岩木山の殖吻景親 について
勝 俣 衛
は じめに
岩木山 (粛高1
, 625
m )は津軽平野の南 西庫 の平野 部 に孤立 して位置する成層火山であ り,火山活動 の新 旧のため,地形 が明瞭でない地域 もあるが,円錐形状 の山体 として とらえる 事ができる。岩木山に生育する植物 については,植物学からの報告がある (細井
1962
,石川他,1969など)那,筆者 払 それ らの報告 をもとに して,岩木 山の植生 を地理学的に考察 しよ
うとするものである.具体的 には相貌的特性に基づ く植生区分 を行 い,群落分布について斜面方位 との関連で考察 しようとするものである.
ここでい う相親的特性 とは次 のような事である0 8) 群落 の優占種 のもつ生活形 ‑高木,低木,草木など (2) 個体 のもつ密度 一密生群落,疎生群落など
(頚 群落 の高 さ一高木林,低木林,草原 など (4 季節 による変化 一常緑林,落葉林 など (句 群落の色 一針葉樹林,広葉樹林な ど
なお,調査方法は登山道 を中心 とした実施調査 のため,か なり大 まかなものであるが,合わ せて航空写真 を参考に した。
1
群落の分布 について吐) 垂直的 な分布
相親的時性 に基づき本地域 の植生 は6地域に植生区分され る (第1図 )○
〔落葉高木帯〕
ブナ林 が優占する高木帯であ り,
E
,ES
にはミズナラ林 も広 く分布 してい る。草本層には チシマザサがよくみられ る。\
分布は,急傾斜面である東伽=ま直線的に分布限界が位置 し,酉脚で拙也形 のため典線的であ り,南側は1100
m
あた りまで分布 してい る。【落葉低木帯〕.
落葉高木牡,海抜高の増加につれ,次第に謝高 を減 じ,散在 して分布 し,高木層がみあた ら な くな っていき,亜高木層,低木層が優 占する植物帯に移行 してい くD この景境域が落葉低木
‑31‑
植
' i 区 伺
野 如 こ□ 杏 葉 布 本 革 tl]コ X、、′fr払
皿 属集 低 木 帯 冒 高 山 低 木 帯
Ⅲ] サ i Tqザ サ 葦毛] 高 山 卓本植 喝帰
帯で ある。
〔チシマザサ帯〕
東斜面 と酉斜面にはチシマザサ 帯が広 く分布 してい る。 この植物 帯 はほとんどチシマザサ純群落 を 顔式 とし,下限付近では落葉低木
を混合 してい る。
〔コメツガ林〕
コメツガ林が赤倉沢 の北西 の稜 線部,鳥海山 の南東 の境線部 に, 小林分 を形成してい る。
【高 山低木帯〕
鳥海山付近 .山頭 を南北に走 る 境線の酉軌 赤倉沢 の北東の稜線 部 に分布 している。落葉低木帯 と の相異は, この植物帯 の階層 は単 層,群落 の高 さは低木,壌 少で密 集 しているのに対 して,落葉 低木帯 は多層であ り,亜高木層 も見 られ,散在 して7‑くる事 である。
〔高山草本植物帯 〕
山頂の東斜面にのみ分布 し,著 しく樹高の低い特殊な低木,草本がみられ る地域 であ り
〝お 花畑
〝と呼ばれ る高山草原域で,好雪性の植物が多 くみ られ,稜線によ り高山低木帯 と区分 さ れ る。以上 のように地域は
6
区分 されるが,その分布の特徴 は針葉樹林帯が欠落 してい るため亜高 山域が区分 されに くい とい う事である。八甲田山の針葉樹林帯 を蓮占しているオオシラ ビソ林は,全 く本地戒では見あたらない。 こ の針葉戚林帯の発達 が悪い現象 につい ては,鳥海山 月山, 白神岳 な ど日本海側に位置す る山 岳 に一般的な萌轟 である。
この現泉が主 として気侯的なものによるのか,地史的 な土地の新 旧と植物の伝播 に起 因す る ものかは, まだ定説がない (牧田
1967)。
∽ 東斜 面と西斜面の群落分布 の相異 について
酉斜 面の垂直分布は,
1050mあた りまで落葉高木罷
その上部 に蘇葉低木帯 が分布 し, さらに1200m〜1350m
にかけてチシマザサ最 それよ り上誰から稜線 にかけて高山低‑32 ‑
木帯が分布 してい る。
同譲 に東斜面では,
900m
あた りまで落葉高木罷1200mあた りまで落葉低木帯チシ
マザサ帯 がそれに続 き,1350mよ り上部 には高 山性草本植物帯が分布 してい る。
高山低木帯 と高山性草本植物帯 は山頂 を南 一北に走 る稜線によ って区分 され著 しく植物景観 を異に してい る。
東斜面 と西斜面 の群落分布 の相異は以下のようにまとめる事ができる。
( 1 )
落葉高木帯の上限高度が,約200mほど高度差 がみ られ る。
Q) 落葉低木帯の分布域 が東斜面に比較 して,西斜面で狭 い。
(3) 樹木 は酉斜面では稜線まで壌少な外形 を示 しなが らも密集 して生育 しているのに対 し, 東斜面ではチシマザサ帯 の下限付近 までしか生育 していない。
(4 山風 稜線 の東側 には多雪地特有 な草本植物 が生育 しており,いわゆる高山草原 が広 く 分布 してい る。
以上 のような東斜面 と酉斜面の群落 分布 の相異について風速分布 と積雪分布か ら説明 してみ る。
寄ユ 凪
旭懐 r
堤 /\ √ ‑
地形 ヒ ILT連 綿 ・痛撃輔 、tQl由倫
・風速分布 と地形 の関係につい ては
〔
第 2
図〕のよ うな関係 があ り,風速 は,風上斜面の稜線付近 で最大 となる(吉野,小沢
1965
)。讃雪分布 と地形 の関係につい ても,
〔
第 2
図〕のよ うに,平坦地か ら焼斜 地に なるにつれ讃雪量 は増大し,風上 斜面の斜面上部 では吹 き払われ,山頂 I 直前 で積雪値 は最 小を示す (吉野 ら)。これ らの関係 を岩木 山について推定 'してみ ると,山麓から次第に風速 を増 し,酉斜面の緩儀 斜面で一一時風速 を減ず る。 しかし,再び稜線 に向 う斜面で次第に風速を増 し, 山頂付近で最大 となるのが,風速分布である。
積雪分布 では,酉斜面の緩傾斜面で最大値 をとり,稜線に向 う僚斜面で,次第に減少 し,吹 き払われた雪 は東斜面に吹 きだまりを形成 する'。
東斜 面に関 してはは っき りとしないが,残雪分布では東斜面に広 くみ られ,遅 くまで残雪 が み られ る。
部落分布 と風施 療 雪との関係については, 西斜面 のチシマザサ帯 は多雪域であ り,高 山低
‑33‑
木帯が分布する地蔵 は強風戒であ り,積雪 は少 ない地域 である。
一方,東斜 面 の高山草本値物帯 は.吹 きだまりが形成 され る地域で多雪戒であ り, チシマザ サ帯は残雪 が遥 くまである地域 である.
(3) 針葉樹林 の発達が惑い現象について
植生区分 図か ら明 らかのよ うに,亜高山域 には針葉樹林帯は欠落 しておりコメ ツガ林 が僅 か に みられ るだけである。
海抜
900m〜1200
mが亜高 山域 とい って よい と患 うが,岩木山では, チシマザサ帯 と 落葉低木 帯がその高度 に分布 してお り,針葉樹林帯はそれ らの植物帯によ って置換 えられている。
東北鞄方の北部 の気候下では亜高 山域 はアオモ リ トドマ ツ林 が気虞的庫 掴林 として分布 し, 八 甲田山がその例で あるが, これ に対 して岩木山の コメツガ林は鳥海山南東 の凌腐乱 赤倉沢 北西の稜線蔀 に少承 分 がみられ, アオモ リトドマ ツは全 く見 あた らないQ
コメツガ林が分布 している地 或は,いずれ も急傾斜地 の土壌 の浅 い凌鹿部であることか ら, 気侯的海相林に対 して,地形的,士魂的極相林 として本地域 のコメツガ耕 まとらえる事がで き
る。
2
群 落 の高 さ群落の高 さはJ‑.産生 の相嶺的雛 をよ く表現 している。前掲 の植生区分図にも.詳落 の高 さは読 み とれ るが,群落 の高さの分布 図を作成 してみた。
〔 弟3
囲〕‑ 3 4 ‑
この分布図によれ ば群 落高が
1mの
群 落高戒は高 山草本植物帯 の全域,高 山低木帯 の凌廉知, チシマザサ帯の上 部 を分布域 としているo群落高が2m の讃落高域 はチシマザサ帯 と高 山低木 帯 に分布 している。赤倉沢の北東稜線 部 は海抜高度か らは高山戒 ではないの に高山低木帯として植生区分 され たの は戚落高が低 い事 も理 由で あ った。5mの分布 巌は落葉 底 本帯域 と‑敦
してい る。岸 藩 の高 さの低い地域は東側
に広 く分布 してい るがこれ は束斜面 の多雪,,Jji雪現象にそ の主用をお き,2
mの分布戒 は西側に広 く分布 しているのは多雪域,強風域であるチシマザサ亀 高山低木帯が, この方位に広 く分布 してい るから である。
3
要 約岩木山に生育 する植物 について斜面方位 と群落分布 の関連 を中心 に,相韻的特性 に基づ く詞 査 を行ない,そ の結果は以下のように要約 され る。
(1) 東斜面 と西斜面の群 落分布 に異な・りがみられ,山頂を南北に走 る稜線により高山低木 帯 と高 山草本直物帯に区分さn,両者の植物景親は著 しく異な って いる。
( 2 )
この現象 について風速分布 と庸雪分布 から考察 してみると, 西斜面は強風域であ り, 東斜面は多雪域であり,乾廉斜面 と湿潤斜面の相違が植生分布 の違いに多 く影響 を与 えている。( 3 )
劇薬樹林帯 は群落帯 としては全 く欠落 しており,チシマザサ の純群落,落葉低木帯に よ って置 き換 えられ ている。コメツガ林が赤倉沢 の北西複線部,鳥海山 の南東稜線部の, いずれ も稜線部急腐斜地 に林分 を形成するだけであ り, 八甲田山などの亜高山域と植物景親 を著 しく異にしてい る。
(4)この現象 についてはコメツガ林が地形の急傾斜 な凌鹿部にのみ生育 してお り,気侯的 極相林であるオオシラビソ林 に対 して, コメツガ林 坑 地形的,土壌的面相林 として とらえら
れる。
今回の報告は, マクロ的に岩木 山の癌生 をとらえたものであるが,今後微地形 との蘭連 にお いて, ミクロ的にとらえなおす事が必要であろ う。筆者に与えられ た課題 としては調査 方法の 研究 と, どのよ うな親点で地域 の植生 をとらえるか とい う問題である。
この葡告 を作成するにあた り,有益 な助言や, いろいろな便宜 をはか っていただいた水野先 生 に感謝いた します。
参 考 文 献
1 Sc hmi dt h‑ Js en
宮 脇 昭訳;植生地理学 朝倉書店