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ハワイ大学マノア校での在外研究

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Academic year: 2021

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 2015年8月より2016年8月までの1年間、在外研 究の機会得て、ドイツ・ハンブルクに滞在した。前 任校勤務の折も、2004年から2005年までハンブルク で在外研究を行ったので、この度は、約10年ぶり2 度目のハンブルクでの在外研究であった。2度の在 外研究の間にも、何度となくハンブルクを訪れては いたが、生活拠点を日本からハンブルクに移しての 滞在となると、 やはり気持ちが引き締まるもので あった。

■ハンブルク

 ハンブルクは、北ドイツに位置する人口175万人 のドイツ第2の都市である。ドイツは16の州からな る連邦国家であるが、ハンブルクは首都ベルリンと 同様、1都市で1州を構成する都市州である。商業 都市であるため、街ではショッピングを楽しむこと ができるだけでなく、多くのレストランが立ち並び 世界各国の料理を満喫することができる。また、港 湾都市でもある。ハンブルク港へは街の中心から電 車で5分程度で行くことができ、行きかう巨大客船、

貨物船を見ることができる。滞在中、日本の企業が 建造した豪華客船アイーダ(Aida)がハンブルク港 に入港する機会に恵まれた。港一帯は、ソーセージ やビールを提供する露店も出て、花火も上がり、多 くの人で賑わっていた。

 ハンブルクは、水とともにある街である。人々の 生活は水と切り離せない。ハンブルク港、エルベ川、

運河、アルスター湖。アルスター湖は街の中心にあ り、春には白鳥が湖面を泳ぎ、夏になると多くの ヨットが帆走する。湖の周辺は散歩やジョギングの 絶好の場所である。日本人会主催の「桜祭り花火大 会」も開催される。2016年は5月20日に行われ、ア ルスター湖周辺で本場日本の花火を満喫した。

 大都会でありながら、水や緑に溢れ自然豊か、街

並みが美しくおしゃれ、多くのレストランやショッ プがあり活気のあるハンブルクは、ドイツの中で人 気の高い街である。毎年、ドイツで「住みたい街ラ ンキング」が発表されるが、一度ミュンヘンに1位 の座を譲ったことがあるものの、ずっと1位の座に 輝いているのがハンブルクである。

 日本人にとっては、日本総領事館、日本人会があ り、生活面での様々な情報を提供してくれること、

日本食レストランがあること、海が近いため新鮮な マグロ、サバ、イワシなどの魚が手に入るというこ とで生活しやすい街である。

■気候と食事

 ハンブルクを訪れる際覚悟しておかなければなら ないことがある。気候がよくない、悪すぎる。寒い、

暗い、風、雨、雹に悩まされる。冬は概ね氷点下2 度から氷点下6度程度だが、寒さに慣れていない日 本人にとっては、辛い。春になってもコートは手放 せない。夏でも長袖のジャケットや軽めのコートは 必需。気温より辛いのが暗さである。季節を問わず、

空は厚い鉛色の雲に覆われ、太陽を見ることが少な い。9月頃からは秋というより初冬の趣き。冬は午 前9時くらいまでは夜かと思われるほど、真っ暗。

10時くらいに漸く薄明るくなるが、午後4時くらい には暗くなる。春、夏には日照時間が長くなるが、

青空が出る日は数えるほどしかない。加えて、毎日 雨やら、雹やら何かが空から降ってくる。風も吹く。

足元が悪い。したがって、革靴、ヒールのある靴は 履けない、水をはじく生地のフード付きのコートと 汚れても構わないジーンズに、リュックサックが毎 日の服装となる。「今日もこんな天気か」とため息 をつきながら、悪天候と戦う気分で出かけていた。

ハンブルクが天気の悪い日でも、同じドイツのミュ ンヘン、ベルリンは快晴だったりした。このような

―  ―9 海外レポート

ハンブルク在外研究生活記

法学部教授 折 登 美 紀

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気候のせいか、真面目な日本人は鬱になる人が続出 するようで、注意が必要である。屋内の部屋に籠っ て仕事に専念しすぎると、特に鬱になりやすい。努 めて外に出ること、人と会話することが肝要である。

 ドイツでおいしいのはパン、ケーキとコーヒーで ある。パンの種類は世界一ともいわれている。例え ばクロワッサンでも、チーズ入り、ソーセージ入り、

チョコクリーム入りとバラエティに富む。大学の中

にはMensa(学食)があるが、私は学食では数回食

べたのみであった。ある日の学食のランチは、大量 のじゃがいもの上に8本のソーセージが鎮座してい た。パスタランチは、日本の二倍の量のスパゲッティ、

麺が太い上に茹ですぎ。いずれも量が多く、塩・チー ズ・バターで味付け、どうアレンジしても材料はじゃ がいもか肉か。

■ゲストハウスと大学

 私は、Gästehaus der Universität Hamburg(ハンブル ク大学ゲストハウス)に居住した。ここに、ハンブ ルク大学で研究をする研究者だけでなく、マックス・

プランク研究所やブツェリウス・ロー・スクール等 で研究をする研究者ら、世界各国から約50名が住ん でいた。何より立地が良い。通りを挟んで目の前が ハンブルク大学、徒歩5分のところにマックス・プ ランク研究所、徒歩12分程度のところにブツェリウ ス・ロー・スクールがある。ICEやIC(新幹線)も 停まるダムトア駅は徒歩5分。ゲストハウスでは、

毎月Social Hour という居住者たちのパーティーが開

かれ、多くの研究者たちと交流することができる。

研究、文化、政治について語り合い、見聞を広める ことができる非常に良い機会であった。

 私はブツェリウス・ロー・スクール(以下、ブツェ リウスという。)に籍を置いた。10年前はハンブル ク大学法学部に籍を置いていたが、今回はブツェリ ウス。ハンブルク大学は大規模総合大学であるが、

ブツェリウスは法学部のみの単科大学である。ブツェ リウスは、2000年に、ドイツで初めての私立の法学 専門の大学として設立された新しい大学である。ド イツの大学はほとんどが州立大学で、私立は今でも 大変珍しい。財界の支援で設立され、海外からも多 くの視察団がやってくる。シンポジウムも頻繁に開 催されている。法学の分野ではトップクラスの大学

として有名で、学生たちは全員、司法試験合格を目 指して勉学にいそしみ、合格率はトップクラス。た だ、私のような研究者にとっては、ブツェリウスの 図書館は、ドイツの司法試験合格を目指す学生向け という性格からか、コンメンタールや基本書の類は 充実していたものの、極めて専門性の高い資料や歴 史的な資料、ドイツ以外の国の資料の所蔵にはいさ さか難があるように思われた。

■研究

 私は、行政法学を専門としているが、主に、「行 政強制」と「都市計画法」を研究している。この度、

前者については行政強制に関する理論の展開過程を 明らかにすべく1900年代初頭からの文献研究を、後 者については都市計画における利益調整の実態を探 るべく判例研究を行った。行政強制の領域において、

判例研究や実証的研究は進んでいるが、歴史的・理 論的研究が手薄であるため、これを機会に腰を据え て資料収集と読み込みを行うこととした。一方、都 市計画法の領域は、我が国においてもドイツにおい ても関係法令の制定・改正が頻繁になされているこ とから、現況を把握すると同時に、近年の判例にお ける利益調整の判断枠組みをも把握することに研究 の主眼をおいた。受け入れ教授とは、折に触れて、

昨今のドイツの理論状況について議論するとともに、

研究課題に関して適切かつ有益な助言を頂戴した。

教授には、2名の秘書、4名の研究助手(Mitarbeiter)

がついており、教授の研究を支えるに十分な体制で あった。研究助手は極めて優秀で、資料の収集、論 文の執筆など、研究の主戦力となっていた。日本の 文系の研究者にとってはうらやましい限りである。

■ドイツとヨーロッパ

 私がハンブルクに到着した2015年8月。シリア、

リビア等からの難民が大量にドイツに押し寄せてい た。毎日約5,000人がドイツ・ミュンヘンに到着する という状況であった。陸路にせよ海路にせよ、難民 は直接ドイツに辿り着くことはできない。トルコ、

ギリシャ、イタリア等の国を経由しなければならな いが、彼らの目的地はドイツ。ドイツ首相メルケル が、人道的立場から難民のドイツへの受け入れを表 明したことにより、難民は益々数を増してドイツを

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目指した。ミュンヘンから遠く離れたハンブルクで も、ハンブルク大学キャンパスの一角に、「Welcome Refugee !」と看板が掲げられたカフェが出現した。

しばらくは難民歓迎ムードであった。ところが、11 月パリでテロが勃発。12月31日には、ドイツで、女 性が集団に囲まれ性的暴行、強盗にあうという事件 が、ケルンだけでも約1,000件、ハンブルクでも約100 件起こり、その犯人に少なからぬ難民あるいは難民 申請者が含まれていたことで、ドイツにおける難民 受け入れに対するムードが一変した。その後は、ベ ルギーでの同時テロ勃発、イギリスのEU離脱と続 き、今まさに動いているドイツ及びヨーロッパの政 情を実感することとなった。滞在中は、テロと難民 問題一色。難民にかかわる政府の方針や法律も変 わっていった。承知の通り、ドイツ及びヨーロッパ は今も苦闘を続けている。

 振り返れば、多くの方の好意に支えられた在外研 究であった。まず、ドイツでの在外研究の機会を与 えてくれた大学はじめ関係者に感謝している。とり わけ、大学の業務から離れたことにより、ご負担・

ご迷惑をかけることとなった先生方には、お詫びと ともに、紙面を借りて衷心より感謝申し上げたい。

さらに、ハンブルクで共に過ごした研究者の方々、

ゲストハウスでお世話をしてくださった方々、日本 人の方々は忘れられない。多くの方の親切と友情の 上に1年間過ごすことができたことを心に留めて、

今後も微力ながら研究を進めていきたい。

―  ―11

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ホノルル

 ワイキキビーチのあるホノルルは言わずと知れた 世界有数の観光地の一つです。そのため、街の中は アメリカ人観光客だけでなく、いろいろな国・地域 の人々であふれています。多くの人がご存知のよう に、ホノルルは日本人に大人気で多くの日本人がハ ネムーン等でやってきます。しかし、体の大きさ、

声の大きさ、態度の大きさ等では圧倒的に負けるた め、マジョリティがマイノリティに負ける様々な場 面を経験しました。また、ホノルル滞在中に日本国 内で話題になっていた中国人観光客による「爆買い」

ですが、ホノルルではそれほど目立った動きはなかっ たように思います。中国語のロゴが入ったバス等が 街の中を疾走していましたが……。

ワイキキでの生活

 ホノルルで一年間過ごした場所はワイキキの西端 にある小さなコンドミニアムで、中心地から徒歩10 分、アラモアナセンターまで徒歩5分の位置にあり ました。目の前がプリンスホテルであったため、観 光気分は一年間抜けませんでしたが、スーパーやコ ンビニも生活圏内に何軒かあり、充実した日常生活 を過ごすことが出来ました。

 しかし、物価は高かったです。日本では天候不順 が続くと鍋の時期に野菜の価格高騰が話題になりま すが、ホノルルではその価格が通常価格です。例え ば、白菜が一玉500円、キャベツが300円です。一方 で、肉類の価格は日本と比べると非常に安く、特に、

牛肉価格は1ポンド1,000円程度です。日本のスーパー で外国産牛肉を国産牛肉と偽る産地偽装が行われる 理由がよくわかります。

 商品の品質という点で見ると、日本の品質管理及 び流通システムがどれだけすばらしいかがよくわか ります。日本ではスーパー等で生鮮食品を購入する

際には商品の品質をチェックしたりすることはあま りありませんが、ホノルルのスーパーでは商品が傷 んでいることが多く、購入時の品質検査は欠かせな い、と買手である妻がよく指摘していました。

 日常の生活では、外国人観光客と時間と場所を共 有することが多く、当初は短時間の雑談でもこなす ことに困難を感じることが多かったですが、英語と 中国語を駆使しながら繰り返しコミュニケーション の機会を重ねることによって、何とか一年間無事に 過ごすことが出来たと思います。

ハワイ大学マノア校

 マノア校は、ワイキキから徒歩30分程度離れたな だらかな山の斜面に立地しています。ホノルルは著 名な観光都市ですが、人口は60万人程度であるため 交通の便が悪く、バス停での待ち時間を含めるとバ スでもワイキキから大学まで30分以上かかります。

そのため、徒歩でもバスでも時間的には大差ありま せん。

 キャンパスは海外の大学らしく広大で、教育のた めの施設だけでなく運動施設も充実しています。一

―  ―12 海外レポート

ハワイ大学マノア校での在外研究

経済学部准教授 瀬戸林 政 孝

ハワイ大学マノア校正門前

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般に開放しているプール等の施設も多く、ホノルル 市民の憩いの場にもなっているようです。

 キャンパス近辺の治安はいいと聞いていましたが、

毎日のようにバイクや自転車が盗まれた等の盗難が 報告されており、日本との治安という言葉が持つ意 味の違いを感じざるを得ませんでした。

図書館と研究生活

 ホノルルでの研究生活ですが、大学にある二つの 図書館(ハミルトンとシンクレア)で研究を行いま した。

 ハミルトン図書館は5階建ての建物で、各フロア には専門書や史料が所蔵されています。二階には広 大なスペースに一般の専門書が並べられており、福 岡大学図書館の地下書庫の大きさにも圧倒されまし たが、そのスペースにも負けず劣らずの広さでした。

研究上必要となった先行研究に関する文献もここで 全て閲覧することができたほど文献は充実していま す。また、3階及び4階ではアジア史及び中国史関 係の史料や文献を自由に閲覧することができ、もち ろん、この両フロアにもアメリカの大学とは思えな いほどの日本語や中国語で書かれたアジア関係の史 料や文献が所蔵されています。ハワイ大学の研究生 活では、基本的にはここに腰を落ち着けて研究を進 めていました。

 一方、3階建のシンクレア図書館は少し変わって います。この図書館には膨大なアジア関係の古い雑 誌が所蔵されていて、アジア研究者にとって貴重な 雑誌を読み込むことのできる場所となっているので すが、それ以外の雑誌や図書は所蔵されていません。

そのため、門外漢の研究者や多くの学生にとって馴 染みのない図書館に思えるのですが、この図書館に は多くの人が集まってきます。その理由は、一般の 図書館では非常にめずらしいのですが、館内のどこ でも飲食できるからです。特に、昼食の時間が近づ くと、近くの飲食店で購入した昼食を持って、学生 等が図書館にやってきます。さらに、この図書館は 空間的に開放されていて、窓等から小鳥等が食べ物 のにおいに釣られて自由に出入りし、館内でのんび りしています。そのため、この図書館には一風変 わった趣があります。

 さて、少し真面目な研究生活の話をしていきま

しょう。確かに、図書館での研究は非常に充実して いたのですが、研究活動をさらに充実させてくれた のが、図書館の持っている電子化された情報です。

 大学図書館のアカウントを取ると図書館が持って いる電子書籍やデータベースを利用でき、ウェブ上 で様々な史料や文献を閲覧することができるように なります。ハワイ大学では、近年出版された書籍の ほとんどが紙媒体だけでなく電子書籍でも購入され ていて、パソコン上等で読むことができます。また、

様々なデータベースを持っていて、例えば、中華人 民共和国上海図書館に所蔵される20世紀前半に出版 された膨大な雑誌史料を全てネット上で読むことが でき、さらに、その場で簡単に史料をコピーするこ とさえできます。こうしたデータベースを利用すれ ば、中国の図書館に行ってするよりもずっと簡単に 史料収集をすることができるのです。

 また、英文史料の場合、アメリカ国内であれば、

誰でも閲覧できる史料関係のサイトがあり、ほとん どの英文史料を利用することができます。日本で利 用するには、特定の資料館に行かなければならない 史料や購入すれば数百万円もするような史料でさえ、

ネットを通じて誰でも簡単に読むことができるので す。

 こうしたことが何を示しているのかというと、イ ンターネットを使える環境とアカウントさえあれば、

スターバックスや自宅、ワイキキビーチ等のどんな 場所にいても研究室等で研究をするのと同じ水準で 研究を進めていくことができるということです。お

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キャンパス内の風景

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そらく、ハワイ大学で中国経済史に関する研究を進 めていくことは5年前であれば不可能であったと思 いますし、数年前であっても困難であったかもしれ ません。しかし、近年、急速な史料等の電子化が進 展することによって、研究者が容易に史料等にアク セスし論文作成等に利用できるようになっています。

もちろん、こうした傾向は研究者にとって望ましい と言えますが、一方で、このことは次のような問題 も抱えているように感じました。従来一部の図書館 や資料館だけが所有して価値を有していたはずの史 料等が電子化され、高額な商品として売買されるよ うになると、高額な購入費の負担に耐えられる大学 と耐えられない大学との間で研究環境の格差がさら に拡大してしまうということです。

 今後のことを考えると、この点に関して一抹の不 安を感じざるを得ませんが、今回の在外研究では以 上に述べたような研究上の恩恵を目一杯享受するこ とができ、研究を進めていくことが出来ました。こ のような在外研究の機会を与えていただいた福岡大 学関係者の皆様にこの場をお借りして厚く御礼を申 し上げたいと思います。

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参照

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