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野島地震断層の断層ガウジの物質解析

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(1)

中して生じたほか(嶋本,1995),淡路島北部には地震断 層が出現した(林ほか,1995;皆川ほか,1995;中田ほか, 1995;粟田ほか,1996;Lin & Uda, 1996)。この地震断 層は野島地震断層と呼ばれ,活断層とされている野島断 層(活断層研究会,1991)にほぼ一致して出現した。野 島地震断層は,淡路島北淡町江崎灯台付近から南西方向 に総延長18km にわたって断続的に連続し,南東急傾斜 (70∼90°)で南東盤上がりの逆断層成分を持つ右横ずれ 1.はじめに 兵庫県南部地震(M 7.2)は,1995 年 1 月 17 日午前 5 時 46 分に淡路島北方の明石海峡の地下14km 付近を震源と して発生し(橋本,1995;菊地,1995),淡路島北部から 対岸の神戸市,西宮市にかけて大きな被害(「阪神・淡 路大震災」)を与えた(林ほか,1995;中田ほか,1995; 太田ほか,1995)。直下型地震の影響を強く受け,特に 甚大な被害が神戸市内の帯状の範囲(「震災の帯」)に集

鈴木 果奈

・小坂 和夫

**

The Nojima fault was activated at the time of the 1995 Hyogo-ken Nambu earthquake in southwest Japan. We ana-lyzed eight fault gouge samples from the Nojima earthquake fault to delineate the morphological characteristics of cata-clastic particles in an earthquake-related fault gouge. The samples were taken from five localities: five samples from three outcrops in the Hirabayashi area, one sample from an outcrop in the Toshima area, and two core samples from a 500-m drilling which penetrated the Nojima earthquake fault at a drilling depth of 389.5 m. The analysis was performed for each lamina of foliated fault gouges, with regard to six items: mineral assemblage, clay particle-size distribution, sub-microscopic fractography of quartz particles, quartz and feldspar particle-size distribution, degree of particle roundness, and fractal dimensions of quartz and feldspar particles.

According to the correlation diagram for the six items, the fault gouge laminae can be classified into three types, type-A to type-C, which can be related to lapsed time after the latest fault movement and the mode of recurrence of fault activity. Among the three types, the type-A laminae are unconsolidated fault gouges characterized by the following features: (1) lack of original mica and hornblende and existence of secondary kaolinite, montmorillonite, laumontite, stil-bite and calcite, (2) unimodal particle-size distribution, (3) abundant fresh conchoidal fracture surfaces of quartz parti-cles, (4) many particles less than 10 microns in size, (5) rather poor roundness of partiparti-cles, and (6) rather higher fractal dimensions of 1.09 to 1.14 of quartz and feldspar particles. The type-A laminae occur in one sample from Hirabayashi and possibly in two core samples. They can be considered to be possible displacement surfaces at the time of the 1995 Hyogo-ken Nambu earthquake.

The Nojima earthquake fault has been active, and the displacements occurred repeatedly along laminae inside the gouge zones. Three types of laminae formed through grinding inside the gouge zones, with different characteristics due to the lapsed time after each successive fault movement.

Keywords : 1995 Hyogo-ken Nambu earthquake, Nojima fault, fault gouge, fractography, boring core

野島地震断層の断層ガウジの物質解析

Analysis of Fault Gouge Materials of the Nojima Earthquake Fault, Japan

Kana SUZUKI

and Kazuo KOSAKA

**

(Accepted November 11, 2016)

 * Graduate School of Science and Technology, Nihon University

Present address: GYOSEISHOSHI SUZUKI OFFICE: Full Cast Building 5F 7F, 2-6 Sakuragaoka-cho, Shibuya-ku, Tokyo 150-0031, Japan

** Department of Earth and Environmental Sciences, College of Humanities

and Sciences, Nihon University: 3-25-40 Sakurajosui, Setagaya-ku, Tokyo, 156-8550, Japan

日本大学大学院理工学研究科 現在:鈴木行政書士事務所:

〒150-0031東京都渋谷区桜丘町2-6,フルキャストビル5F・7F

**日本大学文理学部地球科学科:

(2)

断層で,幅約50m の断層破砕帯を持つ(林ほか,1995; Lin & Uda, 1996;Lin et al., 2001)。これらの断層破砕帯 には明瞭な葉層(ラミナ)を有する断層ガウジ(foliated fault gouge)が発達している。断層ガウジには地殻浅所 における断層の変形環境および物質環境を明らかにする 上で重要な情報が含まれている。 本研究では,断層ガウジの物質科学的特性を明らかに することを目的として,最大の断層変位量を示した野島 地震断層北部の平林地区および明瞭な地表地震断層の最 南端に位置する富と島しま地区で(林ほか,1995)採取した試 料,および,「断層解剖計画」(安藤ほか,1998)による 富島地区における掘削深度約500m のボーリングのコア 試料を対象として,各試料を数mm幅の葉層に分け,各 葉層ごとにX 線回折による鉱物同定,粒度分析,石英粒 子表面構造解析,石英・長石粒径分布評価,円磨度評価, およびフラクタル次元解析を行った。その結果,3 つの 型が識別され,そのうちの1 つの型が兵庫県南部地震時 の断層変位に関連する可能性が認められたので,その詳 細を報告する。 2.試料の特徴 淡路島北部は主に基盤岩の領家花崗岩類からなり,そ れを不整合に覆う神戸層群に属する中新統岩屋累層が分 布する(池辺,1961;藤田・前田,1984)。領家花崗岩類 と神戸層群を不整合に覆って,鮮新世̶前期更新世の非 海成の大阪層群(仮屋累層, 富島累層)が分布する。断 層沿いの低地では,後期更新世以降の段丘堆積物と沖積 層が堆積している。野島断層は領家花崗岩類と神戸層群 もしくは大阪層群とを境する断層で,その平均変位速度 は,右横ずれ方向で0.9 ∼ 1.0m /千年,鉛直方向で 0.4 ∼0.5m /千年とされている(水野ほか,1990;林ほか, 1995)。 解析に供した試料は平林地区の3 地点および富島地区 の1 地点から採取し,それらを順に A,B,C,および D とした(図1)。各試料の特徴を表 1 に示す。A 試料は兵 庫県南部地震の際に動いた断層面で採取した葉片状断層 ガウジで,重冨・林(1999)が詳しく解析した試料と同 136° 35° 京都 四国 淡路島 小豆島 神戸 ←野島断層

平林地区

豊島地区

淡路島

野 島 断 層

A試料 C試料 B試料 D試料 500m ボーリング    サイト

明 石 海 峡

2 km 135° 34°36’ 明石 コア試料 図1 野島断層の断層ガウジ試料の採取地点 ●:採取地点(淡路島内の5地点) 表1 断層ガウジ試料の特徴(A試料1個,B試料1個,C試料3個,D試料1個,コア試料2個,合計8個) 採取地区 採取試料名 産状 解析対象の状態 層の区分 特徴 平林地区 A試料 野島地震断層の露頭 断層ガウジ 第1, 2, 3, …, 9層 葉片状断層ガウジで, 厚さ数mmの明瞭な層構造をもつ. 第1∼3層は黒色・細粒で硬い脈状. 薄片(水平断面) 第1, 2, 3, …, 9層 断層ガウジ試料の水平断面. B試料 野島地震断層の上盤側露頭 断層ガウジ 第1, 2, 3層 微小な角状破片を含む断層ガウジで,層構造をもたない. 薄片(水平断面) 領域 a, b, c 断層ガウジ試料の第2層の水平断面 薄片(鉛直断面) 領域 a, b, c 断層ガウジ試料の第2層の鉛直断面 C試料 (Nos. 1, 2, 3) 野島地震断層の 断層に沿う数m ごとに3箇所 薄片(No. 1) 領域 a, b, c, …, h 脈状,細粒の黒色硬化ガウジで,流理構造様の葉層構造をもつ. 薄片(No. 2) 領域 a, b, c, …, h 脈状,細粒の黒色硬化ガウジ. 薄片(No. 3) 領域 a, b, c, …, g 脈状,黒色細粒の硬化ガウジ. 富島地区 D試料 薄片 領域 a, b, c 断層ガウジ(細粒成分が多い) コア試料 ボーリングコア (1および2回目 掘削) 薄片(No. 1) 領域 a, b, c, d, e 断層ガウジ 薄片(No. 2) 領域 a, b, c 断層ガウジ

(3)

A

B

C

D

H

G

F

E

写真1 試料採取地点の露頭 A,B :平林地区A試料採取地点(A:遠景,B:近景)  C,D:平林地区A試料(C:上から撮影,D:横から撮影) E,F :平林地区B試料採取地点(E:遠景,F:近景) G,H:平林地区B試料(G:上から撮影,H:横から撮影)

(4)

一箇所から採取した(写真1A ∼ D)。粘土状の細粒な基 質部が多く,主に色の違いで識別される断層面と平行な 層状構造が発達している。厚さ数mm の 9 層に明瞭に分 かれており,北西側(花崗岩との境界面から離れた側) から第1, 2, 3, ..., 9 層とした(図2)。水平断面の薄片を作 成し,断層ガウジ試料と対応するように第1, 2, 3, ..., 9 層と符号をつけた(写真2A)。B 試料は兵庫県南部地震 の際に動いた断層面近傍の上盤側地表露頭で採取した (写真1E ∼ H)。微小な角状の破片(angular fragment)

を含む未固結の断層ガウジであり,風化して非常にもろ くなっている。A 試料に比べて基質部が少なく角状の破 片が多い。また,A 試料に見られるような層構造を持た ないため,便宜的に北西側から数cm 幅の第 1, 2, 3 層に 分けた。層構造を持たないため,第2 層の一部では水平 断面と鉛直断面の計2 枚の薄片を作成し,断面の方向の 影響に配慮した。粒径や色の違いからそれぞれの薄片の 内部領域についてa, b, cと符号をつけた(写真2B)。 C試料,D試料,コア試料は薄片のみである(表1)。C 試料はガラス質で緻密な脈状を呈し,灰∼黒色の暗色部 と透明感のある明色部の数mm幅の葉層からなる黒色で 硬化したガウジである。断層に沿う数m ごとに 3 箇所で 試料を採取して,それぞれ薄片No.1, 2, 3 とした。薄片 内の明暗の色調が異なる領域ごとにa, b, c, ... と符号を つけた。C 試料の薄片 No.1 には層構造が見られる(写真 2C)。D 試料は,粒径や色の違いから領域 a,b,c と符号を つけた(写真2D)。コア試料は1回目,2回目ボーリング による掘削深度約389m の断層破砕帯の一部から,薄片 No.1, 2を作成し,粒径や色の違いから内部領域にa ∼ e の符号をつけた。このように,A,B,C,D,コア試料の 計9枚の薄片の49層(以下,領域を含む)についてそれ ぞれ石英・長石粒径分布評価,円磨度評価,フラクタル 次元解析を行った。これらの中には黒色・細粒・脈状で 硬くシュードタキライト様の特徴を呈する葉層もある が,それらも含めて解析の対象とした(A 試料の第 1, 2, 3層,C試料Nos.1,2,3の一部:表1)。なお,コア試料 に見られる断層岩の産状および特徴に関しては,田中ほ か(1998),林ほか(1999),小坂・市川(2001)に詳細 が記述されている。 3.分析方法 3.1 断層ガウジ試料 鉱物組成:メノウ乳鉢で粉砕した全岩分析用粉末試料 (不定方位)および粘土鉱物同定用粉末試料(半定方位) をX 線回析装置(島津:XD-3C)にかけて,鉱物同定を 行った。 粒径分布:光透過式粒度分析器(島津:SA-CP-20)を 用いて粒度分析を行った。断層ガウジ試料および分散剤 (ヘキサメタリン酸ナトリウム)を投入した液を超音波 洗浄器によってよく撹拌し,分析用懸濁液とした。測定 誤差を評価するため,各試料それぞれ2 回ずつ測定を 行った。得られた分析結果は両対数グラフ上に累積曲線 の形で示されるが,この形のままでは粒径分布,最頻値, 分散などを直接的に知ることが困難であるため,累積曲 線から粒径頻度曲線を求めた(金折ほか,1980)。この分 析は約50μm以下の粒子を対象とするため,主にシルト・ 粘土のサイズの粒径分布を求めることになる(図3)。 石英粒子表面構造:走査型電子顕微鏡(日本電子: JED-2000S)を用いて石英粒子表面構造を観察した。試 料調整手順は次の通りである:(1)4 φ∼ 2 φメッシュ の篩を用いて断層ガウジ試料を湿式で洗い,粒径47 ∼ 250μm の 粒 子 を 選 び 出 す。(2) こ の 試 料 数 10mg を 50ml 程度の過酸化水素水(含量 28%)につけて 10 分程 度温め,超音波洗浄器にかけて汚れを取り除き,60℃で 乾燥させる。(3)実体顕微鏡を用いて粉末状の鉱物から 石英粒子だけを選び出しガラス板の上に粘着させ,実際 に石英であるか否か,内装されているエネルギー分散型 X線検出器(EDS)によって確認する。 このようにして調整した石英粒子を350∼1500倍で観 察した。石英粒子表面構造の識別法は,金折ほか(1978), Kanaori et al.(1980)によった。それによると,石英粒 子表面構造は,その表面のなめらかさ,起伏の程度,空 北西 5 cm 南東 北東 南西 図2 A試料のスケッチ(水平断面) (写真1A ∼D,2A参照)

(5)

II類は部分的になめらかな面を持つこと,III類はなめら かな面を完全に持たなくなり起伏が大きいこと,IV類は 著しく空洞が発達していることにより特徴づけられる。 さらに詳しく,Ia類(亜貝殻状),Ib類,Ic類(ミカン皮 状),II類(鱗片状),II類(苔状),III類(鍾乳状),III類(虫 食い状),IV類(おう穴状),IV類(さんご状)の9種類の 洞の発達状態から判断して,単純な構造を示すものから 次第に起伏が大きくなりさらに空洞を生ずるような複雑 な構造を示すものまで,I ∼ IV 類に分けることができ, 断層運動に伴って破断面が形成されてからの溶食の進行 の程度,ひいては,活動時期の推定に利用できることが 期待される。I 類は石英表面がなめらかな面を持つこと, 写真2 薄片写真 A:A試料(水平断面)(図2参照)第1∼9層は主に色の違いから識別した断層面と平行な葉層(写真幅約6cm) B:B試料第2層(水平断面) a, b, cは粒径や色の違いから識別した領域(写真幅約2cm) C:C試料No. 1(断面の方向は任意)a ∼hは色や組織の違いから明瞭な葉層(写真幅約2.5cm) D:D試料(断面の方向は任意) a, b, cは粒径や色の違いから識別した領域(写真幅約1mm)

h

(6)

構造が識別される(金折,1981;Kanaori, 1983)。 3.2 薄片 石英・長石粒径分布:断層ガウジ試料の粒度分析はシ ルト・粘土の粒径分布を求めているのに対し(図3),こ こでは薄片という断面における主に石英・長石粒子の粒 径分布を求める。石英・長石粒子の粒径の測定は,偏光 顕微鏡(2.5×40倍)でネガフィルムに撮影した写真を3 倍程度で印画紙に焼きつけ,粒子の輪郭をトレ−スして 300倍程度のトレ−ス図とし,画像解析ソフト(NIH im-age)を用いて行った。粒子に外接する楕円の長軸を最 大粒径(A)とし,楕円の短軸を最小粒径(B)とする。 粒径としては最大粒径と幾何平均粒径(

AB)を用いる。 測定結果は両対数グラフ上に累積頻度図の形で示した。 測定の偏りをなくすために,トレ−ス図上で幾何平均粒 径が5μm 以上の全ての粒子について粒径の測定を行っ た。 円磨度:石英・長石粒径分布の測定で用いたトレ−ス 図を用いた。測定誤差を最小限にするためトレ−ス図に ある最大粒径20μm以上の全ての粒子を測定した。円磨 度の測定はWadell(1932)の計算による方法(公文・立 石,1998)のほか,円磨度印象図(Krumbein, 1941)を用 いて破片または粒子の形状と見比べて円磨度を求める方 法(林,1997:Lin, 1999)も用いた。円磨度は0∼1の値 をとり,値が大きいほど粒子は角がとれて丸みを帯びる。 フラクタル次元:本研究で作成した薄片では,石英・ 長石粒子の面積と周囲長との関係を両対数グラフ上にプ ロットすると,プロットされた点が直線状に並ぶ。この ことは石英・長石粒子が面積と周囲長との関係に関して フラクタルであることを示している(高安,1986)。この た め, 粒 子 の 面 積 と 周 囲 長 と の 間 の 関 係 式(fractal length-area relation, Mandelbrot,1977, pp. 110-111;「測 度の関係より求める方法」,高安,1986,p. 18); (面積)1/2 ∝(周囲長)1/D にしたがって,フラクタル次元Dを求めることができる。 具体的には,平面図形の面積と周囲長とを両対数グラフ 上にプロットし,最小自乗法で求めた回帰直線の傾きの 値を2倍して石英・長石粒子のフラクタル次元Dを求めた。 4.分析結果 4.1 断層ガウジ試料 鉱物組成:A 試料と B 試料とについて鉱物同定を行 なった。その結果,2 つの型の鉱物組成が識別された。 一つは石英,正長石,斜長石のみが認められる型(以下, 仮に石英長石型と呼ぶ)(A 試料の第 1 ∼ 3 層)で,他は 石英,正長石,斜長石のほかにカオリナイト,モンモリ ロナイト,ローモンタイト,方解石が認められるタイプ (以下,仮に粘土沸石型と呼ぶ)(A試料の第4∼9層,B 試料の第1 ∼ 3 層)である(表 2)。A 試料の第 4 ∼ 9 層で はスティルバイトも認められる。 粒径分布:A 試料の第 1 ∼ 3 層は黒色硬化ガウジであ 全岩 Qtz, Cy ==================== 粘土 Cy ================ Cy ==================== Qtz ========= Qtz + Fel =========== Qtz + Fel =========== Qtz + Fel =========== 1000μm 薄 片 ガ ウ ジ 1μm 10μm 100μm 粒径分布 石英表面 石英-長石粒径 円磨度 フラクタル次元 鉱物組成 図3 解析項目ごとの解析対象粒子サイズ

Qtz = Quartz Fel = Feldspar Cy = Clay

表2 A,B試料の鉱物組み合わせ 量比は多い順に○,△,×(検出限界以下を含む).「中軸部」欄はガウジ部を含む. 「モンモリロナイト」欄はスメクタイト族を含む. 新鮮な 花崗 閃緑岩 上盤側 中軸部 下盤側 A試料 B試料 1, 2, 3層 4 ∼9層 1, 2, 3層 石英 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 正長石 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 斜長石 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 黒雲母 ○ × × × × × × 角閃石 △ × × × × × × カオリナイト △ △ △ △ × △ △ モンモリロナイト × △ △ × × △ △ ローモンタイト × △ △ △ × △ △ スティルバイト × × △ × × △ × 方解石 × △ × × × △ △ (小林他,1998) (本研究)

(7)

を行なった。その結果,3 つのタイプが識別された。第 一のタイプは粒径が10 ∼ 20μm以下の領域で粒径分布 曲線の傾きが明瞭に水平になっているもので(「下限 型」),A試料の第1∼3層,C試料のNo.1,2のそれぞれa, b,c,...,h 層,C試料のNo.3のb ∼e,g 層の黒色硬化ガ ウジ部分がこれに相当する(図6A)。第二のタイプは粒 径が10 μm以下の領域で粒径分布曲線の傾きがやや水 平方向に変化するもので(「亜下限型」),A試料の第7層, B試料の第2層,D試料のa ∼c層がこれに相当する(図 6B)。第三のタイプは粒径分布曲線が 10μm以下の領域 まで直線に近いもので(「非下限型」),A試料の第4 ∼6, 8,9層,C試料のNo.3のa,f層,コア試料のNo.1,2の各 層がこれに相当する(図6C)。 円磨度:9 つの薄片すべてについて分析を行なった。 その結果,3 つのタイプが識別された。第一のタイプは 粒子が丸みを帯びており0.4∼0.9という高い円磨度を示 すもので(「高円磨度型」),A試料の第1∼3層,C試料の No.1,2 のそれぞれ a,b,c,...,h 層(図 7),C 試料の No.3のb,c,d,e,g層の黒色硬化ガウジ部分がこれに 相当する(図8A)。第二のタイプは粒子がやや丸みを帯 びており0.3 ∼ 0.7 程度の円磨度を示すもので(「中円磨 度型」),A試料の第7層,B試料の第2層,D試料の領域a, b,c がこれに相当する(図 8B)。第三のタイプは 0.1 ∼ 0.4 の低い円磨度を示すもので(「低円磨度型」),A 試料 の第4,5,6,8,9層,C試料のNo.3 の領域a,f,コア試 料のNo.1,2の各領域がこれに相当する(図8C)。 フラクタル次元:9 つの薄片すべてについて分析を行 り,硬くて分析できない。A試料の第4∼9層およびB試 料の第1 ∼ 3 層について分析を行なった。その結果,い ずれも0.5μmないし1μm∼50μmの粒径範囲で分布し, 粒径頻度曲線はA試料の第7層が6 ∼9μmに顕著な谷を もつバイモーダルの分布を示す(「バイモーダル型」)ほ かは,すべてほぼユニモーダルの分布を示す(「ユニモ −ダル型」)(図4)。 石英粒子表面構造:A 試料の第 1 ∼ 3 層は黒色硬化ガ ウジであり,硬くて分析できない。A試料の第4∼9層お よ びB 試 料 の 第 1 ∼ 3 層 の 各 層 か ら 120 粒 ず つ, 合 計 1080 粒の石英粒子を観察した。第 7 層を除く A 試料の各 層の石英は,なめらかなIa類(亜貝殻状:写真3A)を示 す表面構造が多い。特に第6 層は,ほぼ全ての石英粒子 にIa類(亜貝殻状)を示す表面構造が観察される(「Ia類 卓越型」)(写真3A,B)。A 試料の第 7 層の石英粒子は破 片状であり,Ic類(ミカン皮状:写真3C))を示す表面構 造が多い(「Ic 類卓越型」)。B 試料は第 1 ∼ 3 層で違いは 見られず,Ic類(ミカン皮状)を示す表面構造が多い(「Ic 類卓越型」)。このほか,II∼IV類の表面構造も認められ る(写真3D ∼ H)。すべての観察結果を図5 に示す。ほ とんどの石英粒子には,1 つの粒子に明らかに異なる種 類に分類される表面構造が識別される(写真3I)。また, 出現頻度は低いがディンプル(dimple)と呼ばれる多数 の小さいくぼみや,リバー・パターン(river pattern)と 呼ばれる川の流れに似た模様,ストライエーション (striation)と呼ばれる縞模様が観察される(写真 3J)。 石英粒子の角に断口や,石英粒子表面に付着する微小な 物質も認められる(写真2K,L)。これらの模様は特にA 試料中のIa(亜貝殻状)を示す粒子に見られる。 4.2 薄片 石英・長石粒径分布:9 つの薄片すべてについて分析 0.1 1 10 100 0 5 10 15 20 25 30 重 量 % 粒径(μm) A4層 A5層 x x x x x x x x x x x x x x A6層 A7層 A8層 Δ Δ Δ Δ Δ Δ Δ Δ Δ Δ Δ Δ ΔΔ Δ A9層 (個) Ia 亜 貝殻状 Ib Ic ミカ ン皮状 II 鱗片 状 II 苔状 III 虫喰状 III 鍾乳状III IV 甌穴状 IV サ ンゴ状 図4 断層ガウジ試料の粒径分布 (A試料第4∼9層の例) 図5 石英粒子表面構造のSEM像解析結果

(8)

Ia 類:亜貝殻状 Ib 類 Ic 類:みかん皮状 II 類:鱗片状 II 類:苔状 III 類:鍾乳状 III 類:虫食い状 IV 類:さんご状 Ia 類 1b 類 1c 類 II 類 ストライエーション 粒子角の断口 石英粒子表面に 付着する微小粒子 写真3 石英粒子表面のSEM像 A ∼H:石英粒子表面の溶食の程度を表す.A,BはA試料第6層.CはA試料第7層からの石英粒子. I:   一つの石英粒子表面に多様な溶食の程度を示す面がある例. J ∼L: 断層運動の破壊様式に関係する表面構造の例.

(9)

A B C

幾何平均粒径

幾何平均粒径

幾何平均粒径

cumulative number

grain size (μm) grain size (μm) grain size (μm) ←C試料 No.2, No.3 B試料2層 A試料7層→ D試料→ コア試料 A試料4層→ C試料No.3→ コア試料→ ←C試料 No.1 A試料1,2,3層 図6 石英・長石粒径分布

A:10∼20μm以下の領域で粒径分布曲線の傾きが明瞭に0に近付くタイプ( A試料第1∼3層, C試料No.1,No.2, C試料No.3のb∼e,g層) B:10μm以下の領域で粒径分布曲線の傾きがやや緩やかになるタイプ( A試料第7層, B試料第2層, D試料a∼c層) C:10μm以下の領域でも粒径分布曲線の傾きが変化しないタイプ( A試料第4∼6,8,9層,C試料No.3のa,f層,コア試料No.1,No.2) (コア試料については,小坂・市川(2001)第2図参照) 0.5mm 図7 トレース図の例「高円磨度型」 (C試料No. 1のb領域)

A

円 磨 度

C

円 磨 度

B

円 磨 度 図8 薄片による円磨度の評価結果 A:0.4∼0.9が卓越する層(領域).B:0.3∼0.7が卓越する層(領域).C:0.1∼0.4が卓越する層(領域).

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なった。その結果,大きく2 つのグループに分かれたが (図9),これを 3 つのタイプに区分した。第一は 1.00 ∼ 1.03のフラクタル次元を示すもので(「低次元型」),A試 料の第1∼3層,C試料のNo.1,2のそれぞれa,b,c,... , h層,C試料のNo.3のb,c,d,e,g層の黒色硬化ガウジ 部分がこれに相当する。第二は1.03∼1.06のフラクタル 次元を示すもので(「中次元型」),A 試料の第 7 層,B 試 料の第2層,D試料のa,b, c層がこれに相当する。第三 は1.09 ∼ 1.14 のフラクタル次元を示すもので(「高次元 型」),A試料の第4,5,6,8,9層,C試料のNo.3のa,f層, コア試料のNo.1,2の各層がこれに相当する。 5.考察 5.1 断層ガウジ試料 鉱物組成:鉱物同定を行った12の葉層は「石英長石型」 か「粘土沸石型」に識別される(表3)。共に,石英,正 長石,斜長石が認められ,黒雲母・角閃石が認められな A試料 第1~9層 1.03 1.03 1.03 1.12 1.12 1.13 1.06 1.10 1.10 水平面a~c層 1.03 1.03 1.05 鉛直面a~c層 1.05 1.04 1.05 No.1;a~h層 1.00 1.01 1.00 1.02 1.02 1.01 1.00 1.01 No.2;a~h層 1.00 1.01 1.01 1.01 1.00 1.01 1.03 1.01 No.3;a~g層 1.10 1.01 1.02 1.00 1.03 1.10 1.01 D試料 a~c層 1.05 1.05 1.05 コア No.1;a~e層 1.11 1.11 1.09 1.12 1.11 コア No.2;a~c層 1.10 1.14 1.09 B試料 C試料 1.00~1.01~1.02~1.03~1.04~1.05~1.06~1.07~1.08~1.09~1.10~1.11~1.12~1.13~1.14~ フラクタル次元 頻 度 10 0 図9  薄片で見られる石英・長石粒子の面積と周囲長とに関 するフラクタル次元 表3 断層ガウジ解析の結果 地区 試料と解析対象 状態 断層ガウジ 薄片 タイプ 分け 凡例 鉱物 組成 粒径 分布 石英粒子 表面構造 石英・長 石粒径 分布 円磨度 フラクタ ル次元 ○ 石英 長石型 U ユニモーダル ○ 下限あり ○ 0.4 ∼0.9 ○ 1.00 ∼1.03 △ 粘土 沸石型 B バイモーダル △ 下限ややあり △ 0.3 ∼0.7 △ 1.03 ∼1.06 × 下限なし × 0.1 ∼0.4 × 1.09 ∼1.14 × × × A △ △ △ B ○ ○ ○ C 平林 A試料 第1 ∼3層 ガウジ 薄片  固結 ○ * * ○ ○ ○ C 第4 ∼6層 第8 ∼9層 非固結 △ U Ia型 × × × A 第7層 非固結 △ B Ic型 △ △ △ B B試料 第1層 ガウジ 非固結 △ U Ic型 * * * 第2層 ガウジ 非固結 △ U Ic型 * * * 薄片 (水平,鉛直)非固結 - * * △ △ △ B 第3層 ガウジ 非固結 △ U Ic型 * * * C試料 No. 1 a層∼h層 薄片  固結 - * * ○ ○ ○ C No. 2 a層∼h層 薄片  固結 - * * ○ ○ ○ C No. 3 a層 薄片 - - * * × × × A b層∼e層 g層 薄片  固結 - * * ○ ○ ○ C f層 薄片 - - * * × × × A 富島 D試料 a層∼c層 薄片  固結 - * * △ △ △ B コア 試料 No. 1 a層∼e層 薄片 非固結 - - - × × × A No. 2 a層∼c層 薄片 非固結 - - - × × × A *:分析不可能.-:未分析.

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れに基づいてGaudin-Schuhmann の粒度分布式から破砕 度の定量的な見積りが提案されている(長濱,1991; Nagahama, 1991)。本研究で認められる「IV 型粒径頻度 曲線」や第7 層のバイモーダル分布の解釈にはなお多く の課題が残されている。 石英粒子表面構造:断層破砕帯中に含まれる石英粒子 の破断面は断層活動により形成され,破断面形成後は地 下水や雨水などの作用により溶解が進行する(例えば, Kanaori, 1985)。環境条件に大きな差がない場合,石英 表面の起伏の程度は破断面が形成してから後の経過時間 に関連しており,起伏量が大きいほど長い期間にわたっ て溶解を受けたことを示している(金折ほか,1978, 1981;金折,1981)。A,B試料では共に石英粒子が異なっ た類(I,II,III,IV類)に属する表面構造を示している(図 5,写真 3)。このような特徴は他の断層でも報告されて いる(金折ほか,1978;金折,1981:Kanaori, 1983)。特 にIa,Ib,Ic,II類が多いことは第四紀に断層の活動が繰 り返してあったことを示し,さらにIII,IV類があること は断層の活動が中新世以前にまで遡る可能性を示唆して いる(金折,1981:Kanaori, 1983;金折ほか,1986)。断 層破砕帯は繰り返す断層活動の結果として形成されるこ と(Ogata, 1976)の表れと考えられる。A試料の第6層は, ほぼ全ての石英にIa類(亜貝殻状)を示す表面構造が観 察される「Ia類卓越型」で,阿寺断層からも類似例が報 告されている最新の活動を示すもので(金折,1981; Kanaori, 1983),兵庫県南部地震を含めて現在に近い地 質時代にくり返して動いた可能性が高い。 A試料の第4, 5,8,9層も「Ia類卓越型」であり,これに比べ,「Ic類 卓越型」であるA試料の第7層,B試料の第1∼3層(図5) は最後の断層運動が起こってからの経過時間がそれらに 比べて長いと思われる(表3の「Ia」,「Ic」)。 金属材料の破断面には破壊の進行状況を示す特徴的模 様が残されており,これを解析することにより破壊機構 や破壊の原因を調べるフラクトグラフィ(fractography ; 破面解析)が行われている(小寺沢,1981)。金属と石英 という材料の違いを考慮しなければならないが,石英の 表面構造を破面解析することにより,断層運動の破砕様 式を知ることができる(金折ほか,1982)。破壊の種類と して延性破壊,脆性破壊,疲労破壊がある。破断面に認 められるディンプルは延性破壊に,リバー・パターンは 脆性破壊に,ストライエーション(写真3J)は疲労破壊に, それぞれ起因する(金折ほか,1982;Kanaori, 1983)。ス トライエーションは繰返し応力の1 サイクルごとに形成 される(北川・小寺沢,1972:西田,1998)。出現頻度は 低いが,石英表面にディンプルも観察される。これに関 い 点 で 野 島 断 層 中 軸 部 の 断 層 岩 の 特 徴( 小 林 ほ か,

1998;宇田ほか,1998;Fujimoto et al., 2001; Matsuda et al., 2001; Tanaka et al., 2001)と類似または一致する。こ の特徴に加えて,野島断層の上盤では,カオリナイトと スメクタイト(モンモリロナイト),ローモンタイトと スティルバイト,方解石が報告されている(小林ほか, 1998;Fujimoto et al., 2001; Tanaka et al.,2001)。小林 ほか(1998)と比較すると,A試料(第4∼9層)はスティ ルバイトを含む破砕帯中軸部(断層ガウジ帯を含む)の 鉱物組み合わせと,B試料(第1∼3層)は同じく破砕帯 上盤側の鉱物組み合わせと類似しており(表2),「試料の 特徴」で述べたA試料,B試料の産状(表1)に一致する。 粒径分布:断層ガウジの粒径分布は断層破砕帯内の剪 断運動に伴う力学的破砕による細粒化や風化による細粒 化に依存しており,主断層からの距離や断層活動の時間 経過に関係すると考えられている(金折ほか,1980:長 濱,1991)。 断層ガウジの粒径頻度曲線については,次のような経 過が考えられている(金折ほか,1980)。すなわち,断層 形成時,つまり母岩が破砕した時の断層ガウジの粒径頻 度曲線は,1mm 付近にピ−クを持つユニモーダルの分 布(I型粒径頻度曲線)を示し,次に再活動が起こったと すれば限られた部分に細粒化が起こることが予想され, 粒径頻度曲線はバイモーダルの分布(II型粒径頻度曲線) を示す。断層破砕帯で解離や変質が進行すると細粒部が 多くなるため,緩やかな波型を有し特別なピークを示さ なくなる(III型粒径頻度曲線)。最終的には3∼10μmに ピークを持ち穏やかに粗粒側に傾斜すると推定される (IV型粒径頻度曲線)。 兵庫県南部地震に伴い野島地震断層が活動した部分か ら採取したA試料では第4,5,6,8,9層では0.5μm程度 の細粒な粒子をもち,粒径頻度曲線はユニモーダルであ り,モードが10 ∼ 20μm とやや大きめではあるが,金 折ほか(1980)の「IV型粒径頻度曲線」に近い分布を示 し,再活動などの力学的作用と風化などの化学的作用と が繰り返されてきたことを示唆している。しかし,断層 ガウジの粒径分布に関しては,「5 ミクロン付近および 1 ミ ク ロ ン 付 近 に ピ ー ク を も つ 分 布 」( 垂 直 応 力10 ∼ 110MPaにおける花崗岩・砂岩の摩擦すべり実験)(II型 粒径頻度曲線に対応)に基づいて既存ガウジの再破壊に よる細粒化が示唆されている(吉岡,1984)。また,「高 いピークを示すような特定のモードはみられず,粗粒部 から細粒部にわたる広い範囲の粒径分布組成」(粒径 1mm ∼1μmについての跡津川断層(天生)における測 定例:福島ほか,1984)(III型粒径頻度曲線に対応)やこ

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全8試料49層に認められる円磨度の相違は,溶解の相違 に起因すると考えられる。溶解の進行を反映していると 考えられる0.4∼0.9の円磨度を示す「高円磨度型」(表3 「○」)は断層運動が起こってからの経過時間が長く,ま たは,シュードタキライトの熔融成因を反映した表面溶 融(林,1997)との比較も重要である。0.1∼0.4の円磨度 を示す「低円磨度型」(表3「×」)は断層運動が起こって からの経過時間が短いと思われる。実際,ESR信号測定 によりコア試料No.2 の b 層の部分は兵庫県南部地震の 際に動いたことが示されている(福地,1998)。 フラクタル次元:本研究で求めたフラクタル次元D は,その値が小さいほど粒子表面がなめらかで溶解が進 行したことを示し,大きいほど粒子表面は複雑であるこ とを示している。フラクタル次元D は断層運動による破 壊や溶解に関係していると思われる。1.00 ∼ 1.03 のフラ クタル次元を示す「低次元型」は断層運動が起こってか らの経過時間が長く,1.09 ∼ 1.14 のフラクタル次元を示 す「高次元型」は断層運動が起こってからの経過時間が 短いと思われる。実際,「高次元型」であるコア試料 No.2のb層は,ESR信号測定により兵庫県南部地震で動 いたことが示されている(福地,1998)。 6.まとめ 6.1 分析項目に着目したまとめ (1)鉱物組成:A試料の全9層,B試料の全3層につい て,2つのタイプが識別された。「石英長石型」の層は粉 末X 線回折チャート上で石英,正長石,斜長石のみが認 められる。「粘土沸石型」の層は石英,正長石,斜長石 のほか,沸石(ローモンタイトとスティルバイト(±)), 粘土鉱物(カオリナイトとモンモリロナイト),炭酸塩 鉱物(方解石)が認められる(表2)。この結果は野島地 震断層に関する多くの報告と一致する。 (2)粒径分布:A試料の第4 ∼6,8,9層,B試料の第1 ∼3層は5μm∼20μmになだらかなモードをもつ「ユニ モーダル型」分布を示し(図4),破砕帯中軸部において 繰り返し変位を受けてきた特徴を示している。A 試料の 第7 層のみは「バイモーダル型」分布を示し,この層は 石英粒子表面構造,石英・長石粒径分布曲線,円磨度, フラクタル次元はいずれについても最近の活動の特徴を 示さないことが注目される。 (3)石英粒子表面構造:A試料の第4∼9層,B試料の 第1∼3層には,「Ia類卓越型」および「Ic類卓越型」が 識別された。兵庫県南部地震で変位を生じた断層面で採 取したA試料の石英粒子表面構造は Ia類(亜貝殻状)を 示すものが多く(図5),この断層面より数m程度離れた 連しては,脆性破壊面に延性破壊の特徴であるディンプ ルがしばしば認められることが報告されている(西田, 1998)。 石英表面に付着している微小な物質(写真3L)は,南 カリフォルニアのChristianitos 断層の石英粒子表面に存 在する球状物質(Swain & Jackson,1976)や,すべり摩 擦試験で生じた断層ガウジ中の球状物質に似ている (Moody & Hundley-Goff, 1980)。断層に伴う剪断面には ナノサイズの球状物質も報告されており(Sun et al., 2008a, b),それらとの関連も注目される。 5.2 薄片 石英・長石粒径分布:「下限型」の粒径分布(表3 の 「○」)や「亜下限型」の粒径分布(表3の「△」)は,10∼ 20μm以下の小さい粒子がほとんど含まれていないこと を示している。これは数μm 以下の細粒の粒子の溶解の 進行による消失を示すと考えられる。本稿で黒色硬化ガ ウジとして言及したものの内,「石英長石型」で「下限型」 のものは,シュードタキライトの形成(例えば,長濱ほ か,1994;嶋本・長濱,1991)との関係でも注目される。 「非下限型」の粒径分布(表3の「×」)では,10μm以下 の領域でも羃べき乗則が成り立っており,粉砕起源の断層岩 の特徴を示している。 「断層解剖計画」による野島地震断層500m掘削ボーリ ング2 本目のコア試料のESR 信号測定から,断層面から 離れた試料のESR 信号スペクトルが検出され,これら の信号が断層近傍数mmでは減少していることが確認さ れ,断層面を中心として温度が上昇した結果であると解 釈されている(福地,1998)。つまり,兵庫県南部地震で はリセットされた数mm幅のところで野島地震断層が動 いたことを示唆している。この場所は,分析した試料中 ではコア試料No.2 の b 層にあたる。このことはコア試 料の石英・長石粒径分布曲線が粉砕起源を示す「非下限 型」であることと矛盾しない。ただし,コア試料は薄片 のみであり(表1),石英粒子表面構造解析は行っていな い。 これらの事実は,数mm幅の層ごとに溶解や破壊の経 歴が違うことを示しており,既に指摘されているように (Kosaka and Sawada, 1985),断層ガウジ解析において は葉層の1 層ごとに別々に解析しなければならないこと を示している。 円磨度:断層破砕帯の破片の形状を決める要因として は,逆断層,正断層,横ずれ断層などの断層タイプ,破 片の鉱物種とサイズ,断層運動による研磨作用と熔融作 用などがあると考えられる(林,1997)。本研究で扱った

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に分類することが出来る(表3)。A タイプの層は石英・ 長石粒径分布は「非下限型」,円磨度は「低円磨度型」, フラクタル次元は「高次元型」という共通の特徴を有し, 表3 に示す 15 層がこれに該当する。このうち試料 A の第 4 ∼6,8,9層は非固結で粘土・沸石を含み,粒径分布は ユニモーダルでIa 類の石英粒子表面構造を多く含む。C タイプの層はこれとは対照的に石英・長石粒径分布は 「下限型」,円磨度は「低円磨度型」,フラクタル次元は「低 次元型」という共通の特徴を有し,表3に示す24層がこ れに該当する。シュードタキライト様とした葉層はこの タイプである。B タイプの層は A タイプと C タイプとの 中間的な特徴を有し,表3に示す6層がこれに該当する。 謝辞 本稿は鈴木(旧性市川)が1999 年 1 月に日本大学大学院理 工学研究科に提出した修士論文(市川,1999MS)をもとに, 小坂が文献について若干の追加をしたものをまとめたもので ある。研究を進めるにあたっては,日本大学文理学部地球シ ステム科学科(現地球科学科)の関係各位には粉末X 線回析 装置,走査型電子顕微鏡についてご指導をいただいた。 A試 料は神戸大学林愛明博士(現在:京都大学)採取のもの,コ ア試料は「断層解剖計画」のものを使用した。ここに記して これらの方々に深く感謝の意を表する。なお,コア試料の薄 片No.1およびNo.2は「断層解剖計画」の試料として日本大学 文理学部地球科学科地質科学研究室に保管されている(薄片 番号:1050,1051)。 本稿をまとめるに当たって,小坂は平成28 年度日本大学 文理学部付置研究所所員個人研究費「中央日本の構造発達と 地質環境(総括)」を使用した。 B 試料では Ic 類(ミカン皮状)を示すものが多い。この 結果は活断層において「I類」の石英粒子表面構造が報告 されている多くの例と一致する。 (4)石英・長石粒径分布:8つの試料について,3つの タイプが識別された。A,C 試料の黒色硬化ガウジは 20 ∼10μm 以下の粒径がほとんどない「下限型」,兵庫県 南部地震の際に動いたと考えられるコア試料No.2 の b 層その他では数μm までの細粒物質が含まれている「非 下限型」の粒径分布である。 (5)円磨度:8 つの試料について,「低円磨度型」(0.1 ∼0.4),「中円磨度型」(0.3 ∼ 0.7),「高円磨度型」(0.4 ∼0.9)の3つのタイプが識別された。最終活動からの経 過時間,あるいは活動時の溶融の影響の有無が考えられ る。黒色硬化ガウジでは一般に「高円磨度型」,石英粒 子表面構造が「Ia類卓越型」のものでは円磨度は「低円 磨度型」である。 (6)フラクタル次元:8つの試料について,「低次元型」 (D = 1.00 ∼ 1.03),「中次元型」(D = 1.03 ∼ 1.06),「高 次元型」(D=1.09∼1.14)の3つのタイプが識別された。 最終活動からの経過時間,あるいは活動時の溶融の影響 の有無が考えられる。一般的に,円磨度が良いものほど, フラクタル次元が低い傾向がある。 6.2 断層ガウジに着目したまとめ 6 つの分析項目の結果を見比べて断層ガウジの特徴を 整理してみると,分析した層はA,B,Cの3つのタイプ 安藤雅孝・島崎邦彦・竹村恵二(1998):総論;断層解剖計画. 月刊地球.号外No. 21,5-12. 粟田泰夫・水野清秀・杉山雄一・井村隆介・下川浩一・奥村 晃史・佃 栄吉・木村克己(1996):兵庫県南部地震に 伴って淡路島北西岸に出現した地震断層.地震(第2 輯),49,113-124.

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参照

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