三重県 内研究開発型企業の現状 と課題
今 尾 雅 博
は じめに
戦後,日 本 はめざましい経済発展 を成 し遂げて きた。アメ リカに追い つ き,追 い越す勢いであったが,1989年 の 「バブル崩壊」以降は,一 部 の業種 を除 き,業 績 は低迷 した。その中で,半 導体産業や 自動車産業は 健 闘 していたが,前 者 についてはここ数年間の間に,韓 国,台 湾,及 び 米国に追い上げ られて苦戦 を強い られている。家電産業 は,中 国の追い 上げにあって,国 内市場で も苦戦 を強い られている。その典型が汎用型 TVや ビデオ,エ アコンや電子 レンジな どであ り,ほ とん ど中国や東南 アジア製品に国内市場 を占拠 された形 になって しまった。衣料や雑貨, 食品において も,ア ジアか らの輸入が急拡大 して きた。
バーノンのい う 「プロダク トサイクル論」に全 く当てはまる形になっ ている。 日本の製造業 は, もはや価格の面でアジア諸国に勝負できな く なって きている。イギ リスで始 まった産業革命以降, ヨーロッパ→ アメ リカ→ 日本 と製造業の中心が移転 して きた。そ して,い まや中国が 「世 界 の工場」 として台頭 して きている。世界最大 の人口 (13億人 とも 15 億人 とも言われる)を 抱 える中国の勤勉かつ低賃金の労働者 を相手 に,
ものづ くりの面で勝負で きる産業 は限 られて きている。今の中国は, 日 本の高度成長時代 (東京オ リンピック前)の 勢い と同様の経済状況であ
(1)
論 説
る。 日本は国土 も狭 く,人 口もさほど大 きくなかったが,戦 後のものづ くり=製 造業の分野でがんばって,世 界中か ら注 目される経済の高度成 長を成 し遂げてきた。幸いにも,中 部圏なかんず く東海地方は,愛 知県 を中心に自動車産業が盛んであ り,い まだ経済力はそれはど衰えていな い。 しか し,ト ヨタをはじめ日本の有力 自動車メーカーがこぞって中国 に本格的工場進出を果たしはじめた現在,繊 維,家 電産業などのように 国内産業が空洞化 しないという保証はない。最大手の トヨタが中国進出 を始めたことから,中 国自動車産業の急成長が意外 と早まる可能性が出 てきた。一部の識者はあと 10年 で中国の自動車産業が 日本にキャッチ アップすると言っている。正確な時期は確定できないにしても,早 晩中 国が手強い競合国となるのは間違いないであろう。大名古屋圏 (グレー ター名古屋)の 一角を占める三重県は日本全体の景況 と比べると経済活 動に関する諸指標はかなり良好である。 しかしなが ら隣県の愛知県に比 べると,各 種経済指標で相当見劣 りがする。その原因の主なものは第二 次産業の内部構成 と二重県内企業の多 くが本社ではなく,本 格的研究開 発機能を持たない単なる製造工場にす ぎないことにあると考えられる。
本稿では,昨 年度三重県総合企画局 と三重大学人文学部 との共同研究を 行った成果をもとにしている。われわれは三重県の製造企業がより高度 化 し,生 き残るための方途を研究開発型企業への脱皮に求め,数 ある県 内製造企業のなかで優れた研究開発型企業 25社 をえらび聞き取 り調査 を行うた。なお聞き取 り調査は 2003年 8月 から10月 にかけて筆者 と三 重県総合企画局の川本英司が担当した。
Ⅱ 県 内企 業 を取 り巻 く環 境 と企 業 の対 応
三重県では,か つて盛んであった繊維 ・化学産業に代わって,近 年,
輸送用機械 (主として自動車)産業が製品出荷額で 1位 になっている (図
1,表 1)。中国の台頭の前に何らかの手を打たないと,関西 (家電産業 のメッカであった)の ように中京地区もなってしまう恐れがある。プロ ダクトサイクル論は,雁 行形態論とも言われている。むしろ後者の方が 本家であるが,中 国の次 にまだイ ン ドさらにはアフリカがある。「先進 国病」はイギ リス (ヨーロッパ)に 始 ま り,ア メリカか ら日本 に移 って きている。アメリカは1980年代の後半に, 日本をよく研究し,「先進国 病」を脱する方策を考え実行 した。MITの 産業生産性調査委員会が著 した 『メイド・ィン・アメリカ』は,「ァメリカ再生のための米日欧産業 比較」という副題がついている (参考文献 〔5〕)。筆者は,今 回本稿を書 くにあたり何冊かの本を集め読んだ。この本を読み返したとき,ア メリ カのす ごさを再認識 した。 日本で も同書 にならって,『メイ ド・イン・ジャ パ ン ー 日本製造業変革への指針』が吉川弘之東京大学総長 (当時)を 中心 に産学の頭脳 を結集 してまとめ られた。 (1994.4,参考文献 〔34〕) この本の序文には次のような記述がある:「この書は,大 学と企業で 構成された日本インダス トリアル ・パフォーマンス委員会 (JAPAN
100
S40 50 60 H7 11 13 14 15(速 幸晨) 図 1 業 種 別製造 品出荷額等構成比 の推移
資料 :三重県 「工業統計調査結果」 出 所 :百五経済研究所 「三重県経済のあら まし2005」3頁
0 0 6 4
構 成 比
︵ %︶
妨 衿
鰈 鼈 障 陸 朧 孵
颯炒晶一
%
晰鰊晰 錮・一呻
〈輸送用機械
6:8 笏
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.
7 ︲ 0⁚一一7
学
辟
〈そ の 他(3)
論 説
表 1 葉 種別 の事業所数, 従 業者数, 製 造 品出荷額等
(注1)従 業者 4人 以上の事業所, ×は秘匿。
(注2)衣 服 。その他 の繊維製 品 を除 く。
(注3)家 具 を除 く。
資料 :三重県統計調査室 「平成15年 工 業統計調査結果速報」
出所 :図 1に 同 じ,41頁
平成 15年 (速報)
業種
事業所数 構成比 前 年 比 従業 者 数 構 成 比 前 年 比 製造 品
出荷額等 構成比 前 年 比
所 % % 人 % % 百万 円 % %
合計 5 355 100 0 185,209 100 0 △13 7 803 345 1000
食料 品 18,428 △4.0 437.321 △11
飲 料 ・た ば こ ・飼 料 1,748 71,801 9 9
繊維は2, 2 3 2,521 △71 40,241 △39
衣服 。その他の繊維製品 2 527 1 4 △08 20,209 △ll2
木材 ・木製品は 3,311 △1.2 54.977 型 1
家 具 ・装 備 品 △ 1.3 2,023 △25 43,725 △30
パ ル プ ・紙 ・紙 加 工 品 1 7 △42 2,265 79,995 △58
Fp刷 ・同関連産業 2,773 2 1 53.401 △08
化 学 10.925 △46 812.236
石 油 製 品 ・石 炭 製 品 1 △05 379,924 △67
プ ラス チ ツク製 品 10,382 299,676
ゴム製 品 7 8 △60 5,944 △35 168.213
なめ し皮 ・同製品 ・毛皮 2 ∠ゝ50 0
窯業 ・土石製品 402 7 5 10,320 △43 302,923 △07
鉄 鋼 3,138 1 7 91,502 △05
非 鉄 金 属 1.2 3,432 1 9 △29 5 247.869
金 属 製 品 13.350 △12 298,782
一般 機 械 器 具 1 1 5 20,013 △40 628,101
電気機械器具 1 1 18,415 611,730
情 報 通信 機 械 器 具 ∠ゝ137 2,573 △130 69.729
電 子 部 品 。デバ イス 2 7 △14 15.288 872,492 22 7
輸 送用 機 械 器 具 △06 31,353 △08 2.128,204 △62
精密機械器具 △20.8 457 ∠ゝ26 9 6,635 △"7
その他 の製 造 業
COMISS10N ON INDUSTRIAL PERFORMANCE:略 称 JCIP)が 日本 の製造業の現状 と問題点を分析 した最終報告書である。……本書の目的 は,日 本の製造業について短期的な経済変動にとらわれず,そ の構造的, 本質的な課題に焦点を当て,21世 紀を見直 した幅広い視野に立って多 く の問題提起をすることにある。こういう作業を 学産協力 "と
いう新 し
い試みで まとめた……。」さらに 「JCIPで は,MITプ ロジェク トのよう に論点 を生産性だけに限定せず, 日本の製造企業の歴史的に形成 された 様 々なシステムが,時 代の大 きな変化の中,あ るいは 日本企業の世界で の立場の変化の中で,今 後 とも有効性 を保ち得 るかをより幅広 く検討す ることに最大の 目標が置かれた。換言すれば,『従来の 日本製造業の強 みが,今 後 とも強みで有 り続 けることがで きるか,ア メリカの分析結果のように現在の強みがそのまま将来の弱みとなる懸念はないか』を問う
ものである。」 とある。同書で取 り上げられた産業は次の 7つ のグルー プである。
① コンピュータ 。半導体 ・通信機器などのエレク トロニクス
②家電 。AVな どのエ レク トロニクス
③鉄鋼 ・非鉄金属などの金属材料
④ 自動車
⑤化学
⑥繊維 ・テキスタイル ・アパ レル
⑦産業機械 ・FA機 器
これを先のアメリカでの調査対象産業 と比較するとほとんど共通 して いる。アメリカにあ り日本にはなかった産業は民間航空機産業である。
最近, 日本でもトヨタやホンダをはじめとする自動車メーカーがこの分 野に進出し始めた。 もっとも以前より,外国航空会社の外注企業は日本:
とくに東海地方に存在 していたが, この産業で日本が本格的に欧米企業 と対抗 してい くことは難 しいと思われる。民間航空機産業以外の産業で
(5)
論 説
は 日米 間の競争 は常 に存在 していた。繊維,鉄 鋼 には じま り,家 電,半 導体 ,自 動 車 ,化 学 の産業 な ど,日 米経 済摩擦 を引 き起 こ した産業 もあ っ
た。 しかしなが ら近年になって, 自動車産業にみ られるようにグロ ーバ ルな協調関係 も見 られるようになって きた。例 えば トヨタと GMの NUMMI(ヌ ーミー),マ ツダ ・Ford,GM・ スズキ,三 菱 ・ダイムラ ー ・
クライスラーなどの提携関係がそうである。経済がグロ ーバル化するに つれ,あ らゆる産業において,国 境を越えた競争 と協調が行われるよう になってきた。完成車メーカこの世界的再編 ・工場の再配置の影響はそ れを下支えする国内の部品メーカーにも当然大 きな影響を与える。
Ⅱ 二 重 県 の 4大 主 要 製 造 業種 等 の動 向
① 自 動車関連製造業
平成 13年 の工業統計調査結果では,輸 送用機械器具製造業が県内製 造業の製造品出荷額の4分 の 1強 を占め首位であるo県 内立地の自動車 関連部品メーカーもグローバル化の影響を受けざるを得ない。県内には 鈴鹿に工場を持つホンダとトヨタ関連の部品メ ーカニが多い。 トヨタ系 の大手部品メーカーの工場 も北勢地区を中心に立地 している。デンソ ー 大安製作所 (従業員 3,900人。以下,従 業員数は断 りのない限 り,資 料
〔 27〕2004年版による。H15。 3現 在の数字):ト ヨタ車体いなべ工場 (同
1,955人)な どの トヨタ系の大手関連企業をはじめ,安 永 (本社上野市,
従業員数 655人),光 精工 (本社桑名市,従 業員 337人)な どの中堅メ ー
カーか ら, さらに規模の小 さい企業まですそ野が広がっている。さらに
ホンダ関連では,本 田技研工業は鈴鹿製作所 (従業員 7,300人 H16.1
現在 同 社 HPよ り)を 中心に,八 千代工業四日市製作所 (従業員 1,350
人 H14.4現 在)な ど数多 くの関連企業が県内に立地 している。(百五
経済研究所 「 三重県会社要覧」にはホンダの関連メーカーの記載があま
りない。八千代工業の従業員数 も同書 〔 27〕2003年版による。)
三重県内の自動車関連メーカーは トヨタとホンダ系が多いのがひとつ の特徴である。 また住友電装 (産業分類 としては電気機械器具製造業だ が,実 質的には自動車関連産業である。デンソーも同じ。)や 光精工など 一部企業を除いて,本 格的な研究開発部門を有 しない製造事業所が多い のが 2つ 目の特徴である。 自動車産業は米国をはじめどの生産国におい ても最重要の産業 として位置づけられている。そ して日米欧の主要メー カーは,「世界四極体制」で生産 しているところが多い。今や完全に日系 の独立 自動車メーカ‐は トヨタとホンダのみになった。幸いにも三重県 には日本の 2大 有カメーカーが生産拠点を有 しているため,か つての花 形産業であった繊維や化学産業の落ち込みをカバーして くれているあ り がたい存在になっている。 しかしなが ら前述 したように,中 国の急速な 台頭により,今 後空洞化の危惧がある。これを克月 反するには,県 内の事 業所が単なる生産工場 としてだけではなく,研 究開発機能を備えた工場 に脱皮 していただけることが必要とされる。そうなっていただ くための 施策については後述する。あえてその一例を示すならば,当 地域の 「シ
リコンバ レー化」である。
② 電 気機械器具製造業
当業種 は製造品出荷額では県内第 2位 であるが,従 業者数は 36,280 人 (平成 13年速報)で 首位である。当業種は相対的に労働集約的産業で ある。それは従業者一人当た りの付加価値額 935万円という数字に現れ ている。化学 (同2,331万円)や 自動車関連 (同2,120万円)と 比較 し て明らかである。
当業種内で最 も注 目されているのはシャープである。シャープは液晶 テレビの一貫工場を亀山に新設 し,従 来の多気の工場 とあわせて液晶を はじめとするフラットパネルディスプレイ (FPD)の 中核企業である。
(7)
論 説
シャープは多 くの家電 メーカーが中国進出する中で;液 晶関連だけは国 内に とどめる方針 を貫いている。三重県や亀 山市 はシャープの工場 を誘 致す るために相 当な資金 を提供 した。 これに対す る評価 は,最 終的には 今後の同工場 の実績 に委ね られる。現時点で もいえることは次の ことで ある。製造業の空洞化の先輩格 である欧米各国では,有 望産業の有力企 業誘致のためにきわめて積極 的である。具体的には補助金や税制の優遇 措置 をは じめ,非 常 に幅広い企業側 にとって魅力的な条件 を提示 してい るケースが多い。最近の事例で言えば, トヨタのフランスエ場進出があ げ られる。一昔前の事例では,イ ギ リスのロン ドン郊外 の ミル トンキー ンズ市へ の外資系企業の誘致 の例がある。後者 の例 は,筆 者が 1996年 に現地 を訪れて調査 した事例である。住友電装,ア ルプス電機,天 野製 薬 などの 日系企業 も欧米系 の企業 とともに多数入居 していた。
トヨタの ヨーロッパヘ の本格進 出に際 しては周知の ように,EU各 国 での相当な綱引 きがあった。結局はフランスの産業が衰退 して地域経済 が疲弊 していた場所 に落ち着いた。決め手はシラク大統領 自らの トヨタ 詣でだった とい う話 もある。かな り以前の話であるが,英 国への 日産工 場進出 も当時来 日したエ リザベス女王が誘致 を頼 んだ とい うことも聞い た。いずれ も トップセールスの重要性 を示す例である。
2004年 2月 19日 付 の新 聞で は,瞬 間的 GDPの 伸 び率が平成 15年 10‑12月 期の年率換算 7.0%と ,バ ブル期並みの高成長 を実現 した と報
じている。筆者 としては,こ れは 「あ くまで も瞬間風速の数字」であ り, 構造改革 は未だ始 まったばか りであ り,持 続 的な GDPの 成長軌道 にの せ るためには 「国が新 しい産業の育成 を支援 し,少 子化対策 を強化 しな い といけない。経済 を長い 日で見た ら, よ り若い人 を支援す る必要があ る」 との見解 を示 した,み ずほ証券の上野泰也チーフエ コノ ミス トの意 見 に賛成 したい (『中 日新聞』2004.2.19経済欄)。 ともあれ,統 計 は後追 いで常 に遅れるが,「GDPの 6割 近 くの比重 を持つ民 間最終消費 も,前
期比 0.8%増 と堅実 な動 きを見せた。液晶テ レビや DVDな どのデ ジタ ル家電や,ゲ ーム機や自物家電 も増加 に寄与 した とい う (『中 日新聞』, 同上,1面 )。」このことは平成 12年 までの 7年 間,県 内製造品出荷額で
トップだった電気機械機器製造業が再び トップを奪還す る可能性 を暗示 している。
シャープほ ど派手ではないが,長 年 この業種 に分類 されて一般 にはさ ほ ど知 られていない優良企業のケースを次に掲 げたい。
県内 (四日市市)に 本社 をもつ住友電装 (従業員数 4,456人)は ,ワ イヤーハーネスを製造する世界第 3位 のメーカーである。同社 は同製品 の世界 シェア 14%を 占め,22ヶ 国の海外拠点 を含 む全従業員数約 3万 6 千人 を擁す るグローバ ル企業である (〔19〕110頁 )。同社 は世界 の大手
自動車メーカーのほ とん どに製品を販売 している。そ して研究開発 も地 元四 日市で行 っている。
当業種 の企業は食料品製造業 に次いで県内の各地 に立地 してお り,中 小企業 も数多 く存在 している。 ここで忘れてはな らないのは,東 芝 (四
日市市 ・朝 日町)や 富士通 (桑名市)な どの半導体 メーカー,松 下電工 (津市),富 士電機 (四日市市 ・鈴鹿市),神 鋼電機 (伊勢市)な どの工 場 である。 これ らは自動車ほ どではないが,か な りの関連中小企業 とつ ながっている。そのことは,冒 頭 にも述べた ように当業種 の従業員数が 県内第一位であることとも関係がある。当業種 は基本的には加工組立型 の企業が多 く,労 働集約的であるので,国 内で生 き残 るためにはさらに 高付加価値化 を図る必要がある。そのためには,製 品 ・技術 開発が よ り 強 く望 まれる産業 といえよう。
③ 化 学工業
当業種は四日市コンビナー トが最 も活気があった頃か ら比べると, 内の製造品出荷額のシェアは半減 した (H15/S40対比,図 1参 照)。
県 こ
(9)
論 説
の落ち込みは,繊 維 のこの 40年 間で 25分 の 1に まで激減 したのに比べ れば,は るかによく健闘 している数字 といえる。長期低 落傾向の主な原 因は,や は リグローバ ル化 の進展 にある。当業界 は, 自動車や電機 ◆電 子製造業等 を主要ユーザー としてお り,そ れ らの海外 シフ トによ り内需 が減少 している。一方,欧 米企業 との競争激化 により輸出 も減少 してい る。 さ らに関税 の引 き下 げ に よ り輸入 も増加 す る と予 想 され てい る (〔28〕 9頁 参照)。 したがって今後の生 き残 り戦略 としては,こ こで も 高付加価値化 しかない。具体的にはファイ ン ・スペ シャルケ ミカル化 を さらに押 し進めた製品 ・研究開発 に力 を注入 して,実 績 を上げることし か道がない ようである。
今 回,我 々が聞 き取 り調査で訪問 した当業種企業は,JSR,協 和油化, 三菱化学,御 木本製薬及びオキツモの 5社 だった。各社 とも研究開発 に 熱心 に取 り組 んでいる姿勢が感 じとられた。中で もJSRは 四 日市が創 業 の地であ り,当 地方の大学 との連携 も密であることがわかった。JsR の主要ユーザーはタイヤメーカーであるが,電 子材料 ・デ イスプレイ材 料等の新規分野への事業拡大 も押 し進めている。化学工業は装置産業で あるので,特 に現場 のワーカーの レベルの高 さが,研 究開発の技術者の それ と同様 に重要 な競争要件である。一旦事故が起 きると莫大 な損害 を 発生 させ る危険があ り,また環境 にも特 に厳 しい規制がある産業である。
もともと四 日市 コンビナー トの各企業 は共同で環境 問題 に取 り組んだ経 緯 もあ り,研 究開発 を中心 とした研究会 も組織 されている。具体的には 四 日市化学関連会社研究懇談会 (涸研懇)が ある。経済改革特区にも指 定 され,「技術集積活用型産業再生特区」の提案 にも化学 メーカーが中心 メ ンバ ー として参加 している。
また,三 重大学人文学部 (代表世話人 渡 邊悌爾学部長),四 日市市商 工課及び産業界の産官学で 2000年 11月 14日 か ら毎月 2回 (第2・4火 曜 日の 6:30pmよ り2時 間,ぢ ばさん三重)で 開かれて きた 「三重 21世
紀ゼ ミナール」で も化学メーカーの方々には一番多 く講師になって講 演 。討議に加わっていただいた (残念なが ら同ゼ ミは 2004年秋まで 74 回で途絶えてしまったが,取 り上げられたテーマの中で一番多かったの は化学関連企業の方を講師としたものであった。)。その一事をもってし てもわかるように当業種は三重県 (四日市市)を 代表する産業集積であ り,今 後 も地域経済をリー ドしていただ くことが望まれているといえよ う。
④ 食 料品製造業
県内の事業所数は 768と製造業中 1位 である。従業者数は 18,428人 と第 4位 ,出 荷額は4,373億円と第 5位 である (平成 15年速報,4人 以 上の事業所)。このことか らもわかるように,当 製造業 も中小企業が多 い業種である。 したがって,大 規模な事業所は大手メーカーの工場が多 い。味の素 (四日市市),味 の素ゼネラルフーズ (鈴鹿市),宝 酒造 (楠 町),カ ネ美食品 (津市),プ リマハム (伊賀町)な どがある。食料品は 種類が多 く,全 国に分散 している業種である。また,味 噌や醤油,酒 , 麺類,和 菓子などの地場産業的な業種は全国各地にある。消費者の嗜好
に左右されることと毎 日消費されるために地域密着型で景気に左右 され
にくいので,中 小企業でも生 き残ることが比較的容易であった。逆に,
大企業は大消費地に立地することが多 く,東 京,大 阪,名 古屋に本社の
ある企業が多い。そんな中で,県 内本社の上場企業が井村屋製菓 (津市)
と太陽化学 (四日市市)で ある。前者は 「肉まん 。あんまん」で有名で
あるが,後 者は多 くの食品メーカーに茅L化斉Jや安定剤などの原料を販売
している研究開発型の企業である。そのほか,全 国的に有名ブランドに
なっている三重県の食品は,桑 名のしぐれ煮 (貝新)と 伊勢の赤福餅で
ある。また主力商品のベビースターラーメンとユニークな会社名で有名
にならたおやつカンパニー (一志町)が 最近ますます元気である。その
(11)
論 説
他 に, 食 品 コ ンクール 「モ ン ドセ レクシ ョン」で 出品 した炭焼 きコー ヒー ゼ リーで 1999年 か ら 3年 連続 で金賞 に輝 いた竹屋 (四日市市)や 同 じく 世界 酒類 コ ンクール に金賞 を連続受賞 してい る 「大吟醸宮 の雪」 の醸造 元 であ る宮崎本店 (四日市市)も 特筆 すべ きであ ろ う。
最後に述べておきたいことは,食 の安全性に関する問題である。食料 品は医薬品と同様に,人 間の健康 と命に関わる産業である。そのために 食の安全には細心の注意が払われなければならない産業である。古 くは 森永 ヒ素 ミルク事件や 0157事 件,雪 印乳業やハム事業の事件 (BSE関 連),さ らに最近の̀島 インフルエ ンザ関連のような事件が起 きると,企 業 の存立そのものまで危 うくなるリスクのある業界である。食品の企業経 営で,顧 客満足 (CS)と コンプライアンス (遵法)が 特に重要視 される ようになったのも,当 業界の事件等が少なか らず影響 しているものと思 われる。
⑤ 地 場産業及びその他の産業
県内には銑鉄鋳物 (桑名市),陶 磁器 (四日市市や阿山町),伊 勢 タオ ル (津市),伊 賀の組紐 などの地場産業がある。中小企業の同業種が集 まらた産地は,今 や崩壊寸前の状態のところが少なくない。労働集約的 で作業条件や賃金がよくないため,若 手従業員が集まらず廃業が続出し た。地場産業のメリットは,地 域の雇用確保の面だけでなく,そ れが健 全な地域社会を生み出す源 ともなっていた点にある。地場産業の多 くは 途上国の追い上げにより,今 や衰退の一途をたどっている。 しか し,地 場産業は地域の雇用,特 に中高年のあ りがたい雇用源である。陶磁器な
どは品種により内需に強 く,土 鍋や観光土産や高級品で生 き残 りも十分 可能であ り,再 活性化 。再成長を図れるように公的な支援が望まれよう。
三重県 も産業支援センターで特にベンチャー ・ビジネス (VB)の 育成に
力を入れている。それはそれで大変結構なことである。 しか し,シ リコ
ンバ レーや東京のビッ トバ レーのようにインフラや若者に魅力のある場 所でなければ,な かなか VBは 育たない。任天堂,村 田製作所,京 セラ, ロームなど京都の VBか ら発展 した企業をみると,地 場産業 と大学 (京 都大学他)の 集積が VBの インキュベーターそのものとしてのインフラ
であったことを確認させて くれる。
今回我々が訪問調査に伺った 25社 の中でも,イシカワキカイ(安濃町) や伊藤工機 (四日市市)は 条件が整えば,飛 躍的に成長する可能性 を秘 めた企業であると思った。IT関 連のような新規産業でな くても,従 来 型の産業の中でもキラリと光る中小企業を見出して育てることの方が, 海のものとも山のものともつかぬ新規企業を育てるよりも成功確率は高 いはずである。また,地 場産業そのものでもや り方次第では,先 進国型 の生 き残 りに成功で きるチ ャンス もある。この辺 りについては後述す る。
Ⅲ 県 内主 要企 業 の研 究 開発 の現 状 と課 題 (ヒア リン グ調 査 を中心 に)
今回の調査では,県 内の主要企業を2003年 8月 から10月 までの 3ヶ 月間にチームで,合 計 25社 (表2)を 訪問し聞き取 り調査 を行った。
主眼は,研 究開発の現状 と課題を明らかにするためであった。対象企 業を選定するに際 して,我 々は次の 3′ 点を参考にした。① 8年 前に同種 調査を行った際に訪問 した企業 リス ト(三重県高等教育機関連絡会議『 グ ローバル時代における自立型地域政策の研究報告書』1998年 3月 ),② 日刊工業新聞特別取材班編 『 二重のリーデイングカンパニー 70』日刊工 業新聞社,2002年 3月 ),③ 株式会社三重ティーエルオーの加入企業。
ご多忙中にも関わらず,調 査にご協力いただいた企業の方々にまず もっ てお礼申し上げたい。各企業でマチマチであるが大体 2時 間,時 にはそ
(13)
論 説
表 2 ヒ ア リング実施企業
企業名 所在 地 ヒア リング実施 日
河村産業脚 四 日市市
ヤマザ キマザ ック精工的 桑名市 8/8
榊 マイ クロキ ャビン 四 日市市 8/11
井村屋 製菓帥 津 市 8/18
サ ンジル シ醸造開 桑名市 8/18
富士通い 多度町 8/27
JSRい 四 日市市
シグマー技研側 東員 町 8/28
伊藤工機lal 四 日市市
的赤塚植物園 津 市
lal中川製作所 安濃 町
閉 ビー イ ング 津 市
JFEエ ンジニア リング帥 津 市
協和 油化lal 四 日市市 9/4
ヒノキブ ンl a l 大安町 9/4
松 下電工開 津 市
lalオTト ネ ッ トヮーク技術研 究所 四 日市市 9/11
太陽化学関 四 日市市 9/12
的 東 芝 朝 日町 9/18
lalィシヵヮキ ヵィ 安濃町 9/22
閉 デ ンソー 大安 町 9/25
三菱化学欄 四 日市市 9/30
御木本製薬llXl 伊勢市 10/20
オキ ツモlal 名張市 10/21
光精工脚 桑名市 10/27
れ以上 時 間 を割 いていただいた。 あ らゆ る業種 にわた つてお り, 我 々 ( 今 尾雅博 と川本英 司) の 知識 に限界 が あ り, 企 業概 要 の聞 き取 りで時 間 を と り,本 来 のテーマ に割 く時 間が少 な くなって しまった場合 もあ る。 ま
た,企業側の事情により,研 究開発についてそれほど力を入れていない
事業所 もあった。事情 というのは,専 ら生産工場であ り研究開発部門は 他地区 (本社や研究所)で 行っているケースや,取 扱製品が消費財で技 術や新製品開発はさほど必要ないというケースも少数ながらあった。そ ういった事情をあげて,は じめから我々の訪間をお断 りというケ ースも 少なくなかった。
ともあれ,我 々としては今回調査の主眼は,グ ローバル競争がますま す激化 している中で, 日本なかんず く三重県に立地 している企業が特に 台頭著 しい中国インパク トにどう対応 してい くかに焦点を当てた場合, 決め手はあ くまで研究開発だという視点に立って調査を進めてきた6そ してその際に,最 近特に焦点が当てられてきている産官学連携 と三重県 の中での新たな産業集積の今後のあ り方を探 るという観点か ら調査 を 行ったことを強調 してきた。それにしても研究開発は各社 とも企業の生 き残 り戦略の要であ り,厳 格な秘密事項である。そこで我々としては, 次のようなヒアリング内容を予め企業側に伝 え,合 わせて次頁の企業調 査票をFAX送 信 してもらうようにお願いした。
〈ヒアリング項 目〉
①会社及び事業所の概要
②経営状況,現 在の製品構成に至る過程等
③三重県で創業するメリット・デメリット
④人材の確保 ・育成
⑤技術開発,外 部 との連携
⑥行政への要望
( 1 5 )
論 説
1 2 3 5
社名 ・事 業 所 名 本社 所 在 地
企業調査票
都道府県̲̲̲̲̲一 市区町村
4 事 業 所 の 立 地 年 西 暦 ̲̲̲̲̲年 貴社 創 業 年 西 暦 年
貴社 の事 業 所 数 をお 知 らせ 下 さい
6 貴 事 業所 の業 種 お よび 主 要 製 造 (販売 )品 目は何 です か
貴事業所の会社取扱高に占めるシェアはどれほどですか 約 %
1997年以降の貴事業所の従業者数 (各年 4月 1日時点)を お知 らせ下さい (単位 :人)
ま た 、 貴社 の決 算 月 をお 知 らせ くだ さい 月
2002年 (1〜12月)にお け る資材 の購 入 先 と外 注 先 の企 業数 を地 域 別 にお知 らせ 下 さい 貴事業所 で しか使用 しない専用 品 の委託加 工 を 「外 注Jと し,そ れ 以外 を 「購 入 」 と します )
11 事 業所概 要 ・リクル ー ト用 ガイ ドパ ン フ レッ ト等 が ご ざい ま した ら, 2部 ご用 意 下 さい
合 計 所 在 地 別
二 重 県 内 愛知 ・岐 阜 近 畿 関 東 国内その他 海 外
工 場
力 所 力 所 力所 力 所 力 所
事 務 所 ( 営業
拠 点 含 む) 力 所 力 所
区 分 1998 2001 2002
従 業 者 総 数 ち、 非 正 社 員 数 ち、 開発 研 究 者 数
9 1997年 以 降 の 貴 事 業 所 の生 産 額 を 1998年 を 100と した 比 率 で お 知 らせ 下 さい
区 分 1998 1999 2000 2001
事業所生産額 ・売上額 (19984「=100)
合 計 所 在 地 別
二 重 県 内 愛知 ・岐阜 近 畿 関 東 国 内 そ の他 海 外
外 注 先 企 業 数
社 社 社 社 社
購 入 先 企 業 数
社 社
今 ここで紙数の関係 もあ り,25社 全部 を掲載することはで きない:そ の 中か ら,特 に参考 となると筆者が考 えた企業で掲載 を承諾 されたケース として以下に取 り上げ,各 ケースについて若干のコメン トをしたい。
以下, 5ケ ースを取 り上げる。
1.光 精工株式会社 (輸送用機械器具製造業) 2.シ グマー技研株式会社 (電気機械器具製造業) 3.オ キッモ株式会社 (化学工業)
4.サ ンジルシ醸造株式会社 (食料品製造業) 5.株 式会社 ビーイ ング (ソフ トウェア業)
1.光 精工株式会社 (訪問 日 :平成 15年 10月 27日 )
① 会 社及び事業所の概要
。創業者は NTNの 社員であったが,昭 和 22年 に独立 ・創業 した。桑 名の鋳物工業 との関連は特 にない。主要製品は自動車部品の トラン ス ミッシ ョン部品,ユ ニバーサルジ ョイン ト,エ ンジン部品である。
・日本 自動車メーカーの海タト展開に合わせて,当 社 も海外 (フィリピ ン ・米国 。中国)に 工場 を建設 している。
・ユニバーサルジョイン トでは, 日本メーカーの世界 シェアは約 1/4
であ り,こ のうち当社が約半分を占めている。
・現在は トヨタとの取引が多いが, トヨタとの資本関係はない。創業 当初はマツダ,三 菱 自動車が主要な顧客であった。スバル以外の日 本の自動車メーカーとは直接 。間接的に取引がある。
② 経 営状況,受 注状況等
・ユニバーサルジョイントについては, 自社内で設計から製造まで一 貫 して可能であ り, 自動車メーカーか らはユニバーサルジョイント の専門メーカーとして重宝されている。
( 1 7 )
論 説
・外国自動車メーカーヘの売 り込みに注力 してお り,マ ツダを通 じて フォー ドヘ のエ ンジン部品納入 に参入で きた。ユニバーサルジ ョイ ン トは,自動車の重要部品であるため,今まで取引のない 自動車 メー カーヘ の新規参入 は難 しい。当社 は,特 定 の 自動車 メー カーのグ ループ企業ではないため,高 品質かつ価格競争力がある製品で勝負 す るしかない。
・最近では トヨタとの協力関係が深 まってお り, トヨタか ら経営面 も 含めチェックを受 けている。 トヨタのす ごい ところは,グ ローバル 調達 を進めなが ら,一 方では部品メーカーの レベルア ップを図 り, 部品を含 めた全体の活性化 。レベルアップを進めていることである。
ただ し, ト ヨタの技術革新の要求 についてい くことが必要であ り, ついていけない企業は置いておかれる。
新 しい製品や開発 に対 す る刺激 は トヨタか らや って くる ことが多 く, この面で も トヨタとの結びつ きは重要である。
・米国の自動車メーカーは値段のみで判断する傾向がある6
③ 三 重県で操業す るメ リッ ト ・デメ リッ ト
・当社が創業 した当時は特にメリッ トはなかったが,現 在では顧客 と なる自動車関連企業が中部地域 に集積 し,道 路網 も発達 してお り, 当地 に立地す るメ リッ トは大 きい。
・三重県や桑名市の知名度が低い。大卒の採用において,関 東 。関西 圏出身者 を採用するのは困難であ り,採 用者 は地元大学か地元 出身 者 に限 られる。
・愛知県の刈谷や安城は,東 海地方の中で も自動車関連会社が密に集 積 してお り,そ の内部のネッ トワークに入 り込みに くい。
④ 人 材の確保,育 成
。現在の従業員数の4割 弱は日系外国人の社外工 (短期雇用労働者) である。
10年近 く前か ら外国人労働者を導入 しているが,品 質維持のための 教育や能力による処遇などが課題である。最近は日本語の話せない 労働者が増えている。
・大卒のスタッフは毎年数名採用 している。中途採用 も,営 業 ・技術 部門の即戦力 として年間数名採用 しているが, 自動車メ ーカーから の受入や他社のリス トラに協力する形での受入 もある。
。現場の新規採用は現在のところない。ほとんど日系外国人の社外工 で対応 している。軟式野球部があるため,そ の部員は例外的に採用
している。
・外国人労働者は,給 料に差がなく派遣会社を通 して一律で契約 して いる。このため,能 力により給料に差がなく,時 間給のより高い事 業所へ移 りたいと考える人が多い。長 く努めている人は班長として 処遇することもある。
・短期雇用者が主体 となって くると,ものづ くりの伝承が課題である。
その戦略の構築が必要 となっている。
⑤ 技 術開発,外 部との連携
・取引先との共同開発等はあるが,大 学や研究所との共同研究等の連 携実績はない。適切なテ ーマの設定が難 しい。完全に新 しい技術が 必要 となる場合は少な く,現 有の技術の延長上で対応することが多 いためである。例えば,硬 度や耐摩耗性を高めるための加熱処理の 時間短縮が課題であるが,全 く新 しい処理方法の開発は当社には荷
が重い。・品質を突 き詰めてい くと,素 材 (金属等)そ の ものや今 までにない 人材 の確保,育 成
( 1 9 )
論 説
表面改質方法が必要 になるが,低 コス トの量産化 を前提 とした技術 の確立 は現在 の ところ非常 に難 しい。ブ レー クス ルーが必要 であ る。
・研究開発 に注 ぐ資金や人的資源 と,そ の結果 として反映 される製品 への改善度 とのバ ランスが問題 となる。で きれば将来性 を見据えた 製品開発や技術革新 を進めたいが,新 規分野では現実 には難 しい。
・各種研究会や異業種交流会などには参加 している。
・材料試験や分析 については,県の金属試験場 を利用することがある。
・以前か ら特許の取得はしているが,特 に3年 くらい前か ら積極的に 特許出願 している。特許の出願 は特許事務所 に依頼す ることもある が,費 用面の負担が大 きいためで きる限 り自社 内で出願 している。
この際に,発 明協会三重県支部の指導 を受けてオ ンライン出願 した ことがある。
海外進出に伴い,海 外特許出願の必要性が生 じる と予想 されるが, 今の ところ特 に対策はとっていない。
一方で,外 部に公表 した くないノウハウ等 も多 く,特 許化 しない場 合 もある。
⑥ 行 政への要望
・加工業は模倣される可能性が常につきまとい,最 後は素材 ・材料の 勝負になる。素材 ・材料について,中 小企業への支援をお願いした い。特に,金 属加工業にとって取 り組みやすいテーマの設定 (産学 連携 も含め),振 興策に配慮 してほしい。
。新技術や新製品のアイデアはあっても,中 小企業では研究開発が困 難なことが多い。アイデアを持つ中小企業が集まって研究開発を実 施できる仕組みがあると, リスクを軽減できてよいのではないか。
・特許を買い上げて地域内の企業にライセンシングするTLOの よう
な役 割 を県が果 たす ことが で きないか。
2.シ グマー技研株 式会社 (訪問 日 :平 成 15年 8月 28日 )
① 会 社及び事業所の概要
。昭和 52年 に,現 社長をは じめ とする 5人 で創業 した。この地域の 企業か らの脱サ ラである。
・工場は当工場のみである。台湾 と上海に現地法人を持っている。
・減速ギア付 モータのメーカーであるが,そ の応用製品 としてシュ レッダー (自社 ブラン ド)の 生産やマ ッサージチェアの共同開発 な ども手がけている。
・全社員数は約 107人 (パー ト28人 含む)で ,う ち開発部門 (設計者) は 13人 ,製 造部門 94人 である。開発部門の比率が高いのは,技 術 力で差別化 しない と生 き残 ることがで きないためである。
② 経 営状況,受 注状況等
・売上高は横ばいであ り,固 定費の圧縮 を進めている。
・県内進出大手企業か ら文房具卸 を通 して, シュレッダー 10数 台の 注文 を受けた。 また,その関連会社等 に当社 の製品 (変速ギア付モー
タ)の 売 り込みをかけている。
・シュレッダー した紙は古紙 としてリサイクルできないと言われ (実 際には リサ イクル可能),古 紙 回収業者が引 き取 らない場合があ り, シュ レッダー販売上の課題 となっている。
・桑名の地場産業である鋳物やダイキャス トの衰退により,北 勢地域 で部品の調達が難 しくな り,現 在 は多気町や勢和村 の企業や台湾か ら購入 している。 この 3年 間の変化である。
(21)
論 説
③ 三 重県で操業するメリット・デメリット
・北勢地域は,企 業が集積 し貿易港もあることから,外 国語を話せる 人や外国人などの人材の集積がある。鈴鹿国際大学や四日市大学の 留学生を採用 し,当 社の中国現地法人の幹部 として派遣 している。
・衰退しつつあるとはぃえ,こ の地域の金属関係産業 (鋳物,加 工等) の集積は強みである。技術を持つ企業や熟練 した職人が存在 してい
る。・名古屋方面への道路交通の便がよく,周 辺道路の整備 も行われてい る。ただ し,こ れ以上宅地化が進む と, この地での操業が困難にな る可能性がある。
・中部国際空港,愛 知万博,シ ャープ亀山工場などの大規模プロジェ ク トがあることもメリッ トである。
・この地域 には大企業 OBが 多いはずであ り, これ らの人材 を活用で きるチ ャンネルがあるとよい。当社 では,マ ーケテイングに強い人 材が必要 と考 えている。
④ 人 材の確保 ・育成
。現在,正 社員の採用を見合わせている。固定費の圧縮が最重要課題 であるためである。
・パー トの採用を増やしている。
⑤ 技 術開発,外 部 との連携
・直交ギアモータの部品である6条 ウォーム型ギアの製品開発の際, 大学の教官 との共同開発を実施 した。 6条 ウォーム型ギアを製造す
るカッターが特殊であ り,当 社のみが製造可能である。
ただし,直 交ギアモータにはハイポイ ドギヤやウォームギアを使用
したものがある。それぞれに一長一短がある。
ダ ンボール シュ レ ッダーの開発 の際 には,三 重県産業支援 セ ンター の支援 を受 けた。
当社 は技術 志 向が強 く, 市 場へ の ア ピー ルや周知活動が 間 に合 わず に製 品開発 が先行 す る傾 向が あ る。製 品開発 と同時 にマーケテ イ ン グ を しっか り行 うべ きだ と感 じてい る。
⑥ 行 政への要望
・信用保証協会保証付社債の拡充をお願いしたい。
・社会人教育を充実させてほしい。業務に関連 して高度な知識を身に 付ける必要性を感 じているが,何 をどのように学べばよいかわから ない。キャリア支援サービスや図書館のビジネスマン向けサービス があるとよい。
新 しいことにチャレンジする際の支援 (教育,人 的ネットワークな ど)や 助言をいただければと感 じる。
・同じような業務を担当する者同士が知 り合い,ネ ットワークを作る 機会を設定 してもらえないか。ある程度年齢を制限すると率直な話 ができると思 う。
また,中 小企業の後継者同士のネットワークの構築 も必要ではない か。後継者は大 きなプレッシャーを背負ってお り不安を感 じている
と思う。後継者対策 としても重要である。
3.オ キツモ株式会社 (訪問日 :平成 15年 10月 21日 )
① 会 社及び事業所の概要
・創業者は名張市出身で,戦 前に大阪で塗料 (ラッカー)の 製造を始 めた。現在でも関西ペイント, 日本ペイントなど塗料メーカーの多
くは関西に集中している。
戦後,名 張市に戻 り三重油脂化工株式会社を操業 し,1987年 に 「オ
(23)
論 説
キツモ株式会社」に社名 を変更 した。「お きつ も」とは,当 時の耐熱 塗料の商品名であった。
・桑名の鋳物企業か ら 「だるま型ス トーブ」の化粧用塗料 について相 談があ り,こ れ をきっかけ として 1957年 に耐熱塗料 の開発 に成功
した (日本初)。
・電化製品やバイク等の工場海外流出により,当 社 も顧客 に合わせて 海外展 開を進めている。 タイ,韓 国,ア メ リカに生産及び販売拠点
を持 っている。今年度,中 国にも進出 した。
② 経 営状況,受 注状況等
。1960年代 までは耐熱塗料 と汎用接着剤 を生産 していたが,オ ンリー ワン技術 を持つ耐熱塗料 を選択 し,専 業メーカこ として成長 して き た。
・顧客のニーズに合わせた製品開発 を継続 して きた結果,今 では塗料 業界の中で独 自のポジシ ョンを確保す ることがで きた。
。国内で 50%以 上のシェアを持 ち,売 上の 3割 程度 は海外 向けであ る。
・大手塗料メーカー も耐熱塗料 を製造 しているが,ラ インナ ップに一 応加 えているだけである。オーダ∵メイ ドの塗料が多 く,大 手企業 向 きの製 品ではない。国内の耐熱塗料市場 は 50〜60億 円であ り, オキッモ を含め 3〜4社 (いずれ も中小企業)で 90%の シェアを占 めている。
・カタログに掲載 している製品以外のオーダーメイ ドによる売上が 7〜8割 を占める。多品種少量生産型の産業であ り,約 1000種類 を 製造 している。中には年間 lkgし か製造 しない もの もある。
・15年 くらい前か ら競合他社の参入により価格競争が激 しくなってい る。 このため,新 たな製品 (光触媒塗料,放 熱性塗料)の 開発 を手
が けてい る。 これ に よ り, 顧 客 の幅が さ らに広が って きた。
③ 三 重県で操業す るメ リッ ト・デメ リッ ト
・大阪と名古屋の中間にあ り,交 通は便利である。
・工場及び研究所が名張市にあるということに特 に不利は感 じない。
・東京の人材 を獲得するのは非常に困難であ り,技 術者等の リクルー トには不利である。
④ 人 材 の確保,育 成
。三重大学,岡 山理科大学等か ら,毎 年 1〜2名 新規採用 している。技 術系 のみの採用 であるが,出 身学部の専 門知識 よ り,発 想力,観 察 力,創 造力 な どを重視 した採用 をすべ きだ と考 えている。
・年度途中で人材が必要になった場合は,中 途採用で対応 している。
・現場はパー トで対応 し,新 規採用はしていない。
⑤ 技 術 開発,外 部 との連携
・研究開発部門は,国 内顧客担当,海 外顧客担当,光 触媒塗料,戦 略 商品 ・シーズ開発の体制である。国内 。国外顧客担 当は,顧 客のニー ズに合 わせたオーダーメイ ド塗料の開発が主な業務 である。
・新商品 として放熱性塗料 を開発 したが, この性能評価等は富山県立 大学の熱設計の研究者 と共同で実施 した。
・三重大学工学部 とも連携 している。
・三重県の科学技術振興セ ンターエ業研究部 (窯業 ・金属)の 開放機 器 を利用 している。 自社 では購入で きない試験装置 を安 く借 りるこ
とがで き助かっている。
。当社 にない技術等を新たに導入する必要がある場合 は,大 学等の外 部 との連携 を活用す る。特 に大学 には,学術的 。理論的な裏付 け (証
( 2 5 )
論 説
明)を 期待 してい る。
国 と して産学 連携 が推 進 され,大 学 の敷 居 は低 くな って きた と感 じ る。
・特許 は, 自社単独 で出願す る場合 と,顧 客 との共 同出願の場合があ る。 ロイヤ リテ イ収入 が入 る もの は少 ない。原材料 の開発研 究 は 自 社 で はで きない ため,用 途特 許が ほ とん どで あ る。 防衛特 許 の性 格 が 強い。特 許 出願 は,化学分野 に強い大 阪の弁理士 に依頼 してい る。
⑥ 行 政への要望
・仕事の上では特にない。県には試験機器類の使用などでお世話に なっている。
4.サ ンジルシ醸造株式会社 (訪間日 :平成 15年 8月 18日)
① 会 社及び事業所の概要
。1804年 (文化元年)に 桑名市内で創業した。来年 (2004年)は 創業 200周年である。
・東京と大阪に営業所がある。
・1987年に,ア メリカ (バージニア州)に 工場を設立した。原料 とな る大豆の値段はシカゴ相場で決定されるため,日 本で購入するのと ほとんど価格に差はない。アメリカではヨーロッパ市場への輸送コ ス トがメリットである。
② 経 営状況,受 注状況等
・味噌,醤 油及びその派生商品 (タレなど)の 製品を中心に開発する。
将来的にも,現 在の製品構成を持続 させる予定である。
:醤油の全国の消費量は約 100万キロリットルとされ, このうちキッ
コーマ ンが 3割 強のシェアを持つ。上位 5社 で 40%以 上のシェア
とな る。
・ 醤油や味噌は,地域により味の好みが異なってお り,各 地のメ ーカー がその地域の好みに合わせて供給 している。全国的なメ ーカーとし ては,キ ッコーマン ・マルコメがある。
。新 しい商品の開発 も進めているが,当 社が期待するほど売上げは伸 びていない。
・自然志向の高まりから無添加食品を消費者は好むが,一 方で無添加 の醤油にカビが生えたという苦情が くる。消費者の食品への理解を 得 るのが難 しい。
・中国へ進出しないかという誘いがあったが,す べて断った。政情不 安があ リリスクが大 きいと判断したためである。
・流通業界の影響力 (価格支配力など)が 強 くなりすぎていると感 じ る。いつでもどこへでも必要な量を供給するよう求められるが,味 噌 ・ 醤油の生産は長期間 (醸造に半年〜1年 程度必要)を 要するため
対応が困難な場合がある。・ホームページ上のインターネッ ト販売など,新 しい取組 も実施 して いる。今後 は,タ ーゲ ッ トとする消費者 を絞 った商品開発が必要 と 考 えている。
③ 三 重県で操業す るメ リッ ト・デメリッ ト
・江戸時代か らこの地域で操業 してお り, この業界はローカル色が強 く,当 社 の場合 は東海地方 をフォローで きればよい と考えている。
また,ア メ リカヘの進出 と比較すれば,国 内ではどこで操業 して も 大 きな差 はない。
。ただ,味 噌 ・醤油業界は, きわめてローカル色の強いものであ り, む しろ当地にいることのメリッ トも少な くない (特に,味 噌。たま
り) 。
(27)
論 説
④ 人 材の確保 ・育成
。新規採用のみであ り,中 途採用はない。
・研究開発担当者の採用のため,以 前は大学にお願いに回ったが,現 在 はインターネ ッ トの利用 によ り学生か ら申込がある。
。現場の製造担当者は,地 元の大学 ・高校か ら採用 している。定着率 は高い。 1人 前 になるには 5年 程度必要である。
⑤ 技 術 開発,外 部 との連携
・愛知県の料理学校 と連携 して,味 噌 ・醤油 を使用 した新 しいレシピ の開発 を行 ってお り,社 員 を料理学校 に派遣 している。
。当社の社員が三重大学生物資源学部で博士号 (醸造法の研究)を 取 得 した。東京農大 を卒業後当社 に入社 し:三 重大学の研究生 を経て
ドクターコースに入学,博 士号 を取得 した。
当社 のメリッ トとしては,開 発 レベルの高度化 ・質の向上,外 部に 対する PR効 果がある。
③ 行 政への要望
。国産大豆の価格 は入札で決まるため値段変動が大 きい̀何 らかの安 定化策が必要である。
5.株 式会社 ビーイング (訪問 日 :平 成 15年 9月 2日 )
① 会 社及び事業所の概要
。1984年 (昭和 59年 )に コンピュータ関連の販売会社 として津市で創 業 し,そ の後,土 木積算 システム等のソフ ト開発 ・販売,イ ンター ネ ッ トプロバ イ ダー運営 を手が けて きた。現在 も本社 は津市 にあ る。
・現在は,国 内における土木積算 システムのシェアは 44%で あ り,
N O . 1 を 誇 ってい る。
・全国 15個 所 に営業所,4個 所 (東京,名 古屋,三 重,福 岡)に 開発 室がある。
・全社員数 は約 210名 で,津 の本社の従業員数は現在 62名 である。そ の うち,約 20名 が ソフ ト開発者である。
・建設業の体質 (談合体質か らの脱却や IT化 等)の 変化が,当 社 に とってチ ャンス と考 えている。
② 経 営状況,受 注状況等
・ライバル会社 との激 しい価格競争のため値下げを余儀 な くされてお り,同 じ機能 を持つ ソフ トで も販売価格 は数年前の約半額 となって いるため,売 上額 も減少傾向にある。
・プログラムの一部 を外注する場合があるが,昨 年か ら外注 していな い。変動費 を抑 えて コス ト削減 に努めている。
③ 三 重県で操業す るメ リッ ト ・デメ リッ ト
◆特に二重県に立地するメリットはない。
人件費 は東京 に比べ て安い ともいえず,ま た,優 秀 な人材 の確保 に は不利である。
福 岡に も開発室があるが,福岡での採用 は九州全体か ら応募があ り, 優秀 な人材 を集めやすい。二重県 には福 岡の ような求心力はない。
・販売面で もメリッ トはない。
・プログラムの外注先は東京 に多 く,三 重にはない。Face to Faceの 関係 も必要だが,外 注先 は全 国 どこで もか まわない。
・あえて言えば,住 環境や余暇の面などで,三 重県の豊かな自然環境 が評価で きる。
( 2 9 )
論 説