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企業収益力の実数分析

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(1)

企業収益力の実数分析

その他のタイトル The Accounting Thought and Accounting

著者 植野 郁太

雑誌名 關西大學商學論集

巻 15

号 5‑6

ページ 368‑397

発行年 1971‑02‑25

URL http://hdl.handle.net/10112/00021161

(2)

44 (368) 

企業収益力の実数分析

植 野 郁 太

実 数 分 析 の 意 義

財務諸表を中心とする比率分析によっても企業の財政状態と収益力の変動 とその趨勢を包括的に知ることができる。とりわけ同一産業部門の競争企業 の比率と,さらに基準比率と比較することによって企業の長所と短所が明ら かにされる。しかしさらにすすんで変動の原因の究明,企業の優位性をいっ そう助長するとともにその欠陥を是正するための方策を探るためには実数を 利用した分析が必要となる。実数による分析の典型的なものとして,損益計 算書の領域ではその中核となる売上総利益についての期間的差異分析と標準 と実際の差異分析があり,貸借対照表の領域では資金計算書の作成による資 金の流れの分析がある。それらは企業外部者による分析でも一部利用される が,より以上に経営管理目的のための内部分析である。そこでは次の 2点に 注意しなくてはならない。

1

に,内部分析は管理目的のためのものであるから,管理上の基本原則 として古くから指摘されている「例外の原則」

(exceptionprinciple)が重視

される。この原則は,経営者は日常の反復的な仕事よりは常規を失するよう な例外的なことがらにより多く注意を集中して,全体的な計画・統制に十分 な時間をもつように心掛けるべきだということである。それを会計資料の作 成・提示に適用するときには,この原則は変動や差異を強調して,その点に ついて関係者の注意を喚起し,その改善に十分な検討ができるようにするこ

とを意味する。

第 2 に,実数による変動や差異の分析の意義は,そこに利用される資料の

信頼性,分析される差異や変動の重要性,その結果の有用性に依存している。

(3)

企業収益力の実数分析(植野)

管理階層 管 理 領 域

トップ

経済的領域

↓ 

ミドル 技術的領域

r ‑

+ 

ロアー

従ってそこでは一方に過去の実績の会計記録の信頼性,会計処理法の一貫性 が重視され,他方では,そのような資料の分析結果がどのように各管理責任 者の責任内容にあわせて活用されるかということを念頭において分析をすす めることが肝要である。金額で表示された資料は企業活動の統制手段として は問接的なものだとよくいわれる。それは金額表示の資料により将来改善す べき点が明らかにされたならば,それにもとづいて個々の作業現場・企業活 動にそくしてその改善の具体的・技術的方策がたてられることを意味する。

これを管理階層に応じてみれば上の比喩的図解が示すように上部階層にいく ほど計画・統制は総合的に貨幣評価による考察の領域が広くなり,下部の階 層ほど特殊具体的な技術的考察が中心となる。このことから明らかなように,

変動分析や差異分析は常に個々の具体的活動とその金額表示の関係,すなわ ち具体的活動結果がどのように金額的に表示され,その金額表示の内容の分 析結果がどのように具体的活動の改善にとりいれられていくかということを 考えながらみていかなくてほ十分の効果を発揮することはできない。

貸借対照表についての実数分析としての資金計算書の問題は別稿に譲り,

ここでは損益計算書関係の実数分析をみていくこ とにする。損益計算書の実

数分析において販売費,一般管理費,営業外の費用と収益,臨時的利得と損

失については特別な技法はなく,それらは比較損益計算書によってその期間

(4)

46 (370) 

企業収益力の実数分析(植野)

比較をするに過ぎない。実数による変動分析と差異分析の技法が適用される のほ売上高と売上原価,さらに両者の差額としての売上総利益についてだけ である。

Il 

売 上 総 利 益 の 変 動 分 析

損益計算書における変動分析としてまずとりあげられるのは 2期間の売上 総利益の変動に関する分析である。売上総利益の増減の原因はまず売上高の 増減と売上原価の増減とに 2分することができ,さらに売上高の増減は売上 数量の増減と単位当り売価の変動の 2つに,同様に売上原価も売上数量の増 減と単位当り原価の変動の

2

つに分析することができる。このことから売上 総利益の変動分析が行なわれる。その計算方法を符号をつかって示すと次の

ようになる。

いま前期の売上数量を

M

。 売価を

P

。 原価を

C

。 当期の売上数量を

M1

売価を

P1

原価を

C1

とすると 売上高の増減は

P1XM1‑P

x M

。,それに

P

xM1

を加えて 売上高の増減=

P1XM1‑P

xM1+P

xM1‑P

x M

(P1‑P

)xM1+(M1‑M

)xP

(売価差異) (数量差異)

同様に売上原価の増減は

C1XM1‑C

x M

。 それに

C

xM1

を加えて 売上原価の増減=

C1XM1‑C

XM1+C

xM1‑C

x M

(C1C0) xM1‑(M1‑M

)xC

(原価差異) (数量差異)

上記の計算から明らかなように売上総利益の変動分析にあたっての各種の 差異は次のように示すことができる。

売 価 差 異 = ( 当 期 の 売 価 ー 前 期 の 売 価 )

X

当期の売上数量 売上高数量差異=(当期の売上数量ー前期の売上数量)

X

前期の売価 原 価 差 異 = ( 当 期 の 原 価 ー 前 期 の 原 価 )

X

当期の売上数量 売上原価数量差異=(当期の売上数量ー前期の売上数量)

X

前期の原価

この変動分析法を理解しやすいように売上高を例にとって図解すると次の

(5)

ようになる。

当期の売価

Pl

前期の売価 P 。

1

企業収益力の実数分析(植野)

数 量

(371) 47 

前期の当期の 数量M。数量M1

(但し,売上数量,売価とも前期より当期のほうが大きいとする)

ここで示した分析法は

2

分法といわれるもので,そこでは上記の図解の

A

+c

を売価差異,

B

を数量差異としている。しかしときには

A

を売価差異,

B+C

を数量差異として説明している例もある。そして

C

が売価差異に属す るかまた数量差異に属するかの決定的説明がないところから, Cを数量・売

(1) 

価差異として独立させる方法もあり,それを 3分法とよんでいる。このこと は売上原価についても同様である。しかし現在ではここに説明した

2

分法が 通例で, Cを数量差異にふくめる 2分法や Cを独立の差異とする 3分法は実 際にはあまりみられない。

さて上記のような売上高と売上原価の分析によって売上総利益の変動分析 をした結果を一覧的に示したものが売上総利益変動分析表である。具体例に

よって,その内容をみていくことにしよう。

(例示)

前 期 当 期 増 減 増減率 売 上 数 量

1,000

1,200

200

20% 

単位当り売価

¥  200  220  20  10% 

単位当り原価

¥  150  157.5  7.5  5 %  

.J‑

上 高

¥200, 000  ¥264, 000  ¥ 64,000 

売 上 原 価

150,000  189,000  39,000 

売 上 総 利 益

¥ 50,000  ¥ 75,000  ¥ 25,000 

売上高について

数量差異

(1, 2001, 000) 200=40, 000 

(1)  G. A. Welsch, C. T. Zlatkovich & J. A. White, Intermediate Accounting,  1969, p. 909. 

(6)

48 (372) 

企業収益力の実数分析(植野)

売上差異

(220‑200) 1,  200=24, 000 

売上原価について

数量差異

(1, 200‑1, 000) 150=30, 000 

売価差異

(157. 5‑150) 1,  200=9, 000 

売上総利益変動分析表 ( 1 )   売上高の増滅

(a) 

売価の変動による増減(売価差異)

当期売上高

(P,xM,) 264,000 

売価に変動なしとしたときの当期売上高

(P

xM,) 240, 000  24, 000 

( b )   売上数量の変動による増減(数量差異)

売価に変動なしとしたときの当期売上高

(P

xM,)240,000 

前期の売上高

(P

x M

。 )

200,000  40,000 

合計

64,000 

( 2 )   売上原価の増滅

(a) 

単位当り原価の変動による増減(原価差異)

当期の売上原価

(C1xM1) 189,000 

原価に変動なしとしたときの当期の売上原価

(C

xM,) 180, 000  9,  000 

( b )   売上数量の変動による増減(数量差異)

原価に変動なしとしたときの当期の売上原価(C 。

xM,) 180,000 

前期の売上原価

(C

x M

。 )

150,000 30,000 

合 計 ・

39,000 

( 3 )   売上総利益の増減

前期売上総利益 当期売上総利益

25,000 

75,000 

さてこれまでの説明では売上数量,売価,単位当り原価が解っているもの と仮定していた。このことは企業内部のものには妥当しても企業外部のもの には妥当しない。そこで考えられるのがこれら 3 要素の増減率の推測である。

しかもその場合,上記

3

つの増減率のいずれか

1

つが適正に推測できれば,

(2) 

他の

2

つは次のようにして計算できる。 (数値は上記の例示の数値を利用する。)

( 1 )   売上数彙が 20 %増加しているとき

売価比率はつぎの計算により

1.1

となる。いま前期の売価で計算した当期

(2)  H. A.  Finney H. E. Miller,  Principles  of  Accounting,  Intermediate, 

5th ed.,  1958, p.  497. 

(7)

企業収益力の実数分析(植野)

の売上高は

200,000 (1 + 0. 2) =240, 000,

それに対して実際の当期の売 上高は

264,000

である。その差は売価の上昇によるものである。すなわ ち

264,000 + 240, 000 = 1.  1 

原価比率は次の計算により

1.05

となる。いま前期の原価で計算した当期の 売上原価ほ

150,000 (1 +0. 2) = 180, 000

,それに対して実際の当期の売 上原価は

189,000

である。その差は原価の上昇によるものである。すな わち

189,000+180, 000=1. 05 

( 2 )   売価が 10 %上昇しているとき

売上数量比率は次の計算により

1.2

となる。いま前期の売価で計算した当 期の売上高は

264,000+ (1+0.1) =240, 000

, それに対して前期の売上 高は

200,000

である。その差は売上数量の上昇によるものである。すな わち

240,000+200, 000=1. 2 

原価比率は売上数量比率

1.2

が解ったことから

(1)

で示した計算により

1.05

となる。

( 3 )   原価が 5 %上昇しているとき

売上数量比率は次の計算により

1.2

となる。いま前期の原価で計算した当 期の売上原価は

189,000 + (1 + 0. 05) = 180, 000,

それに対して前期の売 上原価ほ

150,000

である。その差は売上数量の上昇によるものである。

すなわち

180,000 + 150, 000= 1. 2 

売価比率ほ売上数量比率

1.2

が解ったことから

(1)

で示した計算により

1.1

となる。

これらの計算によって先に示したのと全く同一の売上総利益変動分析表を 作成することができる。すなわち上の各比率の計算のうちにも利用されてい るように,売上高の変動分析に必要とされる

P

xM1

は次のように計算され る 。

( 1 )   売上数量の増加率を

r1

とすれぼ

P

xM1=P

x M

x(l+r1) 

すなわち前期売上高

X(1

十数量増加率)

( 2 )   売価の上昇率を

Y2

とすれば

P

xM1=P1xM

げ(

1+り

すわなち当期売上高+(

1+

売価上昇率)

(8)

50 (374) 

企業収益力の実数分析(植野)

次に売上原価の変動分析に必要とされる C。

x M

パま次のように計算される。

( 1 )   売上数量の増加率を

r1

とすれば

C

xM1=C

x M

x(l+r1) 

すなわち前期売上原価

X

( 1十数量増加率)

( 2 )   単位当り原価の増加率を

r3

とすれば

C

xM1=C1xM

(l+r3)

すなわち当期売上原価+(

1

+原価増加率)

皿 多 品 種 の と き の 売 上 総 利 益 の 変 動 分 析

前項で説明した売上総利益の変動分析ほ

1

品種,また多品種でもその組合 せ

(mix)

に変動はないものと仮定していた。しかし多品種の売上では組合せ も当然のこととして変動する。その場合には売上高については売価差異を狭 義の売価差異と組合せ差異に,売上原価については原価差異を狭義の原価差 異と組合せ差異にそれぞれ 2分することが必要となる。

組合せ差異をも含めた分析の計算方法は,前項で売上高および売上原価の 変動分析の符号による説明に利用した式に,あらたに前期の売価(売上原価の 分析のときには前期の単位当り原価)に当期の組合せと当期の売上数量を乗じた 数値(それをいま

A

とする)を加えた式から容易に理解することができる。い

まそれを売上高について示すと次のようになる。

P1~M1-

~+A-P。~M1+P。 xM1-P。竺―M。

当期の売価 前期の売価 前期の売価 前期の売価

喜 悶 ぢ 製

a

せ習闊悶製鼠せ誓闊悶製皇せ 盤 蘭 悶 製 皇 せ

¥   I

I

売価差異 組合せ差異 数量差異

前項に示した例示の数値によってその計算を示すと次ページのようになる。

この方法のように,売上高と売上原価を区別してそれぞれの差異を計算す るのではなく,売上高と売上原価の差額としての売上総利益の変動をより直

(3) 

接に計算する方法もある。そこではまず前期の売上単位当りの売上総利益を 計算しておき,それを利用して各差異を次のように計算する。

( 1 )   数量差異は,前期の売上単位当り売上総利益

x

(当期売上数量ー前期売 上数量)で計算される。

(3) 

中小企業庁編,財務管理要領,

155

ページ。

(9)

企業収益力の実数分析(植野)

(375)  51 

(例示)

前 期 当 期 増 減

売 上 数 量

1,000

1,200

・士J し~

{A

品 @

190x500 B

品 @

210x500

A品 @200x400 

B

品 @

230x800

合 計

¥ 200,000 

¥ 

264, 000  64, 000 

平均売価 @ 

200 

220 

売 上 原 価

{A

品 @

130x500 B

品 @

170x500

A品 @137.5x400 

B

品 @

167.5x800 

合 計

¥  150,000 

¥ 

189, 000  39, 000 

平均原価 @ 

150 

157. 5 

売上総利益

50,000  75, 000  25, 000 

売上高について

P1xM1, A,  P

xM,, P

x M

。の各金額ば次のとうりである

p1XM1  P

xM, P

x M

264,000 

190x400 

+ @  210x800  244,000 

240,000  200,000 

売 価 差 異

P1 xM,‑A=264, 000‑244, 000=20, 000 

組 合 せ 差 異

A‑P

xM, =244, 000‑240, 000=4, 000 

売上数量差異

P

xM1‑P

x M

=240,000200, 000=40, 000 

売上原価について

C,xM., A, C

xM.,C

x M

。の各金額は次のとうりである

C1xM1 

189,000 

原 価 差 異 組 合 せ 差 異 売上数量差異

売 上 数 量 差 異 売 価 差 異 売上組合せ差異 原 価 差 異 原価組合せ差異 合 計

130x400  + @  170x800  188,000 

CXM1 180,000 

C

x M

150,000  C, xM1‑A=189, 000‑188, 000=1, 000  A‑C

xM 1 188, 000‑180, 000 = 8, 000  C

xM1‑C

= M

=180,000150, 000=30, 000 

売上総利益の差異一覧 売上高

40,000  20,000  4,000 

64.000 

売上原価

30,000 

1,000  8,000  39,000 

売上総利益

10,000  20,000  4,000 

‑ 1,000 

‑ 8,000  25,000 

(10)

52 (376) 

企業収益力の実数分析(植野)

( 2 )   組合せ差異は,組合せが前期どうりであったとしたときの当期売上数量 での売上総利益すなわち前期の売上単位当り売上総利益

x

当期売上数量を,

各品種ごとに(前期の売価ー前期の原価)

X

当期の売上数量で計算された 売上総利益の総計が上廻る額として計算される。

( 3 )   売価差異ほ各品種ごとに(当期の売価ー前期の売価)

X

当期の売上数量 で計算された金額の総計として計算される。

( 4 )   原価差異は各品種ごとに(当期の原価ー前期の原価)

X

当期の売上数量 で計算された金額の総計として計算される。

この計算方法は先に説明した方法と計算の過程は違っているが,結果的に 各差異の金額は一致する。ただ数量差異と組合せ差異について先の方法はそ れを売上高と売上原価別に計算表示するに対して,この方法では両者を一括 した金額となっている点で相違するだけである。参考のためにこの方法によ る計算を先の例示の金額によって示しておこう。

(例示)

各必要数値は前ページの例示による。

前期の売上単位当り売上総利益は

50.000+1, 000=50である。

売上数量差異

50x (1, 2001, 000)=10, 000 

組 合 せ 差 異

{(190130) x400+ (210170) x800}‑50x 1,200 

=56, 00060, 000= ‑4, 000 

売 価 差 異

(200190) 400+ (230210) 800=20, 000 

原 価 差 異

(137. 5‑130) x400+ (167. 5‑170) x800=1, 000 

先の例示と比較して,

売上数量差異1

0,000

は先の例示における売上高の数量差異4

0.000

から売上原価の数 量差異3

0,000

を差引いたものに等しい。

組合せ差異の一4

.000

は先の例示における売上高の組合せ差異

4,000

から売上原価 の組合せ差異

8.000

を差引いたものに等しい。

I V   標 準 原 価 ・ 予 算 統 制 と 売 上 総 利 益 の 差 異 分 析

前項までにみてきた売上総利益の変動分析のための資料は主として損益計

算書に限定されており,それは過去の実績についての期間比較にとどまって

いる。しかし企業における計画化がすすみ,標準原価計算さらに予算統制が

実施されているところでは,売上総利益の分析は一期間について事前に決定

(11)

企業収益力の実数分析(植野)

(377)  53 

された標準ないし予算額と当該期間の実績との差異分析の形をとることにな る。そこにおいて売上総利益の分析結果は経営管理目的のためにいっそう有 効なものとなる。

標準原価計算のもとでは常に標準原価と実際原価との比較が行なわれ,そ の差異分析の結果は次の標準原価の設定に活用されるが,それはいわば製造 現場を中心とした原価管理

(costcontrol)

を目的としたものということがで きる。しかしこれらの原価資料を利用して企業が予算を編成し,予算統制を 実施しているところでは上記の原価差異分析にさらに売上高と売上原価の予 算と実績の差異分析を加えることによって売上総利益の差異分析が行なわれ ることになる。すなわち製品単位当り標準原価が設定されておれば,予定売 上総利益は次の式によって算定される。

予定売上総利益=(予定売価ー単位当り標準原価)

X

予定売上数量 この予定売上総利益と実際売上総利益の差異ほ

( 1 )   予定売上高と実際売上高の差異

( 2 )   単位当り標準原価により算定された売上原価の予定売上数量と実際売上 数量の相違に伴う差異

( 3 )   標準原価と実際原価の差異

の 3つの総合的結果として計算されることになる。以下それぞれの計算方法 をみていくことにしよう。

( 1 )   予定売上高と実際売上高の差異は次のようにして売上数量差異と売価差 異に 2分される。

いま予定売上数量を

M,,

実際売上数量を

M

。,予定売価を

P,,

実際売価 を P。とすると,

売上高差異ほ凡

xMa‑P,xM,

それに

P,xMa

を加えて 売上高差異=

PaxMa‑P,xM

P,xMa‑P,xM,

(PaP,) x M+

Ma‑M,) xP, 

(売価差異) (数量差異)

この式から 2つの差異'は次のように示すことができる。

売価差異=(実際売価ー予定売価)

X

実際売上数量

(12)

54 (378) 

企業収益力の実数分析(植野)

売上数量差異=(実際売上数彙ー予定売上数量)

X

予定売価

( 2 )   単位当り標準原価による売上原価の売上数量の相違による差異は簡単に 次の式で計算される。

単位当り標準原価 x(実際売上数量ー予定売上数量)

それは数量差異とみることができる。

( 3 )   標準原価と実際原価の差異ほ,製造原価の一般的構成要素にしたがって 直接材料費,直接労務費,製造問接費の 3つに区分され,直接材料費につ いては消費数量差異と価額差異,直接労務費については作業時間差異と賃 率差異,製造間接費については予算差異,数量差異ないし操業度差異,能 率差異に分析される。

まず直接材料費の差異については売上高の差異についてみたと同様の考 え方によって次のように計算される。ただこの場合実際値が標準値をこえ ることは企業にとってマイナスであることを示すように表示する。

価額差異=(標準価額一実際価額)

X

実際消費数量 消費数量差異=(標準消費数量一実際消費数量)

X

標準価額

この場合の標準消費数量は 実際製品製造数量

x

単位当り標準消費量 で 計算される。また実際製品製造数量には当期製品出来高だけでなく,期末 仕掛品(期首有高は控除する)の製品換算高を含む。

直接労務費の差異についても材料費の差異についてみたと同様の考え方 によって次のように計算される。

賃率差異=(標準賃率一実際賃率)

X

実際作業時間 作業時間差異=(標準作業時間一実際作業時間)

X

標準賃率

ここに賃率とは従業員の

1

作業時間当りの平均賃率である。標準作業時間 は 実際製品製造数量

x

単位当り標準作業時間 である。また実際製造数 量には製品出来高だけでなく仕掛品の製品換算高をふくむことは材料費の 場合と同様である。

次に製造間接費の差異分析については少し複雑となる。そこではまず製

造間接費の予算編成について固定予算によっているか,弾力性予算ないし

変動予算によっているかをみなくてはならない。固定予算とは予定された

(13)

企業収益力の実数分析(植野)

製造数量ないし作業時間についてだけ製造間接費の予定額を設定するもの である。それに対して現実には製造間接費ほ固定費と変動費とから構成さ れているため,いくつかの製造数量ないし作業時間のもとで製造間接費が どれだけになるかを決めておくのが弾性性予算ないし変動予算である。こ の場合にも間接費の予定配賦率は当該期間の予定製造数量ないし作業時間 で当該数量の予定製造間接費を除して計算する。

さて製造間接費の差異総額は実際製造数量に配賦された製造間接費と実 際に発生した製造間接費の差額として計算される。この差額は予算差異,

数蓋差異ないし操業度差異,能率差異の

3

つに分析される。

予算差異ほ製造間接費の予算額と実際発生額の差額として計算される。

固定予算のときには製造間接費の予算額ははじめからきまっているから計 算は簡単だが,弾力性予算のときには実際作業時間にみあう予算額を計算 しなくてはならない。それにはすでにきめられているいくつかの製造数量 ないし作業時間のもとでの予算額について連続した 2つの製造数量ないし 作業時間の間では予算額は直線的に増加するとの仮定のもとで計算する。

(たとえば

1,000

作業時間の予算額が

¥13,000

で ,

1,200

作業時間の予算

・額が

15,000

であったとすると,

1,150

作業時間の予算額は

13,000 (15, 000  150 

13,000)

一 汲 ) 6 すなわち

¥14,500

となる。)

数量差異ないし操業度差異と能率差異についてまず予備的な説明を少し しておこう。数量差異ないし操業度差異とは一定期間の実際の製造数量と 当該期間について計画された予定製造数量との相違による差異である。製 造間接費には製造数量の変動にかかわらずその大きさの一定している固定 費がかなりふくまれている。その結果としていま製造数量を予定し,それ にみあう間接費予定額によって単位当り配賦率をきめ,その配賦率で製造 数量に間接費を配賦していくと,・実際製造数量が予定製造数量に達しない ときには間接費予算額の配賦不足が生じそれだけ不利な状態となり,逆に 実際製造数量が予定製造数量を越えると配賦超過が生じそれだけ有利な状 態となる。このような関係を示すのが数量差異ないし操業度差異である。

次に能率差異は先の労務費差異のところで時間差異として説明したものに

(14)

56 (380) 

企業収益力の実数分析(植野)

相当する。能率とはもともと一定の製造数量に対して設定された標準作業 時間とその製造に実際に要した実際作業時間との比率である。標準は実現 可能だとしてもかなり高い目標値として設定されるから能率

100

%以上と いうのは例外的である。

数量差異と能率差異ほ相互補完的な関係にあり,そこでは能率差異を優 先的にみていくのが理解しやすい。その計算方法には

2

つある。

1

の方法では能率差異と数量差異は次のように計算される。

能率差異=(標準作業時間一実際作業時間)

X

単位時間当り間接費配賦率 数量差異=実際作業時間

x

単位時間当り間接費配賦率一実際作業時間に

おける間接費予算額

ここに標準作業時間とは実際製造数量に単位当り標準作業時間を乗じたも のであり,標準作業時間

x

単位時間当り間接費配賦率 は実際製造数量に 配賦された間接費の大きさを示すものである。なお固定予算のもとでは実 際製造数量にみあう標準作業時間における間接費予算ほ算定できないから 固定予算額をそのまま利用する。

第 2の方法は弾力性予算が編成されているときにだけ利用可能なもので,

そこでは能率差異と数量差異は次のように計算される。

能率差異=標準作業時間における間接費予算額一実際作業時間における 間接費予算額

数量差異=標準作業時間

x

単位時間当り間接費配賦率一標準作業時間に おける間接費予算額

これら 2つの方法は外見的に非常に違うようだが,その要点は,能率差異

の計算において第

1

法は標準作業時間で示されている実際製造数量と実際

作業時間で示されている能率

100%

としたときの標準製造数量との相違に

伴う間接費配賦額の差額をすべて能率差異にふくめるのに対して,第 2法

は間接費配賦額のうちの固定費部分を除外して変動費相当額だけを能率差

異として計算していることにある。このことは次の図解において第 2の方

法による能率差異が間接費の予算線上の

2

点間の差額で示されており,間

接費の予算額の増加は固定費ではなく,変動費の影響によるものであるこ

(15)

企業収益力の実数分析(植野)

(381)  57 

とから容易に理解できる。

次 に こ れ ま で 説 明 し て き た 標 準 原 価と売上に関する予算のもとでの売上総 利益の差異分析の計算方法をさらに具体例によってみていくことにしよう。

(標準原価に関する数値は中小企業庁編,中小企業原価計算要領

183

ペ ー ジ 以下より引用した。)

〔例示〕

売上高予算及び標準原価は次のとうりりである。

売上高について,単位当り予定売価

¥1. 500 

予定売上数量

350

コ 製品

1

単位当り標準原価について

直接材料費標準消費量

10

コ 標準価額

¥40 ¥400 

直接労務費標準作業時間

10

時 間 標 準 賃 率

¥30  300 

製造間接費

1

作業時間当り予定配賦率

¥50  500 

製品

1

単位当り標準原価

¥1, 200 

予定直接作業時間

4.000

時間

製造間接費予算には次のような弾力性予算を編成した。

作業時間

3, 800  4, 000  4, 200  4, 400 

予 算 額

¥196, 000  200,000  204,000  208,000 

当該期間の活動結果は次のとうりである。

売上高について 単位当り売価

¥1,450 

売上数量

380

コ 直 接 材 料 費 消 費 量

4,550

コ 実際仕入価額¥45

直接労務費実際作業時間

4,300

時間 実際賃率

¥31

製造間接費

¥180, 000 

実 際 製 造 数 費 製 品

400

コ 仕掛品

50

仕掛品の仕上度合直接材料費

100% 

直接労務費

50%

各種の差異は次のように計算される。

( 1 )   売上高の差異分析について

売価差異は(実際売価ー予定売価)

X

実際売上数量

(1, 450‑1, 500) 380 = 19, 000 

売上数量差異は(実際売上数量ー予定売上数量)

X

予定売価

(380‑350) 1,  500=45, 000 

( 2 )   標準原価による売上原価の増加

(380‑350) 1, 200=36, 000 

( 3 )   標準原価に関連した差異について

(16)

58 (382) 

企業収益力の実数分析(植野)

(a) 

直接材料費の差異分析について

材料の標準消費数量は次の計算により

4.500

コとなる 製品について

10 400=4, 000 

仕掛品について

10x50x 100%=500 

価額差異は(標準価額一実際価額)

X

実際消費数量

(40‑45) 4, 550= ‑22, 750 

数量差異ほ(標準消費数量一実際消費数量)

X

標準価額

(4, 500‑4, 550) x40=‑2, 000 

( b )   直接労務費の差異分析について

直接労務費の標準作業時間は次の計算により

4.250

時間となる 製品について

10x400=4, 000 

仕掛品について

10 50 50% =250 

賃率差異は(標準賃率一実際賃率)

X

実際作業時間

(30‑31) 4, 300= ‑4, 300 

作業時間差異は(標準作業時間一実際作業時間)

X

標準賃率

(4, 250‑4, 300) 30= ‑1, 500 

(e) 

固定予算のときの製造間接費の差異分析について

固定予算として予定作業時間は

4,000

時間,その時の予算額

¥200,000

だけが 計上されていたとする。

製造間接費差異総額は実際製造数量に配賦された製造間接費(標準作業時間

x

単位時間当り配賦率)一実際製造間接費

200,000 

4, 250x ~ - 1 8 0 , 000=32, 500  4,000 

予算差異は固定予算額一実際額

200, 000‑180, 000=20, 000 

能率差異ほ(標準作業時間一実際作業時間)

X

単位時間当り配賦率

(4, 250‑4, 300) 50= ‑2, 500 

数量差異は実際作業時間 x 単位時間当り配賦率一固定予算額

4, 300 50,‑200, 000 = 15, 000 

( d )   弾力性予算のときの製造間接費の第 1 法による差異分析について 製造間接費差異総額は

(c)

に示したとうり,

32,500

予算差異ほ実際作業時間における予算額一実際製造間接費

{204, 000+ (208, 000204, 000) 4, 300‑4, 200 

l,如~}-180,000

=206, 000180, 000=26, 000 

能率差異は(標準作業時間一実際作業時間)

X

単位時間当り配賦率

(4, 250‑4, 300) 50= ‑2, 500 

(17)

企業収益力の実数分析(植野)

(383) 59 

数量差異は実際作業時間

x

単位時間当り配賦率一実際作業時間における予算額

4,300 50206, 000=9, 000 

(e) 

弾力性予算のときの製造間接費の第 2法による差異分析について 製造間接費差異総額は ( c ) に示したとうり,

32,500

予算差異は ( d ) に示したとうり,

26,000

能率差異ほ標準作業時間における予算額一実際作業時間における予算額

204, 000 

(208, 000204, 000) 4, 250‑4, 200 

-l:-¾g~}-206, 000 

205, 000‑206, 000 = 1, 000 

数量差異は標準作業時間

x

単位時間当り配賦率一標準作業時間における予算額

4, 250x50‑205, 000=7, 500 

上品(

c), (d),  (e)

における能率差異,数量差異の関係の理解に役立てるために能 率差異・数量差異の計算法図解を示すと次ページのようになる。

いままでみてきた標準原価・予算統制のもとでの売上総利益に関連した各 種の差異分析結果は個々にみても管理目的にとって重要なものであることは いうまでもない。しかしそれらを損益計算書の様式にまとめてみるとき全体 的な関連がいっそう明瞭となる。このことの説明は今日でもイギリスの文献 に多くみられるが,その典型的なものとしてイギリス勅許会計士協会の「原

(4) 

価計算の発展」をあげることができる。そこには次の文章がみられる。

「原価計算は大部分他と切離された別個の作業として発展しており,定 期的調整という手段によって財務会計とつながっているが,予算統制と結 合した標準原価計算の技術は原価関係の記録と財務関係の記録の完全な統 合

(completeintegration of cost and financial records)

を必要としている。

この方向での発展は財務会計の伝統的な様式が原価計算目的にそうたやす

<適応するものでないという事実からおこって来た。しかしわれわれは,

原価関係の記録と財務関係の記録の統合が単に望ましいというだけでなく 原価計算の将来の発展が真に経営管理目的の要求を満足させるとすれば不 可欠のものと確信している。」

そこではすでに管理会計と財務会計の統合化の必要が強調され,その具体

(4)  The Institute  of Chartered Accountants in  England and wales,  Develop

ments in Cost Accounting, 1947, p. 5. 

参照

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