九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
EC第4号指令規定の生成におけるドイツの影響力に関 する研究
髙木, 正史
https://doi.org/10.15017/1931694
出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(経済学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
(様式6-2)
氏 名 髙木 正史
論 文 名 EC第4号指令規定の生成におけるドイツの影響力に関する研究 論文調査委員 主 査 九州大学 教授 大石 桂一
副 査 九州大学 教授 大下 丈平 副 査 九州大学 准教授 小津 稚加子
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本論文は、欧州における会計国際化の原点である EC第 4 号指令の生成において、ドイツがどの程 度の影響力を有し、いかなる戦略をもって第 4 号指令を国内法化したのかを明らかにしようとするも のである。本論文では、まず欧州の会計国際化戦略の変遷を概観したのち、ドイツは欧州の会計戦略 と歩調を合わせつつも、一貫して「正規の簿記の諸原則」(GoB)とそれに基づく課税所得計算への 影響を最小限にしようとしてきたことを確認している。その上で、第4 号指令の中から会計利益計算 に影響を及ぼす規定をすべて抽出し、旧ドイツ法、すなわち1897年商法典(HGB)および1965年株 式法(AktG)の規定との類似性を比較するとともに、それらの規定をドイツが 1985年HGBに国内法 化する際にとった対応を明らかにするという、2 段階の分析方法を採用して検証作業を行い、以下の ことを明らかにしている。第1に、AktGが一貫して第4号指令規定の生成に強い影響を及ぼしている。
第2に、旧ドイツ法と類似しない規定が第4号指令に導入された場合でも、その多くは「法典化され
ざるGoB」として既にドイツでは会計慣行となっていた。第 3に、ドイツが第4号指令を国内法化す
る際には義務規定でさえも換骨奪胎するなどして、ほぼ「事実上の慣行維持」を図っている。以上の ことから、ドイツは第4号指令の生成段階およびその国内法化段階という2 ステップで戦略的に対応 し、従来の自国の会計慣行を維持することに成功したという結論を導いている。
本論文の独自性は、EC第4号指令の1968年「予備草案」、1971年「提案」、1974年「修正提案」、
および1978年「本文」と旧ドイツ法との網羅的かつ丹念な比較を行い、第4号指令の生成および国 内法化という2つの段階におけるドイツの戦略的対応を見事に析出した点にある。これ は本論 文の 大 きな貢献で あり、国 際会 計 研究に新たな知見をもたらすものとして高く評価できる。
以上の調査結果から、本論文調査会は、髙木正史氏より提出された論文「EC第4号指令規定の生 成におけるドイツの影響力に関する研究」を博士(経済学)の学位を授与するに値するものと認め る。