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外国人住民の子育て支援通訳における相談頻度調査

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外国人住民の子育て支援通訳における相談頻度調査

-コミュニティ通訳者養成教材のための研究-

Frequent Situations of Community Interpreting in Child-rearing Support:

A Quantitative Study towards Teaching Material Development

金田 拓(帝京科学大学)

Taku KANETA (Teikyo University of Science) 要約: 多言語・多文化化の進む日本社会において,文化の橋渡し役であるコミュニティ通訳の役 割に注目が集まっているが,その養成体制は未整備である.本研究はコミュニティ通訳養成の一助 として外国人住民の子育て支援に注目し,教材に含めるべきシチュエーションの同定を試みた.調 査には支援における相談者のライフステージ,及び高頻度で相談を受けるトピックに関して問う質 問紙が用いられた.子育て支援に従事する通訳者やコーディネーターに対してインターネット調査 を行い,総計87名の回答を得た.分析の結果,ライフステージでは就学児をもつ相談者が最も多く,

次いで未就学児をもつ外国人からの相談が多いという傾向が示された.頻出トピックはライフス テージとともに変遷し,妊娠期は支給金に関して,未就学児(2歳未満)の段階では医療,それ以 降の段階では保育園・幼稚園・小学校に関連した相談が多く見られ,養成教材を作成する場合,実 務において高頻度で遭遇することの予想される,優先的に扱われるべきライフステージとトピック の組み合わせが存在することが示唆された.

Ⅰ.はじめに

現在日本社会では,現在在留外国人者数が 2,471,458人,国籍が196か国(無国籍を除く)に上 る中(法務省入国管理局, 2017),日常のさまざま な生活場面において,異なる言語,文化の媒介者 としての通訳者が果たす役割,およびその養成方 法への関心が高まっている.中でも特にコミュニ ティ通訳の役割が注目されており,専門職として の確立が望まれている.コミュニティ通訳は,司 法,行政,医療等の分野で,言語・文化的なマイ ノリティとしておかれている人たちを,通訳・翻 訳面から支援し,ホスト社会につなげる「橋渡し 役」を務める役割を持ち,グローバル化する社会 において,社会・経済事情の変容により国境を越 える人々の流れが止まない中,各国・地域で役割 の重要性が認識されつつある通訳分野である(杉 澤, 2013; Naito, 2012).その支援内容は,新たに 定住する国・地域において,日常生活で医師によ る診察を受けるときや,雇用先との労働問題など で裁判が発生した場合などに,ホスト社会と外国 人

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住民双方の言語・文化に精通することで,専 門機関と在留外国人とのコミュニケーションの円 滑化を図ることなどがある.

しかしながらコミュニティ通訳は職業化が進ん でおらず,ほとんどボランティアが担っているの が現状である.医療,福祉,教育などの分野の通 訳は生命や人生を左右する領域であるにもかかわ らず,独立した専門性を必要とする通訳領域であ るという認知が遅れており,そのため通訳者の養 成や認定制度の整備がなされていない(飯田 , 2008).一般的な会議通訳の場合,通訳養成訓練 を受けた通訳者が職業として業務を遂行するのに 対し,対人援助を中心とするコミュニティ通訳者 はボランティアが中心であり,養成時間や方法,

必要な通訳技術や専門知識の習熟度は標準化され ていない.個別に自治体やNGO団体が決定してい るというのが実態である(飯田, 2016).

近年の研究により,コミュニティ通訳者の養成

にあたっては司法,行政,教育,医療の各専門領

域を網羅し,なおかつ外国人住民の日常生活にお

ける問題解決の「礎」「入口」となる相談通訳の重

要性が認識されることとなった.中でも外国人住

民が真っ先に自身の抱える問題や課題を相談する

窓口となる行政現場での言語支援は,相談内容が

多様化・複雑化する中,有能な通訳者と,それを

養成するための教材の必要性が指摘されている(水

野・内藤, 2015).特に行政における相談通訳,と

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りわけ小学校入学以前の未就学~就学期の児童を 持つ保護者への言語支援に関しては,その必要性 に対して,見合うだけの研究や調査,教材開発が 行われているとは言いがたい.

本調査研究は,外国人住民の中でも特に問題を 抱えがちな,子育て支援分野に注目し,当該分野 に従事するコミュニティ通訳者養成教材に優先し て収録すべき,ライフステージ及びトピックを特 定することを目的とする.内藤(2013; 2011)は望 ましいコミュニティ通訳養成教材のあり方として,

通訳教材が「対話形式」であること,また在留資 格,税金,隣人トラブルなど多岐にわたる「トピッ ク」に沿ったものであること,さらに結婚,出産,

子どもの教育・進学など,「ライフステージ」を考 慮した設計となっていることの三点を挙げている が,このうち「トピック」及び「ライフステージ」

について,コミュニティ通訳者が実務において遭 遇する頻度から,教材に含めるべき優先順位を決 定することを目的とする.

Ⅱ.リサーチデザイン 1.研究設問

本研究は,以下の研究設問に回答することを目 的とする.

RQ 1.子育て支援の相談通訳において,高頻 度で相談を受けるライフステージ層は存在するか.

存在するとすれば,それはどのステージか.

RQ 2.子育て支援の相談通訳において,ライ フステージ別に,高頻度で相談を受けるトピック は存在するか.存在するとすれば,それはどのよ うなトピックか.

RQ 3.子育て支援の相談通訳において,相談 頻度は高くないが特別重要と感じられるトピック は存在するか.存在するとすれば,それはどのよ うなトピックか.

2.研究方法

分野のニーズを汲み取るためには,大規模な量 的調査が必要となる.しかしながら,コミュニティ 通訳の分野では量的調査の前例が極めて少なく,

調査の手法自体が研究課題である.コミュニティ 通訳研究では武田(2007)など,特定の地域や支 援団体などを取り上げたケーススタディが主流で ある.対して本研究が目的とするのは,地域や集 団に依存しない,汎用性をもったコミュニティ通

訳養成教材作成のための調査であり,従来の研究 とは性質を異にする.第一に本研究の調査対象と なるのは,支援の対象である外国人住民当人では なく,外国人住民の相談に従事するコミュニティ 通訳者たちである.教材はコミュニティ通訳者が より高頻度で遭遇する題材を扱うべきであり,そ の調査手段として現場でサービスに従事する実務 者たちへ聞き取りを行うのが最適と判断した.付 随して第二に,本調査では特定の地域や団体に依 存しない,広域での調査を目指した.広く用いる ことのできる教材を作成するためには,特定集団 のニーズに特化してのケーススタディより,調査 の範囲を拡大することが重要であると考えた.汎 用性のある養成教材の作成を目的とする場合,よ り広範な調査が必要となる.そこで本研究では,

研究協力者の勤務する大学が主催する,多文化社 会専門人材養成講座修了生のメーリングリストを 中心に,子育て通訳の実務に従事する通訳者や コーディネーターが登録する28団体に対し,イン ターネット調査を利用して協力依頼を行った.イ ンターネット調査はGoogle Form上に質問群を用 意し,ブラウザ上で匿名にて回答してもらうアン ケート形式を採用した.結果,回答は87名より得 ることができた

2)

3.アンケートの実施とデータ処理

RQ 1・RQ 2については,ライフステージを

「妊娠期・妊娠期のパートナーをもつ相談者」「2 歳未満の未就学児をもつ相談者」 「2歳以上の未就 学児をもつ相談者」「就学児をもつ相談者」の4つ に分割し,相談数の多い順に順位付けしてもらっ たデータを分析する.また各ライフステージ別に,

『多言語生活情報』(自治体国際化協会, 2017)の 掲載するトピックについて相談頻度の多寡を,順 位法を用いて質問した.分析にはフリードマン検 定及びウィルコクソンの符号付順位和検定(ボン フェローニの補正)を用いる.有意水準は5%と し,計算にはR 3.4.2を使用した.

加えて,RQ 2のトピックを網羅的なものにす べく,アンケート中で自由記述回答を求めた.順 位法は本研究テーマのように,項目間に回答差が 生じにくい項目にも順位をつけられる利点がある が,質問できる項目数が少ないという欠点がある.

高頻度トピックの取りこぼしを防ぐため,自由記

述回答に階層的クラスター分析を適用して結びつ

きの強い単語をグループ化し,各単語間の関係を

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視覚的に構造化する.

自由記述回答は,語句の整理を行った上で分析 対象とした.整理内容は,「子ども」と「子供」,

「障がい」と「障害」のような変換・表記ゆれの統 一,「特になし」など,実質的無回答の削除の二点 である.なお,クラスター分析では「母親」と「マ マ」など,同じ意味内容を表す語句を統一する場 合もあるが,本分析ではニュアンス的に置換に支 障が出る例が見られたため,統一は行わなかった

(ママ交流と母親交流など).

形態素解析にはChasen (version 2.3.3)を使用し た.形態素解析後,機能語である助詞・助動詞・

接続詞を除外し,内容語である名詞・形容詞・動 詞・副詞のうち生起頻度3回以上のものを対象とし て,階層的クラスター分析を行った.出現回数を 出現数3回以上とすることで,出現頻度の高い上 位64語までが対象となった.分析にはJaccard距 離による Ward 法を採用し,計算には KH Coder (2.00f)を使用した.クラスター数はクラスター併 合時の距離係数の変化と,1つのクラスターの語 句から意味内容を解釈できるかを総合的に判断し て決定した.

Ⅲ.結果と考察

1.相談者のライフステージの分析

相談者のライフステージについて,「最も頻度が 高い」を4,「最も低頻度」を1として視覚化した 平均順位を表 1に記す.

記述統計的には,就学児をもつ相談者,2歳以 上の未就学児をもつ相談者,2差未満の未就学児 をもつ相談者の順に多く,最も少ないのは妊娠期・

妊娠期のパートナーをもつ相談者となった.

ライフステージ別の相談頻度順位値に対しフ リードマン検定を実施した結果,有意差が認めら

ニの補正を用いたウィルコクソンの順位和検定を 用いて群ごとの比較を行った.結果,「未就学児

(2歳未満)」と「未就学児(2歳以上)」の2群以 外の,全ての組み合わせに差が認められた(表 2).表 1の平均ランクと合わせて鑑みると,相 談の件数は就学児をもつ外国人からのものが最も 多く,妊娠期の相談が最も少ない.未就学児の2 歳未満・2歳以上との間には有意差が見られな かったが,ライフステージ別相談件数は概ね,年 齢の高い子をもつ外国人からの相談が多いという 結果が得られた.

2.相談されるトピックの分析 a.順位法アンケートの分析

各ライフステージにおいて,特に高頻度で相談 を受けるトピックはあるかを検証すべく,ライフ ステージ別にフリードマン検定を行ったところ4 つのライフステージそれぞれに関して,特に高頻 度で問われるトピックが存在することが明らかと なった.結果を表 3に挙げる.

事後検定としてライフステージごとに,ボンフェ ローニの補正を用いたウィルコクソンの符号付順 位和検定を用いて,群ごとの比較を行った.以下 でライフステージごとの結果を概観する.結果を 表4にまとめた

妊娠期の相談者・妊娠期のパートナーをもつ相 談者から受ける相談のトピックの分析結果は,児 童手当のみ,母子手帳,母親・両親教室,生活保 護との相談件数とに差があり,他は差がないとい う結果となった.行政サービスの中でも特に支給 金という,一定期間にわたって展開するサービス の性質と考えられるほか,生活保護に関しては内 藤・水野(2015)が指摘する,相談しにくいトピッ クであるという相談者の心理が働いていると考え

表1 ライフステージ別の相談頻度順位平均

ライフステージ 平均順位

妊娠期 1.78

未就学児(2歳未満) 2.32 未就学児(2歳以上) 2.59

就学児 3.31

表2 ライフステージ別相談頻度

ライフステージ 分散 p値 妊娠期:未就学児(2歳未満) 903.5 <.001**

妊娠期:未就学児(2歳以上) 749.5 <.001**

妊娠期:就学児 460 <.001**

未就学児(2歳未満):

未就学児(2歳以上) 1053.5 .054 未就学児(2歳未満):就学児 742 <.001**

未就学児(2歳以上):就学児 671.5 <.001**

れた(χ2 = 70.027, df = 3, p = .000).この結果か

ら相談されるライフステージにはばらつきがある

と考えられるため,事後検定として,ボンフェロー

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ライフステージ χ2 自由度 p値 妊娠期 16.515 5 .006**

未就学児(2歳未満) 60.3 6 <.001**

未就学児(2歳以上) 143.61 6 <.001**

就学児 37.29 6 <.001**

表3 各ライフステージにおけるトピック

られる.

未就学児(2歳未満)をもつ相談者から受ける 相談のトピックは,予防接種や病気・怪我,また 健康診断といった医療分野のトピックが,乳幼児 医療証や出生届といった行政手続きの相談件数を 上回る結果となった.不安定な乳幼児期の段階で は病気や怪我といった医療の喫緊性が高い他,予

表4 各ライフステージにおけるトピックの相談頻度

妊娠期・妊娠期のパートナーをもつ相談者からの相談トピック

トピック

平均ランク

ウィルコクソンの符号付順位和検定結果

妊婦検診 3.74

児童手当・児童扶養手当 4.05 >母子手帳,母親・両親教室,生活保護

母子手帳 3.39

助産師・保健師による訪問指導 3.36

母親・両親教室 3.36

生活保護 3.11

未就学児(2歳未満)をもつ相談者からの相談トピック

トピック

平均ランク

ウィルコクソンの符号付順位和検定結果

予防接種 4.69 >乳幼児医療証,出生届

乳幼児医療証 3.06

病気・怪我(病児保育を含む) 4.54 >乳幼児医療証,出生届

健康診断 4.47 >乳幼児医療証,出生届

出生届 3.09

出産各種手当 4.09 >乳幼児医療証,出生届

一時保育 4.06 >乳幼児医療証

未就学児(2歳以上)をもつ相談者からの相談トピック

トピック

平均ランク

ウィルコクソンの符号付順位和検定結果 保育園入園手続き・説明会 5.34 >小学校入学手続き,育児放棄,母子家庭

関連,就労支援,発達障害

幼稚園・保育園との連絡事項 4.93 >育児放棄,母子家庭関連,就労支援,発 達障害

小学校入学手続き 4.64 >育児放棄,母子家庭関連,就労支援,発 達障害

育児放棄 2.21

母子家庭関連 3.53 >育児放棄

就労支援 3.76 >育児放棄

発達障害 3.59 >育児放棄

就学児をもつ相談者からの相談トピック

トピック

平均ランク

ウィルコクソンの符号付順位和検定結果

ファミリーサポート 3.56

いじめ 3.45

学校関連の費用 4.16

編入手続き 4.11

学校行事 4.63 >ファミリーサポート,いじめ,学童保育

学童保育 3.43

進路 4.67 >いじめ,学童保育

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防接種や病気・怪我,また健康診断といった、一 過性でなく断続的に扱われる問題の相談頻度が高 いことが判明した.

次に,2歳以上の未就学児をもつ相談者からの 相談トピックで顕著なのは,保育園・幼稚園・小 学校といった,地域社会との関わりの部分に関連 するトピックの相談頻度が高いことで,育児放棄,

母子家庭関連,就労支援,発達障害といったその 他のトピックと有意な差が見られた.相談の必要 が多く生じるのは,保育園や幼稚園,小学校との やり取りにおいて,つまりホスト社会と長期間交 渉する場合と読み替えることができる.子育ての 文化や習慣の違いに対する戸惑いや困難は,それ だけでストレスの主原因となることが予想される が,日本語という外国語を介してやり取りをする 上で,理解の困難さが相談の需要を生んでいると 考えられる.育児放棄の問題は支援において扱わ れる問題だが,相談件数は少ないという結果と なった.

就学児をもつ相談者からの相談トピックのうち 高頻度なものは,学校に関連したもの,中でも学 校行事及び進路に関するものが多いことが判明し た.学校という,子育ての上で必然的に現地社会 と接触しなくてはならない部分から,相談のニー ズが生まれていることが示されている.統計的に 差が見られたのは,ファミリーサポートやいじめ,

学童保育に関する相談と比較してであるが,これ はファミリーサポートや学童保育の場合,利用す るのが就学後の一定期間に限定され,選択的に利 用するものであるため,またいじめに関しては,

保護者にまで伝わり相談に至るまでの複雑な過程 が,相談件数に反映されているものと推測される.

b. 自由記述回答の分析

順位法で問われなかった高頻度トピックを記述 する自由記述回答のアンケートに対してクラス ター分析を適用した結果,図 1の結果が得られた.

以下,出現形態素を「 」,回答例を【 】,クラ スターの解釈を< >で示す.

第1クラスターは,「質問―知る」「問題―外国

―日本―思う」で構成される.【同じような外国人 の母親がいる子育てクラブのようなところを知り たいという質問】 【離婚時の親権問題や養育費,面 会など】といった内容が含まれ,コミュニティ通 訳の主要分野である,医療・司法・行政といった 分野外の内容であり,<個人事情への対応>とし た.

第2クラスターは,「日本人―ママ」「コミュニ ケーション―自分」「親―違い―多い」で構成さ れ,【日本人親子との繋がりが少なくママ同志での 相談などができない】【保育所と保育士との間でコ ミュニケーションの行き違いがあり,通訳を依頼 された.子供の保育園での様子などについて】な どの例が含まれる.特に,【外国人ママと日本人マ マ情報交換の場の提供】といった,母親を意識し た内容が見られ,これを<母親交流>とした.

第3クラスターは,「相談」「理解―検診」「必要

―連絡―出産」で構成され,【○才時検診など日本 の乳幼児に対する健康診断システムを理解してお らず,その受診案内がきても何かわかっていない ことがある】【妊婦検診の必要性が知られていな い.全く検診を受けたことがないまま,突然出産 を迎えて救急車で運び込まれる.その際に日本の 産院に対する理解がないため,帝王切開の必要性 がないのに帝王切開を希望するなど,緊急時にも めごとが起きて,相談機関に連絡が来る】など,

日本の病院や医療の体制に対するトピックが集約 された.これを<医療システム>とした.

第4クラスターは,「児童―手当」「子ども―日 本語―教育」「教室―支援―学習」で構成される.

具体例としては,【出産一時金の申請,児童扶養・

児童育成各手当,外国人の子どもの日本語支援】

【学習支援教室,宿題支援について】などが含まれ る.行政による給付金を支給する福祉制度と,教 育行政という2点に代表される.距離的にこれら 2点が別クラスターとなるようカッティングポイ ントを設定することも可能であったが,上記の引 用のように2つが列挙されている例が見られたこ と,またどちらも行政サービスという共通項を持 つことから,同じクラスターとして扱うこととし た.これを<社会福祉・教育行政>とした.

第5クラスターは,「言語―病院」「通訳―保育 園―保育」「情報―幼稚園」で構成される.【保育 園・幼稚園入園の情報・手続きなど】【入れる保育 園(幼稚園)がないこと(高頻度で問い合わせが ある),学齢超過年齢差の子どもの居場所・学ぶ場 所】など,特に幼児保育に関連する内容が表出し ていることが伺える.これを<幼児保育>とした.

第6クラスターは,「言葉―発達」「場合―母」

「学校―内容」 「子育て―案内」で構成される.【言 葉の発達(日本語)に関して無関心な保護者が散 見される.そのトピックで話し合うことが多い】

【学校,幼稚園等からの手紙の内容,提出書類,子

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どもの言葉の発達の遅れ(母が外国籍の場合)な ど】といったものが見られ,学校との関わり合い や,学校を通じての子どもの発達に関連するクラ スターであると考えられる.これを<学校教育と 発達>とした.

また,選択式アンケートで未就学児(2歳未満)

をもつ外国人からの相談が多いとされた医療系ト ピックだが,自由記述アンケートでは「出産」「検 診」など妊娠期の相談の喫緊性が高いことが示唆 された.教材にて医療系のトピックを扱う際は,

未就学児の他,妊娠期のライフステージと関連付 けての提示を検討すべきだろう.

最後に自由回答から得られなかった結果として,

コミュニティ通訳の主要分野のうち,「司法」に関 連するものは,今回クラスターとして表出しなかっ た.子育てに従事するコミュニティ通訳を養成す る際,トピック的優先度は医療・教育・行政といっ た分野より低く設定することを検討すべきだろう.

c.低頻度重要トピックの特定

本研究では,子育てに従事するコミュニティ通 訳者が高頻度で遭遇するトピックを調査してきた が,相談の中には遭遇頻度が高くなくとも,生命 や人生にとって重大な影響のあるトピックがある と予想される.そのようなトピックは頻度調査で は得られないため,階層的クラスター分析を用い てコミュニティ通訳者の意識の視覚化を試みたの が 図2である.以下に各クラスターの情報を縮約 する.

第1クラスター:社会的事情 (日本,難しい,

場合,育てる,受ける,家族,考える,就学,

対応,教徒,イスラム)

第2クラスター:発達障害と教育 (障害,発達,

教育,制度,保護,子育て,理解)

第3クラスター:文化・言語の差 (言語,問題,

相談,違い,子ども,虐待,ケース,親)

第4クラスター:日本語の学習 (日本語,児童,

学習)

第5クラスター:保育・育児環境 (母子,保育,

母親,子,保育園,日本人,特に)

第6クラスター:地域社会との関わり (説明,

連絡,人,必要,思う,コミュニティ,入る,

外国,支援,学校,通訳)

ここで特に注目したいのは,第2クラスターで ある.発達障害については,順位法を用いたアン ケートでも項目として設定されていたが,全体傾 向として頻度は決して高くなかった.しかしなが ら自由記述では【発達障害の診断(日本語力によ るものなのか発達障害なのかの見極めができる人 がすくない)】【保護者の子育て教育制度・発達障 選択式アンケートでも項目の設置されていた,

幼児保育や学校教育が,自由記述でも再登場して いるのは特筆すべき点といえる.順位法でも頻出 トピックとして扱われていた保育や教育だが,扱 われる頻度の高くない窓口においても重要と考え られるということは,教材での優先度を上げるの に有力な根拠となる.

図1 その他重要トピックの抽出語階層的クラスター 分析(樹形図)

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害などの知識と理解】といった回答例が見られ,

相談される頻度は高くないながらも,教材中で配 慮の必要な問題の一端を見ることができる.

また,第3クラスターに虐待が認められるのも 看過できない問題である.相談の性質上,相談件 数的には少ないことが予想され,回答例も,【子ど もが虐待を受けているケース.子どもが自分で連 絡をしてこれないので件数は少ないが,社会に適 応できていない問題を抱える親の場合,子どもが 虐待を受けているケースが多いが,確認すること が困難】のようにそれが伺える内容となっている.

また,第5・6クラスターには,学校や保育に 関連した問題が表出している.これらは順位法を 用いたアンケートで特に高頻度な項目であったが,

低頻度ながら重要な問題としても選出されたのは 興味深い.内容的にも,【学校からのお便りが読め ない,その内容が推測すらできないこと】など,

保護者との継続的連絡事項が顕著なようである.

この解釈としては,学校や園とのやり取りに関し て相談が高頻度である支援機関とそうでない機関 が存在するが,相談が低頻度であっても,対応す る人間にとっては特に重要であると映っているこ とを示している.学校とのやり取りは義務教育内 に限定しても9年間と長く,また文化的なギャッ プから生じる困難が予想される.

Ⅳ.まとめ

本研究は,外国人住民の子育て支援に携わるコ ミュニティ通訳者養成教材を作成する場合,最も 高頻度で遭遇するライフステージ及びトピックは どのようなものか,アンケート調査を行った.

まず,RQ1「子育て支援の相談通訳において,

高頻度で相談を受けるライフステージ層は存在す るか.存在するとすれば,それはどのステージか」

については,子育ての中でも就学児をもつ保護者 からの相談が最も多く,次いで未就学児をもつ保 護者からの相談が統計的に多いという結果となっ た.このことは,子育て支援に従事するコミュニ ティ通訳者が実務にあたる場合,就学児をもつ保 護者の相談を受ける可能性が相対的に高いという ことが示唆された.

次に,RQ2「子育て支援の相談通訳において,

ライフステージ別に,高頻度で相談を受けるトピッ クは存在するか.存在するとすれば,それはどの ようなトピックか」については,段階的に頻出す

図2 低頻度で重要と考えられるトピックの抽出語階 層的クラスター分析(樹形図)

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るトピックが変化することがわかった.具体的に は妊娠期は行政による支給金について,未就学児

(2歳未満)の段階では医療について,未就学児

(2歳以上)の段階では保育園・幼稚園に関連し て,そして就学児の段階では学校に関連したト ピックの相談頻度が高く,ライフステージととも に分野の相談件数が推移することが示唆された.

RQ 3「子育て支援の相談通訳において,相談 頻度は高くないが特別重要と感じられるトピック は存在するか.存在するとすれば,それはどのよ うなトピックか」については,発達障害や虐待と いった,突出した頻度ではないものの,個々の案 件として特に重要と考えられるトピックが抽出さ れた.付随して,分析の結果高頻度と推測された,

学校や保育園・幼稚園に関連したトピックが観察 された.学校や保育園・幼稚園についての問い合 わせが決して多くない窓口においても重要と考え られていることが確認された.

これらの結果を反映したコミュニティ通訳養成 教材は,どのような要件を備えるべきであろうか.

第一に,実務として相談にあたる際,最も頻繁に 相談を受けるのは就学児についてであることが判 明した.従って,想定される相談者のライフステー ジに傾斜をかけることが考えられる.第二にト ピックに関しては,相談者のライフステージごと に,特に高頻度で相談されるトピックを最優先で 扱うのが妥当と思われる.すなわち,乳幼児期か ら未就学期であれば,予防接種や保育園・幼稚園 への入園手続き,就学期であれば小学校行事や進 路など,ライフステージと高頻度なトピックを組 み合わせての提示することで,実務で対応する可 能性の高いシチュエーションへの経験を獲得する ことが可能になると考えられる.このようにして,

遭遇率の高いシチュエーションを題材とすること で,汎用性のある教材作成を目指すことが可能に なるだろう.

謝辞

本研究はJSPS科研費 17K02966の助成を受けた ものです.

1)本稿で言及する「外国人」は,いわゆる「外 国籍」に限定されない.ホスト社会として日本を

例にとると,国外で生活する国籍上の「日本人」

であっても,日本語が話せない人々は言語・文化 的マイノリティであり,コミュニティ通訳による 支援を必要とする.また日本国籍を有さない場合 でも,日本語を話し日本での生活が長く,支援を 必要としない場合もある.本稿では,日本語母語 者が日本国籍者に集中していることから,それ以 外の人々,非日本語母語者という意味を兼ねて「外 国人」という語を使用する.

2)本稿のような社会的調査研究においては,回 答内容に影響を与えると考えられる,サービスに 使用する言語やその文化的背景が重要な意味を持 つ.しかしながら本研究で行ったアンケート調査 では,協力の条件として可能な限り特定につなが る情報を排除することがメーリングリスト及び団 体の統括者から指摘されていたため,匿名性の観 点から本稿では詳細を省いている.個別言語に関 して追加の調査を行うことで,言語非依存の要素 と,個別言語に特有の要素を明らかにすることが 可能となると考えられるので,将来的な研究課題 としたい.

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11-12 年度報告』 12-30. 東京:東京外国語大学 多言語・多文化教育研究センター .

武田真由美(2007).「A 県における在日外国人 の子育てニーズに関する探索的研究 在日外 国人保護者 , 行政担当者 , 支援者へのインタ

ビュー調査より」. 『関西学院大学社会学部紀要』, (103), 115-127.

付録 各ライフステージにおけるトピック登場頻度の,ウィルコクソンの符号付順位和検定結果表(ボ ンフェローニの補正適用済)

分散 p値

妊婦検診 : 児童手当・児童扶養手当 1160.5 .292

妊婦検診 : 母子手帳 1334.5 .084

妊婦検診 : 助産師・保健師による訪問指導 1537 .135

妊婦検診 : 母親・両親教室 1370.5 .145

妊婦検診 : 生活保護 1811 .040

児童手当・児童扶養手当 : 母子手帳 1725 .002*

児童手当・児童扶養手当 : 助産師・保健師による訪問指導 1766 .021*

児童手当・児童扶養手当 : 母親・両親教室 1846 .013 児童手当・児童扶養手当 : 生活保護 1810 < .001**

母子手帳 : 助産師・保健師による訪問指導 1196.5 .947

母子手帳 : 母親・両親教室 1244 .826

母子手帳 : 生活保護 1438 .356

助産師・保健師による訪問指導 : 母親・両親教室 1187 .593

助産師・保健師による訪問指導 : 生活保護 1453 .312

表5 妊娠期・妊娠期のパートナーをもつ相談者からの相談トピック

(10)

付録 各ライフステージにおけるトピック登場頻度の,ウィルコクソンの符号付順位和検定結果表(ボ ンフェローニの補正適用済)

表5 妊娠期・妊娠期のパートナーをもつ相談者からの相談トピック

分散 p値

妊婦検診 : 児童手当・児童扶養手当 1160.5 .292

妊婦検診 : 母子手帳 1334.5 .084

妊婦検診 : 助産師・保健師による訪問指導 1537 .135

妊婦検診 : 母親・両親教室 1370.5 .145

妊婦検診 : 生活保護 1811 .040

児童手当・児童扶養手当 : 母子手帳 1725 .002*

児童手当・児童扶養手当 : 助産師・保健師による訪問指導 1766 .021*

児童手当・児童扶養手当 : 母親・両親教室 1846 .013 児童手当・児童扶養手当 : 生活保護 1810 < .001**

母子手帳 : 助産師・保健師による訪問指導 1196.5 .947

母子手帳 : 母親・両親教室 1244 .826

母子手帳 : 生活保護 1438 .356

助産師・保健師による訪問指導 : 母親・両親教室 1187 .593 助産師・保健師による訪問指導 : 生活保護 1453 .312

母親・両親教室 : 生活保護 1404 .468

分散 p値

予防接種 : 乳幼児医療証 1896 < .001**

予防接種 : 病気・怪我(病児保育を含む) 1378 .564

予防接種 : 健康診断 1337.5 .308

予防接種 : 出生届 1797.5 < .001**

予防接種 : 出産各種手当 1509.5 .020

予防接種 : 一時保育 1713 .127

乳幼児医療証 : 病気・怪我(病児保育を含む) 489.5 < .001**

乳幼児医療証 : 健康診断 508 < .001**

乳幼児医療証 : 出生届 1019.5 .937

乳幼児医療証 : 出産各種手当 589 < .001**

乳幼児医療証 : 一時保育 737 .001**

病気・怪我(病児保育を含む) : 健康診断 1303.5 .718 病気・怪我(病児保育を含む) : 出生届 1961.5 < .001**

表6 未就学児(2歳未満)をもつ相談者からの相談トピック

(11)

病気・怪我(病児保育を含む) : 出産各種手当 1630 .122 病気・怪我(病児保育を含む) : 一時保育 1721.5 .178

健康診断 : 出生届 2004 < .001**

健康診断 : 出産各種手当 1466.5 .071

健康診断 : 一時保育 1644 .245

出生届 : 出産各種手当 524.5 < .001**

出生届 : 一時保育 867 .008

出産各種手当 : 一時保育 1378.5 .805

分散 p値

保育園入園手続き・説明会 : 幼稚園・保育園との連絡事項 1506.5 .068 保育園入園手続き・説明会 : 小学校入学手続き 1863 .004*

保育園入園手続き・説明会 : 育児放棄 2785.5 < .001**

保育園入園手続き・説明会 : 母子家庭関連 2397 < .001**

保育園入園手続き・説明会 : 就労支援 2505.5 < .001**

保育園入園手続き・説明会 : 発達障害 2406 < .001**

幼稚園・保育園との連絡事項 : 小学校入学手続き 1494.5 .134 幼稚園・保育園との連絡事項 : 育児放棄 2738.5 < .001**

幼稚園・保育園との連絡事項 : 母子家庭関連 2284 < .001**

幼稚園・保育園との連絡事項 : 就労支援 2305 < .001**

幼稚園・保育園との連絡事項 : 発達障害 2411 < .001**

小学校入学手続き : 育児放棄 2438 < .001**

小学校入学手続き : 母子家庭関連 1907.5 < .001**

小学校入学手続き : 就労支援 1937 .007*

小学校入学手続き : 発達障害 2037.5 < .001**

育児放棄 : 母子家庭関連 242 < .001**

育児放棄 : 就労支援 274.5 < .001**

育児放棄 : 発達障害 356 < .001**

母子家庭関連 : 就労支援 1131 .394

母子家庭関連 : 発達障害 1265 .895

就労支援 : 発達障害 1485.5 .330

表7 未就学児(2歳以上)をもつ相談者からの相談トピック

(12)

分散 p値

ファミリーサポート : いじめ 1432.5 .807

ファミリーサポート : 学校関連の費用 1032 .112

ファミリーサポート : 編入手続き 1132 .228

ファミリーサポート : 学校行事 809 .003*

ファミリーサポート : 学童保育 1278.5 .517

ファミリーサポート : 進路 825 .009

いじめ : 学校関連の費用 885 .035

いじめ : 編入手続き 876 .046

いじめ : 学校行事 692.5 < .001**

いじめ : 学童保育 1160 .094

いじめ : 進路 553 < .001**

学校関連の費用 : 編入手続き 1257.5 .929

学校関連の費用 : 学校行事 951 .060

学校関連の費用 : 学童保育 1464 .021

学校関連の費用 : 進路 898 .062

編入手続き : 学校行事 965.5 .049

編入手続き : 学童保育 1498.5 .046

編入手続き : 進路 984 .043

学校行事 : 学童保育 1985.5 < .001**

学校行事 : 進路 1376.5 .886

学童保育 : 進路 611.5 < .001**

表8 就学児をもつ相談者からの相談トピック

参照

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