暑熱環境下における持久的パフォーマンスに及ぼす Crashed ice 摂取の影響 [ PDF
4
0
0
全文
(2) 2) 実験手順 i) 最大酸素摂取量の測定 本実験に先立ち,自転車エルゴメーターを用いて漸増 負荷試験法により最大酸素摂取量の測定を行った(Fig, ●. ●. 1.) .VO2max の達成基準(クライテリア)は,VO2 が(1) レベリングオフに達する, (2)心拍数が最大心拍数(220年齢)の 10%以内, (3)呼吸交換比が 1.05 以上とした. この内 2 つ以上,クライテリアに該当した時のみ ●. ●. VO2max を採用した.また,被験者個人毎のVO2max と ●. 運動強度の一次回帰直線を算出し,60%VO2max 強度お ●. Figure 2. 実験プロトコル. よび 80%VO2max 強度を求めた. Exhaustion�. iii) 測定項目. Room temperature: 25℃� Relative humidity: 50% �. 運動中の酸素摂取量は呼気マスクを着用し,運動開始 9 分〜14 分,24 分〜29 分と 39 分〜44 分に,5 分間採. 180�. 気した.心拍数は心電図テレメータシステムによって無. 150�. 60 rpm�. 120�. 温(Tarm),胸部温(Tchest),大腿温(Tthigh)は実 験を通して,5 分毎にデータロガーに記録した.平均皮. 90 W�. 0 min�. 線送信し,30 秒毎に記録した.直腸温(Tre)及び上腕. −. −. 膚温(Tsk)および平均体温(Tb)は,3 点の表皮温や 3�. 6�. 9�. 12�. Respiratory gas and Heart rate�. 直腸温から算出した.蓄熱量(heat storage)は,Heat storage = 0.965×m×△Tb/AD. Fig, 1. 最大酸素摂取量プロトコル. を用いて算出し,単位は W/m2 とした.. ii) 本実験 . iv) 統計処理. 本実験として,Crashed-ice trial(ICE 試行)と. 結果は,平均値±標準偏差で示した.酸素摂取量,心. Cold-water trial(WATER 試行)の 2 試行を,それぞ. 拍数,直腸温,上腕温,胸部温,大腿温,平均皮膚温,. れ別の日に実施し,ランダムな順に実施した.この 2 つ. 平均体温の変化は繰り返しのある 2 要因(飲料×時間). の試行は,4 日以上の間隔を空けてその手順は同じにさ. 分散分析を用いて検討した.疲労困憊までの時間,蓄熱. れた.. 量,疲労困憊の生理学的指標の変化は繰り返しのある 1. 被験者は気象室(35℃,相対湿度 30%)に入室し,測. 要因(飲料)分散分析を用いた.また,有意水準は 5%. 定器具を装着した.彼らは 5 分間の安静後,家庭用のミ. 未満とした.. キサーで作成された Crashed ice(0.5℃)もしくは冷水 結果 . (6℃)を 5 分間隔毎に体重 1 kg 当り 1.25 g ずつ摂取し た.飲料摂取終了後,自転車エルゴメーター上で 5 分間. 1) 酸素摂取量および心拍数 . の安静をとり,その後 60%VO2max 強度での疲労困憊に. 酸素摂取量および心拍数,ICE 試行と WATER 試行間. 至るまでのサイクリング運動を開始した.彼らは 2 つの. に有意な差異は認められなかった.. 試行中,運動の 15 分目,30 分目,45 分目にも同様の飲. . 料を体重 1 kg 当り 2.0 g 摂取した.被験者が 60 分経過. 2) 疲労困憊に至るまでのサイクリング時間. しても疲労困憊に至らない場合,運動強度を. 2 試行における各被験者の疲労困憊に至るまでの時間. ●. 80%VO2max にあげ疲労困憊に至らせた.疲労困憊は,. を Fig, 3. に示した. 9 名のうち 8 名の被験者は, WATER. 60 rpm の回転数を 10 秒以上保てなくなったと場合とし. 試行に比べ ICE 試行においてサイクリング時間が長か. た(Fig, 2.) .. った. 平均サイクリング時間は ICE 試行では 50.0±12.2. ●. 分, WATER 試行では 42.2±10.1 分であった (p<0.05) ..
(3) Tab, 1.各被験者の運動前と運動中の蓄熱量. 70�. Time to exhaustion (min)�. 60�. subjects�. 50�. 40�. 30�. 20�. 10�. 0�. Cold Water�. Crashed Ice�. Fig, 3. 2 試行の各被験者の疲労困憊に至るまでの時間 . Pre-exercise� WATER� ICE� (W/m2)� (W/m2)�. Post-exercise� WATER� ICE� (W/m2)� (W/m2)�. a�. 2.64 �. -11.13 �. 54.39 �. 59.96 �. b�. -4.15 �. -5.32 �. 80.31 �. 75.78 �. c�. -1.90 �. -10.51 �. 86.64 �. 86.61 �. d�. -8.39 �. -11.03 �. 55.38 �. 61.02 �. e�. -0.36 �. -8.08 �. 54.78 �. 69.11 �. f�. -2.53 �. -6.03 �. 64.83 �. 90.70 �. g�. -2.82 �. 0.25 �. 92.10 �. 83.14 �. h�. -3.12 �. -3.93 �. 45.77 �. 51.57 �. i�. 1.01 �. -12.74 �. 60.13 �. 77.78 �. Mean�. -2.18 �. -7.61 �. 66.04 �. 72.64 �. SD�. 3.18�. 4.21�. 15.39�. 12.58�. *. 3) 直腸温 2 試行における 9 名の被験者の平均直腸温を Fig, 4. に. 考察 . 示した.運動開始前の 35〜15 分まで ICE と WATER 試. Gonzalez-Alonso et al.は 1),運動前の食道温を浸水に. 行において有意な差は認められなかった.しかし運動開. よる運動前冷却により 1.5℃低下させ,冷却を行わない. 始 10 分前から,Crashed ice 摂取は冷水摂取以上に直腸. 群と比較して疲労困憊までのサイクリング時間を 18 分. 温を低下させた(− 0.37±0.03℃ vs − 0.17±0.02℃).. 延長させたことを報告している.運動前冷却後の蓄熱量. その結果,運動開始 10 分前より ICE 試行の直腸温は. 能の増加は,対照条件と比較して体温調節系の負荷を減. WATER 試行と比べ有意に低い値を示し,運動開始時に. 少させ代謝性産熱の貯蔵の増加を可能にする 1).本研究. おいては 0.32±0.09℃低かった(p<0.05) .運動中に直. においても,このことを裏付けるものと思われる.. 腸温は上昇し続けたが,運動開始 30 分まで ICE 試行は. Crashed ice 摂取により直腸温及び平均体温を低下さ. WATER 試行よりも有意に低かった(p<0.05) .運動中. せ ,冷水摂取以上に蓄熱量を低下させた.Crashed ice. の直腸温の上昇率は, ICE 試行: 0.23±0.07℃と WATER. 摂取によるサイクリング時間の増加及び危機的限界温度. 試行: 0.22±0.07℃で有意な差は認められなかった.疲労. 到達までの遅延は,冷水摂取と比較して蓄熱量能の増加. 困憊時の直腸温は,ICE 試行: 38.87±0.38℃と WATER. による可能性が示唆された.. 試行: 38.93±0.52℃でほぼ同じ値を示した.. 本研究における Crashed ice 摂取は,冷水摂取以上に 運動開始時の直腸温を低下させると示した.Siegel et. * * * **. *. *. *. *. al.2)は常温環境下(24.4℃)において,運動開始前に体 重 1 kg 当り 7.5 g の Ice slurry を摂取の影響を検討した. その結果,運動開始時の直腸温を 0.66℃低下させた.本 研究における Crashed ice 摂取による運動開始時の直腸 温の低下は 0.37℃であった.Ice slurry 摂取による Siegel et al.の研究と同量の Crashed ice 摂取にもかか わらず,直腸温の低下は小さかった.Siegel et al.6)は別 の研究において,暑熱環境下(34℃)における同量の Ice slurry の摂取により運動開始時の直腸温を 0.43℃低下 させた.本研究の摂取環境は暑熱環境下(35℃)であっ. Fig, 4. 2 試行の各被験者の直腸温. たため,この直腸温低下の度合いの差は,摂取環境の温 度の差によるものかもしれない.また,Crashed ice は. 4) 蓄熱量. Ice slurry と同様に懸濁液であるが,Siegel et al.が使用. Tab, 1.に,2 試行における各被験者の運動開始時と運. した Ice slurry の温度は− 1℃であり,本研究で用いた. 動終了後の蓄熱量を示した.運動開始時の ICE 試行の蓄. Crashed ice(0.5℃)よりも低温であった.したがって,. 熱量は,WATER 試行よりも有意に減少した.疲労困憊. 飲料温度の差も影響している可能性もあろう.. 時の蓄熱量は, 条件間で有意な差異は認められなかった.. 運動中の直腸温の上昇率は,ICE 試行と WATER 試行 で有意な差が認められなかった.この結果は,運動前冷.
(4) 却に加えて運動中の冷水摂取による冷却介入を実施し,. 比べて低い直腸温の値は,有酸素性の体力レベルが関係. 運動中の直腸温の上昇率の変化を観測しなかった Lee et. しているかもしれない.本研究において用いた被験者の. al.5)の研究結果と同様であった.一方,Mundel. al.4). VO2max は 47.7 ml/kg/min であり,先行研究においては. は,暑熱環境下(33.9℃)での運動中の 4℃の水の摂取. 有酸素性体力がないものに分類され,また本研究におい. は,19℃の水と比較して運動開始 20 分以降に有意に直. て条件間で有意な差異はなかったため,危機的限界温度. 腸温を低下させた,と報告している.加えて,Mundel et. に達していた可能性も考えられる.. al.4)の研究において,被験者は運動中に 摂取した.この摂取量は,Lee et. al.5)の. et. ●. 4℃の水を 1.3 L. 600 ml や本研究. 結論 . の 383 ml よりも多い.運動中の水分補給量は,発汗量. 本研究において,運動前の Crashed ice 摂取は冷水摂. と同等が望ましいとされているが,本研究の発汗量は,. 取以上に持久的パフォーマンスを向上させた.一方で,. 水分摂取量以上の量である.したがって,運動中の直腸. 運動中の Crashed ice の摂取は冷水摂取と直腸温の上昇. 温の上昇率は飲料の温度に加えて,摂取する量において. 度合いに有意な差はなかった.したがって,運動中では. も影響されるかもしれない.運動中は多くの熱が産熱さ. なく運動前の摂取によって直腸温の大きな低下をもたら. れるため,運動中の水分補給量を増加させる必要がある. し,それが熱貯蔵能を大きくし,危機的限界温度に達す. かもしれない.Hasegawa et al.7)は,運動前冷却に加え. る時間を延長させた,と考えられる.Crashed ice はミ. て運動中の発汗量分の 14〜16℃の水分摂取は,水分摂取. キサー等で簡単に作成でき,競技会や練習において実践. ●. を行わない群と比較して,60%VO2max 強度の運動開始. 的な方略となることが示唆される.. 50 分後より有意に低い値を示すと報告している.本研究 では,被験者の疲労困憊に至った時間と飲料摂取の時間. 主要引用文献 . (15 分間隔)の関係から,運動開始後 30 分までしか検. 1) Gonzalez-Alonso et al. (1999): Influence of body. 討を行うことができなかった.したがって,直腸温の上. temperature on the development of fatigue during. 昇率は運動の後半において低下していた可能性も考えら. prolonged exercise in the heat. J. Appl. Physiol. 86: 1032-1039.. れる. 暑熱環境下における持久的パフォーマンスは危機的限 界温度に達すると,パフォーマンスの低下及び終了を引 き起こすと示されてきた.Gonzalez-Alonso et al.1)は, ●. 危機的限界温度に及ぼす影響に関して運動鍛錬者(V O2max:. 65.8 ml/kg/min)を被験者に用いた研究を行った.. 被験者は,暑熱環境下(40℃, 相対湿度 19%)において ●. 運動前に身体を冷却または加温し,暑熱環境下で 60%V O2max. 強度のサイクリング運動が遂行できなくなるま. 2) Siegel et al. (2010): Ice slurry ingestion increases core temperature capacity and running time in the heat. Med. Sci. Sports Exerc. 42: 717-725. 3) Ihsan et al. (2010): Beneficial effects of ice ingestion as a precooling strategy on 40-km cycling time-trial performance. Int. J. Sports Physiol. Perform. 5: 140-151. 4) Mundel et al. (2006): Drink temperature influences fluid intake and endurance capacity in men during exercise in a hot, dry environment. Exp. Physiol. 91: 925-933.. で行った.その結果,運動開始時の食道温は冷却や加温. 5) Lee et al. (2008): Cold drink ingestion improves exercise. の条件により異なったが,疲労困憊時の食道温はどの条. endurance capacity in the heat. Med. Sci. Sports Exerc.. 件下においても 40.1~40.2℃であった.本研究における. 40: 1637-1644.. ●. ICE 試行と WATER 試行の 60%VO2max 強度での疲労. 6) Siegel et al. (2012): Pre-cooling with ice slurry ingestion l. 困憊時の直腸温は,それぞれ 38.87℃と 38.93℃であっ. eads to similar run times to exhaustion in the heat as cold. た.Cheung and McLellan8)は,危機的限界温度に及ぼ. water immersion. J. Sports Sci. 30: 155-165.. す有酸素性の体力レベルの影響を比較検討した.被験者 は, 暑熱環境下 (40℃, 相対湿度 30%) において 3.5 km/h の速度で疲労困憊まで歩行運動した.その結果,暑熱順 化や脱水等の水和状態に関係なく有酸素性の体力のある ●. 被験者(VO2max > 55 ml/kg/min)は,有酸素性体力が ●. ないそれ(VO2max < 50 ml/kg/min)と比較して,疲労 困憊時の直腸温は有意に高い値を示した(39.3 vs 38.7℃) .したがって,Gonzalez-Alonso et al.の研究と. 7) Hasegawa et al. (2006): Combined effects of pre-cooling and water ingestion on thermoregulation and physical capacity during exercise in a hot environment. J. Sports Sci. 24: 3-9. 8) Cheung and McLellan (1998): Heat acclimation, aerobic fitness, and hydration effects on tolerance during uncompensable heat stress. J. Appl. Physiol. 84: 1731-1739..
(5)
図
関連したドキュメント
環境への影響を最小にし、持続可能な発展に貢
⇒
(Yc) 、有楽町層砂質土層(Ys) 、埋没段丘堆積層(Bts)、東京層第一粘土層上部層(Tcu) 、東京
環境基本法及びダイオキシン類対策特別措置法において、土壌の汚染に係る環境基 準は表 8.4-7 及び表 8.4-8
①技術者の行動が社会的に大き な影響を及ぼすことについて の理解度. ②「安全性確保」および「社会
住居 木材 鋼材 セメント、骨材.
11 市川行徳測定局 千葉県 13.9 30.2 ○. 1年平均値が 15μg/m
計画道路及びその周辺は、台地に当たる立川段丘上に位置しています。計画道路