は じ め に
1995年 11月に,食糧管理法が廃止され,主要食糧 の需給及び価格の安定に関する法律(以下,旧食糧 法と略)が施行された。これによって,米流通が大 幅に自由化され,価格的な有利販売や販売数量の確 保を目的として,産地間競争がいっそう激しくなっ た。
ただ,法律は改正されたものの,自主流通米制度 は 2004年4月に改正食糧法が施行されるまで存続 した。旧食糧法の下では,自主流通米の販売は,基 本的には全国農業協同組合連合会(以下,全農と略 す)による一元的な集荷・販売によって行われてい たが,全農による出荷調整は十分には機能していな かった。
本論文では,旧食糧法下における全農の米販売機 能の展開を整理し,抱えていた問題点を明らかにす ることを課題とする。
1.全農による米販売機能の展開過程
1969年に自主流通米制度が創設されるまでは,流 通する米はすべてが政府米であった。政府が出荷調 整を行い,県内自給を基本としつつ,生産県から消 費県に米が輸送されていた。その中で,全農は全国 集荷団体として,政府による米集荷の代行機関とし て機能しており,販売機能を持っていなかった。
1969年に自主流通米制度が創設されると,全農は 指定法人として自主流通米の販売機能を持つことと なった。当初,自主流通米は,良食味米に限られて いた。全農は自主流通米の販売によって,政府によ る政府米の需給操作を基盤として,良食味米の販売
機能を部分的に分担することになった。
自主流通米の価格形成については,全農・全集連 と実需者団体によって,自主流通協議会において相 対によって決定され,年間を通して固定された価格 で取り引きされていた。その価格は,政府米価格に 規定されていた。価格交渉においては,全農は,系 統農協を通じての出荷権が一元化されていたため,
需要側に対して相対的により強い立場をとりえた。
1990年に自主流通米価格形成機構が設立され,自 主流通米の価格決定が入札方式で行われるように なった。これによって,価格形成のあり方が,産地 品種銘柄ごとの品質や需給動向により左右されるよ うになった。全農の実需者に対する価格交渉力が弱 まり,価格形成の主導権が卸売業者側に移った。ま た,この時期になると,流通する米の大部分が自主 流通米となり,全農は,品質別の需給調整機能をも 担うことになった。
1995年 11月に旧食糧法が施行されると,政府の 役割は備蓄に限られ,全農は自主流通法人として位 置付けられ,流通における需給調整全般を行う立場 となった。旧食糧法の規定によれば,自主流通法人 としての全農のおもな業務は,①自主流通計画を作 成すること,②自主流通米を卸売業者等に売り渡す こと,③自主流通米の一部について,備蓄・調整保 管を行うことであった。
そこで問題とるなのが,①全農の作成する自主流 通計画は,需給調整に実効性を持っていたのか,② 全農を窓口とする各産地の自主流通米の販売が計画 的におこなわれていたのか,③全農による調整保管 が需給及び価格を安定させる上で十分に機能してい たのかという点である。そこで以下では,これらの
全国農業協同組合連合会による米販売機能の展開
小池(相原)晴伴
The Development of Rice Marketing Function of National Federation of Agricultural Cooperative Association
Harutomo KOIKE‑AIHARA
(Accepted 24 July 2008)
酪農学園大学酪農学部農業経済学科農畜産物市場論研究室
Agricultural and Livestock Product Marketing,Department of Agricultural Economics,Faculty of Dairy Science,Rakuno Gakuen University, Ebetsu, Hokkaido, 069‑8501 Japan
諸点について検討していく。
2.自主流通計画の作成と運用
全農が作成していた自主流通計画とは,自主流通 米を計画的に流通させることを目的とし,以下のこ とについて都道府県別に定めたものであった。それ は,①集荷数量,②販売数量(年間,期別),③自主 流通米価格形成センターへの上場数量,④卸売業者 の購入数量,⑤調整保管数量である。この計画は,
毎年3月に政府が作成する基本計画を受けて6月に 作成され,収穫後の3月末に出来秋調整をおこなっ て確定されていた。
問題は,全農がこの計画にそって,実際に需給調 整機能を発揮することができたかどうかである。自 主流通計画の運用については,1996年産では,食糧 庁計画流通部長通達によって, 厳格な運用を行い,
従来はともすれば安易に行われていた計画変更の事 後承認は行わない とされた。また, 期間別の自主 流通計画を出荷県別に策定し,当該計画を上回る販 売が行われた場合は,当該数量については自主流通 米として取り扱わない ことが方針とされた。具体 的には,都道府県ごとの計画数量をオーバーした部 分については,政府が全農に対して助成金を支払わ ないこととし,経済連間の販売競争に対して規制力 を持たせようとした。
しかし,こうした方針は変更され,1997年産米以 降については,自主流通法人は認可された自主流通 計画に沿って適正に自主流通米の売渡し等の業務を 行う とされた。また, 国産米が不足し供給の安定 に主眼を置く必要がある場合を除き,年間トータル でみて年間計画に合致することを旨に弾力的な運用 を図る ことになった。これによって,6月に作成 された自主流通計画は,3月末の出来秋調整におい て,年間計画については変更されるが,期別計画に ついては変更されないこととなった。このことに よって期別計画は重視されなくなり,一部の県のみ が,特定の期間において,多く販売することが可能 となった。
3.全農による自主流通米の販売過程
1)相対取引の方法
全農が卸売業者に自主流通米を販売するルートに は大きくは2つあった。一つは,自主流通米価格形 成センターを経由する入札取引,もう一つは,全農 と個別の卸売業者間での相対取引である。以下では,
相対取引について整理していきたい。
まず,自主流通米の販売に先立って,全農と卸売
業者の間で売買契約が締結された。その締結に至る までの過程は,大枠としては自主流通計画に基づい て,全農が卸売業者に対して数量を提示し,卸売業 者がその範囲内で申し込みを行い,契約を締結する というものであった。
こうした相対取引における契約締結までの方法の 推移を,年産別にみたものが表1である。
まず,事前年間取引は,年間の取引数量を前もっ て契約するものであった。1997年産,98年産におい ては,卸売業者別提示と全国一斉提示とがあったが,
1999年産,2000年産においては,全国一斉提示が廃 止され,卸売業者別提示のみとなった。
卸売業者別提示は,卸売業者の購入実績によって,
全農が,個別の卸売業者ごとに数量を提示するもの であり,卸売業者は,基本的にはその数量以上は,
購入することができなかった。全国一斉提示は,卸 売業者を特定せずに数量を提示するものであった。
後者については,卸別に購入申込に限度数量を設け なかった。つまり,卸売業者にとってみれば,過去 の購入実績によらず,いくらでも購入することがで きた。
卸売業者別提示のみとするこうした変更は,卸売 業者主導で行われたといわれ,つぎのようなことを 意味する。食糧法施行以降,卸売業者の再編がおこ なわれるなかで,大手スーパーへ米を販売できるよ うな大手卸は,卸売業者別提示によって,それまで の購入実績の数量を安定的に確保しつつ,全国一斉 提示によって,小売業者に対する販売数量の増加に 応じた仕入数量の増加をまかなった。しかし,卸売 業者の再編がほぼ一段落つきつつあった 1999年産 以降になると,大手卸は,今度はこれまで伸ばして きた自主流通米の購入数量を安定的に確保するため に,卸売業者別提示のみを要求した。
なお 1998年産から,事前年間取引に特定契約が導 入された。これは,契約栽培等により産地と実需者 が価格を特定する取引であった。1998年産では, 有 機栽培米等特別な栽培方法で生産された米穀 に限 定されていたが,99年産以降, 特別な栽培方法 と いう限定を廃止した。その数量は,1998年産で 5,000 t,99年産で 7,000tとそれほど多くはなかった。
つぎに,期別取引とは,入札取引・事前年間取引 で対応できない期別需要に対応することを目的とす るものであった。
そして,スポット取引は,1997年産から導入され たもので,出回り期の需要が不安定な時期の需要と 卸売業者の当用買いに対応しようとしたものであっ た。
表 1 相対取引方法の年産別推移
年産 1995年産 1996年産 1997年産
事 前 年間 取 引
第1回年間安定需要分(9月提示)
①卸別提示
1994年購入実績等に基づき提示
②価格=相対価格
第2回年間安定需要分(1月提示)
①全国一斉提示
卸別購入申込限度数量を設ける
②価格=相対価格
事前年間取引(11月提示)
提示数量=相対数量×1/2
①卸別提示
提示数量=事前年間×1/2
②全国一斉提示
提示数量=事前年間−卸別契約 卸別購入申込限度数量を設けない
③価格=価格相対−50円
期 別 取 引
年間安定需要分の成約が進み,また,民 間備蓄・調整保管を実施したため中止
期ごとに産地銘柄別提示
国の三半期ごとの基本計画にもとづ き算出
①卸別提示
期ごとの提示数量の60%程度を卸ご とに提示
1995年産購入実績を勘案して算出
②全国一斉提示
卸別購入申込限度数量を設ける
③価格=相対価格
期別提示
①提示数量=相対数量−事前年間数量
②県内と県外卸に区分して提示 県外卸 全国一斉提示 県内卸 卸別提示
③価格=相対取引価格
ス ポッ ト 取 引
スポット取引
期別取引で契約算数量が生じた場合 卸と個別協議し契約する
価格=相対価格+50円
(11月までは相対価格)
年産 1998年産 1999年産 2000年産
事 前 年 間取 引
事前年間取引(11月提示)
提示数量=相対数量×1/2
①一般契約(卸別提示)
提示数量=事前年間×1/2 価格=相対価格−100円
②一般契約(全国一斉提示)
提示数量=事前年間−卸別契約 価格=相対価格−100円 卸別購入申込限度数量を設けない
③特定契約
有機栽培米等特別な栽培方法で生産 された米穀
実需者と卸と全農の契約 価格=年間一本価格
事前年間取引(8月・4月以降提示提示)
提示数量=相対数量×1/2
①一般契約(卸別提示のみ)
提示数量=事前年間×1/2 価格=相対価格
②特定契約
特別な栽培方法という限定は廃止 実需者と卸と全農の契約 価格=年間一本価格
事前年間取引(12月・4月末提示提示)
提示数量=相対数量×1/2
①一般契約(卸別提示のみ)
提示数量=事前年間×1/2 価格=相対価格
②特定契約
実需者と卸との確認書の締結 価格=年間一本価格
期 別 取引
期別取引
①提示数量=相対数量−事前年間数量
②県内と県外卸に区分して提示 県外卸 全国一斉提示 県内卸 卸別提示
③価格=相対価格
④期別提示区分 原則的に2か月ごと
期別取引
①提示数量=相対数量−事前年間数量
②県内と県外卸に区分して提示 県外卸 全国一斉提示 県内卸 卸別提示
③価格=相対価格
④期別提示区分 原則的に毎月
期別取引
①提示数量
(年間相対計画の1/2)−スポット契約 数量
②県内と県外卸に区分して提示 県外卸 全国一斉提示 県内卸 卸別提示
③価格=相対価格
④期別提示
原則的に2か月ごと スポ
ッ ト取 引
スポット取引
期別取引で契約算数量が生じた場合 卸と個別協議し契約する
価格=相対価格+100円
(12月までは相対価格)
スポット取引
需給状況等を勘案し,年内を基本に実施 価格=相対価格
スポット取引
入札落札残,事前年間・期別相対提示残 を基本
卸と個別協議し契約する 価格=相対価格+100円
(2月出荷以降適用)
資料:全農資料
以上のような,相対取引における提示数量,成約 数量,成約率を,事前年間取引と期別取引ごとにみ たのが,表2である。いずれにおいても成約率は低 いことが多く,自主流通米の販売が全農主導となっ ていなかったことを示している。
2)自主流通米の受け渡し
自主流通米の契約数量にもとづいた受け渡しの過 程は,以下のようになっていた。①卸売業者は全農 に対して,買受申込をおこなう。②全農は,当該産 地の経済連に対して出荷指図を出す。③全農から出 荷指図を受けた経済連は,単協に対して出荷指図を 出し,輸送業者の手配をおこなう。④単協は出荷指 図を受けたら,出庫して輸送業者に引き渡す。⑤卸 売業者は,現物の到着を確認した後,所定の期日ま
でに現金を全農に振り込む。
図1は,食糧法施行以降における,自主流通米と 政府米の販売・売却数量の推移をみたものである。
自主流通米の販売数量は,新米が出回る 10月がもっ とも多くなり,その後,11月〜2月ごろには少なく なる。全農による自主流通米の販売数量は,一つに は,生産者による計画外流通米の販売の動向,もう 一つは,政府による政府米の売却の動向によって,
常に変動にさらされていた。
こうした自主流通米の販売の不安定性は,米穀年 度末(10月末)における主要生産県の自主流通米の 売れ残り数量に端的に示されている。表3のように 1997年産においては,もっとも多かったのが北海道 の6万1千t,ついで青森の3万 2500tであった。そ の後,1999年産においては北海道,青森県とも完売
表 2 自主流通米の 相対取引 における提示数量・成約数量
(単位:千t,%)
事前年間取引 期別取引
年産 提示数量 成約数量 成約率 提示数量 成約数量 成約率
1995 9月提示 2,770 2,160 78
1月提示 120 90 75
計 2,890 2,250 78
1996 9〜10月 342 314 92
11〜12月 377 310 82
1〜2月 371 246 66
3〜4月 531 369 70
5〜6月 377 333 58
7〜10月 787 269 34
計 2,985 1,481 62
1997 11月提示 97 68 69 9〜10月 403 183 45
11〜12月 289 130 45
1〜2月 305 91 30
3〜4月 216 144 66
5〜6月 178 123 69
7〜10月 164 95 58
計 1,556 766 49
1998 11月提示 9〜10月 334 320 96
一般契約 1,040 1,030 99 11〜12月 256 172 67
特定契約 5 1〜2月 131 127 97
3〜4月 120 115 96
5〜6月 64 45 70
7〜10月 中止(追加調整保管の実施)
計 905 779 86
1999 一般契約計 1,170 1,000 86 1月 71 40 56
8月提示 810 730 90 2月 82 36 44
6月提示 350 270 77 3月 107 63 59
4月 141 76 54
特定契約計 12 7 57 5月 122 89 73
11月分 11 6 57 6月 158 74 47
4月分 0.9 0.4 51 7月 234 83 36
8月 171 80 47
計 1,085 542 50
資料:全農資料
した。かわりに増加しているのが,茨城,千葉といっ た計画外流通米の出荷数量が多い県であった。売れ 残りは一部の県に偏る傾向があるが,それは年度に よって異なっていた。こうしたことは,全農による 県別の出荷調整が十分には機能していなかったこと が要因であるといえる。
3)計画外流通米との競合
米情報員会資料によれば,全国における計画外流 通米の出荷数量と総出荷数量に占める比率は,1995 年産の 258万t,29%から,99年産では 292万t, 38%にまで増加した。1999年産の自主流通米の出荷 数量が 465万tなので,数量的にみて,計画外流通米 の出荷が,自主流通米の販売を大きく圧迫した。生
産者による計画外流通米の出荷状況を県別にみる と,茨城,千葉といった首都圏に比較的近い県,お よび新潟県の数量が多くなっている。前掲表3で確 認したように,1999年産では,こうした県で米穀年 度末の残数が多かった。このため,計画外流通米の 出荷は,全体として自主流通米の販売を圧迫してい ることに加え,個別の産地銘柄をも圧迫することも あった。
図2は,北海道おける卸売業者による計画外米の 購入状況をみたものである。その特徴は,出来秋か ら 12月ころに集中していたことである。前傾図1と 比較すると,自主流通米の販売は 11〜2月が少なく なっており,競合していたことがよくわかる。この ように全農としては,計画外流通米の量的変動の中 図 1 主食用うるち米の販売・売却状況(1995年 11月〜2001年4月)
資料:食糧庁 国内主食用米穀(うるち米)の販売・売却数量 。 注:RYは米穀年度で,前年 11月〜当年 10月。
表 3 米穀年度末における自主流通米の残数の状況(主食用うるち米)
(単位:千t,%)
集荷数量 残 数 集荷数量に占める残数の比率
1997年産 1998年産 1999年産 1997年産 1998年産 1999年産 1997年産 1998年産 1999年産
北海道 364.2 361.1 298.8 61.0 9.0 0.0 17 2 0
青 森 164.5 158.5 157.5 32.5 8.1 0.0 20 5 0
岩 手 178.5 179.4 177.4 7.8 13.1 0.0 4 7 0
宮 城 282.1 242.7 240.7 20.1 7.4 2.8 7 3 1
秋 田 338.2 355.6 342.6 29.0 22.1 30.4 9 6 9
山 形 140.9 132.6 134.8 6.9 6.7 3.5 5 5 3
福 島 187.4 149.7 180.9 16.4 13.5 0.0 9 9 0
庄 内 125.6 117.9 113.1 3.8 5.3 0.0 3 4 0
茨 城 104.8 92.1 101.9 2.3 6.6 15.8 2 7 16
栃 木 183.4 149.7 171.2 7.0 7.5 23.5 4 5 14
千 葉 115.6 107.1 115.2 0.2 2.6 12.5 0 2 11
新 潟 323.9 308.4 308.9 3.7 20.4 65.1 1 7 21
富 山 141.2 129.1 130.9 3.7 8.3 14.7 3 6 11
資料:米情報委員会資料。
で需給調整をしていかなければならなかったが,そ れはきわめて困難であった。
4)政府米売却との競合
前掲図1において,政府による政府米の売却数量 と,合計に占める政府米の比率をみてみよう。食糧 法施行の前年の 1995米穀年度では,政府米の比率は 平均 21.5%と比較的高かった。1996米穀年度にな り,食糧法が施行されると,政府米の販売は古米に 限定されたため,その比率は 13.1%になった。1997 米穀年度には,4月以降,政府は政府米を積極的に 売却するようになった。そのため,一時は政府米の 比率は3割にまで達し,自主米の販売が圧迫された。
その後の米穀年度平均の政府米の比率は,1998米穀 年度で 11.1%,99年度は 11.3%,2000米穀年度に は 5.2%となった。このように,1998〜2000年産で は,全農による自主流通米は,政府による政府米の 販売とはあまり競合しなかったとみてよい。
4.全農による調整保管の破たん
1)自主流通米の調整保管
自主流通米の調整保管とは,米穀の生産量の増大 による供給の過剰に対応して,必要な数量の米穀を 在庫として保有すること (旧食糧法第 29条2項)
であった。その目的は,自主流通米の過剰による価 格の低下を阻止することであった。この調整保管は,
1996年産から,米需給調整・需要拡大基金によって 運営されている。この基金の事業内容は,備蓄・調 整保管米が翌年度に古米として販売される際に,品
質評価の低下や価格変動によって生ずる価格差につ いて,生産者の拠出金によって造成された基金から 補塡するというものであった。
表4は,米穀年度末の持越在庫量の推移をみたも のである。1996米穀年度(95年産)では,自主流通 米の持越し在庫量は,基本計画の目標が 45〜55万t であったのに対して,実績は 39万tとこれを下回っ た。しかし,1997米穀年度(96年産)においては,
計画の65〜75万tに対して,実績は85万tとなった。
そこで, 基金 の収支動向をみたのが,表5であ る。第1年度(96年産)についてみると,拠出金合 計が 156億円であるのに対して,事業費合計は 258 億円となっており,実に 103億円もの赤字となった。
これは 1996年産米の持越在庫量が,計画を大幅に上 回ったためである。この事業は,初年度から,資金 的に破たんしてしまった。この赤字分は,翌 1997年 産の拠出金によって補塡された。1997年産において は,持越在庫対策は支出されなかった。第3年度に おいて,1997,98年産の費用をまかなった。
図 2 卸売業者による計画外流通米の購入状況(北海道,1995年 11月〜97年4月) 資料:北海道庁農政部資料。
注:比率は,うるち玄米計に対するものである。
表 4 米穀年度末持越在庫量の推移
(単位:万t)
自主流通米 政府米 合計
米穀
年度 計画 実績 計画 実績 計画 実績
1995 43 118 161
96 45〜55 39 175〜185 255 225〜235 294 97 65〜75 85 225〜235 277 300〜310 362 98 108 47 272 307 380 354 99 34 22 237 243 271 265 2000 16 11 213 172 229 183 資料:農林水産省 米穀の需給及び価格の安定に関する基本計画 。
2)自主流通米の別途処理
2000米穀年度から,土地利用型農業活性化対策に よって,全農よる調整保管は組み替えられ,生産量 が計画を上回る場合には,生産オーバー分を主食以 外に処理する方式が導入された。
これによって,米需給調整・需要拡大基金も,当 初の調整保管に対するとも補償を経理する資金とい う性格から,自主流通米の別途処理のための費用の 拠出に性格を変えた。前掲表5のように,1999年産 では 91億円が支出される見通しとなっており,2000 年産では 80億円,2001年産では 100億円がそれぞ れ支出されることになっていた。
2000年産については,緊急総合米対策(2000年9 月)が決定された。これは自主流通法人による隔離 効果の高い一元的な調整保管(特別調整保管)を実 施するものであり,その数量は 24万となっていた。
2001年 10月末に,政府持越し米と差し替えて,加工 用途に販売するというものであった。そして販売経 費については,全国共同計算を実施することになっ た。このことによって,2000年産米の価格の回復を めざし,過度な産地間競争を排除しようとした。2000 年産の特別調整保管については,北海道の数量が多 いなど県別に比較的大きな格差があった。
お わ り に
以上の検討をもとに,旧食糧法の下で全農による
米販売機能がかかえていた問題点を明らかにしたい。
まず,自主流通計画の実効性については,全農は,
この計画によって,調整保管の数量の確定などを通 して,年間トータルの需給調整に責任を持つものの,
県別の販売数量を時期的に出荷調整することはでき なくなっていた。そのため各経済連・全農県本部が,
なるべく早い時期に売り抜け,持越在庫を持たない ようにしようとする産地間競争を食い止めることが できなかった。
つぎに,自主流通米の販売に関しては,計画外流 通米や政府米,とくに前者の量的変動によって,需 給調整が十分には機能していなかった。このことは,
米穀年度末の県別の残数の偏りによって示されてい る。こうした原因の一つには,大手卸売業者主導の 取引方法にあるといえる。さらに,調整保管につい ては,米過剰のもとで最初から十分に機能しなかった。
参 考 文 献
〔1〕佐伯尚美 備蓄・調整保管制度の展開と再編
(日本農業研究所編 食糧法システムと農協 農 林統計協会,2000年)。
〔2〕食糧制度研究会編集協力 食糧法の解説 地球 社,1998年。
〔3〕三島徳三 規制緩和と食糧・農業市場 (日本経 済評論社,2001年)。
表 5 米需給調整・需要拡大基金 の収支動向
(単位:百万円) 第1年度
収支実績
第2年度 収支実績
第3年度 収支見通し
第4年度 収支見通し
第5年度 収支計画
第6年度 収支計画 拠 出 年 産 1996年産 1997年産 1998年産 1999年産 2000年産 2001年産 拠 出 額 15,521 13,499 13,495 12,406 13,000 13,000
繰 越 額 − −10,275 1,065 2,057 595 1,045
受 入 利 息 額 56 47 12 12 10 10
拠 出 金 合 計 15,577 3,272 14,572 14,475 13,605 14,055 米 需 要 拡 大 事 業 1,930 1,929 1,930 1,930 1,930 1,930
推 進 費 200 250 250 249 250 250
地 域 調 整 円 滑 化 158 − − − − −
新 た な 米 政 策 円 滑 化 − 5 − − − −
都 道 府 県 間 調 整 6 − 72 212 100 100
とも補償・稲経推進費 − − 299 700 250 250
96年 産 共 計 収 支 残 額 − − −1,177 − − −
前 年 産 持 越 在 庫 対 策 − − 4,950 − − −
当該年産持越在庫対策 23,529 − 5,968 500 2,000 −
当該年産別途処理対策 − − − 9,080 8,000 10,000
も ち 米 販 売 対 策 − − 202 1,179 − −
基 金 管 理 経 費 29 22 21 30 30 30
事 業 費 合 計 25,852 2,206 12,515 13,880 12,560 12,560
差 引 繰 越 −10,275 1,065 2,057 595 1,045 1,495
資料:全国農協中央会資料。