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オイラー方程式の数値解

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Academic year: 2021

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(1)

オイラー方程式の数値解

Numerical solution of Euler equation

物理学専攻 宮崎巧也

Department of physics Miyazaki Takuya

完全流体については,オイラー方程式で記述される.この方程式の解が有限時間内に無 くなるかどうかという疑問が数学者,物理学者の間で現在も存在する.つまり,物理量の 時間発展を追跡した場合,この物理量が有限時間内に発散するのではないか,という疑問 が未に残っている.しかし,この方程式は強い非線形性を持っていて,一般にその解析解 を求めるのは困難である.そのため,解を求めるには数値計算を用いる.この研究を始め た動機について述べておく。4次元のナヴィエ=ストークス方程式(以後簡単のために

NS

方程式と略記する)のシミュレーション

[1],[2]

、から分かっていることは、(1)3次元と 同様にエネルギーカスケードが起こる、(2)波数空間でのエネルギー輸送は3次元より速 いということであった。3次元

NS

方程式では渦糸同士の衝突とつなぎ変えがエネルギー 散逸を増加させることが確かめられている

[3]

。4次元で散逸がより大きいのは衝突の頻度 がより大きいことを意味するが,特異構造のトポロジーはどうであろうか?粘性のないオ イラー方程式で、衝突後の解の継続的な存在が困難視されることから、特異構造の衝突の 効果はもっと重要になるであろう。そのため3次元と4次元のオイラー方程式の解の振る 舞いと特異構造のトポロジーを比較検討することは、オイラー方程式の解の発散の問題の 解明に役立つ。オイラー方程式で記述される非粘性流体では滑らかな速度場から出発して も、方程式の移流項が大きなスケールの揺らぎを小さなスケールに輸送するので、特徴的 な長さスケール

l(t)

は時間と共に減少するであろう.

l(t)

は指数的にしか減少しないのか、

それとも有限時間でゼロになるのか。オイラー方程式ではエネルギーは保存されるから、

代表的な速度の大きさ

u

0 は一定のままであるが、その空間微分は

u

0

/l(t)

のようにスケー ルされるので、任意の次元で定義される速度場の

2-form

である

ij

= ∂u

j

∂x

i

− ∂u

i

∂x

j

の振幅が時間と共にどのように増大するかが研究対象になる

[4]

。通常は

ij の2乗である

2

= Σ

ij

2ij

で定義されたエンストロフィーの時間発展が調べられる。

Morf

[5]

Taylor-Green

れの初期場に対して,

2

(t)

を時間のベキ級数で求めて、その発散の具合を調べた。

Kerr [6]

は互いに接近する反対向きの渦度を持つ2本の渦糸系が発散に導くことを示し、

Pelz

[7]

は対称性の高い

Taylor-Green

流れを初期場として発散を確かめた。

Ohkitani

[8]

Burgers

渦を拡張したモデル方程式の数値解析により有限時間の発散を確かめた。もし発

散が起こるとすれば、その原因はなにか。渦がストレインによって引き伸ばされて、渦度 が増大するのは一つの原因である。あるいは反対の極性を持つ特異構造が衝突を起こし、

速度の空間的勾配が増大するメカニズムも原因と考えられる。もし粘性があれば、渦のつ なぎかえが起こるが、粘性がなければそのようなことが起こらずに破局を迎えるだろう。

ここでオイラー方程式と

NS

方程式での特異構造のトポロジーの違いについて述べておく 必要がある。3次元では

Kelvin-Helmholtz

不安定によりシート状の渦が巻き上がる。粘性 がなければシートはますます巻き込まれ、大きなスケールで眺めれば、それは線状に見え るであろう。粘性があれば、シート間の速度勾配が大きくなり、粘性の効果でそれらは均 されて線になる。ある程度のスケールで眺めれば、粘性があろうとなかろうと構造は同じ 線状であると考えられ、我々の行った3次元でのオイラー方程式と

NS

方程式の渦度の可

(2)

視化もその描像を支持している。微小スケールでの構造の同定は

NS

方程式における方が 易しい。なぜならオイラー方程式では最小スケールがメッシュサイズよりも小さくなると、

微細構造に悪影響が現れ、その同定が難しいからである。

NS

方程式では乱流が減衰して しまわない限り微細構造は安定に存在し続ける。4章で述べる特異構造のトポロジーの同 定は、粘性の小さな高レイノルズ数の

NS

方程式のものとオイラー方程式のそれとは同じ であると仮定し、

NS

方程式のシミュレーションの結果に基づいている。

4章では4次元乱流の特異構造のトポロジーについて議論している.特異構造の繋ぎ換 えが時空間で起こる条件は、空間次元

d

と特異構造の次元

d

s とすれば、

2(d

s

+ 1) ≥ d + 1

である。発達した3次元古典乱流では特異構造は渦糸

(d

s

= 1)

であるので、この条件が辛 うじて満たされる。もし4次元で

d

s

= 1

なら、繋ぎ換えは起こらず、流れは乱流にならな い。4次元の特異構造の次元はいくらであろうか。本研究では、

(1)

渦度の一般化である

2-form Ω

ij

= ∂u

j

/∂x

i

− ∂u

i

/∂x

jの可視化、

(2)

ij

2ij

, Ω

212の一般化次元、

(3)

ストレイ ンテンソルの固有値の分布、を調べることにより、4次元の特異構造の次元は

2

であるこ とを確かめた。まず

128

4のシミュレーションで、

ρ =

ij

2ij の可視化を行った。第4の 座標

x

4を固定した3次元空間での構造は、3次元乱流の渦糸構造とよく似て、ライン構造 が見られる。

x

4を変えても、構造が徐々に変わるだけなので、4次元の特異構造はシート 状であることを示している。次にマルチフラクタル解析を用いて

ρ

の一般化次元

D

qとそ の1個の成分

212の一般化次元

D ˜

qを調べた。レイノルズ数が低いので、右図のように大 きな

q

でほぼ

2.7

程度でシートの次元

2

より少し大きい。同じレイノルズ数の3次元乱流 と比べて、右図のように4次元乱流の一般化次元は3次元のそれプラス1であることが確 かめられた。発達した3次元乱流の特異構造は線であるので、4次元では面であることと 一致している。ストレインテンソルの固有値分布は2伸張1圧縮を示しており、1伸長1 圧縮のライン構造を持つ3次元乱流と比べることにより、4次元はシート構造であること を示唆する。以上,4次元乱流の特異構造はシートであり、特異構造のつなぎかえは起こ り、乱流は実現されることが確認できた。

5章ではオイラー方程式の数値解について議論している.オイラー方程式において、有 限時間で特徴的なスケール

l(t)

がゼロになり、エンストロフィーが発散するかどうかは流 体力学で最も重要な問題の一つである。

DNS

でオイラー方程式を扱う際の問題点は、特徴 的な長さ

l(t)

がメッシュサイズより小さくなってしまうことである。それに対処する通常の 方法では、エンストロフィーを時間のベキ級数で展開してその発散の具合を調べる

[1]

。本 報告ではエンストロフィーをメッシュサイズを取り入れたスケーリング関数で表し、発散 の問題を調べた。本研究では、エネルギースペクトルの

n

次モーメント

n

=

E(k)k

n

dk

のうち、

2 に注目する。典型的な速度を

u

0、スケールを

l(t)

、メッシュサイズを

a

とすれ ば、

2

(t) = u

20

/l(t)

2

f (a/l(t))

と表される。

u

20

= Ω

0を代入すれば、規格化されたエンス トロフィー

R(t) = Ω

2

/Ω

0

R(t) = 1 l(t)

2

f

a

l(t)

(1)

のようにスケーリング関数

f

を用いて、

l(t), a

だけで表される。

a → 0

の極限では、

R(t) ∼

l(t)

2のような振る舞いが期待される。ほぼ同じ初期速度場から出発した種々のメッシュ数

N = 32

3

, 64

3

, 128

3

, 256

3

, 512

3 での

R(t)

をプロットすると,カットオフの影響で飽和して いくが,

N → ∞

での振舞いは,それらの曲線群の包絡線であり、下に凸である。明らかに 包絡線は指数関数より速いので、

R(t)

は指数関数より速く増大することは確かである。

l(t)

の振る舞いの定量的な評価を得るためには、

(1)

R(t)/a

2

= (a/l(t))

2

f (a/l(t)) = g(a/l(t))

と書き換えると、

R(t)/a

2は唯一の変数

a/l(t)

の関数値である。

l(t) = l

0

(t

− t)

nと置く ことにより、3個のデータセットから

n, t

を決定することが出来る。その結果を図2に掲 げる。どのようなデータセットを用いても、ある時間の後、

n, t

共に一定の値になるはず

(3)

1:

3次元に於ける各時刻の

n, t

である。図1を見ると,数値計算で得られた

n, t

k

0

u

0

t = 1.0 ∼ 2.0

の区間で一定であ る.この事は導入したスケーリング関数がうまく機能している証拠である.

結論をまとめると,4次元乱流の特異構造がシート状であること,それに伴い,4次元 乱流では特異構造の衝突頻度が3次元よりも高いことが分かった.また,オイラー方程式 でエンストロフィー

2の時間発展を追跡したところ4次元の方が速く増大する傾向を観 測できた.2次元は点状,3次元は線状,4次元は面状の特異構造を持つことから帰納的 に考えれば,特異構造の次元

d

sと乱流の次元

d

の間に

d

s

= d − 2

という関係が成り立つ 事を予測できるが5次元では満たされているであろうか?それに伴い,次元を増やして行 けば

2は,より速く増大することが予想できるが実際はどうであろうか?本研究では3 次元,4次元に注目したが偶数次元は奇数次元と違い,非粘性不変量が無限個存在するた め,系に何らかの束縛を与えている可能性もあり,今後5次元乱流を詳しく調べ3次元乱 流と比較することでより平等な比較が可能となるであろう.

また

2のメッシュ幅依存性を考慮したモデルにより,メッシュ幅

a

0

の極限での振る 舞いを予測した.先行の研究で

δ(t)

がメッシュ幅に到達するまでの時刻(本研究で言う所

k

0

u

0

t = 0.63

)までしか扱えていなかった.しかし,本研究ではカットオフの影響(飽和

の具合)を取り入れることで

δ(t)

がメッシュ幅に到達した後の時刻の

n,t

を得ることが出 来た.

k

0

u

0

t = 1.0

k

0

u

0

t = 2.0

の間では本研究で導出したスケーリング則が成り立って おり,先行研究と本研究は相補的な関係にある.

t

については4次元で

k

0

u

0

t

= 1.9

であ り,3次元の

k

0

u

0

t

= 2.8

と比べると発散時刻

t

が早い事がわかった.これは4次元の方 が3次元に比べ特異構造が接近する頻度が高い事を示しておりトポロジーで行った考察と 矛盾しない.また

n

については4次元では

n = 0.58

と読み取れるが3次元の

n = 0.62

近い値となった.今後の発展のために改善すべき点を述べると,本研究で用いたメッシュ 数では

n

t

は時間的に僅かに揺らいでおり,極小での

n, t

の値を信頼しても良いのか?

という疑問が残る.この揺らぎの原因がオイラー方程式の性質なのか,数値計算の精度の せいなのか,現段階では分からない.そのため今後,単純な1つのベキで記述できない可 能性も視野に入れ,更に大規模な計算で同様の解析を行なう必要がある.4次元に関して は3次元と同じサイズで解析を行い両者を比較する必要がある.また,本研究に限った話 では無いが

DNS

で非粘性不変量が保存している時間は初期からほんの僅かな時間だけで

(4)

あるため,その影響を評価するには更なる一様等方性が必要となり,その意味でも大規模 計算は欠かせない.

参考文献

[1] E. Suzuki, T. Nakano, N. Takahashi, and T. Gotoh, Phys. Fluids 17 , 081702 (2005).

[2] T. Gotoh, Y. Watanabe, Y. Shiga, T. Nakano, and E. Suzuki, Phys. Rev. E 75 , 016310 (2007)

[3] M.E. Brachet, D. Meiron, S.A. Orszag, R.H. Morf, and U. Frisch, J. Fluid Mech.

130 , 411-452 (1983).

[4] T. Beal, T. Kato, and A. Majda, Commun. Math. Phys. 94 , 61 (1984).

[5] R.H. Morf, S.A. Orszag, and U. Frisch, Phys. Rev. Lett. 44 , 572 (1980).

[6] R.M. Kerr, Phys. Fluids A 5 , 1725 (1993).

[7] R.B. Pelz and Y. Gulak, Phys. Rev. Lett. 79 , 4998 (1997).

[8] K. Ohkitani and J.D. Gibbon, Phys. Fluids 12 , 3181 (2000).

[9] B.A. Khesin and Yu.V. Chekanov, Physica D 40 (1989) 119-131 [10] J.C. McWilliams, J. Fluid Mech. 146 , 21 (1984).

[11] T. Miyazaki, W. Kubo, Y. Shiga, T. Nakano, and T. Gotoh, submitted to Physica D (2008).

[12] H.G.E. Hentschel and I. Procaccia, Physica D 8 , 435 (1983).

[13] T.C. Halsey, M.H. Jensen, L.P. Kadanoff, I. Procaccia, and B.I. Shraiman, Phys.

Rev. A 33 , 1141 (1986).

[14] A. Vincent and M. Meneguzzi. The spatial structure and statistical properties of homogeneous turbulence. J. Fulid. Mech. 225 , 1 (1991).

[15] C.Temperton.Self −Sorting M ixed−Radix F ast F ourier T ransf orms.J.Comp.Phys. 52

,1-23,1983.

図 1: 3次元に於ける各時刻の n, t ∗ である。図1を見ると,数値計算で得られた n, t ∗ は k 0 u 0 t = 1.0 ∼ 2.0 の区間で一定であ る.この事は導入したスケーリング関数がうまく機能している証拠である. 結論をまとめると,4次元乱流の特異構造がシート状であること,それに伴い,4次元 乱流では特異構造の衝突頻度が3次元よりも高いことが分かった.また,オイラー方程式 でエンストロフィー Ω 2 の時間発展を追跡したところ4次元の方が速く増大する傾向を観 測できた.2次元は点状

参照

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