 店,!963年,24〜26頁 。

5)武 田 隆 二 教 授 も,一 般 原 則 の 真 実 性 の 原 則 に つ い て,他 の 個 別 一 般 原 則 の 上 位 原 則 と し て 企 業 会 計 の 全 領 域 に 対 す る 包 括 的 指 導 原 則 の 性 格 を も つ も の で あ る と指 摘 さ れ,そ し て,真 実 性 を 「そ の 時 々 の 社 会 的 ・経 済 的 意 味 情 況 に お け

る会計 目的 観 に依 存 しな が ら相 対 的 に変 化 す る概 念 で あ る」 と述 べ て お られ る (武 田隆 二 著 『会 計 学 一 般 教 程 』 中 央経 済 社,1986年,46頁)。

6)こ の よ うな 考 え方 は今 日で は広 く支 持 され て い る。 た と えば,若 杉 明教 授 は, 真 実 性 の原 則 が 会 計 目標 に つ い て の包 括 規 定 で あ る と と もに真 実性 の保 証 につ い て の委 任 規 定 で あ る との 見解 を示 され た後 で,「財務 報 告 の 真 実性 を保 つ た め に準 拠 す べ き基 準 ・原則 等 とは,一 般 原則 の うち第 二 の正 規 の簿 記 の原 則 以 下 7つ の原則 と損 益 計 算 書 原 則 お よび貸 借 対 照 表 原 則 を さす もの と解 され な けれ ば な らな い。」 と述 べ て お られ る(若 杉 明 著 『制 度 会 計 論 』森 山書 店,1987年,

36国 際 経 営 論 集No.21991

(21)

14頁)。

7)若 杉 明 著 『企 業 会 計 の論 理 』 国元 書 房,1981年,77〜79頁 参 照 。 8)新 井 清光 稿 「継続 性 の変 更 と正 当 な理 由」 『企 業 会 計 』1974年9月 号

,30〜35 頁 参 照 。

味村 治稿r継 続 性 の原 則 に関 す る法律 上 の 問 題 」 『産 業 経 理 』 第30巻 第10号 , 22〜23頁 参 照 。

9)新 井 教 授 は,こ の こ とに関連 して ,「継 続 性 の原 則 が必 要 とされ る の は,正 当 と認 め られ る代 替 的 な原 則 等 に つ い て その選 択 適 用 の基 準 が明 確 で な い場 合 で あ る 」 と指 摘 し て お ら れ る(新 井 清 光 著 『企 業 会 計 原 則 論 』 森 山 書 店

,1985年, 113頁)。

10)RK・St・rey,TheSearchforAcc・untingPrinciples

,1964.p.10.63参 照 。 n)若 杉 教 授 は,経 理 自 由 の 原 則 を ,会 計 原 則 の 理 論 構 造 上 指 導 規 準 と し て 位 置

づ け ら れ,そ の 重 要 性 を 強 調 し て お ら れ る(若 杉 明 著 『企 業 会 計 の 論 理 』 ,前 掲 書,83〜85頁 参 照)。

筆 者 は,会 計 原 則 の 理 論 的 構 造 を 本 文 図1及 び 図2の よ う に 考 え て い る の で , 経 理 自 由 の 原 則 に つ い て は,そ の 特 質 を 指 導 規 準 と せ ず,継 続 性 の 原 則 に 当 然 に 含 ま れ る 前 提 要 件 と と ら え て い る。 経 理 自 由 の 考 え か た の 重 要 性 に つ い て は 若 杉 教 授 と 同 様 の 見 解 に 立 っ て い る 。

12)若 杉 教 授 は,指 導 規 準 と し て の 「経 理 自 由 の 原 則 」 と 会 計 ド ク ト リ ン と し て の 継 続 性 の 原 則 の 関 係 に つ い て,企 業 会 計 に お け る 経 理 自 由 の 運 用 を 適 正 に は か る た め に,継 続 性 の 原 則 が 適 用 さ れ る と 説 明 さ れ て い る

。 つ ま り,継 続 性 の 原 則 は 「経 理 自 由 の 原 則 」 の 制 約 条 件 と し て の 機 能 を も つ も の で あ る と 理 解 さ れ て お ら れ る(若 杉 明 著 『企 業 会 計 の 論 理 』,前 掲 書,89頁 参 照)。

13)AccountingPrinciplesBoard ,BasicConceptsandAccountingPrinciples UnderlyingFinancialStatementsofBusinessEη'6η)万sθs

.APBStatement N・ ・4・Americanlnstitutes・fCPAs(Oct・ber1970)

,par.73(川 口 順 一 訳rア メ リ カ 公 認 会 計 士 協 会 ・企 業 会 計 原 則 』 同 文 舘

,1973年,42頁)。

14)FASBの 概 念 構 造 研 究 プ ・ ジ ェ ク ト(TheC・nceptua1Framew。rk)の 研 究 成 果 は,「 財 務 会 計 の 諸 概 念 」(StatementsofFinancialAccounting

C・ncepts,SFACs)と し て ・ ス テ イ ト メ ン ト第1号(N・vermber1978)

,第2号

真 実性 の 原 則 と経 理 自 由37

(22)

(May・980),第3号(December1980),第4号(December1980)・ 第5号 (December1984)及 び 第6号(Decernber1985)が す で に 公 表 さ れ て い る 。 15)FASB,SFACN・.1一 砺6・ 伽 呵FinancialReportingのBusiness

Eη ≠卯 γ初s(November1978),par.34(平 松0夫 ・広 瀬 義 州 訳 『FASB財 務 会 計 の 諸 概 念(改 訳 版)』 中 央 経 済 社,1990年,26頁)。

16)Ibid.par.30.

17)FASBの こ の 目 的 観 と ほ ぼ 同 じ 内 容 の 見 解 が,す で に1973年 の トル ー ブ ラ ッ ド.リ ポ ー ト(TruebloodReport,AICPA,1973)で も 明 ら か に さ れ て い る(The StudyGr。up・ntheObjectives・fFinancialStatements,Objectivesび

FinancialStatements,AICYA,1973,川 「]順一 訳 『ア メ リ カ 公 認 会 計 士 協 会 ・ 財 務 諸 表 の 目 的 』 同 文 舘,1976年,7〜8頁 参 照)。

187FASB,SFACNv.1,0p.cit.,pars.25&37.

19)Ibid.,par.41.

2⑪)FASBの こ の よ う な 財 務 報 告 の 目 的 規 定 の あ り 方,と り わ け 第2目 的 と第3 目 的 の 性 格 に つ い て は 厳 し い 批 判 や 問 題 指 摘 が 提 示 さ れ て い る(Nicholas DopchandShyamSunder,"FASB'sStatementsonObjectivesandElements

ofFinancialAccounting:AReview",TheAccountzngReview,Vol.LV,No.

1(January,1980),PP.2‑3,お よ び,山 形 休 司 著 『FASB財 務 会 計 基 礎 概 念 』 同 文 舘,1986年,119〜121頁 参 照)。

21}FASB,SFACNv.1,0p.cit.,par.5.

22)わ が 国 企 業 会 計 原 則 は,1949年7月 に 当 時 の 経 済 安 定 本 部 企 業 会 計 制 度 対 策 調 査 会(現 在 は 大 蔵 省 の 企 業 会 計 審 議 会)よ り公 表 さ れ た が,そ の 前 文 で 企 業 会 計 原 則 の 基 本 的 性 格 を 次 の よ う に 規 定 し て い る 。

「企 業 会 計 原 則 は,企 業 会 計 の 実 務 の 中 に 慣 習 と し て 発 達 し た も の の な か か ら,一 般 に 公 正 妥 当 と認 め ら れ た と こ ろ を 要 約 し た も の で あ っ て,必 ず し も 法 令 に よ っ て 強 制 さ れ な い で も,す べ て の 企 業 が 会 計 を 処 理 す る に 当 っ て 従 わ な

け れ ば な ら な い 基 準 で あ る 」(設 定 前 文 一 の1)

23)若 杉 明 著 『企 業 会 計 の 論 理 』,前 掲 書,78〜79頁 。

24)こ の 問 題 に 関 連 し て,若 杉 教 授 は,企 業 経 理 の 個 別 性 も し く は 「経 理 自 由 の 原 則 」 と 会 計 の 統 一 性 の2つ の 考 え か た の 基 本 的 な 相 違 点 は,企 業 の 主 体 的 判

38国 際 経 営 論 集No・21991

(23)

断 を広 く認 め る か否 か の点 にあ る と指 摘 され た上 で ,「 経 理 自 由 の原 則 」の必 要 性 を強 調 して お られ る(若 杉 明著 『企 業 会 計 の論 理 』,前 掲 書,78頁)。

25>継 続 性 の原 則 にお け る 「正 当 な理 由」 に よ る変 更 に つ い て の この よ うな積 極 的 な理 解 は,次 の よ うな 文献 に代 表 的 に み られ る。

若 杉 明著 『企 業 会 計 の論 理 』,前 掲 書,102頁 。 新 井 清 光 著,前 掲 書,113頁 。

真 実 性 の原 則 と経 理 自 由39

参照

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