建築基準法とその変更確認処分の法的性格と行政争 訟
著者 田村 泰俊
雑誌名 明治学院大学法学研究 = Meiji Gakuin law journal
巻 98
ページ 143‑166
発行年 2015‑01‑31
その他のタイトル A Architectural Administration and Law suit
URL http://hdl.handle.net/10723/2456
建築基準法とその変更確認処分の 法的性格と行政争訟
田 村 泰 俊
目 次
一 問題の所在
二 変更処分(変更確認)が多用される原因 三 変更処分(変更確認)に関する判例・裁決例 (1) 概観
(2) 当初処分消滅説を採る判例・裁決例の論理 (3) 当初処分存続説を採る判例・裁決例の論理 (4) 小括
四 学説の動向
(1) 変更処分(変更確認)を直接採りあげる学説 (2) 行政法学の一般理論
五 当初処分(原処分)消滅説と職権取消・撤回理論 六 争訟制度と併合制度の利用
七 結語
一 問題の所在
伝統的なわが国の行政法学における「行政処分」観とでも呼びうるものは,
基本的には,単一・独立の行政処分に焦点をあてる(あるいはそれ自体完結的な と言っては言いすぎであろうか)理解であると考えて良いように思われる。確かに,
例外的には,違法性の承継(1)のように複数の処分を捉える理論もあるが(2),こ の違法性の承継論も,それぞれ単一・単独の処分の関係として理論構成を行っ ていることに変りはないと理解してさしつかえはないであろう。例えば,塩野
宏名誉教授の次の説明は,これを明確に示している。それは,「税金の賦課 処分があり,引き続き滞納処分があるとすると,賦課処分は一つの独立した行 政行為で……(略)……さらに,同じく独立の行政行為である滞納処分の取消 訴訟において,賦課処分は違法でありしたがって滞納処分も違法であると主張 できるかどうか,という形で問題となる」(3)とされている。このように,いわ ゆる違法性承継論も,単一・単独の行政処分それぞれの間における議論と言え る。
ところで,建築基準法では,いわゆる「変更処分(変更確認)」という制度が 存在する(4)。そして,この変更処分の法的性質については,変更前の当初の処 分は変更処分がなされたと同時に全て消滅する,すなわち変更処分後は,変更 処分のみが行政処分としては存続するとする理解と,変更処分は,原処分の一 部変更であり,変更されていない部分については原処分の効力と存在が,変更 処分後においても存続するとする理解が,事実上,対立している(5)。なお,後 者の場合原処分(原確認)に違法性が存在しない場合には,変更処分(変更確認)
がなされた後でもどちらによっても建築可能とするのが行政実務の理解である と言える(すなわち,2つの処分が併存する)。
さて,争訟との関係で,この変更処分(変更確認)を見た場合,かりに前者 の見解,すなわち,変更処分により当初の建築確認処分は全て消滅するとした 場合,当初の処分について,行政不服審査法上の審査請求を提起したり,行政 事件訴訟法上の取消訴訟を提起していた場合でも,争訟の対象が消滅すること から,変更後の変更処分に対し,あらためて,争訟の提起を行わなければなら ないこととなる。
しかも,変更処分(変更確認)は,次々と複数回行われることもめずらしく はなく,この場合,最後の変更処分(変更確認)を争訟の対象とせざるを得な いことともなり,結局,建築物の完成により訴えの利益が消滅することとも なる(6)。
そこで,本稿では,この変更処分(変更確認)について,わが国の行政法理 論が,あまり目を向けてこなかった(その主要な理由は,単一・単独の行政処分の みに目を向けてきたから生じているようにも思われる)ものであるから,そもそも 変更処分とは理論的にどのようなものであるのか,考察の糸口を見つけてみよ うとする試みを行ってみることとしたい(7)。
二 変更処分 変更確認 が多用さ 原因
それでは,変更処分(変更確認)が,実務で多用されている原因は,そもそも,
どのような点に求められているのだろうか。
行政実務現場に販売されている実務書は,その理由の 1 つを,次のように述 べている。すなわち,「審査ミスなどの瑕疵があった場合,指定確認検査機関 は自ら確認を取り消すことができないので,計画変更で瑕疵の治癒を認め……
(略)……対応している」(8)と述べられている。
この説明は,実務現場に現に実務用として販売されているものなので,現象 面としては,おそらくそのとうりなのであろう。
しかし,この説明には,すでに別稿でも指摘したように重大な誤りがある(9)。 それは,指定確認検査機関が,職権取消を行い得ないとする説明である。そも そも,このような誤った理解が,行政実務家の一部でなされている理由は,次 のような点が考えられる。
それは第 1 に,職権取消し・撤回につき明文の規定が存在しない,第 2 に,
民間の指定確認検査機関では,債務不履行との感覚が強く働いている(10),第 3 に,特定行政庁の取消制度の存在(11)(建基法 6 条の 2 第 11 項)などである。
しかし,以上の理由は,民間の指定検査確認機関が職権取消や撤回をなし得 ないとの理由としては全く成り立たない。その理由を,以下に述べる。
第 1 に,明文規定がない場合であっても,処分庁が撤回できることは最高裁
判所昭和 63 年判決も認めている(12)。まして,違法処分に対する職権取消は,
法の支配・法治主義という法の原理(13)から,当然,同様に明文規定の根拠がな く可能なことはこの判例の射程距離上,当然のこととなる。
第 2 に,学説や一般の行政争訟の実務書からも,明文規定なき場合でも,職 権取消や撤回は,可能,いや行政庁の責務と解されている。学説では,授益行 為(処分)には,解釈上,撤回の明文規定はなくとも,黙示的に,それは含ま れるとする理解が通常である(14)。すなわち,このような理解が通説・判例であ るとされるが,その根拠は,「行政行為の公益適合性」に求められている(15)。 まして,違法行為に対する職権取消は,すでに述べたように,法の支配や法治 主義から当然のこととなる。
また,代表的な行政争訟一般の実務書も,次のように述べている。そこでは,
「行政庁は,自ら処分を所要の限度で撤回又は変更するのが適切であり,行為 規範の面ではその責務がある」(16)と指摘されている。
第 3 に,建築確認申請は,私人の公法行為とされているから(17),債務不履行 との感覚から,職権取消や撤回ができないというのは,そもそも理由にはなら ない。
第 4 に,特定行政庁による民間の指定確認検査機関の行った建築確認の取消 制度の存在も,以下の理由で,職権取消・撤回ができないとの理由とすること はできない。さて,もし,特定行政庁の取消権限の存在を,民間の指定確認検 査機関が,職権取消や撤回をすることができない根拠とするのであれば,特定 行政庁は,民間の指定確認検査機関の行った建築確認処分をフルカバーで全て 見ることとならざるを得ない。もし,これを肯定するなら,碓井教授が指摘し ているように,「特定行政庁が精査する義務を負うとするならば,まるで二重 の確認がなされることになり,指定確認検査機関制度を設けた趣旨を没却す る」(18)こととなる。
第 5 に,注(8)掲記の文献は,後に言及する,変更処分(変更確認)により当
初処分は消滅するとする東京高裁平成 19 年判決に言及している(19)。しかし,
後にも述べるように,この判決論理は,変更処分(変更確認)は同時に職権取 消処分たる性格も合わせ有することとなるから,民間の指定確認検査機関が職 権取消をなし得ないとするのは,矛盾となってくる。
第 6 に,民間の指定確認検査機関が撤回をしたケースは,現に存在する(20)。 以上の点から,民間の指定確認検査機関は,当然,職権取消や撤回ができる ことは明らかであり,場合によってはそれを行う法的義務が「二重敷地」問題 のように生じることともなる(21)。
ともあれ,誤った理由によるにしろ何にしろ,変更処分(変更確認)が多用 されている傾向があり,この処分の法的性格につき,判例・裁決例は分かれて いる(22)。なお,当然のことながら,当初処分(原確認)の内容が全て建築関連 法令に適合している場合であっても,変更確認は可能である。この場合,すで に指摘したようにどちらの確認でも建築可能とするのが行政実務となっている。
そこで,次に,その判例・裁決例を見てみることとする。
三 変更処分 変更確認 に関す 判例・裁決例
概観
まず,変更処分(変更確認)は,それがなされることにより,当初の建築確 認処分は消滅するとする判例及び裁決例には,次のものがある。東京高等裁判 所平成 19 年 8 月 29 日(23),東京地方裁判所平成 19 年 9 月 27 日(24),川崎市建築 審査会裁決平成 25 年 12 月 24 日(25),東京地方裁判所平成 25 年 3 月 22 日(26)が その代表例である。
一方で,変更処分(変更確認)がなされたとしても,原処分(当初の確認処分)
の効力は存続するとする判決・裁決例としては,次のものがある。横浜地方裁
判所平成 18 年 11 月 22 日(27),豊島区建築審査会裁決平成 21 年 6 月 2 日(28), 世田谷区建築審査会裁決平成 22 年 11 月 25 日(29),がその代表例である。
当初処分消滅説を採 判例・裁決例の論理
それでは,変更処分(変更確認)が行われた場合,当初の建築確認処分及び 処分の効力は消滅する,いわば当初処分消滅説とでも呼ぶべき理解の実務上の 論拠を見てみることとしよう。
代表的な判例として,( 1 )で指摘した,平成 19 年東京高等裁判所判決(30)は,
以下のようなものであった。
事実の概要は,平成 13 年 4 月 16 日に民間の指定確認検査機関に共同住宅に 関する建築確認申請がなされ,これに対し,4 月 27 日付けで,建築基準法 6 条の 2 第 1 項,6 条 1 項に基づく確認済証が交付された。
この建築確認につき,付近住民が行政事件訴訟法による取消訴訟を提起した
(平成 14 年(行ウ)第 16 号)。
その後,平成 18 年 5 月 18 日変更確認申請が行われ 5 月 25 日建築基準法 6 条の 2 第 1 項及び 6 条 1 項後段に基づき変更確認処分が行われた。
控訴人の主張は,変更確認処分により当初処分の効力が消滅したので,訴訟 要件たる訴の利益が失われたというものだった。
この点,判旨は,以下のように判示している。
「法 6 条 1 項前段及び 6 条の 2 第 1 項は,建築主は,一定の建築物を建築し ようとする場合に……(略)……建築主事又は……(略)……指定確認検査機 関……(略)……の確認を受けなければならないし,法 6 条 1 項後段及び 6 条 の 2 第 1 項は,確認を受けた建築物の計画を変更して,建築物を建築しようと する場合も,同様とする……(略)……変更があった場合には……(略)……
変更に係る建築物の建築計画が建築基準関係規定等に適合するものであること について,改めて,建築主事等の確認を受けることを義務付けているものと解
される。このような同条の文理及び規定の趣旨に照らすと,同項は,当初の建 築物の計画についての確認の効力がそのまま存続することを前提として,その 変更部分についてのみ,建築主事等の確認を受ければ足りるとしているもので はなく,変更に係る建築物の建築計画の全体について建築主事等の確認を受け ることを義務付けている……(略)……したがって……(略)……建築確認変 更処分がされると,これにより既存の建築確認処分は取り消され,その効力は 消滅する……(略)……そうすると……(略)……本件建築確認処分の取消し を求める訴えの利益は失われた」と判示した。
次に,平成 25 年東京地方裁判所判決(31)を見てみよう。
事実の概要は,マンションに対して,民間の指定確認検査機関の行った建築 確認につき,付近住民が取消訴訟を提起したというものだった。なお,その後,
2 回の変更処分(変更確認)が順次行われている。
判旨は,「文理及び……(略)……確認の制度趣旨に照らせば,同項後段は
……(略)……当初の建築物の計画についてされた確認の効力が存続すること を前提に変更をした計画の部分についてのみ建築主事の確認を受ければ足りる としたものではなく……(略)……改めて,その全体が……(略)……公権的 な判断を受けることを求めた規定であると解する……(略)……変更後の計画 について建築主事による確認がされたときには,当初の建築物の計画について された確認の効力は消滅する……(略)……このことは,指定確認検査機関に よる……(略)……確認についても同様である」と判示している。
最後に,平成 25 年川崎市建築審査会裁決が引用する東京地方裁判所平成 19 年判決(32)は,次のように述べている。
「そもそも,建築基準関係規定に違反する建築確認申請がなされていた場合 に,その違法な点を是正することを禁ずる法令はない……(略)……変更確認 をするに当っては,既にされた建築確認の存在を前提とするものの,その審査 は,変更に係る部分の建築基準関係規定適合性に限定されて判断されるもので
はなく,変更部分を含めた建築物全体が建築基準関係規定に適合するか否かを 改めて審査し,その適否を判断することになるものと解される」と説明してい る。
わずかばかりのコメントを付すとするならば,平成 19 年東京高等裁判所判 決及び平成 25 年東京地方裁判所判決は,ほぼ形式的文理解釈と評価して良い であろう。両判決とも,一応は条文の趣旨とは述べているが,これも形式的文 理解釈から読みとれる趣旨であり,それ以上のものではないように思われる。
一方,平成 19 年東京地方裁判所判決とそれを引用する平成 25 年川崎市建築 審査会裁決は,当初処分の存在を前提としている点で,完全な当初処分消滅説 はとっていない可能性が残る。むしろ,それは,当初処分の違法性を是正する 目的で,変更処分(変更確認)制度を利用することを是認した判断と読むべき かもしれない。
3 当初処分存続説を採 判例・裁決例の論理
以上の当初処分消滅説に対し,変更処分(変更確認)は,まさしく当初処分 の「変更」であるから,変更確認から見た場合変更されない部分については当 初処分(原確認)はそのまま存続するとする,いわば,当初処分存続説とでも 呼ぶべき理解につき,判例・裁決例の論理を見てみることとしたい。
まず,平成 18 年横浜地方裁判所判決(33)を見てみよう。
この判決は,すでに見た平成 19 年東京高等裁判所判決の原判決なので,事 実の概要は省略する。
関係する判示部分は,次のように述べている。それは,「変更確認処分がさ れた場合にその前提となった建築確認処分の効力が失われるとする根拠はない から,本件変更確認処分がされたことによって原告らが本件建築確認処分の取 消しを求める訴えの利益を失ったと解することはできない……(略)……建築 基準関係規定には開発行為の許可……(略)……の規定が含まれている……(略)
……建築基準法 19 条,20 条の規定による規制と密接な関連性を有することか ら……(略)……確認させることにより……(略)……建築基準法における同 法 1 条に掲げる目的の実現を確保しようとした」と判示している。
次に,豊島区建築審査会平成 21 年裁決(34)を見てみよう。
事実の概要は,民間の指定確認検査機関が,平成 19 年 12 月 20 日建築確認 処分を行ない,処分の取消を求めて,それに対する審査請求が提起された。さ らに,審査請求提起後の平成 20 年 10 月 27 日に変更確認処分が行われた。
この裁決は,平成 19 年東京高等裁判所判決(35)を批判し,次のような判断を 示している。
それは,「以下に述べるように,変更確認処分がなされた場合に原確認の効 力が失われるとする法的根拠は存しない。
建築確認は,法 6 条 1 項の規定する建築物の建築等の工事が着工される前に 当該建築物の計画が建築基準関係規定に適合していることを公権的に判断する 行為であって,建築確認を取得した建築計画は建築基準関係規定に適合するも のとされて,それに基づいて適法に工事をすることができるという法的効果が 付与されるものである(最高裁昭和 59 年 10 月 26 日判決。民集 38 巻 10 号 1169 頁)。 このような建築確認の法的性質に照らせば,変更確認処分がなされた場合に,
それによって原確認が取り消されることになると解しなければならない理由は ない。すなわち,原確認も,変更確認も,権限ある機関によって取り消される までは,法的にはともに有効に存在する(いわゆる公定力を有する。)ものと解さ れるのであって,原確認にかかる建築計画に従った工事も,また,変更確認に かかる建築計画に従った工事も,建築確認あるいは変更確認に基づくものとし て,適法に工事を行うことができるという法的効果が付与されており,変更確 認がなされたことのみをもって,原確認に基づく建築計画に従った工事を行う ことができなくなるわけではない。
したがって,原建築計画が建築基準関係規定に適合するとする原確認がもし
も誤っているのであれば,それは取り消されるべきであるから,変更確認がな された後であっても,原確認の取消を求める法的利益は失われない」との判断 を示している。
最後に,平成 22 年世田谷区建築審査会裁決(36)を見てみよう。
事実の概要は,民間の指定確認検査機関が,平成 22 年 4 月 2 日付けで行っ た建築確認に対する審査請求が提起された後に,8 月 27 日付けで変更確認処 分が行なわれたというものである。
本裁決は,変更確認により原処分(当初の確認処分)は消滅するとした東京地 方裁判所平成 19 年 1 月 16 日(平成 17 年(行ウ)第 620 号)を批判して,次のよ うに述べている。
すなわち,「建築確認について,有効期限又は工事に着手すべき期限につい て定めた規定や,一旦建築確認を受けた建築物の工事を必ず実施しなければな らないという規定はない。建築確認がなされた敷地と同一の土地を敷地として 別の建築確認がなされることを禁止する規定は存在しないから,同一の土地を 敷地として複数の建築確認が取得されることがあり得る。この場合,後からな された建築確認がなされた場合,それ以前になされた建築確認の効力が消失す ることについて定めている規定も見当たらない(このことから,実務においては,
着工に際して,「工事取止め届」等といった書類の提出がなされて,その後に当該敷地 において行なわれる工事が適法であるか否かの検査をも視野に入れて,どの建築確認に 基づいて実際に工事が行なわれるのかを明確にする工夫がなされることがある)。 建築確認は,当該建築計画は建築基準関係規定に適合している旨の建築主事 あるいは指定確認検査機関……(略)……の判断の表示であり,これを取得す れば法による工事の禁止を受けないというものであって,建築確認がなされた 後においては当該建築確認に基づいて工事を行うことを制限することはできな いものと解されるからである。また,それらの建築確認申請が,別個の確認審 査機関において,各々別々に審査されることも可能である。そして,このよう
な状況は,当初の建築確認の計画を変更する建築確認についても基本的に同様 と考えられる。当初の建築確認とその建築計画を変更する建築確認について,
その申請・審査手続が同一の確認審査機関において行なわれなければならない ものとされてはいないから,当初の建築確認処分をした確認審査機関が必ず計 画変更の建築確認処分をすることになるものではなく,それらを各々別個の確 認審査期間が行うことがあり得る。
これらを考慮すると,当初の建築確認の内容を変更する計画変更の確認申請 についての建築確認処分が,変更に係る部分についてのみならずその余の部分 の全体について改めて建築基準関係規定に適合するか否かを判断するものであ ることのみを理由に,当初の建築確認処分は取り消され,消滅することになる と理解することには,必ずしも賛成できない」との判断を示している。
以上の判例・裁決に,わずかばかりのコメントを行っておくこととする。
さて,すでに述べたように,変更処分(変更確認)により,原処分(原確認)
が消滅するとした平成 19 年東京高等裁判所判決や平成 25 年東京地方裁判所判 決は,形式的な条文の文理解釈,しかもほぼ変更確認の根拠規定単体のみに焦 点をしぼった解釈ということができる。
それに対し,原確認存続説の論理は,次のように評価することが可能である。
それは,変更確認の根拠規定にのみ焦点をあてるのではなく,建築基準法全体 の構造や仕組みとの関係で,当該規定を理解しようとする,いわば仕組み解 釈(37)と言ってよいであろう。
その意味では,塩野 宏名誉教授の「個別行政法律の仕組みは,条文相互の 技術的操作だけでは十分に理解できない」(38)との指摘は,「当初処分(原確認)
消滅説への批判の論拠ともなり得ようか。
4 小括
以上,見てきたところから,判例・裁決例の論理あるいは条文解釈は,以下
のように,とりあえずは,まとめることが可能と思われる。
まず,当初処分消滅説の論理及び条文解釈は,一言で述べるなら,変更確認 申請を受けて,建築主事や指定確認検査機関は,改めて全てを審査しなおすか らという,きわめてシンプルな論理,解釈となっている。
次に,当初処分(原確認)存続説の論理・解釈は,次のようなものとなろう。
第 1 に,なぜ改めて全てを審査しなおすこととされているのか,判例・裁決 例からは,2 つの理由を引き出すことができよう。1 つは,平成 18 年横浜地方 裁判所判決は,建築基準関係規定の性格の 1 つとして,「密接な関連性」を指 摘している。そこからは,変更部分が,かりに変更をしない部分にも何らの影 響を与える可能性があるので,その点につき審査を行っておく必要があること から,改めて全体をみなおすことが求められるという理解である。
2 つめは,平成 22 年世田谷区建築審査会の裁決から導き出される解釈であ る。それは,変更処分(変更確認)は,当初処分(原確認)を行った機関とは,
別の指定確認検査機関が行ないうるので,その場合,改めて全体をみておく必 要があるという理解である。
おそらく,これら 2 つの意味から,改めて全体を見なおすことが求められて いると考えて良いであろう。
第 2 に,建築確認の効力論からの理解がある。世田谷区建築審査会裁決が述 べているように,そもそも一つの敷地に建築される建築物については,建築確 認権限を有する複数の機関から別々の建築確認を得ることが可能である。この 場合,後から得た建築確認があるからといって,先に得た建築確認により建築 ができなくなるわけではない。そうであるとするなら,平成 21 年豊島区建築 審査会裁決が述べるように,従前の建築確認の効力は,変更確認も含め,その 後に何らかの建築確認がなされたとしても消滅はしないとの理解である。
そこで,判例・裁決例の論理や解釈については(39),現在のところ,筆者は,
次のように考えている。
まず,当初処分消滅説の論理や解釈は,いわば国語辞典的形式的解釈である と言える。
次に,当初処分(原確認)存続説は,建築確認制度の目的・趣旨及び現実の 実務から論理立てた解釈と評価しうる。
法解釈というフィールドでは当初処分(原確認)存続説に合理性があり,説 得力があると言ってよかろう。
そこで,以下,今度は,行政法一般理論からの分析に移りたいと思う。
四 学説の動向
変更処分 変更確認 を直接採 あげ 学説
これまで,建築基準法の変更確認について,直接これを採りあげた行政法学 上の文献は,あまり見られなかった。
ただ,最近では,碓井光明教授の見解がある(40)。
碓井教授は,平成 18 年横浜地方裁判所判決と平成 19 年東京高等裁判所判決 に言及された上で,次のように述べられている。すなわち,「法 6 条 1 項後段 は……(略)……変更確認申請の内容によっては,結果的に変更部分のみの審 査でよいと見られる場合もあり得るが,それは結果論であるから,再度の建築 計画全体について審査・確認がなされるという建前が採用されていると見るべ きであろう」(41)と述べられている。このように,碓井教授は,変更部分(変更 確認)により,当初の処分(原確認)が消滅するのかどうかについては明言を さけている。
ただ,筆者の目から見れば,本稿で,後に述べるように平成 18 年横浜地方 裁判所判決から導き出した解釈,つまり,変更部分がそれ以外の部分にも影響 を与える可能性があるので改めて全体を審査するとの理解に近いように思われ
る。
もし,そうであるとするなら,当初処分(原確認)存続説を採られる可能性 はあるであろう。その場合には,重要な学説上の論拠が提供されることとなろ う。
行政法学の一般理論
まず,結論のみを述べれば,わが国の行政法学の一般理論は,「変更処分」
という発想が,そもそもあまり見られず,本稿冒頭でも示したように,単一・
独立の行政処分を基礎にその理論構築を行なってきたと言えよう。
実は,そのことこそが,当初処分消滅説を生み出したバック・ボーンだと考 えられる。
ともかくも,わが国の代表的テキストで,「変更処分」という発想があまり 見られないことを本稿に必要な視点から確認しておくこととしよう。
塩野 宏名誉教授のテキストを見てみよう。そこでは,「分類基準(行政行為 の効果,行政行為の内容,効果意思,行政行為の機能の観点)」(42)とされた上で,効果 については,「授益処分と侵害処分」(43),内容につき,「命令的行為と形式的行 為」(44),効果意思につき,「法律行為的行政行為と準法律行為的行政行為」(45)機 能という点で,「命令行為,形成的行為,確定行為」(46)とされている。
大橋注一教授のテキストを見てみよう。そこでは,「2 種類の行政行為……
(略)……不利益処分……(略)……申請処理処分」(47),「行政行為による予防 システム」として,許可,認可,特許(48),を,そして,「効力論として」公定力,
不可争力,執行力,不可変更力をあげておられる(49)。
宇賀克也教授のテキストを見てみよう。そこでは,「規制行政における主要 な法的仕組み」として,許可制,認可制,届出制,下命制・禁止制(50)が,「行 政行為の分類」として,申請に対する処分と不利益処分,二重効果的処分,命 令行為・形式的行為・確定行為,一般処分があげられている(51)。
阿部泰隆教授のテキストを見てみよう。そこでは,「行政行為の分類」として,
侵益的・規制的行政行為,給付行為・授益行為,二重効果的行政行為があげら れている(52)。但し,行政行為の効力論について,「公権力概念,第一次的判断権,
公定力の廃止を」(53)を提言している。加えて,「行政処分の分類と救済手段との 関連」(54)が意識されている。
以上,見たように,変更処分については,論じられることはないようであり,
結局,行政処分(行為)論での位置付けも不明と言ってよかろう。
ただ,本稿の視点から参考となるのは,阿部泰隆名誉教授のテキストであろ う。それは,伝統的な行政行為の効力論から離れてみるべき視点(55)と,行政行 為と救済手段のリンク(56)であると言ってよかろう。
そこで,以下,伝統的な効力論・行為論との関係と救済法の視点から,変更 処分(変更確認)に分析を加えてみよう。
五 当初処分 原処分 消滅説と職権取消・撤回理論
すでに述べたように,当初処分(原確認)が変更処分(変更確認)により消滅 するとした,平成 19 年東京高裁判決は,次の点を明確に述べている。
それは,「本件建築確認処分は,本件変更確認処分がされたことにより取り 消され,その効力は失われた」(57)との判示部分である。
これは,変更処分(変更確認)が当初処分(原確認)を取り消したこととなる というのであるから,変更処分(変更確認)は,同時に当初処分(原処分)の職 権取消ないし撤回処分も兼ねていることとなる(58)。いわば,「複合的性格」の 処分とでも言える。
ところで,このような複合的処分とでも呼ぶべき判断が示された理由は,ど こに求められるのであろうか。筆者の想像するところでは,それは,伝統的な 単一・独立の自己完結的行政処分観によるものと考えられる。すなわち,同一
の建築主に同一建築物につき処分を行うこととなるので,その処分は単一・独 立の自己完結的処分である必要があるから,改めて審査を行った変更処分(変 更確認)がなされた以上,当初処分(原処分)の効力は消滅せざるを得ないこと となり,この発想を支えるのに,シンプルな文理解釈が利用されたのであろう。
しかし,そこには,以下のような問題点が生じる。それは,第 1 に,伝統的 行政処分観からの問題であり,第 2 に,伝統的行政処分観では説明が困難な建 築確認それ自体から生じる問題である。
まず,伝統的行政処分観から生じる問題点を見てみることとしよう。
さて,世田谷区建築審査会平成 22 年裁決が指摘するように,変更処分(変 更確認)は当初処分(原確認)を行った機関とは別の建築確認権限を持つ機関で も行うことができる。すなわち,当初処分(原処分)消滅説は,変更処分(変 更確認)は,同時に当初処分(原確認)の職権取消あるいは撤回を兼ねているこ ととなるので,平成 19 年東京高裁判決及び平成 25 年東京地裁判決は,処分庁 とは別の機関による職権取消あるいは撤回を認容した判決ということとなる。
しかし,わが国の行政法学の理論は,次のようなものとなっている。職権取 消については,宇賀教授は,「職権取消しを行いうるのは,当該処分を行った 行政庁である」(59)とされ,撤回につき,塩野 宏名誉教授は,「撤回権は処分庁 のみが行使できる。これは,撤回権は処分権とまさに裏腹の関係に立つ」(60)と されている。そこで,伝統的理解に立った場合,平成 19 年東京高等裁判所判 決や平成 25 年東京地方裁判所判決の論理は,そもそも理論的に成り立たない。
もっとも,筆者は,従来から,異説ではあろうが,処分庁とは別の行政庁に よる職権取消・撤回が認められる可能性を示唆してきている(61)。しかし,筆者 は,一般論として,高度に複雑化している行政実体法というわが国の現実から,
別の行政庁による職権取消・撤回を考えてみる必要性は,現在でも,当然あり うると考えてはいるが,少くとも建築基準法の変更確認については,その種の 例とはなし得ないと考えている(62)。
次に,具体的ケースを想定してみることとする。建築確認それ自体の性格か ら,かりに建築主が,全くの建築計画の段階の時点で,建築確認権限を有する 複数の機関に,それぞれ別々の内容の建築計画による確認を同一敷地につき求 めたとする。これらは,いずれも,建築基準法により,建築基準関係規定に適 合する限り,平成 22 年世田谷区建築審査会裁決が示すように,それぞれ有効 な建築確認として効力を有することとなる。もし,そのうちの 1 つが,別の経 過,例えば,当初処分(原確認)⇒変更処分(変更確認)というルートをたどっ た場合での変更確認と同じ内容のものでも問題なく成立する。この場合(特に 原確認の内容が全てそのままでも規定に適合している場合),それぞれの処分は,有 効に成立することとなるのに,変更確認ということで求めた場合にのみ,有効 に成立している処分がなぜ消滅することとなるのだろうか。
以上の点から,筆者は,むしろ「変更処分(変更確認)」という,特別な行政 処分の類型として捉えるべきであると思う。この場合,次のような理論構成と なる。それは,「建築確認」の本来の考え方に立ちもどり,「変更処分(変更確認)」 によりその内容での建築も可能であり,当然に,当初処分(原確認)での建築も,
建築基準関係規定に適合している限り可能なので,原確認の効力はそのまま存 続する。
かりに,当初処分(原確認)に違法な部分が,後発的に発見され,その是正 のために変更確認制度が利用された場合,それは,変更処分(変更確認)により,
当初処分(原確認)に不適合部分のあることの確認を行うものであり,不適合 部分については,変更確認によりそのままでは変更された部分については着工 できないこととなり(もともと不適合な建築は法的に認められない),それ以外の 部分では,当初処分の効力は存続する。なお,変更確認により不適合が確認さ れた部分の瑕疵が,重大な影響を当初処分の残りの部分に与え,原確認のまま では着工が不能であったり,原確認を維持することが困難な場合には,原確認 を行った機関は,変更確認により着工するのかどうかは別として,建築確認の
職権取消義務が発生し,その義務を法的に負担することとなる(本稿二参照)。 そこから,改めて審査することが求められるのは,すでに述べたように,平 成 18 年横浜地方裁判所判決,平成 22 年世田谷区建築審査会裁決から導き出し うるように,変更部分が他の部分に影響を与えるかどうかを審査したり,別の 建築確認権限を有する機関が変更処分(変更確認)を行う場合,全体を改めて 見ておく必要がある点に求められるべきである。
以上のような解釈からは,変更確認により当然に,当初処分(原確認)が消 滅することとはならないし,消滅させなければならない理由もない(63)。 別の表現ととれば,変更確認は原確認の一部分のまさに「変更」であり,こ れにより瑕疵部分が治癒されたり,変更前以外にも変更による建築も可能とい う選択肢が与えられるものと理解すべきであろう。
六 争訟制度と併合制度の利用
変更確認により原確認が消滅するとする当初処分(原確認)消滅説には,争 訟制度との関係でも重大な問題が存在する。
本稿で見たように,変更確認が問題となるケースの多くは,まず当初処分(原 確認)に対する審査請求や取消訴訟が提起され,その手続中に変更確認がなさ れる場合,そこでの当初処分(原確認)の効力が問題となったものである。
そうであるとするなら,建築主や建築確認権限を有する機関にとっては,当 初処分(原確認)消滅説によった場合,次のような争訟対応が可能となる。そ れは,当初処分(原確認)に対する審査請求や取消訴訟の手続が進んだ段階で,
変更処分(変更確認)を行い,原確認を消滅させ,改めて変更確認に対する審 査請求や取消訴訟を提起せざるをえない状況においこむ(なお,変更確認は順次 くりかえし行うことも可能である)。結果として,変更処分を争っている間に,建 築物は完成し,審査請求人や原告には訴えの利益そのものがなくなる(64)。この
点,例外としての執行停止もなかなか認められづらい(65)ことと合わせ考える と,当初処分(原確認)消滅説は,事実上,処分取消請求という救済制度の道 をふさぐ効果を有している(66)。
一方,当初処分(原確認)存続説をとる,平成 21 年豊島区建築審査会裁決,
平成 22 年世田谷区建築審査会裁決では,前者が 20 豊建審請第 1 号審査請求事 件に 20 豊建審請第 4 号審査請求事件を併合し(67),後者が,22 世建審第 3 号審 査請求事件に 22 世建審第 4 号審査請求事件を併合している(68)。
つまり,当初処分(原確認)存続説は,原確認を存続させ,変更確認がその 後なされた場合それを併合することにより,可能な限りの実体審理を行い,訴 えの利益が失われることを可能な限り回避しようとするねらいがあることが理 解できる。
取消訴訟の場合には,おそらく,行政事件訴訟法第 13 条第 2 号の関連請求 の併合制度,すなわち,当該処分とともに一個の手続を構成する他の処分の取 消の請求の利用を模索することになろう(69)。
以上の,救済法的関心からも,当初処分(原確認)存続説に合理性があると 考える。
七 結語
本稿では,行政処分の理論面及び行政救済法の視点から,建築基準法の変更 確認処分と当初処分(原処分)との関係に分析を加えた。
そこでは,変更確認を伝統的な行政処分(行為)観に従い,単一・独立の行 政処分として捉えるのではなくして,複数処分の「連続性」と捉えて原確認の 一部を変更する「変更処分(変更確認)」という独特のカテゴリーで理論構成す べきこと,その結果,原処分(当初処分)の効力は,変更処分後も存続すると 理解した(70)。すなわち,原処分(原確認)が存在することを前提に,あくまで
もその一部を変更し,原確認の変更部分が違法な場合は,その部分を変更し合 法性を担保し,原確認のうち,変更部分が合法な場合は,どちらによっても建 築可能とするものである。
加えて,行政救済法の視点からも,当初処分(原確認)存続説の合理性と消 滅説の重大な問題点が明らかとなった。
特に留意すべきは,消滅説を採った東京地方裁判所平成 25 年判決が,平成 19 年東京高等裁判所判決をほぼおうむ返し的に述べるのみで,平成 19 年以後 出された原処分存続説を採る豊島区・世田谷区の建築審査会裁決の論理に何も 答えていない点である。
本稿をきっかけに,この問題に関し,実務上の検討が加えられることを望み つつ,本稿をとじることとしたい。
注
( 1 ) 筆者の違法性の承継についての分析は,田村「東京都建築安全条例上の『認定』
と 行 政 訴 訟 で の 違 法 性 の 承 継 ―― 最 高 裁 判 所 平 成 21 年 12 月 17 日 判 決 の 分 析――」明治学院大学法学研究第 90 号 109 頁以下(2011 年)。
( 2 ) なお,最近の行政処分間以外の違法性の承継については,田村「建築基準法上 の二項道路と公法上の法律関係確認の訴での違法性――違法性承継論を手がかり に――」『慶應義塾創立 150 年記念法学部論文集 慶應の法律学 公法Ⅱ』181 頁 以下(慶應義塾大学法学部,2008 年)。
( 3 ) 塩野 宏『行政法Ⅰ〔第 5 版補訂版〕行政法総論』148 頁(有斐閣,2013 年)。
( 4 ) 都市計画法上の変更処分については,田村「行政不服審査法から見た建築基準 法・都市計画法」明治学院大学法律科学研究所年報第 25 号 321 323 頁(2009 年)。
( 5 ) この点を指摘する代表的文献として,碓井光明『都市行政法精義Ⅱ』83 頁(信 山社,2014 年)。
( 6 ) 最高裁判所平成 14 年 1 月 22 日民集 56 巻 1 号 46 頁,最高裁判所昭和 59 年 10 月 26 日民集 38 巻 10 号 1169 頁,これらを引用する碓井・前掲書注(5)308 309 頁から,当然,本文のようなこととなることは理解できよう。
( 7 ) なお,本稿は,本文でも述べたとうり,行政法の法理論から,この問題にアプ ローチをかけるものであるから,原則として,建築基準法の実務書やコンメンター
ルの引用は行わないこととする。
( 8 ) 全国建築審査会協議会審査請求マニュアル策定委員会『審査請求に係る建築審 査会運営マニュアル』106 107 頁(2012 年)。
( 9 ) 田村「廃棄物処理法と行政訴訟での違法判断の基準時――エコテック訴訟をめ ぐって――」明治学院大学法律科学研究所年報第 30 号 219 頁以下(2014 年)。
(10) 第 1 と第 3 の理由は,行政実務家へのヒアリングによる。第 2 の理由は,野口 和俊弁護士から御教示を得た。
(11) この制度について,曽和俊文『行政法総論を学ぶ』86 頁(有斐閣,2014 年)。
(12) 最高裁判所昭和 63 年 6 月 17 日判時 1289 号 39 頁。また,通説もそのように理 解する点につき,塩野・前掲書注(3)173 174 頁。
(13) 大橋洋一教授は,「行政行為が違法である場合,法治主義原則から,取消しが 要請される」(大橋洋一『行政法Ⅰ〔第 2 版〕』194 頁(有斐閣,2013 年)。)と述べられ ている。また,塩野・前掲書注(3)170 頁,そこで引用される,芝池義一『行政 法総論講義(第 4 版補訂版)』167 頁(有斐閣,2006 年)。
(14) 例えば,曽和俊文「行政法を学ぶ(第 10 回)行政行為(2)――瑕疵・職権取消 しと撤回」法学教室第 378 号 63 頁(2012 年)と,それを引用する,大橋・前掲書 注(13)197 198 頁。
(15) 塩野・前掲書注(3)173 頁。
(16) 長屋文裕「違法判断の基準時」藤山雅行=村田斉志編『新・裁判実務大系 25 行政訴訟〔改訂版〕』337 338 頁(青林書院,2012 年)。
(17) 小宮賢一=荒 秀=関 哲夫『特別法コンメンタール 建築基準法』84 頁(第 一法規,1984 年)。
(18) 碓井・前掲書注(5)74 頁。
(19) 全国建築審査会審査請求マニュアル策定委員会・前掲書注(8)107 頁。
(20) この場合,これを職権取消とみるのか撤回と見るのかむずかしい問題がある点 については,田村「建築確認と行政争訟での裁決・判決時説――『二重敷地』と 違法判断の基準時――」明治学院大学法学研究第 95 号 67,74 頁(2013 年)。
(21) 田村・前掲論文注(20)67 頁。
(22) 碓井・前掲書注(5)83 頁。
(23) 判例地方自治 302 号 77 頁。
(24) 判例集未登載。
(25) 平成 25 年度神奈川県特定行政庁建築審査会実務実績・審査請求事例集 63 頁。
(26) 判例地方自治 377 号 91 頁。
(27) 判例地方自治 302 号 78 頁。
(28) 平成 21 年度東京特別区建築審査会年報 157 頁。
(29) 平成 22 年度東京特別区建築審査会年報 232 頁。
(30) 判例地方自治 302 号 77 頁。
(31) 判例地方自治 377 号 91 頁。
(32) 判例集未登載。
(33) 判例地方自治 302 号 78 頁。
(34) 平成 21 年度東京特別区建築審査会年報 157 頁。
(35) 判例地方自治 302 号 77 頁。
(36) 平成 22 年度東京特別区建築審査会年報 232 頁。
(37) 仕組み解釈については,塩野・前掲書注(3)58 頁。
(38) 塩野・前掲書注(3)58 頁。
(39) 参考とした建築基準法の代表的な最近のコンメンタール等として,逐条解説建 築基準法編集委員会『逐条解説建築基準法』(ぎょうせい,2012 年),財団法人日本 建築センター編『詳解建築基準法〈改訂版〉』(ぎょうせい,1991 年),建築基準法 令研究会編『わかりやすい建築基準法〔新訂第 2 版〕』(大成出版,2009 年),島田 信次=関 哲夫『建築基準法体系(第 5 次全訂新版)』(酒井書店,1991 年),小宮賢 一=荒 秀=関 哲夫・前掲書注(17)。
(40) 碓井・前掲書注(5)83 頁。
(41) 碓井・前掲書注(5)83 頁。
(42) 塩野・前掲書注(3)115 頁。
(43) 塩野・前掲書注(3)116 頁。
(44) 塩野・前掲書注(3)116 頁。
(45) 塩野・前掲書注(3)118 頁。
(46) 塩野・前掲書注(3)120 頁。
(47) 大橋・前掲書注(13)170 頁。
(48) 大橋・前掲書注(13)178 182 頁。
(49) 大橋・前掲書注(13)182 186 頁。
(50) 宇賀克也『行政法概説Ⅰ行政法総論〔第 4 版〕』82 108 頁(有斐閣,2011 年)。
(51) 宇賀・前掲書注(50)310 312 頁。
(52) 阿部泰隆『行政法解釈学Ⅰ実質的法治国家を創造する変革の法理論』324 340 頁(有斐閣,2008 年)。
(53) 阿部・前掲書注(52)71 81 頁。
(54) 阿部・前掲書注(52)35 40 頁。
(55) 阿部・前掲書注(52)71 81 頁。
(56) 阿部・前掲書注(52)35 40 頁。
(57) 判例地方自治 302 号 78 頁。
(58) 実務上の取消は,撤回の意味にも利用される点については,田村編著『最新ハ イブリッド行政法〔改訂第 2 版〕』253 頁(八千代出版,2011 年)。変更確認は,当 初処分が合法な場合にも行いうるから,本文のような表現とした。
(59) 宇賀・前掲書注(50)352 頁。
(60) 塩野・前掲書注(3)176 頁。
(61) 田村「取消し,撤回理論の再構成の視点」『阿部泰隆先生古希記念 行政法学 の未来に向けて』45 頁以下(有斐閣,2012 年)。
(62) 「処分庁のみが撤回権をもつ点で学説は一致している」(大橋・前掲書注(13)198 頁)とされるが,少くとも,平成 19 年東京高裁判決や平成 25 年東京地方裁判所 判決がある限り,判例は,別の機関による職権取消・撤回を認めているというこ とになるであろう。
(63) 争訟というフィールドを除けば,伝統的行政法学では行政処分の効力の一部制 限は,いわゆる行政処分の附款論ということとなろう(田中二郎『新版行政法 上(全 訂第 2 版)』127 頁(弘文堂,1974 年)。まして,行政処分の一部取消,一部撤回など は考えられないであろうから,当初処分(原確認)消滅説は,原確認全てが消滅 するとせざるをえなかったのであろうか。
(64) その場合,訴訟の原告の場合には,最高裁平成 17 年 6 月 24 日決定判時 1904 号 69 頁のように,行政事件訴訟法 21 条 1 項により損害賠償請求訴訟に訴えの変 更をするしかない。この訴えの変更については,金子正史『まちづくり行政訴訟』
358 頁以下(第一法規,2008 年)。
(65) 最近の第一審原告勝訴のケースでも,執行停止が求められなかったのではない かと思われるケースとして,さいたま地方裁判所平成 26 年 3 月 19 日(判例集未登 載)。
(66) 訴えの利益については,本稿注(6)参照。
(67) 平成 21 年東京特別区建築審査会年報 157 頁。
(68) 平成 22 年東京特別区建築審査会年報 232 頁。
(69) これについての代表的文献として,宇賀克也『行政法概説Ⅱ行政救済法〔第 3 版〕』215 219 頁(有斐閣,2011 年),塩野 宏『行政法Ⅱ〔第 5 版〕行政救済法』
155 157 頁(有斐閣,2010 年),大橋洋一『行政法Ⅱ現代行政救済論』144 151 頁(有 斐閣,2012 年),阿部泰隆『行政法解釈学Ⅱ実効的な行政救済の法システム創造の 法理論』198 頁以下(有斐閣,2009 年)。
(70) 原確認と変更確認の「同一性」を求める実務書(逐条解説建築基準法編集委員会・
前掲書注 39)65 66 頁も,連続性という点で,本稿の結論を支えうる理解のように 思われる。
〔追記〕
(1) 弁護士の野口和俊先生から建築基準法の変更処分につき理論的検討を行 うべきとの御教示を得てから,ずいぶん時間が経過した。本稿は,野口先生か らの宿題に十分に答えることとはならなかったが,実務上もかなり問題が生じ ているという現実もあり,現時点での筆者の考えを一応示しておくべきと考え 発表することとした。
(2) 本稿脱稿後,当初処分(原確認)消滅説をとる裁決例が那覇市建築審査 会裁決にある(「第 61 回全国建築審査会長会議発言資料」45 頁以下(全国建築審査会 協議会,2014 年)との情報に接した。又,同様に本稿脱稿後「確認権限多元化」
との概念を述べる。米丸恒治「『建築基準法』の適用」法学教室第 408 号(2014 年)に接した。
(3) 本稿逸脱後,馬橋隆記弁護士より,変更確認申請にあっては,もっぱら 変更部分のみの審査しか行われない実務が多いとの御教示を得た。これも,本 稿の結論を支える実務運用と言えよう。