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<大震災の危機管理と法> 被災者住宅再建支援制度 とその法的諸問題

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<大震災の危機管理と法> 被災者住宅再建支援制度 とその法的諸問題

その他のタイトル The Public Support‑System for the

Reconstruction of Earth‑Victims' Housing and its Legal Problems

著者 池田 敏雄

雑誌名 關西大學法學論集

巻 52

号 4‑5

ページ 1457‑1482

発行年 2003‑03‑20

URL http://hdl.handle.net/10112/00023517

(2)

二災害救助法の被災者救済・支援策

三自然災害不補償原則と被災者生活再建支援法

四被災者住宅再建支援制度の概要と問題点

四四九

まった︒とりわけ︑地震防災の見地から地霙が発生しても被害を最小限に抑止する対策及び被害規模を拡大させず早 一月一七日に発生した阪神・淡路大震災を契機として各方面で﹁危機管理﹂の意識が高

期に復旧・復興を図るための対策を組み合わせた危機管理としての防災の必要性が強調されることになった︒

被災者住宅再建支援制度とその法的諸問題

田 被災者住宅再建支援制度とその法的諸問題

︿

(3)

第五二巻四・五号

そもそも防災学によると︑災害の発生は素因と誘因という二種類の要因の組合せによって説明されるという︒すな

わち︑素因とは当該社会が災害に対して有する脆弱性であり︑誘因とは災害の原因たる異常な自然外力の大きさで︑

災害は自然外力の大きさが当該社会の有する防災力を超える場合に発生し︑深刻な被害をもたらすことになる︒した

がって︑当該社会の防災力を高めることが急務であり︑そのためには﹁危機管理としての防災システム﹂を構築する

( l

)  

必要性があるとされる︒

アメリカでは︑危機管理全体をエマージェンシー・マネジメント

(E

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me

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)

と呼び︑災害発生後のクライシス・マネジメント

スク・マネジメント

(R

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t)

を区別するが︑わが国では︑いずれも危機管理と呼ばれて︑危機管理の

( 2

)  

概念自体が不明確になっているという︒なお︑わが国では︑

二項に危機管理の定義として﹁国民の生命︑身体又は財産に重大な被害が生じ︑又は生じるおそれがある緊急事態へ

の対処及び当該事態の発生の防止をいう﹂という規定が置かれた︒

危機管理を念頭において大震災の防災対策を考えると︑災害発生を基準にして事前対策と事後対策に区別すること

ができ︑前者では﹁被害の抑止・軽減﹂として物的減災対応と事前防備対応が︑後者では﹁被害の限定化﹂として応

急対応︑復旧・復興対応が課題となる︒そして︑防災には過去に経験した災害の教訓を将来の起こり得る災害に対し

て生かすべき必要性があるから︑事後対策は事前対策へ事前対策は事後対策へ︑と連続性を有することになろう︒

大震災が発生した場合︑災害対策は時間的経過に沿って︑第一段階では何よりも人命の安全を確保するための緊急

対策︑第二段階では生存した被災者の生活配慮にかかる応急対策︑第三段階では被災者の生活再建と地域の再建を図

そこでいう﹁危機管理﹂については︑

0 )

年の法改正により︑内閣法一五条 ( C r i

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Ma

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)

と発生前のリ

(4)

めによると︑人的被害は︑死者数六︑四三二人︵直接死五︑五二二人︑関連死九一

0

消防庁災害対策本部が二

000

年︵平成︱二年︶

るための復旧・復興対策の順で実施される︒この第三段階の復旧・復興対策のあり方は︑クライシス・マネジメント

的対策であると同時に︑被害を抑止・軽減する意味のリスク・マネジメントしても位置づけられることになる︒

これまでのわが国の防災対策は︑どちらかといえば被害予防を重視した工学的なリスク・マネジメント体制を中心

に据えてきたと言われる︒しかし︑このたびの阪神・淡路大震災では予測をはるかに超えた被害に対して︑その即応

( 3

)  

的防災対策を十分に持ち合わせていなかったことが明らかとなり︑体制の不備が露呈したとされる︒今後のわが国の

防災体制は︑この二つの対策をうまく総合するエマージェンシー・マネジメントとしての危機管理が重要視されるこ

( 4

)  

本稿では︑大震災後︑社会的にクローズ・アップされたヒューマンウエアとしての生活支援策︑なかんずく︑近時︑

その立上げが取りざたされる被災者住宅再建支援制度について︑検討を試みることとした︒阪神・淡路大震災では︑

( 5

)  

住宅被害が人々の生活基盤を失わせ︑人生までも破壊することを教訓として学んだところである︒

住宅にかかる危機管理の対応としては︑被災後の応急対応として住宅の応急危険度判定や二次災害防止︑また︑復

興・復旧対応としては復興ニーズ把握や住宅再建が中心的課題となるが︑被災者住宅再建支援制度は復旧・復興対策

の一環であると同時に︑予測される将来の大震災に対する事前防備対応としても位置づけられることになろう︒

︱二月二七日に発表した阪神・淡路大震災の被害状況の取りまと

(5)

0

000

円以内の公費負担による現物支給するとの基準は︑

( 8

)  

今回の大震災においても見直されなかった︒

したがって︑金銭給付の色彩を帯びる救済・支援策は︑災害弔慰金・災害傷害見舞金の制度を除けぱ︑融資︵住宅

金融公庫及び地方自治体︶と利子補給︵地方自治体︶にすぎない︒融資については︑公庫の災害復興住宅資金等の融

資額が特例加算され︑当初の五年間は元金据置が可能とされた︒地方自治体においても復興基金を通して同様の措置

( 9

)  

がとられた︒利子補給については︑実質五年間は金利がゼロとなるような助成策が取られたといえる︒

災害救助法の運用において︑金銭による直接給付が否定的に取り扱われるのは︑地震等の災害による被災者の個人

的被害は︑あくまでも自助努力による回復が原則で︑個人補償をすることは︑従来の法理論では慎重にならざるを得 最小限度の部分﹂についてのみ︑

三︑七九二人︑住家被害は全壊家屋一

0

0

六棟(‑八万六︑一七五世帯︶︑半壊家屋一四万四︑二七四棟︵二七

( 7

)  

0

二棟となっている︒結果的に︑多くの被害者が避難所生活︑仮設住宅生

0

従来︑わが国における地震等の災害による被害者の救済は︑災害救助法に基づき現物給付を建前とし︑住宅復旧・

復興対策についても︑応急の集団避難所︑個別避難の応急仮設住宅︑災害公営住宅の三点セットが基本とされてきた︒

災害救助法二三条一項七号には救助の種類の一っとして﹁生業資金等の給与﹂を規定し︑同条二項にも︑都道府県知

事が必要があると認めた場合においては﹁金銭を支給してこれをなす﹂ことができる旨の規定があるが︑これらには

命令による一般基準も示されておらず︑半ば死分化している︒災害にかかった住宅の応急修理︵同法二三条一項六

号︶についても︑自らの資力では応急修理をすることができない者だけが﹁居室︑炊事場及び便所等日常生活に必要 活を余儀なくされたことになる︒

0)

(6)

る ︒

自然災害不補償の原則と被災者生活再建支援法

ないという事情がある︒つまり︑自然災害は不可抗力であるから国や地方自治体が被災者個人に補償するような法的

( 1 0 )

 

責任はなく︑そのような給付は財政支出としての公共性に反するおそれがあるとされる︒

そして︑個人の自助努力を支援するためには︑共助による義援金が当てられるべきであるという︒

一九九三年︵平成五年︶の北海道南西沖地震の際には︑二五六億円余の義援金が寄せられ︑奥尻島の被

災世帯には︑見舞金として全壊四

0

万円︵半壊一五

0

万円︶︑住宅再建には一律七

0

0

0

万円が支給され︑家財道具

購入分を含めると新築世帯には合計で一︑二五

0

万円の支援が義援金を原資とした復興基金からなされている︒

の雲仙・普賢岳の噴火災害でも約二三四億円の義援金が寄せられ︑被災者には一世帯最高一︑一

しかしながら︑阪神・淡路大震災の場合は︑義援金が約一︑七九三億円寄せられたとはいえ︑被災世帯が多く︑

世帯平均で約四

0

万円の配分にしかならない︒そこで︑生活基盤を失った者に対する生活再建のための直接給付によ

( 1 1 )

 

る公的支援を求める運動が起こり︑その結実として後述の被災者生活再建支援法が制定された︒

さらにその後︑被災者生活再建支援法の延長線上の措置として︑被災者の住宅再建支援の在り方が課題となってき

た︒住宅再建支援については幾つかの考え方が提示されているが︑現在は試行段階で︑その実施には困難も予想され

国や地方自治体の財政は国民の負担による税金で賄われているから︑財政支出には公共性が必要である︒それが財

0

万円が支給されている︒

一 九

(7)

また︑損失補償は適法な行政活動を遂行する際に︑公共のために財産権を用いる必要性が生じた場合︑特別の犠牲

を強いる土地所有者等に正当な補償を行う制度で︑地震災害による被災者の財産が公共のために用いられたわけでは

ただ︑国や地方自治体が︑国民を危険状態の中に放置したというところから生じた損失を金銭的に補填することを

認める場合がある︒その場合も︑国民が危険状態に置かれたことだけから一般的な補償請求権を導くことは困難で︑

損失の補填を立法上認める場合も︑国家補償的性格と社会保障的性格を併せ持つ場合が多く︑国の法的責任を認めた

ものというより︑いわば政策的補償として位置づけられる︒犯罪被害者等給付金支給法︵昭和五五・法三六︶による

給付金の支給や原子爆弾被爆者援護法による特別手当の支給などがこの例である︒このような政策的補償は立法の裁

填を制度化している例もあるが︑

第五二巻四・五号

政支出の基本原則である︒それゆえ︑国が国家補償として損害・損失を補填するのは︑原則的には︑公務員が不法行

為を行った場合の国家賠償︵憲法一七条・国家賠償法一条︶と個人の財産権を公共のために用いた場合の損失補償

国家賠償が成立するためには公権力を行使した加害公務員に違法・過失が認められなければならない︒違法でも過

失がなければ賠償されない︒そのような場合を国家賠償の谷間と考えて︑例えば刑事補償法のような特別法による補

一般的な法制度は存在しない︒国家賠償法の解釈・運用上︑公権力の不行使が行政

の法的責任を招くことが認められるようになってきたが︑地震災害の場合︑地震予知が科学的裏づけに基づいて正確

に行えない現状において︑適切な避難勧告や避難命令が発せられなかったことにつき国の法的責任を認めることはと

(8)

援法︵平成一

0

る ︒

量でその要否や程度が定められることになるが︑だからと言って場当たり的に災害の被災者を救済するものであって はならない︒財政支出を正当化する合理性や平等原則を満たす他の諸制度との整合性が要求される︒また︑国家賠償 や損失補償では︑あくまでも逸失利益や財産権の市場価値を補填するもので︑過剰な補填は認められないから︑政策 的補償の場合もそれらとの均衡を失することは許されず︑補足性の原則が貫かれることになる︒

以上のことから︑自然災害なかんずく地震災害については︑従来︑国や地方自治体が法的責任を負うことによりそ の被災者に損害・損失を補填する理論は成り立たなかった︒﹁自助努力が原則﹂とされてきたところである︒

しかし︑このたびの阪神・淡路大震災は予想を超えた大規模な災害で︑災害救助法の適用のみでは災害により生活 基盤を破壊された被災者を救済できないから個人補償をせよとの世論が高まった︒そこで言う個人補償は︑法的には 国家賠償や損失補償を認めよということではなく︑生活再建措置を講ずべしとする金銭による直接給付の要求で︑

種の政策的補償を意味するものといえよう︒実際上︑兵庫県と神戸市が出捐金︵二

0

0

億円︶と地方債発行で調達し

000

000

の拠出金で創られた阪神・淡路大霙災復興基金は︑その運用益で被災者 の家賃補助︑住宅ローンや事業資金への利子補給など︑基金をクッションとした直接給付方式の公的支援を行ってい そして︑このような生活再建のための公的支援を求める市民運動が盛り上りをみせ︑その結果︑被災者生活再建支

( 1 2 )  

︱一月六日から施行された︒

0

年 ︶ 被災者生活再建支援法は︑その一条で﹁この法律は︑自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた者であっ て経済的理由等によって自立して生活を再建することが困難なものに対し︑都道府県が相互扶助の観点から拠出した

(9)

第五二巻四・五号

基金を活用して被災者生活再建支援金を支給するための措置を定めることにより︑その自立した生活の開始を支援す

ることを目的とする﹂と規定して︑以下のような支援措置の内容を定める︒

適用対象となる災害

暴風︑豪雨︑豪雪︑洪水︑高潮︑地震︑津波︑噴火その他の異常な自然現象により生ずる自然災害で︑災害救

助法が適用される場合のほか︑その程度に至らなくても︑市町村の区域にあっては一

0

以上の世帯の住家が全壊

し︑または都道府県の区域において一

0

以上の世帯の住家が全壊した場合に適用される︒

0

居住する住宅が全壊した世帯その他これと同等の被害を受けたと認められる世帯で︑経済的理由等により自力

による生活再建が困難な世帯主で︑世帯主の年齢と世帯の収入合計額により支給額が区分される︒

以下の金額を最高額として︑通常経費及び特別経費に対して支給する︵括弧内は単数世帯︶︒

1 0

0

世帯全員の収入合計額が五

0

0

万円を超え八

0

万円以下で世帯主の年齢が六

0

歳以上の世帯

0

世帯全員の収入合計額が五

0

0

万円を超え七

0

0

万円以下で世帯主の年齢が四五歳以上の世帯

(三七•五万円)

世帯全員の収入合計額が五

0

0

万円を超え八

0

万円以下で障害者世帯などの要援護世帯

0

世帯全員の収入合計額が五

0

万円以下の世帯

0

①  関法

0

万円

0

0

万円

(10)

な運用益を確保することになった︒ (三七•五万円)

都道府県が相互扶助の観点から資金を拠出し︑総額六

0

0

億円(‑九九九年度に三

0 0

億円︑二

0

0

0

0

億円追加︶を運用資金とする︒被災者生活再建支援基金を設けて基金が支援業務を行う︒基金は資金の運

用益から都道府県が交付する支援金の額に相当する額を都道府県に交付し︑あるいは委託を受けて支援金の給付 を行う︒国は︑基金の交付額及び基金の支給する支援金の二分の一を補助する︵国は拠出しない︶︒都道府県の

拠出割合は︑世帯数割︵八

0

%

︶及び均等割︵二

0

%

なお︑同法の付帯決議は︑阪神・淡路大震災の被災者に同程度の支援措置が講じられるよう国は必要な措置を講ず るよう求めており︑これを受けて︑兵庫県と神戸市など関係市町により﹁被災者自立支援金制度﹂が一九九八年︵平

0

年︶七月一日から発足している︒被災者自立支援金制度には新たに五四

0

億円の財源が必要となるため︑阪

神・淡路大震災復興基金︵九︑

000

000

億円の運用期間を五年から九年と四年間延長して︑新た

同法の制定に当たり強調された点は︑同法による支援措置が行政の法的責任を問題にする個人補償ではなく︑あく までも自然災害の被災という﹁生活事故﹂により住居と生活家財など生活基盤を破壊され︑生活運営が困難になった 者に対して︑自助努力の土台を回復するために行われる公的支援システムであるとされたことである︒これは︑自然 災害による個人被害は自助努力を原則とするが︑住居が全壊するなど生活基盤を失い自助努力の基礎が失われている

(11)

りまとめられた報告書が二

000

一月に︵旧︶国土庁に﹁被災者の住宅再建支援の在 検討を加えることにしたものと思われる︒

第五二巻四・五号 ような状態にある場合は︑地域社会の復興という見地からも個人の自助努力の土台回復に公共性を見出そうとするも

( 1 3 )

1 4

)  

ので︑従来の復旧・復興のあり方を一歩踏み出したものとなっている︒

被災者生活再建支援法が成立した際︑被災者の住宅再建支援の問題が積み残された︒同法の附則︱一条は﹁自然災害 により住宅が全半壊した世帯に対する住宅再建支援の在り方については︑総合的な見地から検討を行うものとし︑そ のために必要な措置が講ぜられるものとする﹂と規定する︒この問題が﹁宿題﹂とされたのは︑対象が個人の資産で ある住宅︵私有財産︶そのものであり︑災害で失われた住宅の再建に公的支援をすることは生活再建の場合と比べて 公共性の説明がより困難なうえ︑多様なパターンの方策が予想され︑さらに財政支出も大きいことから︑より慎重な しかし︑公的支援による生活再建が被災者支援において不可欠であるとするならば︑生活再建と住宅再建はいわば

車の両輪で︑どちらが欠けても地域社会の復輿はおぼつかないとの世論も根強いものがある︒

り方に関する検討委員会﹂を設置して︑約二年の年月を掛けてこの問題の検討を重ねてきた︒その検討成果として取

( 1 5 )

 

︱二月四日に公表されている︒

報告書によると︑被災者の住宅再建を検討する意義は︑住宅は単体としての個人資産であるが︑大量な住宅が広域 にわたって倒壊した場合には︑地域社会の復興と深く結びついているため︑地域にとってはある種の公共性を有して

関法

四五八

(12)

いるものと考えられる︑として︑被災者の住宅や生活の再建が速やかに行われれば︑地域の経済活動が活性化し︑そ の復興を促進することになる︑と述べる︒焦点となっていた住宅再建の公的支援については︑国民がお互いに助け合 う共助の精神に基づく全住宅所有者の加入を義務づける新たな住宅再建支援制度の創設についての提案があった︑と し︑この提案は︑大規模災害が国民共通のリスクであるとの考え及び住宅再建は被災地全体の早期復興に資するとい う公共性があり︑国民的な連帯意識の下︑﹁共助﹂の精神に基づく相互支援制度を創設し︑国がこれを支援する方策 が現実的な考え方である︑とする︒しかしながら︑このような住宅共済制度の提案については︑加入を強制すること に国民の理解が得られるか︑大規模災害の場合の対応をどのように行うか︑徴税事務等を誰が負担するのか︑などの 課題を指摘する意見があると述べて︑賛成論に合わせて反対論も併記し︑今後の検討が必要である︑としている︒

これに先立ち︑超党派による﹁自然災害から国民を守る国会議員の会﹂︵自然災害議連︶が二

000

年︵平成︱二

︱二月一日に総会を開き︑それまでに取りまとめた被災者住宅再建支援法案を早期国会に提案し︑その成立を図 この法律は︑自然災害によりその住宅が著しい被害を受けた者に対し︑相互扶助の観点から住宅の所有者の負担

金により設けられた基金を活用して被災者住宅再建支援金を支給するための措置を定めることにより︑被災者の住 宅の再建を促進するとともに︑被災地域の速やかな復興を図ることを目的とするものとすること︒

自然災害とは︑暴風︑豪雨︑豪雪︑洪水︑高潮︑地震︑津波︑噴火その他の異常な自然現象により生ずる被

、.~,

H

 

ることで一致をみている︒その概要は以下の通りである︒ 年 ︶

(13)

第五二巻四・五号

害をいうものとすること︒自然災害を災害の規模では限定しないが︑災害の程度︵震度等︶を政令により限定

するものとすること︒

住宅とは︑人の居住の用に供する家屋又は家屋の部分をいい︑賃貸住宅︑空家︑別荘︑法人所有の住宅︑店

舗︑事務所兼用の住宅を含めるものとすること︒

その他﹁全壊﹂﹁半壊﹂等の用語の意義を定めるものとすること︒

被災者住宅再建支援金の支給

被災者住宅再建支援金の支給事務は︑市町村が行うものとすること︒

支給対象等

①自然災害により住宅が全壊又は半壊の被害を受けた場合に︑その住宅の所有者︵原則として︑負担金が未

払いの者を除く︒︶に対し︑被災者住宅再建支援金を支給するものとすること︒

②被災者住宅再建支援金は︑被災地域外で再建する者に対しても支給するものとすること︒

③複数の住宅を所有している者には︑それぞれの住宅について支給金額を算定し︑被災者住宅再建支援金を

支給するものとすること︒

支給要件の認定等

胄然災害かどうかの認定︑全壊・半壊の認定等は︑市町村が行うものとすること︒ 支給対象 1支給機関 関法

(14)

①負担金の額は︑

② 

,̲し

① 

4財源等 ②認定に不服がある者は︑審査請求をすることができるものとすること︒

地震等の場合

全壊の場合にあっては二分の一︑半壊の場合にあっては六分の一

風水害の場合

一七万円︵住宅の新築に必要な一平方メートル当たりの単価︶に従前

の住宅の床面積

( 1

OO

NE

を上限︶を乗じて得た額に︑次の割合を乗じて得た額とするものとすること︒

住宅を建設しない場合の支給額は︑再建する場合に支給される額の三分の一とするものとすること︒

被災者住宅再建支援金の支給に当てる財源は︑その二分の一を住宅所有者から徴収した負担金をもって

賄うものとすること︒

国は︑被災者住宅再建支援金の支給に際し︑その金額の二分の一を負担するものとすること︒

一年につき︑二五円に住宅の床面積

( 1

OO

NS

を上限︶を乗じて得た額とするものとす

②住宅を建設しない場合

風水害の場合は地震等の場合の二分の ②  ①  ①住宅を再建する者に対する支給は︑ 3支給金額

(15)

被災者住宅再建支援金の支給に関する事務を行う被災者住宅再建支援基金︵仮称︶について︑必要な事項

を定めるものとすること︒

大規模災害の発生等により基金において被災者住宅再建支援金の支給に必要な資金が不足する事態が生じ

た場合においては︑基金は必要額を借り入れることができるものとすること︒

同議連は︑二

000

年︵平成︱二年︶四月の時点では︑過去一

0

0

年の災害を参考とし試算した一︑六

0 0

億円/

年を支給に必要な金額として︑都道府県と市町村の拠出額を各々四

0

億円/年︑国が八

0

0

0

億円/年の負担をする

ものとする﹁公費負担方式﹂の案を提示していたが︑その後︑共済︵相互扶助︶方式を提案する全国知事会などとの

協議の結果︑上記の法案骨子となったものである︒

対する住宅再建支援に係るアンケート調査結果では︑︿表1﹀のごとく︑知事の半数が全住宅所有者が掛け金を出し

合う共済方式を選択する一方で︑市長の半数は公費負担方式を望んでおり︑財源負担のあり方については考え方に違

また︑財源とする負担金の徴収を市町村が固定資産税の徴収と併せて行う︑とすることについて︑全国市長会及び いが見られ︑議論を呼ぶこととなった︒ しかし︑二

0 0

(2)  (1) 

5

② 

関法第五二巻四・五号

負担金の徴収は︑市町村が固定資産税の徴収と併せて行うものとすること︒

0)

一月に朝日新聞が取りまとめた全国都道府県知事及び都道府県庁所在地市長に

(16)

1〉 財源負担の方法

0

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被災者住宅再建支援制度とその法的諸問題

他 他 他 他

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そ の 他

出典:平成1

2

1

月1

3

日付朝日新聞(朝刊)

全国町村会は連名で︑実務上からも重大な問題があるとして︑次のような内容の意見書を同議連に提出している︒

税か掛け金かという﹁負担金﹂の基本的な性格が明らかではないが︑給付制度の財源とする以上︑﹁負担金﹂

は給付に見合うものとなるようにしなければ国民の納得を得ることは難しい︒そのためには︑固定資産税が免税 点未満となるため課税事務を要しない老朽または狭小な住宅にまで﹁負担金﹂を徴収すること︑すべての家屋に つき住宅部分の有無や面積を確認すること︑支援金の給付制限の要件となる﹁負担金﹂の滞納等の収納状況を把 握することなど︑新たな事務が必要となる︒これは固定資産税の事務とは全く別個の事務であり︑大幅な増員な

ど膨大な経費が必要となる︒それは﹁負担金﹂の収入額に比し極めて大きなものとなる︒

他 他 他 他

0

0000

そ そ そ そ

(17)

第五二巻四・五号

﹁負担金﹂を併せて徴収することになると︑トラプルや滞納が一層増加し︑

固定資産税については︑近来︑滞納の増加などのため︑市町村税の中でも特に運営に苦心しているが︑これに

仮に︑給付制度との関連を考慮しないこととし︑したがって上記1のような事務を行うことなく︑例えば固定

資産税の家屋分に二戸当たりの定額を上乗せするなどの単純な方法によって﹁負担金﹂を算出し︑固定資産税と

併せて徴収するとしても︑国民からは固定資産税の増税と受けとめられ︑納税者の理解協力を得ることが極めて

難しく︑本体の固定資産税の運営そのものにも大きな支障となる︒財源確保という点からみれば︑﹁負担金﹂を

このような固定資産税と併せて徴収する方法にこだわる必要はなく︑むしろ相互扶助の観点に立って幅広く国民

の負担を求める別途の方法を検討する方が適当であると考えられる︒

市町村の歳入として﹁負担金﹂を徴収するためには︑各市町村において関係条例を制定する必要があるかどう

かの問題があると考えられるが︑すべての市町村において条例制定を実現することは︑現実問題として大きな困

確かに︑固定資産税とはまった<性格が異なるものを併せて徴収することは︑固定資産税の既存システム

収・滞納管理のシステム︶

棟︶については少額の﹁負担金﹂徴収に大きなコストがかかる︒性格が異なるから﹁負担金﹂だけの分離不払いを防

ぐのは困難であろうし︑滞納者からの強制徴収もまず不可能と思われる︒固定資産税は徴収率が比較的高いことも上

関法

のすべてに影響が出ることも予想される︒とくに︑免税点以下の住宅︵約六%・ニニ

0

一段と苦しい運営を強いられること

(18)

建支援策が必要になる︒ 以上にみたように︑阪神・淡路大震災以後︑地震災害の被災者に対する救済策として国や地方自治体が直接給付方式︵いわゆる個人補償︶を基本的にはとらないという建前は︑徐々に変化しつつある︒被災者の住宅再建についても︑被災者が災害により生活基盤を失い︑そのために地域社会が崩壊するような状況においては︑そこに公的支援を行い︑被災者の自助努力による住宅再建の土台を回復することが公共性の具現であるとされるようになってきた︒従来︑住居に係る救済策は︑避難所から応急仮設住宅さらに災害公営住宅という画一的ないしは単線的な支援策に留まっていたが︑被災者の住宅需要は家族構成や年齢構成︑経済的能力︑ライフスタイル等々により多様であるから︑社会福祉の場面では画一的な直接給付から現物給付への移行が要請されるのとは逆に︑住宅再建支援においては直接給付による多様な選択肢のある救済策が効果的・効率的であるとされるようになってきた︒そのためにも︑直接給付の住宅再

乗せ案の理由であろうが︑市長会によると家屋分の徴収率は九一%程度で年々低下しているという︒滞納者分の原資

市長会側では︑被災者生活再建支援制度の仕組み︵国と都道府県による負担︶と異なる制度の創設についても問題

視するところであるが︑ただ︑終局的には︑制度運用費や掛け金徴収経費︑支給事務経費等について国が別途財源を

考慮することになれば︑知事会が期待するように︑市町村においてもこの共済方式を受け入れる余地はあるといえよ 不足をどのように埋め合わすのかも問題となろう︒

(19)

の建設費を圧縮することができる︒ 第五二巻四・五号

自然災害なかんずく地震災害は︑事前予知が現時点では不可能であるから︑いつ発生するか分からない︒大地震は

その頻度は低いがひとたび発生すれば︑社会全体の災害損失は莫大な額となる︵阪神・淡路大震災では被害総額が約

1 0

兆円と見積もられている︶︒地方自治体がその対応を突然に求められても︑とても対応しきれるものではない︒

それゆえ︑地方自治体は事前に災害対策の基金を設けて最低限度の拠出金積立て制度は創設しておくべきである︒そ

して︑地震災害により生活拠点を失ったものが生活を立て直す基盤として住宅の自主再建を行う能力を欠く時には︑

その資金の活用により迅速な対応を行うべきである︒そうすれば結果として︑単線型の応急仮設住宅や災害公営住宅

000

0

月六日に発生した鳥取県西部地震では︑鳥取県知事が裁量判断により一

0

日後に﹁住宅復興補助

金﹂制度を立ち上げたことが注目された︒公的な住宅再建支援制度の法制化を先取りするものとされたことによる︒

1 0

0

万円の助成を行う内容で︑その負担割合は県が三分の二︑市町村が三分の一の全額公

費負担で︑対象は︑全壊︑半壊の被害程度や住民の所得状況を問わず︑再建だけが条件とされた︒それに加えて︑年

収二五

0

万円以下の低所得世帯に対してさらに一

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0

万円を上乗せして︑合計四

0

0

万円の助成にした自治体︵溝口

町︶もある︒鳥取県では︑この経験を踏まえて︑自然災害で被災した個人住宅に対して再建費用を補助する﹁被災者

( 1 6 )

 

住宅再建支援条例﹂を制定し︑県と三九の市町村が二五年にわたり毎年二億円を積み立て五

0

億円とし︑その運用を

0

0

一年度から開始した︒この事例は︑今後の地方自治体による被災者住宅再建支援策のあり方を教示するように

現在︑自然災害議連が推し進めている先述の被災者住宅再建支援制度は︑建物の所有者全員の強制加入による共済 関法

(20)

方式を採用するが︑事実上は増税につながり︑全国一律で︑地域特性に基づく分権型の救済策が期待できない︒また︑

1 0

0

年という超長期的スパーンを活用する資金のスケールメリットが利点であるとはいえ︑耐震耐火構造で固定資

産税の評価額の高い建物は負担が重く給付を受ける可能性が低いなどの理由から不払い者が続出し︑採算性に疑問が

( 1 7 )

 

あるとの見解もある︒

むしろ︑共助方式を強調するのであれば民間セクターによる家計地震保険に被災者は住宅再建の救済策を委ねるペ きではなかろうか︒現行の地震保険法に基づく地震保険は火災保険に付帯する契約方式のみが認められており︑保険 金額も主契約たる火災保険の保険金額の最大で五

0

%までしか付保できず︵限度額は︑現在︑建物で最高五︑

000

万円︑家財で最高一︑

000

万円︶︑また︑保険料率の算定においても建物の耐震性能や建物の立地地盤等を考慮した 細分化が遅れているなど︑商品としての魅力に欠けるところがある︒したがって︑阪神・淡路大震災の後も世帯加入

( 1 8 )

 

率は約一五%で︑その変化は微増に留まっている︒しかし︑新しい地震デリバティブによる金融商品が開発される動 きもあり︑現在検討されているような地震保険の不完全さが十分に改善され︑地方自治体が保険加入者に税制上の優 遇措置を取るなどの誘導策をとるならば︑建物の耐久化補修が促進されるなどの効果と併せて︑地震保険の役割は有

( 1 9 )

 

効に機能するものと考えられる︒

現在︑自然災害の被災者に対する個人住宅再建支援策として︑土地所有者には優遇融資がある︒阪神・淡路大震災 の場合も不十分とはいえ︑融資や利子補給等を利用して震災後二年目ぐらいには量的には六し七割の住宅再建が完了 したといわれる︒その際︑法的側面からは定期借地権制度の活用やいわゆるリバースモーゲージ制度の採用が提案さ

れたところである︒

(21)

のインセンティプが働くものと考える︒ 第五二巻四・五号

したがって︑地方自治体はむしろ公助の主体として︑地震保険等による共助方式による救済が不十分な部分に︑被

災者の住宅再建の自助努力を促す公費負担をすべきである︒

そして︑その場合も公的支援には限度を画しておく必要があろう︒なぜならば︑国や地方自治体の事後的な公的支

援が積極的に準備されることは︑民間セクターの共済方式による地震保険の普及を妨げる要因となり兼ねないからで

( 2 0 )

 

実際上︑ひとたび自然災害が発生すれば︑その復旧・復興の推進役として活動せざるを得ないのが︑当該地域の自

( 2 1 )

 

治体である︒それゆえ︑地方自治体としては︑地域内の災害リスクはできるだけ軽減する施策を推進すべきである︒

被災者住宅の再建支援の場合も︑事前に住宅被害を予測し︑その被害軽減のためには︑むしろ建物の耐震補強などの

( 2 2 )

 

﹁事前復興﹂に力を注ぐべきである︒防災対策に必要な原資を得るために︑自治体が保険を掛けることも考えられる

が︑その場合︑原資負担を住民に求めるとするならばリスクの大きい地域では負担が重くなるので︑﹁事前復興﹂へ

いずれにしても︑被災者住宅の再建支援システムを構築する際には︑ 関法

︱つのシステムだけで被害者救済を図ろうと

するとどうしてもカバーできない部分が残るから︑複数の方式を組み合わせる方策を採用すべきものといえよう︒

(1

)

(

(2

)

加藤朗﹁危機管理の概念と類型﹂日本公共政策学会年報一九九九年

(C

DROM

版 ︶

(3

)

(1

)

(4

)

参照

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