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講演概要(第112回研究発表会)

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講演概要(第112回研究発表会)

その他のタイトル Resumee der Reden bei der Tagung 2019

著者 奥田 誠司

雑誌名 独逸文学

巻 64

ページ 51‑52

発行年 2020‑03‑20

URL http://hdl.handle.net/10112/00020082

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講演概要(第 112 回研究発表会)

講演概要

(第 112 回研究発表会)

「PISAショック」後のドイツの教育改革

奥田 誠司

「PISAショック」とは、2000 年に経済協力開発機構(OECD)によっ て実施された「生徒の学習到達度調査」(PISA)において、ドイツの学 力不振が明るみとなり、それが社会的に衝撃を与えた現象のことであ る。ドイツは読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーのどの分野 においてもOECD諸国の平均点を下回った。とりわけ、最低限の習熟 度レベルにも達していないとされるレベルⅠ以下の割合が高く、そのな かに移民家庭出身の生徒が目立って多いことが判明した。

2000 年の調査結果から得られた重要な知見の一つは、移民を含めた 低学力層の子どもたちへの言語支援が、学力向上策の伴であるというも のであった。各州では就学前の段階でドイツ語能力を診断し、「言語促 進の必要あり」と判断された子どもにはドイツ語支援を行っている。さ らに、子どもたちが特定の修了段階までに身につけるべき能力に関する 国家レベルの基準(教育スタンダード)が導入された。2004 年にはベ ルリンのフンボルト大学内に「教育制度における質開発研究所」(IQB)

が設置され、教育スタンダードの一環として、「州間比較テスト」を継 続的に実施し、その結果を分析している。

言語能力の改善と並んで重要視されているのが、終日学校の拡充であ る。連邦政府は 2003 年から基礎学校に重点的に投資を行い、その 10 年 後には基礎学校のうち、およそ半数が終日学校に変わった。そして、ド イツがこれまで維持してきた 3 分岐型の中等学校制度についても、大き な見直しを迫られることになる。3 分岐型制度に対しては、以前から子 どもの早期選抜の弊害や社会的格差の助長が問題視されていた。そのた 関西大学『独逸文学』第 64 号 2020 年 3 月

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め「PISAショック」以降、3 分岐型から「ギムナジウム+ 1 種」とい う 2 分岐型に向けて、急速に改革が進められてきた。要するにギムナジ ウムを残しつつ、問題校というレッテルが貼られている基幹学校を廃止 し、それを実科学校あるいは総合制学校に統合することで、新制中等学 校として再編するといった制度である。

これら一連の政策が功を奏したのか、その後の調査ではドイツは緩や かながらも改善傾向を示している。「リスクグループ」と呼ばれる習熟 度レベルⅠ以下の生徒の割合は減少し、逆にレベルⅤ以上の高学力層は 増加傾向にある。ただし、同じ移民家庭のなかでも、ポーランドや旧ソ 連出身の親をもつ子どもに比べて、トルコ系移民の子どもの成績は大き な改善が見られなかった。

移民の子どもたちを対象とした言語支援は、PISA調査以前から様々 な州で行われてきたが、調査後は幼少期からのドイツ語教育を義務的に 推し進めている。ところが、ドイツの大都市では移民のコミュニティが 多数派となる地区が現れており、集団の閉鎖性ないし独立性が強い場合 には、ドイツ語が優勢言語に取って代われない可能性もある。

移民にとってドイツ語能力の習得は、学校教育や労働市場でチャンス を得るためには不可欠であるが、母語(出自言語)は子どものアイデン ティティ形成に重要な役割を果たす。言語習得には「臨界期」があると いわれており、早い時期ほど習熟度は高くなり、思春期以降は減衰して いくとされている。したがって、両親がともに移民の場合、その子ども には先ずは母語の基礎をしっかりと身につけさせ、母語と平行してドイ ツ語もできるだけ早期に学習させるというのが肝要ではないかと思われ る。そのためには保育施設と親(とくに家庭内で子どもと接する時間の 長い母親)との連携が不可欠となる。これまでは家庭の言語環境が非ド イツ語であることが、移民の子どもにとってはマイナスと捉えられてき たが、母語を肯定的に捉え、その獲得を促すことで第 2 言語であるドイ ツ語習得に生かすという考え方である。

多くの移民を抱えるドイツでは、今日 4 人に 1 人が移民の背景を有し ている。今後、この比率はさらに高まることが予想され、ドイツ語を母 語としない人々への一層の支援と理解が求められる。

参照

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