側方倒立回転%ひねりとび(ロンダート)の運動構造に関する一考察
加 藤 明 子
(1980年10月20日受理)
Eine Betrachtung Uber die Bewegungsstruktur
■ ●
р?刀@Handst廿tz−Uberschlag seitwarts mit%Drehung(Rondat)
Akiko KATO
(Received October 20,1980)
は じ め に r
フ操競技の床運動にとって,ロソダートは欠かすことのできない基本技である。しかし,金子(1974)
が指摘しているように,ロンダートは後転とびや宙返りの手段としての助走性が特徴的なので,技と して取り上げることが忘れられがちであり,後転とびや宙返りの研究は数多くあるが,ロソダートに 関するものはほとんどないのが現状である。ロンダートに含まれる技術なしに次の技の成功はおぼつ かないのであり,この技の技術を明確にすることは,体操競技のトレーニソグ上,必要な前提条件に
なる。
本研究では,その基として,ロソダートの運動構造を明確にすることを意図した。ロンダートは平 均台上でも実施されているが,ここではまず,床運動でのロソダートを取り上げる。
さて,体操競技の技の構造を明確にする拠点として金子(1974)は,第一に「運動形態的構成要素」,第二 に「運動技術的構成要素」の二つを挙げている。運動形態的構成要素とは,どんな運動形態を形づくる べきかというその技の課題性をみる拠点であって,その課題としての運動形態は不変である。運動技 術的構成要素とは,技の課題を遂行する運動技術の観点から技の構造上の特性を明らかにしてゆく拠 点である。従って,運動技術の本質から考えても,この第二の拠点は運動形態の課題性と異なって,
不変のドグマではありえない。今回は,運動技術的構成要素には触れず,第一の拠点としての運動形 態的構成要素について考察する。
側方回転の問題性
「ロソダート」すなわち「側方倒立回転%ひねりとび(後ろ向き直立)」は,「側方倒立回転とび」
の変化技と考えられるが,「側方倒立回転とび」は,次の点で「側方倒立回転」および「とび側方倒
立回転」と区別される。側方倒立回転は,回転中,身体の一部(手あるいは足)が常に支持面に接し
ており,とび側方倒立回転は,回転中,倒立になる前(手を着く前)に身体のどこも支持面に接して
いない空中局面を有するが,側方倒立回転とびは,回転中,倒立体勢から(手を着いた後)直立(足を着
く)までに空中局面を有するのである。このことをふまえた上で,ロンダートの運動形態的構成要素に
ついて考察をすすめる。
不可能ではないが,体操競技における技は運動形態の「収赦性」により代表的な方向にまとまりを作 っていく(金子1974)ため,轡曲した面を構成するようなロンダートはトレーニソグの過程で消滅 してしまう。
ロンダートはその日本語名「側方倒立回転翅ひねりとび(後ろ向き直立)」から,側方すなわち,
前後軸のまわりに回転する技として位置付けられていることがわかる。しかし,ここで注意を要する のは,人間は,骨格の構造上関節の可動範囲に制限があるため,正確な側方の倒立回転を実施するこ とは困難であるということである。ロンダートではなく,側方倒立回転についてであるが,このこと は既に長沢(1971)によって明らかにされている。側方倒立回転といってもこの技の全経過が正確な 側方回転運動を行うことを理想としているのではなく,倒立局面だけに特徴的な側方倒立回転が行わ れるだけなのである。ロンダートの場合,側方倒立回転にさらに%ひねりが加わり,回転中に開脚姿 勢から閉脚姿勢に変化するのであるから,より複雑な構造を持っていることが予想される。他の側方 回転技と同様,ロンダートもその運動方向に複雑な要素があることは疑えない。
16mフィルムによる検討
ロンダートの運動方向を明確にするために,ロソダートに熟練している者として茨城大学体操部部 員3名を選び,ロンダートから後方倒立回転とびを実施させ,これを16mカメラで撮影した。撮影 は,ロソダートから後方倒立回転とびの運動面に直交する方向から(図1・図2)と運動面上で運動 の進行方向の反対方向から(図3,図4)の2方向から行った。撮影に先立って,被験者の身体の前 中央,後中央,両脇のそれぞれに一本縦にライソを入れた。フィルムのスピードは毎秒55コマであっ た。便宜上,着手時を0コマとして,4コマごとに一24コマから44コマまでの連続図を作成した。(図1〜図4)
考察は「開始体勢から回転を起こし片手を支持面に着けるまで(着手まで)」「着手から離手まで」
「離手から着足まで」の3局面に分けて行った。
○着手まで
被験者A:−24〜0コマ,被験者B:−24〜0コマ
回転を始める前にある程度ひねられているが,被験者によりその程度は異なり,被験者Aは開始姿 勢ではほとんどひねっていないが,被験者Bは%近くひねっている。なお,被験者Cについては連続 図を掲載していないが,被験者AとBの中間であった。開始姿勢では,全体として身体の向きは側方
より前方に近い。回転しながら着手までに%のひねりを加え,側方の体勢になっている。回転の前半 は肩のひねりが先行し,片足が振り上げられると共に腰がひねられる。従って,離足までは身体が ねじられた状態になっているが,これは,長沢(1971)が側方倒立回転の運動構造の中に認めている
ことと同じである。
o着手から離手まで
被験者A:0〜20コマ,被験者B:0〜20コマ
ロンダートの中核的な運動局面である。開かれた脚を閉じながら着手までと同じ方向にさらに%ひ
ねっている。従って,回転の方向は,側方から後方に変わっている。着手の位置は運動の進行方向に
斜めになっており,運動面に沿った方向からみれば(図3,図4)踏み切り足の両側にそれぞれ着い
7 グ ノ 4・ , _一 \
一 24 −20 −16 − 12 − 8 − 4 0 4
\ llノ 7 z − N / ρ へ
S 12 16 20 24 28 32 36 40 44(コマ)
1m
図1 ロソダートから後方倒立回転とび(被験者A一側面)
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一 24 −20 _ 16 _12 −8 __ム 0 4
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8 12 16 20 24 28 32 36 40 44(コマ)
1m
図2 ロンダートから後方倒立回転とび(被験者B一側面)
否 一 一 一 へ 一
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図3 ロソダートから後方倒立回転とび(被験者A一正面)
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図4。ソダー,から後方倒立回転とび(被験者B一主面)
ている。これは,金子(197U977)や▽スモレフスキーら(1978)が,体操競技の教本の中で述べて いることと一致している。
○離手から着足まで
被験者A:20〜28コマ,被験者B:20〜32コマ
すべての試技でひねりは行われず,後方に回転している。伸身体勢から急激に屈身体勢に変化し,
回転のスピードが増している。この局面がロンダートの特徴的な空中局面で次の技の準備局面でもあ る。従って,次に実施する技によって,この局面の技術要因が異なることは充分考えられる。
oまとめ
以上のことを運動方向についてまとめると以下のようになる。運動方向は,ひねりに伴い,前方回 転→側方回転→後方回転と変化する。前方回転は被験者によってその方向の明瞭度が異なる。すなわ
ち,回転の前半では前方に近い回転方向を示し,ロンダートの中核的な運動局面である倒立体勢では 側方に近い回転方向を示し,離手後は後方回転である。
従って,ロンダートの中核的な運動局面である倒立体勢での回転方向が側方であるために側方技と して位置付けられるが,前方倒立回転とびで,回転の開始から離手までに%ひねりを加え,離手後に 空中局面では後方に回転していると考えることができる。
力学的見解とフィルムの比較検討
「スポーツの科学的原理(1977)」皿章一5「バイオメカニックからみたスポーツ」の中で,小林 は,ロンダートから後方倒立回転とびについて言及し,ロンダートからバラソスをくずさずに後方倒 立回転とびを実施する方法について,その運動を円板にたとえて説明している。以下にその説明の骨 子を述べる。小林は,ロンダートから後方倒立回転とびは図5のように実施されると考え,「図5(a)
の側転は,図6(a)のように円板の回転①であらわせ,図5(b)の経過である転向の回転は,図6
(b)のように円板の転がる向きを変化させる転向の回転②であらわされる」としている。 さらに,
コマの原理を引き,図7を用いて次のように説明している。うまい者の説明では図7(a)を用い
「円板の回転①は側転運動をあらわしている。側転の回転面を左に傾けるような作用②が生じるよう なコントロールを与えると,円板のZ軸回転であらわされる〔図5(b)→(c)〕の転向運動が生じ てくるので,この運動がなめらかに進行するように〔図5(b)〕では左手を引いていく。」とし,へ たな者の説明では図7(b)を用い「円板①の回転は側転運動をあらわす。初心者は目的とする回転 運動(Z軸の転向回転)を直接に起すような作用力をコントロールとして与えやすく,このため,右 に傾く回転③があらわれる。」としている。
a b c
@ 冒
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@ 一
}5 側転(a)からの転向(b)を経て後転(c)へ
(「スポーツの科学的原理」320頁より)
てa) (b)
側転の回転 薔 喬_・③
転 献
(a)
、転の回転①
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(−1