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お ける業績評価指標

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論文 ニバランス ト・スコアカ - ドにお ける業績評価指 雫

バ ラ ンス ト・ ス コアカー ドに

1 は じめ に

9 8

お ける業績評価指標

中 井 和 敏

1 は じめに

2 バ ランス ト・スコアカー ドの基本的構造

経 済 の グローバ リゼ ー シ ョンが進 行 す るなか,企 業 や社 会 を取 り巻 く環境 変化 には著 しい ものが あ る.環境 変化 の潮 流 は国際 的規模 で起 きてお り,わ が国企 業 もそ の渦 中 にあ る こ とは誰 しも認 め る ところで あ る.特 に,会計 ビ ッグバ ンとい われ る よ うに, 国際 会計 基準 の導入 に よる財 務諸表 の作成基準 に関す る,連 結 決算 ,時 価 会計 , キ ャ ッシュ ・フ ロー重視 とい った会計諸制 度 の変更 は,企 業業績 につ い て, 当該企 業 の業績測 定 をどの ように行 うのか とい った レベ ルの 問題 だ けで な く,企 業価 値 その ものの評価 をどの よ うに行 3 バ ランス ト・スコアカー ドにおける因果連鎖

うの か とい った こ とに まで影響 を与 えてい る,換 言 す れ ば,企業 の業績測定 4 バ ランス ト・スコアカー ドにおける多様な業績評価指標

5 6 7 8

伝統的財務会計モデルにおける業績評価の問題点 バ ランス ト・スコアカー ドにおける管理会計の役割 業績評価指標 をめ ぐる今後の課題

おわ りに

日本経 済 の長期低 迷 が続 くなか, 国際 会計 基準 の導 入 に よる会計 制度 の変更 は,企 業 業績 の測定 や企 業評価 とい った問題 に対 し,様 々 な影響 を与 えてい る・近年注 目 され てい るバ ラ ンス ト ス コア カー ドは, 当軌 業績 測定 シス テ ム と見倣 され てい たが,企 業 変革 を含 め た総 合的 な戦略 軽 骨 シス テ ム と して機 能 させ る こ とが で きる. また,バ ラ ンス ト ス コ ア カー ドにお け る業績 評価指標 には,財 務的指標 と非財務 的指標 が あ る.

特 に, 中心 となる財 務 的指標 には, いわ ゆ る伝 統 的財 務 会計 モ デ ル を基 礎 に した指標 が多 い. この よ うな業績 評価 指標 と企 業価値評価 に利用 さ

と企 業価 値評 価 の問題 が, い わ ば ワ ンセ ッ トに な って諸議 論 が な されてい る のであ る.特 に,近 年 の企 業活 動 の業績測 定 に関す る議論 には,単 に事業 活 動 の成果 だけ をみ るの で は な く,企 業価値 その もの の評価 とい った領域 に ま で広 く捉 え られ る こ とが多 くな ってい る. しか しなが ら, そ うい った場 合で

ち,測定基準 と して使用 され る尺 度 は概 ね会計 数値 であ る こ とが多い.

、企 業業績 の さ らな る向上 を 目指 す ため に,業務 改 善 の具体 的 内容 を実務 レ ベ ル まで ブ レー ク ダウ ン してい くと,企 業内 で行 わ れ る さま ざまな業務活動 の成 果 につ い て, これ まで使 われて きた会計 数値 以外 の測 定基準 で実態 を把 適 しなければ な らない とい った こ とが問題 に な って くる. こ うい った問題 に つ いて,従 来 か ら利用 され て きた比 率 を中心 と した財務 的経 営指標 だけで は 企業 実 態 につ い て十分把 握 す る こ とが で きない との 見方 もあ り

,

顧 客満足 度」 や 「社 員 のモチベ ー シ ョンの程 度」 な どを測 定 す る新 た な指標 に関心が

) K lapan ) d corecar ance

Bla

向 け られ て い る .近 年 , キ ャ ブ ラ ン ( 1)らが提 唱 した

ト ス コア カー ド ( dS 」 は, 一般 的 な会計 数値 だけで な く,

「バ ラ ンス れ るキ ャ ッシュ ・フロー を中心 と した諸指 標 との整合性 ,戦 略経 営 に必

この よ うな会計 数 値以外 の指標 を も含 ん だ 「業績 測 定 シス テ ム (最近では戦 要 な管理 会計 情報 の有効 活用 とシス テムの効果 的運用 の あ り方, あ るい

は実務 的有用性 な どとい った諸 問題 につ いて は, さ らなる検討 が必 要 で 略経 営 シス テ ム と して評価 され てい る)」 と して注 目 され てい る.

あ る. 本稿 で は, このバ ラ ンス ト ・ス コア カー ドの内容 を概 説す る とと もに, そ

こで使 用 され てい る業績評 価 に関す る さま ざまな指 標 を取 り上 げ, これ ら指

(2)

90 現代軽骨経 済研究 創刊号 論文 :バ ランス ト スコ7カー ドにおける業肯評価指標

標 の特徴 や これ まで測定基準 と して広 く利用 されていた会計数値 との関連

1 9

ら,事業戦略 を構築すればそれで よい とい うわけではない.事業 目的達成の 性,あるいは実務的有用性 などについて検討 を試み るものである. ためには,構築 された戦略 を実行 しなければならない.通常 , ビジ ョンや戦

2バランス ト・スコアカー ドの基本的構造 略 といった ような ものは

,

高品質で低価格の製品やサー ビス を提供 し,社 会に貢献する」 というように抽象的あるいはス ローガン的に策定 されるケー スコアカー ド (B laancedScorecard

「バ ランス ト :BSC)」 は,ハ ーバー スが多い. この ようなビジ ョンや戦略が策定 された として も, どの ように具 ド・ビジネス ・ス クールの教授 であるロバー ト・キャブラン (

とコンサル タン トのデ ビッ ト ・ノー トン (D PN t..oron)1992年 に提唱 し 品を開発すべ きか,マーケテ イングは どの ように展開す るのか といったよう )

R SK l..apan 体的に推進す るのか,た とえば,市場 に投入す る製品は何 か, どの ような製

たもので,当初は新 しい 「業績評価基準モデル」 として紹介 された. しか し, な問題が残 る. ビジ ョンや戦略 を実現するためには,経営の持つ各職能や諸 この手法の有効性が認め られ,広 く普及す るに したがって,企業経営 を戦略 頼能 を相互 に関連 させ,有機的 に組織化 しなければならないのであ る.この 的に推進す るための有効 な経営管理手法 としての 「戦略経営 システム」であ ことが なされない と,戦略 自体 を成功裡 に導 くことはで きないであろ う.

るとの評価 を得 て今 日に至 っている2

バ ランス ト・ス コアカー ド (以下 「 CBS

). キ ャブランとノー トンは, この ような戦略の持つ特性 に焦点 を当て,戦略

」 と称す る)の内容 を要約すれば

「ビジ ョンと戦略 を明確 に し,それ らを経営 トップの ものだけにするこ とな

を実現 させ るためにバ ランス ト・スコアカー ドの活用 を基礎 に したマネジメ S

システム として B Cを提案 したのである. しか しなが ら,わが国で く,従業員 1人ひ とりまで落 とし込み,組織の末端 まで浸透 させ,部門や個 は,バ ランス ト スコアカー ドを業績評価制度 として しか捉 えていない経営

ン ト

人の 目標 とピジ ョンお よび戦略 との整合性 をとり,経営 トップか ら従業員 1 層 も多い.B CS はそ うい ったこ とを目的 した ものではな く,企業戦略 を実 人ひとりに至 まで組織全員のチーム ・ワー クと結束力 を強化 し, 自分たちの 現す るための具体的方法 を企業組織の構成するメンバー全員で構築 し,事業 夢であ り目標であるビジ ョンと戦略の実現 に向けて,果敢 に挑戦 させ る戦略 目的達成に向かって実行するための手段 (ツール) として位置付 けているの 経営時代の革新的マネジメ ン ト・システムである3)ということになる. である.

BSCの基本 には,激変す る経営環境下 で企業 目的 を達成す るため には, B CS の基本モデルでは, まず 「ビジ ョンと戦略」 を設定 し, さらに「財務 現在の経営資源 レベルを的確 に把捉 し,将来のあるべ き姿 (将来価値) を創

造するバ リュー ・ドライバー (将来価値の創造要因)を明確 に しなければな らない とい う考 え方があ る.そのためには,企業 目的を達成す るバ T)ユー .

ドライバーとしての 「戦略策定

効率的組織運用

業務実績の評価の仕方」

といった問題 について整理す る必要があると思われるのである.い うまで も な く,現在の ような経営環境の激変す る時代 にあ っては,中 ・長期的なピジ

的視点

,

顧客の視点」

,

業務 プロセスの視点

,

人材 と変革の視点 (学習 と成長の視点)4)」という4つの視点 を設定 している (国表 1).

この 4つの視点が

,

「ビジ ョンと戦略」 を実現す るために検討 しなければ な らない問題領域である としている.4つの視点 について私見 を交 えなが ら その内容 を列挙 してお く.

ョンを持 ちなが ら,環境変化に即応で きる事業戦略 を構築す ることが求め ら (1)財務的視点 (financapilerspective)

S

れる. もしも, 中 ・長期的なビジ ョンを持 たなければ,企業の方向性が定 ま 財務的視点 としては,株主や投資家か らの立場 と経営的立場か らの視点 と いった 2つの立場か らの視点が考 えられるが,B Cでは企業 を取 り巻 くステ らないばか りか,将来展望 と現状 とのギャップも把捉で きない. しか しなが

(3)

現代経営軽清研究 創刊号 論文 ニバ ランス ト・スコアカー ドにおける業凍評価指標 93 2

9

図表 1 バランス ト・スコアカー ドの 4つの視点 立 ち,顧客 に満足 を与 えるものでなければならない.顧客が満足 を得ている か どうかが評価 において重要な尺度 になるので,企業か らの視点 を顧客や市 場か らの視点 に置 き換 えることが求められる.

セスの

献客を満足 るた どのよう プロ に秀でる か

業 の 能力

業の人材成と能力の 強 化

業務 プロセスの視点では,事業活動の目的は顧客 か らのオーダーに対 し, 製品やサービスを提供す ることによって利益 を獲得 し,財務基盤 を強固な も

り廉価 な製品やサー ビスをタイム リーに提供 しなければならない. このため には,場合 によっては顧客だけでな くサプライヤーをも含めた業務 プロセス の見直 しが必要 になる. この ような企業内部の業務 プロセスの見直 しや改善 などが重要な課題 にな り, これに向けて全社的に取 り組んでい くことが求め

3

( sspr

のにすることである.そのためには顧客 に対 し, より品質の高い, しか もよ

)業務 プロセスの視点 (inetrnalb iusne ∝ eSpersecptive)

出所 こ吉 川武男 rバ ランス ・スコアカ- ド入門J生産性 出版.2)年1,p3, られる.

hp d t gangrow 1eam

( in er tive)

クホルダー (利害関係者)の期待 にこたえるために十分な利益 を確保 しな (4)人材 と変革 (学習 と成長)の視点 spec

ければならない としている. しか し,ステー クホルダーのなかで も株主や投 人材 と変革の視点 (学習 と成長の視点)では,顧客満足 を得るだけでは間 資家の立場 からではどうして も短期業績主義に陥 る傾向がみ られる.企業の 蔦であ り,当該企業の構成 メ ンバーが着実 に習熟 と成長 を果 た さなければ, 永続的な発展 によって企業価値の向上 を図るとい う点では,企業経営者の立 事業活動の永続性 は期待 で きない.このような観点か ら,全社的にみて,人 場 からは 「継続的な利益の蓄積」 を考 えか ナればならない と思われる.いず 材 とともに組織 自体 も成長 しているか どうか, また,その成長の方向性や レ

ではこの財務的視点 を最 も重要 な もの として強調 してい る.

-

れにせ よ,BSC ベル ・習熟度 とい ったことが,経常 にとって重要な課題 になる.た とえば,

牡貝の持つ能力が十分に発揮 されているのか,あるいは発揮で きる環境が社 内的に整備 されているか どうかが問われることになる.

)顧客の視点 野C

顧客の視点では次の ようなことを視野に入れておかなければならない.顧

s 2

( (cusotmererp tvie)

B

クスホルダーの期待 に応 えられないばか りか,企業 自身の財務基盤の安定化 ョンと戦略 を実現するためには財務的基盤の安定化 を図る必要がある.その も図れない.そのために企業は絶 えず顧客の満足 を得 るように戦略 を遂行 し ためには顧客の支持.す なわち顧客満足 を得 る製品やサー ビスを提供 しなけ ていかか ナればならないのである. したが って,顧客 に提供 される製品やサ ればならない.顧客満足 を得 る製品やサー ビスの提供するためには,その よ ー ビスは,顧客がその製品やサー ビスを利用す ることによって何 らかの役 に うな製品やサー ビスが提供 で きる企業 内の業務 プロセスの確立が必 要であ

SCにおけるこの ような4つの視点には次の ような因果連鎖がある. ビジ 客の支持がなければ企業は存在意義 を失 う.その ような事態 になればステー

(4)

94 現代軽骨 経 済研究 創刊 号 論文 :バ ラ ンス ト ・ス コアカ- ドにおける業者評価指標 95

り,そのため にはそれを具体 的にオペ レー シ ョンす ることがで き,顧客 ニー 図表2 バランス ト・スコアカー ドにおける因果連鎖 ズが変化 した場合,す ばや く対応 で きるシステムの改善や新 しい業務 プロセ

スの構築がで きる とい った ような高度のスキル を持 った人材が求め られ る.

また,人材の育成ばか りで な く, この ような人材 を輩出す る企業文化 ・組織 風 土 について も絶 え ざる進化 が必 要 なので ある.BSCは, この ような各視 点の持つ因果連鎖 を十分理解 した うえで,限 られた経営資源の有効的 な活用

を図る ことを求めている.

BSCは,因果連鎖 を持 った 4つの視点 を設定す ることに よって,企業の内 部 と外部の必要な情報 を把握 し,財務的視点に象徴 される過去 と,顧客 と業 務 プロセスの視点 に象徴 され る現在 と,人材 と変革 (学習 と成長)の視点 に 象徴 される将来 をバ ランス させ るこ とを求めている. また,財務的視点の よ

視点 戦略目標 成果尺度 パフォーマンス .ドライバ ー

. 財務 II 収益性 と成長 l 横のEL因果連鎖

l

顧客満足を生み出す優れた業務 -プロセスの構築 仕損率

うな短期 的観点 と人材 と変革 (学習 と成長)の視点の ような長期 的観点 との バ ランス,あるいは,企業内部 における業務 プロセス とい う内部の状況 と顧 客やサ プ ライヤー とい った社外 の状 況 をバ ランス させ る こと も要請 してい る.そ して,財務的業穎評価 と非財務 的業績評価 を活用 し,最終的 には企業 目標 である ピジ ョンと戦略 を実現 させ る経営 シス テ ムである5)と してい る のである.

3 Jiランス ト・スコアカー ドにお ける因果連鎖

BSCにおける 4つの視点の因果連鎖 について,4つの視点 を縦軸 に,横軸 に戦略 目標,成果尺度,パ フォーマ ンス ・ドライバー を使用 してマ トリック スの表 を作成 し,事例 として示 してお く (図表 2).

この ように,BSC4つの視点 は,個 々別々に独立 して業務 にあたるので はな く,それぞれの業務が有機的関連仕 を持 っている ことを十分理解 した う えで,業務 を遂行 させ ることを求め ている.た とえば,従業員のスキル ・ア ップの 目的は何 なのか,社内の業務改善は何のため に必 要なのか といったこ とに対 し,絶 えず各視点の上位 の レベルを意識 した行動が求め られ るのであ る. また,戦略 目標 ,成果尺度,パ フォーマ ンス ・ドライバー といった横軸

出所 :清水孝 「国果連鎖 を組 み込 んだマ ネジ メ ン ト・コ ン トロー ルの展開」r早稲 田商学J 第376号, 1998,p.73 (一部加筆修正)

に示 され たカテ ゴリーについて もそれぞれ因果連鎖 を持 っている.

縦軸 と横軸 で示 された BSCの因果連鎖の特 質 として,4つの視点 間や各日 糠や成果尺度 (業績評価指標)の間において も相互連鎖が存在す ることがあ げ られる.つ ま り,人材 と変革 (学習 と成長)の視点-業務 プロセスの視点 -顧客の視点 を経 て,最終的には財務の視点 での業績測定が行 われるが, こ の ような連鎖 の流れは ワンウェイではない.業務 自体 はその ような流 れで進 め られ るが,各視点 における戦略 目標 と業績 に対す る成果尺度 (業績評価指 蘇)には相互関連性があるため,当然 なが ら各視点は相互 に影響 を受け合 う,

このため,各視点で設定 したそれぞれの 目標 について も,一方的 な連鎖では な く相互連鎖が生ず る.た とえば,顧客の視点か らすれば,顧客満足度 を得 るため には コス トの増加 は避 け られ ない. この ことは, コス トダウ ンを目標 とす る業務 プロセスの視点や財務の視点か らすれば,明 らかに トレー ドオフ の関係 にある. この ように,各視点 間には, トレー ドオフの関係 を含 んだ相 互因果連鎖が常 に内在 しているのである.

(5)

96 現代 経営 経 清研 究 創刊号

BSCを作成す るためには ,「人材 と変革 (学習 と成長)の視点」か ら 「 務 的視点」 という流れのなかで,視点 ごとに戦略 目標 を抽出 し,それ らの関 係性 を検証す る必 要がある. したがって,その手順 は,① ビジネス戦略の策 定-② ビジョンと戦略 を実現す るための各視点の策定-③戦略 目標の設定-

④重要成功要因の絞 り込み-⑤業績評価のための成果尺度の設定-⑥ 各視点 における業務遂行 の ターゲ ッ ト設定-⑦ アクション ・プラン策定, とい うプ ロセスになる 6).

しか しなが ら,た とえこの ようなプロセスで進めることを前提 に した とし て も,財務的視点では,① -③ までを結合 し, どの ようにすれば財務的 目標 を達成で きるのか,株主や投資家に対 しては どの ような行動が必要なのか と いったことが課題 となる.また,顧客の視点については,顧客満足度 を高め るために どの ような行動が必要なのか とい ったことが最大のテーマ になる.

また,業務 プロセスの視点 では,他社 とのベ ンチマーキ ングをした うえで, どのようなビジネス ・プロセス を展開すれば企業のステークホルダーや顧 客 の満足 を得 ることがで きるのかが問題 とな り,人材 と変革の視点では, どの ようにすれば経営環境の変化 に適切に対応 した業務改善ので きる人材 を確保 し,目標 とするビジョンや戦略 を達成することがで きるのかが主要な課題 と なる.

この ようなこともあ り ,BSCで剛 、られる業績評価 のための成果尺度は, 各視点で設定 された個 々の業績評価のための成果尺度 を寄せ集めた ものでは ないことは明 らかである. しか しなが ら,一方では戦略の実現のためには非 財務的視点 も重要であるという考え方 もある. この ような非財務的視点か ら の業績評価 については,で きるだけ数値化 した方が分か りやすい とい うこと もあ り,多 くの成果尺度 (業績評価指標) を設定す る傾向がみられる. しか し,あ ま りにも多 くの成果尺度 (業績評価指標) を設定 した場合,適切な評 価がで きるか どうかは疑問である. このため ,BSCでは成果尺度 はで きる だけ少 な くし,最終的 には,企業経営 にとって最終 日標 となる財務の結果 を 得 るように,全社 をあげて各業務 を具体的に作 り込んでい く作業 を行 うこと

論文 l・バ ランス ト ス コアカー ドにおけ る業耗評価指 標 97

がポイン トになる.

4 バランス ト・スコアカー ドにおける多様 な業績評価指標

BSCに よる業務推進 を効果的 に行 うため には,成果 を測定す る業績評価 指標は どの くらいあれば よいか といった問題がある. これについては,企業 の業凍評価 を行 う場合,通常の経営分析で得 られる経営指標の数はい くつ必 要なのか といった問題 と共通 している.あま り多 くの経営指標 を業績評価指 簾 として設定する と,焦点が拡散 し業務 目標 も唆味 にな り,戦略 目標 との整 合性 を図ることも難 しくなる ことが予想 される・先述 した ように ,BSC は,業績評価指標 はで きるだけ少な くし,最終 目標 として財務の結果 を得 る ように設定すればよいことを勧 めているのである.

BSCの主 目的は業績評価ではな く戦略遂行である. このため ,BSCで設 定 される業績評価指標 は,損益計算書や貸借対照表 を中心 とした通常の経営 分析で利用 される指標だけでな く,企業が掲 げる ビジョンと戦略 を実現する ためには非財務的業績評価指標 について も設定す ることになる. したがって, BSCでは, この ような非財務 的業績評価指標 も念頭 に入れ,財務的視点, 毅客の視点,業務 プロセスの視点,人材 と変革 (学習 と成長)の視点 におけ る業績評価指標 を設定 しなければならない・ また, ビジョンと戦略 との垂直 的因果関係のみならず,業績評価指標 間の水平的因果関係 もポイン トにおい て選択 しなければならないのである 7).

ビジ ョンと戦略 を実現するための業績評価指標の設定 について, この よう な点 を考慮 したもの として,次の ような 5つのポイン トをあげる考 え方があ る8 ).

①業績評価指標 は,唾味 なものであってはな らず,全社的に統-すべ き である.

②使用する業績評価指標は,戦略 と重要成功要因を含む ビジネスの状況 を十分 にカバーすべ きである.

③ 各視点 で使用する業祷評価指標 は,それぞれ因果関係 を持 っていなけ

(6)

98 規代軽営軽済研究 創T11

ればならない.バ ランス ・スコアカー ドは・ビジネスの現状 ない し理 想像 を措 くと言われている一その内容は・首尾一貫 した説得力のある もので,バ ランス ・スコアカー ドの人材 と変革の視点や顧客の視点な どにおける努力が,最終的に財務的視点の成功 につながる ものでなけ ればならない.

④業績評価指標は,目標設定の責任者 にとって現実的な目標の設定 に役 立 たなければならない.

⑤業清 を測定 .評価す るプロセスは・易 しく単純 な もので,業揖評価指 標は,イン トラネ ッ トやデータ ・ウェアハ ウスなどで も利用可能でな ければな らない.

この ような指摘 には,主 として次の ような内容 を含んでいなければならな い ことを示唆 している.

①業績評価指標は 目標 とす る戦略実現のために活用で きるものでな くて はならない.

②戦略 目標 とパ フオ-マ ンス ・ドライバー との間に,整合性 と因果連鎖 が明確 に認識で きるようなものでなければならない・

③ 短期成果 と長期的成果がバ ランス していなければならない・

④経営 トップか ら従業員一人ひと りまで・全社的 な共通理解がなされて いなければならない.

BSCにおける業穎評価 において,最 も検証 しなければな らない こ とは, 設定す る際のポイン トとして指摘 されているように,全社的目標 と各視点の 業務内容および業績評価指標が・ひとつの価値 として統合 されているか どう かである. もし,整合性 に何 らかのギ ャップがあるとすれば,再度・各視点 における業務の洗い直 しと業穎評価指標の再設定 を行 わなければな らない・

この ような見直 し作業 は,整合性 が取れ るまで繰 り返 し行われる・4つの視 点 と全体的な戦略 目標 とに矛盾が な く,特 に開削 巧 い と判断 されれば,具

論文 :バ ラ ンス ト スコアカー ドにおける薬類評価指標 99

体的実行 とい うフェーズに移る.そ して,実行 された諸活動の成果 は,財務 的視点で用い られる業頼評価指標 によって検証 され,BSC自体の効果性の 有類別こついて全体 レベルで評価 されるのであ る. も しも,戦略 目標が達成 さ れなかった時 はBSC全体の徹底的な再検討が行われことになるのである9l.

BSCは,各事業部 や部門あるいは従業員 を対象 と して業績評価 を行 うも のであるが, この評価 は単 に現場 レベルだけ を対象に して業績評価が行われ るわけではない.これ までみて きたように,全社的な戦略 目標の達成 を最終 目的 としているため,経営責任 を持つ トノブ ・マ ネジメン トをも含んだ組織 的な枠組み を構築することも重要な ミッションであ り,評価対象 となる.

多 くの企業では売上高や各利益,ROE,資本利益率 などといった財務 を中 心 とした∃標数値 に基づいて,戦略 目標 を策定す るケースがみられる. しか ,BSCでは, この ような財務的視点 に加 え,顧客,業務 プロセス,人材 と餐革 (学習 と成長) といった非財務的 な視点 をも取 り込 んで企業の戦略 目 標 を設定 し,目標達成 に向けて全社的に事業活動 を行 ってい くのである.一 般的 には戦略 目標 と整合性 のあ る 15か ら20程度の業績評価基準 を設定す る ケースが多い.そ して,それ らの業績評価基準が的確 な指標 として機能す る か どうか, また,各視点 間や実際の業務について因果連鎖 を保持 ししている か どうか,整合性 を確保す るまでフィー ドバ ックが繰 り返 される. この よう な繰 り返 しの作業が,業務 プロセスや従業員の意識の変革 を促 し,短期的利 益 と長期的利益のバ ランス,全社 目標 と部門 目標のバ ランス,あるいは企業 のステークホルダー ・顧客 ・従業員などとのバランスを維持 しなが ら,企業 変革 を進めてい くことになるのである.

また,4つの視点 を明確 にす るためには,各部門で作成 される業績評価指 棟が業務の 自体の達成すべ き目標 になる. したが って,実際の業務 とそれを 評価する目標値が元離 していては問題である.高過 ぎる目標値では実行 は不 可能であ り,従業員のモチベー ションにも影響 し,他の視点へ もリンクしな いことは明 らかである.反対 に,低過 ぎる目標値では全社的な目標,すなわ ち,財務的視点か らみて も戦略全体の見直 しが必要になって くる.

(7)

10lJ 現代経常経清研究 創刊号

それでは,各視点で設定 される適切 な業績評価指標 には, どのような指標 があるのだろ うか .4つの視点 ごと,比較的多 く便 用 されている指標 101を あげてお く .

(1)財務的視点

財務的視点の領域で設定 される指標 として多 く使用 されるもの には,戦略 目標の達成の程度 を測定で きるとい う意味 もあ り,

①流動比軋 ②売上高利益率,③使用総資本利益率,④増収率,⑤投資 利益率,⑥労働装備率,⑦ キ ャッシュ .フロー,(針吏用総資本回転率 などがあげ られる.

(2)顧客の視点

顧客の視点 としては,たとえば,顧客 と市場のセグメン トを区分 し, ター ゲ ットとする各セ グメン トにおけるビジネス ・ユニ ッ トの業溝 を測定す ると い う目的な どを設定すれば,

①市場 占有率,②顧客定着率,③新規顧客獲得率,④顧客満足度,⑤顧 客の利益性

などがあげ られる.

(3)業務 プロセスの視点

業務 プロセスの視点では,たとえば,顧客満足 を得 るための将来製品 と現 行製品のマネジメン トを有効的に行 うための業績測定 を目的 とすれば,

(D総売上高 に対する新製品売上高の割合,②新製品計画数に対する実現 した新製品開発件数,③ 製品の開発 ・設計 日数,④受注獲得高,⑤納期 厳守率,⑥製品 1個 当た りの物流 コス ト,⑦ クレーム処理 回数

などがあげ られる.

(4)人材 と変革 (学習 と成長)の視点

論文 :バ ラ ンス ト スコアカー ドにおける業績評価指標 101

い うまで もな く,戦略 目標の達成や将来事業 を展 開するためには従業員の スキル ・ア ップは欠かす ことがで きない. また,長期的な レンジで企業成長 を図るために,人材 をは じめ業務 プロセスやシステム改善の積極的な推進 と いったことを測定で きる指標 としては,

①従業員満足度,②従業員の生産性,③従業員定着軌 ④戦略的業務装 備率,⑤戦略的情報装備率

などがあげ られる.

これ らの指標はあ くまで も一例である.当該企業が属する業界特性や社内 事情 な どを勘案 した場合, さらに他の多 くの指標が設定 されると思われる.

しか し,特徴的 なのはこれまでの ように会計数値 に基づいた財務的指標だけ でな く,非財務的 といわれる指標が多 く取 り入れ られていることである. こ のような指標の設定は,業績評価のあ り方 を含め,伝統的な管理会計手法 に 対 しさまざまな問題 を提起 しているのである.

財務的視点 での業績評価指標 は ,BSCにおいて も最 も重要な指標 である と位置付け られるので,特 に財務的視点 に限定 し,参考 になると思われるそ の他の指標 をあげてお く 11 () 図表 3.)

財務 的視点 における業績評価指標 として利用 される指標 は,一部 を除 き, これ まで利用 されて きた伝統的財務会計 に基づいて算出 された経営指標が多 い・これ まで も一般的に利用 されているように,収益性 ・安全性 ・生産性 ・ 成長性 といったカテゴリーに分類 される指標が大半である.

い うまで もな く,安全性 は短期 の支払能力や過剰 な売上債権や棚卸資産の 保有 による企業資金の圧迫 といった問題 について測定することがで きる.舵 益性 については,資本利益率 (図表では 「総資産利益率」 として示 されてい る)に代表 されるように,売上高に対する利益 の獲得状況や効果的 な費用の 使い方, と同時 に投下資本の効率的運用 といった ことが測定対象 になる.坐 産性 については,大別すれば資本生産性 と労働生産性 を中心 とした業績測定

(8)

規代経営掛 斉研究 創刊号

Eg]3 財務的視点における業績評価指標 (1)総資産 (金額)

(2)従業員 1人当たり総資産 (稔資産/従業月数)(金額) (3)総資産収益率 (収益/総資産)(%)

(4)新製品や新規ビジネスからの収益 (金額) (5)従業員1人当たり収益 (収益/従業員数日 金額) (6)総資産利益率 (利益/総資産%)

(7)新製品や新規ビジネスからの利益 (金額) (8)従業員 1人当たり利益 (利益/従業員数日 金額) (9)市場価値 (金額)

(10)総資産利益率 (%)

(ll)従業員1人当たり付加価値 (付加価値/従業員数)(金額) (12)総資本利益率 (%)

(13)使用資本利益率 (%) (14)売上高利益率 (%)

(15)貢献利益率 (貢献利益/利益)(%)

(16)従業員 1人当たり貢献利益 (貢献利益/従業員数)(金額) (17)キャッシュ ・フロー (金額)

(18)支払能力 (株主資本/総資産)(%) (19)投資利益率 (%)

(20)総原価 (金額)

出所 :吉川武男 rバ ラ ンス ・スコアカー ド大 生産性 出版 ,2)1年,p,82.

ということになる.付加価値分析 をめ ぐる各種指標 も生産性 に焦点 を合わせ た評価指標 として権能するであろう.成長性 については,増収率や増益率 と いった指標が評価基準 となる.これ らの指標の多 くは従来の伝続的財務諸表 分析で得 られる経営指標 とさほど変わ りはか 、.先 に示 した図表 3のなかで, 昨今重視 されているキ ャッシュ ・フローを重視 した評価指標 としては, 場価値「キャッシュ ・フロー投資利益率」 などといったように,僅 かな 指標数に とどまっているのである.

特 に,BSCに固有で特徴 あ る指標 としては 「新製品や新規 ビジネスか ら の収益 や利益」があげ られる.そのような指標のなかに,顧客 を意識 した指 標 と して 「市場価値」 を含 めて もよいか も知れない.BSCでは, この よ う

論文 :バ ラ ンス ト ・スコア カ- ドにおけ る業績 評価指 標 103

な業績評価指標 を設定するにあたっては,企業全体の 目標,特 に,戦略 目標 達成のために何 をすべ きか といった問題 を十分検討 しなければならない とし ている.先 に触 れた,新製品や新規 ビジネスか らの収益や利益」 とい った 指標 は,この ことを表 したものであろう. しか しなが ら,全体的には, これ まで多 くの企業で予算管理あるいは財務管理 といった領域 などで利用 されて きた,いわゆる伝枕的経営指標が多い との印象を受けるのである.

5 伝統的財務会計モデルにおける業績評価の問温点

業績評価の 目的は,設定 された目標 に対する達成度,あるいは目標達成 に 対する貢献度 を測定す ることである.特 に,事業部制 による利益責任管理な どが行 われている場合,事業部や部 門が利益責任 を負 うとい うことでは, 目 標達成 に対する貢献度 を測定することが重要になって くる.貢献度 を測定す る場合.多 くの企業ではいわゆる伝統的財務会計モデルによる業績測定が行 われている.そこでは事業部別あるいは部 門別 とい った機能別組織 における 利益管理の方法 として,事業部別や部門別に個別損益計算書 を作成 し,この ような財務資料 を中心 に,金額ベースによる予算 と実績 を比較す ることによ って業債 を測定 し,コン トロールが行われる.

しか し,企業 をコーイング ・コンサー ンとして捉 えた場合,企業の本来の 目的は投 下 された資本の拡大再生産 を図ることであ り,そのため には,企業 資金の フローを評価の対象にするだけでな く, む しろ資金 フローを組み込 ん だス トックで評価する方が妥当か も知れないのである. この ような考 え方 を ベースにすれば,企業経営 における計画 ・実行 ・株制,すなわちマ ネジマ ン ト・コ ン トロールを行 ってい くためには,損益計算書 を中心 とした ものでは な く,貸借対照表 を中心 としたコン トロールが必要ではないか と思われ るの である.い うまで もな く,損益計算書は企業資金の フローを表示す る財務資 料 であ り,貸借対照表は当該企業の企業資金のス トックを表示す る財務資料 である.特 に,貸借対照表 には,将来的な市場競争力や成長力 といった,い わばゴーイング ・コンサー ンに容積 に関わる内容 も少 なか らず明示 されてい

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104 現代経営経 済研究 創 刊号

る・このことは決 して損益計算書を軽視 しろ とい うことではない.いうまで もないが,利益 は企業経営 の効率的事業活動 によって獲得 される. しか も, これについてはすべ て損益計算書 に示 される.この ような意味 もあ り,特 に 事業部制 における利益管理 を中心 とした業績評価は,全社的な損益計算書 を 個別事業部あるいは部門ごとにブ レークダウンし,事業部別 ・部門別損益計 算書 を作成 し, 目標利益獲得の程度 を貢献度 といった側面か ら測定 し評価す

る.この ような管理手法は今で も実務的有効性 を持 っている.

損益計算書 は事業活動の成果 を表示す る. しか し, これは年度決算 でいえ ば当該事業年度の結果数値である. これに対 し,貸借対照表は,貸方に調達 した企業資金 を 「負債及び資本」 という項 目で表示 し,借方 にその調達 した 企業資金の運用状況 を 「資産」 とい う項 目で表示す る.管理会計的側面か ら いえば,経営戦略は貸借対照表に示 される負債及び資本で調達 した企業資金 を資産 として効率的に運用 し,その成果 として損益計算書で測定 される獲得 利益が貸借対照表の資本の部 にス トノクされる.そのス トックされた利益 を 含め,当該企業が保有 している資産が,将来 どの くらいの価値 を有す るもの になるのか・換言すれば,貸借対照表の借方に示 される資産価値 (企業価値) をどの ように増大 させてい くのかを指向することが求め られるのではないだ ろうか.

しか し,伝統的財務会計モデルに基づいて貸借対照表重視の経営管理 を指 向 したとして も,昨今の会計制度に求められているグローバ リゼーションの 進展により,ステークホルダーのなかで も株主や投資家 を重視する傾 向が強 まっている・ こういった立場か らは,貸借対照表で示 される伝統的財務会計 上の資産価値評価 に対 しては懐疑的になっている.その原因 として企業資産 のオフ ・バ ランスや時価評価の問題があるように思われる. また,税効果会 計の会計処理 によって資産評価が左右 されるといった問題 もあるか も知れな い・連結ベースではあるが,キャッシュ ・フロー計算書の作成が義務付 け ら れたことにより企業評価 をめ ぐる方法論 について もさまざまな議論がなされ ている・これ らのなかで,特 にキャッシュ ・フロー を重視す る立場か らは,

論文 :バ ラ ンス ト ・スコアカー ドにおける業績評価指標 105

損益計算書の利益は もとより貸借対照表で示 される資産価値 (企業価値) よ りも, フリーキャッシュ ・フローの効果的運用に よる企業が生み出す将来キ ャッシュ .フローの極大化 を図る能力 を持 った企業 を評価す るといった見方 が ます ます高 まっている. しか しなが ら,損益計算書 と貸借対照表は企業実 態 を把握す るうえでは不可欠な資料であ り,業境測定 を行 うためにも欠かせ ない資料である.可削二,貸借対照表な くして企業価値評価はで きない といっ ても過言ではないのである.

近年の国際会計基準導入の目的は会計制度の世界共通化である.グローバ ル社会においては,株主や投資家 とって企業評価の基礎 をなす財務諸表作成 基準が統一 されていない ことが問題であることはい うまでもない.グローバ ル社会 を一言でいえば,世界各国がすべての領域において リアルタイムで リ ンクしている状態のことをいうのである.この ことは,特 に,グローバルな 東榛で事業 を行 っている企業に深刻 な影響 を与えることになる.いうまで も な く,親会社の財務資料は所在国の会計制度に従 って作成 される. このため, グローバルな規模 で事業を行 っている企業の子会社は,親会社が作成する財 蕃資料 を基本 に置か ざるを得 ない. したがって,子会社で行 われる管理会計 は,親会社の作成す る財務資料 に基づいて,制度的な構築が図 られることが 多い.た とえば,アメリカにある日本の子会社が現地 において事業 を行 う場 令,これ までの ように 日本特有の会計制度で作成 された財務資料 を基 に経普 管理が行われたとすれば,極端 にいえば,利益額がアメリカ基準で作成 され るデータと異 なるといったケースも考えられるのである.

管理会計は当該企業が独 自で 自社の管理が しやすい ように, どうような形 式で行 なって も構 わない といって も,基本的には財務会計ベースの会計数値 とリンクしてい る方が望 ましい. これが まった く異 なった次元で個 々別々で 計数管理が行 なわれるとしたら,社内的混乱は避 けられないのである.反対 に, 日本 にある外資系企業の場合は,アメリカに親会社があると想定 した場 令,通常は親会社の所在地であるアメリカ会計基準 に基づいた財務諸表が作 成 され,管理会計 ではそれに基づいて各管理指標が設定 され実行 される.-

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LO6 現代軽骨経済研究 創刊号

般的には利益管理が優先的に指向 されるため,算定 される利益額が異 なれば, おのずか ら管理 目的 も異 なって くる.

現在,会計制度 については,すべての面で共通化が図 られていないため, 日本に親会社 をもつ海外 日本企業の場合は, 日本 における会計基準がその基 礎 になるはずであるが,税法の影響 などもあ り,必 ず しも作成 された会計数 値が管理会計上あるいは実務的に有用な情報 にな り得ない面がある.た とえ ば,減価償却費の計上の仕方や各種引当金な ども,その処理の仕方の違いに よって会計数値 に多大な影響 をもた らす. したがって,事業活動に支障 を来 たさない ように管理会計ベースに数値 を作 り変えているケ-ス もみ られるの である. グローバル企業での実務的問題 として,製品価格 を例 にとれば,移 転価格,現地での仕入価格などというように多様な価格が存在 している. ま た,固定資産の取替原価 についていえば,一般的 には,同 じような種類の固 定資産の取得 を考 えるケースが多 くみ られるが,実際には代替品などの利用 を考 えることもある. こういったことなどを考慮す ると,資産価値 を評価す る場合,単 に貨幣で測定す ることに重点 を置 く考え方ではな く,対象資産に 対 し投下すること自体 に価値 を見出す とい う考 え方 もあ り得るのである. こ の ように,特 に,管理会計 についていえば,グルーパル企業 においては一つ の事象に対 して,複数の会計数値 を扱 い,それ どれの利用 目的に適合 させな が ら意思決定 に利用 しているのである.

財務会計 は作成基準 において統一的な方法が確立 されればそれに従 うこと になる. しか しなが ら,経営意思決定 を行なうための業績評価のあ り方につ いては,対象 となる評価指標 によって多様 な方法がある.これ までは,主に 会計数値 を中心 とした,いわば財務的指標が評価対 象 として扱 われたケース が圧倒的に多い. しか し ,BSCを導入 した場 合 ,BSCで活用 される非財務 指標 をどのように評価するのかが間壇 になる.伝続 的財務会計モデルによる 業績評価 だけでは BSCで重視 され る長期的な顧客 との関係,あるいは,顧 客のサポー トを得 るための業務のあ り方や人材育成や組織の変革な どについ て,適切な評価が可能かどうか, この点については検討課題 になるであろう.

論文 :バ ランス ト ス コアカー ドにおける業頼評価指標 107

また,特 に ,IT関連 などのベ ンチ ャー企業 は,顧客,サプライヤー,従 業月,業務プロセス,テクノロジー,イノベーションといった点については, 資産 としてス トyクされた もの とい うよりは,これか らの事業展開によって 将来キャッシュ ・フローを生 むとい う,いわば無形資産が評価 の対象になっ て くると思 われる. このようにグローバ リゼーションの進展 を背景 とした会 計制度の大幅 な変更,あるいは多様な企業行動 に対する業績評価については, 企業の業績管理方法のあ り方 を含 め, これ までの伝統的財務会計モデルの活 用 だけでは限界が生 じるのではないか と思われるのである.

6 バランス ト スコアカー ドにお ける管理会計の役割

財務会計ベースで算 出された各種の経営数値 は,企業の効率的事業展開の ためのインジケ-タ- としての役割 を持 っている. しか しなが ら,先述 した ように,近年の会計剛度の大幅 な変更は,管理会計ベースでの管理のあ り方 にも多大 な影響 を与 えている. この ような意味で管理会計の果たす役割は, 現在の ところ揺 らぎがある.すなわち,会計処理の仕方によって利益額が異 なることや,利益 よりもむ しろキ ャッシュを重視すべ きであるといったよう な考え方 もあ り, さまざまである. したが って, これ までの ような伝統的な 管理会計手法 だけではその活用については賛否両論が予想 され,場合によっ てはその活用で さえ危ぶ まれるのである. しか しなが ら,この ような現状 に あった として も,管理会計の活用その ものが有効性 を失った とい うことでは ない.制度会計のあ り方が過渡期 にあるなか,一定のコンセンサスが得 られ れば,再度,管理会計の果 たす役割 の重要性 については共通の理解が得 られ る もの と思 われ る. この ようなことを前提 に して ,BSCにおいて管理会計 は どうような役割 を持 っているのであろうか.この点について議論 を進める ことにす る.

BSCを活用 し的確 な戦略 目標 を策定 した として も,戦略 を遂行 してい く マネジメン ト システムが効果的 に機能 しなければ,実効ある成果 を得るこ とは期待で きない.そのためは,一度設定 した戦略 目標,成果尺度,パ フオ

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1 現代経常軽 済研 究 創刊号 論文 :バ ランス ト ・スコア カー ドにおける業績 評価指標 709

-マ ンス ・ドライバーについて も戦略遂行 に支博 はないか,本当に適 したも のになっているか どうか といったことについて定期的に再検討 し,必要があ れば戦略 目標 を含め,成果尺度,パ フォーマ ンス ・ドライバー といった内容 について,大幅 に改訂す ることもある 12). この よ うな改訂 は戦略策定 とい ったフェーズではな く,すでに実行段 階に入った場合で も,絶 えず計画 との 調整が行 われ,業務改善 を行いなが ら業務 を進めて行 く.また,外部要因な どによ り4つの視点の うちい くつかのユニ ッ トで業績達成 に向けて問題が発 生 した としても,他の視点か らみてそれをカバーで きるといった機能が作用 すれば,中 .長期 的には計画 どお り業務 を続けることがで きる・BCE では

して,事業部や部門といった従来のユニ ッ トで把握 される財務的成果 を示す 指標 と,そ こで展開 される業務 プロセスに関する非財務的指標 をどの ように 測定 し,評価す るか といった閉篭が発生する.それは企業内の業務 プロセス の業績測定には,損益計算書 に示 される結果数値だけではな く,その結果 を もたらす過程で発生する苦情処理時 間とか新製品開発比率,あるいは顧客満 足度 といった,特 に,他の視点で発生 した会計数値以外の非財務的指標 をど の ように評価 に リンクさせ るのか とい う問題 などがある.た とえば,ある企 業では新製品の開発件数が重要な経営 目標 として位置付 けられているといっ た場合,開発段階ではまだ利益獲得 に貢献 していないが,新製品開発 自体が 業務遂行 にあたっては,この ような各祝点間で行われるフィー ドバ ックによ 軌織の イノベーシ ョンにつながる といったことを評価するといったようなケ

る継続的な学習 プロセスを重視するのである.BCにはこの ようなプロセス

が人材 と組織の変革 (学習 と成長)につながってい くとい う考え方がある・ こういったケースで行われる評価方法 としては,会計数値 とこれ らの業績 実務的には事業部や部門といった ようなユニ ッ ト (利益責任単位)で業務 評価指標 を結びつけるものは,従来の経営分析的算式ではな く,いわば業務

E ースが考 え られるのである.

が遂行 される.そこでは事業部や部門ごと業績測定が行われる.当然,各ユ ニ ッ トは利益責任 をともなう.特 に,製造業では製品別に区分 された事業部 をユニ ッ トにす ることが多い.業務プロセスにおける業績測定は,事業部や 部門別に行 うことが基本になるが,通常の形態では事業部や部門意識が強 く なると,いわゆる縦割 り組織の弊害がでて くることも予想 される・ しか しな が ら,業績測定 を行 う場合,主 として伝統的な会計数値が適用 されるのが~

般的である.

モデル (血ma nce oeMdl) といったようなものであるといってよい.それ は,財務的業績評価指標 と非財務的業績評価指標 との間,あるいは同一 カテ ゴリーに属する各指標 に存在する因果関係 (因果連鎖)については,これ ま

モデルを対象 に して,そこでの改善のためのキー ・ファクター (ドライバー) をブ レークダウンしてい くと会計数値以外の非財務的指標 をどの ように攻 う のか,あるいは評価す るのか といった問題 に突 き当た らざるを得 ない. この ようなケースにおいて,非財務的指標 に対す る評価 は,従来のような比率 中

Pe

での ような単純 な算式では表す ことがで きないか らである. この ように業績

これに対 し,BCでは,業務 の成果がすべ てこの ような会計数値 をもと

に した財務的業績評価指標で行われるわけではない.製品やサービスが顧客 心の財務諸表分析で得 られる経営指標 では,その内容か らしても評価 の範囲 に提供 されるまでのすべての業務プロセスが評価対象になる.先 にみたよう を超 えた ものになる. このような場合は,因果連鎖で掛 ざれている他の視点 に,そこには多 くの非財務的業績評価指標が組み込 まれている・また,戦略 や他のユニ ッ トとの話 し合いや調整が行われ,業務的には次のステージへ進 と業務の関係 においでも再三見直 しが行われるため,ただ予算 との比較によ んで行 くことになる.

S

S

BCでは業漬評価指標 はで きるだけ少 ない方が よい とされてい る. この るコン トロールといったこれまでの管理会計的手法では実態 を把握すること

ような考 え方 には,戦略 を絞 り込 む重要成功要田 (

を設定する際の発想 と類似する面がある.戦略 目標 を設定す る場合は,目標

S ilca

Cirt uccess aF tcor)

がで きないばか りか,業務の進捗 を妨 げることに もな り兼ねないのである・

しか しなが ら,た とえば, CBSで業務プロセスの業績評価 を行 なった と

参照

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