埼 玉大学 博 士課程論 文
新規事業会社 にお ける競争戦略形成 プ ロセスの研究
現場ベ ースの競争戦略論 の提案
2006年 3月 10日
埼 玉大学大学 院経済科学研究科 (博 士後期課程) 学籍番 号 03VE 104
氏名 小 林 満 男
学 位 論 文 要 旨
専攻名 経済科学専攻
氏 名 小林 満男
1 題 目
(本題) 新規事業会社 にお ける競争戦略形成 プ ロセスの研究 (副題) 現場ベースの競争戦略論 の提案
2 要 旨
近年 、新規事業や環境変化 の激 しい業界 な どを対象 として、戦略のダイナ ミ ズムを とらえる戦略論 の研 究 が注 目されてい るが、実 際 に戦略が形成 されてい
くプ ロセスを現場の実践者 たちの行為 に遡 って分析 した事例研究は少 ない。
本研 究 の 目的は、第‑ に、現場 において戦略が形成 されてい く実態 を とらえ るための分析 フレー ム ワー クを提案す ることであ り、第 二に、業界の常識 に焦 点 をあて実践者 の視点 を と りこみ 、営業担 当者や技術担 当者 た ちの行為 を追 う
こ とで戦略形成プ ロセ スを明 らかにす ることである。
競争戦略論 と研究方法論 は相互 に密接 に関連す るこ とか ら本研究ではこのふ たっ を同時に追究 してい る。ひ とつ は競争戦略論 の立場 か ら、現場 においてい か に して戦略が形成 され てい くのかそのプ ロセ スを探求す る戦略形成 プ ロセ ス の研 究であ り実践者 として企業‑ の貢献 をね らってい る。 も うひ とつ は研究方 法論 の立場 か ら、見 えづ らい戦略形成プ ロセ スを見 るた めの分析 フ レー ムワー クの研究であ り、研究者 として学界‑の貢献 を 目指す ものである。
本研 究では、戦略形成 プ ロセス を 「事業 開始 当初 に設 定 した事業の定義が、
企 業活動 を経 るこ とに よって受動 的に変化 してい くプ ロセス、 あるいは環境 の 変化 を先取 りして能動 的にみず か ら事業の定義 を書 き換 えてい くプ ロセス」と 定義 してい る。その上で、戦略形成 プ ロセ スを とらえるために、事業 の定義 、 営業戦略お よび これ らを策 定 LT=時点にお ける業界 の常識 と、営業活動 を経験 し一定 期 間 を経過 した時点 にお ける再構築 され た事業 の定義等 の変容 を とらえ る事例分析 フ レーム ワー ク と案件 毎の顧客の業務 、受注概要、営業活動 にお け る営業担 当者 、技術担 当者 た ちの行為 を記述 した受注 の流れ、矛盾や課題 を ど の よ うに克服 したか を示す矛盾 の克服、企業 ・組織 間関係等か らなる案件分析
フ レームワークの2種類の分析 フ レームワークを提案 している。
事例研究では、衛 星通信サー ビスの新規事業会社 を とりあげ、個々の法人営 業案件 について、案件 ごとに実践者たちの具体的な行為 を追いなが ら、いかに して受注 を獲得 し、競争優位 を構築 していったかを案件分析 フ レームワー クを 用いて分析す ると同時に事業構造、業界特性 もふまえて総合的な分析 ・検討 を 行 なった。 さらに、一定期 間を経た後で、事業定義が どのよ うに書 き換 え られ ていったか、す なわ ち競争戦略が どのよ うに変容 していったかについて、分析 フ レームワークを用いて分析検討 した結果、「事業の定義は業界の常識 と密接 に 関係す る、事業開始時の初期体験の微妙 な差が戦略形成 に大きな影響 を与 える、
意図的戦略 と創発的戦略の 目利 きや乗 り換 えが競争優位 につながる」の 3点が 示唆 された。
競争戦略論の系譜お よび事例研究の結果 をふまえ、現場で使 える競争戦略論 を提案す る。ひ とつ は、現場の実践者 たちがお りなす多様でアグ レッシブな活 動が企業の戦略形成 に大きな影響 を与える場合があ り、その際の実践者 たちは、
シ ョーン らが提案す る法律や制度で裏付 け られた高度 な専門家のイ メージを持 つ反省的実践家 よ りも、む しろ作業仮説 を持 ちなが らに臨機応変 に行動す る 「作 業仮説人」として とらえることを提案す る。戦略形成 プ ロセスは、 このよ うな 現場の作業仮説人たちがお りなす 、実績、共感 的批判、継続の 3つの側面か ら 説 明できる と指摘す る。ふたっ 目は、受注活動 のプ ロセスの中で発生す る矛盾
を克服 してい く際のツール として 「弁証法的矛盾克服 のフレームワー ク」 を提 案 してい る。みっつ 目は、実践者志向の 「事業変革モデル ・業界変革モデル 」
の提案である。事業変革モデル は、実践者 (作業仮説人)を中心 として、環境 の内 と外、公式な戦略 (事業の定義) と日常の論理 (業界の常識)の 4つの戦 略形成 の鍵概念 を配置 した もので、企業の実践者 たちの戦略思考、実践 を支援 す るツール である。⊥方、業界変革モデル は、 自企業や競争事業者 を氷 山モデ ルで表わ した もので あ り、業界 を構成す る各主体者たち との関係 を含 む業界全 体の構図を把握す るのに役立つ. よっつ 目は、なぜ なぜ (why)を繰 り返 しなが ら作業仮説 を もって実践 し検証 してい く戦 略思考 ・戦略実践 を行 な う実践者
(Who)を中心にす えるWhy・Who戦略の提案である。Why・恥o戦略の核 心は人材 育成 と活用であ り、実践者全員が戦略実現 においては主人公 と位置づ け られ る。
最後に、事例研究 の結果 と提案す る現場ベースの競争戦略論 に則 って、事例研 究対象企業‑提案 を行 なった。
本研究で提案す るフ レームワー クやモデル は完成 されたものではな く、現場 の実践者
と
研 究者 が育ててい くもの とされ る。 そ して、実践者 たちが思考 し検 討す る際に利用 しやす くす るため、図表 を多用 し便宜を図ってい る。 (以上)2
冒 吹
序章 研 究 の背景 と目的 (1)研 究 の背景
(2)研 究 の 目的
(3)研 究 の 目指す方 向 (4)論文 の構成
(5)本論文 の主張 注釈 (序章)
第 1章 戦 略論 の系譜 1. 1 戦略論 の流れ 1. 1. 1 戦略の定義
(1)小林喜一郎 (1999) (2)バー ニー (2002)
(3)大前研 一 (1975、1977、2001)
(4)チ ャフイー (1985)
1. 1. 2 経営戦略論 の主要 な流れ 1. 2 経営戦略論 の新たな潮流 ‑
1. 2. 1 河 合 忠彦 (2004)『ダイナ ミック戦略論』
1. 2. 2 青 島矢 一 ・加 藤 俊 彦 (2003)『競争戦略論』
1. 2. 3 沼上幹 (2000)『行為 の経営学』 ・‑ ‑ ‑ ‑ ‑
1. 3 既存 の戦略理論 に対す る批判 と課題 ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑
1. 3. 1 ダイナ ミック戦略論 に対す る批判 と課題 ‑ ‑
1. 3. 2 現場 における競争戦略実践 を支援す るためには 注釈 (第 1章) ・‑ ‑ ・‑ ‑ ・・‑ ‑ ‑ ・‑ ・・・・‑ ‑ ・‑ ‑ ‑ ‑
第2章 事例研 究の方法 ‑ ‑ ・‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ・‑ ‑
2. 1 戦略形成 プ ロセスをみ るた めの基礎理論 2. 1. 1 ものを見 る方法 としての社会学 ‑
(1)社 会学 か らのアプローチ (2)行為 、行動、実践
2. 1. 2 研 究方法の総動員 2. 1. 3 社会的構築主義 、 2. 2 研 究 のスタンス
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●■●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
2. 2. 1 戦略研 究 を行 う上での前提
l1235671111‑一10000000 E=nH凹ーIHIIIHヒHHりr= l1346678511111111一一I一tIIII111111111 ‖コ‖リr:一一一222 007.811一一一一2222
2. 2. 2 研 究 の視 点 (1)経営者 の視点
(2)現場 と研 究者 との距離
(3)存在論的仮定 と認識 論的仮 定 2. 3 事例研 究の方法
2. 3. 1 常識 ‑‑
2‑ll
(1)バーガー &ラ ックマ ン (1966)『邦訳 :日常世界 の構成 』 と山 口節郎 (2)シュ ッツ (1970)『邦訳 :現象学的社会学』
(3) ギデ ンズ (1976)『邦訳 :社会学 の新 しい方法規 準』 な ど (4)加護 野忠男 (1988)『組織認識論』
(5)中村雄二郎 (1977)『哲学 の現在』 な ど 2. 3. 2 変数 の システ ム と行為 のシステ ム 2. 3. 3 反省 的実践家
2.4 分析 フ レー ム ワー クの提案 2. 4. 1 事例分析 フ レー ム
(1)事業 の定義 (2)営業戦略 (3)業界の常識
2. 4. 2 案件分析 フ レー ム (1)受注概要
(2)受注 の流れ (3)矛盾 の克服
(4)企業 ・組織 間 関係 注釈 (第2章)
第3章 事例研 究
3. 1 事例研 究 の概 要 3. 1. 1 衛 星通信 業界 3. 1. 2 対象企 業
3. 1. 3 事例 の選 定基 準 3.2 事例研 究 (個別分析)
4 3.2.1 、個別分析 (事例 Ⅰ)
(1)受注概要
(a)顧 客企業 の概 要 (b)受注概要
(2)受注の流れ
80111222一一一一2222 HH1l15681一lIIll13333333
(3)矛盾 の克服
(4)企業 ・組織 間関係 (5)業界 の常識 の変化
(a)企業 間関係 (業界モデル) (b)企業 ・組織 間 関係
3. 2. 2 3. 2. 3 3. 2. 4 3. 2. 5 3. 2. 6 3. 2. 7
個別 分析 (事例 Ⅱ) 個別 分析 (事例 Ⅲ) 個別 分析 (事例Ⅳ) 個別 分析 (事例 Ⅴ) 個別 分析 (事例Ⅵ ) 個別分析 (事例Ⅶ) 3. 3 事例研 究 (総合)
3. 3. 1 業界 の常識 の変容 3. 3. 2 企 業 間関係
3. 3. 3 事業 の定義 の再構築 ‑ 3. 3. 4 創発 的戦 略形成 プ ロセ ス 3. 3. 5 現実 の再生産 と再構成 3. 3. 6 事例分析 フ レー ム ワー ク 3. 4 本事例研 究方法 の限界 ‑‑
3. 4. 1 事例研 究 の暗黙 の前提 3. 4. 2 方法論 上 の限界 ・‑・‑
(1)事例研 究 の対象範 囲
(2)分析 デー タ (指標) の客観性 (3)業績 の視 点
3. 5 業界構造 、業界特性 の分析
3‑22 3‑33 3‑46 3‑57 3‑66 3‑77 3‑87 3‑87 3‑89 3‑92 3‑94 3‑96 3‑97 3‑97 3‑97 3‑99
3. 5. 1 業界構 造 3. 5. 2 業界特性
(1)時間特性 (2)技術特性 (3)顧 客特性 注釈 (第 3章)
篇4章 現場ベ ー ス の競争戦略論 の提案 4.1 共通感 覚論 か らのアプ ローチ
(1)解決方法 を共有す る (2)業界 の常識 を形 にす る
3‑108
(3)戦略 の制度化 を図 る 4. 2 作業仮説人 の提案
(1)現場 の実践者 を重視す る視 点 (2)作業仮説
(3)作業仮説 人 の提唱 (4)作業仮説人 の実践
4. 3 弁証法 的矛盾克服 の構 図
(1)弁証法的矛盾克服 の フ レー ムワー ク (2)矛盾克服 の事例
4. 4 事業変革 の構 図
(1)各 ス クール の 目で見 た戦略形成 (2)戦略形成 の鍵概念
(3)事業変革モデル (4)why・Who戦略の提案
4. 5 対象企業‑ の提案 ・‑ ‑ ‑ ・‑
4. 5. 1 衛 星通信業界 固有 の戦略 4. 5. 2 対象企業 (J社)‑ の提案
(1)事業 の再定義 に対す る提案
(2)業界 の各 主体者‑ の働 きか けの提案 (3)日常 の論理 に対す る提案
(4)事業 システ ムに対す る提案 (5)実践者 に対す る提案
注釈 (第4章)
第 5章 ま とめ 5. 1 結語 5. 2 課題
5. 3 今後 の展望 注釈 (第 5章)
あ とがき
参 考文献
6
4‑6
l1346I[lT]55555
6‑1‑6‑2 7‑1‑7‑3
8‑1‑8‑7
図表一覧
序 章 研 究の背景 と目的 図 1計画的お よび創発 的戦略 図2研 究 の 目指す方 向
図 3研 究 の全体像 図4論文 の全体構成
第 1章 戦略論 の系譜 図表 (な し)
第2章 事例研 究 の方法
図 2‑1現実、研 究法 、理論 の関係 図2‑2業界の常識 を ささえる理論 図2‑3行為の準拠枠
図 2‑4競争者 の差別化 の氷 山 図2‑5事例分析 フ レー ム ワー ク 表 2‑1事業の定義 (記述様 式) 図2‑6業界の常識 の定義
図2‑7業界の常識 の階層
図 2‑8案件分析 フ レー ム ワー ク 図2‑95つの競争要因
図2‑10価値相関図 図2‑11業界モデル
第 3章 事例研 究
図3‑1業界の定義 (衛 星通信 ) 表 3‑1衛 星通信業界 の発展 ステー ジ 図 3‑2社史 (1998.4.1‑2004.3.31) 図 313個別案件一覧
表 3‑2事業の定義 <事業 開始 時 >
図 3‑4営業戦略 <事業 開始 時 >
‑ 表 3‑3顧 客分類 <事業 開始 時 >
表 3‑4顧 客 との関係 <事業開始 時 >
図3‑5事例 (F社)全 国雷観 測ネ ッ トワー ク 図 3‑6事例 (F社)受 注概 要
図3‑7事例 図3‑8事例 表 3‑5事例 図3‑9事例 図3‑10事例 表3‑6事例 図3‑11事例 図3‑12事例 図3‑13事例 図3‑14事例 図3‑15事例 図3‑16事例 図3‑17事例 表 3‑7事例 図3‑18事例 図3‑19事例 図3‑20事例
(F社)雷 ・気象情報配信 システ ム (F社)受注までの流れ
(F社)矛盾 とその解決策
(F社)企業間関係 (業界モデル) (F社)企業 ・組織 間関係
(A社)事業概要
(A社)衛星通信利用 の流れ
(A社)衛星通信導入 の狙 い (社 内利用) (A社)衛星通信導入 の狙 い (授業強化)
(A社)衛 星通信導入 の狙 い (IPデー タシステ ム) (A社)受注概 要
(A社)衛 星教 育 システ ム (A社)受注までの流れ (A社)矛盾 とその解決策
(A社)企業間関係 (業界モデル) (A社)企業 ・組織 間関係
(D社)受注概 要
図3‑21事例 (D社) コンテ ンツ配信 システ ム 図3‑22事例
表 3‑8事例 図3‑23事例 図3‑24事例 図3‑25事例 図3‑26事例 図 3‑27事例 表 3‑9事例 図 3‑28事例 図3‑29事例 図3‑30事例 図3‑31事例 図3‑32事例 図3‑33事例 表3‑10事例 表 3‑11事例 図3‑34事例 図3‑35事例
(D社)受注までの流れ (D社)矛盾 とその解決策
(D社)企業間関係 (業界モデル) (D社)企業 ・組織 間関係
(Na社)受注概要
(Na社 )voD配信 システ ム
(Na社)受注までの流れ
(Na社)矛盾 とその解決策
(Na社)企業 間関係 (業界モデル)
(Na社)企業 ・組織 間関係
(Na社)業界 の常識 の変化 (S社)受注概 要
(S社)衛星テ レビ会議 システ ム (S社)受注までの流れ
(S社 )矛盾 とその解決 策
(S社)ネ ッ トワー クの選定経緯 (S社)企業間関係 (業界モデル) (S社)企業 ・組織 間関係
図3‑36事例 図3‑37事例 図3‑38事例 図3‑39事例 表3‑12事例 表3‑13事例 図3‑40事例 図3‑41事例 図3‑42事例
(Nb社)受注概要
(Nb社)遠 隔教 育 システ ム (移行 当初) (Nb社)遠 隔教育 システ ム (将来) (Nb社)受注 までの流れ
(Nb社)矛盾 とそ の解決策 (Nb社)顧 客の要求‑ の対応策 (Nb社)企業 間関係 (業界モデル) (Nb社)企業 ・組織 間関係
(C社)受注概要
図3‑43事例 (C社) コンテ ンツ配信 システ ム 図3‑44事例
表3‑14事例 表 3‑15事例 図3‑45事例 図3‑46事例 図3‑47事例
(C社)受注 までの流れ (C社)矛 盾 とその解決策 (C社)顧 客の要求‑ の対応策 (C社)企業 間関係 (業界モデル)
(C社)企業 ・組織 間関係 <本格利用 に向 けた体制 (当初)>
(C社)企業 ・組織 間関係 <本格利用 に向けた体制 (最終)>
表 3‑16業界 の常識 の変容
図3‑48送達確認 回線 の例 (事例 Ⅰ③) 表3‑17業界 の常識 の分類
表 3‑18企 業 間関係 (案件全体) 表3‑19企業 間関係 (事例別一覧) 表 3‑20顧 客 との関係
表 3‑21事業 の定義 の再構 築 (事業 開始 3年後) 図 3‑55衛 星受信ルー タ開発 の コンセ プ ト 図 3‑56付加 価値 の伝播
第4章 現場ベ ースの競争戦 略論 の提案 図4‑1共通感 覚論 か らのアプ ローチ 図4‑2共通感 覚 は組織 のOS
表 4‑1作業仮説 人モデル
図4‑3弁証法 的矛盾克服 の フ▲レ‑ ム ワー ク 図4‑4矛盾 克服 の事例 (事例Ⅱ矛盾①) +図4‑5XSR2000開発秘話
図4‑6経 営戦 略 をめ ぐる対概念 表 4‑2戦 略形成 の鍵概念
図 4‑7事業変 革モデル (BトQM)
9
図4‑8事業変革モデル (BトCQM)
図4‑9業界変革モデル (ⅠトMLM)
表4‑3Why・Who戦略
資料
参考資料 1衛 星受信装置 (XsR2000)
参考資料 2TCP/IP高速化装 置 (BSR2000)
参考資料 3衛 星 IP‑VPNマル チキャス トサー ビス
参考資料4MegaWavePro‑Ⅴ&IPサー ビス (Ⅴ&IPエ ンコー ダ) 参考資料 5MegaWavePro‑Mobileサー ビス
10
新規事業会社における競争戦略形成プロセスの研究 現場ベースの競争戦略論の提案
序章 研究の背景 と目的
(1)研究の背景
新規事業会社 において事業 を成功 に導 くの は容易ではない。 た とえ事業が短 期的に成功 した として も長期間にわたって存続す ることは さらに難 しい。事業 が成功す るか ど うか あるいは長期 にわたって存続す るか どうかを常に特定の理 由に帰す るこ とは困難 であると考 え られ るが、一方 において事業開始 当初 に策 定 された戦略、お よび事業開始後 において見直 された戦略如何 によって、企業 の命運が決定 され る場合 も多い と考 え られ る。
経営 とは、 「継続 的 ・計画的に事業 をす る こ と、そのための組織」 (広辞苑) とすれば、 ウェーバー も 「一定の継続 的 ・計画的に事業 を遂行す るこ と、また そのための組織 である」 と定義 してお りこの よ うな定義は古 くか らあるものの、
経営学 としての歴史 は他 の学問に比較 して新 しい。(*1)
経営学の歴 史 に経営戦略論が本格 的に登場す るのは、チャン ドラーであ り、
アンソフで、いずれ も1960年代である。例 えばチャン ドラー (1962)は、戦略 を 「企業の基本 的長期 目標 ・目的を決定 し、 さらにこれ らを遂行す るのに必要 な行動様式 を採択 し諸資源 を割 り当て るこ とで ある」と定義 してい る。 また、
ア ン ドリュース (1971)は、 「戦略を企業の 目標 、意図並びにそのための主要な ポ リシー のパ ター ンで あ る」と定義 し、戦 略 の策 定 (formulation)と実行 (implementation)について戦略論 を展 開 した。 その後、多 くの戦略論 が誕生 し現在では経営学 の 中心 とい うべ き分野 となってい るが、一方 において どれが 正 しい戦略の定義 なのか、 どのよ うな戦略が有効であるかを断定す ることは困 難 である。
戦略論 の分類 につ いては、た とえば ミンツバー グ ら (1998)は戦略サ ファ リ (STRATEGYSAFARI)と名づ け、戦略形成 の観 点か ら戦略論の学派 を 10のスク ールに分類 してい る。(*2)しか し、経営の現場 においてはこれ らのス クール の
どれかのや り方 をただ追随す るだけでは済ま されない。
戦略は実現 され なけれ ば価値がない し、また業績 をもた らす ことができなけ れ ば無用の産物 と言 われ かねない。企業 の戦 略は、単純明快、心地 よいキャ ッ チ フ レーズや美 しい絵 で表現 され るこ とが あ るが、一方 において戦略実践 の現 場 においては、複雑怪 奇 とも思 える課題や難 問が待 ち構 えてお り、丹念 にこれ
らを解決 していかなけれ ば戦略を実現す るこ とは難 しい。
一方、近年 、新規事業や環境変化 の激 しい業界 な どを対象 として、戦略のダ イナ ミズムを とらえ る戦略論 の研究 に注 目が集 まってきてい る。 た‑とえば、野 田 (2001)や河合 (2004)らによるス タテ ィ ック理論 か らダイナ ミック理論 の 流れ、青島 ・加藤 (2003)らによる個別 アプ ローチか ら複 眼的テプ ロ‑チの流
0‑ 1
新規事業会社 における競争戦略形成プロセスの研究 現場ベースの競争戦略論の提案
れ、沼上 (2000)の 『行為 の経営学』や ミンツバー グ ら (1985)の戦略形成プ ロセス (strategyformationprocess) (*3)に着 目す る流れがある。
宇 田川 (*4)は1「戦略の実現過程 とは、組織 内にある集団 ・個人によって様々 な手がか りをもとにつ くり出 された認知の準拠枠が、組織 内の コミュニケーシ ョン過程 を通 じて組織 内の正 当性 を獲得 し、間主観 的な準拠枠つ と存在論的変 移 を遂げるプ ロセスである」と指摘 している。戦略形成 のプ ロセスをあき らか にす るためには、既存 の戦略論 を理論的に比較、分類す ることによって新たな 戦略論 を見出すのではな く、伊丹 (2003)の 「現実が理論をつ くる」 (*5)との 見地にたって、現場 の実践者たちが 日常の行為 の中で うみだ し活用 してい ると 思われ る現場理論 を現場で発生す る矛盾や課題 を解決 している行為 を追 うこと によって見出す ことが求め られている。
(2)研究の 目的
企業の存続 お よび競争優位 を獲得す るには、何 よ りも顧客の活動 を支援す る 魅力ある製 品 ・サー ビスを他社 に先駆 けて提供す ることが必須条件 と考 え られ る。 現 実 にお け る戦 略 は、 図 1に示 され る よ うに計 画 的戦 略 (deliberate strategy)と創発的戦略 (emergentstrategy)のふたっを併せ持つ もの ととら えられ る。
図1計画 的お よび創発 的戦略
? ,I //
A ‑三 二 : I
/ ' ' I j
寧 巳 翫
創 発 的 戦 略
iii iiZ
出所 :ミンツバー グ他 (1998) (邦訳 『戦略サファ リ』東洋経済新報社、1999)P13図卜2
新規事業 においては、事業開'始 の際に意図 された戦略に基づ き、計画的な戦 略が策定 され 、そ して実践 され る。 しか し、事業開始 時には予期 され ない事象 によって計画的な戦略の一部 は実現 されず、その一方 で最初か ら明確 に意 図 さ
0‑ 2
新規事業会社 における競争戦略形成プ ロセスの研究 現場ベースの競争戦略論の提案
れた ものではないが、行動 のひ とつひ とつが集積 され、そのつ ど学習す る過程 で戦略の一貫性やパ ター ンが形成 され る場合 がある。本論文では、創発的戦略 を、企業家 によって意 図 された戦略 (intendedstrategy)に則 って思慮深 く計 画 された (deliberate)"計画的戦略"に対す るもの として 「意 図せ ざる戦略 (unintendedstrategy)」ととらえる。 この意図せ ざる戦略である創発.的戦略 は、「組織の中にい る複数 の行為者 に依存 し、この戦略に基づ く戦略適応のプロ セスを説明す るには行為 に基づ く分析枠組みが必要である」と玉井 (1996)は 指摘 してい る。 この よ うな現実の戦略形成プ ロセ スを把握す るための事例分析
フ レームワー クを提案す ることが本研究の第‑の 目的である。
次に、事例研究 として法人 向けの営業現場 を とりあげ、事業の定義が案件 の 受注 あるいは失注 とい う営業活動 を経験す ることによってダイナ ミックに変化 してい く模様 をこの フ レー ム ワー クを用いて事例 分析 を行 う。 ミンツバー グ (1987)は戦略の源 泉 に主観 的意図に基づ く行為 の存在お よび コンテ クス トを 明 らかに しているが、 しか しそのよ うな競争優位 をもた らす よ うな行為 と結び つ く主観的意図が どの よ うに して生まれたかについては明 らかでない。現場 に おいて戦略 を実現す る元 となる戦術 をどのよ うに実現 しているかを明 らかにす るには行為者そのものに踏み込む必要がある。(*6)本研究の第二の 目的は、業 界 の常識 に焦点をあて なが ら実践者側の視点 を とりこみ、営業担 当者や技術担 当者 たちの行為 を追 うことで戦略形成プロセ スを明 らかに してい くことにある。
(3)研究の 目指す方 向
本研究においては、図 2に示す よ うに競争戦略論 と研究方法論のふたっの分 野 を同時に追究 しよ うとしている。
なぜ な ら、 どうした ら持続 的な競争優位 を構築できるのだ ろ うか とい う立場か ら戦略形成 プ ロセスを見 ることと、 どのよ うに した らその実態の リア リテ ィあ ふれ る把握 ができるのだ ろ うか とい うことは、実 は相互 に密接 に関係す る と考 え られるか らである。
ひ とつは競争戦略論 の立場 か ら、現場 においていかに して戦略が形成 されて い くのかそのプロセ スについて探求す るものであ り、実践者 として企莱‑の貢 献 をね らうものである。 内容 としては、戦略論 にお けるダイナ ミック理論 、複 眼的アプローチや戦略形成 プ ロセスに関す る研究 に学びつつ、事例研究 をふま えて現場ベースの競争戦略論 の構築 をね らってい る。
も うひ とつは研 究方法論 の立場か ら、戦略の形成 に関わる戦略論 の探求 に加 え、現場 にお ける戦略形成 プ ロセスを見えざるものか ら、いかに して見えるよ
うにす るかの方法 につ いて研 究 を行 な う。本研究では主 として社会学の知見 を 活用 し、実践者たちの行為 に着 目す る分析 フ レー ムワー クを提案す る。〉
0‑ 3
新規事業会社 における競争戦略形成プロセスの研 究 現場ベースの競争戦略論の提案
図2研究 の 目指す方 向
競争戦略論
研究方法論
宮 rスタティック理論→ダイナ ミック理論 (野 田 ・河合畑 TQヤ)>
i 1
4 ・個別ア7.ローチ‑複 眼的アプ ローチ (青 島 ・加藤)
ヽ 一
q h = r ‑ : I b 磨讐誓 竺警 警 三 欝
謬≡;享三軍 :芋 二‑I‑;‑i‑I‑…=‑‑
‑ ‑ I ‑ ‑
‑.‑ ̲ ̲〆 謹 潜 慌 箭 二 )
・行為 (ウェーバー)
・意味 (ホ ワイ ト・シュッツ) ,1
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→統合 (バーガー‑ルックマン ・ギデンズ) '
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(C)2006,/J、林満男
研究の全体像 を図 3に示す。 コンセプ トとしての競争戦略論 と研究方法論 を 結ぶ もの として本研 究 では、実践者 たちの行為 に着 目してい る。 また、現実 の 戦略形成 が どのよ うに実践 され てい るのか、そ してそれ を とらえるための分析 フ レームワー クを結ぶ もの として事例研究 を行 な う。・なお事例研究 においては、
「業界の常識」に焦点をあててみてい く。
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新規事業会社 にお ける競争戦略形成プ ロセ スの研 究 現場ベースの競争戦略論の提案
本研究 では現場の実践者た ちに焦点 をあててい る。 そのた め、論文の記述 に あたっては、実践者 た ちの行為や検討状況 を確実に捉 えるために、文章表記で とどめることな く彼 らが現場 で 日常利用 している図表 を積極 的 に取 りあげてい る。分析 フ レームワー ク (図表) は、本研究の結果が示す よ うにそのまま再利 用す るのではな く、利 用の都 度 、実践者たちが随時見直 し修正 を加 えなが ら作 業仮説 を発見 し、モデル化 の可能性 を探 る際の対話 を促進す るツール として、
現場で活用す ることを想定 している。
(4)論文の構成
本論文 は、図 4に示 され るよ うに 5つの章か ら構成 され る。
図4論文 の全体構成
現 場 で の 業 務 の 実 践
(c)2006,小 林浦 男
第 1章では、戦略論 の系譜 をた ど り、特 に本研究が必要 とされ る理 由、競争 戦略論 にお ける位置づ けを明 らかにす る。
第 2章では、最初 に戦略形成 プ ロセスをみ るための基礎理論 を整理す る。次 に、事例研 究の方法論 について、研 究のスタンスを整理 した後 、本論文で提案 す る 「事例分析 フ レー ムワー ク」お よび 「案件分析 フ レー ム ワー ク」を構成す る鍵概念 、用語 について整理 を行 う。 そ して、それぞれ の フ レームワー クが依 拠す る戦 略論お よび組織論 に言及 しなが ら、 フ レーム ワー クを使 う目的、利用
・方法 について説 明を行 う。 i
第 3章では、第 2章で整理 したフ レーム ワー クを用いて、衛星通信サー ビス の新規事業会社 にお け る法人営業 に焦点をあてて事例分析 を行 う。事例分析か ら得 られ た結果 を整理 した後 、その分析 を補完す る観 点か ら、特 に事業構造、
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新規事業会社における競争戦略形成プロセスの研究 現場ベースの競争戦略論の提案
業界特性 について分析 ・検討 を行な う。
第 4章では、現場で使 える競争戦略論 を提案す る。具体的には、競争戦略論 の系譜、お よび事例研 究の結果 をふまえ、事例対象企業のケースにおいては、
持続的競争戦略優位 を もた らす源泉 として創発 プ ロセスが重要であることを指 摘する。そ して現場 の実践者たちがお りなす多様 でアグレッシブな活動が企業 の戦略形成 に大 きな影響 を与える場合がある との観点か ら、 これ らの実践者た ちを作業仮説人 として とらえることを提案す る。 さらに、受注活動 のプロセス (受注の流れ) の 中で発生す る矛盾 を克服 してい く (状況 をみ る)ための 「弁 証法的矛盾克服 の フ レー ムワー ク」を提案す る。 また、事業変革の模様 を傭撤 す る 「業界変革モデル」をあわせて提示す る。 さらに、事例研究 と競争戦略論 の研究か ら得 られ た示唆 をもとに、事例研究 の対象企業にお ける持続 的競争優 位構築に向けて提案 を行 う。
第 5章では、本研究 で得 られた結論 と提案 を整理 し、残 された課題 と今後の 展望について述べ る。
あとがきでは、現場ベースの戦略理論 を里 山にた とえて、 自社 に とっての戦 略の形成、戦略 の実践 において、 日常の事業活動 を とお して 自分たちの戦略理 論 を育ててい くこ と、その戦略を不断に再構築 してい くプロセ スその ものが企 業 の生 き残 りに とって致命的に重要であるとの見解 を述べて本論文 のま とめと
している。
(5)本論文の主張
本論文のオ リジナ リテ ィは、第 2章で提案 され る事例分析 フ レームワー クと 案件分析 フ レーム ワー クを中心 とす る一連 の分析 ツール と、第 4章で提示 され
る現場の実践者 た ちを作業仮説人モデル として とらえる提案、現場 で発生す る 矛盾の克服や 問題 の解決 を図るための弁証法的矛盾克服 のフ レーム ワー クの提 案 、戦略形成 の鍵概念 と実践者志向の事業変革モデル ・業界変革モデルの提案 お よび創発的な戦略形成 を期待、活用す る Why・Who戦略の提案である。
本論文の結論 は第 5章で述べ られ るが、結論 を先取 りして言 えば、戦略形成 プ ロセスの事例研 究の結果、以下の3点が考察 された。
①事業の定義 は業界の常識 と密接に関係す る
②事業開始時の初期体験の微妙な差が戦略形成 に大きな影響 を与 える
③意図的戦略 と創発 的戦略の 目利 きや乗 りか えが競争優位 につなが る
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新規事業会社 における競争戦略形成プロセスの研 究 現場ベースの競争戦略論の提案
注釈 (序章)
*1:権泰吉 (2004)「最終講義 :経営学の学問的性格 と課題」『権泰吉教授退任 記念論文集』文鼻堂、p202
*2:Mintzbergetal (1998)は、戦略の形成 についての考 え方 を 10のスクー ル (デザイ ン ・スクール/プラニング ・スクール/ポジシ ョニング ・スクール/ア ン トレプ レナー ・スクール/コグニテ イブ ・スクール/ラー三ング ・スクール/パ ワー ・スクール/カルチャー ・スクール/エ ンバイtjメン ト・スクール/コンフィ ギュレーシ ョン ・スクール)に分類 して提示 している。最初 の 3つ のスクール は戦略形成 のプ ロセ スよりも、実際の戦略の内容 を重視 し、市場 にお ける戦略 ポジシ ョンの選択 に焦点をあててい る。 ア ン トレプ レナーか らェ ンバイ ロメン トまでの 6スクール は、戦略形成プ ロセスのある特有な側面にフォーカス し、
理想的な戦略的行動 の規範 を示す とい うよ りも、む しろその特有 な視 点か ら、
実際 どの よ うに戦略が形成 されてい くのかを記述的に示 してい る。 コンフィギ ュ レーシ ョン ・スクールは、9つのすべてのスクール を包括 ・統合す る中で、戦 略策定プ ロセ ス、戦略の内容その もの、組織構造 とその状況 な ど戦 略の さまざ まな要素 を、起業家的成長や安定 した成熟期 などのステー ジや状態 に明確 に区 分 してい る。 このスクールのも う 1つの側面 として、戦略形成プ ロセ スを トラ ンスフォーメー シ ョンのプロセス とみな し、その中に、「戦略的変革」について 多 くの規範的文献や実践を組み入れている。
*3:戦略 については一般に策定 (formulation)とい うことばが使 われ るが、本 研究で注 目す る創発戦略では意識 的で慎重 な考察の結果 として生まれ るもので はないので、形成 (formation)と して とらえる。後述す るよ うに、戦略形成 (strategyformation)には、再生産 (reproduction)と再構成 (restructuring) のふたっの側面がある。
*4:宇 田川 (2004)は、戦略の実現 を組織 内にある集 団 ・個人 によって創 り出さ れた認知 の準拠枠 が、組織 内のコ ミュニケー シ ョン過程 を通 じて組織 内の正当 性 を獲得 し、間主観 的な準拠枠‑ と存在論 的変移 を遂げるプ ロセ ス として とら えてい る。本論 のスタンスは、基本的にこの定義にそってい るが、正 当性の獲 得 としては コ ミュニケーシ ョンに加 え、パ ワーの介入、道徳性 も含 めて とらえ ている。
*5:伊丹 は、「現実が理論を作 る」には2つの意味 (①現場の観察が理論 を作 る、
②現実の経験が理論 の暗黙の前提 を作 る)があると説明 してい る。 .
*6:玉井 (1996)は、 「行為者 のゴンテ クス トは、主観的な意図 と結びついた行 為 を具体化 し普及 してい くための必要条件 であって行為 を支 える主観 的な意図 の形成 を促進す るものではない。行為者 に裁量可能な位置 を確保 し、パ ラ ドッ
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新規事業会社 にお ける競争戦略形成 プ ロセスの研究 現場べ†スの競争戦略論 の提案
クス的な状況に位置づけれ ば、適応的な行為が生 じるとい う保証はない。それ は 自由な行為者 を仮定 した とき しか成立 しないのである。 (塩次、1994)」従 っ て、行為者そのものに踏み込んだ議論が必要 となる、 と指摘 している。
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新規事業会社 における競争戦略形成プロセスの研究 現場ベースの競争戦略論 の提案
第 1章 戦略論の系譜
は じめに、小林喜一郎、バーニー、大前研一 らによる戦略の定義の整理 を行 い、本研究にお ける戦略の定義づけを試み る。次に ミンツバー グ ら (1998)の 分類による各スクール の戦略論について、戦略の定義、戦略の視点を備略 して い く。
次に、近年精力的に提案 されてきてい る戦略のダイナ ミズムを とらえよ うと す る競争戦略論、た とえば、野 田 (2001)や河合 (2004)らによるスタティッ ク理論か らダイナ ミック理論‑の流れ、青 島 ・加藤 (2003)らによる個別アプ ローチか ら複 眼的アプ ローチ‑の流れ、お よび沼上 (2000)の 『行為の経営学』
や ミンツバー グ ら (1985)の戦略の形成過程 に着 目した研究をと りあげ、批判 的に検討 してい く。
最後 に、 これ らの先行研究 をふまえ、戦略論 自体に対す る批判 、現行 の競争 戦略論の課題 について言及 し、本研究の位置づ けを明 らかにす る。
1. 1 戦略論 の流れ
経営学の歴史は他 の学問に比較 して新 しいが、経営戦略は、経営学の中では 中心的なテーマ となってい る。経営戦略が全社的な戦略 としてまた企業の長期 的存続 の観点か らとられ るのに対 して、競争戦略 (competitivestrategy)は、
個々の事業分野の競争 にかかわる戦略であ り、事業戦略 (businessstrategy) ともいわれ ている。本研究 は、新規事業会社 における競争戦略について、その 戦略形成 プ ロセスを研 究対象 としているが、競争戦略そのものに焦点があて ら れ たのは比較 的歴史が浅いため、競争戦略 に絞 った定義づ けの研究は多 くはな い。一方 において、戦 略 としては経営戦略 と競争戦略には共通す る視点が多い
と考え られ る。
そ こで、1.1では、主 として経営戦略について先達の定義を整理 し、本研究 に お ける戦略の定義づ けを行 なった後 、主要 な戦略論 についてサーベイを行 う。
1. 1. 1 戦略の定義
戦略 (strategy)とい う概念はも ともと軍事 の世界か ら生まれた もので、そ の歴史は古い。広辞苑 (改定二版) によれ ば、「い くさのはか りごと。各種の戦▲ , 闘 を総合 し、戦争 を全 面的に運用す る方法。転 じて、政治社会運動 な どにおい て、主要な敵 とそれ に対応すべき味方 との配置 を定めることをい う。」としてい る。すなわち、い くさに勝つための策略であ りその方法 を示 してい る。
戦略 とい う概念 は軍事用語か ら派生 して きた ものであるが、経営にお ける戦 略 の定義については さま ざまな考 えが存在 し、いまだに確 固 とした定義がな く
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