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宮崎県高千穂,日之影町付近の地質巡検会

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Academic year: 2021

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(1)

「巡検会報告」

宮崎県高千穂,日之影町付近の地質巡検会

1 . は じ め に

標記の巡検会が平成18年8月10日から12 日 の 3 日 間 に わ た り , 熊 本 大 学 の 渡 遥 一 徳 先 生・田中均先生の案内の下,参加者22名で 行 わ れ た . 今 回 の 巡 検 会 の 目 的 は 主 に 宮 崎 県の高千穂峡,大崩山火山一深成複合岩体,

見 立 喋 岩 , メ ガ ロ ド ン 石 灰 岩 の 観 察 で あ っ た.巡検ルートと観察地点を図‑1に示す.

初日(10日)は,予定通り熊本大学を8時 3 0 分 に 出 発 し , 正 午 前 に 宮 崎 県 の 高 千 穂 に 到 着 し , 昼 食 を と っ た . 午 後 か ら , 高 千 穂 峡 の 地 質 , 日 之 影 町 戸 川 付 近 の 花 尚 斑 岩 の 岩 脈 , 飯 干 付 近 の バ ソ リ ス 花 樹 岩 を 観 察 し た . 予 定 よ り 早 く 宿 泊 施 設 ( リ フ レ ッ シ ュ ハ ウス出羽)に到着した.

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2日目(11日)は,五葉岳山頂付近と祖母 山 ・ 傾 山 付 近 の 2 グ ル ー プ に 別 れ 行 動 す る 予 定だったが,別行動をせず2地点とも一緒に 行 動 し た . 午 前 中 は 五 葉 岳 山 頂 付 近 の メ ガ ロ ド ン 石 灰 岩 , 見 立 喋 岩 隅 を 観 察 し た . 正 午一度宿泊施設に戻り昼食をとった後,午 後から祖母山・傾山付近の調査を行い溶結凝 灰 岩 , 流 紋 岩 を 観 察 し た . こ の 日 は ほ ぼ 予 定通り宿泊施設に到着した.

3日目(12日)は,午前中に木浦鉱山資料 館 を 訪 れ , そ の 後 稲 積 水 中 鍾 乳 洞 を 観 察 し た . 大 分 県 大 野 郡 緒 方 町 の 原 尻 の 滝 を 観 察 し , 竹 田 付 近 で 昼 食 を と っ た . そ の 後 , 熊 本大学へ帰着し解散した.

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図 − 1 巡 検 ル ー ト と 観 察 地 点

(国土地理院発行.20万分ノ1地勢図「大分」「延岡」を使用】

1)熊本大学教育学研究科

(2)

2 . 各 観 察 地 点 の 報 告

①高千穂峡

宮 崎 県 の 高 千 穂 町 高 千 穂 峡 は , 阿 蘇 火 砕 流 (Aso‑3,Aso‑4)の溶結凝灰岩が谷を埋めた 台 地 の 上 に 位 置 し て い る . こ の 火 砕 流 台 地 を 五 ヶ 瀬 川 が 削 り こ ん で 作 っ た の が 高 千 穂 峡 で あ る . 溶 結 凝 灰 岩 が 柱 状 節 理 の 節 理 面 に 沿 っ て 崩 落 す る た め , 峡 谷 の 両 岸 は 垂 直 に 切 り 立 った絶壁(写真‑1)になっている.大略,遊 歩道のレベルより高い部分の河谷壁はAso‑4 火 砕 流 堆 積 物 で , 遊 歩 道 お よ び そ れ よ り 低 い 部分はAso‑3火砕流堆積物で構成されている Aso‑3,Aso‑4共に溶結しており,柱状節理が 顕 著 に 見 ら れ る . 柱 状 節 理 は 冷 却 面 に 対 し て 垂直にできるため,岩体の底から上へ,表面か ら 下 へ と 伸 び て い っ て い る 様 子 が 確 認 で き る.

脈 の 南 西 部 に あ た る , こ こ 日 之 影 町 戸 川 岳 西 方 で は , 環 状 岩 脈 の 両 側 で 仏 像 構 造 線 が ず れ て お り , 環 状 岩 脈 の 内 側 が 下 降 し て い る と 考 え ら れ て い る . 戸 川 付 近 で 日 之 影 川 に 降りるとマグマの貫入面(写真−2)が見られ た . ま た , こ こ で は 堆 積 層 が 接 触 変 成 作 用 に よ り ホ ル ン フ ェ ル ス 化 し て い た .

*)大崩山火山一深成複合岩体

大 崩 山 火 山 一 深 成 複 合 岩 体 は 宮 崎 一 大 分 両 県 に ま た が る 九 州 山 地 東 部 の 大 崩 山 を 中 心 と し た 地 域 に あ る . こ の 岩 体 は 祖 母 山 ・ 傾 山 の 火 山 岩 類 と そ れ ら に 密 接 に 関 連 し て 貫 入 し た 花 尚 岩 質 岩 体 群 か ら な り , 基 盤 は 秩 父 累 帯・四万十累帯北帯の構成岩類である(図−2).

花 樹 岩 質 岩 類 は バ ソ リ ス 状 〜 岩 株 状 岩 体 ・ 岩 脈 で , 見 立 磯 岩 層 に も 貫 入 し て い る .

ま た , 大 崩 山 花 尚 岩 体 は , 古 期 花 尚 岩 類 と新期花尚岩類とに分けられ,前者は花樹 閃 緑 岩 , 花 樹 斑 岩 か ら , 後 者 は 花 尚 閃 緑 岩 , 花尚岩からなる.これらの花両岩体は,秩父 帯 , 四 万 十 帯 の 地 層 に 接 触 変 成 作 用 を 与 え て お り , 花 樹 岩 体 を 取 り 巻 い て ホ ル ン フ ェ ル ス が 分 布 す る . こ の 花 尚 岩 体 は , そ の 周 囲 に 花 尚 閃 緑 斑 岩 , 花 尚 斑 岩 か ら な る 岩 脈 を 伴う.この中で,大崩山花尚岩体を取り囲む 環 状 岩 脈 は , 全 体 と し て み る と 西 北 西 一 東 南 東 の 方 向 に 延 び た い び つ な 楕 円 形 の よ う な 形 を し て お り , 一 部 は 大 分 県 側 に 露 出 す る .

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写 真 − 1 高 千 穂 峡 ( 五 ヶ 瀬 ) に 見 ら れ る Aso‑3の柱状節理

②戸川付近の花樹斑岩の岩脈

宮 崎 県 日 之 影 町 戸 川 付 近 の 花 樹 斑 岩 の 岩 脈 を観察した.宮崎県北部の大崩山火I」」−探 成複合岩体鄭)の環状岩脈は,秩父帯.四万十 帯 の 頁 岩 , 砂 岩 を 貫 い て い る . 環 状 の 割 れ 目 から大量の溶岩・火砕流が噴出した後に,地 下 に マ グ マ の 抜 け た 空 間 が で き , そ れ よ り 上 側 の 部 分 が 円 筒 状 の 断 層 に 沿 っ て 落 ち 込 む と , コ ー ル ド ロ ン と い う 陥 没 構 造 が で き る . こ の 時 , そ の 円 筒 状 の 断 層 に 沿 っ て マ グ マ が 貫 入 し た も の が , 環 状 岩 脈 で あ る . 環 状 岩

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図 − 2 大 崩 山 火 山 一 深 成 複 合 岩 体 の 地 質 図

(山本・高橋,1992)

(3)

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写真−2戸川付近,花嵐岩斑岩の岩脈観察の様子

③飯干付近のバソリス花尚岩

宮崎県西臼杵郡日之影町飯干付近でバソリ ス花尚岩を観察した.バソリスとは,深成 岩体の形のひとつである.一般的に露出面 積100平方キロメートル以上のものをいう.

直径500キロ以上に及ぶものもある.ただし ひとつの岩体ではなく,たくさんの貫入岩 体から成っており,花商岩またはそれに近 い形成の岩石で成っている.今回の巡検で 確認したおもな岩体は大崩山バソリス状岩体 で,日之影川中流域の飯干・藤河内・尾平・

上畑などもふくめ9つあまりの岩体が分布し ている.ここ周辺一帯では,マグマが地球 深部から上昇し地表へ噴出するまでの間のど こかで 捕獲され運び上げられた岩石,捕 獲岩(ゼノリス)(写真−3)も数多く観察す

ることができた.

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写真−3バソリス花陶岩にとりこまれた捕獲岩

(ゼノリス)

④メガロドン石灰岩

五葉岳山頂へと険しい道を登っていく途中 道から少しはずれた場所に巨大なメガロドン 石灰岩塊(写真−4)を観察することができた.

メガロドン石灰岩は2億2千万年から 億 9千万年前の中生代三畳紀に栄えた巨大な二 枚貝で,九州から北海道の付加帯の石灰岩 から報告されている.その名の通り二枚貝 のかみ合わせ部分である歯が非常に大きく、

殻の厚さも異常なほどである.熱帯の海に ある火山島周辺のサンゴ礁で囲まれたラグー ン(サンゴ礁湖)に生息していたと考えられ,

石灰岩は生物の死骸であることを考えると,

もともとこの地が海底であったことが分か

る .

日本では1981年に熊本県の球磨川の河原 で発見されている.南の海に生息していた 貝の化石がこのような山の中に存在するとい

うことは地球の形成史について(プレート運 動)の証拠になる重要な化石である.

ちなみにメガロは「大きい」,ドンは「歯」

という意味で,大きい物では30センチにも 達する.これだけの規模の岩塊が発見され ることは非常にまれで貴重とのことだった.

周辺で一時間程度調査を行ったところ,他 にも多くのメガロドン石灰岩が見つかった.

写真−4巨大なメガロドン石灰岩塊

(4)

⑤ 見 立 際 岩 層

五 葉 岳 山 頂 に 至 る 稜 線 付 近 で 見 立 磯 岩 層 ( 写 真 − 5 ) を 観 察 し た . 見 立 層 は 宮 崎 ・ 大 分 県 境 の 傾 山 の 南 部 付 近 の 秩 父 累 帯 〜 四 万 十 累 帯 に 分 布 し て い る . 中 新 世 の 深 成 岩 類 の 接 触 変 成 作 用 を 受 け ホ ル ン フ ェ ル ス 化 し て お り , 層 厚 は 200m〜400m以上とされている.磯種は 多 様 で , 堆 積 岩 類 ・ 深 成 岩 類 ・ 変 成 岩 類 か ら な る . 岩 相 は お も に 磯 岩 か ら な り , と き に 砂 岩 ・ 泥 質 岩 , ま れ に 凝 灰 岩 〜 凝 灰 質 砂 岩 ・ 泥 質 岩 を と も な う . マ ト リ ッ ク ス は 円 牒 ・ 砂 岩 質 . 牒 径 は お も に 直 径 1 0 〜 2 0 c m で , と き に 3 0 c m 以 上 の も の も 見 ら れ た . こ の よ う な 山 頂 で ど う し て こ の よ う な 磯 岩 層 が 見 ら れ る の か 非 常 に 興 味 深 か っ た .

⑥ , ⑦ 祖 母 山 ・ 傾 山 付 近 の 溶 結 凝 灰 岩 ・ 流 紋 岩 の 観 察

祖 母 山 ・ 傾 山 は , 宮 崎 県 西 臼 杵 郡 高 千 穂 町 と 大 分 県 豊 後 大 野 市 , 竹 田 市 に ま た が る 標 高 1 7 0 0 m ほ ど の 山 で あ る . 2 回 の 火 山 活 動 期 に よ っ て 祖 母 山 系 の 基 礎 と な る 山 地 が 形 成 さ れ た と さ れ る .

1 回 目 の 火 山 活 動 は 約 1 3 0 0 万 年 前 , 火 砕 流 を 伴 う 火 山 活 動 が 始 ま り 2 つ の コ ー ル ド ロ ン ( 祖 母 カ ル デ ラ と 傾 カ ル デ ラ ) を 形 成 し た . こ の 時 出 来 た 2 つ の カ ル デ ラ は 2 回 目 の 火 山 活 動 に よ り 埋 め 尽 く さ れ 現 在 カ ル デ ラ を 目 視 す る こ と は 出 来 な い . 約 1 2 9 0 万 年 前 , 再 び コ ー ル ド ロ ン の 動 き が 始 ま り こ の 時 鉱 山 の 形 成 が 行 わ れ た と さ れ て い る . 約 1 0 0 0 万 年 前 に 火 山 活 動 は 終 了 し た . 侵 食 に よ り 準 平 原 に な っ た 後 , 3 0 0 万 年 前 に 隆 起 し , 現 在 の 祖 母 山 の 姿 と な っ た ・ こ こ 祖 母 山 ・ 傾 山 付 近 で は 溶 結 凝 灰 岩

(⑥地点)・流紋岩(⑦地点)(写真−6)

を 観 察 し た . 溶 結 凝 灰 岩 は , 高 温 の 火 砕 流 堆 積 物 が 自 分 自 身 の 熱 と 重 み で く

つ つ い た も の で あ る た め , 堆 積 面 に 平 行 に 軽 石 が ぺ し ゃ ん こ に つ ぶ れ , 火 山 ガ ラ ス の レ ン ズ に な っ て い る . ユ ー タ キ シ テ ィ ッ ク 構 造 と い う . ま た , こ こ で 見 ら れ る 流 紋 岩 は 無 斑 晶 質 流 紋 岩 と 言 わ れ て い る が , 一 部 に は 溶 結 凝 灰 岩

と 思 わ れ る 転 石 が 見 ら れ た .

写 真 − 5 見 立 際 岩 層 ( 五 葉 岳 ) 観 察 の 様 子 騒癖簿

写 真 − 6 無 斑 晶 質 流 紋 岩

⑧ 木 浦 鉱 山 資 料 館 観 察

大 分 県 佐 伯 市 宇 目 大 字 に あ る 木 浦 鉱

山 資 料 館 ( 写 真 − 7 ) を 訪 れ た . こ こ で

は 多 く の 岩 石 や 鉱 物 を 見 る こ と が で き

た . 祖 母 ・ 傾 山 地 域 に は , ホ ル ン フ ェ

ル ス 化 や ス カ ル ン 化 を 受 け た 変 質 岩 石

が 分 布 す る が , こ れ は 花 尚 岩 の マ グ マ

の 貫 入 時 の 熱 の 影 響 で あ り , さ ら に ス

ズ , 鉛 , 亜 鉛 な ど の 金 属 鉱 床 が 生 成 さ

(5)

れ,かつては鉱床の採掘が行われた.

大崩山を中心としたこの岩体が分布す る宮崎一大分両県にまたがる祖母山一 傾山地域は,尾平鉱床区と呼ばれ,日 本でも有数な鉱床密集地域である.

写 真 − 7 木 浦 鉱 山 資 料 館 観 察 の 様 子

⑨ 稲 積 水 中 鍾 乳 洞

大分県豊後大野市三重町中津留にあ る稲積水中鍾乳洞(写真−8)を訪れた.

稲積水中鍾乳洞は,3億年前の古生代 に形成され,9万年前の阿蘇火砕流が 谷を埋没させたことにより水没し,現 在の形を形成した.洞の長さ1000m, 高さ40m,水深70mは日本一であり,洞 内には水中鍾乳石や珊瑚石,水没時の 激しく渦巻く水流の痕跡としてできた ベ ル ホ ー ル , 重 力 を 無 視 し た よ う に 曲 が っ て 成 長 す る 管 状 の 結 晶 へ リ ク タ イ ト な ど が 数 多 く 見 ら れ る . 世 界 的 に も珍しい水中鍾乳洞である.

⑩原尻の滝(図−1には記していない)

大 分 県 大 野 郡 緒 方 町 に あ る 原 尻 の 滝,,(写真−9)を訪れた.ここは日本 の 滝 百 選 に 選 ば れ て い る . 大 野 川 か ら 支流の緒方川にかけて滝幅120m,落差 20mで,直渥(分岐爆)型の名爆である.

滝の岩壁はAso‑4の溶結凝灰岩から構 成 さ れ て い た . 緩 や か な U 字 型 の カ ー ブを描く岩壁の間を,幾筋もの分岐濠

となって,水は滝壷に森音をとどろか せ な が ら 落 下 し て い る .

写 真 − 8 稲 積 水 中 鍾 乳 洞

写 真 − 9 原 尻 の 滝

3 . お わ り に

今回,検会に参加し,宮崎県の地形.

地 質 に つ い て 考 え さ せ ら れ た . 様 々

な地形から多くの地質情報を読み取る

こ と が で き る こ と を 体 感 さ せ て い た だ

き,大変勉強になった.地学分野にお

い て は , 自 分 の 足 で 歩 き , 自 分 の 目 で

実物を見るということが重要であると

再 認 識 さ せ ら れ た 巡 検 会 で あ っ た .

最後に猛暑の中3日間にわたって,渡

遥 一 徳 先 生 ・ 田 中 均 先 生 に は , そ れ ぞ

れ の 分 野 か ら 懇 切 丁 寧 に ご 案 内 . ご 説

明 頂 い た . 先 生 方 に 深 く 感 謝 の 意 を

表し,巡検会の報告とする.

参照

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