今田正
マテジッチ会計理論の論理構造 365
1 は じ め に
ヴァッター資金理論をその時矢として, 1950年代後半より本格的な展開を みたアメリカ「現代会計理論」は, 1960年代にいたり諸学説・理論の展開を み,その接近法もまた多様な様相を呈するにいたった。総じて,これら諸説 の会計理論として一つの特徴は,動態論として定形化をみた「近代会計理 論」の枠組を打破し,いわゆる「科学的方法」の導入にもとづく一定の方1)
法に従ってあらたな会計理論の枠組を再構築するところにあるとみられるの であるD
そこにみられるのは,したがって,いわゆる伝統的会計に対する批判であ り,乙れを通じての会計概念の純化・拡大であり,一貫した論理体系の再椛築 の試みである口なかんづ、くそのアプローチの特徴は,まず,明確な用語及び 経験的に有用な概念の形成を強調するところにあるとされ,会計四論lこ数学,
哲学,経済学および行動科学といった分野から一般的科学的用具 (stools) および方法 (methods)を導入するところにある。
そこで,本稿は,右のような現代会計理論のもつ特質の解明の一端とし て,新しい論理構築の試みのなかにあって,一つの明確な特徴をなすマテシ ッチ (R. Mattessich)の 会 計 理 論 に つ い て , 彼 の 主 著 「 会 計 と 分 析 的 方 法2)J (Accounting and Analytical Methods, 1964)に焦点を合せ,その 論理体系の特質とその会計的立味について検討することを企図したものであ
る。
と り わ け , 先 の 「 科 学 的 方 法 」 に 関 し て い え ば , マ テ シ チ ッ は , 経 済 学 的 思 考 (economicideas)や 数 学 的 な 方 法 (methods)あ る い 技 法 ( techniqu es)の会計学への迎用とその成果を強調している3)。特に,ここ では,基礎的会計モデソレのi:jf:}築という観点から,会計の方法論的側面が強調 されるのであるo たとえば,マテシッチは,マトリックスモデノレは従来の 簿記論における言語(language)に 比 べ れ ば , 会 計 の も つ 二 主 分 類i:il}造 (the double classificational structure of accounting)をより理解し易い 形式において表現するものになるという4)
さらに,これに加えて強調されるのは現代測定理論の基礎的概念の導入 にもとづく会計概念の「明硲化」を計らんとすることである。すなわち,
ご く 基 本 的 に い え ば , 会 計 が 過 去 お よ び 将 来 事 象 に つ い て 記 述 す る も の で あ る と す れ ば , い ま 数 量 的 記 述 (quantitative desccription)と測定 (measurement)を同一視すれば,会計は特定の測定活動である,というの である日。
このようにマテシッチの企図するところは,従来の伝統的アプローチに対 して,あらたな「科学的方法」とよばれるアプローチでもって会計理論を再 椛築せんとするところにあるわけであるO そこで以下,マテシッチの企図す るところのものがいかなる論理内容のものであるかということについて,そ の理論枠組および方法とし, '1う点から,まず検討する乙ととする。
注1) Prince, T. R., Extension ofthe Boundavies of Accounting Theory (Cinci‑ nati; Ohio: South‑Western Publishing Co. 1963) , pp. 13‑18. (T. Rプ
リンス若,田中さみ子訳『会計理論の拡大』中央経済社,昭和46年, 15‑25頁。〉
2) Mattessich, R., Accounting and Analitical .J11ethods (I1linois: Richard D.
Irwin, Inc., 1964) . (R.マテシッチ若,越村信三郎監訳『会計と分析的方法」
同文館,昭和47年)
3) Mattessich, R., "Methodological Preconditions and Problems of A General Theory of Accounting", Accounting Review Vol. XIVll (July, 1972) , p. 472.
4) Ibid., P. 473. 5) Ibid., P. 475.
2 マ テ シ ッ チ 会 計 理 論 の 方 法
マテシッチの試みは,前述のようないわゆる「科学的方法」を基礎に,
会計領域の統合的理論枠組の構築におかれているO 彼 は , す で に そ の 主 著 (1964年)に先だって, 1957年論文1)において,会計基準がすでに経済セク ターにおけるミクロおよびマクロ分析に関する問題であるとして, ミクロ会 計および、マクロ会計の統合を捉示し,乙れら諸会計システムの公分母を拍出
マテシッチ会計理論の論理構造 367 し,包括的な公理システムの枠組の構築を試みたのであるD
このようにマテシッチの試みは,より包括的で,より分析的観点から会計 を再検討するということにほかならず,会計の統一的な枠組を示す会計の基 礎的仮定 (basicassumption of accounting)の定式化,すなわち「会計 の一般理論」の構築を主張しているのである。
要するに,マテシッチの方法は,現存する多様な会計システムを包摂しう る一般的な基礎の構築,すなわち「会計一般」を抽出せんとするところにあ る2) とみられるのであるO
かくて,彼自身 I会計の一般理論」の樹立を説くにあたって,つぎのよ うに述べているO すなわち「科学的アプローチの本質はj‑[lJ象化に求められ る3)Jと。もっとも,乙の抽象化のプロセスはいくつかの段階に分解される というD すなわち「まず,特定事象を観察する段階,そして,これらから共 通要素を抽出し,一般的に定式化する段階,そして最後に,このようにして 抽象化された仮説をあらたに個々に関連する事象に迎用する段階である心」
とD かくして I科学的理論」とは,まず演停の体系 (deductivesystm) である,というのであるO そこでは観察されるべき事象は一連の基木的仮説
との結合によって観察可能な結果が論理的に導きだされるのであるの。
周知のように,演枠法は定義および公理でもってはじまり,それから定理 が演律(証明)されるO すなわち演探の体系とは公理一証明一定理の形で全 命題を秩序立ててできる体系であり,公理を前提として定理を推理(j住論) するという形をとるわけで,公理 (axiom)は諸々の前提の集合であり,定 理 (theorem)は結論の集合である。
だが I科学的」アプローチとは,演将法とともに帰納法をも包含するO
マテシッチは帰納‑演将一検証という「科学的」プロセスの全体において会 計(理論)のモデノレ俳築を集合論的に定式化する乙とを計っている6)のであ る。すなわち,理論構築をこのような演搾的アプローチを基礎に会計の一般 理論を公理的体系にまでおしすすめんとするのであるO
それではマテシッチの理論椛成はどのようなものであろうか。彼はまず,
理論椛築の基礎をミクロ会計とマクロ会計の統合ということにおくoすなわ
ち,現存する多様な会計システムを包摂しうるような一般的な基礎を抽出 し,これらの統合をもたらすための統一的基礎の定式化をはかり, もって 会計の統一的な枠組 (aunified frame of accounting)を1苦築せんとする のであるの。つまり,これらすべてのシステムに有効な一般的基礎を確立 し,これから追加的な公理および定義を辺入することにって,佃々の会計シ ステムの特殊性が導きだされるのであるO
ところで,そもそも「科学的理論」とは i)基礎的用語の集合 (aset of primitive terms), ii)定義の集合 (aset of definitions), iii)前提の 集合 (aset of premises),そして iv)結論の集合 (aset of conclusions) から構成される針。なかんつ、く,前提の設定とは帰納法による観察のプロセ スにほかならず,会計の基礎的前提 (premises)ないし仮定 (assum ptions) は全ての会計システムの共通的基礎となるものであり,これらのシステムの 特徴ないし条件の帰納的推論にほかならない。ただし会計世論のごとく) 経験的ないし実際的な理論のiお合においては,すくなくとも基礎的前提の あるものは経験的なもの(命題)であり,それから辺かれる結論もまた経験 的な検証 (empi1ical verifica tion)を必要とするものであるとされるO し たがってこの前提群は,基礎的前提 (basicpremises)と会計システムの 特 定 目 的 に し た が っ て 補 助 的 (auxiliary ) な い し 特 定 の 仮 定 (specific assumptions)に区分されることになる9) 。いずれにしても,マテシッチに あっては,程々の会計システムの共通的な基礎の存在の如何が「会計理論」
を取りあつかっているかどうかの基準であり,乙れら全てのシステムに共通 な基礎的仮定 (basic assumptions common to all of these system)を 抽出することが可能であるとき「会計理論」が成立することになるというの である10)
要するにマテシッチは右のような理論桔成の方法にしたがって,会計に おける抽象化の可能性を追求し,多椋な会計システムから統一的な構造 (uniform frame)を抽出するという方法をとっているのであるO このため マテシッチは会計の一般理論を準公理論的体系として11) , 公 理 と 定 義 お よ
‑‑'‑'‑‑, ~12)
び従属的前提の体系として19個の日リ捉 ( i 基礎的仮定basicassumptions,
マテシッチ会計理論の論理構造 369 ii 特定ないし補助的仮定 specificor auxiliary assumptions)を も っ て 彼 の 理 論 構 成 の 柱 と し て 体 系 づ け て い る の で あ る 。
注1) Mattessich, R., "Towards a General and Axiomatic Foundation of Accountancy," Accounting Resserch, Vol. vrrI (October, 1957). p. 328ー
329.
2) Mattessich, R., Aaounting and Analytical Methods, Preface i. 3) 4) Ibid., p. 8.
5) Mattessich, R., "The Impact.of Electronic Data Processing and Management Science upon Accounting Theory, " Modern Accounting Theory (ed. Morton Backer, New Jersey: Prentice‑Hall, Inc., 1966), p. 512. 6) Mattessich, R., A何ountingand Analytical Method s. p. 10.
7) Ibid., preface ix.
8) Ijili, Y., Mattessich. R., Rappaport, A., Summers, E. L and Thomas. A. L., "Report of the Committee on Foundations of Accoun‑
ting Measuremcnt," Accounting Revie叩 一 一Supplement to Vol. 46,1971, P. 41.
9) 1 bi d., P. 41.
10) Mattessich, R.. The lmpact of Electronic Data Processing and Management Science upon Accounting Theory," Modern Accounting
Theory, p. 513.
11) 'Report of the Committee on Foundation of Accounting Measurement"
(1971) , P. 44.
12) 19個の基礎的前提 (premises)は, (1)基礎的仮定 (basicassumptions)と (2)特定ないし補助的仮定 (specificor auxiliary assumptions)からなり,
(1)前者は会計システムの普通的特質を明示し,特定のプレイス・ホノレダーを提 供し, (2)後者は特定目的に従って選択的に適用されるものである。そこで Die wissenschaftlichen Grundlagen des Rechnugswesens (ドイツ語版)においてシ ステムの'rlfj報目的を明確にすることを要求する新たな基礎的仮定(目的設定 Zwecksezung)を導入し ,Accounting and Analytical Jlethodsの18佃に対して,
19個の基礎的仮定とした。 Mattessich,R., Methodological Preconditions
and Problems of A General Theory of Accounting," Accounting Review (July, 1972) , PP. 484‑485.
3 マ テ シ ッ チ 理 論 の 論 理 枯 造
それでは,マテシッチ理論の論理桔築の方法はどのようなものであろう か。前述のごとく,彼はまず,いわゆる伝統的会計の「ミクロ会計」に対し て,いわゆる「マクロ会計」というものを対置せしめ,その両者の総合とい う論理枠組の拡大において「会計の一般理論」という会計の理論体系の構築 をはかっているのである。そのため,彼は,従来,会計理論は科学的ないしは 仮説的というよりは独断的な性格をもった知識体系として発展し,さらには,
それは利益測定のミクロ的側面とマクロ的側面との統合に失敗していると いわざるをえない,といった批判を設定しつつ1) 会計というものの基底に ある「基礎的な科学的問題J (basic scientific questions)を 明 ら か に す べく「特殊:技術化しない,いっそう普遍的科学的方法 (general‑scientific fasion)で会計を形成しなおす2)Jという方法上の問題設定を行っているの であるD そうして,彼は,ここに現代論理学,科学哲学,マネジメントサ イエンス,行動科学,システムズシミュレーションといったツールを導入す ることによって,これら分析的方法をもって会計方法の精散化,会計概念、の 明確化と基本命題の確立が可能となり,会計は「科学的」な立脚基盤に据え
られるという論理枠組を主張するのであるO
以上は,いわばマテシッチの論理構成の枠組であるD それでは,マテシッ チ理論の基軸をなすものはなにかといえば,それは1"ミクロ会計とマクロ 会計との総合」を論理前提とし,会計に提起されている問題を一般的経済的 事象 (universaleconomic phenomenon)として会計の枠組をとらえめ,
乙れらの経済事象 (events)を一つのフロー・システムとみて,それを描写 する方法として「会計」を位置づけるところにある。
要するに,マテシッチによれば,会計は理論的にも実務的にも所得ないし 宮のフロー現象のさまざまの局面に対して測定を行なうということに関係 するものであるというのである。したがって,彼は,経済科学(economic
マテシッチ会計理論の論理構造 371 science)に関する定量的方法を一つの上位領域 (superdiscip1ine)とみる とき,会計は一つの特定のモデルを形づ、くり,部分的適用領域をもっ,その
4) ー
下位領域 (subdiscip1ine)であるとする O か く て , マ ァ シ ッ チ に あ っ て は,会計は経済事象(フロー・システムとしての)の測定に関する領域ない し方法にほかならないD そもそも, 1"会計」をして記録なり,測定のプロセ スとしての規定(性)を与えるのはこの「方法J(method)にほかならない といい,この会計方法論を諸会計システムを結合させ公分母を捉供する基礎 としているのである的。
か く し て , マ テ シ ッ チ は 公 理 主 義 的 理 論 構 成 に 従 っ て 「 会 計 」 を も っ て
「基礎的仮定によって支えられる方法によって所得環{眉および宮の集計につ いての数量的記述と計四に関する領域である6)Jと定義づけた。そして,
こ の 会 計 方 法 を 基 礎 づ け る も の と し て19個 の 基 礎 的 会 計 の 仮 定 (basic accounting assumptions)を捉示しているのであるO す な わ ち , つ ぎ の ご
とくである。
1. 貨幣価値 (monetaryvalue) 貨幣単位によって表現される加法的価値の集合 が存在する。
2. 時間 (timeinterval)
3. fj1I:造 (structure)
4.二主性 (duality)
s. 集計 (aggregation)
:基本的で(最小なる),加法的な時間(たとえば 日)の集合が存在する。
:実体にとって有意義なカテゴリィーを反映す る,類より1fJJ成される集合(同{白羽の町田〉が 存在する。
:すべての会計取引において,価位は二つの勘定 と特定の日付からなる三次元的概念(順序づけ られた3つの組 orderedtriple)によってわ りあてられる。
:すべての残高は, 1つの(1'iiiW的価値〉ーある勘 定について一定期間中に集計されるすべての (正ないし久の)価値の ~1術和ーを l つの Jlkl序 対にわりあてる。
6. 経済的対象物 (economic0 b jects) 経済的対象物の集合が存在する。
7. 貨幣詰求権の非公平性 (inequityof monetary claims) 負 債 (debts)は, 貨幣価値変動がその間にあるなしにか〉わら ず,法1]:の額面価値で償還されるという慣習が 存在する。
8. 経済行為者 (economic agents) 会計システムに対して特定の目椋を設定 し,資源を管理し,経済活動に関して計画を立 て志志決定を行なう経済行為者の集合が存在す
る。
9. 実 体 (entity) :経済活動の枠組を設定する実体の広合が存在す る。
10. 経済的取引 (economictransactions) 経済的取引とよばれる経験的現象の 集合が存在する。
11. 評 価 (valuation) :ある会計取引にわりあてられる価値を設定する 仮説の集合が存在する。
12. 実 現 (rea1ization) 実体の所有する経済対象物¢変化がもたらす効 来について明らかにする仮説の集合が存在す
るO
13. 類 別 (classification) 勘定去を設定するために必要とされる仮説の架 合が存在するO
14. データ・インプット (datainput) 会計取引が桔成されるべき投入データの 形式と総計の程度を決定するに必要な仮説の集 合が存在する。
15. 継 続 期 間 (duration) 考察の対象となっている実体(または諸実体〉
の存続性および個々の会計期間ないし下位期間 の継続期間 lとついての仮説の集合が存在する。
16. 拡 張 (extension) 2つまたはそれ以上の会計システムを定結し,
1つの包括的なシステムに拡張するための経験 的条件を特定するところの仮説の集合が存在す る。
17. 主 要 性(materia1ity) 経済取引やそれと関連する亭象がいかなる場
マテシッチ会計理論の論理構造 373 合,いかなるときに会計取引に反映されるべき かを決定する仮説が存在する。
18. 配 分 (allocation) 実体の有する経済対象物ないし用役のフロー を,下位実体もしくは類似のカテゴリーに配分 する仮説の集合が存在する。
※目的設定7)(Zwecksetzung) 特定の会計システムが充足させるべき特定の情 報要求ないしは情報目的が存在する。会計規則 (特定的仮説)は乙の目的または要求に応じて 選択される。
かくて,この会計の領域規定と19個の基礎的仮定は,諸会計システムの公 分母として会計概念を構成し,方法的基礎を体系的に示している口すなわ ち,前者の会計の領域規定は会計概念の「対象」すなわち外廷を示し,後者 の諸仮定は,その「脈絡」すなわち内包を示し,両者は相まって多様性の統 ーとして8)会計の一般理論の必要・十分条件を示すものとされるのであるD
また,これら基礎的仮定は会計システムの統一的基礎として,また一般命題 から演揮によって定理が導かれるという意味において公理の体系として示さ れているのであるO ただし,基礎的仮定は,むろん会計の一般的特質を表示 するものであるが,理論体系としては,これに経験的仮定(特定の経験的仮 説)を必要とするO したがって右の前提群は,基礎的仮定と特定の目的ない
しモデノレに従う補助的仮定というこつのグループに区分されるのであるD
さて,マテシッチは前述のごとく会計を定義して「所得の侃践と宮の集計 に 関 す る 数 量 的 記 述 と 計 画 」 を お こ な う 領 域 で あ る と 規 定 し た の で あ る が,ここに「数量的記述J(quantitive description)とは広義の「測定」
(measurement)に等しく,彼は,会計方法の基本的特質を測定の問題とし てとらえ9) その測定対象の内包する測定原理ないし方法的基礎を「二主性 原理J(duality principle)として拙出し,基礎的仮定を貫く基本原理とし て設定するのであるO ここではすでに i二主性原理」は会計と同義に用い られているとみられるのであり,そもそも,マテシッチは,会計とは経済事 象を体系的に記述し計量化するための方法にほかならないというのであるO
したがって,彼は「二重性」概念を方法論上の成果とみ,すでに会計のうち に方法としての「二重性原理」が存在している10)と,論理化するのである。
すなわち,経済事象 (economicevents)を抽象的で数学的な取引の観念 に分解して把握するということは基本的にそれ自体に二主の分類行為が許さ れるような二元的特質(twodimensional)が存在していることによるという のである11)口マテシッチは会計の複式記録形式と区別される,経済事象す なわち取引やフローのもつギィブ・アンド・ティク,あるいは投入・産出と いった二面的な論理構造をいわゆる「二重性」として抽象し,この「二重性 原理」をして会計システム成立の基準にすえるという論理展開を行なってい るのであるO したがって測定対象のもつ論理構造が「二重性」においてと らえられれば,それは会計システムをとりあつかっているというととにな る12) というのであるD かくてマテシッチによれば,会計(学)は,計量 経済学 (quantitativeeconomics)の一部門として位置づけられることにな り,かつまた,その特色は「二元性類型群J(、duali tysyndrome〆ノ)とでも 呼 ば れ る べ き 特 殊 の 方 法 (methods)お よ び 一 連 の 仮 定 (assumptions) によって特徴づけられているのである 13)いずれにせよ,マテシッチは,
すべてのフローが基本的に二つの次元を有していることを主張し,これを会 計の数学的・論理的な構造の基礎としているのであるo
以上から知れるように,マテシッチは,なによりもまず,経済事象という ものを一つのフロ概念(フロー・システム)においてとらえ,それを二重分 類モデノレという方法で描写する手段を「会計」と称しているのであるO した がって論理的には,あらゆるフローシステムが会計方法の対象となりうるわ けであるD ただ,マテシッチは
r
会計」を所得や宮をその測定対象とする 経済的な会計システム (economicaccounting~~-') に限定しているにすぎな14)いのである。こうして彼は r二重性原理」を,経済的会計システムのすべ てが所得と富をとりあつかっているという事実とあわせ,会計システム一般 の基礎としているのであるO このように
r
二宣性原理」そのものは,それ ぞれの経済事象を二元的に分類するための理論椛造を示すものであって,個 別的記録方法にまで言及するものではない。マテシッチ会計理論の論理構造 375 ところで,マテシッチは会計の測定対象たる所得を定義して,それを一 定期間中に経済主体の生産と消費聞における財・用役すなわち宮のフロー (宮の増分ないし減分)であると規定し15) これをフローの概念において把え ているO すなわち,経済活動とは生産と消費聞における経済主休聞の経済財 の取引・移転といった多数の「経済取引J(economic transaction)という 関係にほかならない。ここに,この経済活動の1411組を設定するものとして,
すなわち所得測定の枠組を固定するものとして実体概念が導入されるのであ り,また実体(概念〉はこの経済活動の主体としての会計単位であるoか くて,会計実体は経済対象物 (economicobjects)と経済主体 (economic agents)との複合概念であり,これら相互関係のうえに実体問または実体 内の経済取引が成立するのであるO そして,この実体内の経済取引が成立す るのであるo そして,この実体を構成する経済対象をカテゴライズし,一つ の分類体系を与える,すなわち実体を構造化する手段として勘定(集合〉の 概念が設定されるのであるO マテシッチは,これをつぎのように定式化して いる〉。
集合Anはつぎの条件が成立するとき,宍体enの勘定の集合 (setof accounts) とよばれる。
i) An {al: alCan, en,i=l, ・…・・,y},enE.E ii) a,(i=l,… …v)は同位類である。
iii) 勘定(同位類〉のあるものは,他の勘定の部分集合である。
iv) α t~a't(i=l , … y) で at コ en,a't C, em, enフιemであるような勘定a'tが 存在する。
すなわち,上式は特定の実体をカテゴライズする勘定集合が存在する乙 と,これら勘定はまた,直接に経済対象物の同値類ではないとしても,たと えば貸借対照表といった上位勘定を分割して得られる同値類の集合であると いう芯味での抽象的な実体の同値類であり, iv)は実体相互間に同値な勘定 が存在することを示している。
ところで,マテシッチにあっては,会計の主要な機能は分類(c1assifica‑
tion)と評価 (evaluation)にあり,会計学は一つの測定の理論と解されて いる17)。彼によれば,測定活動とは,その対象と測定尺度との一つの範時 間の一対ーの対応関係を定めることにほかならず,まず測定の基本は分類に ある18)とされている。とくに会計という分類体系においては,その基本は 対象の分類を可能とする一連のカテゴリーないし類,または集合の記号表 現たる名称尺度 (nominal scale)と,それらを、順序づけるグ順序尺度 (ordinal scale)の結合からなり19) それを可能にし,その機能を担うの が勘定にほかならない。かくして,この勘定集合による宍体のt!l}造化を前提 として,会計という二重分類アプローチは経済データの二重分類による測定 が可能となるのである。
ト ヲ ン ザ ク タ ー
そこで,マテシッチはフローとしての経済取引を2つの取引要系 (tran‑ sactors)聞の関係(順序対〉においてとらえ,この二主性のうえに, 乙のト
ランザクターが勘定である取引が会計取引であると変投しているのであるO
乙のため,彼は,代償的 (requited)および非代償的 (unrequited)取引
〈またはフロー)という概念を導入し20) 一対の実休問の代償的取引が4つ の勘定聞の関係として 2つの実体閉会計取引と通常いう 2つの実体内会計 取引(記録)として表現されるという概念的図式化を行っているのであるD
つまり,代償的取引とは一方の実体から他方の実体への財・用役の流れとそ の対価の逆の流れという対になって生ずるものであるO と乙ろで,経済取引 は会計取引を通じて記録されるのであるが,代償的取引の対は2つの実体問 会計取引に反映されることになるO この場合, 2つの取引のうち,どのlつの 取引のトランザクターも同値類を示し,またlつの取引の負のトランザクタ ーと他方の取引の正のトランザクターとが同ーの実体に属することになるO
すなわち代償的フロー(の対)は,それと 1対1で対応する実体間取引によ っても,またそれと同型ではないが同じ結果をもたらす実体内取引によって も表わすことができるのである 21)。いずれにせよ,取引は i)2つのト ランザクター, ii)時点, iii)わりあてられるべき価値,という三つの複合 概念として「二重性」の仮定を満たしているD このようにマテシッチは,会 計取引の概念構成にあたって,経済的取引(またはフロー〉を代償的取引とし
マテシッチ会計理論の論理構造 377 て措定し,これを布筒しつつ,それをトランザクタ一関係として会計取引の 概念を設定しているのであるO この場合,取引とは,まず経済的対象のフロ ーと観念されており,そして,それはこのフローをつなぐトランザクター聞 の関係,すなわち正および負のトランザクタ一間の関係として抽象化してと らえられているのであるD そうして会計取引とは,このトランザクターが勘 定である取引にほかならないのである。かくて,マテシッチはつぎのごとく 定式化する22)。
取引Fは,負のトランザクター(めの元と正のトランザクター(π〉の元のあいだ に成立する関係であり,その双方に対して時間 (T)の元が付与され,経験的仮説に よって価値 (V)が対応せしめられる。すなわち ,F(k!,kj,t")=v"!jは,つぎの場 合にかぎり,取引を;古味する。
i) k!EV ii) k!E7t
iii) k! Cem, kj Cen
iv) ん!=kjで emチen,または,k!ポkjで em=en
v) t7:E T
vi) v"!j>O, v!j7:EV
ここにトランザクターとは経済的対象物の集合 (0)の同値関係Rに関す
23) ー
る商集合 (OjR) のyじたる同値類 (OjR={k!(o!):o!EOjそのものではな い。たしかにん!,んそのものは経済対象oi(oi EO)およびojを類別する同 値類であるO ただし取引における特定実体を前捉とするかぎり, トランザ クターは(一つの実体内の同値類を芯味し)k! n em =ん!(m) として定義さ れる24) k! (m)は 丸 の 部 分 集 合 で り , そ れ は 任 立 の 同 位 類 の 一 時 的 状 態 を 芯 味 す る 。 か か る な 味 で は , よ り 正 確 に は k!(m) は k!r(m)であるO
そしてトランザクタ ‑ l~!r(m) が取引の時点において負のトランザクター ( v)の類または正のトランザクター (π)の 類 の い づ れ か に 属 す る ( 類 別〉されるのであるD ところでトランザクターはんl(m〉=cvおよび、ん(m)C 7t
であるから,ある特定時点において k!(m) =V! (m)お よ び ん(m)= 引 くm)で あると仮定でき, したがって上式の経済取引は,