地域開発政策決定過程を通してみた日米社会構造の 比較
著者 ブロードベント ジェフリー
会議概要(会議名, 開催地, 会期, 主催 者等)
会議名 : 日文研フォーラム, 開催地 : 国際交流基 金 京都支部, 会期 : 1989年11月14日, 主催者 : 国際日本文化研究センター
ページ 1‑21
発行年 1994‑11‑05
その他の言語のタイ トル
A comparison of Japanese and American social structure as seen through the example of the regional development policy‑making process
シリーズ 日文研フォーラム ; 17
URL http://doi.org/10.15055/00005753
第1徊 日 文 研 フ ォ ー ラ ム
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地域開発政策決定過程を通してみた 日米社会構造の比較
AComparisonofJapaneseandAmericanSocialStructure
AsSeenThroughtheExampleoftheRegionalDevelopmentPolicy‑MakingProcess
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ジ ェ フ リー ・ブ ロ ー ドベ ン ト
JeffreyBroadbent
国 際 日本 文 化 研 究 セ ン タ ー
日文研フォーラムは︑国際日本文化研究センターの創設にあたり︑
一九八七年に開設された事業の一つであります︒その主な目的は海外
の日本研究者と日本の研究者との交流を促進することにあります︒
研究という人間の営みは︑フォーマルな活動のみで成り立っている
わけではなく︑たまたま顔を出した会や︑お茶を飲みながらの議論や
情報交換などが貴重な契機になることがしばしばあります︒このフォー
.ラムはそのような契⁝機を生み出すことを願い︑様々な研究者が自由な
テーマで話が出来るように︑文字どおりインフォーマルな﹁広場﹂を
提供しようとするものです︒
このフォーラムの報告書の公刊を機として︑皆様の日文研フォーラ
ムへのご理解が深まりますことを祈念いたしております︒
国際日本文化研究センター
所長梅原猛
テ 一 マ
地域開発政策決定過程を通 してみた 日米社会構造の比較
AComparisonofJapaneseandAmericanSocialStructure AsSeenThroughtheExampleoftheRegionalDevelopmentPolicy‑MakingProcess
発 表 者
ジ ェ フ リ ー ・ ブ ロ ー ド ベ ン ト
JeffreyBroadbent
発表者紹介
ジ ェ フ リ ー ・ ブ ロ ー ド ベ ン ト JeffreyBroadbent
米国 ミネ ソタ大学助教授
1944年 生 れ 。1974年 カ リフ ォル ニ ア大学 卒 。 ハ ー バ ー ド大 学 よ り1975年 に修 士 号 。1982年 に博 士 号 を 取 得 。 この 間 、1979〜81年 、東 京 大 学 外 国 人 研 究 員 。 1983〜86年 、 ミシ ガ ン大 学 助 教 授 。1986年 よ り ミネ ソ タ大 学 助 教 授 、 現 在 に至 る。1989〜90年 筑 波 大 学 客 員 助 教授 。1990〜91年 バ ー モ ン ト大 学 助 教 授 。
主 な 著 書:
"Th
eTechnopolisStrategyversus'HollowingOut':Japan'sRegional SiliconValleysinanEraofDeindustrialization."Comparative UrbanandCommunityResearch‑PacificRimCitiesintheWorld Economy(annual)2:231‑53,1989.
"EnvironmentalPoliticsinJa
pan:AnIntegratedStructural Analysis."SociologicalForum4(2):179‑202,1989.
"StrategiesandStructuralContradictions:GrowthCoalitionPolitics
inJapan."AmericanSociologicalReview54(5),1989.
"TheMassMedia
."TheCambridgeEncyclopediaofJapan.
Cambridge:CambridgeUniversityPress,1993.
"lssuePublicsintheAmerican
,German,andJapaneseNational LaborPolicyDomains."withD.Knoke,F.Pappi,etal.Researchin
PoliticsandSociety,GwenMooreandJ.AllenWhitt(eds.),Green‑
wich,CT:JAIPress,Inc.,1993.
"JapanesePoliticalN
etworks:CommunicationandSupportAmong OrganizationsintheLaborPolicyDecision‑MakingProcess."with
Tsujinaka&Ishio,NetworksintheJapanesePolitical‑Economy, MarkFruinandMichaelGerlach(eds.)OxfordUniversityPress, (forthcoming).
ComparingPolicyNetworks,一withD.Knoke,F.Pappi,etal.
CambridgeUniversityPress,(forthcoming).
私の研究テーマはおおざっぱに申しますと政治社会学で︑政治と社会のからみ
合いというか︑それによって社会がどういうふうに具体的な物事をつくり出すか
というようなことです︒もう少し学術的に申しますと︑﹁開発と環境﹂の政策と現
実の根本的︑政治的背景︑その意思決定過程が一番興味深いテーマです︒現代に
なって︑環境問題が非常に大きく取り上げられているところを見ると︑この環境
問題はやはり人間社会によって作られた問題と考えられますので︑開発と環境の
問題がどういうふうに政治的に現れてくるか︑どういう意思決定の過程で現れて
くるかということは︑理論的にも︑あるいは実際的・応用的にも大事な問題になっ
ていると思います︒ですから︑私は地域開発という大型建設︑大型公共事業開発
の研究もこのコンテクストの中で考えております︒
そして︑やはり一つの国だけでこういうテーマを研究したのでは︑あまり根本
的な実体は把握できないのではないかと思います︒私自身は日本でずっと一つの
例を通してこの研究をしてきたのですが︑やはり他の例と比較しながら説明しな
ければ︑あまり正確な説明はできないのではないかと思います︒だから今日は︑
私の研究した大分県の新産業都市の例︑それは五十八年ごろから八十年までの大
型コンビナート開発の経過を研究してきたものですが︑その結論とアメリカとイ
タリアの例とを比較しながら説明しようと思っています︒そして︑日本とアメリ
カとイタリアの大型公共事業開発プロジェクトの背景に動いている政治的な意思
決定︑政治的といっても政府だけのことではなくて︑民間のいろいろな団体との
交渉︑働き掛けなどを通して現れてくることも含めて︑そういう広い意味での意
思決定の過程を比較したいと思っています︒
まず︑社会学で社会構造というと︑社会の意思決定の過程を意味する言葉です
けれど︑ここでは社会の中のグループ対グループの関係で現れてくる意思決定過
程︑その総合的なパターンが(社会)構造という意味になります︒要するに︑基
本的に言うとこのような図になります︒
一2一
圏
一3=KeyInfluenceRelationship(KIR)
O=Group(SocialActor,Organization)
例えばグループAは地方自治体になるかも知れません︒グループBは大手企業
になるかも知れません︒グループCは政権を握っている政党︒同じ国の中でも︑
グループ対グループの相互作用によって全体のパターンが変わって行くはずです︒
どちらのグル!プが主導権を持っているか︑どちらが従属しているか︑その間に
どのような交渉が行われているか︑その典型的な構造パターンは国によっても違っ
てくるはずです︒
勿論︑ある国の社会といっても非常に幅広いものですから︑イタリアにしても
アメリカにしても日本にしても︑一つの例ですべてを代表することはできません︒
こういう研究をするには︑できるだけたくさんの例を取り上げて平均することが
理想かも知れませんが︑構造的研究は複雑で時間がかかるので︑三つの国から具
体例を一つずつ選んで比較してみることにします︒①こういう研究は多分アメリ
カでは一番進んでいると思いますので︑この発展してきた過程を一般論を基礎と
して少し説明することにしましょう︒
一4一
世界でこういうような大型の開発に賛成しているグループの組合せの研究によ
ると︑大体六つのグループがそれぞれ先頭に立って主導権を握り︑開発を押し進
めようとしています︒国と社会によって︑その一番の主導権を持ったグループは
変わってきますが︑その開発連合に入っているグループは大体六つぐらいありま
す︒
まず第一番目は地方自治体︑アメリカでいうと州政府になります︒そして二番
目は中央政府︑今ここで意味しているのは各省庁︑官僚の方です︒そして三番目
が地元の経済界︒そして四番目が中央の大企業︑あるいは財界︒五番目は政権を
握っている政党の県レベル︑例えば自民党県連︒そして最後に政権を握っている
政党の国レベルの組織︑日本で言えば自民党党本部とか︑政調会とかいう党全体
の動きを握っている組織です︒イタリアでもアメリカでも同じような例がありま
すけれど︑アメリカの政治を少しでも理解している方は︑すぐにこの六つの構成
要因の組み立てが︑日本とアメリカとでは随分違っていることを理解できると思
います︒その違いを地域開発に例をとりながら見てみましょう︒根本的な問題は
三力国で主な担い手がどこになっているかということです︒
まず結論を先に言うと︑日本では大型建設の主な担い手︑主導権を握っている
担い手は︑非常に複雑で︑時間によって主導権を持つ組織は違ってきますが︑私
の研究によると︑やはり最大の担い手は大企業でした︒大分の場合には︑埋立て
地に製鉄所と製油所︑そして石油コンビナートを作りました︒その場合︑新日鉄
とか昭和石油︑九州石油といった大手企業が主な開発の主導権を持っていたので
す︒そして地元の方はわりと受け身的な役割を果たしていたのです︒こうしたケー
スは︑日本では当たり前と思われるほど︑よくあることだと思いますが︑実はア
メリカとイタリアの同じような大型建設の例を見ますと︑その意思決定の主導権
を握っているグループは随分違います︒アメリカの場合は︑むしろ地元の経済界
が主な役割を果たします︒もちろん最後の段階では︑大型企業も大きな力を持ち
ますが︑開発過程の中では︑開発を起こす主導権は地元の経済界になりますし︑
イタリアでは︑政府や経済界よりも︑むしろ政権を握っている政党が大型建設を
起こす主導権を握っています︒
一6一
それは何故かというと︑アメリカではいろんなファクターがありますけれども︑
基本的に土地利用の法律が非常に弱くて︑どうしても地方分管型の開発になりま
す︒ですから︑地元の①口9①嘆①づΦ霞日本語で企業家になるでしょうか︑要するに新
しい事業を押し進める企業活動家の自由が︑極端に大きいのです︒勿論︑自治体
には不動産市場を制限したり︑土地税制とか公土ハ施設の決議をしたり︑地区制
(NOZHZΩ)を決める法律︑土地利用法でしょうか︑ここには工場を作ってはいけな
いとか︑ここは住宅地域にするとかいう法律は自治体で作られるのですが︑それ
はあまり強くありません︒
だからΦロ肓①凛Φづ①霞の内でも地域開発を起こすグループは︑日本語で言うと山師
というのでしょうか︑辞書を引いたら山師という言葉が出てきたのですが︑投資
をして儲けたいグループ︑投機家と言ったらどうでしょうか︑要するにそうした
グループは︑自分たちの持っている土地が広くなればなるほど︑また多くの企業
が開発に来れば来るほど︑自分の持っている土地の地価が値上がりするので︑そ
れにとても熱心になります︒一種の地上げ屋ですかね︒
アメリカではそのようなグループが非常に活発で︑英語ではび○○︒︒8﹃というので
すが︑できるだけ地元のビジネス活動を活発にさせたいと願うと共に︑それで自
分の持っている土地の値上げも狙っています︒もし地下鉄が作られそうになった
ら︑自分の土地の近くにその駅を作ってもらうように努力︑働き掛けをします︒
また自分の土地に高層ビルを建ててオフィスビルとかマンションにして貸したい
けれど︑土地利用法によってそういう高層建築ができない場合には︑できるだけ
それを許すように︑地方自治体に働き掛けるのです︑圧力を掛けたりして︒そう
した場合︑アメリカでは地方自治体にそうしたことを決める権限がありますので︑
極めてコミュニティの政治に限られてきます︒地元の政治的現象になります︒
そして地上げというか︑地域開発を起こせば︑自分の持ってる土地の地価が上
がりますから︑それを狙って大手企業を誘致するように努力します︒それは不動
産屋だけではなくて︑他のグループも連合を作って︑一つの社会連合を作ります︒
例えば建設会社︑銀行とか他の投資機関︑建築家︑土地利用関係の弁護士︑個人︑
それに直接土地利用と関係なくても︑開発があればあるほど有利になるような会
社もその連合に参加します︒例えば新聞社︑あるいは電力会社なども加わります︒
そして政治家は︑大体そういうげoO︒︒8磊に支持されますから︑その活動に有利な条
件をつくり出すために一所懸命働きます︒
しかし国レベルでは︑日本みたいな全国総合開発土地利用計画とか︑新全総︑
三全総といった全国的な合理的な計画は全くありませんから︑大型の開発は大都
市の競争になります︒大企業も全国的な土地開発計画はあまり持っていませんか
ら︑開発は全国的に見ればバラバラになります︒国の補助金制度はある程度あり
ますが︑日本よりも弱くて︑一つのプロジェクトに投資する金額は日本より少な
いです︒それと︑国はいわゆる巨o︒甲σq鐔畧(国の補助)を地方自治体に配るので
一g一