*上越教育大学附属幼稚園 **自然・生活教育学系
大学生の自己制御機能と父母との信頼関係の関連
坂 地 由 菜 ・吉 澤 千 夏
(平成30年
8
月30日受付;平成30年11月1
日受理)要 旨
本研究は
,
大学生の自己制御機能形成と父母との信頼関係との関連を明らかにすることを目的とした。具体的には,
大 学生自身による自己制御機能の自己評価と父母それぞれとの信頼関係の評価を行い,
その関連について検討した。分析の 結果,以下のことが明らかになった。(1)対象者の性別による自己制御機能の評価では
,
男女間に多少の違いがみられるものの,
ほぼ同様の傾向がみられた。(2)母子
,
父子の信頼関係では,
それぞれ4
因子,3
因子が抽出されたことから,
父母との信頼関係には,
若干の違い があることが示唆された。(3)母親との信頼関係と自己制御機能との関連では,多くの項目で関連がみられるものの,特に母親に対する「思いや り
」
の意識が,
自己制御機能に大きな影響を与えていることが明らかになった。(4)父親との信頼関係と自己制御機能との関連では
,
およそ半数の項目間において関連がみられ,
特に父子間において「
信頼愛情」
を感じることが,
自己制御機能に影響を与えていた。一方で,
父親との信頼関係は,
自己制御機能の「
自己 主張」とは関連しないことが明らかになった。KEY WORDS
university students 大学生 , self-regulation 自己制御機能 , the trust for their parents 父母との信頼関係
1 緒言
自己制御機能とは , 自分の欲求や行動を抑制したり , 自分の意思を主張したりする等 , 行動の自律のために重要な 役割を果たすものである
(1)。自己制御機能を構成する自己抑制と自己主張の発達は , 幼児期から発達が始まるもので あり , 性別や年齢的発達に伴う相違等が認められている
(2)(3)。幼児期は , 子どもたちが社会性を獲得していく基礎と なる時期であり , 家族のみならず , 集団保育の場において保育者や友だちと出会い , 多様な人間関係を経験する中 で , 人とのかかわりを学ぶ時期であるといえる。その際 , 自己抑制ばかりが強い子どもであれば , 周囲の言動に従う ことが多くなり , 自身が本当にしたいことができなくなったり , 自らの興味関心に従い , それらを追求していくこと が難しくなったりするであろう。一方 , 自己主張ばかりが強い子どもであれば , 自分のやりたいことばかりを表出 し , 他者の主張を受け止めて自らを抑えることが難しくなり , 結果として , 周囲の友だちと仲良くすることが困難に なると考えられる。このことから , 自らを抑える自己抑制と自らの意思を表出する自己主張の 2 つの機能が相互に働 き , バランスを取りながら自己制御機能が発達していくことが求められる。
自己制御機能の形成については , 様々な視点から研究がなされている。例えば , 子どもの自己制御機能と母親の養 育態度との関係について , 母親の服従的 , 過保護 , 甘やかしといった養育態度は , 幼児の自己主張や思いやり行動の ようなポシティブな行動とは負の関係があることが明らかになっている
(4)。一方 , 父親の非難的養育態度が高いほ ど , 子どもの自己抑制は低い
(5)ことから , 母親 , 父親の養育態度が , 子どもの自己制御機能に対して異なる影響を与 えると考えられる。
また , 女子大学生を対象にした研究では , 母親に対する信頼の高さが娘の 「 自己抑制力 」 を高め , 信頼の低さが
「 自己主張力 」 を高めることが指摘されている
(6)。さらに , 母娘間の信頼関係は , 女子大学生の 「 情動抑制 」 を間接
的に高めることも示唆されている
(7)。このことから , 母娘間の信頼関係は , 自己制御機能の形成において重要な役割
を果たすといえる。しかし , これらの研究は母と娘という限定的な関係においてのみ明らかにされたものであり , 養
育者たる父親や養育される男子を含む親子間の信頼関係と子どもの自己制御機能との関連について明らかにされてい
ない。また , 女子大学生の 「 親和的情動表現 」 が , 母娘間の 「 信頼関係 」 を高め , 母親の 「 否定的情動表現 」 が母娘
間の 「 信頼関係 」 を低下させる
(8)こと , 先にも述べたように , 父母の養育態度が子どもの自己制御機能に異なる影響 を与えることが明らかにされていることから , 父親や男子大学生を対象に加えることにより , 大学生の自己制御機能 と母子・父子間の信頼関係との関連につい
て , 新たな知見を得られると考えられる。
そこで本研究は , 女子及び男子大学生を 対象に , 自己制御機能の自己評価と母子・
父子間の信頼関係に関する評価を行い , そ れらを基に , 大学生の自己制御機能の形成 と父母との信頼関係の関連を明らかにする ことを目的とする。
2 方法
2 . 1 調査対象
N県J大学に在学する学生234名である。
2 . 2 調査方法
2017年 5 月29日~ 6 月 5 日にweb調査を 実施する。
2 . 3 調査紙の構成
調査紙は , 以下の内容で構成されてい る。
①対象者の属性
対象者の性別 , 年齢等。
②子どもの自己制御機能に関する質問項 目
「 子どもの自己制御と自己主張を測定 するための質問紙・担任用 」
(9)の29項目
(表 1 )を用いて , 対象者が小学生の頃 の自己制御機能について自己評価を行 う。各項目について 「 そうだ 」「 ややそ うだ 」「 ややちがう 」「 ちがう 」 の 4 件法 で回答を求める。
③母子間・父子間の信頼関係に関する質 問項目
母子間・父子間の信頼関係について は ,「 母子の密着尺度 」
(10)をもとに作成さ れた母子間の信頼関係尺度20項目
(11)を母 用・父用のそれぞれに一部改変して用い る(表 2 )。各項目について 「 そうだ 」
「 ややそうだ 」「 どちらともいえない 」
「 ややちがう 」「 ちがう 」 の 5 件法で回 答を求める。
②③で得られたデータについては , それ ぞれの構成要素を捉えるために , 因子分析
表 1 子どもの自己制御と自己主張を測定するための質問紙・担任用
1.先生や友達の話を終わりまでしっかり聞く。2.嫌のことは,はっきり「いや」と言う。
3.してほしいこと,欲しいものをはっきり大人に頼む。
4.遊んでいるとき,きちんとルールを守れる。
5.少し失敗したりうまくいかないと,すぐに諦める。
6.他の人と意見が違っても,自分の意見を言う。
7.友達に意地悪をされたり,いやなことを言われたときに「やめて」と言う。
8.遊んでいるとき,ずるいことをした子に「だめ」と言う。
9.「してはいけない」と言われたことはしない。
10.遊びの時,自分の順番が来るまで待てる。
11.ひどい悪口を言われたり,からかわれたとき怒る。
12.自分の思ったことを,みんなの前でなかなか口に出して言えない。
13.けがをしたり,少しぐらい血が出たりしても泣かない。
14.人の物を勝手に触ったり,使ったりしない。
15.自分の席に座っている子にどいてほしい時,「どいて」と言う。
16.自分の使いたい遊び道具を,代わりばんこに使える。
17.自分の番に,誰かが割り込んできたとき「順番を抜かさないで」と言う。
18.時間がかかっても,最後まで頑張る。
19.進んで手を挙げて発表する。
20.人が話しているとき,退屈するとよそ見をしたり手遊びをする。
21.ほしいものがすぐに手に入らなくても,我慢できる。
22.入りたい遊びに,自分から「入れて」を言う。
23.やりたくないことでも,やらないといけないときはやる。
24.自分の物をとられたとき,「返して」と言う。
25.面白くなくても,終わりまで黙って人の話を聞く。
26.「あとにしなさい」と言われれば,待てる。
27.嫌なことを言われたりされたりしたとき,泣いたり黙ったりする。
28.難しいことでも,諦めずにやる。
29.人に聞かれたら,はきはき答える。
表 2 母子間・父子間の信頼関係の質問項目
1.母(父)が何かを探していたら私も一緒に探してあげる。2.私は母(父)の考えは,何となく分かっているように思う。
3.母(父)は,私のことを常に思ってくれている。
4.私は母(父)に叱られると悪いなと思う。
5.母(父)はその日に私が食べたいものをよく心得てくれている。
6.私は母(父)の顔を見ると何となく安心できる。
7.私が元気でなさそうであったら,私の母(父)は私を励ましてくれる。
8.私が考えていることを母(父)はよく知っている。
9.私は母(父)を失ったら生きる力をなくしてしまうと思う。
10.私は,母(父)の日や誕生日には,お祝いの挨拶をしたり何かプレゼント をすることがある。
11.私は母(父)を一人占めしたいと思うことがある。
12.学校から帰ったら母(父)がおやつを用意してくれていることがある。
13.私は母(父)に何かを頼まれたら断りづらい。
14.私は母(父)に学校であったことや,友達の話をよくする。
15.学校であった出来事や友達と話したことなどを母(父)は毎日聞いてくれる。
16.私は母(父)と何らかのコミュニケーションをとっている。
17.母(父)は私の友達のことをよく知っている。
18.私の部屋に母(父)が入ってきても別に気にならない。
19.私は小学校時代に母(父)と一緒にお風呂に入ることがよくあった。
法による因子分析を行ったのち , 累積説明率が50 % を超えた場合の因子数を特定し , 再度 , 最尤法・Promax回転に よる因子分析を行う。因子負荷数が絶対値0 . 30以上を示す項目の内容を参考に , 各因子を命名する。
本調査紙ではその他にも , 父母の情動表現に関する質問も行っている。しかし , 本稿ではその点については言及し ないため , これらの説明については省略する。
3 結果及び考察
3 . 1 対象者の年齢及び性別
対象者は234名であり , その内訳は女性111名(47 . 4 % ) , 男性123名(52 . 6 % )である。上記のうち , 小学生のころ 母親がいなかったと回答したものは 3 名(1 . 3 % ) , 父親がいなかったと回答したものは 8 名(3 . 4 % )であり , 小学 生のころに両親がともにいたと回答したのは , 223名(95 . 3 % )である。
3 . 2 対象者の自己制御機能について 3 . 2 . 1 性別による自己制御機能の様相
まず , 対象者の自己制御機能の様相を明らかにするために , 性別ごとに自己制御機能の平均値を求め , それらにつ いてt検定を行う。その結果 , 29項目中12項目において有意な差が認められる(表 3 )。有意な差がみられる12項目
表 3 男女別自己制御機能の質問項目への回答結果:平均値
(111名)女子 男子(123名) t検定
1.先生や友達に話を終わりまで,しっかり聞く。 3.41 3.21 t(232)=1.96
2.嫌なことは,はっきり「いや」と言う。 2.54 2.91 t(231)=2.97**
3.してほしいこと,欲しいものをはっきり大人に頼む。 2
.
62 2.
80 t(
232)
=1.
524.遊んでいるとき,きちんとルールを守れる。 3
.
54 3.
37 t(
232)
=1.
965.少し失敗をしたりうまくいかないと,すぐに諦める。 2
.
26 2.
38 t(
231)
=1.
01 6.他の人と意見が違っても,自分の意見を言う。 2.
74 2.
81 t(
232)
=0.
63 7.友達に意地悪をされたり,いやなことを言われたとき「やめて」と言う。 2.
76 3.
14 t(
232)
=3.
26**8.遊んでいるとき,ずるいことをした子に「だめ」と言う。 2
.
73 3.
06 t(
230)
=3.
04**9.「してはいけない」と言われたことはしない。 3.32 3.05 t(232)=2.33*
10.遊びの時,自分の順番が来るまで待てる。 3.84 3.60 t(210)=3.55**
11.ひどい悪口を言われたり,からかわれたとき怒る。 2
.
58 3.
02 t(
224)
=3.
79**12.自分の思ったことを,みんなの前でなかなか口に出して言えない。 2
.
50 2.
42 t(
232)
=0.
64 13.けがをしたり,少しぐらい血が出たりしても泣かない。 3.
28 3.
30 t(
232)
=0.
19 14.人の物を勝手に触ったり,使ったりしない。 3.
32 3.
16 t(
232)
=1.
48 15.自分の席に座っている子にどいてほしい時,「どいて」と言う。 2.
69 3.
02 t(
221)
=2.
60* 16.自分の使いたい遊び道具を,代わりばんこに使える。 3.67 3.51 t(232)=1.97*17.自分の番に,誰かが割り込んできたとき「順番を抜かさないで」と言う。 2.79 3.01 t(222)=1.78
18.時間がかかっても,最後まで頑張る。 3
.
34 3.
06 t(
231)
=2.
66**19.進んで手を挙げて発表する。 2
.
76 2.
93 t(
231)
=1.
2920.人が話しているとき。退屈するとよそ見をしたり手遊びをする。 2
.
50 2.
70 t(
231)
=1.
70 21.ほしいものがすぐに手に入らなくても,我慢できる。 3.
22 3.
01 t(
224)
=1.
94 22.入りたい遊びに,自分から「入れて」を言う。 2.
91 2.
99 t(
232)
=0.
70 23.やりたくないことでも,やらないといけないときはやる。 3.
49 3.
28 t(
232)
=2.
21*24.自分の物を取られたとき,「返して」と言う。 3.12 3.34 t(232)=2.28*
25.面白くなくても,終わりまで黙って人の話を聞く。 3.23 3.09 t(232)=1.39
26.「あとにしなさい」と言われれば,待てる。 3
.
33 3.
08 t(
232)
=2.
59*27.嫌なことを言われたりされたりしたとき,泣いたり黙ってしまったりする。 2
.
73 2.
60 t(
231)
=1.
00 28.難しいことでも,諦めずにやる。 3.
22 3.
07 t(
232)
=1.
35 29.人に聞かれたら,はきはき答える。 3.
04 3.
20 t(
232)
=1.
54…有意に高い項目
**…p<.01 *…p<.05
のうち , 男子よりも女子の方が平均値が高い項目は ,「『 してはいけない 』 と言われたことはしない 」「 遊びのとき , 自分の順番が来るまで待てる 」「 自分の使いたい遊び道具を , 代わりばんこにつかえる 」「 時間がかかっても最後まで 頑張る 」「 やりたくないことでも , やらないといけないときはやる 」「『 あとにしなさい 』 と言われれば , 待てる 」 の 6 項目である。一方 , 男子については , 有意な差がみられる12項目のうち女子よりも男子の方が平均値が高くなって いる項目は ,「 嫌なことは , はっきり 『 いや 』 と言う 」「 友達に意地悪をされたり , いやなことを言われたとき 『 やめ て 』 と言う 」「 遊んでいるとき , ずるいことをした子に 『 だめ 』 と言う 」「 ひどい悪口を言われたり , からかわれたと き怒る 」「 自分の席に座っている子にどいてほしい時 ,『 どいて 』 と言う 」「 自分のものを取られたとき ,『 返して 』 と 言う 」 の 6 項目である。このことから , 決められたルールを守ることについては男子よりも女子の方が , 何か自分に 嫌なことがあったときに 「 いやだ 」 という気持ちの表出は女子よりも男子の方が , 得意であるといえる。
性別毎の平均値には多少の差がみられるものの , 自己制御機能の平均値の高低についてはほぼ同様の傾向がみられ ることから , 以下の分析においては , 女・男を合わせて分析を行う。
3 . 2 . 2 自己制御機能の因子分析
自己抑制機能の構成要素を捉えるために , 上記の自己制御機能の29項目について因子分析を行う。その結果 ,5 つ の因子が得られる(表 4 )。第 1 因子は 「 遊びの時 , 自分の順番が来るまで待てる 」「 先生や友達の話を終わりまで しっかり聞く 」「 人の物を勝手に触ったり , 使ったりしない 」 のような項目が含まれる。これらは , ルールを守り , 自分がしたいことを抑制できることを示す項目であることから ,「 自己抑制 」 因子と命名する。第 2 因子は 「 自分の 物を取られたとき ,『 返して 』 と言う 」「 自分の番に , 誰かが割り込んできたとき 『 順番を抜かさないで 』 と言う 」
「 ひどい悪口を言われたり , からかわれたとき怒る 」 のような項目が含まれる。これらは自分に問題等が起こったと きに , その問題解決のために自分の気持ちを伝えることができる項目であることから ,「 問題対応力 」 因子と命名す る。第 3 因子は 「 嫌なことは ,
はっきり 『 いや 』 と言う 」「 他 の人と意見が違っても , 自分の 意見を言う 」 のような項目が含 まれる。これらは自分の意志を はっきりと伝えることができる 項目であることから ,「 自己主 張 」 因子と命名する。第 4 因子 は 「 難しいことでも , 諦めずに やる 」「 時間がかかっても , 最 後まで頑張る 」 のような項目が 含まれる。これらは最後まであ きらめずに頑張る , やり抜くと いうことを示す項目であること から ,「 辛抱強さ 」 因子と命名 する。
第 5 因子は , 因子を構成する 項目が 1 つしかないため , 本研 究では使用しない。
得られた 4 因子は ,「 自己抑 制 」 と 「 辛抱強さ 」 が 『 自己抑 制 』,「 問題対応力 」 と 「 自己主 張 」 が 『 自己主張 』 に関する因 子である。これは 「 自己制御機 能とは , 自己抑制と自己主張の 2 つの働きをもつ 」
(12)との結果 と 一 致 す る。 ま た ,『 自 己 抑 制 』『 自己主張 』 のいずれにつ
表 4 自己制御機能の因子と項目(因子負荷量の高い順)
【自己抑制】因子 因子負荷量
10.遊びの時,自分の順番が来るまで待てる。
.
6951.先生や友達の話を終わりまで,しっかり聞く。
.
630 14.人の物を勝手に触ったり,使ったりしない。.
628 4.遊んでいるとき,きちんとルールを守れる。.609
16.自分の使いたい遊び道具を代わりばんこの使える。.600
9.「してはいけない」と言われたことはしない。
.
59725.面白くなくても,終わりまで黙って人の話を聞く。
.
55426.「あとにしなさい」と言われれば,待てる。
.
45620.人が話しているとき,退屈するとよそ見をしたり手遊びをする。 -
.
344【問題対応力】因子 因子負荷量
24.自分のものを取られたとき,「返して」と言う。
.
755 17.自分の番に,誰かが割り込んできたとき「順番を抜かさないで」と言う。.729
11.ひどい悪口を言われたり,からかわれたとき怒る。.594
15.自分の席に座っている子にどいてほしい時,「どいて」と言う。
.
5438.遊んでいるとき,ずるいことをした子に「だめ」と言う。
.
49922.入りたい遊びに,自分から「入れて」を言う。
.
440【自己主張】因子 因子負荷量
2.嫌なことは,はっきり「いや」と言う。
.
657 12.自分の思ったことを,みんなの前でなかなか口に出して言えない。 -.
557 6.他の人と意見が違っても,自分の意見を言う。.528
7.友達に意地悪をされたり,嫌なことを言われたとき「やめて」と言う。.460
29.人に聞かれたら。はきはき答える。
.
39827.嫌なことを言われたりされたりしたとき,泣いたり黙ったりする。 -
.
3803.してほしいこと,欲しいものをはっきり大人に頼む。
.
376【辛抱強さ】因子 因子負荷量
28.難しいことでも,諦めずにやる。
.
88318.時間がかかっても,最後まで頑張る。
.
833 5.少し失敗したりうまくいかないと,すぐに諦める。 -.
462 23.やりたくないことでも,やらないといけないときはやる。.416
21.ほしいものがすぐに手に入らなくても,我慢できる。
.235
ら構成されることが明らかになる。
3 . 3 父母との信頼関係について 3 . 3 . 1 母子間・父子間の信頼関係
母子間・父子間の信頼関係の特徴を明らかにするために , 信頼関係に関する質問20項目
(13)について回答を求める。
回答結果については ,「 そうだ 」 を 5,「 ややそうだ 」 を 4,「 どちらともいえない 」 を 3,「 ややちがう 」 を 2,「 ち がう 」 を 1, と点数化し , 平均値を求める。中央値は3 . 0であり , 3 . 0より高いことは親子間の信頼関係が良好である ことを意味する。母子・父子間の信頼関係の平均値を示したものが表 5 である。
母親に対する回答をみると , 平均値が3 . 0以上を示したのは , 20項目中19項目である。このことから , 母子間の信 頼関係は良好であるといえる。 「 私は母を一人占めしたいと思うことがある 」 の平均値が3 . 0以下(2 . 55)となったの は , 母親との信頼関係が良好であるがゆえに , 一人占めする必然性を感じないからではないかと考えられる。
一方 , 父親に対する回答において平均値が3 . 0以上を示したのは , 20項目中15項目である。平均値が3 . 0以上である 項目は , 母親に比して父親の方が少ないものの ,7 割以上の項目において平均値が3 . 0以上となっていることから , 父子間の信頼関係も良好であるといえる。平均値が3 . 0に満たない項目は ,「 父はその日に私が食べたいものをよく心 得てくれている(2 . 94) 」「 私は父を一人占めしたいと思うことがある(2 . 22) 」「 学校から帰ったら父がおやつを用意 してくれていることがよくある(1 . 96) 」「 父は私の友達のことをよく知っている(2 . 87) 」「 外に出ているとき父と電 話で連絡を取ることがよくある(2 . 76) 」 の 5 項目であることから , 母親よりも父親の方が子どもの具体的な生活に かかわることが少ないと子どもに認識されていることが示唆される。
次に , 母子間 , 父子間の信頼関係にどのような特徴があるのかを明らかにするために信頼関係の平均値について母 子・父子間でt検定を行う。その結果 , 20項目のうち18項目に有意な差が認められ , 18項目すべてにおいて , 父子間 よりも母子間の方が平均値が有意に高い(表 4 )。このことから , 父子間よりも母子間の方がより信頼意識が高く , 相互の関係が良好であると考えられる。
一方父親は , 母親よりも平均値は低く , 母親と比べると父親への信頼関係の程度は比較的低いといえる。しかし , ほとんどの項目で平均値が3 . 0以上であり , さらに 「 私は父の考えは , 何となく分かっているように思う(3 . 62) 」
「 父は , 私のことを常に思ってくれている(4 . 22) 」 のように , 相互理解の項目の平均値が3 . 0よりも高いことから ,
表 5 母子・父子間の信頼関係
母 父 t検定
1.母(父)が何かを探していたら私も一緒に探してあげる。 4
.
16 4.
02 t(
222)
=2.
16* 2.私は母(父)の考えは,何となく分かっているように思う。 4.
10 3.
62 t(
220)
=5.
80**3.母(父)は,私のことを常に思ってくれている。 4.55 4.22 t(221)=5.30**
4.私は母(父)に叱られると悪いなあと思う。 4.15 4.00 t(222)=2.01*
5.母(父)はその日に私が食べたいものをよく心得てくれている。 3
.
88 2.
94 t(
222)
=9.
73**6.私は母(父)の顔を見ると何となく安心できる。 4
.
43 3.
86 t(
222)
=7.
31**7.私が元気でなさそうであったら,私の母(父)は私を励ましてくれる。 4
.
35 3.
89 t(
222)
=5.
56**8.私が考えていることを母(父)はよく知っている。 3
.
98 3.
30 t(
221)
=7.
92**9.私は母(父)を失ったら生きる力をなくしてしまうと思う。 3
.
96 3.
74 t(
222)
=3.
10**10.私が,母(父)の日や誕生日には,お祝いの挨拶をしたり何かプレゼントすることがある。 4
.
07 3.
68 t(
221)
=5.
72**11.私は母(父)を一人占めしたいと思うことがある。 2.55 2.22 t(222)=4.31**
12.学校から帰ったら母(父)がおやつを用意してくれていることがよくある。 3.04 1.96 t(222)=10.21**
13.私は母(父)に何かを頼まれたら断りづらい。 3
.
23 3.
32 t(
219)
=1.
0614.私は母(父)に学校であったことや,友達の話をよくする。 4
.
03 3.
09 t(
221)
=10.
79**15.学校であった出来事や友達と話したことなどを母(父)は毎日聞いてくれる。 4
.
11 3.
12 t(
222)
=10.
41**16.私は母(父)と何らかのコミュニケーションをとっている。 4
.
46 3.
53 t(
220)
=11.
21**17.母(父)は私の友達のことをよく知っている。 3
.
84 2.
87 t(
221)
=11.
15**18.私の部屋に母(父)が入ってきても別に気にならない。 3.94 3.47 t(220)=5.33**
19.私は小学校時代に母(父)と一緒にお風呂に入ることがよくあった。 3.17 3.18 t(222)=0.16
20.外に出ているときに母(父)と電話で連絡を取ることがよくある。 3
.
35 2.
76 t(
220)
=6.
28**…有意に高い項目
**…p<.01 *…p<.05
母子間と同様に , 父子相互の関係もおおよそ良好であることが推察される。
20項目のうち ,「 母・父に何か頼まれたら断りづらい 」 と 「 小学校時代に母・父と一緒にお風呂に入ることがよく あった 」 の 2 項目には有意差が認められない。前項目は ,「 親との信頼関係が築けているのでやりたくないことはや りたくないと主張できる 」 と考えるか ,「 親に気を使って断れない 」 と考えるかによって解釈が分かれるところであ ろう。一方 , 後項目については ,「 小学校時代 」 を 1 年生~ 6 年生までの何時を想起するか , さらに , 回答者の性別 と対象とする親の性別によって回答が難しい質問であるため , このような結果になったと考えられる。
3 . 3 . 2 母子間・父子間の信頼関係の因子分析 母子間・父子間の信頼関係の
構成要素を捉えるために , 前述 の20項目について因子分析を行 う。その結果 , 母親については 4 つの因子(表 6 )が , 父親に ついては 3 つの因子(表 7 )が 得られる。母親について , 第 1 因子は 「 母は , 私のことを常に 思ってくれている 」「 私は母の 顔を見ると何となく安心でき る 」「 私 が 元 気 で な さ そ う で あったら , 私の母は私を励まし てくれる 」 のような項目が含ま れる。これらは信頼があり , お 互いに理解しあい , 母親への愛 情を示す項目であることから ,
「 信頼愛情 」 因子と命名する。
第 2 因子は 「 私は母に学校で あったことや友達の話をよくす る 」「 学校であった出来事や友 達と話したことなどを母は毎日 聞いてくれる 」「 母は私の友達 のことをよく知っている 」 の項
目が含まれる。これらは , 日々のコミュニケーションにより , 母親が子どものことを理解していることを示す項目で あることから ,「 子ども理解 」 因子と命名する。第 3 因子は 「 私は母を一人占めしたいと思うことがある 」「 私は小学 校時代に母と一緒にお風呂に入ることがよくあった 」 のような項目が含まれる。これらは母親への依存を示す項目で あることから ,「 依存 」 因子と命名する。第 4 因子は 「 母が何かを探していたら私も一緒に探してあげる 」「 私は , 母 の日や誕生日には , お祝いの挨拶をしたり何かプレゼントをすることがある 」 の項目が含まれる。これらは母親のた めに何かしてあげるという項目であることから ,「 思いやり 」 因子と命名する。
一方 , 父親について , 第 1 因子は 「 父は , 私のことを常に思ってくれている 」「 私は父の顔を見ると何となく安心 できる 」「 私が元気でなさそうであったら , 私の父は私を励ましてくれる 」 のような項目が含まれる。これらは信頼 があり , お互いに理解しあい , 父への愛情を示す項目であり , 母子間の信頼関係の第 1 因子とほぼ同様の項目が含ま れていることから ,「 信頼愛情 」 因子と命名する。第 2 因子は 「 私は父に学校であったことや , 友達の話をよくす る 」「 学校であった出来事や友達と話したことなどを父は毎日聞いてくれる 」「 私は父と何らかのコミュニケーション をとっている 」 のような項目が含まれる。これらは父との間に豊かなコミュニケーションがあることを示す項目であ ることから ,「 意思疎通 」 因子と命名する。第 3 因子は 「 父はその日に私が食べたいものを心得てくれている 」「 学校 から帰ったら父がおやつを用意してくれていることがよくある 」「 私は父を一人占めしたいと思うことがある 」 のよ うな項目が含まれる。これらは父親に対して依存したり , 甘えたりすることを示す項目であることから ,「 依存と甘 え 」 因子と命名する。
母子間 , 父子間の信頼関係の因子をみると ,「 信頼愛情 」 は共通している。しかし母親との信頼関係においては 表 6 母子間の信頼関係の因子と項目(因子負荷量の高い順)
【信頼愛情】因子 因子負荷量
3.母は,私のことを常に思ってくれている。
.793
6.私は母の顔を見ると何となく安心できる。.789
7.私が元気でなさそうであったら,私の母は私を励ましてくれる。
.
7135.母はその日に私が食べたいものを心得てくれている。
.
6578.私が考えていることを母はよく知っている。
.
6404.私は母に叱られると悪いなあと思う。
.
564 16.私は母と何らかのコミュニケーションをとっている。.
523 2.私は母の考えは何となく分かっているように思う。.434
9.私は母を失ったら生きる力をなくしてしまうと思う。.365
18.私の部屋に母が入ってきても別に気にならない。
.
35812.学校から帰ったら母がおやつを用意してくれていることがよくあった。
.
217【子ども理解】因子 因子負荷量
14.私は母に学校であったことや,友達の話をよくする。 1
.
03215.学校であった出来事や友達と話したことなどを母は毎日聞いてくれる。
.
735 17.母は私の友達のことをよく知っている。.
561【依存】因子 因子負荷量
11.私は母を一人占めしたいと思うことがある。
.798
19.私は小学校時代に母と一緒にお風呂に入ることがよくあった。.312
13.私は母に何かを頼まれたら断りづらい。
.
29120.外に出ているとき母と電話で連絡を取ることがよくある。
.
280【思いやり】因子 因子負荷量
1.母が何かを探していたら私も一緒に探してあげる。
.
894 10.私は,母の日や誕生日には,お祝いの挨拶をしたり何かプレゼントをすることがある。
.
265身が受け止めていると考えられ る。一方で 「 意思疎通 」 につい ては , 父親との信頼関係での み , みられる。 「 意思疎通 」 に 含まれる項目をみると , 母親と の信頼関係因子としては 「 子ど も理解 」 に含まれるものに加 え ,「 私は父と何らかのコミュ ニケーションをとっている 」
「 私は小学校時代に父と一緒に お風呂に入ることがよくあっ た 」 の 2 項目が含まれる。つま り , 母親に対しては自分自身が 理解されている , または母親に 対する依存として解釈されてい る項目が , 父親に対しては 「 意 思疎通 」 の項目として解釈され ている。また , 母親に対しては
「 依存 」 のみであった信頼関係 の因子は , 父親に対しては 「 依 存 」 に加えて 「 甘え 」 と解釈可 能な項目が含まれる。このこと
から , 母親 , 父親とのかかわりを子どもが受け止める際には , それぞれ異なる解釈がなされていること , それが母 子・父子間の信頼関係の構成要素を異なるものにしていることが明らかになる。
3 . 4 母子間・父子間の信頼関係と自己制御機能の関連
対象者の母子間・父子間の信頼関係と自己制御機能の関連を明らかにするために , 上記で得られた因子間の相関分 析を用いて行う。
3 . 4 . 1 母子間の信頼関係と自己制御機能の関連
まず , 母子間の信頼関係と自己制御機能の因子間の相関の結果を表 8 に示す。 「 母子間の信頼関係 」 の 「 信頼愛 情 」 因子は ,「 自己制御機能 」 の 「 自己抑制 」「 問題対応力 」「 辛抱強さ 」 因子と 1% 水準の正の相関がみられる。 「 母 子間の信頼関係 」 の 「 子ども理解 」 因子は ,「 自己制御機能 」 の 「 自己抑制 」「 問題対応力 」 因子と 1% 水準 ,「 辛抱 強さ 」 因子と 5% 水準の正の相関がみられる。 「 母子間の信頼関係 」 の 「 依存 」 因子は ,「 自己制御機能 」 の 「 辛抱強 さ 」 因子と 1% 水準 ,「 自己抑制 」 因子と 5% 水準の正の相関がみられる。 「 母子間の信頼関係 」 の 「 思いやり 」 因子 は ,「 自己制御機能 」 のすべての因子と 1% 水準の正の相関がみられる。
次に , 相関の強さに着目すると ,「 母子間の信頼関係 」 の 「 信頼愛情 」 因子は ,「 自己制御機能 」 の 「 自己抑制 」
「 問題対応力 」「 辛抱強さ 」 の因子との間で弱い正の相関(|0 . 4|~|0 . 2|)を示している。このことから , 母親 への 「 信頼愛情 」 は , 子どもの 『 自己抑制 』 全般と 『 自己主張 』 の 「 問題対応力 」 を育む要因となることが示唆され る。
「 母子間の信頼関係 」 の 「 子ども理解 」 因子 は ,「 自己制御機能 」 の 「 自己抑制 」 と 「 問題対応 力 」 因子との間で弱い正の相関を示している。こ のことから , 母親から理解されていると感じるこ とは , 子どもがルールを守る等の自己をコント ロールする機能や問題に対して適宜 , 自己を主張 するような対応力を育む要因となると考えられる。
一方で ,「 子ども理解 」 因子と 「 自己制御機能 」 の
「 辛抱強さ 」 因子との相関は極めて弱い正の相関 であり , 母親からの理解は子どもの辛抱強さとの
表 7 父子間の信頼関係の因子と項目(因子負荷量の高い順)
【信頼愛情】因子 因子負荷量
3.父は,私の子ことを常に思ってくれている。
.
896 6.私は父の顔を見ると何となく安心できる。.
867 4.私は父に叱られると悪いなあと思う。.723
7.私が元気でなさそうであったら,私の父は私を励ましてくれる。
.654
9.私は父を失ったら生きる力をなくしてしまうと思う。
.
5431.父が何か探していたら私も一緒に探してあげる。
.
5422.私は父の考えは,何となく分かっているように思う
.
506 8.私が考えていることを父はよく知っている。.
474 18.私の部屋に父が入ってきても別に気にならない。.
324 10.私は,父の日や誕生日には,お祝いの挨拶をしたり何かプレゼントをすることがある。
.317
【意思疎通】因子 因子負荷量
14.私は父に学校であったことや,友達の話をよくする。
.
96815.学校であった出来事や,友達と話したことなどを父は毎日聞いてくれる。
.
85617.父は私の友達のことをよく知っている。
.
58016.私は父と何らかのコミュニケーションをとっている。
.
362 19.私は小学校時代に父と一緒にお風呂に入ることがよくあった。.
334【依存と甘え】因子 因子負荷量
5.父はその日に私が食べたいものを心得てくれている。
.735
12.学校から帰ったら父がおやつを用意してくれていることがよくある。.704
20.外に出ているとき父と電話で連絡を取ることがよくある。
.
62011.私は父を一人占めしたいと思うことがある。
.
55013.私は父に頼まれたら断りづらい。
.
161表 8 母子間の信頼関係と自己制御機能の相関
自己制御機能自己抑制 問題対応力 自己主張 辛抱強さ
母子間の信頼関係 信頼
愛情
.387
**.258
**.041 .316
**子ども理解
.
289**.
240**.
095.
142*依存
.
168*.
094 -.
030.
177**思いやり
.
291**.
374**.
260**.
324****…1%水準の相関 *…5%水準の相関
関連は極めて低いと考えられる。
「 母子間の信頼関係 」 の 「 依存 」 と 「 自己制御機能 」 の 「 自己抑制 」 と 「 辛抱強さ 」 因子との相関は , 極めて弱い 正の相関であることから , 母親への依存感情は子どもの自己制御機能との関連は極めて低いといえる。
「 母子間の信頼関係 」 の 「 思いやり 」 因子は ,「 自己制御機能 」 の 「 自己抑制 」「 問題対応力 」「 自己主張 」「 辛抱強 さ 」 のすべての因子との間で弱い正の相関を示している。このことから , 子どもの自己制御機能を形成には , 母親に 対する 「 思いやり 」 が大きく関係しているといえる。
以上のことから , 子どもの自己制御機能の形成には , 母子間の信頼関係が重要な意味を持つことが明らかになる。
特に母親に対する 「 思いやり 」 は , 子どもの自己制御機能のいずれとも関連がみられる。母親への 「 思いやり 」 は , 母親への信頼や愛情を感じ , それをポジティブなものとして母親に返すような意味を持つと考えられることから , そ のような気持ちを子どもが抱くに至るような母子間の信頼関係が , 子どもの自己制御機能を高めることが示唆され る。また , 自己制御機能の 「 自己主張 」 については ,「 思いやり 」 を除く 「 信頼愛情 」「 子ども理解 」「 依存 」 のいず れとも関連がみられないことから , 子どもの 「 自己主張 」 を高めるためには , 別の要因が存在することが推察され る。
3 . 4 . 2 父子間の信頼関係と自己制御機能の関連
次に , 父子間の信頼関係と自己制御機能の因子の相関分析の結果を表 9 に示す。
「 父子間の信頼関係 」 の 「 信頼愛情 」 因子は ,「 自己制御機能 」 の 「 自己抑制 」「 問題対応力 」「 辛抱強さ 」 因子と 1% 水準の正の相関がみられる。 「 父子間の信頼関係 」 の 「 意思疎通 」 因子は ,「 自己制御機能 」 の 「 問題対応力 」
「 辛抱強さ 」 因子と 1% 水準の正の相関がみられる。 「 父子間の信頼関係 」 の 「 依存と甘え 」 因子は ,「 自己制御機 能 」 の 「 問題対応力 」「 辛抱強さ 」 因子と 1% 水準の正の相関がみられる。
次に , 相関の強さに着目すると ,「 父子間の信頼関係 」 の 「 信頼愛情 」 因子は ,「 自己制御機能 」 の 「 自己抑制 」
「 問題対応力 」「 辛抱強さ 」 因子との間で弱い正の相関を示している。このことから , 母親と同様に父親への 「 信頼 愛情 」 は , 子どもの 『 自己抑制 』 全般と 『 自己主張 』 の 「 問題対応力 」 を育む要因となることが示唆される。
「 父子間の信頼関係 」 の 「 意思疎通 」 因子は ,「 自己制御機能 」 の 「 問題対応力 」 因子との間で弱い正の相関を示 している。このことから , 父親とのコミュニケーションの充実は , 子どもが問題に対して適宜 , 自己を主張するよう な対応力を育む要因となると考えられる。一方で ,「 辛抱強さ 」 に対しては極めて弱い相関しかみられないことか ら ,「 父子間の信頼関係 」 の 「 意思疎通 」 因子は , 子どもの 「 辛抱強さ 」 との関連は極めて低いといえる。
「 父子間の信頼関係 」 の 「 依存と甘え 」 因子は ,「 自己制御機能 」 の 「 辛抱強さ 」 因子との間で弱い正の相関を示 している。このことから , 父親に対する十分な依存や甘えは , 一方では子ども自身の辛抱強さを助長する役割を果た すことが示唆される。一方で ,「 問題対応力 」 に対しては極めて弱い相関しかみられないことから ,「 父子間の信頼関 係 」 の 「 依存と甘え 」 因子は , 子どもの 「 問題対応力 」 との関連は極めて低いといえる。
このことから , 子どもの自己制御機能の形成に は , 母親と同様 , 父子間の信頼関係が重要な意味 を持つといえる。特に自己制御機能の 「 問題対応 力 」「 辛抱強さ 」 は父子間の信頼関係のいずれの因 子とも関連がみられることから , 父親との良好な 関係は , 子どもが問題に適宜対応したり , 問題に 立ち向かっていく強さを育むことが示唆される。
一方 , 自己制御機能の 「 自己主張 」 では , 父子間 の信頼関係のいずれの因子とも関連がみられない ことから , 子どもの 「 自己主張 」 を高める別の要 因が存在することが推察される。
母子間と父子間の信頼関係と子どもの自己制御機能について比べてみると , 母子間 , 父子間の信頼関係が , 自己制 御機能の 「 問題対応力 」「 辛抱強さ 」 を高める一方で ,「 自己主張 」 とは関連がない , または弱いことが明らかにな る。その一方で ,「 自己抑制 」 については , 母子間の信頼関係との関連が一定以上ある一方で , 父子間の信頼関係で は 「 信頼愛情 」 のみとの関連しかみられない。以上のことから , 母子間と父子間の信頼関係が子どもの自己制御機能 の形成に対して果たす役割は異なることが明らかになる。
表 9 父子間の信頼関係と自己制御機能の相関
自己制御機能自己抑制 問題対応力 自己主張 辛抱強さ
父子間の信頼関係
信頼愛情
.294
**.206
**.030 .262
**意思疎通
.121 .244
**.086 .176
**依存と甘え
.095 .144
**.045 .240
****…1%水準の相関 *…5%水準の相関
4 おわりに
本研究は , 大学生の自己制御機能形成と父母との信頼関係の関連を明らかにすることを目的とし , 大学生自身によ る自己制御機能及び父母との信頼関係の評価を行い , その関連について検討したものである。分析の結果から , 母子 間の信頼関係と父子間の信頼関係では , 子どもの自己制御機能形成に及ぼす影響が異なることが明らかになった。親 子間の信頼関係は親の情動スタイルとの関係が指摘されている
(14)ことから , 子どもの自己制御機能の形成には , 親の 情動スタイルが関連していることが想定される。そこで今後は , 子どもの自己制御機能の形成について , 母子間 , 父 子間の信頼関係に加えて , 母親 , 父親の情動表現スタイルとの関連についても分析を行い , 子どもの 『 自己抑制 』
『 自己主張 』 力の育ちと親子関係との関連を多角的な視点で明らかにするとともに ,「 技術・家庭 」 等における 「 保 育 」 教育・学習等に寄与するデータを提供することが求められる。
なお , 本研究の一部は , 平成29年度上越教育大学卒業研究(坂地由菜)において , 発表されている。
本研究にご協力くださいました皆さまに心より感謝申し上げます。
引用文献
(1)森下正康(2016) 24章 幼児期
「
新・発達心理学ハンドブック」,
福村出版,
271-
282.
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「
自己」
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(3)森下正康(2002) 幼児期の自己制御機能の発達(4)園と家庭における縦断的研究:和歌山大学教育学部紀要 教育科学 52,1-12.
(4)戸田須恵子(2006) 母親の養育態度と幼児の自己制御機能及び社会的行動との関係について:釧路論集 : 北海道教育大 学釧路分校研究報告 38
,
59-
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(5)尾崎康子
,
小野由香利(2006) 幼児期における自己制御機能発達に及ぼす父母の養育態度の影響:教育実践研究(2),
39-
44.
(6)森下正康
,
藤村あずさ(2013) 小学生の頃の養育者からの言葉かけが女子大学生の自己制御機能の発達に与える影響:京都女子大学発達教育学部紀要(9)
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(7)森下正康,吉岡紗希(2015) 中学時代の母子関係ときょうだい関係の特徴が自己制御機能の発達に与える影響:京都女 子大学発達教育学部紀要 (11), 109-118
(8)森下正康
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福井えがお(2014) 母親の情動表現スタイルが女子大学生の情動表現スタイルと自尊感情や自立心に与える 影響 : 母子の信頼関係を媒介として:発達教育学研究 : 京都女子大学大学院発達教育学研究科博士後期課程研究紀要(
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30.
(9)森下正康(2001) 幼児期の自己制御機能の発達
(
3)
: 父親と母親の態度パターンが幼児にどのような影響を与えるか:和 歌山大学教育学部教育実践総合センター紀要 11,
87-
100.
(10)藤田達雄(2003) 思秋期前の妻の孤独感と母子密着に関する研究─夫婦仲の良さと夫の仕事中心主義との関係に着目し て─:名古屋短期大学研究紀要,41,75-87.
(11)前掲(8)
(12)前掲(2)
(13)前掲(11)
(14)前掲(8)
* Kindergarten Attached to Joetsu University of Education ** Natural and Living Science
The relation between university students’ self-regulation and trust of their parents.
Yuna S AKAJI*・Chinatsu Y OSHIZAWA**
ABSTRACT
This research clarified relations between university students’ formation of self-regulation and their trust of their fathers and mothers. Specifically, university students themselves evaluated their self-regulation. Results of the analysis are as follows:
1.Although evaluation of self-regulation according to gender revealed some differences between men and women, the tendency was nearly the same.
2.through factor analysis, four factors were extracted in trust for mothers and three in trust for fathers, suggesting a slight difference between maternal and paternal trust relationships.
3.Relationships between university students’ trust for their mothers and self-regulation were related to many items.
Clearly, mothers’ consciousness of “compassion,” in particular, greatly influenced university students’ self-regulation.
4.Relationships between university students’ trust for their fathers and self-regulation were related in about half the items.
In particular, “reliance and affection” between fathers and children affected university students’ self-regulation. Clearly, on the other hand, the paternal trust relationship was not related to university students’ self-assertion of the self-control function.