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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

微量香気成分「インドール」が大麦焼酎の香味に及 ぼす影響及びその生成機構に関する研究とインドー ルを高含有する新規な大麦焼酎原酒の開発

梶原, 康博

http://hdl.handle.net/2324/1937187

出版情報:Kyushu University, 2018, 博士(農学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

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氏 名 梶原 康博

論 文 名 微量香気成分「インドール」が大麦焼酎の香味に及ぼす影響及び その生成機構に関する研究とインドールを高含有する新規な大麦 焼酎原酒の開発

論文調査委員 主 査 九州大学 教授 竹川 薫 副 査 九州大学 教授 土居克実 副 査 九州大学 准教授 田代康介

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

日本の伝統的な蒸留酒である本格焼酎は、通常25%のエタノールの他、1%以下含まれる微量香気 成分によって香味が形成される。焼酎飲用者の低アルコール志向が進む中、焼酎の香味の強化が必 要とされている。これまで本格焼酎の香気成分に関する研究は多いが、その官能特性として「風味

(嗅覚を加味した味覚)」に着目した研究はほとんどない。本研究では大麦焼酎に含まれる微量香気 成分の中から呈味性を示す化合物としてインドールを見いだした。さらにその官能特性とともに、

大麦焼酎製造工程におけるインドールの生成要因を明らかにし、焼酎原酒中のインドール含量制御 技術の確立を試みたものである。

大麦を主原料とする大麦焼酎には400種以上の微量香気成分が含まれる。まず本研究では、微量 香気成分の中に含まれる環状化合物インドールが呈味性を有する可能性を見いだし、大麦焼酎をは じめとする本格焼酎の官能特性に及ぼす影響を評価している。インドール添加試験により、市販大 麦焼酎における「香り」及び「風味」の閾値を測定した。さらにインドールの官能特性として焼酎 の「コク」への寄与効果と、焼酎中の含有量の違いによる官能特性の差について明らかにしている。

ビール風味飲料の製造工程において、モルト使用量を大幅に削減した場合にビタミンB6が欠乏し てインドールが蓄積することが知られている。一方、大麦焼酎製造工程におけるインドールの生成 経路についてはこれまで検討されていなかった。そこで、大麦焼酎製造各工程のインドール含有量 を検討した結果、大麦焼酎中のインドールは原料大麦や麹由来ではなく、焼酎醪(もろみ)の発酵中 に蓄積していることが示唆された。また、使用する酵母の遺伝的背景によってインドール蓄積量が 異なることを明らかにしている。さらに、醪へのビタミンB6添加がインドール含量を低下させたこ とから、大麦焼酎製造工程におけるインドールの蓄積にも、発酵中のビタミンB6量が関与している ことを示唆している。

次に、大麦焼酎製造においてインドールを蓄積する焼酎酵母 BAW-6 株の遺伝的要因の解明を試 みた。四分子解析の結果から、インドール高蓄積株の蓄積能の差異は一遺伝子変異によることを示 唆している。インドール蓄積能が異なる単胞子株群の比較解析を行ったところ、より高蓄積する株 では、醪中のビタミン B6 含量は低蓄積株よりも高く推移していた。一方、酵母細胞内のビタミン B6含量は低く推移していたことから、酵母細胞内のビタミン B6含量の低下が醪中のインドール蓄 積に関わっていることを示唆している。そこで、BAW-6株及び単胞子株の全ゲノム塩基配列を明ら かにして、インドール蓄積に関与する遺伝子の特定を試みている。しかし、単胞子株間のSNP解析 から抽出された9個の候補遺伝子についてはインドール生産への関与は認められなかった。一方、

実験室株の解析から、ビタミン B6の生合成や輸送、あるいはトリプトファン代謝に関わる SNO2,

TPN1,TRP5といった遺伝子がインドール蓄積能の差異に関係していることを示唆している。

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最後に、大麦焼酎製造におけるインドール濃度の制御方法を確立するために、製造工程における 様々なパラメーターの影響を検討している。原料大麦の精麦歩合、麹歩合、汲み水歩合といった焼 酎製造の基本的な配合条件の違いや蒸留法の違いが、焼酎醪中のインドール含量に影響することを 明らかにしている。一方、これらの基本的な仕込み配合条件よりも酵母の遺伝的要因の方が、影響 が大きいことも明らかにしている。以上の知見を総合することによって、低アルコール度数(10%)

において従来技術の原酒よりも味の評価を高める原酒を開発することに成功している。

以上、本研究はこれまでほとんど解析が行われていなかった微量香気成分であるインドールが、

大麦焼酎の官能特性に与える影響を明らかにし、焼酎製造工程におけるインドール生成機構につい て多くの新規な知見が得られている。さらに、その成果は低アルコール度数大麦焼酎の香味改善と いう新しい原酒の開発に有効であることから、応用微生物学及び醸造産業の発展に寄与する価値あ る業績と認める。よって、本研究者は博士(農学)の学位を得る資格を有するものと認める。

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