上越教育大学特別支援教育実践研究センター紀要,第16巻,49‑52,平成22年3月
第77回
特別支援教育実践研究センターセミナー報告
日 時 平成22年2月11日㈱ 祝 日
講 師 平揮紀子 (岐阜大学大学院教育学研究科准教授) 演 題 学校 における発達障害児の支援
一困った行動への対応か ら参加の支援へ 一 講演要 旨
1.学校 における発達障害児の支援
始めに、発達障害の支援 ネッ トワーク 「発達障害 とともに生 きる」の紹介があった。障害があ り困難があって も、丁寧 に教 えていけば様 々なことに自分の力が発揮で きるようになる。発 達障害の子 ども達の学 び、育 ちを支援 してい くことが、社会の 中で必要 となって きている。支援 して きたこと、 うま くいって きたことが、担任が替わると引 き継がれていかない とい う問題 点があ り、法律、制度 として学 びを保障 してい く必要がある。
2.参加の支援に向けて PositiveBehaviorSupport:PBS
発達障害児 を含むすべ ての児童生徒の学業、社会的能力、安 全 の促進 に向けて、見通 しを もって、 うま くで き、肯定的で 一貫 した結果が得 られる学校環境 の形成 を 目指すSchoolwide PBSの必要性が示 された (Hornereta1.,2005)。個 々の子 ども へのアプローチだけでな く、すべての子 どもを対象 に、学校、
園全体 を変 えるといった考え方が重要 となる。 また、予防 とい う視点 も大切であ り、問題行動 を示す子 どもだけでな く、すべ ての子 どものニーズに応 えることで、結果 として問題行動 を起 こさな くて済む ようになる。 この ような学校環境 をつ くりだす には、組織的な支援 を行 う学校 レベル、ユニバーサルな支援 を 行 う学級 レベル、個 々のニーズに応 じて支援 を行 う個人 レベル の3段 階に分 け られる。 それ も全体か ら個へ、個 か ら全体 を考 えてい く視点 とともに、教師が配慮す ることか ら始め,最終的 には子 ども自身が見通 しをもって対応す る力 を育む とい う方向 性が大切 になる。
これ らの支援 の基礎 となるのが、応用行動分析 における先行 状況 (A)、行動 (B)、結果 (C)か ら効果的 な支援 を考 える
ABC分析、機能的アセスメン トである。
3.学校 レベル :組織的な支援
管理職の リーダー シップ、特別支援教育 コーデ ィネー ターに よ り、「よい支援」の共有化 を行 い、学校全体 の支援力の向上 を図ってい く。校内研修 も発達障害の概要 についてなどのテー マか ら各学級の支援や成果 を共有 し、個 々の事例か ら皆が学び やすい環境 をつ くることが求め られている。組織的な支援の位 置づけ としては、①危機回避の対応、(参起 きた ときの対応、③ 根本的な対応、の3つがある。当座の問題 を避 けることだけで な く、根本的な対応 に進みたい。
また、小学校の通常学級の授業場面において、困った行動が 生 じやすい活動 と、生 じに くい活動 について明 らかに した調査 を行 った (平揮,2007)。教 師が困った行動が生 じやす い とし
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た活動 は、「概念で理解 し、考 える活動」「言葉の説明のみで行
う活動」 などであ り、生 じに くい とした活動 は 「好 きな行動」Jl
「自分のペースです る活動」な どであった。説明を聞 く、見 る だけでは学べ ない子 どもに、 自ら見通 しをもって行動 し、結果 を体験 で きるようにす ることが重要である。「だめ」だけで な く、「○○する」が分かって、で きることを支援 してい きたい。
4.学級 レベル :ユニバーサルな支援
学級全体が学びやす くなると、発達障害の子 ども達 も学 びや すい。ユニバーサルな支援、分か りやすい手がか りがあること で∴学級のすべての子 どもが学びやす くなる。支援の手だて と
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特別支援教育実践研究センターセミナー報告
して、見通 しが もてる状況、 どの ように行動すればよいかを教 え、肯定的な結果が一貫 して得 られることが重要である。
校内委員会において共有 した支援や教材例の紹介があった。
例 えば、 「休 み時間にで きること」 を示 した見通 しカー ドに よって、授業中の活動が促進 した。 これを、他の学級で も必要 な子 ども達に用いた。園においては、言葉でな く伝 える方法が 工夫 されてお り、例 えば 「ここにお くこと」を示す赤いマ ッ ト な ど、子 どもが見通 しを もって動 く手がか りとしてい くとよ
い。
教師がユニバーサルな支援 を実施す るこ とか ら進めて、子 ど も自身が教師に配慮 を求めることがで きるようになる姿 を描 く とよい。校内研修 を通 して、学校全体で情報 を共有 し、 どのよ うな支援や配慮 をすればよいのかなどが明確 になる。 これは、
学校全体の支援力の向上にもつながってい く。
る ・困った行動の生起場面 に関す る調査研究.平成17・18年 度科学研究費補助金 (基盤研究C)研究成果報告書.
Horneretal.(2005)Schoolwidepositivebehaviorsupport.In LM.Bambara&L Kern(Eds.),Individualizedsupports forstudentswithproblem behaviors:Designlngpositive behaviorplans.GuilfordPress.pp.359‑390.
5.個人の レベル :ニーズへの対応
事例検討会では、(丑問題 を整理す る (誰が何 に困 っている のか)、②子 どもの行動 を観察す る (困った行動が起 きる時 と 取 り組めている時のABC)、(彰子 どもの行動か ら支援 を考 える (どの ように行動すれば よいか を教 える)、④支援 を見届 ける (うま くい くコツを共有す る) といった 4段 階を行 ってい くこ とが望 ま しい。情報収集 には、時間割 な ども活用す る。③ で は、ABC分析 をもとに状況 を整理 して、本人に分か りやす く 伝 えてい く。 どの ような状況が苦手で、その状況で どのように ふるまった らよいか教 え、体験で きると、 自ら対応 してい くカ を育んでいける。
困った行動か ら教育的ニーズを読み解 くことが支援 を考える カギ となる。普段 は注 目されないのに、いたず らをすると注 目 される、す るといたず らは周囲の注 目を獲得す る有効な手段 と なってい く。 なぜその ような行動 をしているのかを考え、その 理由に応 じて支援 を考えてい く。 また、多様な状況で どの よう に行動 した らよいのかを教 えることが、本質的な支援 となる。
6.事例検討会 1
5で紹介 した事例検討会で行 う(丑〜④の流れについて、教職 大学院の演習で行 っている様子 をビデオ及び配布資料 「事例検 討のための行動理解支援 シー ト」 を元に した紹介があった。学 年主任役が、体育担当の教師の相談に応 じなが ら、支援 を考え てい くといった内容であっちO事例検討の中で、教師及び生徒 の困 り感 を明確 に していた。ABC分析 を行い、生徒 の 「な ぐ る」 と大声 を出す、パニ ックとい う問題行動の前後の行動 を整 理 した。 また、その ような問題行動 を起 こさなかった状況や対 応 を観察 したことで、問題 となる行動が起 きる状況 (苦手な状 況)が明確 になった。次に、苦手な状況 を教師が配慮す ること か ら、本人が 自ら対応で きる方向‑の支援策を考え、関わって いる教 師が見通 しをもって、支援で きるように した。教科担任 制など、多 くの先生がかかわる場合、問題行動 を糸口として、
その子のニーズを把接 し、子 どもが どの ようにすればよいかを 学びやす くしてい くことが重要である。
文献
平揮紀子 (2007)通常学級 における軽度発達障害児 の気 にな
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