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平成17年度研究開発自己評価書

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42 長崎大学教育学部附属中学校 17〜19

平成17年度研究開発自己評価書

Ⅰ 研究開発の内容 教育課程

(1) 編成した教育課程の特徴

① 脳科学研究の成果を活用した学習ステージ「BEST」の新設

脳の前頭前野を効率的に活性化させる活動に取り組み,学習や諸活動へ向けての脳のウォーミ ングアップを行うとともに,継続的に取り組むことで自己に自信を持つ学習ステージ「BEST

Basic,Effective,Speedy,Training )」を新設した。全学年に各35時間設定し,週当たり 1時間として,毎日,朝と昼に各5分間実施する計画で運用した。

② 自己の個性や生き方を探求する学習ステージ「自己探求」の新設

多様な探究活動に取り組むことで,さまざまな面から自己を見つめ,理解し,理想とする自己 や自己の個性,生き方について探る学習ステージ「自己探求」を新設した。第1学年65時間,

第2学年120時間,第3学年200時間設定し,その中を,「学問探究」「教科探究」「社会探究」

「表現探究」「地域探究」の5つ 学問 教科 社会 表現 地域 振り 合計 の探究活動で構成し,実施した。 探究 探究 探究 探究 探究 返り

各探究活動の授業時数は右の 第1学年 18 35 12 65 表のとおりである。 第2学年 35 35 35 15 120 第3学年 35 70 70 15 10 200

(2) 教育課程の内容は適切であったか

① 脳科学研究の成果を活用した学習ステージ「BEST」

基礎研究と位置づけた平成16年度は,毎朝5分間の実施であった。本年度は,これを朝昼各 5分間として実施したところ,第1学年の記録の伸びが,平成16年度の第1学年同時期の伸び の約2倍となった。すなわち,トレーニングの記録は,実施回数を増やし,継続的に行うことで,

確実に向上すると言える。また,教師による生徒の観察においても,BEST実施時に,生徒が 一気に集中して活動している様子が見られるとともに,日常生活から学習活動への態勢の切り替 えをスムーズに行うことができているなどの成果が得られた。一方で,学習直前にトレーニング を行うことが,その後の学習効率を上げることに直結することを考慮すると,BESTの活動は,

朝昼各5分間でも不十分であると考えられ,授業時数を増やす必要がある。

② 自己の個性や生き方を探求する学習ステージ「自己探求」

自己の個性や生き方を探求するというくくりで,5つの探究活動を設定したことで,生徒の探 究の場を多方面から提供することができた。学問探究,教科探究の応用・発展的講座については,

生徒が将来の自己に目を向けることに有効であり,教科探究の補充・深化的講座,社会探究,表 現探究については,現在の自己を見つめことに有効であると考えられる。探究の場が多いため,

広く浅く多く経験することができる一方で,探究に必要な基礎的な事項が不十分等の理由で,各 探究活動を未消化のまま終えることもあり,各学年ごとの時数の設定を再検討する必要がある。

(2)

(3) 授業時間等についての工夫

① 「BEST」の授業時間の工夫

日常生活から学習活動へ態勢を切り替えるとともに,トレーニング後の学習効率を上げるため に,朝の学級会と第1校時との間,昼食・昼休みと午後最初の授業である第4校時との間に,そ れぞれ5分間のBESTを設定した。また,毎日継続することで効果が上がるという脳科学研究 による知見を基に,モジュールによる運用を行った。

② 「自己探求」の授業時間の工夫

生徒の学習の負担を考慮し,探究活動ができるだけ重ならないように,実施時期を次のとおり とした。表中の網掛けをした部分が実施した期間である。なお,年間を通じて毎週行った方がよ い活動については,時間割に位置付け,必修教科と同様の運用を行った。

学年 探究活動 週当た 4月〜 6月下旬〜 10月中旬〜 1月〜

り時数 6月中旬 10月上旬 12月 3月 第1学年 表現探究

地域探究 教科探究 第2学年 学問探究 教科探究 社会探究 地域探究 第3学年 学問探究 教科探究 社会探究 地域探究 振り返り

③ 日課の工夫

平成17年度は,次のような日課とし,朝,昼,放課後の時間にゆとりを持たせ,学習・活動 への集中と休み時間のリラックスをバランスよくとれるよう配慮した。また,運動・清掃の時間 を設定し,各学級を2つの班に分け,1つの班が清掃を行うときは,もう1つの班が自己のペー スを決めて運動場を走ったり,柔軟運動に取り組んだりすることができるようにした。

朝の自治活動 8:20 8:30 朝の自治活動 8:20 8:30 朝の学級会 8:30 8:40 朝の学級会 8:30 8:40 朝のBEST 8:40 8:45 朝のBEST 8:40 8:45 第1校時 9:00 9:50 第1校時 9:00 9:50

第2校時 10:0010:50 第2校時 10:0010:50

第3校時 11:0011:50 (

第3校時 11:0011:50 昼食・昼休み 11:5012:50 昼食・昼休み 11:5012:50

昼のBEST 12:5012:55 昼のBEST 12:5012:55

第4校時 12:5513:45 第4校時 12:5513:45

第5校時 13:5514:45 )

第5校時 13:5514:45 運動・清掃 15:0015:15 第6校時 15:0015:50

帰りの学級会 15:3015:45 帰りの学級会 16:0016:15 なお,6校時の日は,帰りの学級会の後に,教室の簡単な当番清掃を行わせるようにしている。

(3)

2 指導方法・教材等

(1) 実施した指導方法等の特徴

① 「BEST」の指導と評価

○音読や簡単な計算を行うと,前頭前野を含む脳全体が活発に働くことが科学的な方法により確 かめられていることから,音読や簡単な計算を基にしたトレーニングに繰り返し取り組ませた。

○音読トレーニングに用いる読み物は,内容の難易にかかわらず,すらすらと音読できるような もので,文学作品,古文等のさまざまな文種を素材とした。

○計算トレーニングに用いる問題は,複雑な問題を避け,既習であり,すらすらと解ける簡単な 計算問題とし,2数の四則計算や2つの同類項をまとめる計算を98題行うものや,3項の加 減を56題,3項の乗除を42題行うものなどとした。

○前頭前野がより効率的に活性化するよう,音読や計算をできるだけ速く行わせ,前回の自己の 記録を超えることを目標として取り組ませた。

○自己の記録の伸びを確認しやすくするために,正答数や所要時間等を記録させ,各自のファイ ルにとじさせた。

○取組への意欲の高さを維持させるために,1週間を目安に内容を変更した。

○朝は,朝の学級会の直後であるため学級担任が指導し,昼は,授業の直前であるため,その時 間の教科担任が指導し,多くの教師が指導に当たるようにした。

○評価は,形成的評価とした。具体的には,毎回の記録を基にして,生徒自身が記録の伸びを把 握したり,教師がコメントを書き込んだりすることにより,次の取組への意欲を喚起した。ま た,記録が伸び悩んでいる生徒や,自信を持てずにいる生徒には,面談や助言を行うなどして,

意欲的な取組ができるよう指導した。

② 「自己探求」の指導と評価 「学問探究」

○学問探究の講座は全18回で,6月下旬から12月までの間に開設し,2時間連続の授業を 週当たり1回,第2・3学年合同で実施した。

○人文科学,社会科学,自然科学,文化芸術の4つの分野の中にさまざまな講座を開設し,同 時期に14講座以上を開設することで,1講座当たりの平均人数をできるだけ少なくした。

○選択の機会をできるだけ多くするために,原則として4時間で完結する講座を設定した。

○講座の開設に当たっては,教科の枠にとらわれず,大学の授業科目にあるような専門性の高 い内容の講座を開設し,将来に向けての夢が広がるようにした。また,より専門的な立場か らの指導を可能とするために,できるだけ大学や研究機関,高等学校の先生方をゲストティ ーチャーとして招へいした。本年度は,人文科学系9講座,社会科学系2講座,自然科学系 15講座,文化芸術系8講座の,全34講座を開設し,ゲストティーチャーは,計43名で あった。

○評価は,1講座の実施時間が短く受講生徒数が多い等の理由から,各講座の中では行わず,

振り返りの時間等における学級担任との面談や学習の記録を基に総括的な評価を行った。そ の際の観点は,「探究への関心・意欲」「学問に対する見方,考え方」「自己の適性,可能性」

である。

「教科探究」

○1年間を4つの期間に分け,Ⅰ期(4月下旬〜6月中旬),Ⅱ期(6月下旬〜10月上旬),

Ⅲ期(10月中旬〜12月下旬),Ⅳ期(1月中旬〜3月中旬)として,期ごとに開設した講 座を選択させることで,教科探究を編制した。

(4)

○教科探究の講座は,第1学年はⅣ期に9講座,第2学年はⅠ期に10講座,Ⅱ期に9講座,第 3学年はⅠ期に10講座,Ⅱ〜Ⅳ期に各8講座を開設し,授業は,週当たり1回2時間連続 で行った。

○1つの講座の人数を最大30名とし,指導者が生徒一人一人に指導しやすくなるようにした。

○講座選択に際しては,生徒の第1希望から第3希望までを調査し,各学年で人数調整を行っ た。その際,なるべく第1希望になるように配慮し,やむを得ない場合は希望順に調整した。

○各必修教科において,それぞれの教科の特性や授業における生徒の学習状況等に照らして,

生徒にとって必要性が高いと思われるものを主な学習内容として設定し,基礎・基本の習得 を図る講座をA,応用・発展的な学習内容に触れさせる講座をBとして生徒に提示した。

○授業形態については,生徒の自主計画によって学習を進めるタイプ,教師が一斉または個別 の授業を行い学習を進めるタイプ,あるいはその2つを併せて行うタイプの区別を行い,全 体オリエンテーションにおいて生徒に知らせることで,選択する際の一助とさせた。

○講座オリエンテーションでは,選択した教科に対する生徒の考えや知識・技能の習得状況な ど,現在の学習状況を正確に把握するため,個人面談や質問紙を用いた調査等を行い,その 結果を基に,個に応じた課題を設定したり,適切な評価を行ったりするなど,教科探究全体 を通した基礎資料として活用した。

○課題追究時は,生徒一人一人にノートを用意させ,すべての講座の学習記録を記入したり,

資料を貼付したりさせることで,教科探究の学習履歴を残させた。また,形成的評価を行い,

講座担当者が,このノートに随時記入するようにした。

○各講座の最後の時間には,振り返りを行う場を設定し,講座オリエンテーションで行った調 査を再度行うなどして,学習の成果と今後の課題について確認させた。また,学習の振り返 りを記入させて回収し,コメントを記入した上で返却し,総括的評価とした。

○評価は,各講座担当者によるコメントやノートの記述によるものに加えて,振り返りの時間 等における学級担任との面談や学習の記録を基に総括的に行った。その際の観点は,「課題解 決への関心・意欲・態度」「課題を追究する力」「課題追究の成果」である。

「社会探究」

○社会探究は,第2学年後期から第3学年までの1年半の期間に設定し,授業は週当たり1回 2時間連続で行った。ただし,本年度の第3学年は1年間である。

○各学年所属の教師が担当した。

○人類や社会の諸問題の中から自らの課題を設定し,追究することを通して,社会と自己のか かわりについて探る学習を行った。

○生徒が主体的に学習に取り組み,自己の個性を伸ばせるような活動を展開していくために,

生徒の特性や興味・関心等に応じた適切な課題設定をさせる必要があると考え,課題設定の 際に次のような工夫を行った。

①「人類や社会の諸問題に関する意識調査」を行い,生徒が興味を持ち,追究したい内容を 把握する。

②社会探究の意義やねらいを生徒に示すとともに,事前調査の結果を基にした講話を行い,

人類や社会の諸問題についての意識を高めることをねらいとして,教師による問題提起を 行う。本年度は,環境,政治,経済,健康,人類,情報,平和,文化というキーワードを 人類や社会を見つめる窓口として設定した。

③教師の講話や,日ごろから関心を持っている諸問題を基にして,追究課題案を作成させ,

提出させる。追究課題案が適切でない生徒に対しては,面談を行い,課題を再検討させた。

(5)

○評価の観点は,「人類や社会の諸問題についての感性・主体性」「共同・共生の意識」「社会的 諸事象についての創造性」「調査・研究についての技能や自己の意見の表現」「人類や社会の 諸問題についての知識・理解」である。

「表現探究」

○表現探究は,第1学年で週当たり1時間の授業を通年実施した。

○第1学年の教師が担当し,生徒一人一人が持つ思いや課題に応じるために,ティーム・ティ ーチングによる指導を行った。

○主な指導内容を次のように設定した。

①送り手及び受け手の姿勢

②さまざまな表現手段の特長や効果

・音声言語表現(言葉の明瞭さ,間の取り方,音調,強勢,速度 等)

・音表現(効果音,BGM 等)

・ビジュアル表現(文字,絵,図表,カット,枠組み,記号,レイアウト 等)

・身体表現(表情,身ぶり,うなずき,アイコンタクト 等)

③表現手段の組み合わせによる表現効果

④内容や受け手に応じた表現方法の選択・工夫

⑤視聴覚機器やコンピュータ等の効果的な利用

⑥対話,討論,ディベートの意義や効果

○自己の思いを明らかにしたり,表現について振り返らせたりする活動では,個別学習の形態 を中心とした。また,対話における場の雰囲気や発信対象への伝わり方などをつかむ活動で は,必要に応じてグループ別・コース別学習などのさまざまな学習形態で指導した。

○生徒の思いや課題の多様性に応じるために,TTによる指導において,1人の生徒に双方の 教師がかかわることで,異なる視点から生徒に助言を行った。

○表現の起点となる自己の思いの発掘を丁寧に行わせるとともに,さまざまな表現活動の場に おいて,自己の思いに立ち返るような題材構成,学習指導の工夫を行った。

○評価の観点は,「自己の考えや思いを明らかにする力」「表現の工夫」「自他の理解への意欲」

である。

「地域探究」

○地域探究は,全学年で6月下旬〜10月上旬に設定し,各学年所属の教師が担当した。

○第1学年は長崎を,第2学年は北部九州を,第3学年は関西を探究の対象とした。

○資料等による調査活動に加えて,実地調査を取り入れることにより,探究の対象とする地域 のさまざまな姿に迫ることができるようにした。

○各学年とも9月の第2週に実地調査を設定し,第1学年で1泊2日,第2学年で2泊3日,

第3学年で3泊4日の宿泊を伴う学習旅行を行う計画とした。ただし,本年度は天候の影響 により,各学年ともに日程を1日短縮して実施した。

○集団で協力して課題を追究する活動を取り入れた。

○地域の特色をより深く調査・追究するため,「全体研修」「コース別研修」「班別自主研修」の 3つの形態による探究活動を取り入れた。特に,研修全体の課題を追究するために各班で追 究テーマを設定・追究した班別自主研修では,学習課題の設定・追究の方法,学習成果の発 表の仕方に加え,訪問学習の進め方やマナー等を身につけさせるようにした。

○事前事後の調査活動や探究のまとめに十分に時間を取り,レポートにまとめさせた。

○評価の観点は「課題を設定し,追究する力」「課題追究の成果」である。

(6)

(2) 指導方法等は適切であったか

① 「BEST」の指導と評価

○生徒は,BESTの時間のトレーニングに集中して取り組んでいた。さらに,休み時間と授業 との切り替えがスムーズに行えるなどの感想を述べるなど,学習へ向けた態勢づくりの点から 適切であったと考えられる。

○音読や計算をできるだけ速く行わせ,前回の自己の記録を超えることを目標として取り組ませ た方法は,ほとんどの生徒の記録が向上することから,自信を持たせやすく,効果的な指導方 法であると言える。また,正答数や所要時間等を記録させ,各自のファイルにとじさせること により,自己の記録を容易に振り返ることができている。さらに,教師からのことばかけがし やすい要因にもなった。

○計算トレーニングに意欲的に取り組む一方で,生徒によっては,音読トレーニングへ取り組む 意欲が低かったり,取組にむらが見られたりするため,音読トレーニングの文種の選定や時間 の設定,時間帯の設定等について,再検討が必要である。

○計算トレーニングについては,早く解き終える生徒や計算の答を覚えている生徒が見られるた め,内容の設定について改善の余地がある。なお,計算の答を覚えていることだけが計算速度 向上の要因ではないことは,期間をおいて同じトレーニングに取り組ませた際に,その記録が 向上しているという平成16年度からの実践結果により明らかである。

○多くの教師が指導に当たることにより,生徒を多方向から見ることができるほか,全教師が同 じ考え方で指導することで,生徒への指導の一貫性が生まれた。

○評価に,毎回の記録を利用し,生徒自身が記録の伸びを把握したり,教師がコメントを書き込 んだりすることは,評価活動を自然に促す点で有効であると考えられる。その一方で,面談の 時間を設定することが難しく,評価の場面を整理する必要がある。

② 「自己探求」の指導と評価 「学問探究」

○学問探究において,さまざまな講座を開設し,生徒の夢が広がるようにすることは,生徒に 多様な経験をさせ,視野を広げる点で有効であると考えられる。

○大学の授業科目にあるような専門性の高い内容の講座であっても,生徒は興味を高め,意欲 的に学習した。

○ゲストティーチャーの招へいにより,専門的な内容だけでなく,スペシャリストとしての考 え方や情熱に触れることができた。一方で,打ち合わせの時間を生み出す必要がある。

○友人関係など安易な理由で講座を選択する生徒もおり,選択時の学級担任の指導に工夫が必 要である。また,講座終了後の学級での活動の設定に改善の余地がある。

○講座担当教師の観察による評価が必要であるという意見が,教師アンケートに見られた。

「教科探究」

○生徒に必要な内容で講座を開設することにより,第3希望までの調整で,ほぼ希望通りの編 制ができた。また,希望に基づいて調整することにより,人数の関係で第1希望の講座を選 択できなった生徒が,希望しない講座に入ることがなかった。ただし,第3希望までの講座 に入れることで,生徒の必要性に応じたとは言えないという意見もある。

○多様な授業形態にすることで,生徒が自己に応じた選択をする一助となった。

○講座オリエンテーション時に,調査やプレテストを行い,終了時に同様の調査等を行うこと により,その講座の学習によって成長した点が見えやすくなり,多くの生徒が充実感を持っ て学習を終えることができている。

(7)

○生徒のノートやプリントの記述に対して,評価を教師のコメントとして記すことで,学習の 直後に評価を返すことが可能となり,次の学習への意欲を高めさせることができた。

○生徒は,学習方法を工夫したり,自ら課題を準備したりするなど,意欲的に学習している。

○評価方法はおおむね適切であるという意見が,教師アンケートではほとんどであった。

「社会探究」

社会探究は,第2学年後期からの実施であるため,約3か月間の実施の中での生徒の様子や 教師の所感等を基に,効果・問題点として考えられるものを挙げる。

○教師や第3学年生徒からの問題提起は,具体的な追究課題を立てるための基礎知識を身につ けさせるのに有効であると考えられる。

○テーマを決めて,2〜3回のミニ追究活動を行わせることで,課題の読み取り方や整理の仕 方,自己の考えの掘り起こし方,調査の仕方,まとめ方等を学習することになり,本格的に 1年間追究をする際の土台づくりができると考えられる。

○生徒によって領域・課題が多岐にわたるため,追究のためのグループづくりや担当教師の決 定等が難しくなることが,第3学年での試行により予想できる。

○書籍やコンピュータ等の検索の道具が不足しているため,調査に時間がかかるなど,学習環 境の整備が急がれる。

○学習内容・指導方法・評価方法について,生徒が自己の適性や生き方を探求することにつな がるよう,今後十分な検討が必要である。

「表現探究」

○表現活動を通して,自己の考えを掘り起こすとともに,表現の仕方を工夫し伝えようとする 姿が見られるなど,本年度の指導方法はおおむね適切であると考えられる。

○表現活動に取り組ませることで,レポート作成の技能やプレゼンテーションの仕方が向上す るなど,副次的な効果が見られる。

○必修教科や他の探究活動につながっていくという点から,第1学年において実施することは 有効であると考えられる。

○2名の教師による評価により生徒の多様な姿を見取ることができるなど,教師アンケートで は,評価方法はおおむね適切であるという意見がほとんどであった。

「地域探究」

○地域探究のねらいは,おおむね適切であると考えられるものの,調査活動により生徒が自己 と地域のかかわりを考えることと,適性を考えることとの関連が図りにくい。また,生徒が 適性を探る様子をほとんど観察できなかった。

○各学年の探究の対象に系統性が見られないことやねらいに合致しない部分が多いという意見 が,教師アンケートでは多く挙げられた。

○実地調査の実施時期が天候に左右されることが多いことから,時期の設定に改善が必要であ る。また,事前・事後の指導の時間が不足しているという意見が挙げられた。

○12〜15時間の活動に対し,集団で協力して課題を追究する活動が多くなるため,個々の 生徒の成長を観察し,評価することが難しい。

「自己探求」の5つの探究活動による構成

○本年度は,自己探求のねらいに迫るために5つの探究活動により構成したが,探究活動の種 類が多すぎるため,生徒・教師ともに,各活動にじっくりと取り組んだり,活動によって自 己について考えることにつながったりすることが難しかった。

○5つの探究活動相互の関連を十分理解した上で,各活動の指導に当たることができていない。

(8)

Ⅱ 実施の効果

第1年次の中途であり,実施の効果を述べる段階まで実践したわけではないが,平成18年1月第2週 に,生徒・教師・保護者に対して行ったアンケートの集約結果を基にして,それぞれの効果について述べ ることとする。なお,今後,t検定等による分析を行う予定である。

児童・生徒への効果

① 「BEST」

全生徒に対して行ったアンケートの結果,およそ9割の生徒が,「BESTに積極的に取り組んで いる」「今後も続けた方がよい」と回答するなど,BESTの取組を肯定的にとらえており,同時に,

各授業における学習意欲をBESTの活動によって高めていると考えられる。また,ねらいを十分 把握した上で,自己の記録更新を目標として取り組んでおり,学習上の負担はない。さらに,およ そ3割の生徒が「BESTのような取組を,学校以外で行ったことがある」と回答しており,家庭 等での学習・生活へ転移させようとする態度が培われつつあることが分かる。粘り強さや目標を持 って活動に取り組むことなどの効果も期待できることから,今後検証していきたい。

② 「自己探求」

学問探究及び教科探究では,およそ9割の生徒が「好きだ」「今後も続けた方がよい」,9割以上 の生徒が「積極的に取り組んでいる」と回答しているなど,生徒は,5つの探究活動を肯定的にと らえている。また,学問探究・表現探究ではおよそ8割の生徒が,教科探究・社会探究・地域探究 ではおよそ7割の生徒が「将来の生き方を考える上で役に立つ」「さらに学びたい」と回答しており,

自己実現の基礎を培う活動として効果があると考えられる。学問探究・教科探究・地域探究におけ る学習意欲の高まり,表現探究における表現技能習得及び社会探究における学習活動の必要感の高 まりが,アンケートの回答からうかがえる。

教師への効果 ア 生徒への理解

BEST,自己探求ともに,必修教科では見ることができない生徒のさまざまな姿を見ることが できるとともに,適性や生き方によって丸ごと見取ることにより,生徒理解の視野が広がったと感 じている。また,前研究において取り組んだ「必修教科の指導と評価の改善」の趣旨を転移させて,

指導方法を振り返るためにも,生徒の様子をよく観察しているため,生徒理解が深まっている。

イ 教科への理解

BESTの研究により,教科の理解が深まったと感じる教師は少ない。一方,自己探求の研究で は,特に,学問探究が教科の内容と関連が多かったり,教科探究の講座を考える上で生徒の学習状 況を踏まえる必要があるなど,教科指導との関連があったりすることから,ほとんどの教師が,担 当教科に対する理解が深まったと回答している。

ウ 考え方・指導方法等の改善

BEST及び自己探求の在り方や指導方法について考察・実践することで,研究が深まり,併せ て改善を図ることができている。特に,学問探究で,第2・3学年合同の集団に対する指導方法を 考えたり,表現探究で,教科における表現の指導方法を考えたりするなどの契機となっている。

エ 教師としての満足感

脳科学と教育という新しい領域におけるBESTの研究を行えることに,やりがいや満足感を感 じている。同時に,その効果や評価方法に不安を感じる教師もいる。一方で,自己探求の研究では,

自己の専門性を生かすことができたり,教科について再度学ぶ機会が得られたりすることによって,

ほとんどの教師が満足感を得ている。

(9)

オ 連携・協力

8割弱の教師が,本研究において連携・協力が十分であると感じており,全職員による研究の意 識が高まっている。さらに,情報交換や共通理解を図る時間をうまく見いだす必要性を感じている 教師もいる。

カ 教育実践への意欲及び自信

本校は,教育研究実践校であり,もともと教師の実践意欲が高い集団であるが,エの項目で挙げ たように,他領域の内容を取り入れた先進的な教育実践ができることで,一層意欲が高まるととも に,その成果を自負している。

キ 研究及び研修への意欲及び方法

カの項目同様,研究及び研修への意欲が高い集団であるが,脳科学・中等教育の内容を研究する ことや,科学的な分析により検証することなどに,関心を持ち,研さんを積もうとする意識の高揚 が見られる。

保護者等への効果

① 「BEST」

全家庭へ,質問紙によるアンケート調査を行ったところ,88%の保護者から回答を得た。その 集計によって,保護者の8割が「BEST実施のねらいは,家庭まで伝わっている」と回答してい る。また,4割が「子どもとBESTについて話す」と回答している。さらに,95%の保護者が,

「BESTのような脳科学研究の成果を教育活動に取り入れる必要がある」と回答した。これらの ことから,保護者に対してもBESTの取組は肯定的にとらえられており,その必要性を感じる割 合が高いことが分かる。また,保護者の脳科学研究についての認知状況としては,3割程度が「脳 科学について全く知らない」と回答している。その一方で,複数回答を可として,「ニュース等で見 聞する程度である」が58%と最も多く,「脳科学研究に関する特別番組や特集記事があれば視聴す る」20%,「脳科学研究の成果を取り入れたテレビ番組を定期的に見ている」3%,「脳科学研究 に関する書籍類を購入した」6%,「脳科学研究の成果を取り入れたトレーニングを行っている」

5%,「家庭でも,本校のBESTに子どもと一緒に取り組んでいる」1%という結果であった。今 後,これらの数値がどのように変化するか,また,他校にも調査協力を求め,認識の程度に差が見 られるか等について検証していきたい。

② 「自己探求」

①と同じアンケートの結果によると,保護者の45%が「自己探求実施のねらいは,家庭まで伝 わっている」と回答し,学年別には,第1学年33%,第2学年45%,第3学年57%であった。

個別の探究活動については,2〜3割の認識状況である一方で,地域探究だけは7割を超えている。

また,3〜4割の家庭で「各探究活動について生徒と話す」と回答し,地域探究は5割を超えた。

学問探究では,実施学年である第2・3学年において約4割である。これらのことから,自己探求 については,BESTと比べると,ねらいや取組状況が家庭まで十分伝わっているとは言えない。

また,約95%の保護者が「子どもの将来や現在の生き方について,家庭で話す」と回答したのに 対して,「自己探求の取組により,話すことが増えた」と答えたのは,約15%であった。学年別に は,第1学年11%,第2学年15%,第3学年20%であった。学年の進行につれて自己探求の 全体像が見えてくるためか,この質問を始めとして,学年が上がるにつれて自己探求に対する理解 の割合が高くなる傾向にある。これについても,3年間の実施による推移を見ながら,検証してい きたい。さらに,「自己探求のような取組を教育活動に取り入れていく必要がある」と回答した保護 者は,約84%であり,BESTほどではないものの,自己実現の基礎を培う活動として,自己探 求の実施への期待は高いと考えられる。

(10)

Ⅲ 研究実施上の問題点と今後の課題

平成17年11月に,研究開発における評価(Ⅰ)を基にした教師用アンケートを実施し,全員から回 答を得た。ここでは,その回答を集約した結果,不十分と判断された項目や改善の必要があることとして 多く挙げられた意見をまとめて示す。

「4 とてもそう思う」「3 そう思う」「2 あまりそう思わない」「1 全くそう思わない」という 4段階評価で回答を求め,「4」「3」の評価を合わせた数値が過半数に達しなかった項目を挙げる。

(1)研究の目的・課題

①のイ 研究開発の結果として,何がどう達成されればよいのかが具体的になっているか。

②のエ 教育委員会の考え方や方針等について検討されているか。

②のオ 保護者の意識や地域社会の現状は検討されているか。

(2)研究計画

①のカ 研究の目的や課題の解決が具体的に可能であるか否かが,様々な場面を想定して入念に 検討されているか。

①のキ 研究開発の成果が絶えず具体的にとらえられるように計画されているか。

①のク 実施に伴って生じると思われる問題点や副次的影響が,あらかじめ想定され,その分析 や検討が行われるようになっているか。

①のコ 最終的な成果をどのような形で行うかという計画は考えられているか。

②のケ 同一課題について共同で研究開発を行っている学校との連携が十分配慮されているか。

②のコ 教育委員会や保護者・地域社会との連携や調整などができるようになっているか。

(3)実施

①のク 同一課題について共同で研究開発を行っている学校との連携が十分行われているか。

②のエ 実施の結果は測定値などのみではなく,教師や親の日常の観察や感想なども含め,柔軟 に広く求められているか。

②のカ 実施により生じた副次的な影響も含め広く記録されているか。

この結果を受け,第2年次の研究を計画するに当たり,次のような改善点について検討を行った。

○研究開発の最終的な提言を明確にするとともに,その検証の方法を明確にする。

○長崎大学,保護者,地域社会等の現状を把握し,その結果を踏まえた研究になるように努める。

○本年度知り得た同一課題についての研究校との連絡を密に取るとともに,同一課題について研究を 行っている学校や教育機関との連携が図れるような研究体制を組む。

○実施の記録を計画的に取ることができるように,指導方法だけではなく,記録の仕方についても共 有化が図られるようにする。また,生徒の学習履歴をまとめた個人カルテ(仮称)の作成を急ぎ,

無理なく正確に記録することができる方法の開発を行う。

さらに, Ⅰ 研究開発の内容 の「1(2)教育課程の内容は適切であったか」「2(2)指導方法等 は適切であったか」において述べた課題を受け,BEST・自己探求の時数及び指導内容等を再検討し,

次のような実施計画の修正を行うこととした。

○全教師が創意・工夫を行い,研究開発の成果を上げるために,BESTのトレーニング開発を各教 科単位で検討することとし,教育活動への一層の導入について検討する。

○生徒及び教師の負担等を踏まえて,自己探求の各探究活動の内容・時間数・指導方法等について再 検討し,探究活動を精選・拡充することにより,各探究活動の関連が明確であり,生徒に必要で効 果的な活動・指導方法を研究する。

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参照

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