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店頭及び広告エンゲージメントが 店内における成果行動に与える影響

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店頭及び広告エンゲージメントが 店内における成果行動に与える影響

―― 店舗特性に対する知覚水準の調整的役割を中心に ――

閔 庚 炫

本研究では,店内における消費者の購買行動に影響を与える店頭広告の誘 因効果に関して,店頭コミュニケーションにおける識別手段として店頭及び 広告エンゲージメントという概念を採用しつつ,特定の店内刺激がエンゲー ジメントを介し最終的な成果行動へ移行される補完・代替的経路をより精巧 に規定することで,店頭におけるエンゲージメントの戦略的活用方法に関す る基礎的考察を行った。さらに,本研究では,様々な広告情報が混在する購 買環境のもと,各種選択手続きにおける両エンゲージメントの類型的特徴を より明確に示すべく,店内においてインプットされる環境的要素から形成さ れる店舗特性に対する消費者の知覚水準が両変数の相互効果をいかに伸縮さ せるかという問題に関する検証を行うことで,店舗特性と店頭及び広告エン ゲージメントが成果行動に与える影響の構造的条件の抽出を試みている。

Ⅰ はじめに−問題提起

近年,個別店舗を巡る競争環境の変化と共に,品揃えやコンセプト,雰囲気 など,店舗を構成する諸要素が独自性に乏しく差別化されていない店舗と多様 な個別特性からなる不特定多数の顧客とが無作為な関係性を形成する時代か ら,特定の店舗が持つ価値と個々の消費者との適合性をいかに識別し訴求する かという問題が店舗戦略の重要な要素として考慮される時代へと変化しつつ

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ある。このような背景は,消費者の店舗選択の手続的側面を把握し,特定の 店舗が選択される構造的条件を明らかにすることで,店舗戦略の立案過程にお いて消費者に知覚される店舗特性を重要な戦略的オプションとして活用しよう とする各種取り組みを牽引するものとなっている(Turley & Milliman, ;

Goldman, ; Moya & Kincade, )。先行研究において消費者の店内行動

及び店舗選択に影響を与える要因として提示されているものは,店舗における 環境的要因のうち,主に当該店舗に関連する物理的要素に関する認知的評価の 成果から,POPのような店内広告を含め多種多様なマーケティング刺激,そ して当該店舗に関連する消費者のイメージや情緒的反応に至るまで,多岐に わたっている(例えば,Mazursky & Jacoby, ; Bearden & Mason, ; Bloemer & Ruyter, ; Hutcheson & Moutinho, ; Kalcheva & Barton,

)。実際の購買環境では,それらのインプット要因の全て,あるいはその 一部が多分に複雑な相互作用を通じて消費者の選択行動やロヤルティに影響を 与えており,そのような影響は当該店舗における有形・無形的手掛かりが消費 者に知覚される過程の類型的特徴により伸縮することとなる(Zeithaml &

Bitner, )。なお,各インプット要因は,その類型的特徴に加え,互いに有

機的かつ円環的に関連しており,それを知覚し評価する消費者の個別特性や主 観的価値判断などといった初期条件の相違により成果行動に対する効果の水準 が伸縮するため,単一要因の独立した効果や各要因間の相対的重要度は識別し 難いものとなっている(Hu & Jesper, )。

諸要因のうち,店内において消費者に提示されるマーケティング刺激は,成 果行動との対応関係が比較的容易に推定できるものであるものの,そのいずれ も店内においてインプットされるその他の環境的要素と同様,追加的情報処理 の対象であるため,当該広告が購買関連の情報処理過程への移行を促すだけの 知覚水準を満たすものになっていなければ,必然的にその効果は低下すること となる。そこで先行研究では,そのような広告に対する知覚水準を規定する概 念としてエンゲージメントという尺度が提案されている(Wang, )。これ まで広告効果におけるエンゲージメントの影響に関する研究はマスメディアや

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ウェブ・メディアを中心に比較的活発に行われてきているが(例えば,Calder

& Malthouse, ; Eubank, ),店内におけるエンゲージメントについて

は,現場における戦略的オプションを見出すのに十分な知見が得られていると は言い難い現状にある。また,店内においては,ノイズとして処理されるイン プット要因が多く,最終的な成果行動に影響を与える先行変数として店頭広告 に対するエンゲージメントに加え,店舗そのものに対するエンゲージメントを も想定する必要がある。

以上を踏まえると,特定の店舗を規定する特性は,店舗に関連する物理的要 素への認知的評価と,店舗に関連するイメージ及び情緒的反応の成果という つの側面に分類され,それらが個別ブランド及び商品に関するマーケティング 刺激の効果や購買行動といった,消費者の成果行動に影響を与えると想定する ことができる。成果行動に対する店頭広告の効果をより精巧に規定するには,

店内においてインプットされる環境的要素が消費者の認知体系の中でいかに受 容され処理されるか,それらが店頭及び広告エンゲージメントといかに関連し ているか,さらに成果行動に影響を与える要因間の相互効果をいかに解釈する べきかという問題を総合的に考慮する必要がある。このような問題意識に基づ き本稿では,店内コミュニケーション効果の初期段階における二つの先行変数 を成している店頭及び広告エンゲージメントの成果行動に対する影響を明らか にしつつ,店内においてインプットされる環境的要素から形成される店舗特性 に対する消費者の知覚水準が両変数の相互効果をいかに伸縮させるかに関する 検証を行う。

Ⅱ 先行研究の考察及び仮説の設定

店舗特性の類型的分類

近年,店舗形態の多様化に伴い,店舗に対する評価を規定する要因に関する 研究,とりわけ情緒的評価を主軸とする店舗特性に関する研究が多くなされて いる。同一業種及び業態においても店舗ごとの環境的要素の相違が大きく,

当該店舗に対する顧客の評価項目も単一次元で構成されているものではないた

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め,雰囲気やイメージなどといった,店内における様々な環境的要素により 規定される当該店舗の典型的特徴を把握し,それが顧客の店内行動にいかなる 影響を与えるかという問題を明らかにすることは,顧客とのポジティブな関係 性を構築する諸過程において重視すべき課題の一つである。このような個別 店舗の持つ特性は,当該店舗のアイデンティティが反映されたものであると 同時に,消費者が店舗選択及び店内行動を行う上で考慮する重要な判断材料と なり得る(例えば,Aaker, ; Turley & Milliman, ; Kalcheva & Barton,

)。

前述したように,単一店舗の特性を規定する要因には,品揃えや価格水準,

探索利便性などといった物理的要素に関する認知的評価の成果と,当該店舗に 関連する消費者のイメージや経験的・快楽的属性の相対的水準,雰囲気,個性,

レイアウトなどといった無形要素から形成される情緒的反応の成果に分類され る。そのうち前者は,製品・サービスから,店内の物理的環境,立地,価格水 準,広告に至るまで,多様な要素から構成されているとみなされているが,そ のいずれも特定の店舗に属する有形的かつ客観的特性に基づいているという点 において共通した見解に収斂されており,店舗選択及び購買行動に有意な影響 を与えることが確認されている(Bearden & Mason, ; Bloemer & Ruyter,

)。

一方,後者は,特定の店舗における雰囲気や動線,店員及び他の消費者との 持続的な相互作用から発現される「消費者が持つ当該店舗に関する全般的印象」

「当該店舗における消費者の経験知に基づいた情緒的反応」などと定義されて おり,当該店舗に関連するパーソナリティやそれから連想される便益,成果な どが含まれる包括的な評価の結果に基づいている(Mazursky & Jacoby, ;

d’Astous, )。これはすなわち,当該概念が店舗に関する不完全な情報に基

づき推論されたイメージの産物と,他の店舗との相違性を規定する比較的安定 した知覚特性が,共に示されるものであることを意味する。

このように店舗特性は,認知的評価と情緒的反応という二元構造により把握 されており,そのうち後者は,当該店舗が持つ要素の相対的な異質性,すなわ

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ち,当該店舗の独自性が知覚される過程を支えるものであるがゆえに,店舗の 差別化を図る上でより大きな戦略的意味を持つと言える。例えば,店舗特性に 対する消費者の評価が十分肯定的であり,その知覚水準が高い場合,他の店舗 に対する当該店舗の識別難易度が低下することで,消費者は当該店舗の差別的 価値をより明確に認識するようになると想定できる。しかし,このような店舗 特性が購買行動のような最終的成果行動を牽引する初期条件としての役割を 果たしていることについては確認されているものの(Bearden & Mason, ;

Bloemer & Ruyter, ),店舗特性を構成する各要因の個別効果や要因間の相

対的重要度に関しては十分な検証が行われておらず,さらに成果行動までの変 数間の距離が遠く諸過程における媒介変数との関係が明確に規定されていない がために,そのような結果が両変数の直接的な因果関係の詳細を明示的に説明 する根拠になるとは言い難い側面がある。そこで本稿では,店舗への態度と探 索意向を規定する店頭エンゲージメントと,店内における広告効果の初期段階 である露出効果を規定する広告エンゲージメントを媒介変数として想定し,成 果行動の発現過程において店舗特性が果たす調整的役割を明らかにするための 検証を行う。

広告エンゲージメント

消費者行動の分野における先行研究では,媒体を含む広告エンゲージメント が当該広告におけるメッセージの受容水準と選択および購買行動のような最 終的な成果行動に正の影響を与えることが確認されている(Kilger & Romer,

)。店内における消費者は様々な店頭広告との接触を通じてインプットさ れた情報を知覚し自らの認知体系において構造化することで当該広告に対する 態度を形成し,それがブランド及び商品に対する態度や購買意図の先行変数と なっている。すなわち,広告に対する知覚水準がその後の後続効果を牽引する 要因となっており,消費者にインプットされたマーケティング関連刺激の行動 化メカニズムの起点になっている。先行研究では,オーディエンスが知覚した 広告情報に関する評価と情報処理の精巧化の水準が,媒体及び商品に関する関

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与水準や,広告情報に関する普段の選好傾向,態度などといった初期条件の相 違と一致・同化的方向へ収斂されることが確認されている(Petty, Cacioppo &

Schumann, ; Sanbonmatsu & Fazio, )。その意味で,オーディエンスと

当該広告との接触の質が各種媒体及び広告の知覚水準に依存すると言える。

しかしながら,媒体と広告の陳腐化により媒体及び広告に対する知覚水準そ のものが総じて低水準にとどまっており,それが媒体及び広告への注意とその 後の情報処理を強化させる先行条件を明らかにするための様々な取り組みの背 景にもなっている。このような課題を解決するべく先行研究では,広告効果の 初期段階に属する媒体及び広告に対する知覚水準に関連する先行条件のさらな る構造化を図り,その結果,媒体及び広告エンゲージメントという概念が提示 されるようになった(Wang, )。先行研究では,エンゲージメントという 概念を特定のブランドと関連するコンテクストとインプットされる情報との関 係であると定義しており,その測定対象は媒体と広告に分類されるとされてい る(Eubank, )。すなわち,広告エンゲージメントは知覚対象となる広告 に行動主体が没入・没頭している状態を示す概念であり,オーディエンスと広 告との接触の質を向上させることで,広告受容やブランド態度に肯定的な影響 を与えるものである(Marguc & Scholer, )。

店頭広告の場合,広告知覚と成果行動間のタイムラグが比較的短いという点 においてその他の広告の露出環境とは異なっており,必ずしもオーディエンス が以前取得した情報を店内の選択行動における初期条件にするとは限らない が,店舗における環境的要素のインプットにより形成される経験的側面が記 憶のような既知情報と類似した役割を果たしていると考えられる(Calder &

Malthouse, )。その意味で,店頭における広告エンゲージメントは,オー

ディエンス(消費者)が当該広告と店内環境との関連性を知覚する過程におい て活性化されるものであるとも言える。多くの店舗が媒体(メディア)として の役割を果たしている現状を踏まえると,店舗特性に対する知覚水準が店舗に おける媒体エンゲージメントを代替すると規定することができる。

注意すべきなのは,たとえ知覚された広告情報がオーディエンスの注意を十

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分喚起するものであったとしても,その後遂行された成果行動の発現に有効に 働いたものであるとは限らないという点にある。すなわち,オーディエンスが 知覚した広告情報がいかなる条件のもとで活性化され,そのような先行条件を オーディエンスがどの程度知覚したかという問題が,当該情報の知覚水準やエ ンゲージメントを把握すること以上に重要な問題になるということである。そ こで本稿では,店舗特性の成果でもあり,店頭広告の媒体としての役割を果た すものでもある,店頭エンゲージメントという変数を想定した上で,店頭及び 広告エンゲージメントが,その先行条件である店舗特性に対する知覚水準とい かに関連しているかという問題に焦点を当てている。

店頭エンゲージメント

先行研究では,店頭エンゲージメントについて,特定の店舗における消費者 が十分長い時間,当該店舗に関する肯定的な態度のもと,情緒的に没入してい る状態であり,さらには,店内における環境的要素と消費者の個別特性との関 連性により当該店舗に対する信頼と期待が強化された状態であると定義されて

いる(Eliott, ; Mollen & Wilson, )。このような定義は,店頭エンゲ

ージメントの水準が店舗特性と消費者の個別特性の適合性を高めることで確保 されるものであることを意味している。すなわち,店内にいる消費者が知覚し た環境的要素が自らの初期条件と一致した場合,店内における情報処理及び探 索意向が強化され,購買行動のような最終的な成果行動につながる可能性が向 上されると想定できる。したがって,店頭エンゲージメントが十分高い水準に なっている場合,店内における消費者の探索行動が強化され,店内においてイ ンプットされるマーケティング刺激との接触の質も向上することで,諸過程の 成果が当該店舗及び店内において接触する商品に対する態度に肯定的に反映さ れることになるとみなすことができる(Gefen et al., )。

実際,店舗において消費者が知覚する情報の中には,成果行動の遂行に随伴 される便益に対する期待につながるものが数多く存在しており,先行研究で は,特定の情報の知覚段階における期待便益の水準が,成果行動とそれに関連

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する情報処理の目的と一致・同化的傾向へ収斂されることが確認されている

(Loewenstein, ; Raynolds & Olson, ; Kahneman, )。また,消費 者の個別特性と符合する店舗特性を消費者に知覚させることで十分高い水準の 店頭エンゲージメントが確保された場合,店舗に対する信頼水準が向上する ことで店内おける情報処理の難易度も低下され,その結果,店内における探索 意向及び成果行動に肯定的に働く条件となり得る(Brucks, ; Gefen et al.,

)。

しかし,このような店頭エンゲージメントを十分高い水準に保っていくため には,ターゲットとなる消費者の属性との適合性の高い店舗特性を特定し,そ の先行条件となる,店舗特性に対する消費者の知覚水準を向上させる必要があ る。換言すると,店頭エンゲージメントの水準は店舗特性の知覚水準に依存し 伸縮すると言える。以上を踏まえ本稿では,店頭及び広告エンゲージメントと 最終的な成果行動の水準が,店舗特性に対する知覚水準が高い場合と低い場合 とで,相互対照的な局面になると想定した上で,成果行動に対する両エンゲー ジメントと店舗特性との関連性に焦点を当てつつ検証を行う。

研究モデルおよび仮説の設定

本研究における研究モデルは,最終的な成果行動に影響を与える要因を,店 頭広告の初期効果である露出効果の領域に属する「店頭エンゲージメント」と

「広告エンゲージメント」という つの変数に絞り,両エンゲージメントの効 果が店内コミュニケーションの初期段階を規定するものになっているかという 問題に関して,その調整変数として想定された店舗特性に対する知覚水準との 関係に注目しつつ検証するための設計となっている。図 は,本研究で想定し ている仮説・検証モデルを示したものである。

図 の左側には店舗特性の知覚水準が店頭エンゲージメント・広告エンゲー ジメント・成果行動の各水準を規定するための分類装置として設定されてい る。前述したように,店舗特性を構成する環境的要素は大きく店舗に対する認 知的評価と感情的反応の つの次元からなっており,本研究における調査では,

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露出効果 行動効果

店頭エンゲージメント

広告エンゲージメント

成果行動

店舗特性の知覚水準

(高/低)

事後回想の形式による測定を行うことで両次元に対する知覚水準が高い条件と 低い条件に分類している。

また,図 の「店頭エンゲージメント・広告エンゲージメント→成果行動」

の部分には,店内コミュニケーションの成果が最終的な成果行動の評価項目と して想定された,過去の購買行動に関する妥当性判断につながる過程が示され ている。店頭及び広告エンゲージメントは店頭広告の露出効果の測定項目とし て定義されており,後続効果であるコミュニケーション効果については,成果 行動に対するエンゲージメントの直接的効果をより明確に把握するために,今 回の検証項目からは排除することにした。前述した先行研究を踏まえると,店 頭および広告エンゲージメントが強化されると,成果行動の水準も向上し,さ らに,店舗特性に対する知覚水準が高水準に収斂されている場合,店頭および 広告エンゲージメントの水準が共に向上すると予想される。

以上に基づき次章では,店頭及び広告エンゲージメントが,その先行条件で 本研究における検証モデル

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ある店舗特性に対する知覚水準によりどのような様相で伸縮するか,その効果 が成果行動の水準といかに関連しているかという問題に関して以下の仮説に基 づき検証を行う。

H 店頭及び広告エンゲージメントは成果行動に有意な影響を与える。

H 店舗特性の知覚水準は,店頭及び広告エンゲージメントに有意な影響を 与える。

H 店頭及び広告エンゲージメントの成果行動に対する影響は,店舗特性の 知覚水準により伸縮する。

Ⅲ 調査概要及び分析結果

調査概要

本調査において想定している店舗特性の知覚による店頭及び広告エンゲージ メントの変化をより明確に観測するためには,店舗形態として,消費者の選好 や規範,そして価格等の行動統制要因に比較的影響されないカテゴリーを選定 する必要があった。そのため,事前調査を通じて選ばれた複数の店舗形態から,

店舗に対する選好水準による評価の相違が十分小さいか,当該店舗における 回答者の利用経験が十分に蓄積されている店舗形態か,当該店舗に関する知識 水準の相違が十分小さく,親しみのある店舗形態であるか,店舗特性の物理的 要素に関する認知的評価が一定水準に維持されるような店舗形態であるか,な どを総合的に考慮した上,最終的に総合スーパー(GMS)を検証対象として 選定した。本調査は実験調査の形式をウェブ上で具現したシナリオ法に基づき 実施された。

本調査の回答者は,過去 年間,総合スーパーを月 回以上利用し,直近 ヶ月間,総合スーパーでの購入経験を持つ都内在住の 代から 代の男女

名から構成されており,男女比率,年齢構成比は共に均等割付けにて募集 した。本調査は,店舗特性の知覚水準による店頭及び広告エンゲージメントの 変化の推移が容易に観測できるように,シナリオ法による実験調査をWeb上 で具現する形式で設計を行った。まず,回答者には,最初に提示されるシナリ

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オを通じて,過去 ヶ月間利用している総合スーパーのうち任意の 店舗を想 定した上で,当該店舗における利用経験を連想しつつ設問に回答するよう指示 を行い,その後,店舗特性,店頭及び広告エンゲージメント,成果行動に関す る妥当性判断に関する設問に答えてもらった。

本調査において想定している変数の測定は全て 点尺度により行った。ま ず,店舗特性の知覚水準に関する評価は,当該店舗の物理的特性に対する認知 的評価に関する つの項目と,情緒的反応に関する つの項目で測定した。前 者は,「品揃えは豊富か」「商品の価格帯は妥当であるか」「利用利便性は高い か」で,後者は,形容詞を用いたリカート方式となっており,当該店舗から連 想されるイメージが「暖かい」「洗練された」「清潔な」「楽しい」「ユニークな」

という形容詞にどの程度当てはまるかを聞くことで測定し,その平均値を店舗 特性という変数の合計得点とした。また,店頭エンゲージメントの評価は,「好 みに合う」「価値観に付合する」「長時間利用することが多い」「利用している 間,疲れることはない」という 項目で測定した。さらに広告エンゲージメン トは,「注意を引く」「広告を見ることは楽しい」「広告の内容を細かく見てい る」という つの項目で測定し,広告回避行動に関連する逆転項目として「広 告を見ていると気が散る」という項目を加え,その平均値を当該変数全体の合 計得点とした。最後に,成果行動については,本調査が事後回想式の設計になっ ており,評価対象となる店舗が複数の個別店舗からなる総合スーパーであるこ とを考慮し,当該店舗での購買行動は「正しい選択であったと思うか」「ニー ズに符合しているか」「続けて利用したいか」といった,自ら行った購買行動 の妥当性評価に関する つの項目で測定を行った。

調査結果の分析

変数間の関係

仮説 では,店頭及び広告エンゲージメントが成果行動に有意な影響を与え ると想定し,仮説 では両エンゲージメントの先行条件として店舗特性に対す る知覚水準を想定していた。そこで研究モデルを構成している個別項目の変数

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店頭エンゲージメント

広告エンゲージメント

成果行動 店舗特性の

知覚水準

(高/低)

.413 .313

.208 .397

.523

間因果関係に注目しつつパス解析を行った(図 参照)。

その結果,店舗特性に対する知覚水準は店頭及び広告エンゲージメントに肯 定的な影響を与え,店頭及び広告エンゲージメントのいずれも成果行動に対し て統計的に有意な影響を与えていることが検証された(いずれもp< . )。

これはすなわち,店頭及び広告エンゲージメントの水準を向上させれば,成果 行動の質が向上し(仮説 ),店舗特性に対する知覚水準が露出効果の代理変 数である店頭及び広告エンゲージメントの先行条件になることを意味している

(仮説 )。また,店頭エンゲージメントは広告エンゲージメントにも大きなイ ンパクトを持って影響を与えることが確認されており,店頭エンゲージメント を起点とする両変数の相互効果が存在することが検証された(p< . )。この ような結果は,総合スーパーのような立地型の店舗において店頭エンゲージメ ントが強化されることにより店内における滞在時間が増えると共に,マーケ ティング刺激を含めた環境的要素に対する探索意向が強化されたことに起因し ていると推測される。

店舗特性に対する知覚水準の調整的役割

仮説 では,広告および店頭エンゲージメントの成果行動に対する影響が,

店舗特性の知覚水準に依存すると想定していた。このような,諸過程において 店舗特性の知覚水準が果たす調整的役割を検証するべく,店舗特性の知覚水準

店舗特性と店頭及び広告エンゲージメントが成果行動に与える影響

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店舗特性(高) 店舗特性(低)

t値 有意確率

平均値 SD 平均値 SD

(定数)

店頭エンゲージメント . . . . . .

広告エンゲージメント . . . . . .

成果行動 . . . . . .

店舗特性の知覚水準による店舗及び広告エンゲージメントと成果行動 に関する全ての回答のうち,平均値に近い 名の回答を排除した上で,上位 評価と下位評価となっている回答をそれぞれ店舗特性に対する知覚水準の高い グループ( 名)と低いグエループ( 名)に分類した。その後,店舗特 性の知覚水準による後続変数の全般的水準の相違を確認するための検定(t検 定)を行った。

その結果,後続効果に関するいずれの変数においても店舗特性の知覚水準の 調整的役割による相違が確認された(仮説 )。表 はその結果をまとめたも のである。

表 で示されている通り,店舗特性の知覚水準が高いグループにおける店頭 及び広告エンゲージメント,成果行動に関する評価が総じて高い水準になって いることが確認された。ただし,両グループの差は,店頭エンゲージメントで 最も顕著に現れており,広告エンゲージメントでは相対的に縮小されていた。

このような結果となった原因は,店舗特性が知覚されなかった場合,事前の行 動目的に一致した成果行動のみが行われる可能性が高く,その他の探索意向や 店舗に対する全般的な態度からなる店頭エンゲージメントは顕著に低下するの に対し,当該成果行動を遂行するために必要で,それに関連する環境的要素で ある広告エンゲージメントに対する負の効果は相対的に限定されたことにある と考えられる。

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Ⅳ 総括及び今後の課題

本稿では,主たる分析対象を店内コミュニケーションの初期段階である露出 効果のうち,店頭及び広告エンゲージメントに絞った上で,その前後に店舗特 性に対する知覚水準と成果行動に関する妥当性評価を配置することで,店内に おいてインプットされる環境的要因が消費者の認知体系の中でいかに受容され 処理されるか,それらが店頭及び広告エンゲージメントといかに関連している か,さらに成果行動に影響を与える要因間の相互効果をいかに解釈するべきか という問題を究明するための検証を行った。分析の結果得られた主な知見の概 要は以下の通りである。

まず,本研究における調査の分析結果では,店舗特性に対する知覚水準が高 い場合,店頭及び広告エンゲージメントと成果行動の水準も同方向へ収斂され ることが確認された。ただし,店舗特性に対する知覚水準による効果は,広告 エンゲージメントでは相対的に縮小されていた。このような結果は,店舗特性 を知覚しづらい業種・業態の場合,広告に対するエンゲージメントを強化する ための戦略を展開した方が,より効率的な店内コミュニケーションとなる可能 性が高いことを示唆している。明確な店舗特性を構築することは店内コミュニ ケーションの効果を向上させる上で有効な戦略的オプションを見出すことにつ ながるということは明示的な事実であるものの,そのような取り組みが全ての 業種及び業態において実現可能なものであるわけではない。先述した分析結果 からは,店舗特性を規定しづらい店舗においても成果行動を促すためのコミュ ニケーション・ツールが見出せる可能性が示されている。今後,店舗特性の構 成要因と共に,店舗特性に対する顧客の知覚水準を事前に把握することで,自 らの戦略資源をより効率的かつ効果的に活用できるようになると考えられる。

店舗特性を開発しその効果を強化していくことは,店舗間の同質化が進む中,

当該店舗が持つ諸要素の識別性の向上や差別的価値の増幅につながるがゆえ に,店舗の差別化を図る上で重要な戦略的意味を持っている。例えば,店舗特 性に対する消費者の評価が十分肯定的であり,その知覚水準が高い場合,店内

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における滞在時間や探索意向,信頼度,態度などが強化されるため,戦略的に 有意な顧客接点とそれに随伴される様々な機会が随所において生まれることに なる。

また,変数間のパス解析の結果では,広告エンゲージメントを介した店頭エ ンゲージメントの効果が確認されている。店舗特性に対する知覚水準の効果は 店頭エンゲージメントにおいて最も顕著であったが,パス解析により明らかと なった成果行動に移行するまでの迂回経路の存在は,当該過程を各変数が密接 に関連している円環的なモデルとして捉える必要があることを示している。店 舗特性は諸過程の起点として後続効果とつながっているため,各店舗は自らの 店舗特性を可能な範囲内において積極的に開発し強化していくべきである。

本調査の分析結果から示されている知見が実際の現場における店内コミュニ ケーション戦略を立案する上で有効に活用されるためには,以下に示される課 題を解決する必要がある。まず,本研究における調査設計では,商品の関与水 準の影響については考慮されておらず,低関与商品が比較的に多い総合スーパ ーにおける店頭及び広告エンゲージメントを測定しているが,初期条件として 高関与商品が品揃えの中身を構成している店舗の場合,変数間の関係や相対的 重要度が異なった様相として現れる可能性が十分にある。今後は,検証モデル において考慮すべき変数をさらに拡張させ,店内コミュニケーションの全体的 過程をカバーするモデルに基づき各変数の相対的重要度に関する検証を試みる ことで,モデル全体の外的妥当性を確保していく必要がある。

また,本研究では,店舗特性に対する知覚水準に焦点が当てられており,店 舗特性を構成する各次元の個別効果に関する検証は行われていない。今後,店 舗特性の構成要素を明らかにし,各要素の相対的重要度を検証することで,店 舗特性が後続変数に与える影響の詳細をより明確に規定するための分析を行う ことが求められる。

Ⅴ お わ り に

店舗特性を規定し顧客に知覚させるための戦略的取り組みは,基本的にはブ

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ランド・パーソナリティの概念を拡張させたものであり,店舗レベルにおける ブランディングの一環でもある。このようなアプローチは,商品が持つ価値の みならず,単一店舗に属している要素にも差別化要因として高度化できる側面 が明示的に存在しているということに関する学問及び実務上の経験的合意が根 底をなしている。これまで多くのマーケター及びマーケティング戦略の立案・

実行主体が,店内コミュニケーションの効果を向上させ,最終的な成果行動へ 発展させることを目的とし,成果行動と変数間距離の近い領域に属する要因を 中心とした戦略を展開してきている。しかし,店舗の物理的環境に関する認知 的評価の対象となる要素に基づいた戦略は,総じて陳腐化の様相を呈しており,

他の店舗からの追随も比較的容易であるため,差別化を牽引する戦略ツールと しての効果は持続性に欠けている。その意味で,本稿で用いられた店舗特性に 関する概念は,模倣し難いという点において有効な戦略的オプションになり得 る余地が備えられていると言える。今後,店舗特性を構成する要素からターゲッ ト顧客の個別特性との適合性が高いものを把握・抽出し,店内コミュニケー ションの現場で活用するための方法論的観点を見出すことができれば,より精 巧でかつ効果的な店内コミュニケーション戦略の立案が可能になると考えられ る。

*本研究は日本学術振興会の科学研究費(課題番号

K

)の助成を受けたもの です。

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参照

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