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堂内気象の観測(8)東大寺鉄筋収蔵庫

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

堂内気象の観測(8)東大寺鉄筋収蔵庫

著者 永田 四郎

雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学

巻 15

号 2

ページ 81‑94

発行年 1967‑02‑28

その他のタイトル Meteorological Observations in Old Temple

Buildings (8) Syuzoko of Todaiji Temple

URL http://hdl.handle.net/10105/3316

(2)

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Bull. Nara U.Educ, (Nat.), Vol.15, 1967

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Meteorological Observations in Old Temple Buildings (8) Syuzoko of Todaiji Temple

Shiro NAGATA

(Department of Science Education, Nara University of Education, Nara, Japan) (Received Sept. 30, 1966)

Indoor-climatic observations in some buildings of Todaiji Temple in Nara City had been continued by the present author from April 1963 to July 1966.

In the previous paper, some indoor-climatic characteristics in Azekura (wooden old treasury), Syoko ("Dozo" style library) and Syuzoko (new ferro-concrete treasury) of Todaiji Temple, were shown.

In the present paper, the data by thermographs and hygrographs which

were set in the No.l Room (first floor, large), No.2 Room (first floor, small)

and No.4 Room (second floor, medium) and in open air, sre shown in the

Nos.l~6 Tables.

Some climatic conditions in them are as follows.

1. The annual mean values of air temperature and humidity in open air near this Syuzoko are 14.2°C and 79%, respectively.

2. In this Syuzoko, the annual mean values of air temperature are 15.1°C (No.l Room), 15.0°C (No.2 Room) and 15,9°C (No.4 Room) and for humidi- ty are 70%,73% and 68% respectively.

3. As reported already by the suthor, the differencies on air temperature

among these rooms and in outside of this buildingarelargeand clear in

summer time.

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81

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(3)

82

永 田 四 郎

て,これらの建物がそれぞれ木造,鉄筋コンクリート造り,土蔵造りであることに注目して,相 互にどの様な室内気象上の差異が見られるかということを苫文化財保存と関連して検討してみ た.この報告では,鉄筋収蔵庫について,室内外の相違,室内各室の室内気象の違いについてま とめてみた.

この報告で用いた自記記録は,前報告の場合の観測に引きつづき,東大寺図書館当局によって r得られたものであって,その努力に対して敬意と謝意を表するものである.

2.観測および資料の整理

観測は前報告(1)の場合と同じである.すなわち,収蔵庫床下中央部(外気)と収蔵庫内第1号 室(大室,2階),同第2号室(小室,2階)と同第4号室(申室,3階)のそれぞれの室中央部 に,合計4組の通巻自記温湿度計を設置した.これらの高さは床上約70cmである.

自記記録は,毎週自記紙の取換時に,大型アスマン通風温湿計によってチェックされた.

得られた自記記録によって,毎偶数時または,0,6,12,18時の温湿度を読み取り,旬別平均値 を求めると,次の第1〜6表となる.

第1表  東大寺収蔵庫付近外気気温(毎偶数時旬別平均値)OC

旬 時

(1965)

8

9

11

12

(1966)

1

上 中 下

2 23

4 23

24

1 23

4一 1 0 4

3 3 2

2 2

1 4 m m 2 9

29

2 8

8 2 7

2 6

9 8

2 4

7 2 4

1 6

22

8 22

3

川ふ 5 2 1

9 0 0 V 2

3

2

旦 2 5 ・

︒ 崇 且 馳

Ⅷ Ⅷ

旦28・828・︒27・6 2 5 52 9 82 1 10 4 33 0 92 2 15 3 1

4 2 1

2 2 2

3 6 4

5 3 2

2 2 2

3 7 7

1 h J 3 2 2 2 2 7 9 9 4 2 1 2 2 2 6 6 3 3 1 0 2 2 2 0 7 0 0 2 9 7 2 1 1 0 0 5 6 0 8 6 2 1 1 3 6 7 1 8 6 2 1 1 6 9 3 1 8 7 2 1 1 5 0 0 0 0 1 9 7 2 1 1

6 3 5 3 3 1

1 1 1 8 0 6 4 4 1 1 1 3 1 5 7 6

5 1 1 1 9 9 2 9 7 0 0 1 1

1 2 4 8 0 8 0 0 2 1

1 5 9 7 9 7 7 1

l 6 2 4 7 6 5 1 1 1 4 3 4 5 3 l   l 3

3 5 3 1 U

l   l   1 6   6   9 3   1   0 1   1   1 3   3   6

4 2 1 A

l   l   1 9   9   0 4   2   2 1   1   1

5 7 0

3 00 8

1

5 1 8

4 9 8

1

7 2 6

5 0 9

1 1

7 0 00

7 2 1

1 1 1

7 7 1

8 2 2

1  1 1

3 1 3

8 2 1

1  1  1

9 8 7

6 0 9

1  1

6 00 6

4 00 7

1

2 2 1

7 7

1

3 5 5 3 7 7

1

3 9 0 3 1

U

1

0 9 5 4 7 8

1 4 3 56 5 47 5 86 5 46 2 87 6 51 5 49 7 74 1 99 00 73 3 49 7 79 9 47 5 67 5 95 4 41 2 45 4 42 4 85 4 43 7 95 4 46 9 05 4 5

d U 4 4 3 3 1 9 3 2 3 4 2 8 0 0 0 4 5 3 6 5 3 5 6 4 0 4 4 7 6 4 7 0 0 U 6

5

3 2

0 0 6 5

4

2 1

5

5 3

3

0 1

3

2 2

3

0 2

9

4 2

2

0 5

3 0 0 2

3

0 9

5

8 2

3

0

2 6

2 2 6

2 2 5

5 2 6

2 3

2

8 2 1

1 1 6

4 1 4

7 1 4

2 1 5

1 9

6 9

2 1 1

6

9 5

7 5

7 6

1 4

1 4

5

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90

24.2 23.9 23.7 24.0 26.3 26.2 26.1 26.5 30.4 30.2 29.9 30.2

年平均 欠測日 (1965)11月3,4日

0    5   10m

永 田 四 郎

9 3 2 00

23263026 9 4 36 7 69 4 36 7 600 4 36 7 69 4 36 7 6 9 4 3 96 7 6 6

仙 帖 1          . 1日朝 l 山 一 ̄i 匿 ]

⊂二 二 ≡: 亘二 ]     l E Ⅱ □ [ =Ⅱ□

「   「          ̄ 2 階

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H I H i マド

I l i LL竺1 階 ′_」,lJ∠ 匝 司 換気碁クト5 号室  換気ダクト

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4 号 室 換気 1L

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1 号 室 上 部 吹 抜 ケ

第1図  東大寺収蔵庫側面,平面図

3.検    討

(1)この鉄筋収蔵庫のある東大寺本坊付近の気象状態を察知する一つの手がかりとして,こ ころみに奈良地方気象台の観測資料(2)から同期間のものを取り出して,月平均気温と同湿度とを 比較すれば,第2図の如くなる.ただしこの場合両者の月平均値の求め方に若干の相違があるの で厳密な比較はできないが,大体において次の点がいえる様に思う,

気温については,この期間の年平均値は東大寺本坊付近が0.20C高温であるが,大体同じと見

てよかろう.年変化の傾向も大差がない.また,湿度では,同じく年平均値で東大寺本坊付近が

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堂内気象の観測(8)

5%だけ高くなっているが,さらに第2図 で見ると,特に,一般的に乾燥期にあたる 冬から春にかけて,気象台ではかなりの低 湿になっているのに反して,東大寺本坊付 近は余り低湿にならず,年間を通じて大体 一様な76%〜83%の80%前後の湿度になっ ている.さらに水蒸気圧を求めて比較する と,年平均値は東大寺本坊付近は14・2mb・

奈良地方気象台では13.6mbで,前者の万 が0.6mb多い.また,期間はくい違うが,

法隆寺境内での観測値(3)と比べると年平均 値が気温は14.60C,湿度は76%,水蒸気 圧が12.6mbであって,これからも東大寺 本坊付近の方が高湿になっている.

これらから,東大寺本坊付近は比較的高 湿な環境にあると見られるが,これはこの 付近一帯が,多くの樹木におおわれ乾燥し にくいものと考えられる.

(2)気温と湿度の月平均値について,

第1〜4表によって収蔵庫内外の比較をす れば月平均気温は内外ともに同傾向の年 変化を示しているが,すべて庫内の方が外

11LLrLLrLLLrLrL

9 0

8 0

7

0

i ・i

○ 東大寺収蔵庫付近

● 奈良地方気象台

湿 度

g   α O  。 0

0

0

0

91

8 9101112 1 2 3 4 5 6 7月

、1965)      (1966)

第2図  東大寺収蔵庫付近と奈良地方気象台との 月平均気温,湿度比較

気よりも高温である.特に夏期を中心とし て春,秋期には,内外の温度差は大きく,

月平均値で1.40C,旬平均値で1.80Cも庫内が高温になっている場合がある.冬期にはこれらの 温度差は小さくなり,ほとんど同じになっている.この様な室内気温が室外気温より高温である 傾向は前報告(1)その他で述べたが,このことについては今後さらに詳しく検討してみたいと思 っている.なお,この期間の年平均値は,収蔵庫内が15.10Cで,外気の14.20Cに対して0.90C 高温である.

湿度については,その月平均値の年変化は気温のそれの様には同傾向の変化をしていない.こ の期間の年平均値は収蔵庫内が鎚%で外気は79%であって,庫内が11%だけ底くなっている.こ の様に庫内が年間を通じて湿度が低いが,特に外気が高湿の時には差が大きく,旬平均値では17

%も庫内が低湿になっている場合がある.この点からは,この建物が高湿防止の機能を持ってい ると見られるが,一方,外気が乾燥した場合は,建物内の湿度もそれ以上に低くなっていること から,乾燥防止については十分でなく,外気の異常乾燥時には建物内もかなりの乾燥状態になる と思われ,この点からは古文化財保存上注意しなければならない.

また,建物内の月平均気温,同湿度は大きな年変化をしている.特に気温のそれは外気とはと

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永 田 四 郎

んど同じであるが,建物内の日変化は気 温,湿度ともに小さく,特に湿度ではほと んど日変化が消失し,大体一定になってい る.ただし,前報(1)で示した如く,この収 蔵庫の窓や床下の換気孔を一部でも開く

と,その効果は極めて大きく,建物内の 温,湿度は急激に変動する.従ってこの建 物の窓や換気窓の開閉にはよく注意しなけ ればいけない.

(3)収蔵庫内の第1号室(2階の大 室)と第2号室(2階の小室)および第4号 室(3階の中室)とについて,月平均値を 比較すると大体次の如くである.

第3図でも分るがこれらの各室の差は気 温,湿度ともに,室内外の場合と同じく夏 期を中心として大きく,冬期には小さい憤 向が認められる.

気温は,年平均値が,3階の第4号室が 最も高く,15.90Cであるのに対して,2 階の第1号室と第2号室とははとんで等し い15.00Cと15.10Cで,2階の方が0.90C 高温になっている.そしてこの温度差は夏 期を中心として大きく旬平均値では20C.

月平均値で1.70Cも3階が高い場合があ る.2階の第1号,2号の両室間の気温の

% 85 80

75 70

65 60

(㊦

8D C8 ノ」気+混

㊦  〇第1号室(2階)

①第2号室(2階J O第4号室(3階ノ)

8 9 101112 1 2 3 4

し1965ノ.1     (19661

5 6 7「】

第3図  東大寺収蔵庫内第1,2,4号室 月平均気 温,湿度の比較

差は小さいが,やや第2号室の万が低温の様である.湿度については,年平均値を比較すると,

第2号室が73%で最も高く,第1号室が70%で3階の第4号室では68%で最も低い.第1号室と 第4号室との温度差は夏には月平均値で7%も後者が低くなっているが,冬期には却って3階の 万が高湿の傾向も見られる.

第2号室が最も高くなっているのは,気温が最も低いのと関連するが,1966年2月など第1号 室より7%も高くなっているのは,検討を要することである.

(4)建物内外の水蒸気圧の月平均値を求めると次表の通りである.

これから,収蔵庫内の水蒸気圧は外気より年平均約2mbだけ小さく,それだけ建物内の水蒸

気量が少ないと見られる.また,建物内では,年平均して2階小室の第2号室が最も大きく,2

階大童の第1号室が最小である.気温が最も高い3階の第4号室の水蒸気圧が,意外に大きいの

は検討すべき問題である.

(14)

堂内気象の観測(8)

第7表  東大寺収蔵庫内外の水蒸気圧月平均値(mb)

(年)    月

__ 軍!牛「

収蔵庫第1号室 収蔵庫第2号室 収蔵庫第4号室 収蔵庫外気

5  8  2

7  6  6

2  2  2

(1966)

11 12  1  2   3   4 9.8 6.8 5.6 6.3 7.6 10.6

0  00  0

1      1

2 6 2

3 2 3

1  1  1

6.7  5.6  7.0 9.110.7 8.8  6.7  5.6  6.6  8.110.5

5這

2  5

5 4

1  1 7㌫25・523・9

2

7

6

1

9

1

9

1

9

7.4  6.0  7.0  8.8 11.9 14.2 20.0 25.3

(5)この収蔵庫は1960年に完成したが,一般にこの種の鉄筋コンクリート建築内では,完成 直後は湿度がかなり高く,その後日時の経過と共に乾燥してゆくとされている.そこでこの建物 が,年が経つにつれて乾燥しているのかどうかを考える目安として,こころみに建物内の湿度と 水蒸気圧について,前報(1)の資料も含めて比較すると,今回の1965年8月〜1966年7月の年平均 値は,収蔵庫第1号室で,湿度70%,水蒸気圧12.Ombであるが,前回の1963年8月〜1964年7 月の年平均値はそれぞれ72%,16.1mbであった.従ってこの比較では収蔵庫内は前回より2

%,4.1mbだけ減少していて,前より乾燥したと見てよい.しかし,いうまでもなく,外気の影 響を受けるので,厳密には前回と今回とで外気の湿度や水蒸気量がどうであったかをしらべねば ならない.このための1963年8月〜1964年7月の収蔵庫付近の外気の湿度観測資料が不十分で

あるので,こころみに奈良地方気象台の資料について,この両期間の年平均値を求めると,前回 で76%,14.2mb,今回は74%,13.6mbであるので,2%,0.6mbだけ少ない.もし奈良地方気 象台と東大寺付近の湿度変化が同じ傾向を示すものとするなら,前述の如く,収蔵庫内の湿度や 水蒸気量の減少も外気の減少と対応していることになり,従っても収蔵庫内が前よりも乾燥して きたや と簡単にはいえない.しかし,この収蔵庫については,すでに水分を放出し乾燥し,この 建物固有の平衝状態に達しているという感じを受けるのであって,湿度はそれが大体70%ぐらい ではないかと思われる.

4.摘    要

この報告では鉄筋収蔵庫内外の気温,湿度の比較,および収蔵庫内第1号室(2階大室),第 2号室(2階小室)第4号室(3階中室)の同様の比較を試みた.認められる傾向は大要次の通

りである.

(1)東大寺本坊付近は年平均気温14.20C,同湿度79%,水蒸気圧14.2mbであって,これは 奈良地方気象台と比べて気温は大差がないが,湿度は5%,水蒸気圧が0.6mbだけ高い.

この付近は比較的高湿な環境で,年間を通じて大体80%前後の−様な湿度になっている.

(2)収蔵庫第1号室の年平均値は,15.10C,70%であり,外気に比して0.90C高温で,9%

低湿である.この温度差は夏期を中心として春秋期に大きく建物内がより高温であるが,冬期に は建物内外はほとんど周温である.湿度は,外気が高湿の時建物内の湿度は低くその差は大きい が,外気が低湿乾燥時にも建物内はそれより幾らか低湿になっている.

(3)収蔵庫内の2,3階の差は年平均値で0.80C,だけ3階が高温で,温度は2%3階が低く

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永 田 四 郎

なっている.両者の温度差は夏期を中心として大きく3階がより高温で,冬期には差がほとんど ない.また2階第1号室(大室)と第2号室(小室)との差は気温はほとんどないが,湿度はや や第2号室が高くなっている.3階の水蒸気圧が比較的大きいのは興味あることである.

(4)この収蔵庫内の湿度や水蒸気圧は減少しているが,外気も同様であるので簡単に建物内 が乾燥したとはいえない.しかし,この建物の湿度は平衡状態に運していると思われ,それが70

%ぐらいではないかと見られる.

参 考 文 献

(1).永田四郎(1961):堂内気象の観測(7),奈良学芸大紀要(自然),第14巻

(2).奈良地方気象台こ奈良県気象月報,1965年8月〜1966年7月

(3).永田四郎(1956):堂内気象の観測(2),奈良学芸大紀要,第9巻 第2号

参照

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