就労妊婦に対するマタニティハラスメントの実態と心理的・身体的な健康への影響 Current s i t u a t i o n r e g a r d i n g maternity harassment o f working pregnant women
and t h e e f f e c t s on t h e i r p s y c h o l o g i c a l and p h y s i c a l h e a l t h
藤 井 ひ か る 1 ) 乾 つぶら 2 ) 五 十 嵐 稔 子 2 )
1 ) 奈良県立医科大学大学院看護学研究科 6期 生
2 ) 奈良県立医科大 学 大学院看護学研究科
Hikaru F u j i i 1 ) Tsubura I n u i 2) Toshiko I g a r a s h i 2 ) F a c u l t y o f N u r s i n g S c h o o l o f Medicine , N ara Medical U n i v e r s i t y l ) 2 )
要旨
本研究の目的は、マタニティハラスメントの実態を明らかにし、マタニテイハラスメントが産 前産後の心理・身体的な健康に及ぼす影響を検討することである。妊娠期 に 就労経験のあ る初産婦を対象に、妊娠後期(妊娠 28 週 以 降)と産後早期(産後 7 日以内)に、縦断的に無記 名自記式質問紙調査を用いて、コホート研究を実施した。 295 部を配布し、妊娠後期は 134 名 ( 45.4%) 、 産 後 早 期 は 44 名 ( 1 4 . 9 % ) か ら回答を得た。妊娠後期の対象者のうち 55 名 ( 4 1 . 0%)がマタニティハラスメントを受けていた。マタニティハラスメントが職業性ストレス簡易 調査票の心理的ストレス反応と身体的ストレス反応、妊娠期 のエジンパラ産後う つ 病 自 己 評 価 票 (EdinburghP o s t n a t a l Depression S c a l e ; 以下、 EPDS) 、妊娠悪阻に影響していた 。 マタニテイハラスメントが産後早期の E P D S や在胎週数、児の出生体重には影響がみられな かった。就労妊婦が安全に安心して働き続けるためには、妊娠 中のマタニティハラスメント 予 防・抑制への対策が重要であると示唆された。
キーワード:マタニティハラスメント、心理的健康、身体的健康
A b s t r a c t
The aim o f t h i s study was t o c l a r i : f y t h e c u r r e n t s i t u a t i o n o f maternity harassment and t o survey i t s e 旺 e c t son t h e p s y c h o l o g i c a l and p h y s i c a l h e a l t h o f women b e f o r e and a f t e r c h i l d b i r t h . We r e c r u i t e d 295 p r i m i g r a v i d women who were working i n p r e g n a n c y . The q u e s t i o n n a i r e s were d i s t r i b u t e d b e f o r e c h i l d b i r t h ( a f t e r t h e 28th week o f pregnancy) and a f t e r c h i l d b i r t h ( w i t h i n 7 da ys o f g i v i n g b i r t h ) . 134 women
( 4 5 . 4 % ) during pregnancy and 44 ( 1 4 . 9 % ) a f t e r c h i l d b i r t h anonymously answered q u e s t i o n n a i r e . Of t h o s e ansewers b e f o r e c h i l d b i r t h , 55 ( 4 1 . 0 % ) had e x p e r i e n c e d maternity harassment , which promoted t h e p s y c h o l o g i c a l s t r e s s r e a c t i o n , p h y s i c a l s t r e s s r e a c t i o n ( b r i e f j o b s t r e s s q u e s t i o n n a i r e ) , h i g h e r s c o r e s on t h e Edinburgh P o s t n a t a l Depression S c a l e (EPDS) during pregnancy , and t h e p r e v a l e n c e o f hyperemesis gravidarum. 明な註 1 e , ex p e r i e n c i n g maternity harassm e n t i n pregnancy d i d not a f f e c t postpartum EPDS , g e s t a t i o n a l age , o r b i r t h w e i g h t . These r e s u l t s suggest t h a t measures t o prevent and e r a d i c a t e maternity harassment a r e a b s o l u t e l y c r i t i c a l f o r a l l o w i n g women t o c o n t i n u e working s a f e l y and c o m f o r t a b l y during pregnancy .
‑14 ー
1 .緒言
わが国の女性労働カ人口率は、結婚・妊 娠・出産期に当たる年代 に一旦低下し、 育児 が落ち着いた時期に再び上昇するとし づ、い わゆるM字カーブを描くこと が知られている(厚 生労働省, 2 0 1 8 ) 。 しかし近年、女性の社会進 出が目覚ましく、 M 字の底が 浅くなってきてい る(内閣府男女共同参画局, 2 0 1 8 ) 。このような 現代において、結婚・妊娠 ・出産などのライフ サイクルを持つ就労女性 に対して、種々 の法 施 策 の制定・改正や就労環境の 整 備 が行わ れてきている。
しかし、先行研究(労働施策研究・研修機 構 , 2 0 1 6 ) において就労妊婦の 2 1 . 4% がマタ ニ テイハラスメントを受けていた。日本労働組合 総連合会の調査によると、妊娠・出産をきっか けに不利益な取り扱いや嫌がらせを受 けた人 の 8 3 . 7 % ( 2 0 9 人中 1 7 5 人)がストレスを感じた と 回 答 し て い る ( 日 本 労 働 組 合 総 連 合 会 , 2 0 1 5 b ) 。マタニテイハ ラスメントの中に は、
妊娠・出産・育児に関する法律が遵守されな い、 制度が不備(山中,富岡 , 2 0 1 6 ) と いった、 身 体的な健康に影響すると考えられる内容も存 在している。これらのこと から、女性の社会進 出が進む中で、マタニティハラスメントは就労妊 婦の大きなストレスとなり産前産後の心理・身 体的負担になると推察される。
し かし 、わが国のマタニティハラスメント に関 する研究は新聞記事調査と 実態調査が多く、
心身の健康の側面からみた研究はほとんどみ られない 。 そこで 、就労妊婦が心身の健康を 維持して過ごすためには母性保護 の観点から マタ ニティハラスメントに関する研究が急がれ る 。
I I .目的
マタニテイ ハラ スメント が産前産後の 心理 ・ 身 体的な健康に及ぼす影響を明らかにする。
i l l . 用語の定義
木研究では研究者が以下に用語を定義す る 。
奈良看護紀要 V O L 1 5 . 2 0 1 9
1.就労妊婦 :就労していた妊婦
2 . マタニティハラスメント : 働 く女性が妊娠・出 産を理 由と し て解雇・雇 い止めをされることや、
職場で受ける精神的・ 肉体 的なハラスメントの こと(日 本労働組合総連合会)
N. 方法
1.研究方法と対象 1 ) 研 究デザイン
無記名自 記式質問 紙調査を用いた。
2 ) 研究対象者と適格基準
妊娠期に就労経験のある初産婦を対象とし、
妊娠後期( 妊娠 28 週以降) と産後早期(産後 7 日以内) に無記名自記式質問紙調査を実施し た。選択基準は、妊娠初期 ・中期に退職した 方あるいは、 産前休業取得中 の方も対象者に 含むこととし た。除外基準は、精神疾患既往 、
自営業(家族従業者も含む)の者とした。
3 ) データの配布・収集方法
A県の大学病院、産科ク リニックの各 1 施設 で、妊娠後期 を対象と した両親学級を受講し た対象者に対して、妊娠後期 と 産 後 早期の質 問紙を直接配布し、それぞれの 時期に郵送法 にて回収した。対象者 には両親学級の受講前 に書面と口 頭にて研 究 依 頼文を用いて研 究 説明を行った上で質問用紙を配布した。質問 紙の返送をもって研究への同意を得られたも のとした。
4 ) データ収集期間
H30 年 4 月 12 日 ~H30 年 11 月 30 日
2 . 調査内容
1 ) 妊娠後期の調査項目 ( 1 ) 基本属性
年齢、妊 娠週数、就 労状況(雇用形態、 勤務 年数)、 疾患の有無
( 2 ) マタニティハラ スメント の実態
マタニテイハラスメント の被害 内容としては、 山 中
3富岡 ( 2 0 1 6 ) が作成した 3 つのカテゴリ ーご とに、研究者が先 行 研究( 一般財団法人女性 労 働 協 会 , 2 0 0 6 ; 日 本 労 働 組 合 総 連 合 会 , 20 1 5 a ; 日本労働組合総連 合会 , 2 0 1 5 b ; マ
ph d
タハラ NET , 2 0 1 5 ; 労 働 政 策 研 究 ・ 研 修 機 構 , 2 0 1 6 ; 泉田ら, 2 0 1 6 ; 難波,大慶,長本,山県 l i f , 中塚, 2 0 1 6 ; 盛満,吉留, 2 0 1 6 ) からコードを振り 分けた。カ テゴリーは、「雇用に関連する不当 な扱いJ 、「リフ。ロダクティブヘノレス/ライツの侵 害」、「働き l こ く し 1 環境J の 3 つで、ある。振り分け たコードの中から、被害率が高く、心理・身体 的な健康に影響すると推察される 1 4 の質問項
目を研究者が作成した。
( 3 ) 職業性ストレス簡易調査票
本研究では、 29 項目のストレス反応調査項 目を使用した(加藤ら, 2 0 0 0 ) 。ストレス反応につ いては、心理的ストレス反応と身体的ストレス 反応について測定できる。 心理的ストレス反応 の下位尺度は、ポジティブな心理的反応の活 気と、ネガティブ
Fな心理的反応のイライラ感、
疲労感、不安感、抑う つ感からなる。身体的ス トレス反応は身体愁訴の下位尺度からなって いる。ストレス反応は、点数が高いほどストレス が高くなる(下光, 2 0 0 5 ) 。
(4)EPDS
EPDS は 、 Coxら ( 1 9 8 7 ) が開発した産後の うつ状態を定量的に評価することを目的とした 尺度であり、岡野ら ( 1 9 9 6 ) により日本人女性対 象に作成され、信頼性と妥当 性が検証されて いる(岡野ら, 1 9 9 6 ) 。
日本語版では 9 点以上の者が抑う つ状態の 可能性が高し法判断される(岡野ら, 1 9 9 6 ) 。 2 ) 産後早期の調査項目
( 1 ) 出産状況
在胎週数、分娩様式、児の出生体重 (2)EPDS
3 . 分析方法
マタニティハラスメントの 3 つのカテゴ、リー別 に、被害を受けたと回答した人を被害あり群、
被 害を 受けていないと回答した人を被害なし 群の 2群に分け 、 産前産後の心理・身体的な 健康に与える影響を分析した。 2群聞の差の 検定は、 t 検定または Mann 川 市 i t n e y のU検 定を用いた。独立性の検定は x 2 検定または F i s h e r の正確確率検定を用 いた。分析 の際に
は、事前に正規性の検定も実施した。 また、検 定の有意水準は 5 % 未満とした。データの分析 は IBMSPSS S t a t i s t i c s R v e r 2 3 を用 いて 行った。
4 . 倫理的配慮
本研究は奈良県立医科大学、医の倫理審 査委員会に審査を申請 し 、 承諾を得た(承認 番号: 1 8 2 4 ) 。
研究者が 口頭で研究の趣旨を説明し、研究 対象者に対して倫理的配慮 や研 究の意義と 目的および方法を述べた依頼文書 ・ 質問紙を 配布した。
v . 結果
1.質問紙の 回収結果
質 問紙の配布数 295 部に対し、回収は妊 娠後期 1 5 4 部(回収率 5 2 . 2 % ) 、産後早期 47 部 ( 1 5 . 9 % ) で、あった。そのうちデータの欠損 の ないものを分析対象としたところ、妊娠後期で は 134 名( 有効回答率 8 7 . 0%) 、産後早期に おいては、 44 名 ( 9 3 . 6 % ) 、あっ で た 。
2 . 対象者の背景
対象者の属性,妊娠経過,就 労状況を表 1 、 産後早期の属性は表 2 に示す。年齢の平均
±標準偏差は 3 1 . 2 士 4 . 5 歳で 、 あった。在胎週 数の 中央値は 3 9 . 0 週で、あった。
3 . 職業性ストレス簡易調査票の得点結果 対象者全体における、心理的ストレス反応 の下位尺度ごとの平均士標準偏差は、活気 7 . 4 : : 1 : 2 . 1 点 、 イライラ感 5 . 8 土 2 . 2 点、疲労感 7 . 3 土 2 . 1 点、不安感 5 . 5 土 2 . 0 点、抑うつ感 9 . 8 土 2 . 9 点であ り 、心理的ストレス反応の合計得点は 3 5 . 8 土 7 . 9 点であった。 身体的スト レス反応得点 の平均±標準偏差は 、 2 2 . 5 土 4 . 7 点で 、 あった。
4.EPDS の 得点結果
EPDS は、妊娠後期で 9 点以上の者は 2 2 名 ( 1 6 . 4 % ) 、 産後早期では 7 名 ( 1 5 . 9 %) 、あった。 で
ハhU
1
ム表 l 妊娠後期の属性、妊娠経過、就労状況 n=134 中 央 値 項目
(最小一最大)
年 齢 3 1 . 2
土4 . 5
妊 娠 週 数 3 3 . 0 ( 2 8
・3 8 ) 婚 姻 状 況 既 婚・ 事 実 婚 1 3 1 ( 9 9 . 3 )
未 婚 1 ( 0 . 7 ) 経 済 状 況 ゆとりがある 10 5 ( 7 8 . 4 )
苦しい 2 9 ( 2 1 . 6 ) 切 迫 流 あり 43(32 . 1 ) 産・ 早 産 なし 9 1 ( 6 7 . 9 ) 妊 娠 悪 阻 あり 1 3 ( 9 . 7 )
なし 121 ( 9 0 . 3 ) 就 業 状 況 妊娠中に離職 4 2 ( 3 1 . 3 )
産 前 休業 取得 9 2 ( 6 8 . 7 ) 雇 用 形 態 正規社員 9 2 ( 6 8 . 7 ) 非正規社員 4 2 ( 3 1 . 3 )
勤務年数( ヶ月) 6 2 . 5 ( 1 ‑ 2 5 7 )
表 2 産 後 早期 の属 性 n=44 Mean
士SD
(
中 最 央 小 値 ー 最 大 : k ) . orn(%)
妊娠期間(週) 3 9 . 0 ( 3 0 ‑ 4 1 ) 分 娩 様 式 経 薩 分 娩 3 4 ( 7 7 . 3 )
帝王切開 10 ( 2 2 . 7 ) 児の出生体重 2951
土4 1 9 . 2
5 . マタニティハラスメントの実態
妊娠後期の対象者のうち、被害を受けたと 回答した人は 55 名( 被害率 4 1 . 0%) で 、あった。
被害を受けた 55 名のうち、被害内容別に被害 率を表 3に 示す。カテゴリーJjrJでは J 雇用 に 関連する不当な扱しリは 1 8 名 ( 3 2 . 7 % ) 、 「リプ ロダクティブヘルス/ライツの侵害 j は 3 2 名 ( 5 8 . 9 %) 、 「 働きにくし 1 環境 j は 3 5 名 ( 6 3 . 6 % ) であ った。
奈良看護紀要 V O L 1 5 . 2 0 1 9
表 3 マタニティ ハラスメント の実態 n = 55
項目 f 複 数回答) n( %)
「雇用に関連する不当な扱い J 1 8 ( 3 2 . 7 ) 解 雇 や 雇止め 4 ( 7 . 3 ) 解 雇 や雇い止めへの誘導 6 ( 1 0 . 9 ) 減給(ボーナスの減給も含む) 3 ( 5 . 5 ) 雇用 形態の変更 6 ( 1 0 . 9 )
降格 2 ( 3 . 6 )
仕事をさせない、もっぱら雑務をさせる 1 ( 1 . 8 ) 休 暇 取 得や 時短勤務をさせてもらえない 6 ( 1 0 . 9 )
「
リプロダクティブヘノレス/ライツの侵害」 3 2 ( 5 8 . 9 ) 嫌 味 や心無い言葉 1 8 ( 3 2 . 7 ) 嫌がらせ 7 ( 1 2 . 7 ) 残 業 や 重労働などを 5 齢、られた 2 0 ( 3 6 . 4 ) 権利を主張しづらくする発言をされた 5 ( 9 . 1 )
「働きにくし、環境 J 3 5 ( 6 3 . 6 ) 男 は 仕 事、 女は育児とし 、う職場環境 8 ( 1 4 . 5 ) 妊娠に関して相談できる職場ではない 18 ( 3 2 . 7 )
職 場 内でマタニテイハラスメント があった 1 9 ( 3 4 . 5 )
6 . 妊娠期 の心理・身体的な健康に及ぼす影響 マタニティハ ラスメント を、 「 雇用に関連する 不当な扱い」 、 「 リフ。ロダクティ ブヘノレス/ ライツ の侵害 L i 働きにくし、環境」 の 3つのカテゴ リ ーに分けて分析した。
1 ) 心理的 な健康への影響
「
リフ 。 ロダクティブヘルス/ ライツの侵害J では、
被害あり群の方が心理的ストレス反応合計 が 高く ( p = . 0 1 8 ) 、妊娠期 EPD S は 9 点以上の人 が多く ( p = . 0 4 0 ) 、有意差が認められた。 ( 表 4 、 表 5 )
2 ) 身体的な健康への影響
「
リフ
oロダクティプへノレ ス / ライツの侵害 j では、
被害あり群の方が身体的スト レ ス反応が高く ( p
= . 0 2 5 ) 、 妊娠悪阻の割合が多く ( p = . 0 1 4 ) 、有 意差が認められた。(表 6 、 表 7 、 表 8 )
7 . 産後の心理・ 身体的な健康に及ぼす影響 本研究では、産後早期 の回収が 4 7部 ( 1 5 . 9%) と低く、 対象者数に偏りがあるためマタ ニ ティハラスメント を 3 つのカテゴリーに分けて分
月i
析はで、きなかった。そのため、被害の有無の 2 群 聞に分けて分析した 。
その結果、在胎週数 ( p= . 5 2 3 ) 、分娩経過 ( p
= . 0 6 8 ) 、産後早期の EPD S ( p = . 290 ) 、児の出 生時体重( p=. 86 9 ) の項目において、有意差は 認 められなかった o ( 表 9 )
表 4 マタニティハラスメントの心理的ス ト レス反応合計への影響 n=13 4 心理的ストレス反応合計
項 目 中央値、
(最小同最大)
「 雇用に関連する あり 18 ( 1 3 . 4 ) 3 5 . 5(25 ‑ 5 1 )
不当 な扱し ' J なし 11 6 ( 8 6 . 6 ) 10 32 . 5 . 9 4 0 35.0 ( 2 0
・8 5 )
「 リ フ 。ロダクティブ あ り 32(2 3 . 9 ) 3 9 . 0(2 5
・4 9 )
1179 . 5 . 0 1 8
大ヘルス/ライツの侵害 j なし 102(7 6 . 1 ) 34 . 0 ( 2 0 ‑ 6 5 )
「 働きにく し、環境」 あ り 35(26 . 1 ) 38.0 ( 2 5
聞6 5 )
なし 99( 7 3 . 9 ) 1 3 9 6 . 5 . 0 8 8 34.0 ( 2 0
・5 5 )
Ma nn ‑ Wh i t n ey の U 検 定 *p く . 05 、 付p く . 0 0 5
表 5マタニティハラスメント の妊娠期 EPDS への影響 n= 1 34 妊 娠期 EPD3
く 9
一二 三 9
t 一‑ →d
‑ n 〈 % ) : 内 . r i ( % )
「 雇用に関連する あり 1 4 ( 7 7 . 8 ) 4 ( 2 2 . 2 )
不当な扱し ' J a なし 98 ( 84 . 5 ) 1 8 ( 1 5 . 5 ) . 3 3 7
「 リ フ 。ロ ダクティブ あ り 2 3 ( 7 1 . 9 ) 9 ( 2 8 . 1 )
ヘルス/ ライツの侵害J b なし 8 9 (87 . 3 ) 13 ( 1 2 . 7 ) 4 . 19 9 . 04 0 *
「 働きにく し
1環 境J b あ り 2 7 ( 7 7 . 1 ) 8(22 . 9 )
なし 85(85 . 9 1 4 ( 1 4 . 1 ) 1 . 43 1 . 232 a)Fisher の玉確確率検定 b)X 2 検 定 、 く. 0 5 、 士、く . 005
表 6マタニテ ィハラスメントの身体 的スト レス反応合 計への影響 n
ご1 34
項目 身体的ストレス反応 、
( % Y ‑ l V I ean 土 3 D n
「 雇用に関連する あ り 1 8 ( 1 3 . 4 ) 2 2 . 7 士 5 . 2
不当な扱い」 なし 11 6 ( 8 6 . 6 ) ‑ 0 . 140 . 8 89 2 2 . 5 土 4 . 6
「 リプロダクティブ あ り 32(23 . 9 ) 2 4 . 1 土 4 . 2
ヘルス/ライツの侵害」 なし 1 0 2 ( 7 6 . 1 )
司2 . 26 0 . 0 25
公22 . 0 土 4 . 7
「 働きにくし 1 環 境 j あ り 35(26 . 1 ) 2 1 . 9 土 4 . 6
なし 99(73 . 9 ) . 896 . 3 2 7 2 2 . 7 土 4 . 7
t 検 定 、 < . 0 5 、対p く . 00 5
n δ
114
奈良看護紀要 V O L 1 5 . 2 0 1 9
表 7 マタニティハラスメント の切迫流 ・ 早 産への影 響 n = 134 切 迫 流 産 ・ 早産 ,
項目 あり なし
I i ( % ) n ( % ) p イ 直
「雇用に関連する あり 6 ( 33 . 3 ) 12 ( 6 6 . 7 )
不当 な 扱しリ なし 3 7 ( 3 1 . 9 ) 7 9 ( 6 8 . 1 ) . 550
「 リプロダク ティブ あり 1 0 ( 3 1 . 3 ) 2 2 ( 6 8 . 8 )
ヘルス/ ラ イ ツの侵害 J なし 33 ( 3 2 . 4 ) 6 9 ( 6 7 . 6 ) . 545
「 働き l こ く し 1 環 境」 あり 1 3 ( 3 7 . 1 ) 22 ( 6 2 . 9 )
なし 3 0 ( 3 0 . 3 ) 6 9 ( 6 9 . 7 ) . 294 Fisher の正確確率検 定 、 < . 05 、 対 p < . 005
表 8 マタ ニテイハラスメ トの妊娠悪 阻への影響 n=1 34 妊娠 悪 阻
り なじ
項 目 、 、 ' 、 あ "
" ~h(%) n ' .
(n ( % ) p 健
「雇用 に関連する あり 3 ( 1 6 . 7 ) 1 5 ( 8 3 . 3 )
不 当な 扱し リ なし 1 0 ( 8 . 6 ) 106 ( 9 1 . 4 ) . 2 2 4
「 リ プロ ダクティブ あり 7 ( 2 1 . 9 ) 2 5 ( 7 8 . 1 )
. 014
女ヘルス/ライツの侵害」 なし 6 ( 5 . 9 ) 9 6 ( 9 4 . 1 )
「 働き にく し 1 環 境」 あり 5 ( 1 4 . 3 ) 3 0 ( 8 5 . 7 )
なし 8 ( 8 . 1 ) 9 1 ( 8 5 . 7 ) . 226 Fi s h e r の正 確 確 率 検 定 、 く . 0 5 、 犬、 く . 0 0 5
表 9 マタニティハラスメントの産後への影響 n = 4 4
o r N ( % ) ( 最小一 最大) 検 定 量 p値 在 胎 週 数 a 3 9 ( 3 6 ‑ 4 1 ) 3 9 ( 3 0
・4 1 ) 2 1 3 . 5 . 52 3
分娩様 式 c 経睦分娩 1 8 ( 5 2 . 9 ) 1 6 ( 4 7 . 1 )
ー
0 68 帝王切開 2 ( 2 0 . 0 ) 8 ( 8 0 . 0 )
児の出生体重
2 939 . 4 土325 . 7 2960 . 7 土 49 0 . 7 . 1 66 . 8 69 b
産後 早期 < 9 2 ( 2 8 . 6 ) 5 ( 7 1 . 4 )
ー
2 9 0 EPDS c ミ~ 9 1 8 ( 4 8 . 6 ) 1 9 ( 5 1 . 4 )
a)Mann
nH d
1 よ
V I .考察
初産婦の就労妊婦を対象に、マタニティハ ラスメントの実態を調査し、産前産後の心理・
身体的な健康への影響について検討したと こ ろ、マタニテイハラスメント のうち「リプロダクティ ブ
Fヘルス/ライツの侵害J が妊娠期の 心身の不 調に影響していた。 しかし、産後の抑うつ状態 及び分娩、出生児にマタニテイハラスメントの 影響はみられなかった。
マタニティハラスメント の 3 つのカテゴ、リーの 視点から、産前産後の心理・身体的な健康へ の影響について考察していく。
1 . マタニティハラスメント が心理 ・身体的な健康 に及ぼす影響
マタニテイハラスメントのうち、特に「リプロダ クティブヘノレス/ ライツの侵 害」 の被害を受ける ことで、職業性の心理・身体的な健康の不調 及び妊娠期の抑うつ状態及び妊娠悪阻 に影 響していた。
妊 娠 悪 阻と は、つわり症状が重篤化して栄 養 ・ 代 謝障害を来し、体重減少や脱水、電解 質の喪失など種々の症状を呈した状態である (荒木, 2012) 。成因は解明されていないが、要 因の 1つに妊娠に際しての不安や環境の変化 にうまく適応できない場合などの精神的 ・ 心理 的因子が強く関係するとの報告がある(荒木, 2 012; 鈴木,岡本, 2 014) 0 i リプロダクティブヘル ス/ライツの侵害」を受けることで、就労を継続 しながらも妊娠期を安全に安心して過ごせるか といった不安や仕事内容 ・人間 関係などの変 化 への適応が上手くし 1 かず 、心身に不調をき たすことで、 妊娠悪阻の発症に影響を与えて いると考えられる。また、加古,後藤,水野,若井 (2003) の研究では、つわり 症状が重いほど状 況不安が高 くなると示唆されていることから、 妊 娠 悪阻 を合併している就労妊婦はマタニティ ノ ¥ラスメントを普段よりも重く受け止めて不安に なりやすいと考えられる。職場での不安や悩 み が心身の不調の原因となっていなし 、 かを妊娠 悪 阻 に対する心理的ケアとして確認してい く こ とが重要である。
マタニティハラスメントにおける嫌味や心無 い言葉、嫌がらせに関しては、職場で 、 のパワー ノ¥ラスメントの定義と事柄が重なる部分もある。
職業性ストレ スのなかでも職場のいじめ ・ パワ ーハラスメ ントは深刻な被害 ・影響をもたらす 要因である(津野, 2 016 ) こ とから、 妊 娠 中にお いても嫌味や心無い言葉、嫌がらせが心身 の 不調に影響を与えていると考えられる。
今回 の研究においては、妊娠前からパワー ハラスメントを受けていてマタ ニテイハラスメント に移行、 あるいは混在しているのか、妊娠前は 全く感じなかったが妊娠中に明らかにマタニテ イハラスメントを受けたと感じたのかの区別はし ていない。 し 、かなるハラスメントも看過 で、きるも のではないが、今後は妊娠を機に受けたマタ ニテイハラスメントかどうかを更に調査・ 分析し、
予防や対策に結びつける必要がある。
本研究には「リフ。ロダクティブヘルス/ ライツ の侵害 」 の 中に、 残業や重労働といった身体 的負担を強いられる内容も 含んでいる。妊娠 中はマイナートラブルなど の 様々な症状が生じ、
就労妊婦は妊娠していない就労女性よ りも有 意に職業性の身体的スト レス反応が高くなる (一般財団法人女性労働協会 , 2006) 。妊娠そ のものによ って職業性の身体 的ストレスが高く なる就労妊婦にとって、残業や重労働による 身体的負担を強 いられることで更に身体的な ストレスが高くなったと推察される。
日本労働組合総連合会( 2 0 1 5 a ) の調査によ ると就労妊婦のうち流産・早産となった人 は 、 出産まで、順調で、あった人に比べて、「重たい物 を持ち上げる仕事が多かったJ i 立 ったまま仕 事をすることが多かった」 など肉体的 ・ 精神的 に負担が掛かっていた可能性 があるとの報告 がある。阿南( 2 0 1 0 ) によると、重労働や長時 間 の立位・同 一 姿勢,歩行状況などの就労状況 が妊娠 ・ 分娩, 出 生時に影響を及ぼす要因で あると 様々な先行研究で論考されているものの 実証性のある結果はまだ得 られていないのが 現状である。
一方で、 「 リプロダクティブヘノレス/ライツの侵 害J は切迫流産 ・ 早産との有意差が認められな
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かった。産後の妊娠期間、児の出生体重にお いては、マタ二テイハラスメント 被害の有無別 に 2群間で比較をしたところ、有意差は認められ なかった。これは就労状況や残業や重労働に よる労働負荷を詳細に調査し ていなかったこと が理由であると考えられる。また、本研究では 産後の分析対象者数が少なく、カテゴリー別 に分析で、きなかったため、今後は就労状況や 残業や重労働による労働負荷を詳細に評価し 、 マタニテイハラスメント被害別 に妊娠,分娩, 出 生児へ及ぼす影響を調査していく必要があ る 。
2 . マタニテイハラスメントの実態
本研究では、就労妊婦の 4 1 . 0% がマタニテ イハラスメント被害を受けていた。労働施策研 究 ・研修機構 ( 2 0 1 6 ) の調査では被害率は、 2 1 . 4% であり、本研究の結果は先行研究よりも高 い結果で、あった。
また、今回研究者が作成した被害内容の 1 4 項目は、被害内容に漏れがない様にするた めマタニティハラスメント に関するほぽ全ての 研究・調査から被害内容を抽 出しており、労働 施策研究・研修機構( 2 0 1 6 ) の調査では含まれ ていなかった 「働き l こ く し 、環境」の項目が本研 究では含まれている。また、妊娠中の職場環 境は、就労妊婦の健康にとって重要で、ある(山 中,冨岡, 2017) ことからも、「働きにくい環境J を 質問項目に含めている。本研究では、被害あ り群のうち 、「働きにくし、環境」の項 目に当ては まる者は 63.6% と高い結果で、あった。この理 由から、先行研究と比べて全体的に被害率が 引き上げられたと考えられる。真の意味で、のマ タニテイハラスメントの調査及び対策のために は、この 「 働き l こ く し 1 環 境」 を含めて論考してい くべきである。
本研究は初産婦のみを対象としていることも 先行研究と比べて被害率が高い理由の 1 っと して考えられる。マタニティハラスメントの研究・
調査において初産婦のみを対象にして被害 状況を明らかにした研究は、これまでには見当 たらない。
奈良看護紀要 V O L 1 5 . 2 0 1 9
経産婦は妊娠中に受ける職場での対応を 既に前回 の妊娠で経験しているため、 上 司や 同僚に迷惑が掛からな いように妊娠前 から仕 事の調整をする等、マタ ニテイハラスメントを受 けないよう対策を講じる こ とができる。 ま た、第 1 子出産年齢の平均は第 2 ・ 3子よりも低いため (内閣府, 2018) 、初産婦は社会経験が浅く職 場での立場が低いことが原因で、マタニティハラ スメントを受け やすくなると考える。
日本 労働組合総連合会( 2013) の調査によ ると、妊娠 ・ 出産に関して、 法律で権利が保護 されていることを知らないと回答した女性が過 半数で、あった。 山中,冨岡 ( 2 0 1 6 ) が、法制度の 理 解 不 足がマタニティハラスメントの認識不足 に繋がると述べている。初産婦は初 めての妊 娠 ・ 出 産であるこ とから経産婦よりも法制 度の 理解が不足している可能性がある。そのため、
妊娠中あるいは妊娠前からの女性に対して法 制度に関 する知識や理解の周知はマタ ニティ ノ¥ラスメント予防 ・抑制のために必 要不可欠で ある。労働施策研究・研修機構(2016) の報告 よると、男性はマタニティハラスメント の関心が 低いと推察されており、知識や理解の周知 は 、 事業主をはじめ とした労働者全体 にも徹底す べきである。
下山,塚本( 2018) によると 、 医療従事者の 6 2 . 5%(104 名 中 65 名)がマタニティ ・ ハラスメン ト に関連した相談を受けた経験があることから、
多くの医療 従 事者が相談者としての役割 を担 っている。そのため、現代の医療従事者は、法 律 や 制 度 を 十分に理解しておくと共に、就労 妊婦特有の心身の健康や就労状況及び環境 に耳を傾ける必要がある。 また 、就労妊婦によ って就労状況や被害の様態など置かれている 状 況が一様ではないことから、ケア ・ 保健 指 導 は個人の状況に対応していくことが求められて いると考える。
3 . 研究の限界と今後の課題
本研究におけるマタニテイハラスメントは被 害の有無でのみ評価 しているため、被害の回 数や重大さに関して評価 し 、 心理 ・ 身体的な
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健康への検討を重ねてして必要がある。
マタニテイハラスメントの研究は始まったば かりであるため、多角的な面からマタニティハラ スメントを捉え、研究をすすめていくべきであ る 。
V H .結 論
1.マタニテイハラスメントのうち特に 「 リプロダク ティブヘルス/ライツの侵害J が職業性の心理・
身 体 的な健康及び妊娠期の抑うつ状態及 び 妊娠悪阻に影響していた。
2 . 心身の健康と「雇用に関連する不当な扱い」
「働きにくし 1 環境」に有意差が認められた項 目 はなかった o
3 . 妊娠中にマタニテイハラスメント被害を受け たことによって、産後早期の抑うつ状態や妊娠 期間,児の出生体重 ,分娩様式に有意差は認 められなかった。
4 . 就労妊婦のうち 55名 ( 4 1 . 0%) がマタニティ ノ¥ラスメント被害を受けていた。カテゴリー別で は、「雇用に関連する不当な扱しリは 18 名 ( 3 2 . 7 %) 、 「 リ プロダクティブへノレス/ライツの侵害」
は 32 名 (58.9%) 、 「働き にくい環境 J は 35 名 ( 6 3.6%) が被害を受けていた。
謝 辞
本研究に際し、研究の趣旨をご理解いただ き、ご協力くださいました皆様に心より御礼申 し上げます。ならびに本研究に際し、ご指導を 賜りました石津美保子教授、演田薫教授、女 性健康・助産学専攻の先生方に心より感謝し、
たします。
なお、本研究は、奈良県立医科大学大学院 看護学研究科に 2019 年度提出した修士論文 の一部を加筆修正したものである。
本論文内容に関連する、研究者の利益相反 事項、 研 究資金はあり ません。
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