令和2年度 薬学部薬学科「大学基礎論」報告
内 山 敦(令和2年度科目責任者)
薬学科の大学基礎論(1年前期必修)は、
1)読む、書く、話し合う、まとめる、発表するといった様々な活動を通 じて、大学生が主体的に学ぶための基礎となる知識・技能を習得する 2)学生同士が協力して文献調査等を行うことで、コミュニケーション・
スキル、リサーチ・スキルの基礎的素養を培う
の2点を主な目的とする科目であり、平成
31
年度(令和元年度)は少人数 グ ル ー プ に 分 か れ て の 「 教 員 イ ン タ ビ ュ ー 」 の 実 施 と そ の 報 告 書(PowerPoint で A
4
版2ページ)の作成、および「AI について」グループご と に テ ー マ を 定 め 「 文 献 調 査 等 」 を 行 い 、 そ の 調 査 結 果 ・ 成 果 を PowerPoint でプレゼンを行うことの2つを軸に授業が実施された。授業で は中間発表を含めれば1年生全員が最低一回は PowerPoint を用いて聴講者 の 前 で プ レ ゼ ン を 行 う な ど 1 年 生 全 員 に PowerPoint 資 料 の 作 成 と PowerPoint での発表のスキルを身に着けさせるという明確な目標を達成す るため授業計画も工夫されていた。また、グループごとの評価だけでは各 自の貢献度などが成績に反映されないなどの不満や不公平感が解消されな いので最終レポートとして「AI について」の個人レポート A4
版2枚を提 出させ成績評価に加えるなど成績評価の方法についてもよく考えられてい たと思う。最終レポートはグループの中で各々がどのように活躍したのか 各自がアピール出来る点で本当によい試みだったと思うが、実際提出され たレポート(私が評価を担当したもの)をみると同一グループの学生のレ ポートはほとんど似たり寄ったりで代わり映えしなかったのが印象に残っ ている。令和2年度 薬学科「大学基礎論」
今年度においても当初は昨年度同様「教員インタビュー」とその報告書 作成、および「AI について」グループごとにテーマを決め文献調査等を行 い、その調査結果の PowerPoint によるプレゼンの2つを実施する予定であ った。「教員インタビュー」は新型コロナ感染症の問題が露わになってす ぐに実施の見送りを決定したが、新型コロナ感染症の実態がどのようなも のなのかわからない中で、グループワークおよび PowerPoint による成果発 表を授業で実施する為に幾度となく授業の実施計画案の見直し・変更を行 った。しかし、4月半ばに令和2年度薬学部前期授業の完全オンライン授 業による実施が決定されたのを受け、大学基礎論におけるグループワーク を断念した。そこで、今年度の薬学部「大学基礎論」の担当者達でオンラ イン授業での大学基礎論の内容を検討、授業案を作成し、それを教養教育 委員会で了承いただいたのが以下のものである。学生が在宅で実行可能に する為に大学基礎論の授業でのワークはグループワークではなく全て個人 ワークで行うことに変更した。また学生が自宅でオフィス等の編集ソフト を必ずしも利用できるとは限らないのでレポート等の課題提出は Moodle の オンラインテキストを利用することにした。したがって、PowerPoint での 資料・報告書作成も実施せず、結果として PowerPoint での成果発表の実施 も見送ることになった。この部分が従来の大学基礎論と大きく異なる点で ある。尚、大学基礎論の担当は教養教育センター教員全員であるが、今年 度からレポート評価やプレゼン評価以外の通常の授業においては教員4名
(偶奇各クラス主担当1名、副担当1名)体制で実施することが了承され 担当教員のローテ—ションも初めの数年間は確定し教養教育委員会で了承 されている。
令和2年度薬学科大学基礎論 一般目標
1)読む、書く、まとめる、発表するといった様々な活動を通じて、大学 生が主体的に学ぶための基礎となる知識・技能の習得
2)学生がインターネットや新聞・書籍、論文等の文献調査を個人ワーク で行うことで、リサーチ・スキルの基礎的素養を培う
授業形態
授業はオンデマンド画像配信型で実施。毎回個人ワークが主である。
授業内容
項 目 内 容 出欠確認
ガイダンス
情報の収集⑴ 礎ポート作成の基礎⑴ 礎ポート作成の基礎⑵
情報の収集⑵ 礎ポート作成の基礎⑶
論点を抽出する、テーマを探す 考えをまとめる、つなげる、推敲する 課題①個人ワーク → 提出
課題②個人ワーク
課題①の提出
ジャンル報告
情報の検証⑵ 課題②個人ワーク ソース報告
情報の検証⑶ 課題②個人ワーク 欠点報告
論理的な表現方法⑵ 課題②個人ワーク 利点欠点併記 論理的な表現方法⑶ 課題②個人ワーク → 提出 課題②の提出
総括 講義の振り返り、フィードバック 動画
情報の収集⑶ 課題②個人ワーク 利点報告
動画 動画
動画 1
5
8
11 2 3 4
6 7
10
12 13 14 9
動画 Word可否?
根拠と客観性(論の展開、引用と参考文献)
<利点・欠点をふまえた考察>
情報収集の仕方(CiNii、Google Scholar)
<AI の長所、メリット、できること>
情報の検証⑴ 動画
論理的な表現方法⑴ 動画
情報リテラシー(情報の分析と活用)
<AI の短所、デメリット、できないこと>
授業の概要説明
◆課題について
課題① 感染症予防の観点から身体的距離の確保や StayHome が求められ、
対面でのコミュニケーションが減少した。これにより、今までと 大きく変わった点は何か。また、あなたはそれをどう感じたか。
さらに、なぜそう感じるのだろうか。自らの体験から具体的な場 面を挙げて説明しなさい。
文字数:
500
〜1
,000
字提出方法:オンラインテキスト
課題② 近年、AI を用いた新しい技術が多方面で導入され様々な問題の解 決にあたっている。それらの AI は、一方では成果を挙げつつも同 時に運用面での課題が生じたり想定外の結果になったりと、利点 だけでなく欠点あるいは限界も有している。では、どのような工 夫をすればその欠点を補い、より効果的に技術を活用できるだろ うか。具体的な AI の導入事例とその実情を調べ、より良い活用方 法を提案しなさい。
文字数: A
4
用紙2枚=2400
文字程度 提出方法:オンラインテキスト成績評価
授業へ取り組む姿勢
40
% 課題レポート①30
% 課題レポート②30
% 以上。今年度の授業について簡単に説明する。「教員インタビュー」実施見送 りの代わりに課題レポート①(
500
〜1
,000
字)を設定した。各回の授業の 資料・動画作成については木戸先生、遠藤先生のお二方にご尽力いただい た。ガイダンスにおいて、授業の目的、内容、成績評価について説明を行 い、翌週から学生は課題①または②について個人ワークを行い、適宜 Moodle でその経過報告を行うという形式で授業を実施した。ガイダンス後の最初の3回(2から4回目)の授業でレポート作成の基 礎について講義し、学生には、それを生かして短いレポート(課題①)を 作成させて授業第4回目の週に提出させた。昨年度に比べ課題①の授業の 割り当て回数を少なく、作業量が多い後半(課題②)の授業の割り当て回 数(個人ワーク時間)を多く設定した。
課題①のレポートの評価については教養教育センター教員全員で分担し て行った。評価の基準は、新型コロナ感染症の影響で対面でのコミュニケ ーションが減少したことで、「今までと大きく変わった点は何か」、「それ についてどう感じたか」、「なぜそう思うのか」の3点についてそれぞれ秀
◎、優〜可の上半分○、可の下半分△で評価した。3段階ではなく5段階 くらいでの評価の方が評価しやすかったという意見が何名かの教員から寄 せられた。課題①については評価の対象外と判断された出来の悪いレポー トを提出した2名に再提出させたが、その他は概ねレポートの出来は良か ったと思う。今年度の薬学科1年生は、個人ワークはそれなりに出来るこ とが分かった。また、例年と違い課題レポートの未提出者がいなかったこ とはオンライン・個人ワーク形態で授業を実施した数少ないメリットだろ う。
その次の3回(5〜7回目)の授業で、情報の収集について講義を行い 種々の情報収集方法について説明し、学生には実際に AI について情報収集
(AI の利点、実際の導入事例)を行わせその結果を Moodle にて報告させた。
また、課題②で各自が扱う分野についても報告させた。しかし、この3回 の授業の期間、学生から CiNii、GoogleScholar、大学のデータベースなど を大学の図書館のページから利用しようと思ったが通信設備の問題なのか これらの検索エンジンが利用できない、図書館が利用できないので文献を 調べることが出来ないという問い合わせが多く、情報収集の手段(特に、
信頼度が高い情報の収集について)を授業で説明はしたが、実際にはそれ らを利用できない学生が少なからずいたので情報の収集において多様な信 頼度が高い情報ソースを利用するというリサーチスキルの基礎を実践させ られなかったのではないかと悔やまれる。
参考までに、学生が利用した情報源および課題②のテーマとして予定して いるジャンルについて締め切り前の途中での集計結果が次である。信頼で きる情報源を利用できる学生はちゃんとそれらを利用しているように思わ れる。
情報源
大学が契約しているデータベース
13
人 CiNii66
人GoogleScholar
69
人 その他16
人課題②のテーマ 文学・語学 4人 教育
19
人 化学・工学19
人 文化・芸術10
人スポーツ 3人 医療・福祉
91
人 地理 1人 経済 9人 その他 8人次の3回(8〜
10
回目)の授業で、情報の検証(情報の分析・活用など の情報リテラシー)について講義を行った。学生には、信頼度が高い情報 源から情報を取集するようにと指導したが、上記のような不具合もあり信 頼度が高い情報源を利用することを実践させられなかった。この3回の授 業期間に学生には、AI の短所・デメリット、出来ないこと(欠点)につい て調査した内容および利用したソースの報告を行わせた。参考までに、このとき学生が利用した情報源について締め切り前の途中 での集計結果が次である。信頼できる情報源を利用できる学生はちゃんと それらを利用しているように思われるが、情報の信頼度が高いとは思えな いネット記事等を用いたと回答した学生が2番目に多いことが懸念すべき ことであり、これについては授業担当者から、集めた情報は信頼できるも のなのか?古い情報や不完全な情報が混ざっていないか?手元の情報を再 度精査するようにとの指導が行われた。
情報源
GoogleScholar
70
人ネット記事等のインターネット検索
44
人 CiNii28
人大学が契約しているデータベース 5人 本・雑誌 3人
新聞 1人 その他
次の3回(
11
〜13
回)の授業で論理的な表現方法について講義を行い、論の展開や引用方法や参考文献の書き方について説明した。また、課題② について調査対象分野における AI の利点・欠点を整理させた上で AI の欠 点を補い、効果的に技術を活用する為にはどのような工夫が必要であるか を考察させ課題②のレポートとして授業
13
回目に提出させた。課題②のレポートの評価についても課題①同様に教養教育センター教員全 員で分担し行った。評価の基準は、「AI の利点」、「AI の欠点」、「AI の欠点 を補うための工夫等の考察」の3点についてそれぞれ秀◎、優〜可の上半 分○、可の下半分△である。こちらについても3段階ではなく5段階での 評価の方が評価しやすかったという意見が何名かの教員から寄せられた。
また、今回の評価に関しては「甘すぎ」たり「厳しすぎ」たり教員間の差 が大きいように思えたので、1つのレポート評価を複数の教員で担当する
(1教員最低1クラス
50
〜60
名程度)のが妥当だったと思う。課題②につ いては、評価の対象外である出来の悪いレポートを提出した3名にレポー トの再提出をさせた。その他 Moodle 上の履修者名簿から名前が消失すると いうトラブルが発生した7名ほどの学生については、課題をワード等で再 提出させ、それを各評価担当教員に評価いただいた。レポート②の出来も 概ね良かったようである。読む、書く、纏める、発表するということを個 人ワークで実践する能力を今年の1年生は十分身に着けていることが分か ったが、本来の目的であるグループワークについては一切行っていないの で、この学年の学生が低学年のうちにグループワークの基礎的素養を培う 授業が実施されることを願う。また、PowerPoint での資料作成およびプレ ゼンテーションのスキルを身に着ける授業についても実施されることを願っている。
最後のフィードバックの授業では、課題①について評価方針、評価の閲 覧方法および課題①で問われている内容の理解が不十分であるレポートの 例について説明を行い、課題②についても評価方針および成績入力後の評 価の閲覧方法について説明を行った。成績については、授業に取り組む姿 勢を出席(課題の進捗状況報告やアンケート提出)のみで評価した為かな り甘い評価になってしまった。これは初めてのオンライン授業の実施で担 当教員の(大学基礎論以外の授業での)負担がもの凄く大きく、この状況 では学生一人一人に個別の指導を行うのは難しいと私が判断し、個別指導 を十分に行わなかったので、課題レポート以外の個人ワークでの報告やア ンケート等の出来については不問にしたためである。楽をしたという批判 もあるかと思うが、実際今年はこれが精一杯であった。
以上簡単であるが今年度の授業の説明である。
最後に、今後今回のように大学基礎論の授業をオンラインで実施せざる を得ない状況になったとき、今回同様に個人ワークのみで実施するのか、
グループワークを取り入れるのか、それぞれの場合で個人またはグループ への指導をどのように行うのか、WG などで実施可能な案を早急に作成し ておく必要があると考える。