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直流汚損碍子の表面熱挙動
田 畑 季 章
Heat Performance on t h e S u r f a c e o f DC Power P o l l u t e d I n s u l a t o r
Toshiaki TAHATA (1994年8月18日受理)
Flashover breakdown of wet polluted insulator is one of the important problems of DC power transmission system. Before自ashover,heat generate on the surface of polluted insula‑ tor. In this study, this heat performance was observed. As the results, the changing patterns of hot spots on the nonuniform pollution were found.
1 .まえカ<~
直流送電は交流送電に比べ,長距離の架空大電力 伝送やケーブルによる電力伝送などにおいてたいへ ん有利であり,基幹系統として大いに期待されてい る。また異種周波数交流系統を結びつける電力融通 流通手段としても極めて有力である。
この直流送電系統が抱える問題のひとつに,碍子 汚損の問題がある。すなわち,塩塵によって汚損を 受けた高電圧課電碍子は,周囲の湿潤条件によって 表面の電位分布が不平等になり,これが引き金とな って表面局部絶縁破壊を生じる。これが進展すると 完全フラッシオーバとなって送電事故を招く結果と なる。
本報告は,この汚損碍子表面局部絶縁破壊状態に いたる過程において,前駆現象として現われる汚損 面上の熱点の発生と挙動に関し,モデル碍子を用い てその不平等汚損との関連性を実験的に検討をして いるものの一部である。
2 .実験方法
図1に実験回路を示す。供試汚損に印加する直 流 高電圧は, 200V三相交流を昇圧したのち,高電圧ダ イオードによる全披整流によって得,これを16μF の高電圧電力用コンデンサによって平滑したもので ある。用いる三相変圧器の容量は30KVAである。供 試碍子としては,市販の245mmX95 m m (厚さ25
mm) の陶器製の平板を用い,この表面に T、~aCl 100 g/l,カオリン40g/lの混合溶液を汚損液としてス
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図1 実験回路
プレーし,碍子の傾斜による自然流下と乾燥によっ て汚損皮膜をつくる。これを乾燥布の拭き取りによ って指 定の大きさの矩形状汚損帯に構成し,この両 端 に 表 面 に 密 着 さ せ た 鋼 板 電 極 を 置 し こ の 汚 損 碍 子全体を霧室内にセットし,電圧印加後,霧室内に 水蒸気による湿潤状態をつくりだして汚損帯を吸湿 させる。霧室内の相対湿度は85‑90%の範囲として いる。
電圧印加中の汚損碍子表面の微小部分の温度変化 を測定するのに,非接触で物体の放射エネルギーを 検出する方法をとる。これに用いた温度計は焦電素 子を用いた放射温度計(ミノルタTR‑0506C)で, 距離170mmの位置から直径2m mの微小面積の温 度を応答時間1秒で測定し,記録することができる。
なおこの測定系は,途中の水蒸気に影響されること がない。
実測においては,これを図2に示すような直動シ
直流汚損碍子の表面熱挙動
を10mmとし,印加電圧を負極性3kvとして行な った。
3. 2 平等汚損
図3に全面平等汚損面における最も多い温度変動
ノfターンを示す。はじめ表面温度はほぼ一定である が,やがて中央部付近に熱点の発生がみられ,これ が成長してくる。熱点は次第に温度を上げながら位 置を負極側に移動させていき,乾燥帯が中央部から 負極側に伸びていく。
ステムに積載して行なった。すなわち直動システム は,ボールネジとナット台を組み合わせ,駆動源と してステッ ピングモータを接続し,パルスジェネレ ークから連続パルスを与えて測定条件に合致した速 度制御を行ない,汚損帯に沿って一定速度で移動さ せる。この装置を2系統設置し,正負の電極聞を互 いに移動する方向を逆にして反転動作をさせて,
時々刻々変化する汚損表面の温度をリアルタイムで とらえて,これを記録計器に出力した。
また,印加電圧及び漏れ電流については高速変化 に対してはディジタルメモリで,低速変化に対して はペンレコーダで対応した。
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全面平等汚損
図3
3. 3 非汚損帯による不平等汚損
不平等汚損のパターンとして,汚損帯中に非汚損 の部分を設けた。図4は中央部に 2m m幅の非汚損 帯を設けた場合である。電圧印加後時間をおかずし て非汚損帯負極側に熱点が発生し,成長しながら乾 燥部分を広げて負極方向に移動している。この非汚 損帯の幅を狭めても熱点は同様に発生するが,負極 側に近づけて設置すると,熱点の移動はみられなく
なってくる。このような非汚損帯が複数存在した場 合は熱点は多様な挙動をとる。代表例とし図5に非 汚損帯が中央部と電極近傍の2ケ所にある場合を示 す。電極側が正負どちらであっても,電圧印加直後 に2ケ所の非汚損帯負極側に熱点の発生をみる。し かし,はじめに成長するのはどちらも電極側熱点で あって中央部の熱点はいったん消滅した形となる。
ある時間経過後これが突然逆転し,中央部非汚損帯 に熱点が再発生して以後これが急成長し,電極付近 温度計測装置
3. 1 碍子表面挙動
直流高電圧が印加されている碍子表面の汚損帯が 吸湿を開始すると,その絶縁抵抗が低下し漏れ電流 が流れ出す。この電流ははじめはごく微小なもので あるが条件によって成長し,汚損帯が一様な状態か ら不平等な状態に変わっていくのに伴い,パルス性 の電流が重畳するようになる。この際,不平等汚損 をもたらす高抵抗部分は,なんらかの必然性によっ て生ずる。汚損碍子がフラッシオーバ事故に至るか 至らないかはこの聞の事情によることになる。漏れ 電流が高抵抗部分において発生するジュール熱は,
ある範囲に高温の部分を作り出す。そしてこの部分 一熱点はフラッシオーパまでの過程において様々な 挙動をとる。
実験は汚損帯の長さ(電極問距離)を150m m,幅 平成6年11月
図2 3.実験内容
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1 m mの2本が存在した場合で,このときははっき りとした3ケ所の熱点は確認できず,それらしき 2 ケ所の発生がみられる。非汚損帯の相対位置によっ て途中経過に違いはあるが,最終的にはいずれの場 合も幅広の非汚損帯負極側端に発生した熱点が主に 成長する形となる。ただし,熱点の負極側への移動 は中央部のものにはみられるが電極付近のものには みられない。この幅広の非汚損帯を20mm幅と 2倍 にしたところ,今度は熱点の発生そのものが不明瞭 なものとなった。これを図7に示す。すなわち,熱 点がまった〈発生しないか,または発生しても時間 経過とともに消滅していく形となり,幅広の非汚損 帯は周囲よりもむしろ低温の状態になっていくこと カfわかった。
非汚損帯 2m m中央部 図4
0...20分
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3. 4 カオリン層の影響
次に汚損物質の非i容解性固形分として用いられて いるカオリンを,空気中の塵挨を模擬した形で汚損 帯上に単独の層として高さを 1m mと規定して設 置し,これの熱点の挙動への影響を観測した。図8 に幅1m mのカオリン層を中央部に単独で設けた 場合について示す。電圧印加後まもなくカオリン層 に熱点が発生し,これがそのまま成長する形となり,
熱点の移動はみられない。設置場所が電極付近であ っても同様な傾向を示し,乾燥帯はカオ"1)ン層の両 側に形成される。カオリン層が複数存在した場 合は,
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図5 非汚損帯1m m 中央部と負極側 距 離 (cm)
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の熱点はまったくのみこまれた形となって消滅す る。さらにーっとなった熱点は少しづっ負極側に移 動して行〈。図6は非汚損帯の幅が10mmの1本と
0‑19分
直流汚損得子の表面熱挙動
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図7 非汚損得
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距 離 (c m )
はじめ各層に熱点が発生するが,まもなくいずれか 一つの層の熱点が抜きん出て成長し,他は消滅する。
この場合も熱点の移動はみられない。実験では幅広 のカオリン層で負極側に位置するカオ 1)ン層の熱点 が優先して成長する傾向がみられた。しかし,カオ リン層と非汚損帯の混合設置の場合は複雑である。
図9にカオリン層2本と非汚損帯1本で,幅がすべ て1m mの場合のものを示す。電圧印加直後から3 ケ所に熱点が順不同で現われる。しかし最終的には,
非汚損帯の熱点が抜きん出て大きく成長し,他は消 滅する。非汚損帯の熱点は負極側へ移動していき,
乾燥帯が負極側に形成される。このような形は互い の位置関係にかかわらず同様な傾向を示すが,非汚 損帯の幅を広げると様相が変わり,図10に示すよう
1 5 距 離 (cm )
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図10 カオリン層3mm 非汚損格10m m
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カオリン層1m m中央部 回目
に非汚損帯部分の熱点は成長できず,カオリン層の 熱点だけが成長し,熱点移動を伴わない。またカオ りン層幅3m m,非汚損帯幅1m mの組み合わせの 場合は,熱点の成長はその位置関係で左右され,正 極側にある方が成長するというデータを得た。
平成6年11月
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田 畑 季 宣 言
4.ま と め
以上の実験結果を整理してみると次のようにな る。
不平等汚損を模擬して設置した非汚損帯に関して みると,電圧印加により漏れ電流が発生した後,熱 点は非汚損帯の負極側端に発生し成長し,負極側に 移動して行く。複数の非汚損帯においては,最終的 にはいずれか一つの非汚損帯を選択して熱点が成長 するが,幅の広きや,電極に対する相対的位置関係 によって影響される。ある幅の広さまでは位置に関 係せず広い方が成長するが,広過ぎれば熱点の発生
そのものがみられなくなる。
また空気中の塵壊を模擬したカオリン層の影響に ついては,熱点の発生そのものについては非汚損帯 に相似するが,熱点は移動しない。また,非汚損帯 の方が熱点の成長が優先するが,互いの位置関係や 幅によっては優先が逆になることもある。
汚損碍子の直流フラッシオーバ現象の前駆となる 不平等汚損の熱点の発生挙動に関し,変動状況を明
確に捕らえるように実験的に検討してみた。今後直 接フラッシオーパへのトリガとなる段階までの変動 を捕らえて行く予定である。ただし,印加電圧を上 昇させた場合の測定系への妨害の排除を解決する必 要がある。
終わりに実験データの収集に協力を賜わった秋田 高専卒業生鈴木忠信君(現東北電力),向川純平君(現 目立エレクトリックシステムズ)をはじめ,実験系 の構築に協力を頂いた卒業生諸君に感謝申し上げ る。
参考文献
1) Johan 0 Loberg & Edward C Salthouse Dry‑Band Growth on Polluted Insulation"
IEEE TRANSACTION ON ELECTRICAL INSULATION Vol. EI‑6 1971.
2) B.F. Hampton Flashover Mechanism of PolIuted Insulation" Power Vol. 111 1964.