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Academic year: 2021

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(1)

高含水率 W/O 型エマルションを用いた氷スラリーの生成

(効率的過冷却解消方法の検討)

Formation of ice slurry by using W/O emulsion with higher water content (Discussion on efficient dissolution of supercooling)

精密工学専攻 21号 榮一騎

Kazuki Sakae

1.緒 言

ダイナミック型氷蓄熱システムは熱負過追従性に優れ,冷 熱の搬送も容易である等利点が多い,2反面,氷生成時の凝 固点降下及び運搬時の壁面氷結等の問題点がある.著者らは これらの問題点を解決するためにW/O型エマルション(以下,

エマルション)を用いて研究を進めてきた3).エマルションを 用いることで,前述の問題点に関しては非常に有利な蓄熱材 であることを明らかにしたが,一方でエマルションは従来の 蓄熱材に比べて過冷却解消速度が極めて遅いという特徴を 有することが明らかとなった.著者らは,エマルションの過 冷却解消速度を向上させるため,電圧印加及び超音波照射を 用いて効率的な過冷却解消方法について検討した.

2.

実験装置及び実験方法

本研究で使用するW/O型エマルション(以下エマルショ ンと記す)の生成装置と組成をそれぞれFig.1Table1に示 す.以後それぞれの組成は水と油の体積比で示す.Fig.1は,

攪拌機・恒温槽・製氷容器から構成され,製氷容器には2ℓ,内

径約130mmPMP(ポリメチルペンテン)容器を用いた.温度

測定は白金測温抵抗体を用い,容器の壁面から15mm,そし て容器の底面から60mmの位置の温度を2箇所測定した.

2.1エマルションの過冷却解消特性

 エマルションの過冷却解時の温度履歴の一例をFig.2に示 す.Fig.2 より,エマルションの過冷却解消は水に比べて多 くの時間を要することがわかる.A点で氷核を投入し,温度が 上昇し始めたB点を過冷却解消開始点とし,温度が0.0℃(エ マルションの凝固温度)になったC点を過冷却終了点とした.

2.2電圧印加+氷核による過冷却解消実験

 一般にエマルションに電圧を印加すると,エマルションが 解離することが知られている.エマルションが解離するメカ ニズムは主に2つある.一つは,分散相が電場内に置かれる

Table1 Composition of W/O type Emulsions

Tap Water 990ml 880ml 770ml

Silicone Oil 110ml 220ml 330ml

Additive 10ml 10ml 10ml

Ratio of Water to Oil 9:1 8:2 7:3 (Additive is Amino Group Modified Silicone Oil)

0 1000 2000

-4 -2 0 2 4

A B

C

Time(sec)

Tem p er atu re( ℃ )

A: Throwing time of ice nucleus B: Start of dissolution of supercooling C: End of dissolution of supercooling

Emulsion(7:3) Water

Fig.2 Comparison of temperature variation of W/O emulsion with that of water

ことによって粒子間の相互引力が働きエマルションがされ る場合.そして,分散相粒子が電場の影響によって変形し最 終的に解離に至る場合である.分散相の粒子径が小さい場合 には前者が,大きい場合には後者のメカニズムが支配的にな 4).本研究ではこの現象を利用して,エマルションの一部 を解離させ過冷却解消効率を向上させる方法について検討 した.以下,実験方法を述べる.

過冷却解消を発生させる方法として電圧印加+氷核を用い た場合と,電圧印加を行わず氷核のみを投入した場合の過冷 却解消効率の比較を行った.実験はFig.1に示す装置を用い てエマルションを冷却し,エマルションの温度が 0.0℃にな った時点で0.1mlの氷核を投入する.氷核投入直後にFig.3 に示す電極板をエマルション内にすばやく挿入し,電圧を印 加する.このときの氷核投入位置及び電極板の挿入位置は同 じで,それらをFig.4に示す.また,電極板の形状は縦200mm

×横 10mm×厚さ 3mm のアルミ製平板で,電極間距離は

12mmとした.電圧印加時間は過冷却解消終了までとし,過 冷却解消終了と共に電極をエマルションから引き抜く.実験 Table1の各組成ごとに30回ずつ行った.

Stirrer D.C. power supply

Emulsion Electrode

Thermostat

Fig.1 Experimental apparatus

(2)

2.3超音波を用いた過冷却解消実験

 キャビテーションは液体に減圧力を加えたとき空洞が生じる 現象である.一般に液体中には気体分子が溶け込み分散してい るため,その液体中に強力な超音波を照射すると,液体中に真 空の空洞が発生し,液体中の気体を取り込んで気泡となる.こ の気泡には圧縮力が働きすぐに消滅する.消滅する際に,気泡 を取り囲んでいた液体同士が衝突するため,液中に強い衝撃波 が生じる6)

 過冷却状態の水は衝撃によって過冷却解消を起こすため,本 研究ではキャビテーションによる衝撃波を用いてエマルション の過冷却解消を検討した.ただし,エマルションに超音波を照 射するとエマルションが相転移してしまうことがあるため,相 転移を最小限に抑え,かつ過冷却解消効率の良い,最適な超音 波照射強度・時間を検討する必要がある.以下,実験方法を述 べる.

2.2と同様の装置と手順でエマルションを-1.0℃まで冷却し,

所定の温度に到達後に攪拌を止める.攪拌を中止した後,超音 波発生装置を用いてエマルション界面に超音波を照射する.こ こで超音波照射位置は容器中心とし,照射時間は1秒とした.

一定時間経過後に,超音波の照射を終了し,再び攪拌を開始す る.用いた超音波発生装置の概略図を Fig.5 に示す.超音波発 生装置には周波数20kHz,振幅1~40μmのものを用いた.

2.4 電圧印加のみによる過冷却解消実験

 宝積ら 5)は,過冷却状態の超純水に電場を付与した場合の水 の過冷却解消のメカニズムを解明することに成功した.それに よれば,水の過冷却解消は,電極から溶解したイオンが錯イオ ンを形成することが原因であり,形成された錯イオンのO-O 子間距離が氷のO-O原子間距離と近くなれば解消確率が上がる と報告されている.しかし,電極に使用する金属によっては,

水の電気分解によって不動態を形成するものもあり,過冷却解 消確率は原子間距離のみに依存するものではない.

 また,2.2で述べたようにW/O型エマルションに電圧を印加 した場合,エマルションは解離することが報告されている.こ れらの報告をうけて,本研究では電圧印加によってエマルショ ンの一部を解離させ,その電圧を利用して解離させた部分の過 冷却解消を行う方法について検討した.実験方法を以下に示す.

Fig.1の装置を用いてエマルションを生成する.この際,使用

する水には純水を用いた.エマルションが所定の温度に到達し た時点で一度攪拌を止め,電極の中心が容器壁面から35mm つ平板電極が容器底面に接触する位置に電極を挿入し電圧を印 加する.一定時間経過後,電極を取り外して再び攪拌する.こ こで,用いた電極の形状をFig.6~Fig.8に示す.Fig.6は,解離用 電極であるアルミ平板と解消用電極であるアルミ針柱が一体に なったもので,電圧を印加した場合,平板と針柱に同時に電圧 がかかる.Fig.7は,解消用電極のみであるが解消部分からも解

離は進行する.但し,解離の程度はFig.6に比べて微小である.

Fig.8 は解離用電極と解消用電極が切り替えスイッチによって

分けられている.又,用いた電極材質はAlとし,すべての電極 で針柱電極の電極間距離は約0.3mm,印加電圧は250Vとした.

Thermometer 15mm

On the emulsion Fig.4 Position of the electrodes

Ultrasonic homogenizer

Fig.5 Experimental apparatus

Insulator

φ4 Electrodes

200m

16mm

20mm 0.3mm

Fig.6 Shape of electrodes (a)

Electrodes 12mm 4mm

200mm

4mm 0.3mm

3mm 10mm

Fig.7 Shape of electrodes (b) Fig.3 Shape of the electrodes

(3)

Switch

3.結果と考察

3.1製氷時の電圧印加実験

始めに,最適な電圧を特定するために0〜250Vの間で電圧 を変えて,その時のエマルションの最大過冷度を測定した.

実験試料には組成比 7:3 エマルションを用い,その結果を

Fig.9 に示す.グラフは縦軸を最大過冷度,横軸を印加電圧

としたが,60V以降は最大過冷度の変化はほとんど見られな かった.また,60V以上では壁面氷結を起こすことがあった ため,以後の実験の印加電圧は50Vとした.

エマルションの過冷却解消は確率の問題であるため7),各 条件で30回ずつ実験を行い過冷却解消に要する時間と最大 過冷度を測定・検討した.検討にあたり,過冷却解消に要す る時間を氷核投入から過冷却解消開始までと過冷却解消開 始から終了までの時間に分けた.組成比7:38:2のそれぞ れの結果を,Figs.10,11及びFigs.13,14にそれぞれ示す.また、

組成比7:38:2の最大過冷度をそれぞれFigs.12,15に示す.

Figs.10,13 に示されるように過冷却解消開始までの時間は組

成比7:38:2共に電圧を印加することで著しく短くなってい ることがわかる. 電圧印加によってエマルションを解離さ せると,水が凝集し分散径が大きくなる.そのため,氷核と 分散相の接触確率が増加するので,過冷却の解消確率が上昇 し,過冷却解消開始までの時間が短縮されたと考えられる.

Figs.11,14 の過冷却解消開始から終了までの時間も電圧印加

によって短縮されている.またFigs.12,15に示されるように,

電圧を印加することで最大過冷度も小さくすることが可能 となった.これは組成比が同じ場合,エマルションの冷却速 度はほぼ一定であり,電圧印加によって過冷却解消開始まで の時間が著しく短くなるため,最大過冷度も著しく小さくな ったと考えられる.

組成比7:38:2で結果を比べると,電圧印加を行った場 合,すべての結果で大きな差は見られなかった.これは電圧 印加によりエマルションの粘性が低下することで,氷核のみ を投入する場合に見られる各組成の過冷却解消特性が打ち 消されたことが原因であると考えられる.

3.2超音波を用いた過冷却解消実験

 超音波照射による過冷却解消効率を確認するため3.1と同 様の評価方法を用いた.実験には組成比7:3を用い,超音波 照射時間を1s,照射時温度を-1.0℃,振幅を36μmで固定 した.30 回実験を行い氷核投入(0.0℃で投入)のみの実験と の比較,検討を行う.結果をFig.16~18に示す. Fig.16は超 音波照射から過冷却解消開始までに要した時間である.超音波 を照射した場合,過冷却解消は瞬時に発生

する.これはキャビテーションの衝撃によるものだと考えられ

0 1 2

Maximum supercooling degree (℃)

Voltage(V)

50 100 150 200

Electrodes

5mm 16mm

Fig.9 Relationship of voltage to maximum supercooling degree (7:3)

20mm 0.3mm

Fig.8 Shape of electrodes (c)

Fig.10 Probability from throwing ice nucleus to start of dissolution of supercooling(7:3)

0 20 40 60 80 100

Time(min)

Probability(%)

0〜5 5〜10 10〜15 15〜20

Ice nucleus+Voltage Ice nucleus

0 20 40 60 80 100

Maximum degree of supercooling()

Probability(%)

0〜0.5 0.5〜1.0 1.0〜1.5 1.5〜2.0 2.0〜2.5 2.5〜3.0 Ice nucleus+Voltage Ice nucleus

Fig.12 Probability of maximum supercooling degree(7:3)

0 20 40 60 80 100

Time(min)

Probability(%)

0〜5 5〜10 10〜15 15〜20 20〜25 Ice nucleus+Voltage Ice nucleus

Fig.11 Probability from start of dissolution of supercooling to end (7:3)

0 20 40 60 80 100

Time(min)

Probability(%)

0〜5 5〜10 10〜15 15〜20 20〜25 Ice nucleus+Voltage Ice nucleus

Fig.13 Probability from throwing ice nucleus to start of dissolution of supercooling(8:2)

(4)

る.Fig.17は過冷却解消開始から終了までの時間を示している.

超音波を照射した場合,すべての実験で5分以内に過冷却解 消は終了している.これは,氷核投入に比べて超音波照射は過 冷却解消開始時の製氷量が多いためその後の製氷速度は速く,

製氷による潜熱の放出により凝固点に戻る速度が増すと考えら れる.

  Fig.18は最大過冷度を示したものである.超音波照射の場合,

照射直後に過冷却解消が発生するため,すべての実験で照射温 度である-1.0℃付近で過冷却が解消した.

3.3電圧印加のみによる過冷却解消実験

  Fig.6~8に示した電極の過冷却解消結果をTable2に示す.

Table2 に示される温度は電極を挿入する際のエマルション

の温度であり,時間は電圧印加時間である.Electrodes c 電圧印加時間は,例えば(2/3)と表記された場合,始めに示さ れる2は解消用電極を用いた時間を,後ろに示される3は解 離用電極を用いた時間をそれぞれ表す.また,実験試料には 7:3を用い,すべての実験で印加電圧は250Vとした.実験 は各2回ずつ行い,一度も解消しなかった条件を×,1回解 消した条件を△,2回とも解消した条件を○で表した.

 電極挿入温度が 0.0℃の場合,すべての電極で過冷却解消 を起こすことはなかったが,-2.0℃の場合,すべての電極で 過冷却解消が発生した.又,-1.0℃の場合,電圧印加時間を 5分とするとすべての電極で過冷却解消は起こらなかったが,

10分にすると電極aと電極cにおいて過冷却解消が発生し た.これらの結果より,電極の解消効率は電極bが低く,電 aと電極cが同程度であると考えられる.

4.

結論

a)電圧印加+氷核を用いることで過冷却解消効率を上昇させ ることが出来た.

b)電圧印加のみでエマルションの過冷却を解消させること に成功した.

c)エマルションに超音波を照射することで過冷却解消を発生 させることが出来た.

Table2 Conditions of dissolution of supercooling -0.0℃ -1.0℃ -2.0℃

5 × ×

Electrodes

a 10 ×

5 × ×

Electrodes

b 10 × ×

5(2/3) × ×

Electrodes

c 10分(5/5) ×

参考文献

1)  相 沢 直 樹 ,  谷 野 正 幸 ,  小 沢 由 行 : 冷 空 論 , 18(1) , 61‑72(2001). 

2) 稲 葉 英 夫 , 宮 原 里 支 , 武 谷 健 吾 : 機 論 ,B,61(589), 3296(1995).

3) 松本浩二, 及川健, 岡田昌志,寺岡喜和, 川越哲男:冷空 論,22(3),237‑247(2005).

4) P.SHERMAN: Emulsion science (1968),pp67-72 5) 宝積勉,斉藤彬夫,大河誠司,渡辺和治:冷空論,19(2),

181-187(2002)

6) 超音波工業会  はじめての超音波 (2004),pp37-39 7) 松本浩二,及川健:伝熱シンポ,Vol.,667(2003) 0

20 40 60 80 100

0〜5 5〜10 20〜30 30〜40 40〜50 50〜60 Time(min)

Probability(%)

Ice nucleus+Voltage Ice nucleus

Fig.14 Probability from start of dissolution of supercooling to end (8:2)

0 20 40 60 80 100

Maximum degree of supercooling(℃)

Probability(%)

0〜0.5 0.5〜1.0 1.0〜1.5 1.5〜2.0 2.0〜2.5 2.5〜3.0 Ice nucleus+Voltage Ice nucleus

Fig.15 Probability of maximum supercooling degree(8:2)

0 20 40 60 80 100

Maximum degree of supercooling(℃)

Probability(%)

0〜0.5 0.5〜1.0 1.0〜1.5 1.5〜2.0 2.0〜2.5 2.5〜3.0 Ultrasonic(-1.0℃) Ice nucleus(0.0℃) 0

20 40 60 80 100

Time(min)

Probability(%)

0〜5 5〜10 10〜15 15〜20

Ultrasonic (-1.0℃) Ice nucleus (0.0℃)

Fig.16 Probability from irradiating ultrasonic to start of dissolution of supercooling7:3

0 20 40 60 80 100

Time(min)

Probability(%)

0〜5 5〜10 10〜15 15〜20 20〜25 Ultrasonic (-1.0℃) Ice nucleus (0.0℃)

Fig.17 Probability from start of dissolution of supercooling to end (7:3)

Fig.18 Probability of maximum supercooling degree(7:3)

参照

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