九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
Cell-to-Cell Measles Virus Spread between Human Neurons Is Dependent on Hemagglutinin and
Hyperfusogenic Fusion Protein
佐藤, 裕真
http://hdl.handle.net/2324/1931825
出版情報:九州大学, 2017, 博士(医学), 課程博士 バージョン:
権利関係:やむを得ない事由により本文ファイル非公開 (2)
(別紙様式2)
氏 名 佐藤 裕真
論 文 名 Cell-to-Cell Measles Virus Spread between Human Neurons Is Dependent on Hemagglutinin and Hyperfusogenic Fusion Protein
論文調査委員 主 査 九州大学 教授 林 哲也 副 査 九州大学 教授 大賀 正一 副 査 九州大学 教授 小野 悦郎
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
麻疹ウイルス(MV: measles virus)は、稀に脳に持続感染し、亜急性硬化性全脳炎(SSPE:
subacute sclerosing panencephalitis)を発症させる。この疾患で標的となるヒト神経細胞 は、MVに対する既知の受容体(SLAM: signaling lymphocyte activation moleculeとネ クチン4)を発現していないため、どのようにMVが神経細胞に感染し、細胞間を伝播す るのかは不明であった。近年の研究によって、SSPE 患者から単離された多くのウイルス 株において、融合(F)タンパク質の細胞外ドメインに融合能を亢進させるアミノ酸置換が 生じていることが判明してきた。そのような変異ウイルスは野生型MVと異なり、SLAM やネクチン4を発現していない細胞においても細胞同士の融合を誘導でき、またヒト初代 神経細胞や動物モデルの脳で効率的に感染を広げることができる。
本研究で申請者は、ヒト神経細胞モデルである分化NT2細胞において、融合能が亢進し た変異MV(Fタンパク質にのみアミノ酸置換を有する)の感染は、野生型MVと異なり、
細胞間を伝播することを示した。次に、この変異ウイルスが NT2細胞のニューロン間で、
合胞体を形成することなく細胞から細胞へ広がっていくことを共焦点タイムラプス・イメ ージングによって明らかにするとともに、NT2細胞のニューロンにおいてウイルス粒子の 産生が強く抑制されていること、また変異ウイルスの伝播が融合阻害ペプチドによって阻 害されることを示した。さらに、ヘマグルチニンに対する各種モノクローン抗体を用いた 中和実験を行い、SLAMやネクチン4に依存したMV感染を中和できる抗体の一部はニュ ーロン間伝播が阻害するが、伝播を阻害しない中和抗体も存在することを明らかにした。
以上の結果は、MV が神経細胞間において合胞体形成を引き起こさずに細胞から細胞へ と伝播すること、またその伝播は融合能の亢進した変異Fタンパク質に加え、ヘマグルチ ニンと未知の受容体に依存することを示している。これらは、MVとSSPEに関する研究 において重要な知見であり、意義あるものと考えられた。
本論文について、各調査委員より、専門的立場から論文内容に関連した事項について種々 の質問を行ったが、おおむね満足すべき回答を得た。よって、調査委員合議の結果、最終 試験は合格であると決定した。