奈良教育大学学術リポジトリNEAR
カウンセラーのうなずきの量に関する実験的研究
著者 玉瀬 耕治, 石田 恵利子
雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要
巻 31
ページ 157‑169
発行年 1995‑03‑01
その他のタイトル An Experimental Study on Head Nodding with Minimal Verbal Encouragement.
URL http://hdl.handle.net/10105/6878
カウンセラーのうなずきの量に関する実験的研究‡
玉瀬 耕治・石田恵利子 (心理学教室)
要旨:カウンセラーが用いるうなずきの量とその挿入位置が、第3者によるカ ウンセラー評定に及ぼす影響を検討した。うなずきの量は、クライエントの メッセージにおける 間 (句読点)の総数に対する割合で操作し、12%、40%、
84%の3条件を設定した。うなずきの挿入位置は、文の区切りのよい位置に入 れることを基本とし(前記3条件)、40%のうなずきを文の初めに入れる1条 件を追加した。これら4条件での面接場面を撮影し、そのVTRを見せて、80 名(男女同数)の大学生にカウンセラー評定を行わせた。その結果、共感性、
純粋性、尊重性のいずれにおいても、12%のうなずきが話の区切りのよい位置 に入る条件はもっとも高い評定を受け、40%のうなずきが喋り始めに入る条件 はもっとも低い評定を受けた。純粋性においては、84%条件でも低い評定を受 けた。尊重性では、女性の被験者の方が男性の被験者よりも、84%条件でより 高い評定を行っていることが明らかにされた。
キーワード:うなずき カウンセラー評定共感性
初心カウンセラーの訓練プログラムとして開発されたマイクロカウンセリング(1Vey&
G1uckstem,1993;Ivey&Authier,1978/福原他訳,1985)においては、傾聴技法のもっとも 基礎的な部分にかかわり行動(attendi㎎behavior)が位置づけられている。かかわり行動には、
アイコンタクト、ジェスチャーなどの身体言語、言語的追跡、声の質などが含まれている。基本 的傾聴の連鎖も傾聴技法の重要なものであり、この中には質問、最小限の励まし、言いかえ、要 約、感情の反映などの諸技法が含まれている。本研究では、かかわり行動および最小限の励まし 技法に含まれるうなずきについて、カウンセラーのうなずきの量とうなずきの挿入位置に焦点を あてて実験的に検討する。
ところで、かかわり行動に関連する従来の研究には次のようなものがある。Mehrabian(1972)
は言語によって伝達されるクライエントの情報量はわずか7%であり、情報量の大半は非言語的 な手掛かりであることを示唆している。Str㎝g,Tay1or,Bratt㎝,&Loper(1971)は、面接場 面で非言語的行動を多く示すカウンセラーは、それが少ないカウンセラーよりも魅力的であると 評定されることを示している。LaCrosse(1975)は、微笑、うなずき、手振り、80%のアイゴ
*An Experimental Study on Head Nodding with Minimal Verbal Encouragement.
**Koji TAMASE&Eriko ISHIDA(Deμ7物2〃ψハッ。κo o砂,M伽ασ〃{mγ8吻ψ〃mcω{伽, 〃α 630)
ンタクト、20度の前傾姿勢を示し、クライエントの真正面を向いた友好的なカウンセラーと、
40%のアイコンタクト、20度の後傾姿勢を示し、肩を30度そらせた非友好的なカウンセラーの面 接場面をVTRで提示し第3者に評定させた。その結果、友好的なカウンセラーの方が、非友好 的なカウンセラーよりも魅力的で、説得性が高いことが認められた。
Mehrabian(1970)は、非言動的行動に関する過去の文献を展望して、結果の差異を説明する ために評定(eva1uati㎝)、潜在能力・地位(potency,status)、応答性(responsi.ity)の3次元 を設定している。より高い評定はより近い位置、アイコンタクトなどで示される。潜在能力・地 位はリラックスした姿勢などで示される。応答性は表情、声の調子などで示される。Sherer&
Rogers(1980)はこれらの理論的次元を操作して、第3者によるカウンセラーの資質(共感性、
暖かさ、純粋性)の評定にどのような影響が見られるかを調べている。評定次元に関わる直接性 の操作として、カウンセラーとクライエントの間の距離が91cmで90%のアイコンタクトを示す 島群と、距離が213cmで10%のアイコンタクトを示す低群が設けられた。潜在能力・地位次元に ついては、リラックスした後傾姿勢の島群と、垂直姿勢を示す低群が設けられた。応答性次元に ついては、うなずきと身振りのある島群と、それらの無い低群が設けられた。これらの各条件で 面接場面を撮影したVTRを用いて第3者にカウンセラー評定を行わせた結果、直接性の島群は
カウンセラーの資質の評定でより高く評定されていることが示された。しかし、潜在能力・地位、
応答性の次元では顕著な差異は認められなかった。玉瀬(1990)は、かかわり行動としてアイコ ンタクトとうなずきを用い、大学生を参加者とした実際の2者場面において、聴き手(実験者)
のかかわり行動が話し手の応答に及ぼす影響を検討しれかかわり行動あり群は、話の切れ目に 相づちを伴ううなずきを入れ、視線を適度にあわせ、自然な雰囲気を出すように努め㍍これに 対してかかわり行動なし群は終始無表情なままであった。その結果、かかわり行動あり群は、な し郡よりも、聴き手の質問への応答時間及び応答音節数がより長くなった・これは、かかわり行 動が話し手の会話を促進することを示している。
以上の研究は、非言語的行動の幾つかの組合せの効果を検討したものであ糺これらは、非言 語的なかかわり行動がカウンセラーの評定やクライエントの応答に影響することを示唆している。
しかし、種々のかかわり行動は、それらが組合わされることによって初めてその結果が得られる のか、あるいは特定の要因が影響するのか、それらの行動の1つひとつにはどのような働きがあ るのか、などといったことはまだ十分明らかにされているとはいえない。また、用いられている 条件は、あり、なしといった両極端に設定されているものが多く、果たして各技法をどの程度に、
またどのように用いることがもっとも効果的であるかについてはあまり明らかにされていない。
個々の要因をより詳細に検討した実験として、例えばKeliy(1978)のアイコンタクトに関する 研究をあげることができる。彼はアイコンタクトの方向として、目と目、目と鼻・口の2条件を、
またアイコンタクトの量として、高(85%)、中(50%)、低(15%)の3条件を設けて実験した。
それらの条件に従って面接を行い、面接後に被面接者に7つの測度(心地よさ、注意、興味、安 楽、たよりなさ、視線、振り返る意志)でカウンセラー評定を行わせた。その結果、高レベルの アイコンタクトを示すカウンセラーの方が、低レベルのカウンセラーよりも注意、興味、視線の
点で高く評定された。しかし、高レベルと中レベルの条件問には差がみられず、中レベルのアイ コンタクトは高レベルのものと同じように有益であり、必ずしも長くアイコンタクトを保つこと がより効果的であるとは限らないことが示唆された。また、アイコンタクトの方向については差 はみられなかった。カウンセラーの姿勢に関して、Spiege1&Machotka(1974)は、腕を組んで いる場合は冷たく、拒否的で、はにかんでおり、受身的であると判断され、適度に腕を開いてい る場合は、暖かく、受容的であると判断される傾向があることを示している。
以上のように、アイコンタクトや姿勢は、クライエントに対して傾聴していることを示す重要 な要素であるが、会話を促すより直接的な技法としては、 うん という最小限の言語的応答(相 づち)を伴ったうなずきがその最も代表的なものであろう。うなずきは日常でも無意識的に頻繁 に用いられ、誰にも馴染みのある容易な技法であるように思われる。うなずきが会話を促す強化 子としての意味をもつことはすでに多くの研究によって実証されている(Hargie,Sa㎜ders&
Dickson,1987)。しかし、かかわり技法としてのうなずきを実験変数として取り上げ、効果的な うなずき方を調べた研究はあまり見あたらない。本研究ではこのうなずきに焦点をあて、面接場 面における効果的なうなずきの量と、その挿入位置について検討する。うなずきの量は、操作的 にクライエントがメッセージの文節ごとにとる 間 の総数に対するうなずきの割合によって示 し、12%、40%、84%の3条件を設定す乱うなずきの挿入位置については、40%のうなずきが 文章的に区切りのよい句読点の位置ではなく喋り始めの部分に挿入される1条件を追加する。こ れら計4条件における面接場面を撮影したVTRを用いて、第3者の被験者にカウンセラー評定 を行わせる。Str㎝gら(1971)では、非言語的行動を多く示すカウンセラーの方が魅力的であ るとされているが、Ivey(1983)は、うなずきの入れすぎは却って不快感を与えることを示唆 している。クライエントの自己探求を促すためには、クライエントの話の進展に合わせてうなず きを入れることが重要であり、喋り始めにうなずきを入れる40%条件の評定は低くなることが予 想される。本研究におけるカウンセラー評定は、Rogers(1957)が治療的パーソナリティ変化 のための条件として重要であるとみなした純粋性(genuin㎝eSS)、無条件の積極的尊重
(unc㎝ditional positive regard)、および共感的理解(empathic㎜derstandi㎎)に関連する尺度 を新たに作成して行うことにした。
方 法 実験計画
2×4の要因計画が用いられた。第1の要因は被験者の性別で被験者問要因、第2の要因はう なずきの量と挿入位置(12%、40%A,40%B,84%)で被験者内要因であった。
被験者
大学生80名(男女各40名)が被験者として用いられた。これらの被験者は、カウンセラーとク ライエントの性の組合せが異なる4種類のビデオに20名(男女各10名)ずつ割り当てられた。各 群の被験者は、シーンの提示順序が異なる2群に1O名(男女各5名)ずつ割り当てられた。
材料
(1〕ビデオの作成
ビデオの内容は、役割演技によるカウンセラーとクライエントの1対1の面接場面を録画した ものである。クライエントのメッセージは小谷(1981)の応答構成法に示されている例文の1つ を参考にして作成された。カウンセラーはメッセージ文の句読点にあたる位置でうなずくことを 原則とし、このメッセージ文の総句読点数(32)に対してカウンセラーのうなずきの数が4回
(12,5%)、13回(40.6%)、および27回(84.3%)の3条件を設定した。これらの3条件では、
うなずきはメッセージのそれぞ札の内容の区切りのよい場所に入れられた(以下各条件を12%、
40%A,84%とする)。また、40%の場合については、喋り始めの部分にうなずきを入れるもう 1つの条件が設けられた(以下40%Bとする)。従って、本研究で用いられたビデオは、うなず きの量に関する12%、40%A,40%B、および84%の4シーンから構成されている。表1は本研 究で使用されたクライエントのメッセージと各条件のうなずきの挿入位置を示したものであ糺 ビデオの撮影に関しては、撮影を何通りか試行し、最終的にカウンセラーの上半身のみが撮影
されたものを採用し㍍カウンセラー役は、画面中央にやや左を向けて据えられた椅子に座り、
カメラの真下に貼られたうなずきの位置を明記した用紙を見ているように指示された。メッセー ジを読むクライエント役はカメラの真横に座り、画面には映っていない。画面上では、カウンセ ラーの視線はクライエントに向けられていると受けとめられ乱従って、被験者の視点(カメラ の視点)はクライエントの視点とほぼ一致している。カウンセラー役は、自然でリラックスした 姿勢をとるよう指示されれ背と肘を軽く椅子にもたれかけさせ、手は膝の上におき、足を少し 開くか組むかした楽な姿勢がとられた。うなずきは、 うん と言って相づちをうちながらうな
表1 クライエントのメッセージとうなずきの挿入位置
◆12% ▲40%日
△40%^ 084%
最近、ミだんだん、F何か、r仲間から離れていくような気がするんです。
台1 。≡・1
◆
O
みんなと一緒にいても、≡何だか、≡私(償)一人だけしらけてしまって、≡みんな楽しそうにしているのに、=ふっと気がつくと、
合1 O= a
はそれに 、、,のって広いっていうか、 1その、=のろうという に;らないっていっか、1 の 1 でいた 度るんです。
2 ▲≡ 台1 。
には、1 をつかって 1心 してくれる人もいるんですけど、 1で 、1それがかえって、 1わ らわしいっていうか
O1 O1
1は、 よく楽しんでいて とでも舌せて、
合1 (⊃1
台1
2 01 0
させないといわれていたんですけど、 1でも、1あの、;そういうのって、
△ 合1 0
口だか、1}い じがするっていうか、 らしいっていうか、 ういうふうに は馬えて、 だなって思うんです
O.
2 01 0
ずく方法で統一されたが、不自然にならないよう細かな指示は与えられなかった。クライエント 役は、メッセージを各句読点で間をとり、ゆっくりと実際に話しているように読むよう指示され
た。
ビデオは、カウンセラーおよびクライエントの性や個人的特徴による評定への影響を除くため に、カウンセラー(男女)とクライエント(男女)の組合せによる4パターンが作成された。ク ライエント役は国立大学学部心理学専攻生の男女各2名が行い、カウンセラー役は被験者よりも 年配だと分かる現職男性教員2名(大学院生)、女性大学院生1名、および産業カウンセラーの 資格を有する有職女性1名からなる男女各2名が行った。また、4シーンの提示順序のカウン
ターバランスをとるため、それぞれの男女の組合せについて①40%A−40%B−12%一84%と、
②84%一12%一40%A−40%Bの順序で編集した2通りのビデオが用意された。
(2)カウンセラー評定尺度の作成
カウンセラー評定尺度は、Rogers(1957)がクライエント中心療法においてカウンセラーに 最も必要であるとする共感性(empathy)、純粋性(genuineness)、尊重性(positive regard)を 評定するものとして、Cormier&Cormier(1985)の考えを参考にして作成された。評定形式は、
ランダムに並べられた共感性、純粋性、尊重性に関する各4項目、計12項目を、 非常に感じら れる かなり感じられる 少し感じられる ほとんど感じられない 全く感じられない の 5段階で評定させるものとした。表2は本研究で用いたカウンセラー評定尺度を示したものであ
る。
表2 カウンセラー評定尺度
共感性
純粋性
尊重性
①相手と一緒になって考えようとしている。
④相手の話の内容を理解しようとしている。
⑦相手の感情を理解しようとしている。
⑩相手のおかれた状態に合わせて話をすすめようとしている。
②自然な態度で接している。
⑤ありのままの自分を出している。
⑧カウンセラーであることを誇示していない。
⑪作為的でない。
③相手を人間として認め、尊重している。
⑥相手の役に立とうとしている。
⑨あたたかく、思いやりをもって接している。
⑫価値判断をせず、相手を受容している。
注:項目番号は実験で用いられた評定用紙での提示順序を示す。
被験者は、ビデオの1シーンごとに評定を行い、計4回評定を行うことになる。また、実験終 了後に内省報告を記入させる用紙が用意された。内省報告では、評定の際に相談内容、うなずき の量、うなずきの入る位置がどの程度考慮されたかを6段階で評定し、その他に評定の際に考慮
したこと、実験の感想・意見を自由記述するようになっている。
(3〕手続き
実験は、各被験者に都合のつく時間帯に合わせて予約をとり、1−5名の小集団で順次行われ た。被験者はテレビの用意された実験室に通され、画面の見やすい席につくように求められた。
その後評定用紙4枚と内省報告用紙を1級りにした冊子を配り、次のように教示した。 これか ら皆さんにカウンセリング場面のビデオをお見せします。画面にはカウンセラーだけが映ってい ます。全部で4シーンありますが、1シーンごとにお手もとの評定用紙にカウンセラーの印象を 記入していただきます。結果は統計的に処理し、個人の結果について公表することはありません。
それでは1シーン目から始めます。 1シーンの終了ごとにビデオを一時停止し、評定用紙への 記入を求めた。4シーンの評定が終了した後、内省報告用の用紙への記入を求めた。実験に要し た時間は約15分であった。
結 黒 カウンセラー評定(尺度別)
カウンセラー評定については、 非常に感じられる と評定されたものに4点、 かなり感じら れる に3点、 少し感じられる に2点、 ほとんど感じられない に1点、 全く感じられない に0点を与えて得点化した。本研究で得られた共感性、純粋性、尊重性の各尺度のα係数は、順 に.90、.76、.85であった。それぞれの尺度について、被験者の男女別に12%、40%A,40%B,
84%の各条件ごとの平均得点と標準偏差を算出した。妻3はそれらの数値を示したものである。
また、図1は表3の男女を合わせた各群の平均値についてグラフに示したものであ糺これらの 値について、共感性、純粋性、尊重性の各尺度ごとに、2(被験者の性)×4(うなずき:12%、
40%A,40%B,84%)の分散分析を行った。
共感性の尺度において、うなずきの主効果が1%水準で有意であった(F=4.10,d∫=3,234)。
誤差項(M∫e〃=11,81)を用いてf検定を行ったところ、12%と40%Bの条件間にO,1%水準で 有意差が認められた(f=3.50、ψ=234)。この結果は、うなずきが12%の条件において相対的 に共感性が高く、40%Bの条件では共感性が低いと評定されたことを示している。
純粋性の尺度においてもうなずきの主効果が1%水準で有意であった(F=4,41、ψ=3,234)。
誤差項(M∫m=7.09)を用いてサ検定を行ったところ、12%と84%、12%と40%Bの条件問に それぞれ1%水準の有意差が認められた(f=3.18、 :2.95、いずれも〃=234)。これらの結 果は、うなずきが12%の条件で、純粋性がより高いと評定されたことを示している。
尊重性の尺度においても、うなずきの主効果が1%水準で有意であった(F=4.16、〃=3,234)。
誤差項(M∫舳=9.10)を用いてf検定を行ったところ、12%と40%Bの条件の間にO11%水準(f
=3.50、〃=234)、40%Aと40%Bの条件間に5%水準(f=1.80,d∫:234)の有意差が
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国12%
国40%A 目40%B 目84%
共感性 純粋性 尊重性
図1 各群のカウンセラー評定の尺度別平均得点
表3 各群のカウンセラー評定の尺度別平均得点と標準偏差
共感性 純粋性 尊重性
M ∫D M ∫D M ∫D
男 12%
40%A 40%B 84%
8,65 3,76 8.10 2191 7,45 3,43 7,08 3,03 7,10 3,64 7,05 3.10 7,03 4,27 6,60 3.32
7,95 7,25 7,13 6.58
3.10 3,54 2,86 3.67
女 12%
40%A 40%B 84%
8,65 3,79 7,95 3,61 8,00 3,78 7,85 2,91 6,40 3,73 6,53 2.92 8118 3,37 6,78 2.61
8,38 7,70 5,85 8.13
3.83 3150 3133 2.82
全体12%
40%A 40%B 84%
8,65 3.75 8103 3,26 7,73 3,59 7,46 2,98 6,75 3,68 6,79 3.O1 7,60 3,86 6,69 2.97
8,16 7,48 6,49 7.35
3,47 3,50 3,15 3.35
認められた。これらの結果は、うなずきが40%Bの条件で尊重性がより低いと評定されたことを 示している。また尊重性では、被験者の性とうなずきの交互作用が5%水準で有意であった(F
=3.00,d∫=3,234)。合成誤差項(〃∫・b〃=11.51)を用いてf検定を行ったところ、うなずき が84%の条件で被験者の男女の間に5%水準の有意差が認められた(f=2.04、〃=312)。これ は84%の条件で女性の被験者は男性の被験者よりも尊重性が高いと評定したことを示している。
カウンセラー評定(項目別)
共感性、純粋性、尊重性それぞれの尺度の各項目ごとに男女別平均得点と標準偏差を算出した。
図2は男女を合わせた平均値についてグラフに示したものであ糺各項目ごとに2(被験者の性)
×4(うなずき:12%、40%A,40%B,84%)の分散分析を行い、有意差の認められた項目で は誤差項を用いてf検定を行った。共感性においては、④ 相手の話の内容を理解しようとして いる 、⑦ 相手の感情を理解しようとしている 、⑩ 相手のおかれた状態に合わせて話をすす めようとしている の各項目でそれぞれ有意差が認められた。④では誤差項(M∫〃=0.98)を 用いてC検定を行った結果、40%Bが12%、40%A,84%の各条件よりも評定が有意に低いこと が認められた(順にf=3.45;2,17;2.17、いずれもdア=234)。また、⑦と⑩の両項目では、
誤差項(M∫m=1,10;0.95)を用いてf検定を行った結果、12%条件が40%B,84%の2条件 よりも評定が有意に高いことが認められた(⑦f=3.38;2.l1,d∫=234/⑩f=2.73;2,14、
〃=234)。純粋性においては、② 自然な態度で接している 、⑪ 作為的でない の各項目で
一ユ2光 一40%^
・40比B
・84光
①④⑦⑩ ②⑤⑧⑪ ③⑥⑨⑫ 共感性 純粋帷 尊重性
図2 各群のカウンセラー評定の項目別平均得点
有意差が認められた。②では、誤差項(M∫m=0.87)を用いてf検定を行った結果、12%、40%
Aの2条件がそれぞれ40%B,84%の2条件よりも評定が有意に高いことが認められた(t=
3.53;3.39、ψ=234/f二2.44;2.31、〃=234)。また、⑪では誤差項(M∫m=0.86)を用 いて止検定を行った結果、12%条件が40%A,40%B,84%の3条件よりも評定が有意に高いこ とが認められた(f=1.98;3.OO;3.00,d∫=234)。
尊重性においては、③ 相手を人間として認め、尊重している 、⑨ あたたかく、思いやり をもって接している 、⑫ 価値判断をせず、相手を受容している の項目で有意差が認められた。
③では、誤差項(M∫舳=0.62)を用いてf検定を行った結果、12%条件が40%A,40%B,84%
の3条件よりも評定が有意に高いことが認められた(サ=2.17;3.45;2.97、ψ=234)。また⑨ と⑫の両項目では、誤差項(M∫m=0.91;O.80)を用いてf検定を行った結果、40%B条件が12%、
40%A,84%の3条件よりも評定が有意に低いことが認められた(⑨f=3.23;2.44;2.44、〃
=234/⑫f=3.32;2.47;2,40,d∫=234)。⑨の1項目のみ被験者の性とうなずきの交互作用 が有意であった。⑨では、誤差項(M∫〃=1.14)を用いてサ検定を行った結果、84%条件で女 性の被験者(M=1.88、∫D=1.07)の方が男性の被験者(〃=1.43、∫D=1.11)よりも評定 が有意に高いことが認められた(f=2.22,d∫=312)。
内省報告
評定後の内省報告で、相談内容、うなずきの量、うなずきの位置のそれぞれをどの程度考慮し たのかについて、6段階で評定させたものを5点( 考慮した )から0点( 考慮しない )まで に得点化し、全被験者の平均得点を求めれその結果、相談内容は1.81点、うなずきの量は4.45 点、うなずきの位置は4.41点てあっ㍍また、4点以上を得点した者を 考慮した者 として、
その人数の全被験者に対するパーセンテージを求めたところ、相談内容が15%、うなずきの量が 87.5%、うなずきの位置が91.3%であった。以上のことから、カウンセラーの評定を行う際に相 談内容を考慮した者はわずかであり、うなずきの量と位置についてはほとんどの被験者が考慮し たことが確認された。その他に評定の際に考慮したことの自由記述では、主に、表情(19名)、
うなずき方(17名)、姿勢・座り方(17名)、視線(15名)などがあげられている。
議 誇
はじめに、本研究で得られた共感性、純粋性、尊重性の各尺度ごとの結果について、それぞれ の評定項目ごとに得られた結果と合わせて考察する。ここで評定結果について用いる高いとか低 いという表現は、あくまでも相対的な意味においてであって、他の条件と比較した場合にのみそ のような意味をもつものである。全体の得点が低かったことについては後に考察する。
まず共感性の尺度では、うなずきが12%の条件は共感性がより高く、また40%Bの条件は共感 性がもっとも低いと評定されている。12%条件は、特に 相手の感情を理解しようとしている 、
相手のおかれた状態に合わせて話をすすめようとしている の両項目において他の条件よりも 高く評定されている。40%B条件は、 相手の話の内容を理解しようとしている の項目で、ど の条件よりも低く評定されている。項目ごとに見た場合、共感性に関する全ての項目において12
%条件で評定が高く、40%B条件で評定が低くなっている。Rogers(1957)は、共感的理解を ク ライエントの私的な世界をあたかも自分自身のものであるかのように感じとること と定義して いる。そのためには、クライエントと一緒に考えようとする姿勢や、クライエントヘの理解が重 要とされる。本研究の結果は、このような共感性をクライエントに示すためには、12%程度のう なずきを話の区切りのよい適切な位置に入れるのがよいことを示唆している。
純粋性の尺度では、12%条件で純粋性が高く、40%B条件および84%条件で純粋性が低いと評 定されている。項目ごとにみると、12%条件は、 作為的でない で他の3条件よりもより高く 評定され、40%B条件と84%条件は、 自然な態度で接している で低く評定されている。なお、
ありのままの自分を出している 、 カウンセラーであることを誇示していない といった項目 では条件による差は示されていない。純粋性は、カウンセラーとしての役割を演じるのではなく、
偽りのない自分自身を示そうとする姿勢をいう。12%程度のうなずきが区切りのよいところに入 るとき、最も作為的でなく、自然な態度を示すことができるといえる。うなずきが多い場合や、
それが喋り始めに入る場合はクライエントに不自然な感じを与えてしまう可能性がある。うなず きによって、ありのままの自分を表現したりカウンセラーであることを誇示できる範囲は非常に 限定されているが、うなずきの量やタイミングが純粋性においても評定に影響しているので、う なずきを用いる際には注意する必要があるといえる。
尊重性の尺度では、40%B条件で尊重性が低いと評定されている。特に あたたかく、思いや りをもって接している 、 価値判断をせず、相手を受容している の両項目での評定が低く なっている。また、12%条件では、 相手を人間として認め、尊重している の項目で、他の条 件よりも高い評定が得られている。84%条件については、女性の被験者の方が男性の被験者より も高く評定しており、 あたたかく、思いやりをもって接している の項目で男女の差が示され ている。尊重性とは、クライエントを評価せず無条件に受け入れる態度のことである。うなずき を喋り始めに入れることは、相手への思いやりに欠け相手を受け入れることに否定的な姿勢であ る、と受け取られるようである。12%程度のうなずきを入れることで相手への尊重と受容を効果 的に示すことができるといえよう。
以上のように、共感性、純粋性、尊重性のいずれにおいても、12%条件において評定が最も高 く、40%B条件ではもっとも低かった。12%のうなずきといっても、実際の場面でうなずきがど の程度入るのかを表現するのは難しい。ひとつの目安をあげるとすれば、今回の実験の12%条件 では50秒一70秒ほどのクライエントのメッセージに対して4回のうなずきが入れられている(表
1参照)。メッセージはかなりゆっくりと間をもって話されているが、12%条件では話の長さに かかわらず、話の内容が完全に区切られるところでうなずきが入っている。つまり、クライエン
トがひとつのまとまりのある文章を最後まで話し終えたときにうなずきが入っているのである。
このようなうなずきが、クライエントの話を最後までしっかりと聴いていたしるしとして受け取 られ、高い評価を受けたものと考えられる。また、話の続いている間にうなずきが入らなかった ことも、話によく耳を傾けていると受け取られ、評定を高めたのではないかと考えられる。反対 にうなずきが多いと、話をよく聴かず、適当にうなずいているように受け取られるのではないだ
ろうか。12%の条件は相対的にはうなずきが少ないといえるが、実際のカウンセリング場面では カウンセラーのうなずきがもっと少ない場合も多いのではなかろうかgうなずきは、話の流れを 考慮して、区切りのよいところで適度に用いられるときにカウンセラーの評価を高めるものと考
えられる。この結果は、Ke11y(1978)がアイコンタクトの研究によって得た、1つの技法を多 く用いることが即ちより効果的であるということではないという考えを支持するものである。ま た、本研究の結果から量的な問題ばかりでなく、うなずきを用いる位置やタイミングの違いが評 定に影響を与えることも考慮しなければならない。尊重性においては、被験者の性別による評定 への影響もみられており、男性と女性ではカウンセラーの非言語的行動に対する受け取り方にど のような違いがあるのかについて、さらに検討してみることも興味深い。
ところで、今回の実験では、カウンセラーは傾聴的態度としてうなずき以外にアイコンタクト を用いている。カウンセラーは終始カメラを見つめており、評定者から見ればアイコンタクトが とられているものと受け取れる。Mehrabian(1969.1970)は、カウンセラーとして重要な非言 語的行動には、ほほ笑み、うなずき、手振り、アイコンタクト、姿勢の傾き、肩の方角の6つが あると述べている。この6つを用いて研究を行ったしaCrosse(1975)は、内省報告から、カウ ンセラーを評定する手掛かりとして特にアイコンタクト、ほほ笑み、手振りが注目されたという 報告を行っている。また、Egan(1986)はカウンセラーの基本的な姿勢として、顔をクライエ ントに真直ぐに向けること、開かれた姿勢、前傾姿勢、アイコンタクト、リラックスをあげてい る。本研究の内省報告では、評定の際に考慮したものとして、うなずき方のほかに表情、姿勢、
視線が多くあげられていれ以上のことから、特にアイコンタクトや姿勢、表情がカウンセラー の態度として大きな意味をもつことが推測される。一方、本研究のカウンセラーは条件統制のた めに終始無表情で、やや後傾姿勢をとっていた。内省報告でカウンセラーの表情や姿勢、座り方 がよくないという感想がいくつかあげられているが、このようなうなずき以外の要因によって評 定が低められた可能性がある。評定値が全体としてかなり低かった最大の理由は、言うまでもな く本研究が相づち以外の言語的応答を用いていないことによると思われるが、このような条件統 制による不自然さや、役割演技の未熟さによる影響についても否定することはできない。
本研究のようにVTRを用いて評定を行わせる場合に問題となるのは、実際の面接場面におけ るクライエントの視点と、VTRで評定を行った被験者の視点が、はたして同じであると言える のかということである。本研究の内省報告によると、評定を行う際にほとんどの被験者がうなず きの量、うなずきの入る位置について考慮していたのに対して、相談内容についてはあまり考慮 していなかった。実際のクライエントであれば相談内容は自分自身の問題であり、考慮される もっとも重要なものである。このような点からも、被験者の視点は第3者の視点であるといえる。
クライエントは問題を抱えてカウンセラーに向き合うのに対して、第3者はカウンセラーの観察 だけに注意を払うことができ、両者のカウンセラー評定が同一のものであるとは考え難い。実際 のクライエントの場合は、喋り始めにう一なすきが入ることが話すことを許容するしるしとなって 話しやすく感じられたり、うなずきが頻繁に入る方が話しやすく感じられる場合もあるであろう。
カウンセリング研究において、このようなカウンセラーとクライエントが共有する、言わば主観
の世界を捉えることが必要であることは言うまでもない。とはいえ、カウンセラーだけに注意を むけた第3者の評定が示した結果についても、カウンセリング過程を研究する上では役立つもの と考えられる。第3者の視点は、言わば社会的規準であり、一般常識的捉え方を示すものと考え られる。今後とも、実践の場においてカウンセラーとクライエントの双方に受け取られる主観の 世界を探求するとともに、本研究のような第3者的立場からの研究もすすめ、両者の関係が追究
されることが期待される。
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